説明

コンタクトレンズ用眼科組成物

【課題】本発明は、装着時、装用時のべたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用点眼液を提供するものである。本発明は、さらに、コンタクトレンズ用組成物に適した、べたつきが抑制された増粘技術を提供する。
【解決手段】高分子化合物及びアミノ酸類を含有することを特徴とするコンタクトレンズ用眼科組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ装用者に適用される眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズの装用は、異物を眼に挿入するという観点から、装着時又は装用時に異物感を感じる等、様々な問題がある。これらの問題を解決するために、様々なコンタクトレンズ用点眼剤(点眼液、装着液等)が開発されている。その中で、高分子化合物を配合して組成物の粘度を上げ、装着感、装用感を改善する点眼剤が知られているが、高分子化合物特有のべたつきを生じるため、使用感は満足できるものではなかった。したがって、装着時、装用時の使用感が優れたコンタクトレンズ用の点眼剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭48−37910号公報
【特許文献2】国際公開97/28827号パンフレット
【特許文献3】特開平11−130667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、装着時、装用時のべたつきが抑制され、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供するものである。本発明は、さらに、コンタクトレンズ用組成物に適した、べたつきが抑制された増粘技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高分子化合物及びアミノ酸類を配合することにより、高分子化合物特有のべたつきが抑制された水性液が得られることを知見した。さらに、高分子水溶液にアミノ酸類を添加することにより粘度が増し、しかもべとつきが低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、高分子化合物及びアミノ酸類を含有することを特徴とするコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。また、高分子化合物及びアミノ酸類を増粘剤として含有することを特徴とするコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高分子化合物とアミノ酸類を配合することにより、べたつきがなく適度な粘度を有する、使用感に優れたコンタクトレンズ用眼科組成物(点眼液、装着液等)が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に用いられる高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル等のポリビニル系高分子化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子化合物;ブドウ糖;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等があげられる。好ましくはポリビニル系高分子化合物とセルロース系高分子化合物であり、特に好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0009】
上記高分子化合物の好ましい分子量は、重量平均分子量5000〜2000000である。さらに好ましくは、ポリビニル系高分子化合物の場合、重量平均分子量10000〜300000、特に好ましくは20000〜150000である。セルロース系高分子化合物の場合は、重量平均分子量10000〜1000000が好ましい。
【0010】
本発明の組成物には、上記高分子化合物を1種又は2種以上を用いられるが、2種以上とすると、使用感がよくなるため、好ましい。好ましくは、ポリビニル系高分子化合物とセルロース系高分子化合物を組み合わせる。
【0011】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物における高分子化合物の含有量は、好ましくは0.01〜10g/100ml、特に好ましくは0.05〜5g/100ml、さらに好ましくは0.1〜4g/100mlである。この範囲で、特に良好な使用感と溶液の安定性が得られる。
【0012】
本発明に用いられるアミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸又はそれらの塩があげられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩があげられる。これらは、1種を使用しても良いし、2種以上の組み合わせとしても良い。
【0013】
好ましく用いられるアミノ酸類は、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、グルタミン酸、グリシン、リジンとそれらの塩である。特に好ましくは、アスパラギン酸、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸又はそれらの塩である。
【0014】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物におけるアミノ酸類の含有量は、好ましくは0.005〜10g/100ml、特に好ましくは0.001〜5g/ml、さらに好ましくは0.05〜3g/100mlである。この範囲で、特に良好な使用感や増粘効果が得られ、しかも眼への刺激がない優れた組成物が得られる。
【0015】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物の粘度は、35℃における粘度が 1〜30mPa・s、好ましくは1〜20mPa・sである。この範囲で、特に良好なコンタクトレンズ装用感が得られる。さらに、点眼液の場合は点眼のし易さ等の点から1〜10、特に1〜3mPa・sが好ましい。また、装着液の場合は装着作業性等の点から1〜20mPa・sが好ましい。組成物の粘度は、高分子化合物とアミノ酸類の量により、調整することができる。なお、本発明の組成物の粘度は、E型粘度計で測定することができる。
【0016】
本発明の組成物において、アミノ酸類は、使用感の向上(べたつき抑制)の他に、高分子化合物を含有する水性液に対する増粘剤としての効果を有する。したがって、本発明によれば、所定の粘度を得るための高分子化合物量を低減させることが可能である。高分子化合物に対するアミノ酸類の増粘効果は知られておらず、この知見を応用した眼科組成物は新規のものである。
【0017】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、さらに使用感を向上させるために、モノテルペノイド化合物、セスキテルペノイド化合物、及びそれらの誘導体(以下テルペノイド類)から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。モノテルペノイド化合物としては、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リモネン、オイゲノール等があげられる。セスキテルペノイド化合物としては、ファルネソール、ネロリドール等があげられる。誘導体としては、前記テルペノイド化合物のアルキル又はアルケニルエステルやエーテルをあげることができる。
【0018】
前記テルペノイド類は、1種又は2種以上の混合物として含有することができる。これらは、精製された成分を配合しても良いし、前記テルペノイド類を含有する植物精油を配合しても良い。植物精油としては、ローズマリー油、ラベンダー油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ベルガモット油、ハッカ油、ウイキョウ油等があげられる。
【0019】
本発明の組成物に含有される前記テルペノイド類の量は、好ましくは0.0001〜0.5g/100ml、特に好ましくは0.0005〜0.2g/100ml、さらに好ましくは0.001〜0.05g/100mlである。好ましくは0.001〜0.05g/100mlである。
【0020】
さらに、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、各種有効成分を含有することができる。有効成分としては、例えばグリチルレチン酸二カリウム、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、塩化リゾチーム等の抗炎症剤、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンEアセテート、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ビタミンAパルミテート等のビタミン類、塩酸ジフエンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、塩酸エピネフリン、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン等の充血除去成分、メチル硫酸ネオスチグミン等その他の有効成分があげられる。
【0021】
さらに、通常の眼科組成物に含有される各種添加剤として、例えば防腐剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤、香料等を、本発明の効果を損ねない範囲で添加することができる。
【0022】
防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸エステル等があげられる。
【0023】
等張化剤としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、プロピレングリコール、グリセリン等があげられる。
【0024】
緩衝剤としては、クエン酸、ホウ酸、リン酸、リン酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、氷酢酸等があげられる。
【0025】
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等があげられる。
【0026】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物の製造は、特に制限されるものではなく、各成分を滅菌精製水、イオン交換水等の水や水とエタノール等の低級アルコールとの混合溶媒等に溶解させた後、pH調整剤(pH5〜8が好ましい)、等張化剤(浸透圧比0.8〜2が好ましい)により適宜調整して得ることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
表1、表2に示すコンタクトレンズ用眼科組成物を調製し、35℃における粘度をE型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて測定し、結果を表1、表2に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
実験1〜10の各組成において、ポリビニルアルコールとしてゴーセノールEG−25、ゴーセノールEG−40(日本合成化学工業(株)製);ポリビニルピロリドンとしてコリドンK−15、コリドンK−60(BASF Japan(株)製);メチルセルロースとしてメトローズSM25、メトローズSM4000(信越化学工業(株)製);ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしてメトローズ65SH1500、65SH4000(信越化学工業(株)製)を用いて、同様に粘度を測定した結果、いずれもアミノ酸類による増粘が確認された。
【0032】
(実施例2)
表3〜6に記載した組成のコンタクトレンズ用点眼液、装着液を調製し、35℃における粘度と使用感を評価した。なお、表3〜6の高分子化合物は、各々表2で用いた高分子化合物と同じものを使用した。
【0033】
<使用感の評価>
点眼液;被検者9名に、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ3名、酸素透過性ハードコンタクトレンズ3名、ソフトコンタクトレンズ3名)を装用したまま点眼させ、装用感の評価を以下の基準で行った。
5:べたつきがなく、非常に使用感が良い
4:べたつきがほとんどなく、使用感が良い
3:べたつきがややあり、使用感はやや悪い
2:べたつきがあり、使用感が悪い
1:べたつきがひどく、非常に使用感が悪い
5段階評価の平均点が4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、2未満を×とした。
【0034】
装着液;被検者9名に、表5、6の装着液を使用してコンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ3名、酸素透過性ハードコンタクトレンズ3名、ソフトコンタクトレンズ3名)を装着させ、装着時及び装着後の使用感評価を行った。評価は、点眼液と同じ基準で5段階評価とした。
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物及びアミノ酸類を含有することを特徴とするコンタクトレンズ用点眼液。
【請求項2】
高分子化合物、及びアミノ酸類を増粘化剤として含有し、35℃における粘度が1〜30mPa・sであることを特徴とするコンタクトレンズ用点眼液。
【請求項3】
アミノ酸類がアスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のコンタクトレンズ用点眼液。
【請求項4】
さらにモノテルペノイド化合物、セスキテルペノイド化合物、及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコンタクトレンズ用点眼液。
【請求項5】
コンタクトレンズが、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズである請求項1〜4のいずれか1項記載のコンタクトレンズ用点眼液。

【公開番号】特開2011−32283(P2011−32283A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245241(P2010−245241)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【分割の表示】特願2005−175988(P2005−175988)の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】