説明

コンタクト及びこれを用いたICソケット

【課題】小型化が容易であり、高バネ性が得られるとともに、2つの接触対象のいずれに対しても安定した電気的接触が可能であり、且つ、ICソケットへの取り付けが容易なコンタクト及びそれを用いたICソケットを提供する。
【解決手段】支持体141と、先端部に集積回路パッケージと接触する第1の接点部分を有する第1のバネ部分143と、先端部に第1の接触部分146を有する第2のバネ部分145と、先端部にプリント配線板と接触する第2の接点部分を有し、支持体を挟んで第1のバネ部分と対をなす第3のバネ部分147と、先端部に第1の接触部分に接触可能に配置される第2の接触部分を有する第4のバネ部分149と、を備え、第1の接触部分及び第2の接触部分のうち、いずれか一方の接触部分は、平坦151に形成され、他方の接触部分は、一方の接触部分に対して凸をなすように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト及びこれを用いたICソケットに関し、より詳細には、上下に2つの接触対象を有するコンタクトと、このようなコンタクトを用いるICソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波対応の集積回路パッケージ(以下、「ICパッケージ」という。)を搭載し、試験するためのICソケットのコンタクトとして、特許文献1や特許文献2に開示されるような上下に2つの接触対象(例えば、上方はICパッケージであり、下方はプリント配線板である。)を有するコンタクトが用いられてきた。このようなコンタクトは、ICソケットに搭載されるICパッケージとテストボードのようなプリント配線板のいずれにも弾性的に接触することで、ICパッケージとプリント配線板を電気的に接続し得るように構成されている。このようなコンタクトは、高周波信号に対応すべくコンタクトを流れる電流(信号)の信号線路長を短くし、インダクタンスを小さくするように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−125428号公報
【特許文献2】実用新案登録第3078529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような2つの接触対象を有するコンタクトにおいては、ICパッケージ及びプリント配線板との安定した電気的接触を保持するために、コンタクトのバネ定数が大きいことが要求される。コンタクトのバネ定数を大きくする(すなわち、コンタクトのバネ性を高くする)ことは、コンタクトの弾性変形部の長さを大きくしなければならず、そのため、コンタクトが大型化し、コンタクトを通る信号の信号線路長が大きくなる。それにより、コンタクトに形成される信号線路のインダクタンスが大きくなり、ノイズなどの発生により、プリント配線板とICパッケージとの間で正しい信号のやり取りが行えなくなる恐れがある。このように、コンタクトのバネ性を高くすることとコンタクトを高周波化に対応可能とすることとは相反することになり、コンタクトの設計が難しい。
【0005】
さらに、近年ICパッケージの外部接点の数が増大し、かつ該外部接点間のピッチが小さくなるにつれ、コンタクト自体の小型化が要求され、コンタクトと接触対象となる対処物との接圧を所定圧に保持するために、バネ性の高いコンタクトを得ることが難しい。
【0006】
また、コンタクトは、2つの接触対象を有するので、いずれの対象に対しても安定した電気的接続がなされる必要がある。そのためには、コンタクトの取り付け位置にも精度が必要であり、製造に時間がかかる。
【0007】
上記従来のコンタクトは、いずれも、高バネ性を得るためには、小型化が難しい。また、特許文献1に開示されるコンタクトは、ソケット本体のバネ収納室への取り付けが難しく、特許文献2に開示されるコンタクトは、取り付けに精度が要求されるとともに、ソルダバンプの取り付けが必要であり、いずれも製造に時間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、小型化が容易であり、高バネ性が得られるとともに、2つの接触対象のいずれに対しても安定した電気的接触が可能であり、且つ、ICソケットへの取り付けが容易な上下に2つの接触対象を有するコンタクト及びこれを用いたICソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコンタクトは、垂直方向に延びる支持体と、支持体の上端から斜め前方上方に延び、先端部に集積回路パッケージと接触する第1の接点部分を有する第1のバネ部分と、第1の接点部分から折り曲げられ斜め後方下方に延び、先端部に第1の接触部分を有する第2のバネ部分と、支持体の下端から斜め前方下方に延び、先端部にプリント配線板と接触する第2の接点部分を有し、支持体を挟んで第1のバネ部分と対をなす第3のバネ部分と、第2の接点部分から折り曲げられ斜め後方上方に延び、先端部に第1の接触部分に接触可能に配置される第2の接触部分を有する第4のバネ部分と、を備え、第1の接触部分及び第2の接触部分のうち、いずれか一方の接触部分は、平坦に形成され、他方の接触部分は、一方の接触部分に対して凸をなすように形成されていることを特徴とする。
本発明に係るコンタクトは、他方の接触部分の先端は、一方の平坦な接触部分に向かって突出する凸の形状に形成されていてもよいし、または、一方の接触部分には、平坦部上に、さらに、上に凸の隆起部が形成されていてもよいし、さらには、凸の形状が複数形成されていてもよい。
【0010】
また、本発明に係るICソケットは、ICパッケージ載置用凹部及び該ICパッケージ載置凹部の底面にICパッケージの外部接点に対応して形成される複数のコンタクト収容室を含んでいるソケット本体と、複数のコンタクト収容室それぞれに収容される複数のコンタクトと、ICパッケージ載置用凹部に載置されたICパッケージをコンタクト収容室に収容されるコンタクトに向けて押圧する押圧部材を備えるICソケットであって、コンタクト各々は、上記本発明に係るコンタクトを採用することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係るICソケットにおいては、コンタクト各々は、他方の接触部分の先端は、一方の平坦な接触部分に向かって突出する凸の形状に形成されていてもよいし、または、一方の接触部分には、平坦部上に、さらに、上に凸の隆起部が形成されていてもよいし、さらには、凸の形状が複数形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を備えることにより、本発明に係るコンタクトは、構造が簡単であるにも拘らず、接触対象との電気的接触に関し所望の接触圧を得ることのできる高バネ性を有し得、したがって、上下の2つの接触対象に対して安定した電気的接触が可能となる。また、ICソケットへの取り付けも容易に行うことが可能である。さらに、高バネ性を損なうことなく、高周波対応として信号線路を十分に短くすることも可能である。
【0013】
さらに、本発明に係るICソケットは、コンタクト収容室にコンタクトの支持体が嵌合する取り付け溝や係止爪が嵌合する係止溝を備えるだけで、コンタクトのICソケットの取り付けが非常に簡単にできる。また、コンタクト収容室をコンタクトが上下動できるように形成することで、上記コンタクトのバネ性を十分に発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る2つの接触対象を有するコンタクトを使用するICソケットの概略分解斜視図である。
【図2】図1のICソケットのソケット本体の上面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った第1の参考実施態様に係るICソケットの概略要部拡大断面図である。
【図4】第1の参考実施態様に係るICソケットにICパッケージが装着される前のコンタクトの状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】第1の参考実施態様に係るICソケットにICパッケージが装着されたときのコンタクトの状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】第1の参考実施態様に係るコンタクトの正面図である。
【図7】図6のコンタクトを左から見た側面図である。
【図8】図6のコンタクトを右から見た側面図である。
【図9】コンタクトを収容する第1の参考実施態様に係るソケット本体のコンタクト収容室の概略要部断面図である。
【図10】図9に示されるコンタクト収容室に収容された第1の参考実施態様に係るコンタクトを示す概略図であり、(a)は、概略要部断面図、(b)は、(a)の概略上面図である。
【図11】図10(a)のXI−XI線に沿う概略断面図である。
【図12】第2の参考実施態様に係るコンタクトの正面図である。
【図13】本発明に係るコンタクトの正面図である。
【図14】図13のコンタクトを左から見た側面図である。
【図15】図13のコンタクトがコンタクト収容室に収容された状態を示す概略図である。
【図16】図13に示される本発明に係るコンタクトの変形例である。
【図17】図13に示される本発明に係るコンタクトの別の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図1乃至17を用いて、本発明の好ましい実施態様につき説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る2つの接触対象を有するコンタクトを使用するICソケットの概略分解斜視図であり、図2は、図1のICソケットのソケット本体の上面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った第1の参考実施態様に係るICソケットの概略要部拡大断面図である。図4は、第1の参考実施態様に係るICソケットにICパッケージが装着される前のコンタクトの状態を示す要部拡大断面図であり、図5は、第1の参考実施態様に係るICソケットにICパッケージが装着されたときのコンタクトの状態を示す要部拡大断面図である。図6は、第1の参考実施態様に係るコンタクトの正面図であり、図7は、図6のコンタクトを左から見た側面図、図8は、図6のコンタクトを右から見た側面図である。図9は、図6のコンタクトを収容するソケット本体のコンタクト収容室の概略要部断面図であり、図10は、図9のコンタクト収容室に収容された第1の参考実施態様に係るコンタクトを示す概略図であり、(a)は、概略要部断面図、(b)は、(a)の概略上面図であり、図11は、図10(a)のXI−XI線に沿う概略断面図である。図12は、第2の参考実施形態に係るコンタクトの正面図である。図13ないし15は、本発明に係る実施態様であり、図13は、本発明に係るコンタクトの正面図であり、図14は、図13のコンタクトを左から見た側面図であり、図15は、図12のコンタクトがコンタクト収容室に収容された状態を示す概略図である。図16、17は、図13ないし15に示される本発明のコンタクトの変形例である。
【0017】
(第1の参考実施態様)
図1に示されるように、ICソケット1は、概略、ICパッケージ80とプリント配線板60とを電気的に接続する複数のコンタクト40が配置されるソケット本体20、及びICソケット1に装着されるICパッケージ80をコンタクト40に向けて上から押圧する押圧部材10を備えている。押圧部材10、ソケット本体20は、ネジなどの固定手段90により直接プリント配線板60に、または該プリント配線板60を介してベース部材70に固定される。
【0018】
押圧部材10は、下面にICパッケージ80を押圧するための押圧体(不図示)が形成されている。押圧部材10は、また、図1に示されるように、熱を放散させるためのヒートシンク11を備えていることが好ましい。
【0019】
ソケット本体20は、例えば、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホンのような電気的に絶縁性の合成樹脂から作られており、図2、3に示されるように、上から見て概略正方形状の六面体をなしている。ソケット本体20の外郭は、上面21、該上面21に平行な底面23、及びこれらの面21、23に直交し、これらの面21、23を連結する4つの側面を有する。
【0020】
ソケット本体20の上面21の略中央には、上から見て略正方形状をした有底のICパッケージ載置用凹部22が形成されている。本実施態様では、ICパッケージ載置用凹部22は、ソケット本体20の上面21に直交する4つの側面とソケット本体20の上面21に平行な底面22aを有する。該底面22aは、ICパッケージ80の載置面を構成する。ソケット本体20の4隅には、ソケット本体20を、例えば、プリント配線板60に固定するとき、固定手段90が通り抜けることのできる取り付け孔38がソケット本体20を貫通するように形成されている。
【0021】
ICパッケージ載置用凹部22の底面22aには、ICパッケージ80の外部接点に対応して、複数のコンタクト40を収容するコンタクト収容室25がマトリックス状に配列されている。コンタクト収容室25は、ICパッケージ載置面である底面22aからソケット本体20の底面23に向けてソケット本体20を貫通している。該コンタクト収容室25は、図2に示されるように、その長手方向軸線でもある断面線III−IIIがICパッケージ載置凹部22の側面に対して略45°の角度をなして傾斜するように形成されることが好ましい。このように構成することで、限界はあるが、その外部接点がより挟ピッチのICパッケージにも対応可能となる。コンタクト収容室25それぞれには、図3に示されるように、コンタクト40が同方向を向いて1つずつ収容される。コンタクト40及びその収容については後で詳細に説明する。なお、図示されていないが、ソケット本体20の上面21には、ICパッケージ載置用凹部22内へICパッケージ80を案内するために従来周知の位置決め機構が設けられることが好ましい。
【0022】
コンタクト収容室25の構造について、図9乃至図11を用いて説明する。コンタクト収容室25は、図10(b)に良く示されるように、上から見て軸線III−IIIに沿って細長く延びる概略長方形状をなしており、コンタクト40が収容される。コンタクト収容室25の上方には、コンタクトの収容を容易にするための傾斜案内壁27、28、29、30が形成されている。
【0023】
コンタクト収容室25の長手方向端部(本参考実施態様では、図9、図10(a)、(b)において右端部)には、該コンタクト収容室25の軸線III−IIIに直交して延在する一対の取り付け溝26、26が形成される。該一対の取り付け溝26、26内には、後述するコンタクト40の支持体41の両側部が緩く嵌合する。一対の取り付け溝26、26の底面間の距離W2(すなわち、(取り付け溝26の深さd1×2)+コンタクト収容室25の幅W1)は、コンタクトの支持体41の幅W4より大きい(図11参照)。一対の取り付け溝26、26は、図10(b)に示されるように、コンタクト収容室25の右端部で室25の両側に形成される。各取り付け溝26は、上方(載置面22a側)及びコンタクト収容室25に向かって開放されているが、ソケット本体20の底面23側には開放されていない。すなわち、各取り付け溝26は、コンタクト40が下方に抜けることを防止するための第1の規制壁34が形成されている。なお、傾斜壁27、30は、コンタクト40の支持体41を取り付け溝26内への挿入を容易にするために設けられている。
【0024】
コンタクト収容室25の右端側面(上記、一対の取り付け溝26、26が設けられている側)には、軸線III−IIIに沿って係止溝31が形成されている。係止溝31内には、後述するコンタクト40の係止爪42が緩く嵌合する(図10(a)、図11参照)。係止溝31の幅W3は、コンタクト収容室25の幅W1より小さく、コンタクト40の係止爪41の幅W5より大きい(図11参照)。係止溝31は、下方(ソケット本体20の底面23側)及びコンタクト収容室25に向かって開放されているが、上方(載置面22a側)には開放されていない。すなわち、係止溝31は、コンタクト40が上方に抜けないように第2の規制壁33が形成されている。コンタクト40の係止爪42の上端が第2の規制壁33に当接することで、コンタクト40は、上方へ抜けることがない。
【0025】
図11に示されるように、第2の規制壁33は、第1の規制壁34より距離L1だけ上方に位置する。コンタクト40の係止爪42の上端が第2の規制壁33に当接しているとき、コンタクト40の支持体41の下端41aは、第1の規制壁34より上方に位置している。この時、第2の規制壁33からコンタクト40の支持体41の下端41aまでの距離をL2とすると、L1−L2分だけコンタクト40は下方に移動可能である。
【0026】
軸線III−III方向に隣り合うコンタクト収容室25は、係止溝31の下方で、下方に向かって開放する連通溝32を介して連通している。該連通溝32は、必ずしも必要ではない。
【0027】
コンタクト40は、例えば、ベリリウム銅(BeCu)のような導電性の金属製薄板から所定形状の板体として打ち抜かれ、該板体を折り曲げ加工することにより、図6乃至8に示されるような上下に2つの接触対象を有する形状に形成される。
【0028】
図6乃至8を参照して、コンタクト40の具体的構造について説明する。コンタクト40は、上下に垂直に延びる幅広の支持体41、該支持体41から斜め後方上向きに切り起こされた係止爪42を備えている。該係止爪42は、弾性変形可能であり、コンタクト40をコンタクト収容室25内に収容するとき変形する。なお、係止爪42は、本実施態様では上向に切り起こされているが、下向きであってもよい(図13ないし15に示されるコンタクト参照)。
【0029】
コンタクト40は、また、支持体41の上端41bから前方及び上方に向け、支持体41に対して傾斜して延びる(支持体41に対して斜め前方上向きに延びる)第1のバネ部分43、該第1のバネ部分43の先端に上に凸に湾曲して形成される第1の接点部分としての第1の湾曲部分44を備えている。第1のバネ部分43及び第1の接点部分44は、支持体41の幅より狭い幅を有する。コンタクト40は、第1の接点部分44から下方及び後方に向けて折り返されてさらに延びる(第1の接点部分44に対して斜め後方下向きに延びる)第2のバネ部分45、第2のバネ部分45の先端に下に凸に湾曲して形成される第1の接触部分としての第2の湾曲部分46を備えている。第2のバネ部分45は、第1のバネ部分43と略同じ幅を有し、第1の接点部分44を頂点にして第1のバネ部分43に対して略V字状をなすように折り曲げられる。また、第1の接触部分46は、第2のバネ部分45より若干幅広に形成されている。
【0030】
コンタクト40は、さらに、支持体41の下端41aから前方及び下方に向け、支持体41に対して傾斜して延びる(支持体41に対して斜め前方下向きに延びる)第3のバネ部分47、該第3のバネ部分47の先端に下に凸に湾曲して形成される第2の接点部分としての第3の湾曲部分48を備えている。第2の接点部分48を含む第3のバネ部分47は、上述した第1の接点部分44を含む第1のバネ部分43と支持体41を挟んで対をなすように延在している。したがって、第3のバネ部分47は、第1のバネ部分43と同じ幅を有し、支持体41の幅より狭い幅を有する。コンタクト40は、第1の接点部分48から上方及び後方に向けて折り返されてさらに延びる(第2の接点部分48に対して斜め後方上向きに延びる)第4のバネ部分49、第4のバネ部分49の先端に平坦に(本実施態様では、水平に)形成される第2の接触部分としての平坦部分51を備えている。第4のバネ部分49も、第3のバネ部分47と同様に、第2のバネ部分45と支持体41を挟んで対をなすように第2の接点部分48から延在している。また、第4のバネ部分49は、第2の接点部分48を頂点にして第3のバネ部分47に対して略V字状をなすように折り曲げられる。さらに、第2の接触部分51は、第4のバネ部分分49より若干幅広で、上記第1の接触部分46と同じ幅に形成されている。
【0031】
本参考実施態様では、第1の接触部分46が下に凸に湾曲して形成され、第2の接触部分51は、平坦に形成されているが、逆に、第1の接触部分46が平坦で、第2の接触部分51が、上に凸に湾曲して形成されていてもよい。要は、第1及び第2の接触部分46、51は、第2のバネ部分45と第4のバネ部分49が弾性変形するのを妨げないように構成されていることが好ましい。また、図4または図5に示されるように、ICソケット1がプリント配線板60に実装されたとき、または、さらにICパッケージ80が装着されたとき、互に接触して短い信号線路を形成する。あるいは、第1の接触部分46と第2の接触部分51は、最初から接触状態にあってもよい。要は、コンタクト40の第1乃至第4のバネ部分材43、45、47及び49が、ICパッケージ80が装着された状態においても、バネとして機能していればよい。
【0032】
コンタクト40の幅広の支持体41は、上述したように、支持体41の両側部(図8において、支持体41の上下に形成される第1及び第3のバネ部43、47より幅方向に突出している部分)をソケット本体20の一対の取り付け溝26内に嵌め込まれ、ソケット本体20に対して概ね垂直状態に保持される。係止爪42も支持体41が取り付け溝26内に嵌め込まれるとき、同時に、係止溝31内に嵌め込まれる。このようにして、コンタクト40は、図10及び図11に示されるような状態でソケット本体20に上下動自在に保持される。なお、このようなコンタクト40の上下動を助けるために、コンタクト40の係止爪42は、その先端に丸みが付けられていることが好ましい。
【0033】
コンタクト40の第1の接点部分44と第2の接点部分48と間の距離(コンタクト40の高さ)H2は、コンタクト収容室25の高さH1よりも大きい。したがって、コンタクト40がソケット本体20のコンタクト収容室25内に配設されたとき、図10(a)にも明瞭に示されるように、コンタクト40の第1の接点部分44は、ソケット本体20の載置面22aより上方に突出し、第2の接点部分48は、ソケット本体20の底面23より下方に突出している。
【0034】
(第2の参考実施態様)
図12に、本発明に係るコンタクトの変形例としての第2の参考実施態様が示されている。
【0035】
装着されるICパッケージ80の外部端子81のピッチが小さくなることで、コンタクト収容室が25が垂直(縦)方向に細長い、すなわち、コンタクト収容室25の奥行S1に対して高さH1が比較的大きくなる(図9参照)。縦に長いコンタクト収容室25に対応してコンタクト40が垂直(縦)方向に細長くすると、第2のバネ部分45と第4のバネ部分49は、それぞれの接触部分46、51を介して概ね直線状に配置された状態になり、それにより、第2のバネ部分45と第4のバネ部分49が弾性変形し難くなる。本実施態様におけるコンタクト40’は、このような縦に長いコンタクト収容室に適する。
【0036】
本参考実施態様におけるコンタクト40’は、図6に示される第1の参考実施態様におけるコンタクト40と比較して、コンタクト40の第2のバネ部分45と第4のバネ部分49が本質的に異なるのみでその他の構成は略同じである。
【0037】
本参考実施態様における第2のバネ部分は、第1の接点部分44’から下方及び後方に向けて折り返されて延びる(第1の接点部分44’に対して斜め後方下向きに延びる)部分45’aと該部分45’aからさらに斜め前方下方に折り曲げられる部分45’bとを含んでいる。したがって、コンタクト40’の第2のバネ部分は、図11に示されるように、略逆「く」の字状(「く」の字を裏返した形状)に形成される。本参考実施態様におけるコンタクト40’の第2のバネ部分は、部分45’bの先端に第1の接触部分46’を含んでいる。同様に、第4のバネ部分は、第2の接点部分48’から上方及び後方に向けて折り返されて延びる(第2の接点部分48’に対して斜め後方上向きに延びる)部分49’aと該部分49’aからさらに斜め前方上方に折り曲げられる部分49’bとを含んでいる。したがって、コンタクト40’の第4のバネ部分も、略逆「く」の字状に形成される。また、本参考実施態様における第4のバネ部分は、部分49’bの先端に第2の接触部分51’を含んでいる。
【0038】
コンタクト40’をこのように形成することにより、第2のバネ部分と第4のバネ部分が弾性変形し難くなることを防止し、結果としてコンタクトは高バネ性を維持することができる。
【0039】
次に、以上のように構成されたコンタクト40を備えるICソケット1がプリント配線板60に実装され、続いてICパッケージが装着されたときのコンタクト40の動作について図4、5を参照して説明する。
【0040】
図4に示されるように、本参考実施態様では、ICソケット1がプリント配線板60に実装されると、コンタクト40の第3のバネ部分47が、図4において支持体41の下端31aを中心に時計回りに弾性変形し、それにより、第2の接触部分51が第1の接触部分46に接触する。この時、第2の接点部分48は、プリント配線板60の外部接点に接触している。
【0041】
この状態で、ICパッケージ80がソケット本体20の載置面22a上に案内され、ICパッケージ80の外部接点81がコンタクト40の第1の接点部分44に接触する。続いて、ICパッケージ80が押圧部材10を介して載置面22aに向けて押し下げられと、最初にコンタクト40の第2のバネ部分43が、支持体41の上端41bを中心に図4において反時計回りに弾性変形する。
【0042】
続いて、ICパッケージ80が、図5に示されるように、載置面22aに当接する状態にまで押し下げられ。この時、コンタクト40の第2のバネ部分45は、第1の接点部分44を中心に反時計回りに弾性変形する。また、第3のバネ部分47も図4の状態から若干時計回りに弾性変形するとともに、第4のバネ部分49は、第2の接点部分48を中心に時計回りに弾性変形する。それにより、コンタクト40の支持体41は、図5に示されるように下方に移動する。すなわち、本発明に係るコンタクト40は、コンタクト40自身がソケット本体20のコンタクト収容室25内で移動することで、全てのバネ部43、45、47及び49が弾性変形することを可能とする。
【0043】
このようにして、ICパッケージ80がソケット本体20の載置面22a上に完全に装着されたとき、コンタクト40は、第1乃至4のバネ部43、45、47及び49全てが弾性変形することで高バネ性を発揮し得る。それにより、コンタクト40の第1の接点部分44とICパッケージ80の外部接点81及び第2の接点部分48とプリント配線板60の外部接点との間の電気的接触において所望の接圧を得ることが可能となる。他方、上述したように、コンタクト40の第1の接触部分46と第2の接触部分51とが接触することで短い信号線路を形成するので、本実施態様に係るコンタクト40は、高周波信号のやり取りにも対応可能である。
【0044】
(本発明に係る実施態様)
図13ないし15には、本発明に係るコンタクトを用いたICソケットの実施態様が示されている。
【0045】
本実施態様におけるコンタクト140は、基本的には、第1の参考実施態様におけるコンタクト40と変わるものではない。すなわち、本実施態様におけるコンタクト140は、第1の参考実施態様におけるコンタクト40と比べて、以下の3点で構成が異なるがその他の構成は概ね同じである。
(1)第1の湾曲部分144及び第4のバネ部分149の先端に延びる平坦部分151に、それぞれ、第1の接点部分及び第2の接触部分としての、上に凸の隆起部144a及び151aを形成した点。
(2)第1の接触部分146は湾曲形成されていない、すなわち、第1の接触部分146は斜め後方下向きに延びる第2のバネ部分145の先端である点。
(3)支持体141の係止爪142が斜め後方下向きに切り起こされている点。
本実施例のコンタクト140が、上記3つの相違点を備えることで、ソケット本体120に形成されるコンタクト収容室125は、第1の参考実施態様におけるソケット収容室25と比べて、概ね上下逆に形成されている点で相違するのみで、その構成は実質的に同じである。したがって、ソケット本体120の収容室125及びコンタクト140の詳細な説明は省略する。なお、本実施態様では、第1の参考実施態様において、各構成部品に引用されている番号に100を足して表されている。
【0046】
以上のように構成される本実施態様では、上記第1の参考実施態様に比べて、以下のような利点を有する。
(i)本実施態様において、上記相違点(1)、(2)を備えることで、ICソケットに搭載されるICパッケージと第1の接点部分144aとの間の電気的接触、及び第1の接触部分146と第2の接触部分151aとの間の電気的接触は、いずれもほぼ点接触となる。このような点接触が行われることにより、ゴミなどの絶縁物が挟まれることもなく、安定した電気的接触が得られる。
(ii)また、上記相違点(3)及びソケット収容室125の構成が上下逆に形成されることで、コンタクト140は、ソケット収容室125内に下から収納され、ICソケット120に組み立てられる。このことは、多数のコンタクトをICソケットのコンタクト収容室に組み込むことを容易にする。
【0047】
本実施態様においては、点接触が得られるように第1の接点部分144a及び第2の接触部分151aをいずれも上に凸の隆起部として形成しているが、これに限られるものではない。例えば、図16に示されるように、第2の接触部分151は、第1の参考実施態様と同じく平坦なままとし、第2のバネ部分145に続く第1の接触部分146’を下の凸の形状としてもよい。このように構成しても、第1の接触部分146’と第2の接触部分151との間の電気的接触が点接触となる。なお、本実施態様では、第1の接触部分146’を所定の角度を持つ先端が尖った三角形状としているが、先端が丸い円弧形状であってもよい。さらに、図17に示されるように、第1の接触部分146”を、下に凸の部分を2つ持つ2点接触型としてもよい。
【0048】
また、図16、17に示されるように、第3の湾曲部分148に第2の接点部分として下に凸の隆起部148aを形成してもよい。それにより、コンタクトとプリント配線板との間の電気的接触も点接触となる。
【符号の説明】
【0049】
1 ICソケット
10 押圧部材
20 ソケット本体
22 ICパッケージ載置凹部
22a 載置面(ICパッケージ載置凹部底面)
23 (ソケット本体の)底面
25 コンタクト収容室
26 取り付け溝
31 係止溝
33 第2の規制壁
34 第1の規制壁
40 コンタクト
41 支持体
42 係止爪
43 第1のバネ部材
44 第1の接点部分
45 第2のバネ部材
46 第1の接触部材
47 第2のバネ部材
48 第2の接点部分
49 第4のバネ部材
51 第2の接触部分
60 プリント配線板
80 集積回路パッケージ(ICパッケージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に延びる支持体と、
前記支持体の上端から斜め前方上方に延び、先端部に集積回路パッケージと接触する第1の接点部分を有する第1のバネ部分と、
前記第1の接点部分から折り曲げられ斜め後方下方に延び、先端部に第1の接触部分を有する第2のバネ部分と、
前記支持体の下端から斜め前方下方に延び、先端部にプリント配線板と接触する第2の接点部分を有し、前記支持体を挟んで前記第1のバネ部分と対をなす第3のバネ部分と、
前記第2の接点部分から折り曲げられ斜め後方上方に延び、先端部に前記第1の接触部分に接触可能に配置される第2の接触部分を有する第4のバネ部分と、
を備え、
前記第1の接触部分及び前記第2の接触部分のうち、いずれか一方の接触部分は、平坦に形成され、他方の接触部分は、前記一方の接触部分に対して凸をなすように形成されていることを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記他方の接触部分の先端は、前記一方の平坦な接触部分に向かって突出する凸の形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記凸の形状が複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコンタクト。
【請求項4】
前記一方の接触部分には、平坦部上に、さらに、上に凸の隆起部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のコンタクト。
【請求項5】
ICパッケージ載置凹部及び該ICパッケージ載置凹部の底面にICパッケージの外部接点に対応して形成される複数のコンタクト収容室を含んでいるソケット本体と、
前記複数のコンタクト収容室それぞれに収容される複数のコンタクトと、
前記ICパッケージ載置凹部に載置されたICパッケージを前記コンタクト収容室に収容されるコンタクトに向けて押圧する押圧部材と、
を備えるICソケットであって、
前記コンタクト各々は、垂直方向に延びる支持体と、前記支持体の上端から斜め前方上方に延び、先端部に集積回路パッケージと接触する第1の接点部分を有する第1のバネ部分と、前記第1の接点部分から折り曲げられ斜め後方下方に延び、先端部に第1の接触部分を有する第2のバネ部分と、前記支持体の下端から斜め前方下方に延び、先端部にプリント配線板と接触する第2の接点部分を有し、前記支持体を挟んで前記第1のバネ部分と対をなす第3のバネ部分と、前記第2の接点部分から折り曲げられ斜め後方上方に延び、先端部に前記第1の接触部分に接触可能に配置される第2の接触部分を有する第4のバネ部分と、を備え、
前記第1の接触部分及び前記第2の接触部分のうち、いずれか一方の接触部分は、平坦に形成され、他方の接触部分は、前記一方の接触部分に対して凸をなすように形成されていることを特徴とするICソケット。
【請求項6】
前記他方の接触部分の先端は、前記一方の平坦な接触部分に向かって突出する凸の形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のコンタクト。
【請求項7】
前記凸の形状が複数形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコンタクト。
【請求項8】
前記一方の接触部分には、平坦部上に、さらに、上に凸の隆起部が形成されることを特徴とする請求項5に記載のコンタクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−69524(P2012−69524A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240467(P2011−240467)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2007−138168(P2007−138168)の分割
【原出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】