説明

コンテナターミナル

【課題】大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供する。
【解決手段】支持ピン14、24、34による連結のうち少なくとも1つをスライド機構10、20、30で構成し、スライド機構10、20、30が、岸壁クレーン1の横行方向xに延伸した支持ピン14、24、34及び支持ピンを把持する膨出部15、25、35を備えた雌側11と、貫通孔16を備え支持ピンに沿って摺動自在に構成した雄側12を有するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどで、コンテナの荷役に使用される岸壁クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーンや門型クレーンによって、船舶、鉄道及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。この岸壁クレーンの地震対策として、クレーンの脚構造物と走行装置の間に免震装置(免振装置ともいう)を設置し、脚構造物に揺脚構造を採用した免震クレーンがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5に、コンテナターミナルに設置した岸壁クレーン1Xを示す。コンテナターミナルは、岸壁クレーン1Xと、岸壁40と、岸壁40に敷設したレール(図示しない)を有している。この岸壁クレーン(以下、クレーンという)1Xは、海側脚と陸側脚を備えた脚構造物3と、脚構造物3で支持するブーム45及びガーダ46を有している。また、脚構造物3と走行装置2Xの間に、積層ゴム等で構成した免震装置41と、脚構造物3の一部を揺脚構造とする枢支ピン44を有している。なお、43はコンテナ、47は荷役装置(トロリ)、48はコンテナ船を示す。また、xはクレーンの横行方向(海陸方向)、zは鉛直方向を示す。
【0004】
次に、このクレーン1Xによる荷役作業について説明する。クレーン1Xは、コンテナ船48に搭載したコンテナ43をトロリ47の吊り具で吊上げ、岸壁40で待機しているトレーラ(図示しない)に搭載する荷役作業を行っている。又はクレーン1Xは、コンテナ43をトレーラからコンテナ船48に積み込む荷役作業を行っている。また、この荷役作業において、クレーン1Xは、岸壁40に沿って(図5の紙面奥又は手前方向に)敷設したレール上を走行装置2Xで移動し、荷下ろしあるいは積み込みの位置を変更しながら荷役作業を行っている。
【0005】
次に、このクレーン1Xの地震発生時の動作について説明する。地震発生時には、免震装置41を固定していたせん断ピン等が破断し、免震装置41が作動する。免震装置41は、地表面の振動からクレーン1Xを絶縁する効果を有する。ここで、免震装置41及び枢支ピン44による揺脚構造は、クレーン1Xの横行方向xの振動を吸収することができる。また、クレーン1Xの走行方向y(図5の紙面奥又は手前方向)の振動は、走行装置2Xがレールに沿って移動して吸収する構成としていた。
【0006】
図6に、クレーン1Xの走行装置2X周辺の側面(yz平面)拡大図を示す。走行装置2Xは、車輪を備えたボギー4Xと、中間イコライザ5Xと、主イコライザ6Xを有している。また、走行装置2Xは、ボギー4Xと中間イコライザ5Xを連通して軸支するボギーピン14Xと、中間イコライザ5Xと主イコライザ6Xを連通して軸支する中間イコライザピン24Xと、主イコライザ6Xと脚連結部材7Xを連通して軸支する主イコライザピン34Xを有している。なお、脚連結部材7Xは、免震装置41を介して脚構造物3に連結している。また、40は岸壁40、yはクレーンの走行方向yを示している。
【0007】
図7に、走行装置2X周辺の正面(xz平面)の端面概略図を示す。この図7は、ボギーピン14X、中間イコライザピン24X、及び主イコライザピン34X(以下、総称して支持ピンという)の端面図をつなぎ合わせたものである。図7Aに通常時の走行装置2Xの状態を示し、図7Bに地震発生時の走行装置2Xの状態を示す。Cは、ボギー4X、中間イコライザ5X、主イコライザ6X、脚連結部材7X及び免震装置41の規準線Cを示している。また、dXは、免震装置41が最大に変位した際の変位長さdXを示している。
【0008】
しかしながら、上記の岸壁クレーン1Xは、大規模地震が発生した場合、横行方向xの変位を十分に吸収することができないという問題を有している。ここで、大規模地震とは、例えば、平成18年の港湾法改正により想定されている地震波であり、レベル2地震動と呼ばれるものである。このレベル2地震動とは、土木学会の第三次提言により、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動と定義されている。
【0009】
この岸壁クレーン1Xの有する従来の免震装置41は、横行方向xに±300mm程度の変位長さdXを許容することができる。しかし、大規模地震発生時には、岸壁クレーン1Xが許容すべき変位長さは、±1000mm程度又はそれ以上となる。そのため、従来の岸壁クレーン1Xは、大規模地震に対して十分な免震効果を発揮することができないという問題を有している。ここで、クレーン1Xの最大の変位長さdXが不十分である場合は、クレーン1Xが転倒、又は走行装置2Xの破壊等の事故につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−44168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、岸壁クレーンにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供することである。特に、±1000mm以上の変位長さを、吸収することのできる岸壁クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、少なくともボギーとイコライザを備えた走行装置と、前記走行装置と脚連結部材を介して連結した脚構造物を有し、前記ボギーと前記イコライザ、及び前記イコライザと前記脚連結部材を支持ピンで連結した岸壁クレーンにおいて、前記支持ピンによる連結のうち少なくとも1つをスライド機構で構成し、前記スライド機構が、岸壁クレーンの横行方向に延伸した支持ピン及び支持ピンを把持する膨出部を備えた雌側と、貫通孔を備え前記支持ピンに沿って摺動自在に構成した雄側を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成により、大規模地震が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故を抑制することができる。これは、クレーンが、スライド機構の変位長さ分だけ、横行方向に変位することができるためである。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、ボギーと複数のイコライザを備えた走行装置と、前記走行装置と脚連結部材を介して連結した脚構造物を有し、前記ボギーと前記イコライザ、前記イコライザと他の前記イコライザ、及び前記イコライザと前記脚連結部材を支持ピンで連結した岸壁クレーンにおいて、前記支持ピンによる連結のうち少なくとも1つをスライド機構で構成し、前記スライド機構が、岸壁クレーンの横行方向に延伸した支持ピン及び支持ピンを把持する膨出部を備えた雌側と、貫通孔を備え前記支持ピンに沿って摺動自在に構成した雄側を有していることを特徴とする。
【0015】
この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。なお、クレーンの走行装
置には、例えば中間イコライザ、主イコライザと呼ばれるものや、中間イコライザと主イコライザの間に設置するイコライザ等、互いに支持ピンで連結した複数のイコライザを備えたものもある。
【0016】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記スライド機構が、減衰機構を有しており、前記減衰機構を、前記貫通孔の側壁部に設置され、且つ前記支持ピンに接触する抵抗部材で構成したことを特徴とする。この構成により、クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故を、更に抑制することができる。これは、減衰機構が、クレーンの横行方向の振動を減衰することができるためである。
【0017】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、前記走行装置の横行方向にそれぞれ設置した補助脚を有しており、地震発生時に、前記補助脚が岸壁に接地するように構成したことを特徴とする。この構成により、クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故の発生を更に抑制することができる。これは、補助脚が、接地してクレーンを支持し、クレーンの安定性を向上することができるためである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る岸壁クレーンによれば、岸壁クレーンにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供することができる。特に、±1000mm以上の変位長さを、吸収することのできる岸壁クレーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の端面を示した概略図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の端面を示した概略図である。
【図3】本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の端面を示した概略図である。
【図4】本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の端面を示した概略図である。
【図5】従来の岸壁クレーンを示した図である。
【図6】従来の岸壁クレーンの走行装置の側面を示した図である。
【図7】従来の岸壁クレーンの走行装置の正面を示した端面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーン1の走行装置2の正面(xz平面)の端面概略図を示す。走行装置2は、車輪を備えたボギー4と、中間イコライザ5と、主イコライザ6を有している。このボギー4、中間イコライザ5、主イコライザ6、及び脚連結部材7は、それぞれ第1スライド機構10、第2スライド機構20、及び第3スライド機構30で連結している。
【0021】
この第1スライド機構10は、雌側11と雄側12で構成している。雌側11は、中間イコライザ5の下端部に配置した第1支持ピン(以下、ボギーピンという)14と、ボギーピン14を把持する第1膨出部15を有している。雄側12は、ボギー4に形成した貫通孔16を有している。このボギー4は、ボギーピン14に沿って摺動可能に構成している。なお、17は、第1スライド機構10の動作(摺動)を固定する固定ピン17を示している。
【0022】
同様に、第2スライド機構20は、主イコライザ6の下端部に形成した雌側と、中間イコライザ5の上端部に形成した雄側で構成している。雌側は、第2支持ピン(以下、中間イコライザピンという)24と、第2膨出部25と、固定ピンを有している。雄側は、中間イコライザ5に形成した貫通孔を有している。
【0023】
また、第3スライド機構30は、脚連結部材7の下端部に形成した雌側と、主イコライザ6の上端部に形成した雄側で構成している。雌側は、第3支持ピン(以下、主イコライザピンという)34と、第3膨出部35と、固定ピンを有している。雄側は、主イコライザ6に形成した貫通孔を有している。
【0024】
なお、上記のクレーン1の走行装置2は、ボギー4、中間イコライザ5、及び主イコライザ6の3段構造とし、第1乃至第3の3段のスライド機構10、20、30を設置しているが、本発明は上記に限られない。走行装置に設置した支持ピンのうち、少なくとも1つを利用してスライド機構を構成すればよい。つまり、本発明は、中間イコライザを有さないクレーンや、ボギー及び主イコライザに加えて2つの中間イコライザを有するクレーンであっても、少なくとも1つのスライド機構を設置して構成することができる。
【0025】
更に、スライド機構10、20、30は、雌側及び雄側の上下方向を変えて、適用することもできる。
【0026】
図2に、地震発生時の走行装置2の正面の端面概略図を示す。第1スライド機構10の雌側は、中間イコライザ5の下端部に設置したボギーピン14と、ボギーピン14を把持する第1膨出部15を有している。雄側は、ボギー4に形成した貫通孔16を有している。また、第2スライド機構20の雌側は、主イコライザ6の下端部に設置した中間イコライザピン24と、中間イコライザピン24を把持する第2膨出部25を有している。雄側は、中間イコライザ5に形成した貫通孔26を有している。更に、第3スライド機構30の雌側は、脚連結部材7の下端部に設置した主イコライザピン34と、主イコライザピン34を把持する第3膨出部35を有している。雄側は、主イコライザ6に形成した貫通孔36を有している。
【0027】
次に、地震発生時の岸壁クレーン1の動作について説明する。まず、例えばレベル2地震動等の地震が発生すると、各スライド機構10、20、30に設置した固定ピン(図1参照)が破断して、スライド機構が作動する。各スライド機構は、独立して横行方向xにそれぞれ摺動する。図2は、走行装置2が図2右方に最大限変位した状態を示している。ここで、Cは走行装置2の初期位置を示す基準線Cを示している。dは、走行装置2が最大に変位した際の変位長さdを示している。例えば、1つのスライド機構が±500mm変位できるように構成すると、この走行装置2は、スライド機構10、20、30により、最大で±1500mm変位することができる。
【0028】
上記の構成により、岸壁クレーン1は、大規模地震(例えばレベル2震動)に対応することができる。具体的には、横行方向xに大きな変位長さd(例えば±1000mm以上)を有する岸壁クレーン1とすることができる。そのため、大規模地震が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故を防止することができる。特に、複数のスライド機構を有するクレーン1は、各支持ピン14、24、34のそれぞれの変位長さの合算分、変位することができる。また、従来の免震装置に比べ、スライド機構は設置位置が低い(岸壁に近い)ため、メンテナンス性を向上することができる。この構成により、地震発生時におけるスライド機構の動作を確実なものとすることができる。
【0029】
なお、支持ピン14、24、34は、膨出部15、25、35により上方及び側方を覆われる構成となるため、腐食等の発生を抑制することができる。更に、膨出部は、この支持ピンの下方も覆うように構成することが望ましい。
【0030】
なお、各スライド機構10、20、30に、摺動を減衰するための減衰機構を設置することが望ましい。この減衰機構は、例えば、減衰機構を、貫通孔16、26、36内の側壁部の少なくとも一箇所に設置した抵抗部材で構成してもよい。この抵抗部材は、支持ピン14、24、34の摺動に抵抗を与えるように構成する。また、減衰機構を、ダンパ構造、又はバネ構造とダンパ構造の組み合わせ等で構成することができる。この減衰機構は、例えば、ボギー4と第1膨出部15の間等に、少なくとも1つ設置することが望ましい。
【0031】
また、各支持ピン14、24、34に、支持ピンを貫通する固定ピン(図1参照)を設置することが望ましい。この固定ピンにより、通常時にスライド機構を確実に固定することができる。つまり、通常の荷役作業時には、雌側に対して雄側が摺動しない。ここで、固定ピンを設置する代わりに、バネ構造とダンパ構造を組み合わせて構成した減衰機構を、ロック機構付油圧シリンダで構成してもよい。この油圧シリンダは、通常時はロック機構により伸縮しない。地震発生時に、緊急地震速報又は地震計による検知信号等を入力信号として、このロック機構が解除される。このロック機構の解除により、減衰機構が伸縮し、且つスライド機構の摺動を減衰する。
【0032】
更に、支持ピン14、24、34の長さは、スライド機構の設置段数及び想定される地震動により任意に決定することができる。例えば、クレーンが3段のスライド機構を有する場合(図1、2参照)には、支持ピンの長さは250mm〜1500mm、望ましくは300mm〜1250mm、更に望ましくは350mm〜1000mmとする。また、例えば、クレーンが1段のスライド機構を有する場合には、支持ピンの長さは600mm〜4000mm、望ましくは1300mm〜3500mm、更に望ましくは2000〜3000mmとする。この支持ピンの長さが短いと、クレーンの十分な変位長さを確保することが困難となる。他方、支持ピンの長さが長いと、変位したクレーンの転倒事故が発生する可能性がある。
【0033】
図3に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1aの走行装置2aの正面(xz平面)の端面概略図を示す。走行装置2aは、第1スライド機構10a、第2スライド機構20a、及び第3スライド機構30aを有している。各スライド機構は、下方が雌側、上方が雄側となるように構成している。この第1スライド機構10aの雌側は、ボギー4aの上端部に配置したボギーピン14aと、ボギーピン14aを把持する第1膨出部15aを有している。雄側は、中間イコライザに形成した貫通孔16aを有している。ここで、膨出部15aは、下方から上方に向かって拡開した形状に形成している。
【0034】
同様に、第2スライド機構20aの雌側は、中間イコライザの上端部に配置した中間イコライザピン24aと、中間イコライザピン24aを把持する第2膨出部25aを有している。雄側は、主イコライザに形成した貫通孔26aを有している。
【0035】
また、第3スライド機構30aの雌側は、主イコライザの上端部に配置した主イコライザピン34aと、主イコライザピン34aを把持する第3膨出部35aを有している。雄側は、脚連結部材7aに形成した貫通孔36aを有している。
【0036】
なお、脚連結部材7aと脚構造物3の間には、免震装置41を設置している。また、各支持ピン14a、24a、34aは、異なる長さとなるように構成することができる。ここで、クレーンが有する各走行装置において、同じ高さとなる支持ピンは、同一の長さと
することが望ましい。
【0037】
上記の構成により、岸壁クレーン1aは、走行装置2aにおける各スライド機構の変位長さと、免震装置41の変位長さを合算した変位長さを得ることができる。つまり、クレーン1aの耐震性能を向上することができる。
【0038】
図4に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1bの走行装置2bの正面(xz平面)の端面概略図を示す。クレーン1bは、走行装置2bと、走行装置2bに脚連結部材7bを介して連結した脚構造物3bを有している。走行装置2bは、第1スライド機構10bと、第2スライド機構20bと、第3スライド機構30bを有している。
【0039】
第1スライド機構10bは、陸側(図4左方)又は海側(図4右方)に突出したボギーピン(支持ピン)14bと、膨出部15bを有している。第2スライド機構20bは、第1スライド機構10bとは逆に突出した中間イコライザピン(支持ピン)24bと、膨出部25bを有している。第3スライド機構30bは、規準線Cを中心とした主イコライザピン34bと、膨出部35bを有している。
【0040】
また、ボギー4bは、横行方向x(海側及び陸側)にそれぞれ突設した補助脚(以下、アウトリガという)8を有している。このアウトリガ8は、通常時は岸壁40の表面と接触しない高さに維持されている。なお、第2スライド機構20bの支持ピン24bは、トレーラ42及びコンテナ43よりも高い位置となるように構成している。
【0041】
次に、地震発生時の岸壁クレーン1bの動作について説明する。まず、例えばレベル2地震動等の地震が発生すると、各スライド機構10b、20b、30bに設置した固定ピン(図1参照)等の破断により、スライド機構が動作を開始する。同時に、アウトリガ8が、緊急地震速報又は地震計による検知信号を入力信号として、降下を開始し、岸壁40に接地する。
【0042】
この構成により、コンテナターミナル内を走行するトレーラ42と、スライド機構10bの衝突を防止することができる。これは、低い位置にある第1スライド機構10bが、トレーラ42へ接近する方向に移動しないためである。また、アウトリガ8を接地する構成により、クレーン1bの変位長さdが大きい場合であっても、クレーン1がバランスを失い転倒する事故を防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、1a、1b 岸壁クレーン(クレーン)
2、2a、2b 走行装置
3 脚構造物
4 ボギー
5 中間イコライザ
6 主イコライザ
7、7a、7b 脚連結部材
8 補助脚(アウトリガ)
10、10a、10b 第1スライド機構
11 雌側
12 雄側
14、14a、14b 第1支持ピン(ボギーピン)
15、15a、15b 第1膨出部
16 貫通孔
20、20a、20b 第2スライド機構
24、24a、24b 第2支持ピン(中間イコライザピン)
30、30a、30b 第3スライド機構
34、34a、34b 第3支持ピン(主イコライザピン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともボギーとイコライザを備えた走行装置と、前記走行装置と脚連結部材を介して連結した脚構造物を有し、前記ボギーと前記イコライザ、及び前記イコライザと前記脚連結部材を支持ピンで連結した岸壁クレーンにおいて、
前記支持ピンによる連結のうち少なくとも1つをスライド機構で構成し、
前記スライド機構が、岸壁クレーンの横行方向に延伸した支持ピン及び支持ピンを把持する膨出部を備えた雌側と、貫通孔を備え前記支持ピンに沿って摺動自在に構成した雄側を有していることを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
ボギーと複数のイコライザを備えた走行装置と、前記走行装置と脚連結部材を介して連結した脚構造物を有し、前記ボギーと前記イコライザ、前記イコライザと他の前記イコライザ、及び前記イコライザと前記脚連結部材を支持ピンで連結した岸壁クレーンにおいて、
前記支持ピンによる連結のうち少なくとも1つをスライド機構で構成し、
前記スライド機構が、岸壁クレーンの横行方向に延伸した支持ピン及び支持ピンを把持する膨出部を備えた雌側と、貫通孔を備え前記支持ピンに沿って摺動自在に構成した雄側を有していることを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項3】
前記スライド機構が、減衰機構を有しており、
前記減衰機構を、前記貫通孔の側壁部に設置され、且つ前記支持ピンに接触する抵抗部材で構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の岸壁クレーン。
【請求項4】
前記岸壁クレーンが、前記走行装置の横行方向にそれぞれ設置した補助脚を有しており、
地震発生時に、前記補助脚が岸壁に接地するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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