説明

コンテナ用冷凍装置

【課題】ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下で、冷凍サイクルの高圧側の圧力を高めつつ冷凍サイクルの低圧側の圧力を下げる制御を行うコンテナ用冷凍装置において、高段側の圧縮機から吐出される冷媒の温度を低く抑えることを可能にする。
【解決手段】エコノマイザ回路50は、ガスクーラ27を、低段圧縮機21と高段圧縮機22との間に合流させる回路である。このエコノマイザ回路50には、バイパス開閉弁54を有しており、エコノマイザ熱交換器41をバイパスさせるようにバイパス回路53が設けられている。制御ユニット7は、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒温度が上昇した場合に、バイパス開閉弁54を開状態にすることで、吐出冷媒温度を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ用冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを行う冷凍装置には、コンテナの庫内を冷却するコンテナ用冷凍装置がある。このような冷凍装置としては、例えば、特許文献1(特開2011―112270号公報)に記載のように、ガスクーラを庫外に配置し、蒸発器を庫内に配置したコンテナ用冷凍装置が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したようなコンテナ用冷凍装置は、様々な環境下で、様々な制御条件下で用いられる。例えば、コンテナ用冷凍装置は、庫外の気温が非常に高い環境下であって、かつ、庫内を冷蔵させるのでなく冷凍させるような制御条件下で用いられることがある。
【0004】
このように、ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下では、蒸発器での能力を得るために、多段圧縮冷凍サイクルにおける高圧側の圧力を高める制御が行われる。
【0005】
さらに、庫内を冷凍させるために蒸発器を用いる等、蒸発圧力が低くなるような制御が行われる場合には、冷凍サイクルにおける低圧側の圧力を下げる制御が行われる。
【0006】
このように、ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下で、多段圧縮冷凍サイクルの高圧側の圧力を高めつつ冷凍サイクルの低圧側の圧力を下げる制御を行うコンテナ用冷凍装置では、高段側の圧縮機から吐出される冷媒温度が異常に高くなってしまう。このように、高段側の圧縮機から吐出される冷媒温度が高くなると、冷凍機油が劣化してまったり、圧縮機に用いられているモータ等が焼損してしまう等の問題がある。
【0007】
他方、多段圧縮冷凍サイクルでは、冷凍サイクルのガスクーラを通過した冷媒の一部をエコノマイザ熱交換器を通過させ、その冷媒を、高圧側と低圧側との間の中間圧力の部分に対してインジェクションさせることにより、冷凍能力を向上させることができる。この多段圧縮冷凍サイクルにおいて、冷凍サイクルの中間圧力の部分に冷媒がインジェクションさせることで、上記の高段側の圧縮機から吐出される冷媒温度を下げることが考えられる。
【0008】
ところが、ガスクーラに供給する冷却媒体の温度が高い環境下で、冷凍サイクルの高圧側の圧力を高めつつ冷凍サイクルの低圧側の圧力を下げる制御を行っているコンテナ用冷凍装置では、冷凍サイクルの中間圧力の部分にインジェクションされる冷媒(すなわち、エコノマイザ熱交換器を通過した後の冷媒)は、すでに大きな過熱度を有している。このため、高段側の圧縮機に吸入される冷媒温度を下げる効果が十分でなく、高段側の圧縮機から吐出される冷媒の温度を十分に低減させることができない。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下で、冷凍サイクルの高圧側の圧力を高めつつ冷凍サイクルの低圧側の圧力を下げる制御を行うコンテナ用冷凍装置において、高段圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1観点に係るコンテナ用冷凍装置は、低段圧縮機構と、高段圧縮機構と、ガスクーラと、膨張機構および蒸発器を有するコンテナ用冷凍装置であって、エコノマイザ回路、エコノマイザ熱交換器、バイパス回路、バイパス弁、中間膨張弁、検出部、および、制御部を備えている。エコノマイザ回路は、ガスクーラから蒸発器側に向かう冷媒の一部を、低段圧縮機構から高段圧縮機構に向かう冷媒に合流させるように導く。エコノマイザ熱交換器は、エコノマイザ回路を流れる冷媒と、ガスクーラから蒸発器側に向かう冷媒と、の間で熱交換を行わせる。バイパス回路は、エコノマイザ回路の途中のエコノマイザ熱交換器の上流側部分と下流側部分とを、エコノマイザ熱交換器を介することなく接続する。バイパス弁は、開閉状態の切換えが可能、もしくは、弁開度を調節が可能である。このバイパス弁は、バイパス回路の途中に設けられている。中間膨張弁は、エコノマイザ回路の途中に設けられている。検出部は、高段圧縮機構から吐出される冷媒の温度もしくは過熱度の値、もしくは、高段圧縮機構に吸入される冷媒の温度もしくは過熱度の値、または、これらの値のいずれかに等価な物理量を検出する。制御部は、検出部の検出値が上昇することによって第1所定条件を満たさなくなった場合に、低段圧縮機構から高段圧縮機構に向かう冷媒に対してエコノマイザ回路から合流する冷媒合流量を増大させるように、中間膨張弁の弁開度を調節し、かつ、バイパス弁の開閉状態を切換えるもしくはバイパス弁の弁開度を調節する。なお、上記高段圧縮機構と低段圧縮機構とは、共通の駆動軸を有しており共通に駆動されるものであってもよいし、個別の駆動軸を有するものであり別々に駆動されるものであってもよい。圧縮機構は、高段圧縮機構と低段圧縮機構の2つだけでなく、3つ以上の多段圧縮機構を有して構成されていてもよい。
【0011】
このコンテナ用冷凍装置では、冷凍サイクルのガスクーラを通過した冷媒の一部をエコノマイザ熱交換器を通過させ、その冷媒を、高圧側と低圧側との間の中間圧力の部分に対してインジェクションさせることにより、冷凍能力を向上させることができる。
【0012】
なお、一般の冷凍装置において、ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下であって、かつ、冷凍等の目的で低い蒸発圧力で冷凍サイクルが行われる制御条件下では、高段圧縮機構から吐出される冷媒の温度の異常上昇が生じうる。これに対して、このコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒によって、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を低くする冷却効果が得られる。
【0013】
さらに、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒が、エコノマイザ熱交換器での熱交換後に過熱状態になる場合には、上記冷却効果が不十分になる状態が生じうる。これに対して、このコンテナ用冷凍装置では、さらに、エコノマイザ回路におけるエコノマイザ熱交換器の上流側と下流側とを接続するバイパス回路が設けられており、エコノマイザ回路を流れる冷媒量のうち、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒量を下げることができる。これにより、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒が、エコノマイザ熱交換器を通過することで熱交換される熱交換量を低減することができる。したがって、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒によって、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を低くする冷却効果をさらに高めることができる。
【0014】
本発明の第2観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第1観点に係るコンテナ用冷凍装置において、制御部は、中間膨張弁の弁開度が所定開度以上である状態で、検出部の検出値が上昇することによって第1所定条件を満たさなくなった場合に、閉状態から開状態に切換えるかもしくは弁開度が上がるようにバイパス弁を制御する。なお、この中間膨張弁の所定開度は、全開であってもよいし、全開よりも開度の小さく全閉ではない開度であってもよい。
【0015】
このコンテナ用冷凍装置では、中間膨張弁の弁開度が所定開度以上とすることで、エコノマイザ回路を通じた、高圧側と低圧側との間の中間圧力の部分に対する冷媒のインジェクションが可能になる。そして、エコノマイザ熱交換器内を通過することによって、中間圧力の部分に対してインジェクションさせる冷媒が暖められてしまうことを抑制できる。これにより、高段圧縮機構の吸入冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を下げることが可能になる。
【0016】
本発明の第3観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第2観点に係るコンテナ用冷凍装置において、制御部は、中間膨張弁の弁開度が全開である状態で、検出部の検出値が上昇することによって第1所定条件を満たさなくなった場合に、バイパス弁を制御して、閉状態から開状態に切換えるか、もしくは、弁開度を上げる。
【0017】
このコンテナ用冷凍装置では、中間膨張弁の弁開度が全開状態となっており、これ以上中間膨張弁の弁開度を上げることができない状態であるため、エコノマイザ回路を通じた中間圧力の部分に対する冷媒のインジェクション量をさらに高めることができない。
【0018】
これに対して、ここでは、制御部が、バイパス弁を制御して、閉状態から開状態に切換えるか、もしくは、弁開度を上げる。このため、エコノマイザ熱交換器内を通過することによって、中間圧力の部分に対してインジェクションさせる冷媒が暖められてしまうことを抑制することができる。これにより、中間膨張弁の弁開度が全開状態となっており、これ以上中間膨張弁の弁開度を上げることができない状態であっても、高段圧縮機構の吸入冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を下げることが可能になる。
【0019】
本発明の第4観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るコンテナ用冷凍装置において、バイパス弁は、開閉弁である。中間膨張弁は、エコノマイザ回路の途中であって、バイパス回路とエコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分よりもさらに上流側に設けられている。
【0020】
このコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ回路を流れる冷媒流量を、中間膨張弁の弁開度制御によって調節することができる。そして、この中間膨張弁は、エコノマイザ回路の途中であって、バイパス回路とエコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分よりもさらに上流側に設けられている。このため、中間膨張弁を通過した冷媒のうち、エコノマイザ熱交換器側に流れようとする冷媒は、エコノマイザ熱交換器内を流れるための圧力損失を受ける。他方、中間膨張弁を通過した冷媒のうち、バイパス弁が全開状態であるバイパス回路側に流れようとする冷媒は、上記エコノマイザ熱交換器内を流れようとする冷媒に比べて圧力損失が小さい。このため、バイパス弁を安価な開閉弁とした構成であっても、エコノマイザ熱交換器側を流れる冷媒量を抑えつつ、バイパス回路を流れる冷媒量を増大させることができる。
【0021】
本発明の第5観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るコンテナ用冷凍装置において、バイパス弁は、通過する冷媒流量を調節可能な膨張弁である。中間膨張弁は、エコノマイザ回路の途中であって、バイパス回路とエコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分と、エコノマイザ熱交換器の入口と、の間に設けられている。
【0022】
このコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ回路を流れる冷媒流量を、中間膨張弁の弁開度制御によって調節することができる。そして、この中間膨張弁は、エコノマイザ回路の途中であって、バイパス回路とエコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分と、エコノマイザ熱交換器の入口と、の間に設けられている。このため、エコノマイザ回路を流れる冷媒のうちエコノマイザ熱交換器側を流れる冷媒量とバイパス回路側を流れる冷媒量との合計量は、中間膨張弁の弁開度制御とバイパス弁の弁開度制御によって調節することができる。しかも、エコノマイザ回路を流れる冷媒のうち、エコノマイザ熱交換器側を流れる冷媒量とバイパス回路側を流れる冷媒量との比率についても、中間膨張弁の弁開度制御とバイパス弁の弁開度制御によって調節することができる。これにより、エコノマイザ回路を流れる冷媒量の調整により得られるエコノマイザ効果を調整しつつ、且つ、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒によって高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を低くする冷却効果の程度も調節することが可能になる。
【0023】
なお、上記第5観点のコンテナ用冷凍装置では、バイパス弁が開閉弁である場合と比べて、以下の効果が得られる。例えば、バイパス弁が開閉弁であり閉状態である場合において、中間膨張弁が全開状態でありこれ以上弁開度を上げることができない状態で、冷却効果を高めようとすると、閉状態であったバイパス弁を、全開状態に切り換えるしかない。この場合には、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒量を微調節することが困難になってしまい、冷却効果が過剰になってしまったり、詳細な冷却効果の調節が困難になる。これに対して、上記第5観点のコンテナ用冷凍装置では、冷却効果をより詳細に調節することが可能になっている。
【0024】
本発明の第6観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第5観点に係るコンテナ用冷凍装置において、制御部は、第1制御を行う。第1制御は、検出部の検出値が上昇することによって第1所定条件を満たさなくなった時点で、中間膨張弁が非全開状態であれば、中間膨張弁の弁開度を上げ、中間膨張弁が全開状態であれば、バイパス弁の弁開度を上げる制御である。
【0025】
このコンテナ用冷凍装置では、第1制御を行うことで、中間膨張弁かバイパス弁のいずれかの弁開度が上げられることにより、バイパス回路の冷媒流量を増大させることができる。ここで、低段圧縮機構から高段圧縮機構に向かう冷媒に対してエコノマイザ回路を通じてインジェクションされる冷媒合流量を増大せる場合に、中間膨張弁の開度が全開になるまではバイパス弁の開度を上げないようにすることができる。このため、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒量をできるだけ確保させることができる。これにより、高段圧縮機構から吐出される冷媒温度が異常上昇することを防ぎつつ、できるだけエコノマイザ効果を得ることが可能になる。
【0026】
本発明の第7観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第6観点に係るコンテナ用冷凍装置において、制御部は、第2制御を行う。第2制御では、制御部は、第1制御を行った後に、中間膨張弁が全開状態になっているにもかかわらず、検出部の検出値の低下程度が第2所定条件を満たさない場合に、中間膨張弁の弁開度を下げる動作と、バイパス弁の弁開度を上げる動作と、が同時に行う。
【0027】
このコンテナ用冷凍装置では、第1制御を行って、中間膨張弁が全開状態になっている状態で、高段圧縮機構から吐出される冷媒温度をさらに低下させたい場合が生じうる。ここで第2制御を行うことで、低段圧縮機構から高段圧縮機構に向かう冷媒に対してエコノマイザ回路を通過してインジェクションされる冷媒について、エコノマイザ熱交換器を通過する際の熱交換量を小さく抑えることができる。これにより、インジェクションされる冷媒の状態について、さらに、過熱度を下げる、もしくは、乾き度を下げることができる。しかも、中間膨張弁の弁開度とバイパス弁の弁開度を少しずつ調節することにより、インジェクションされる冷媒の過熱度や乾き度を微調整することが可能である。このため、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒流量の低下に伴うエコノマイザ効果の低下の程度を小さく抑えながら、高段圧縮機構から吐出される冷媒温度を低下させることが可能になる。
【0028】
本発明の第8観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第7観点に係るコンテナ用冷凍装置において、制御部は、第3制御を行う。第3制御では、制御部は、第2制御を行った後に検出部の検出値の低下程度が第2所定条件を満たした場合に、中間膨張弁の弁開度を上げる動作と、バイパス弁の弁開度を下げる動作と、を同時に行う。
【0029】
このコンテナ用冷凍装置では、低段圧縮機構と高段圧縮機構との間にインジェクションされる冷媒について、エコノマイザ熱交換器を通過する際の熱交換の程度(熱交換量)を高めることができる。このため、エコノマイザ熱交換器側を通過する冷媒量とバイパス回路側を通過する冷媒量とを調節してすることで高段圧縮機構が吐出する冷媒の温度を低く維持しながら、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒流量を増大させることによって、エコノマイザ効果を増大させることができる。
【0030】
本発明の第9観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第1観点から第8観点のいずれかに係るコンテナ用冷凍装置において、低段圧縮機構の吐出側から高段圧縮機構の吸入側に向かう冷媒を冷却させるインタークーラをさらに備えている。
【0031】
このコンテナ用冷凍装置では、低段圧縮機構から吐出した冷媒は、インタークーラを通過することで冷却される。このため、高段圧縮機構が吸入する冷媒の温度を低下させることができる。これにより、高段圧縮機構が吐出する冷媒の温度を低下させることが可能になる。
【0032】
本発明の第10観点に係るコンテナ用冷凍装置は、第1観点から第9観点のいずれかに係るコンテナ用冷凍装置において、冷媒は、二酸化炭素冷媒である。
【0033】
このコンテナ用冷凍装置では、二酸化炭素を冷媒として用いている。このため、高段圧縮機構から吐出される冷媒の圧力が臨界圧力を超えて超臨界状態となるような冷凍サイクルが行われることがあり、高段圧縮機構から吐出される冷媒は、高温になりやすい。これに対して、このコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度が高温となる条件下で運転される冷媒が用いられた場合であっても、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度の異常上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の第1観点に係るコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を低くする冷却効果をさらに高めることができる。
【0035】
本発明の第2観点に係るコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構の吸入冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を下げることが可能になる。
【0036】
本発明の第3観点に係るコンテナ用冷凍装置では、中間膨張弁の弁開度が全開状態となっており、これ以上中間膨張弁の弁開度を上げることができない状態であっても、高段圧縮機構の吸入冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を下げることが可能になる。
【0037】
本発明の第4観点に係るコンテナ用冷凍装置では、バイパス弁を安価な開閉弁とした構成であっても、エコノマイザ熱交換器側を流れる冷媒量を抑えつつ、バイパス回路を流れる冷媒量を増大させることができる。
【0038】
本発明の第5観点に係るコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ回路を流れる冷媒量の調整により得られるエコノマイザ効果を調整しつつ、且つ、エコノマイザ回路を通じて高段圧縮機構の吸入側にインジェクションされる冷媒によって高段圧縮機構の吐出冷媒の温度を低くする冷却効果の程度も調節することが可能になる。
【0039】
本発明の第6観点に係るコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構から吐出される冷媒温度が異常上昇することを防ぎつつ、できるだけエコノマイザ効果を得ることが可能になる。
【0040】
本発明の第7観点に係るコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒流量の低下に伴うエコノマイザ効果の低下の程度を小さく抑えながら、高段圧縮機構から吐出される冷媒温度を低下させることが可能になる。
【0041】
本発明の第8観点に係るコンテナ用冷凍装置では、エコノマイザ熱交換器側を通過する冷媒量とバイパス回路側を通過する冷媒量とを調節してすることで高段圧縮機構が吐出する冷媒の温度を低く維持しながら、エコノマイザ熱交換器を通過する冷媒流量を増大させることによって、エコノマイザ効果を増大させることができる。
【0042】
本発明の第9観点に係るコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構が吸入する冷媒の温度を低下させることにより、高段圧縮機構が吐出する冷媒の温度を低下させることが可能になる。
【0043】
本発明の第10観点に係るコンテナ用冷凍装置では、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度が高温となる条件下で運転される冷媒が用いられた場合であっても、高段圧縮機構の吐出冷媒の温度の異常上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンテナ用冷凍装置が採用された冷凍車両の概略構成図である。
【図2】コンテナ用冷凍装置の前面側から見た概略斜視図である。
【図3】コンテナ用冷凍装置の概略配置構成図である。
【図4】コンテナ用冷凍装置の冷媒回路図である。
【図5】バイパス開閉弁が閉状態である通常制御時の冷凍サイクルのPH線図である。
【図6】バイパス開閉弁が開状態で行われる冷凍サイクルのPH線図である。
【図7】システム構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る制御フローチャートである。
【図9】他の実施形態(7−1)に係る冷媒回路図である。
【図10】他の実施形態(7−1)に係る制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の例であるコンテナ用冷凍装置10を挙げて説明する。
【0046】
図1に、コンテナ用冷凍装置が採用された冷凍車両の概略構成図を示す。図2に、コンテナ用冷凍装置10の前面側から見た概略斜視図を示す。図3に、コンテナ用冷凍装置10の概略配置構成図を示す。図4に、コンテナ用冷凍装置10の冷媒回路図を示す。図5に、冷凍サイクルのPH線図を示す。図6に、システム構成のブロック図を示す。
【0047】
(1)冷凍車両1およびコンテナ用冷凍装置10の配置
本実施形態のコンテナ用冷凍装置10は、図1に示すように、冷凍車両1に設けられて利用される。
【0048】
冷凍車両1は、コンテナ2、トレーラ3、および、トラクタ4を備えている。
【0049】
トレーラ3は、コンテナ2およびコンテナ用冷凍装置10を積載している。
【0050】
トラクタ4は、トレーラ3を牽引する。トラクタ4は、トレーラ3に積載されているコンテナ2をコンテナ用冷凍装置10が取り付けられた状態で輸送することができる。
【0051】
コンテナ2は、庫内ISを、庫外OSよりも低い温度に維持するために仕切られた略直方体形状の筐体であり、断熱材を含んで構成されている。コンテナ2は、図2に示すように、天面2c、底面2b、前面2fおよび図示しない背面、左右の側面を有している。このうち、コンテナ2の前面2fには、コンテナ用冷凍装置10が設置されている。なお、コンテナ2の前面2fには、前後方向に開口した換気機構5が設けられており、庫内ISを、新鮮な空気で満たされた状態を維持することが可能になっている。
【0052】
このコンテナ2の内部の前面側には、前後方向に空間を仕切る内部仕切板8が設けられている。この内部仕切板8は、上端部分と天面2cとの間、および、下端部分と底面2bとの間、にそれぞれに隙間が設けられている。この内部仕切板8は、コンテナ2の内部空間を、内部仕切板8と前面2fとの間の内部収納室SP2と、内部仕切板8の背面側の庫内ISと、に区画している。この内部収納室SP2には、後述する蒸発器46、庫内ファン47および庫内ファンモータ47m等が配置されている。この庫内ファンモータ47mが駆動すると、図3に矢印F1、F2で示すように、内部仕切板8の上方の隙間を介して庫内ISから内部収納室SP2へと向かう空気流れF1と、内部仕切板8の下方の隙間を介して内部収納室SP2から庫内ISへと向かう空気流れF2と、が生じる。
【0053】
また、コンテナ2の前面2fは、下方が、背面側に窪んで形成された凹み部分を有している。このコンテナ2の前面2fの凹み部分の前面側には外部仕切板6が設けられている。この外部仕切板6は、上端部分および下端部分において、それぞれ前後方向に連通した開口が設けられている。この外部仕切板6は、その背面側とコンテナ2の前面2fの凹み部分との間の外部収納室SP1と、庫外OSと、に区画している。この外部収納室SP1には、後述する圧縮機構23、ガスクーラ27、インタークーラ24、庫外ファン28、および、庫外ファンモータ28m等が配置されている。この庫外ファンモータ28mが駆動すると、図3に矢印F3、F4で示すように、外部仕切板6の下方の開口を介して庫外OSから外部収納室SP1へと向かう空気流れF3と、外部仕切板6の上方の開口を介して外部収納室SP1から庫外OSへと向かう空気流れF4と、が生じる。
【0054】
コンテナ2の前面2fには、図2に示すように、制御ユニット7が設けられている。この制御ユニット7には、操作パネル73が設けられており、コンテナ2の前面側から操作入力が可能になっている。
【0055】
(2)コンテナ用冷凍装置10の構成
コンテナ用冷凍装置10は、図4および図6に示すように、冷凍サイクルを行うための冷媒回路10a、庫外ファン28、庫外ファンモータ28m、庫内ファン47、庫内ファンモータ47m、制御ユニット7、および、各種センサ61〜69、75〜77、85〜87を有している。
【0056】
冷媒回路10aは、圧縮機構23、インタークーラ24、ガスクーラ27、エコノマイザ回路50、エコノマイザ熱交換器41、液ガス熱交換器42、第1膨張弁43、レシーバ44、第2膨張弁45、蒸発器46、および、各種冷媒配管31、32、33、34、35を有している。この各種冷媒配管には、低段吸入冷媒配管31、低段吐出冷媒配管32、高段吸入冷媒配管33、高段吐出冷媒配管34、高圧側接続冷媒配管35等が含まれる。なお、この冷媒回路10aでは、作動冷媒として二酸化炭素冷媒が用いられている。
【0057】
圧縮機構23は、低段圧縮機21と高段圧縮機22を有している、多段圧縮機構である。低段圧縮機21と高段圧縮機22とは、直列に接続されており、冷媒を順次、加圧する。低段圧縮機21は、吸入側に低段吸入冷媒配管31が接続されており、吐出側に低段吐出冷媒配管32が接続されている。高段圧縮機22は、吸入側に高段吸入冷媒配管33が接続されており、吐出側に高段吐出冷媒配管34が接続されている。この低段圧縮機21と、高段圧縮機22とは、それぞれ駆動源(図示せず)が設けられており、駆動周波数の個別インバータ制御が可能になっている。
【0058】
インタークーラ24は、その内部を流れる冷媒の入口側が低段吐出冷媒配管32に接続されており、出口側が高段吸入冷媒配管33に接続されている。インタークーラ24は、上述したように外部収納室SP1に配置されており、庫外OSの空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を冷却することができる。
【0059】
ガスクーラ27は、内部を流れる冷媒の入口側が高段吐出冷媒配管34に接続されている。ガスクーラ27も、インタークーラ24と同様に、外部収納室SP1に配置されており、庫外OSの空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を冷却することができる。
【0060】
庫外ファン28および庫外ファンモータ28mは、外部収納室SP1に配置されている。庫外ファンモータ28mが制御ユニット7によって駆動制御されることで、庫外ファン28が回転駆動し、インタークーラ24およびガスクーラ27の両方に対して、庫外OSの空気を供給することができる。
【0061】
高段側接続冷媒配管35は、ガスクーラ27の出口側から伸びており、エコノマイザ熱交換器41のエコノマイザ回路50側ではない、主回路側に接続されている。
【0062】
エコノマイザ回路50は、エコノマイザ冷媒配管51、エコノマイザ膨張弁52、バイパス回路53、および、バイパス開閉弁54を有している。エコノマイザ冷媒配管51は、図4に示すように、高段側接続冷媒配管35の途中(ガスクーラ27の出口とエコノマイザ熱交換器41の主回路側の入口との間)であるエコノマイザ入口Fから分岐し、エコノマイザ熱交換器41を介して、高段吸入冷媒配管33の途中(インタークーラ24の出口と高段圧縮機22の吸入側との間)のエコノマイザ出口Dまで伸びている。このエコノマイザ膨張弁52は、エコノマイザ冷媒配管51におけるエコノマイザ入口Fとエコノマイザ熱交換器41の入口との間に設けられている。エコノマイザ膨張弁52は、制御ユニット7によって弁開度がパルス制御されることで、微小開度の調節が可能になっており、通過する冷媒量を調節や、冷媒の減圧程度の調節を行う。バイパス回路53は、エコノマイザ冷媒配管51のうち、エコノマイザ熱交換器41の上流側(一方側)と下流側(他方側)とを接続する冷媒配管である。このバイパス回路53の上流側は、エコノマイザ冷媒配管51のうちエコノマイザ膨張弁52とエコノマイザ熱交換器41の主回路側の入口との間であるバイパス入口Hで分岐し、エコノマイザ冷媒配管51のうちエコノマイザ熱交換器41の出口とエコノマイザ出口Dとの間であるバイパス出口Kまで伸びている。バイパス回路53の途中には、バイパス開閉弁54が設けられており、制御ユニット7によって開状態と閉状態との間で切換制御が行われる。ここで、バイパス回路53のうちバイパス開閉弁54とバイパス出口Kとの間の通過点を「バイパス通過点J」と称する。また、エコノマイザ冷媒配管51のうちエコノマイザ熱交換器41とバイパス出口Kとの間の通過点を「エコノマイザ通過点I」と称する。エコノマイザ熱交換器41は、エコノマイザ入口Fからエコノマイザ回路50に流入してエコノマイザ膨張弁52を通過した冷媒と、エコノマイザ入口Fからエコノマイザ回路50側に流れなかった冷媒(ガスクーラ27を流出した状態の冷媒、主回路側を流れる冷媒)と、の間で、冷媒を混合させることなく、熱交換させる。
【0063】
液ガス熱交換器42は、エコノマイザ熱交換器41を通過した主回路側を流れる冷媒と、低段吸入冷媒配管31を流れる冷媒と、の間で、冷媒を混合させることなく、熱交換させる。
【0064】
第1膨張弁43は、エコノマイザ熱交換器41を通過した主回路側を流れる冷媒が液ガス熱交換器42を通過した位置に設けられている。この第1膨張弁43は、制御ユニット7によって弁開度が制御されることで、通過する冷媒量を調節したり、冷媒の減圧程度を調節することにより冷媒を気液二相状態にする。
【0065】
レシーバ44は、第1膨張弁43を通過した冷媒のうち、液冷媒だけを冷媒回路10aの下流側に流す。なお、レシーバ44においては、冷媒は飽和状態になっている。
【0066】
第2膨張弁45は、レシーバ44を通過した後の液冷媒が通過する位置に設けられている。この第2膨張弁45は、制御ユニット7によって弁開度が制御されることで、通過液冷媒量を調節したり、冷媒の減圧程度の調節を行うことで冷媒を気液二相状態にする。
【0067】
蒸発器46は、内部を流れる冷媒の入口側が第2膨張弁45側となるように、出口側が低段吸入冷媒配管31側となるように配置されている。蒸発器46は、図3に示すように、内部収納室SP2に配置されており、庫内ISから内部収納室SP2に流入する空気と熱交換を行い、内部を流れる気液二相状態の冷媒が蒸発する。
【0068】
庫内ファン47および庫内ファンモータ47mは、内部収納室SP2に配置されている。庫内ファンモータ47mが制御ユニット7によって駆動制御されることで、庫内ファン47が回転駆動し、蒸発器46に対して、上述のように、庫内ISから内部収納室SP2に流入した空気を供給することができる。
【0069】
制御ユニット7は、図2に示すように、コンテナ2の前面側に配置されている。この制御ユニット7は、図6に示すように、CPU71、メモリ72、操作パネル73、出力部74等を備えている。操作パネル73は、ユーザからの各種設定を受け付けるインターフェイスであり、例えば、設定温度や、各種運転モード等の指定を受け付ける。CPU71は、操作パネル73を介して入力された情報や、メモリ72に予め格納されている情報、および、各種センサ61〜69、75〜77、85〜87から得られる情報に基づいて、低段圧縮機21、高段圧縮機22、庫外ファンモータ28m、庫内ファンモータ47m、第1膨張弁43、第2膨張弁45、エコノマイザ膨張弁52、バイパス開閉弁54のそれぞれについて制御を行う。
【0070】
上記各種センサ61〜69、75〜77、85〜87としては、具体的には、低圧圧力センサ61、低段吸入冷媒温度センサ62、中間圧圧力センサ63、中間冷媒温度センサ64、高圧圧力スイッチ65、高圧圧力センサ66、高段吐出冷媒温度センサ67、蒸発器流入冷媒温度センサ68、蒸発器流出冷媒温度センサ69、第1エコノマイザ冷媒温度センサ75、第2エコノマイザ冷媒温度センサ76、第3エコノマイザ冷媒温度センサ77、庫外温度センサ85、吸入温度センサ86、および、吹出温度センサ87が挙げられる。
【0071】
低圧圧力センサ61は、低段吸入冷媒配管31を流れる冷媒の圧力を検知する。低段吸入冷媒温度センサ62、低段吸入冷媒配管31を流れる冷媒の温度を検知する。中間圧圧力センサ63は、高段吸入冷媒配管33のうちのエコノマイザ出口Dと、高段圧縮機22の吸入側と、の間を流れる冷媒の圧力を検知する。中間冷媒温度センサ64は、高段吸入冷媒配管33のうちのエコノマイザ出口Dと、高段圧縮機22の吸入側と、の間を流れる冷媒の温度を検知する。高圧圧力スイッチ65は、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の圧力が、所定の保護圧力を超えた場合に作動し、制御ユニット7に運転を停止させるトリガーとして機能する。高圧圧力センサ66は、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の圧力を検知する。高段吐出冷媒温度センサ67は、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の温度を検知する。蒸発器流入冷媒温度センサ68は、第2膨張弁45を通過した後の、蒸発器46に流入する直前の冷媒の温度を検知する。蒸発器流出冷媒温度センサ69は、蒸発器46を通過した直後の冷媒の温度を検知する。
【0072】
第1エコノマイザ冷媒温度センサ75は、エコノマイザ膨張弁52を通過した直後の冷媒温度を検知する。第2エコノマイザ冷媒温度センサ76は、エコノマイザ冷媒配管51のうちエコノマイザ熱交換器41の出口を通過した直後の冷媒温度を検知する。第3エコノマイザ冷媒温度センサ77は、エコノマイザ冷媒配管51のうち、バイパス出口Kを通過した直後の冷媒温度を検知する。
【0073】
庫外温度センサ85は、庫外OSの外気温度を検知する。吸入温度センサ86は、庫内ISから内部収納室SP2に流入する空気温度、すなわち、庫内温度を検知する。吹出温度センサ87は、蒸発器46を通過した直後の空気温度を検知する。
【0074】
以下、制御ユニット7によって、バイパス回路53のバイパス開閉弁54が閉状態である場合の冷凍サイクルの例、および、開状態である場合の冷凍サイクルの例を説明する。
【0075】
(3)バイパス開閉弁54が閉状態でのコンテナ用冷凍装置10の冷凍サイクル例
コンテナ用冷凍装置10の圧縮機構23が駆動して冷凍サイクルが行われた場合には、図5のPH線図に示すような冷媒の状態変化が生じる(図5におけるA〜Pの各点は、それぞれ図4の冷媒回路上の点に対応している)。
【0076】
低段圧縮機21は、過熱状態の冷媒(点A)を吸入し、圧縮することで、中間圧力まで冷媒の圧力を上げる(点B)。
【0077】
中間圧力まで圧力が上昇した冷媒は、インタークーラ24を通過する際に、庫外OSの空気によって冷却された後(点C)、エコノマイザ回路50を流れた冷媒と合流し(エコノマイザ出口D)、高段圧縮機22に吸入される。
【0078】
高段圧縮機22においてさらに圧力が高められ、臨界圧力を超えた冷媒(点E)は、ガスクーラ27において庫外OSの空気によって冷却される(エコノマイザ入口F)。ガスクーラ27で冷却された冷媒の一部は、エコノマイザ回路50側を流れ、他の一部は主回路側を流れる。
【0079】
エコノマイザ回路50に臨界圧力を超えた状態で流入した冷媒(エコノマイザ入口F)は、エコノマイザ膨張弁52において臨界圧力より低い圧力まで減圧されることにより気液二相状態の冷媒となる(バイパス入口H)。
【0080】
ここでバイパス回路53のバイパス開閉弁54は、閉状態であるため、エコノマイザ冷媒配管51を流れる冷媒は、全て、エコノマイザ熱交換器41を通過し、主回路側を流れる冷媒との間で熱交換を行った後(エコノマイザ通過点I、バイパス出口K)、高段吸入冷媒配管33を流れる冷媒(点C)と合流する(エコノマイザ出口D)。
【0081】
エコノマイザ熱交換器41の主回路側を通過した冷媒(点G)は、液ガス熱交換器42を通過し、低段吸入冷媒配管31を流れる冷媒(点P)との間で熱交換を行い(点L)、第1膨張弁43によって飽和状態となるまで減圧される(点M)。
【0082】
飽和状態まで減圧された冷媒(点M)は、レシーバ44によって飽和状態の液冷媒のみとなり(点N)、第2膨張弁45によってさらに減圧され、気液二相状態の冷媒になる(点O)。
【0083】
気液二相状態の冷媒(点O)は、蒸発器46に流入し、庫内ISから内部収納室SP2に流入した空気を冷やしつつ自らは加熱されることで蒸発し、過熱状態となる(点P)。
【0084】
その後、液ガス熱交換器42を通過することで、冷媒の過熱度がさらに高められ、低段圧縮機21に吸入される(点A)。
【0085】
そして、以上の冷凍サイクルを繰り返す。
【0086】
(4)バイパス開閉弁54が開状態でのコンテナ用冷凍装置10の冷凍サイクル例
バイパス開閉弁54が開状態である場合には、図6のPH線図に示すように、エコノマイザ回路50を流れる冷媒のうち、エコノマイザ熱交換器41内の通過抵抗はバイパス回路53の通過抵抗よりも大きいため、エコノマイザ熱交換器41を通過する冷媒量が減少し、ほとんどの冷媒がバイパス回路53を流れている状態になる(なお、図6では、エコノマイザ熱交換器41には冷媒が通過しない場合を示している。)。このため、エコノマイザ回路50を流れる冷媒の大部分は、エコノマイザ熱交換器41で暖められることなく、エコノマイザ膨張弁52で減圧された気液二相状態のままで(バイパス入口H)、高段吸入冷媒配管33を流れる冷媒(点C)と合流する(エコノマイザ出口D’)。
【0087】
このため、バイパス回路53のバイパス開閉弁54が開状態の場合に高段圧縮機22が吸入する冷媒は、バイパス回路53のバイパス開閉弁54が閉状態の場合よりも温度が低くなっている。したがって、バイパス回路53のバイパス開閉弁54が開状態の場合に高段圧縮機22が吐出する冷媒(点E’)の温度も、バイパス回路53のバイパス開閉弁54が閉状態の場合よりも温度が低くすることができている(図6の矢印参照)。
【0088】
(5)制御フローチャート
上記コンテナ用冷凍装置10では、制御ユニット7は、バイパス回路53のバイパス開閉弁54について、閉状態を維持しつつ、操作パネル73を介してユーザから受け付けた設定温度を実現させるように、低段圧縮機21、高段圧縮機22、庫外ファンモータ28m、第1膨張弁43、第2膨張弁45、および、庫内ファンモータ47mを制御するという、通常制御を行う。
【0089】
この通常制御においては、操作パネル73が受け付けた設定温度、蒸発器流入冷媒温度センサ68の検知値、蒸発器流出冷媒温度センサ69の検知値、庫外温度センサ85の検知値、吸入温度センサ86の検知値(庫内温度)、および、吹出温度センサ87の検知値に基づいて、制御ユニット7が、低段圧縮機21、高段圧縮機22、庫外ファンモータ28m、第1膨張弁43、第2膨張弁45、および、庫内ファンモータ47mの制御を行う。
【0090】
より具体的には、通常制御では、制御ユニット7は、各制御対象について、以下のように制御を行う。低段圧縮機21は、吹出温度センサ87が検知する温度に基づいて駆動周波数が制御される。高段圧縮機22は、中間圧力(高段圧縮機22の吸入圧力)を最適化するように駆動周波数が制御される。庫外ファンモータ28mは、庫外温度センサ85が検知する温度(外気温度)に基づいて定まる回転数となるように制御される。第1膨張弁43は、高段圧縮機22から吐出される冷媒の圧力が目標高圧圧力となるように弁開度が制御される。第2膨張弁45は、蒸発器46の出口を流れる冷媒の過熱度に基づいて弁開度が制御される。庫内ファンモータ47mは、目標庫内温度に基づいて定めた回転数となるように回転数が制御される。
【0091】
制御ユニット7は、この通常制御を行いながら、高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を把握し、吐出冷媒の温度が異常上昇した場合に、エコノマイザ膨張弁52の弁開度を上げる、および/または、バイパス回路53のバイパス開閉弁54を開状態にする、という吐出温度制御を行う。吐出温度制御では、高段圧縮機22から吐出される冷媒の温度(吐出冷媒温度Td)が、予め定めた吐出温度上限閾値Tduより低い温度であって、かつ、予め定めた吐出温度下限閾値Tdlよりも高い温度である所定温度範囲に維持することができるように、エコノマイザ膨張弁52の弁開度、および/または、バイパス開閉弁54の開閉状態の制御を行う。なお、高段圧縮機22が吐出する冷媒の温度は、高段吐出冷媒温度センサ67の検知値として制御ユニット7が把握する。
【0092】
具体的な制御ユニット7による制御フローチャートを、図8に示す。
【0093】
ステップS10では、制御ユニット7は、上述の通常制御を続ける。
【0094】
ステップS11では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduを超えているか否かを判断する。ここで、吐出温度上限閾値Tduを超えている場合には、ステップS12に移行する。吐出温度上限閾値Tduを超えていない場合には、ステップS10に戻り、通常制御を続ける。
【0095】
ステップS12では、制御ユニット7は、エコノマイザ膨張弁52の弁開度が全開状態になっているか否かを判断する。ここで、エコノマイザ膨張弁52の弁開度が未だ全開状態になっていない場合には、ステップS16に移行する。エコノマイザ膨張弁52の弁開度が既に全開状態になっていた場合には、ステップS13に移行する。
【0096】
ステップS13では、制御ユニット7は、閉状態に維持されていたバイパス開閉弁54を開状態に切り換えて、エコノマイザ回路50を流れる冷媒のうち、エコノマイザ熱交換器41を通過する冷媒量を減らし、バイパス回路53を通過する冷媒量を増大させ、エコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度もしくは乾き度を下げた状態にし、ステップS14に移行する。
【0097】
ステップS14では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度下限閾値Tdlを下回っている程度まで下げることができたか否かを判断する。ここで、吐出温度下限閾値Tdlを下回っている場合には、ステップS15に移行する。吐出温度下限閾値Tdlを下回っていない場合には、ステップS17に移行する。
【0098】
ステップS15では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdを十分に低下させることができたため、バイパス開閉弁54を閉状態に戻し、ステップS10に移行して再び通常制御を行う。
【0099】
ステップS16では、制御ユニット7は、パルス制御によって、エコノマイザ膨張弁52の弁開度を微小開度分だけ上げる制御を行い、エコノマイザ回路50を流れる冷媒量(エコノマイザ出口Dで高段吸入冷媒配管33に合流する冷媒量)を増大させた状態にして、ステップS14に移行する。
【0100】
ステップS17では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduを超えているか否かを判断する。ここで、吐出温度上限閾値Tduを超えている場合には、ステップS12に移行し、さらに吐出冷媒温度Tdを低下させるための制御を進める。吐出温度上限閾値Tduを超えていない場合には、ステップS14に戻る。なお、ここで吐出温度上限閾値Tduを超えていない場合には、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduより低い温度であって、かつ、吐出温度下限閾値Tdlよりも高い温度である所定温度範囲に維持されている間は、ステップS14とステップS17の動作が繰り返され、吐出温度上限閾値Tduを超えた場合にステップS12に移行し、吐出温度下限閾値Tdlを下回った場合にステップS15に移行することになる。
【0101】
(6)特徴
(6−1)
上記実施形態のコンテナ用冷凍装置10では、エコノマイザ回路50を利用することで、高段圧縮機22が吸入する冷媒を冷やすことで、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の温度が異常上昇することを回避することができる。
【0102】
さらに、エコノマイザ膨張弁52が全開状態になっている状態で高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の温度が上昇した場合であっても、バイパス回路53のバイパス開閉弁54を開状態に切り換えることで、エコノマイザ冷媒配管51を流れる冷媒がエコノマイザ熱交換器41で加熱される程度を小さくして、エコノマイザ出口Dに向かう冷媒温度を下げることができる。これにより、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の温度が異常上昇することをより確実に回避することができる。
【0103】
(6−2)
コンテナ用冷凍装置10の利用環境下について、例えば、庫外OSの温度が非常に高温である場合には、ガスクーラ27に対して庫外ファン28によって供給される庫外OSの空気温度も高いことになり、ガスクーラ27の出口を流れる冷媒を十分に冷やすことが難しい(すなわち、図5のPH線図において点Lをより左側(低エンタルピ側)にすることが難しい)。このため、PH線図上で等温線が右斜め下方向に傾斜する性質の冷媒を用いた場合には、吐出圧力を高めにすることで、ガスクーラ27の出口を流れる冷媒のエンタルピを下げて、冷凍能力を確保することになる。
【0104】
他方で、庫内ISの用途が冷蔵ではなく、0℃を大きく下回るような冷凍の用途で用いられる場合には、蒸発温度を低くすることが必要になるため、冷凍サイクルにおける低圧が下がることになる。
【0105】
そうすると、高圧と低圧との差圧が非常に大きくなり、サイクル効率が低下するだけでなく、高段圧縮機22が吐出する冷媒温度が異常上昇しがちになってしまう。
【0106】
これに対して、上記実施形態のコンテナ用冷凍装置10では、多段圧縮式の冷凍サイクルが採用されており、圧縮機構23が低段圧縮機21と高段圧縮機22との複数の圧縮機が直列接続されて構成されている。これにより、1つの圧縮機が担う圧縮比を小さくすることができる。さらに、上記コンテナ用冷凍装置10では、低段圧縮機21から吐出された冷媒について、高段圧縮機22に吸入される前に、インタークーラ24によって冷却させることができる。さらに、上記コンテナ用冷凍装置10では、エコノマイザ回路50が採用されているため、高段圧縮機22の吸入冷媒の温度をさらに下げることが可能になっている。しかも、エコノマイザ回路50には、エコノマイザ膨張弁52が設けられているため、冷媒回路10aの主回路側を流れる冷媒量と、エコノマイザ回路50側を流れる冷媒量との比率を調節することが可能になっているため、高段圧縮機22が吸入する冷媒温度を下げる程度を調節することが可能になっている。さらに、上記コンテナ用冷凍装置10では、エコノマイザ回路50のエコノマイザ膨張弁52が全開状態となっており、これ以上エコノマイザ回路50の流量を上げることができない状態において、高段圧縮機22から吐出される冷媒温度が高い状態になった場合であっても、さらに、バイパス回路53のバイパス開閉弁54を開状態に切り換えることで、高段圧縮機22が吸入する冷媒温度をさらに下げることが可能になる。これにより、高段圧縮機22から吐出される冷媒温度が異常上昇することを防ぐことが可能になっている。このように高段圧縮機22から吐出される冷媒温度の異常上昇を防ぐことにより、冷媒の劣化、冷媒とともに用いられる冷凍機油の劣化、高段圧縮機22の各種モータや駆動部の熱による損傷等を防ぐことができる。
【0107】
(7)他の実施形態
本発明の実施形態は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば、以下の実施形態も本発明の実施形態に含まれる。
【0108】
(7−1)
上記実施形態では、バイパス回路53にバイパス開閉弁54が設けられておりエコノマイザ入口F近くにエコノマイザ膨張弁52が設けられたエコノマイザ回路50を有する冷媒回路10aを例に挙げて説明した。
【0109】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られるものではない。
【0110】
例えば、図9に示す、エコノマイザ回路250を有する冷媒回路210aであってもよい。なお、エコノマイザ回路250以外の構成については、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
冷媒回路210aのエコノマイザ回路250は、エコノマイザ冷媒配管251、エコノマイザ膨張弁252、バイパス回路253、および、バイパス膨張弁254を有している。
【0112】
エコノマイザ冷媒配管251は、図9に示すように、高段側接続冷媒配管35の途中(ガスクーラ27の出口とエコノマイザ熱交換器41の主回路側の入口との間)であるエコノマイザ入口Fから分岐し、エコノマイザ熱交換器41を介して、高段吸入冷媒配管33の途中(インタークーラ24の出口と高段圧縮機22の吸入側との間)のエコノマイザ出口Dまで伸びている。
【0113】
バイパス回路253は、エコノマイザ冷媒配管251のうち、エコノマイザ熱交換器41の上流側(一方側)と下流側(他方側)とを接続する冷媒配管である。このバイパス回路253の上流側は、エコノマイザ冷媒配管251のうちエコノマイザ入口Fとエコノマイザ熱交換器41の主回路側の入口との間であるバイパス上流側入口Xで分岐し、エコノマイザ冷媒配管251のうちエコノマイザ熱交換器41の出口とエコノマイザ出口Dとの間であるバイパス出口Kまで伸びている。バイパス回路253の途中には、バイパス膨張弁254が設けられている。このバイパス膨張弁254は、制御ユニット7によって弁開度がパルス制御されることで、微小開度の調節が可能になっている。
【0114】
エコノマイザ膨張弁252は、エコノマイザ冷媒配管251におけるバイパス上流側入口Xとエコノマイザ熱交換器41の入口との間に設けられている。エコノマイザ膨張弁252は、制御ユニット7によって弁開度がパルス制御されることで、微小開度の調節が可能になっており、通過する冷媒量の調節や、冷媒の減圧程度の調節を行う。
【0115】
以下、冷媒回路210aによる冷凍サイクルの動作例を説明する。
【0116】
制御ユニット7は、バイパス回路253のバイパス膨張弁254を全閉状態に維持しつつ、操作パネル73を介してユーザから受け付けた設定温度を実現させるように、上記実施形態と同様の通常制御を行う。
【0117】
制御ユニット7は、この通常制御を行いながら、高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を把握し、吐出冷媒の温度が異常上昇した場合に、エコノマイザ膨張弁252の弁開度を上げる、および/または、バイパス回路253のバイパス膨張弁254の弁開度を上げる、という吐出温度制御を行う。この吐出温度制御では、高段圧縮機22から吐出される冷媒の温度(吐出冷媒温度Td)が、予め定めた吐出温度上限閾値Tduより低い温度であって、かつ、予め定めた吐出温度下限閾値Tdlよりも高い温度である所定温度範囲に維持することができるように、エコノマイザ膨張弁252の弁開度、および/または、バイパス膨張弁254の弁開度の制御を行う。
【0118】
以下、図10の制御フローチャートを参照しながら、制御の流れを説明する。
【0119】
ステップS40では、制御ユニット7は、上述の通常制御を続ける。
【0120】
ステップS41では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduを超えているか否かを判断する。ここで、吐出温度上限閾値Tduを超えている場合には、ステップS42に移行する。吐出温度上限閾値Tduを超えていない場合には、ステップS40に戻り、通常制御を続ける。
【0121】
ステップS42では、制御ユニット7は、エコノマイザ膨張弁252の弁開度が全開状態になっているか否かを判断する。ここで、エコノマイザ膨張弁252の弁開度が未だ全開状態になっていない場合には、ステップS44に移行する。エコノマイザ膨張弁252の弁開度が既に全開状態になっていた場合には、ステップS43に移行する。
【0122】
ステップS43では、制御ユニット7は、全閉状態に維持されていたバイパス膨張弁254の弁開度を微小開度分だけ上げて、エコノマイザ回路250を流れる冷媒のうち、エコノマイザ熱交換器41を通過する冷媒量を減らし、バイパス回路253を通過する冷媒量を増大させ、エコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度もしくは乾き度を下げた状態にし、ステップS45に移行する。
【0123】
ステップS44では、制御ユニット7は、パルス制御によって、エコノマイザ膨張弁252の弁開度を微小開度分だけ上げる制御を行い、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量(エコノマイザ出口Dで高段吸入冷媒配管33に合流する冷媒量)を増大させた状態にして、ステップS45に移行する。
【0124】
ステップS45では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ小さな値と等しくなっているか否かを判断する。ここで、吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ小さな値と等しくなっている場合には、ステップS45を繰り返す。ここで、αを小さな値として設定しておくことで、吐出冷媒温度Tdを、吐出温度上限閾値Tduに近い値で維持することが可能になる。なお、吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ小さな値と等しくなっていない場合には、ステップS46に移行する。
【0125】
ステップS46では、制御ユニット7は、吐出冷媒温度Tdが、吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ差し引いて得られる値よりも大きいか否かを判断する。ここで、吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ差し引いて得られる値よりも大きい場合には、ステップS47に移行する。吐出温度上限閾値Tduから所定値αだけ差し引いて得られる値よりも大きくない場合には、ステップS48に移行する。
【0126】
ステップS47では、制御ユニット7は、バイパス膨張弁254の弁開度を微小開度分だけ上げると同時に、エコノマイザ膨張弁252の弁開度を微小開度分だけ下げる制御を行い、エコノマイザ回路250のエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を下げた状態にして、ステップS45に戻る。
【0127】
ステップS48では、制御ユニット7は、バイパス膨張弁254の弁開度を微小開度分だけ下げると同時に、エコノマイザ膨張弁252の弁開度を微小開度分だけ上げる制御を行い、エコノマイザ回路250のエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を上げた状態にして、ステップS49に移行する。
【0128】
ステップS49では、制御ユニット7は、バイパス膨張弁254の弁開度が全閉状態になっているか否かを判断する。バイパス膨張弁254の弁開度が全閉状態になっている場合には、ステップS40の通常制御に戻る。バイパス膨張弁254の弁開度が全閉状態になっていない場合には、ステップS45に戻る。
【0129】
以上の本他の実施形態(7−1)の制御によると、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量の変動幅を小さく抑えながら、エコノマイザ冷媒配管251からエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を微調節することが可能になる。
【0130】
なお、エコノマイザ膨張弁252の弁開度の調整開度分とバイパス膨張弁254の弁開度の調整開度分とを適宜組み合わせることにより、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量を増大させながらエコノマイザ冷媒配管251からエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を上げる制御、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量を増大させながらエコノマイザ冷媒配管251からエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を下げる制御、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量を減少させながらエコノマイザ冷媒配管251からエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を上げる制御、および、エコノマイザ回路250を流れる冷媒量を減少させながらエコノマイザ冷媒配管251からエコノマイザ出口Dに向かう冷媒の過熱度を下げる制御を行うことが可能になる。これにより、エコノマイザ効果をできるだけ得ながら、高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を下げることが可能になる。
【0131】
(7−2)
上記実施形態および上記他の実施形態(7−1)では、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒温度を高段吐出冷媒温度センサ67によって把握して、制御ユニット7が高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を下げるための制御を行う場合を例に挙げて説明した。
【0132】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、高段圧縮機22に吸入される冷媒の過熱度を把握して、制御ユニット7が高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を下げるための制御を行うようにしてもよい。この、制御ユニット7による高段圧縮機22に吸入される冷媒の過熱度の把握は、特に限定されるものではないが、例えば、中間圧圧力センサ63が検知する冷媒圧力に相当する冷媒飽和温度を特定し、この冷媒飽和温度と中間冷媒温度センサ64との差から、把握するようにしてもよい。
【0133】
さらに、制御ユニット7は、冷媒回路10aにおける冷媒の凝縮温度や、高段吐出冷媒配管34を流れる冷媒の過熱度や、高段圧縮機22が吸入する冷媒温度等に基づいて、制御ユニット7が高段圧縮機22から吐出される冷媒温度を下げるための制御を行うようにしてもよい。
【0134】
(7−3)
上記実施形態および上記他の実施形態(7−1)では、エコノマイザ膨張弁52やエコノマイザ膨張弁252が全開状態になった後で、バイパス開閉弁54やバイパス膨張弁254の弁開度を上げる、という制御を行う場合を例に挙げて説明した。
【0135】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、エコノマイザ膨張弁52やエコノマイザ膨張弁252が全開より狭い開度である所定開度まで弁開度が上げられた時点で、バイパス開閉弁54やバイパス膨張弁254の弁開度を上げる、という制御を行うようにしてもよい。なお、この所定開度としては、エコノマイザ効果をできるだけ得るという観点からは、全開に近い状態が好ましく、例えば、全開状態の80%以上の開度であってもよい。
【0136】
(7−4)
上記実施形態では、エコノマイザ膨張弁52が全開状態になった後に、そのエコノマイザ膨張弁52の全開状態を維持したままで、バイパス開閉弁54を開状態にする、という制御を行う場合を例に挙げて説明した。
【0137】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、エコノマイザ膨張弁52が全開状態になった後に、そのエコノマイザ膨張弁52の開度を微小開度だけ狭めると同時に、バイパス開閉弁54を開状態にする、という制御を行うようにしてもよい。この場合には、エコノマイザ熱交換器41における熱交換量が急激に変動することを避けることが可能になる。
【0138】
(7−5)
上記実施形態および上記他の実施形態(7−1)では、外部収納室SP1に配置されたガスクーラ27の内部を流れる冷媒を、庫外OSの空気によって冷却し、内部収納室SP2に配置された蒸発器46の内部を流れる冷媒によって庫内ISの空気を冷却させる場合を例に挙げて説明した。
【0139】
しかし、本発明の実施形態の熱媒体としては、これらに限られるものではない。例えば、ガスクーラ27の内部を流れる冷媒の冷却媒体としては、庫外OSの空気ではなく、水等の冷却媒体を用いてもよい。また、蒸発器46の内部を流れる冷媒によって冷却する対象は、庫内ISの空気である必要はなく、庫内ISと内部収納室SP2との間で循環している二次冷媒であってもよい。庫外ファン28や庫内ファン47は、これらの熱媒体の種類に応じて、適宜、ポンプ等に取って換えることができる。
【0140】
(7−6)
上記実施形態および上記他の実施形態(7−1)では、圧縮機構23として、低段圧縮機21と高段圧縮機22を有する二段圧縮機構である場合を例に挙げて説明した。
【0141】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、コンテナ用冷凍装置は、三段以上の多段圧縮機構を備えていてもよい。
【0142】
(7−7)
上記実施形態および上記他の実施形態(7−1)では、低段圧縮機21と高段圧縮機22とのそれぞれがインバータ駆動される場合を例に挙げて説明した。
【0143】
しかし、本発明の実施形態としては、これに限られず、例えば、コンテナ用冷凍装置は、複数の圧縮機の駆動軸が共通化された同軸駆動圧縮機構を備えていてもよい。
【0144】
(7−8)
本発明の実施形態としては、上記実施形態および他の実施形態(7−1)〜(7−7)の各実施形態を部分的に組み合わせることで構成される実施形態についても、当然に、含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明のコンテナ用冷凍装置は、高段圧縮機構から吐出される冷媒の温度を低く抑えることが可能であるため、ガスクーラ内を流れる冷媒を冷却させるための冷却媒体の温度が高い環境下で、冷凍サイクルの高圧側の圧力を高めつつ冷凍サイクルの低圧側の圧力を下げる制御を行うコンテナ用冷凍装置において特に有用である。
【符号の説明】
【0146】
1 冷凍車両
2 コンテナ
3 トレーラ
4 トラクタ
7 制御ユニット(制御部)
10 コンテナ用冷凍装置
10a 冷媒回路
21 低段圧縮機(低段圧縮機構)
22 高段圧縮機(高段圧縮機構)
23 圧縮機構
24 インタークーラ
27 ガスクーラ
41 エコノマイザ熱交換器
43 第1膨張弁(膨張機構)
45 第2膨張弁(膨張機構)
46 蒸発器
50 エコノマイザ回路
52 エコノマイザ膨張弁(中間膨張弁)
53 バイパス回路
54 バイパス開閉弁(バイパス弁)
63 中間圧圧力センサ(検出部)
64 中間冷媒温度センサ(検出部)
66 高圧圧力センサ(検出部)
67 高段吐出冷媒温度センサ(検出部)
252 エコノマイザ膨張弁(中間膨張弁)
254 バイパス膨張弁(バイパス弁)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】
【特許文献1】特開2011―112270号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段圧縮機構(21)と、高段圧縮機構(22)と、ガスクーラ(27)と、膨張機構(43、45)および蒸発器(46)を有するコンテナ用冷凍装置(10)であって、
前記ガスクーラから前記蒸発器側に向かう冷媒の一部を、前記低段圧縮機構から前記高段圧縮機構に向かう冷媒に合流させるように導くエコノマイザ回路(50)と、
前記エコノマイザ回路を流れる冷媒と、前記ガスクーラから前記蒸発器側に向かう冷媒と、の間で熱交換を行わせるエコノマイザ熱交換器(41)と、
前記エコノマイザ回路の途中の前記エコノマイザ熱交換器の上流側部分と下流側部分とを、前記エコノマイザ熱交換器を介することなく接続するバイパス回路(53)と、
開閉状態の切換えが可能もしくは弁開度を調節が可能であり、前記バイパス回路の途中に設けられたバイパス弁(54、254)と、
前記エコノマイザ回路の途中に設けられた中間膨張弁(52、252)と、
前記高段圧縮機構から吐出される冷媒の温度もしくは過熱度の値、もしくは、前記高段圧縮機構に吸入される冷媒の温度もしくは過熱度の値、または、前記値のいずれかに等価な物理量を検出する検出部(63、64、66、67)と、
前記検出部の検出値が上昇することによって第1所定条件を満たさなくなった場合に、前記低段圧縮機構から前記高段圧縮機構に向かう冷媒に対して前記エコノマイザ回路から合流する冷媒合流量を増大させるように、前記中間膨張弁(52、252)の弁開度を調節し、かつ、前記バイパス弁(54、254)の開閉状態を切換えるもしくは前記バイパス弁(54、254)の弁開度を調節する制御部(7)と、
を備えたコンテナ用冷凍装置(10)。
【請求項2】
前記制御部は、前記中間膨張弁(52、252)の弁開度が所定開度以上である状態で、前記検出部の検出値が上昇することによって前記第1所定条件を満たさなくなった場合に、閉状態から開状態に切換えるかもしくは弁開度が上がるように前記バイパス弁(54、254)を制御する、
請求項1に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記中間膨張弁(52、252)の弁開度が全開である状態で、前記検出部の検出値が上昇することによって前記第1所定条件を満たさなくなった場合に、閉状態から開状態に切換えるかもしくは弁開度が上がるように前記バイパス弁(54、254)を制御する、
請求項2に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項4】
前記バイパス弁(54)は、開閉弁であり、
前記中間膨張弁(52)は、前記エコノマイザ回路の途中であって、前記バイパス回路と前記エコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分よりもさらに上流側に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項5】
前記バイパス弁(254)は、通過する冷媒流量を調節可能な膨張弁であり、
前記中間膨張弁(252)は、前記エコノマイザ回路の途中であって、前記バイパス回路と前記エコノマイザ回路との接続部分のうち上流側部分と、前記エコノマイザ熱交換器の入口と、の間に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出部の検出値が上昇することによって前記第1所定条件を満たさなくなった時点で、
前記中間膨張弁(252)が非全開状態であれば、前記中間膨張弁(252)の弁開度を上げ、
前記中間膨張弁(252)が全開状態であれば、前記バイパス弁(254)の弁開度を上げる、
という第1制御を行う、
請求項5に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1制御を行った後に、前記中間膨張弁(252)が全開状態になっているにもかかわらず、前記検出部の検出値の低下程度が第2所定条件を満たさない場合に、
前記中間膨張弁(252)の弁開度を下げる動作と、前記バイパス弁(254)の弁開度を上げる動作と、を同時に行う、
という第2制御を行う、
請求項6に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2制御を行った後に、前記検出部の検出値の低下程度が前記第2所定条件を満たした場合に、
前記中間膨張弁(252)の弁開度を上げる動作と、前記バイパス弁(254)の弁開度を下げる動作と、を同時に行う、
という第3制御を行う、
請求項7に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項9】
前記低段圧縮機構の吐出側から前記高段圧縮機構の吸入側に向かう冷媒を冷却させるインタークーラ(24)をさらに備えた、
請求項1から8のいずれか1項に記載のコンテナ用冷凍装置。
【請求項10】
前記冷媒は、二酸化炭素冷媒である、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコンテナ用冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64573(P2013−64573A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204493(P2011−204493)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】