説明

コンジュゲート繊維及び生地

【課題】優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供する。また、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供する。
【解決手段】比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分1と、比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分2との2成分分割型構造を有し、かつ、繊維中の前記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40〜80重量%であるコンジュゲート繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維に関する。また、本発明は、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏季用の肌着として、清涼感に優れた繊維及び該繊維を用いた繊維製品が研究されている。
このような清涼感を与える機能としては、例えば、着用時にヒヤリとした感覚を生じさせる接触冷感が挙げられる。このような接触冷感に優れた繊維として、特許文献1及び特許文献2にはポリアミド系エラストマーを含有する繊維が開示されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミド系エラストマーは、染色を行うために必要な染着座席を有さないか、又は、染着座席を有していたとしても非常に少ないため、酸性染料やカチオン染料を用いて染色を行うことは困難であった。また、特許文献3には、分散染料を用いてポリウレタン等のポリアミド系エラストマーを染色する方法が開示されているが、分散染料を用いて染色を行った場合、染色は可能なものの、洗濯や摩擦等を行うと、ポリアミド系エラストマーのソフトセグメントである非晶性部分に入り込んだ染料がポリアミド系エラストマーの内部から容易に抜け落ちてしまうため、洗濯堅牢度や摩擦堅牢度が極めて低く、実用的ではなかった。
【0004】
このような問題に対して、ポリアミド系エラストマー中に染着座席を導入することが行われており、例えば、ポリアミド系エラストマーにスルホン酸基を有する化合物を導入することにより、ポリアミド系エラストマーのカチオン染料に対する染色性を向上させることが行われている。しかし、このような方法は、原料樹脂の重合段階において、スルホン酸基を有するモノマーを重合させることが必要となるため、工程が複雑化していた。
【0005】
また、ポリアミド系エラストマーのペレットに無機系顔料等を含有させ、原着することによる着色化が行われている。しかしながら、この方法では、多色展開が困難であり、また、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
更に、染色性を向上させるために、例えば、ポリアミド系エラストマーにポリアミド系樹脂をブレンドすることによる可染化が行われている。しかし、この方法においてもポリアミド系エラストマーの柔軟性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−270075号公報
【特許文献2】特開2005−036361号公報
【特許文献3】特開2003−247177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することを目的とする。また、本発明は、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分と、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有し、かつ、繊維中の上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40〜80重量%であるコンジュゲート繊維である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、接触冷感に優れる比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分と、染色性に優れ、肌触りが良好な、比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造とし、更に、繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマー含有率を特定の範囲内とすることにより、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明のコンジュゲート繊維は、比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する。
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有することにより、本発明のコンジュゲート繊維を用いてなる生地は、接触冷感に優れる。
なお、本明細書において上記比重は、ASTM D792に準拠して測定される値である。
【0012】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーのハードセグメントは特に限定されないが、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが好適である。その他の上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーは特に限定されず、例えば、ジカルボン酸成分と分子量300以下のジオール成分から誘導されるポリエステル等が挙げられる。
【0013】
上記ジカルボン酸成分は特に限定されず、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、又は、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0014】
上記分子量300以下のジオール成分は特に限定されず、例えば、分子量300以下の脂肪酸ジオール、分子量300以下の脂環式ジオール、分子量300以下の芳香族ジオール等が挙げられる。
上記分子量300以下の脂肪酸ジオールは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等が挙げられる。
上記分子量300以下の脂環式ジオールは特に限定されず、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等が挙げられる。
上記分子量300以下の芳香族ジオールは特に限定されず、例えば、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル等が挙げられる。
【0015】
また、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーは、上記ジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。更に、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、及び、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0016】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーのソフトセグメントは脂肪族ポリエーテルであることが好ましい。
上記脂肪族ポリエーテルは特に限定されず、例えば、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとポリ(プロピレンオキシド)グリコールとの付加重合体、エチレンオキシドとテトラメチレンオキシドとの共重合体等が挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルのなかでも、得られる繊維の弾性特性が優れたものとなることから、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物が好適である。
【0017】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーのソフトセグメントの数平均分子量は特に限定されないが、共重合された状態において、好ましい下限は300、好ましい上限は6000である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算して求められる値である。
【0018】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーのソフトセグメントの共重合量は、比重が1.19以下である限り特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ソフトセグメントの共重合量が10重量%未満であると、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ソフトセグメントの共重合量が80重量%を超えると、得られる繊維を用いてなる生地のべたつきが強くなり、肌触りが悪くなることがある。上記ソフトセグメントの共重合量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は75重量%である。上記ソフトセグメントの共重合量の更に好ましい下限は20重量%、更に好ましい上限は70重量%である。
【0019】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーのうち、市販されているものとしては、例えば、ペルプレンP−30B、ペルプレンP−40B、ペルプレンP−55B、ペルプレンP−70B、ペルプレンP−90B、ペルプレンP−40BU、ペルプレンP−40U、ペルプレンP−48U、ペルプレンP−55U、ペルプレンP−75M、ペルプレンP−150M(いずれも東洋紡績社製)、ハイトレル3046、ハイトレル4047、ハイトレル4767、ハイトレル5557、ハイトレルG3548L、ハイトレルHTR8171、ハイトレルHTR8206(いずれも東レデュポン社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明のコンジュゲート繊維中の上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率の下限は40重量%、上限は80重量%である。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40重量%未満であると、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなる。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が80重量%を超えると、得られる繊維の熱水収縮率が大きくなりすぎる。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率の好ましい下限は50重量%である。
【0021】
本発明のコンジュゲート繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の繊維断面積に対する上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分の比率は特に限定されないが、好ましい下限は40%、好ましい上限は80%である。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分の比率が40%未満であると、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分の比率が80%を超えると、得られる繊維が染色性に劣るものとなり、更に、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分の比率のより好ましい下限は50%である。
【0022】
本発明に用いられる比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを製造する方法は特に限定されず、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、及び、ソフトセグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させて得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及びソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応させて得られる反応生成物を重縮合する方法、あらかじめハードセグメントを作っておき、これにソフトセグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化させる方法、ハードセグメントとソフトセグメントを鎖連結剤でつなぐ方法等、公知の方法を用いることができる。
【0023】
本発明のコンジュゲート繊維は、比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する。
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有することにより、本発明のコンジュゲート繊維を用いる生地は、染色性に優れ、かつ、べたつきがなく良好な肌触りを有する。
【0024】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等が挙げられる。なかでも、ポリブチレンテレフタレート、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルで構成される比重が1.19を超えるポリエステル系エラストマーが特に好ましい。
これらの比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記比重が1.19を超えるポリエステル系エラストマーは、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーと同様のハードセグメント及びソフトセグメントを有するものを用いることができ、ソフトセグメントの共重合量を調整することにより、比重が1.19を超えるものとすることができる。
【0026】
上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、バイロペットEMC700、ペルプレンP−150B、ペルプレンP−280B、ペルプレンE−450B(いずれも、東洋紡績社製)、ハイトレル6347、ハイトレル7247、ハイトレル2571、ハイトレル2751(いずれも、東レデュポン社製)、ジュラネックス(ポリプラスチックス社製)、トレコン(東レ社製)、ノバデュラン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、バロックス(日本ジーイープラスチックス社製)、タフペット(三菱レイヨン社製)、プラナック(DIC社製)、ヌーベラン(帝人化成社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリエステル系樹脂の含有率は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は60重量%である。上記ポリエステル系樹脂の含有率が20重量%未満であると、得られる繊維が染色性に劣るものとなり、更に、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記ポリエステル系樹脂の含有率が60重量%を超えると、上記ポリエステル系エラストマーの含有率が小さくなるため、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ポリエステル系樹脂の含有率のより好ましい上限は50重量%である。
【0028】
繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリポリエステル系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率は特に限定されないが、好ましい下限は20%、好ましい上限は60%である。上記ポリエステル系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率が20%未満であると、得られる繊維が染色性に劣るものとなり、更に、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記ポリエステル系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率が60%を超えると、上記ポリエステル系エラストマーを含有する成分の占有率が小さくなるため、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ポリエステル系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率のより好ましい上限は50%である。
【0029】
また、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマー、及び、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂は、必要に応じて、抗酸化剤、防腐剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、艶消剤、耐光剤、滑剤、香料、可塑剤、界面活性剤、難燃剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0030】
本発明のコンジュゲート繊維は、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分と上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有する。上記分割型構造は特に限定されず、芯鞘型構造、サイドバイサイド型構造、放射型構造等が挙げられる。なかでも、芯部に上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有し、鞘部に上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する芯鞘型構造であることが好適である。
【0031】
上記芯鞘型構造は特に限定されず、例えば、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の断面形状が真円のものであってもよいし、楕円等であってもよい。また、芯部と鞘部とが同心円状に形成された同心芯鞘型構造であってもよいし、芯部と鞘部とが偏心的に形成された偏心芯鞘型構造であってもよい。更に、鞘部の一部が開口した部分開口型構造であってもよい。加えて、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合に芯部が複数存在するような構造であってもよい。
【0032】
本発明のコンジュゲート繊維が上記部分開口型の芯鞘型構造を有する場合の鞘部の開口率は特に限定されないが、好ましい下限は10%、好ましい上限は30%である。上記開口率が30%を超えると、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。なお、本明細書において上記開口率とは、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の繊維断面外周において、芯部を構成する樹脂が外周部に露出する割合を表す。
【0033】
本発明のコンジュゲート繊維は、qmax値が0.20J/sec/cm以上であることが好ましい。
上記qmax値は、着衣したときに試料に奪われる体温をシミュレートしていると考えられ、上記qmax値が大きいほど着衣時に奪われる体温が大きく、接触冷感が高いと考えられる。上記qmax値が0.20J/sec/cm未満であると、官能試験を行っても大半の人が接触冷感を感じないことがある。上記qmax値のより好ましい下限は0.21J/sec/cm、更に好ましい下限は0.22J/sec/cmである。
なお、本明細書において上記qmax値は、一定面積、一定質量の熱板に所定の熱を蓄え、これが試料表面に接触した直後、蓄えられた熱量が低温側の試料に移動する熱流量のピーク値を表す。
【0034】
本発明のコンジュゲート繊維を製造する方法は特に限定されず、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有するペレット、及び、上記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有するペレットを複合紡糸装置に投入し、溶融紡糸することにより、コンジュゲート繊維を得る方法等が挙げられる。
【0035】
本発明のコンジュゲート繊維を用いてなる生地もまた、本発明の1つである。
本明細書において、生地には、編物、織物、不織布等が含まれる。
本発明の生地は、本発明のコンジュゲート繊維のみからなるものであってもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲で、肌触り等の肌着に必要な要件を更に良好にする目的で、他の繊維と交編してもよい。上記他の繊維は特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン12、ポリエステル、綿、レーヨン等が挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することができる。また、本発明によれば、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例及び比較例において得られた繊維の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0039】
(実施例1)
芯部用樹脂として比重が1.19以下のポリエステル系エラストマー(東洋紡績社製、「ペルプレンP−30B」、比重1.05)と、鞘部用樹脂として比重が1.19を超えるポリエステル系エラストマー(東洋紡績社製、「ペルプレンP−280B」、比重1.26)とを用い、これらの芯部用樹脂及び鞘部用樹脂をそれぞれ単軸押出機により加熱溶融し、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の芯部の断面が略円形、鞘部の断面が開口率30%の略C形、かつ、繊維中のポリエステル系エラストマーの含有率が80重量%となるように複合紡糸し、部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0040】
(実施例2)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0041】
(実施例3)
芯部用樹脂としての比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーとしてペルプレンP−30Bの代わりにハイトレルHTR8206(東レデュポン社製、比重1.19)を用い、鞘部用樹脂としての比重が1.19を超えるポリエステル系エラストマーとしてペルプレンP−280Bの代わりにペルプレンE−450B(東洋紡績社製、比重1.28)を用い、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の鞘部の断面が開口率10%の略C形となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0042】
(実施例4)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40重量%となるようにしたこと以外は、実施例3と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0043】
(実施例5)
芯部用樹脂としての比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーとしてペルプレンP−30Bの代わりにハイトレルHTR8171(東レデュポン社製、比重1.17)を用い、鞘部用樹脂としてペルプレンP−280Bの代わりにポリブチレンテレフタレート(東洋紡績社製、「バイロペットEMC700」、比重1.31)を用い、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の芯部の断面が円形、鞘部の断面が環形となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして同心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0044】
(実施例6)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40重量%となるようにしたこと以外は、実施例5と同様にして同心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0045】
(比較例1)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が90重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0046】
(比較例2)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0047】
(比較例3)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が90重量%となるようにしたこと以外は、実施例3と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0048】
(比較例4)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例3と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0049】
(比較例5)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が90重量%となるようにしたこと以外は、実施例5と同様にして同心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0050】
(比較例6)
繊維中の比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例5と同様にして同心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0051】
(比較例7)
ペルプレンP−90B(東洋紡績社製、比重1.19)を用い、溶融紡糸法にて製糸を行って繊維を得た。得られた繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。得られた繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0052】
実施例及び比較例において得られた繊維の断面を示す模式図を図1に示す。図1中において、1は比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分を示し、2は比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分を示す。
【0053】
<評価>
実施例及び比較例で得られた生地について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0054】
(1)染色堅牢度の評価
Dianix Yellow Brown XF(ダイスター社製)0.15%owf、Dianix Red UN−SE(ダイスター社製)0.03%owf、及び、染色助剤としてニッカサンソルト7000(日華化学社製)0.5g/Lを用い、得られた生地を、浴比1:20、pH4.5(酢酸で調整)、130℃の条件で20分間染色した。次いで、水洗、脱水を行い、ピンテンターにより135℃で熱セットした。JIS L0844「洗濯に対する染色堅牢度試験方法」(A−3法)に準拠して、得られた生地の染色堅牢度を以下の基準により評価した。
◎:変退色、綿汚染、ナイロン汚染がいずれも4−5級以上
○:変退色、綿汚染、ナイロン汚染がいずれも4級以上、かつ、少なくとも1つが4級
×:変退色、綿汚染、ナイロン汚染がいずれかが3−4級以下
【0055】
(2)qmax値の測定
20.5℃の温度に設定した試料台の上に各生地を置き、得られた生地の上に32.5℃の温度に温められた貯熱板を接触圧0.098N/cmで重ねた直後、蓄えられた熱量が低温側の試料に移動する熱量のピーク値を測定した。測定には、サーモラボII型精密迅速熱物性測定装置(カトーテック社製)を用いた。
【0056】
(3)官能評価
10人の被験者について、生地の冷たさ、及び、肌触りについて官能試験を実施した。
(冷たさ)
裸でうつぶせに横たわり、40cm角に切り出した生地を背中にかけた際の冷たさをアンケート調査し、以下の基準により評価を行った。
◎:9名以上が「非常に冷たい」又は「冷たい」と回答
○:5〜8名が「非常に冷たい」又は「冷たい」と回答
×:「非常に冷たい」又は「冷たい」と回答した者が4名以下
(肌触り)
◎:「非常にべたつく」又は「べたつく」と回答した者が0名であり、かつ、「非常にさらさらしている」又は「さらさらしている」と回答した者が7名以上
○:「非常にべたつく」又は「べたつく」と回答した者が0名であり、かつ、「非常にさらさらしている」又は「さらさらしている」と回答した者が4〜6名
△:「非常にべたつく」又は「べたつく」と回答した者が1〜2名
×:「非常にべたつく」又は「べたつく」と回答した者が3名以上
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することができる。また、本発明によれば、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分
2 比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有する成分と、前記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有し、かつ、
繊維中の前記比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーの含有率が40〜80重量%である
ことを特徴とするコンジュゲート繊維。
【請求項2】
芯部に比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを含有し、鞘部に比重が1.19以下のポリエステル系エラストマーを除くポリエステル系樹脂を含有する芯鞘型構造を有することを特徴とする請求項1記載のコンジュゲート繊維。
【請求項3】
鞘部の開口率が10〜30%である部分開口型の芯鞘型構造を有することを特徴とする請求項2記載のコンジュゲート繊維。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のコンジュゲート繊維を用いてなることを特徴とする生地。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189774(P2010−189774A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32290(P2009−32290)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】