説明

コンテンツ受渡しシステム及び端末機

【課題】
大容量の携帯型記録メディアを用いたコンテンツのレンタルシステムでは、顧客へ高画質なコンテンツをいかに効率良く提供するかが重要な課題であるとともに、事業として成立するための課金体系等が十分考慮されていなかった。また、コンテンツのセキュリティの確保にも問題があった。
【解決手段】
新しい高効率の圧縮アルゴリズムと放送で使われているアルゴリズムを共用するシステムとし、セキュリティの確保されたインターフェースを搭載した再生端末を使うこと、及び顧客情報の吸い上げによって、顧客数の拡大が確保可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映画などのコンテンツを顧客に貸与するコンテンツ貸出しシステムに係り、特に、大容量かつ高速アクセス可能でリムーバブル可能な記憶媒体を用い、顧客の使い勝手を大幅に向上させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
VTR(Video Tape Recorder)の普及により、映画コンテンツを前記VTRカセットを媒体としてレンタルし、楽しむユーザが多い。また、近年はDVD(Digital Versatile Disc)プレーヤの価格が低下したことにより、VTRカセットのテープ媒体ではなく、DVDに主体が移行しつつある。
【0003】
これらのレンタル事業は、VTRカセットのテープやDVDのディスクを店舗に在庫して、ユーザが選ぶシステムであり、レンタル事業者側にとっては、映画タイトルの仕入れ量、在庫管理などの問題、ユーザ側にとっては、映画タイトル不足などの不満等いくつかの課題がある。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、近年大容量化が進んだハードディスク媒体(HDD:Hard Disc Drive)を用いて、映画タイトルが記録されたサーバからユーザの持つHDDへコンテンツをダウンロードする提案が例えば特許文献1でなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−32685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では下記に挙げる観点で、課題が存在する。その第1は、前記RHDDを利用するスキームの大きな目的がユーザの利便性であるのに対し、現状の貸し出し事業者のみでは、店舗数が非常に少なく、事業運営に十分なユーザを得られないことにある。ユーザ数を十分確保できないと、例えばコンテンツ貸出しに必要な高額なRHDDやそのプレーヤの回収が見込めなくなる恐れがある。
【0007】
第2は、コンテンツを店舗のサーバからダウンロードするためにかかる時間が考慮されていないということである。HDDアクセスの高速化が進んだなかでもハイビジョンの映画などの長時間かつデータ量の多いコンテンツをダウンロードするためには、かなりの時間を要し、また、ユーザが通常複数のタイトルをレンタルすることを考慮すると、ダウンロード時間を短縮する必要がある。ダウンロード時間が長いと、サーバの稼働率が下がり、結果としてユーザ数が限定され、事業運営に十分なユーザ数を見込めないことになる。また、ダウンロード時間が長いとユーザに不要なストレスなどを与えることになり、次回以降のユーザの確保が難しくなる。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、事業運営に十分なユーザ数を確保するとともに、持ち運びが可能な携帯型記録媒体(メディア)への書き込み(ダウンロード)時間を短縮できるコンテンツ受渡しシステム及び端末機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコンテンツ受渡しシステムは、圧縮したコンテンツをネットワークを介して送信する送信器と、送信器により送信されたコンテンツをネットワークを介して入力し、ユーザの指定に応じて記録再生媒体に出力する端末器とを有し、ユーザが記録再生媒体内のコンテンツを入手する構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、事業運営に十分なユーザ数を確保するとともに、持ち運びが可能な携帯型記録媒体(メディア)への書き込み(ダウンロード)時間を短縮できるコンテンツ受渡しシステム及び端末機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例を示すコンテンツ貸出しシステムのブロック図。
【図2】第1の実施例におけるコンテンツ配信事業者の構成図。
【図3】第1の実施例におけるTAP端末と再生端末の関係図。
【図4】第1の実施例における再生端末のブロック図。
【図5】第3の実施例による記録メディアへの記録方法の概念図。
【図6】第1の実施例におけるコンテンツの圧縮体系を示す図。
【図7】第2の実施例における再生端末と表示端末の関連図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、共通な機能を有する要素には同一な符号を付して示し、一度説明したものについてはその説明を省略する。また、各図の点線は、持ち運びができるリムーバブル可能な媒体による接続を示している。
【実施例1】
【0013】
図1は、第1の実施例を示すコンテンツ貸出しシステムのブロック構成図である。図1において、100は映画などのコンテンツを制作するコンテンツ制作事業者、101はコンテンツ制作者100から提供されるコンテンツをデジタル化しその容量を圧縮するコンテンツ変換事業者、102はコンテンツ変換事業者101にて圧縮処理されたコンテンツを管理し配信を行なうコンテンツ配信事業者、103はネットワーク、104はコンテンツをユーザにレンタルする事業を専業とするコンテンツ貸出し事業者、105,106,107はコンテンツ貸出し事業者が所有あるいは傘下に置く店舗、108,109,110は店舗105,106,107内に設置されるTAP端末(TAP:Town Access Point、街角でアクセス可能な端末の意)である。111,112,113は、コンテンツ貸出し事業者とは異なる、他の事業を行いながらコンテンツ貸出しも兼業で行う店舗(以下、「契約店舗」と称する)、114,115,116は各契約店舗内に設置されるTAP端末、117はコンテンツ利用ユーザ、118は持ち運びができる携帯型のリムーバブル可能なリムーバブル記録再生媒体(以下、単に「記録再生媒体」と記す)、119は記録再生媒体118から映画コンテンツなどを再生する再生端末、120は再生端末からの映像,音声を出力するテレビジョン装置である。なお、契約店舗111,112,113には、例えば、多店舗事業展開がなされているフランチャイズに加盟する加盟店所謂コンビニエンスストアや、全国各地に設けられている郵便局、銀行、消費者金融店などがある。また、ここではテレビジョン装置120は、説明の都合上、BS,CS,地上波等のデジタルテレビジョン放送の受信機能を有するものとするが、これに限定されるものではない。
【0014】
本実施例において、コンテンツ制作事業者100から提供される映画などのコンテンツの形式は様々であるが、コンテンツ変換事業者101は、これらのコンテンツをMPEG2などに代表される映像・音声の圧縮アルゴリズムを用いて変換作業を行なう。圧縮アルゴリズムは、複数のアルゴリズムを準備し、少なくともMPEG2での圧縮は必ず実施して圧縮コンテンツを作成する。この理由は、デジタル放送の普及により既に家庭にあるデコーダ(復号器:圧縮されたデジタルコンテンツを復号する装置)を共通に使用するためである。但し、システムによっては、MPEG2を必ず用いる必要はない。
【0015】
一方、事業運営者121は、コンテンツ貸出し事業者104配下の店舗105,106,107に設置したTAP端末108,109,110内に、前記デジタル化され圧縮された各種コンテンツをコンテンツ配信事業者102よりネットワーク103経由でダウンロードする。同様に契約店舗111,112,113に対してもコンテンツ配信事業者102から店舗内のTAP端末114,115,116にデジタル化され圧縮されたコンテンツを格納する。
【0016】
TAP端末への配信は、ネットワーク103経由が適当ではあるが、セキュリティの問題から、ネットワークを経由せずに媒体の送付によるオフライン配信も可能である。
【0017】
コンテンツ貸出し事業者104が運営する店舗(例えば店舗108)に配置されているTAP端末108などに格納するコンテンツは、主に通常のVTRやDVDの貸出しで品不足となる新作とその新作に関連したタイトル、さらには通常店舗に置かれない特殊なタイトルなどであり、事業運営者121、あるいはコンテンツ配信事業者102の指示によって決定される。この品揃えは全てのTAP端末で同じとは限らず、店舗の設置場所などによって異なっても良い。また、各TAP端末の貸出し情報の分析から決めることも可能である。
【0018】
コンテンツ利用ユーザ117(以下、単に「ユーザ」と記す)は、前記事業運営者121から貸し出された、あるいは購入した、記録再生媒体118を携帯し、最寄りの店舗のTAP端末108等から希望するコンテンツを記録再生媒体118に複製し、同様に事業運営者121から貸し出された、あるいは購入した、再生端末119を家庭内に設置されているテレビジョン装置120と接続してコンテンツを楽しむ。
【0019】
ここで、このコンテンツを不正なコピーから防ぐための手段を、図3を用いて説明する。なお、以下では店舗105内のTAP端末108を用いてTAP端末を代表するものとする。
【0020】
図3において、301は各コンテンツの暗号化器、302はTAP端末108内にコンテンツを格納しておくハードディスクなどの大容量記憶媒体(ここでは以下「HDD」としておく)、303はHDD302から読み出した暗号化されたコンテンツを復号する復号化器、304は301と異なる鍵でコンテンツを暗号化する暗号化器、305はTAP端末108を制御するシステム管理部、401は暗号化器304に対応した復号化器、403は圧縮された映像の映像復号化器、308はICカード、その他は図1と同じである。
【0021】
デジタル化され圧縮されたコンテンツは、TAP端末108内のHDD302に格納されるが、安全のために暗号化器301にて暗号化された上保存される。この暗号方式、あるいは暗号鍵はTAP端末固有のものであり、そのアルゴリズムも外部秘匿されているものである。別の方法として、コンテンツ配信事業者102にて、TAP端末108用に暗号を掛ける方法も考えられる。この場合は暗号化器301は不要となる。さらには、コンテンツ変換事業者101が暗号化しても良く、基本的にTAP端末108内のコンテンツの安全性が確保されていれば良い。ユーザが記録再生媒体118に所望のコンテンツをダウンロードする場合は、TAP端末108は記録再生媒体118内に書かれている個別情報(あらかじめ、事業運営者121などによって書き込まれ、通常この個別情報も暗号化されている)によって、この媒体の正当性を確認した上、個別情報にしたがった鍵を用いて暗号化器304で暗号化し、記録再生媒体118にコンテンツが書き込まれる。また、他の方式として、ユーザが所持しているICカード308内の個別情報を用いて暗号化する方法もある。さらには、記録再生媒体118と前記ICカード308の双方の個別情報を用いる方法や、配信センターに問い合わせする等の方法も考えられる。これらの方法によって、ユーザや記録再生媒体の正当性を確認した後に、暗号化器304でコンテンツを暗号化した上、記録再生媒体118にコンテンツを転送する。
【0022】
ユーザはコンテンツが書き込まれた記録再生媒体118を家庭に設置された再生端末119にて再生する。この際、再生端末119と記録再生媒体118は、対(ペアリング)になっており、再生端末119は暗号化器304に対応した復号化器401を有し、再生端末119内に保存されている個別情報にしたがった鍵を用いて復号される。平文になったコンテンツは、コンテンツを圧縮したアルゴリズムに対応した映像復号化器403で映像信号に変換されてテレビジョン装置120に出力される。記録再生媒体118と再生端末119のペアリングは、事業運営者121が、ユーザにこれらを貸与あるいは販売する際に事前に個別情報を書き込んでおくこと等によって実現できる。この様にコンテンツを不正な利用から防ぐ措置を施し、システムの安全性を高めている。
【0023】
図2にコンテンツ配信事業者102のシステム構成の一例を示す。図2において、200はコンテンツ配信サーバ、201はコンテンツのバックアップ装置、202は統合管理システム、203は顧客管理システム、204は利用実績管理システム、その他は図1と同じである。
【0024】
コンテンツ配信サーバ200は、デジタル化されたコンテンツを保存し、必要に応じてネットワークなどの手段を通して各店舗のTAP端末へ必要なコンテンツをダウンロードする機能を持つ。統合管理システム202は、顧客管理システム203、利用実績管理システム204などを備え、各店舗(例えば店舗105)から利用実績を吸い上げ、課金管理や利用実績の統計処理などを行なう。利用実績は、ユーザが前記TAP端末108等からダウンロードしたアクセス記録を基に収集可能である。また、前記利用実績管理システム204は、ユーザからのリクエスト等を受付け、それに応じて特定の店舗に特定のコンテンツを配信することも可能である。この様に本実施例においては、各店舗に設置されたTAP端末108などから吸い上げる情報により、TAP端末108などに保存されるコンテンツを自由に設定でき、顧客の要望に応えることが可能である。
【0025】
ここで、顧客への課金体系の一例を説明する。本実施例では記録再生媒体118内の情報(記録再生媒体118は、コンテンツの他にコンテンツを再生したかどうかを示すアクセス記録、コンテンツを制御する情報、ユーザがこれまでにレンタルしたコンテンツの情報(レンタル履歴)、アンケートファイルなどを情報として持つことができる)により、視聴期日の制限等をかけることができるため、基本的にダウンロードしたコンテンツを返却する必要はない。したがって、所望のコンテンツをダウンロードする時に課金(以下、「第1の課金」と称する)をする方法が一般的に考えられるが、コンテンツを視聴しなかった場合にも課金をしてしまうこととなるので、次回の所望コンテンツのダウンロード時に記録再生媒体118内のコンテンツへのアクセス記録情報によって、視聴済の前回ダウンロードしたコンテンツを判断して課金(以下、「第2の課金」と称する)する方法も考えられる。即ち、所望のコンテンツをダウンロードする時の第1の課金を無料とし、次回他の所望のコンテンツをダウンロードする時の第2の課金を前回ダウンロードしたコンテンツの利用履歴(アクセス記録)に応じて決定するような方法が考えられる。
【0026】
さらには、スポンサーのCMなどもコンテンツと同時にダウンロードし、CM視聴の記録が残されている場合は割引価格、アンケートファイルを同時にダウンロードして回答した回答者に(デジタル放送のデータ放送の仕組みを利用することで、電子的にアンケートが可能)割引料金を適用する、あるいは、月極め契約として、定額性の導入なども考えることができ、課金体系は各種設定可能である。また、レンタル履歴に応じて、例えばユーザがレンタルしたコンテンツ数に応じて割引料金を適用するようにしてもよい。
【0027】
このように、本実施例の課金システムは、ユーザにとってメリットのある課金体系であり、継続してコンテンツのレンタルを行う所謂リピートユーザの確保が期待できる。
【0028】
また、課金とは無関係であるが、前記記録再生媒体118内のレンタル履歴情報をユーザに提示することにより、ユーザが記憶違いにより、同じコンテンツを再度レンタルしてしまうことを防ぐことも可能である。また、第1の課金時課金し、第2の課金時、アクセス記録により精算するようにしてもよい。
【0029】
図4は図3で述べた再生端末119の一実施例を示す詳細ブロック図である。図4において、400はHDDインターフェース回路、401は復号化器、402はIEEE1394規格に準拠したインターフェース回路(以下、「1394IF」と記す)、403はデジタル化されて圧縮されたコンテンツを復号する映像復号化器、404はコンテンツ再生端末の制御部であり、その他は図1と同一である。
【0030】
HDDインターフェース回路400は記録再生媒体118から端末制御部404の指示に従ってコンテンツを読み出し、暗号の復号化器401に出力する。復号化器401は再生端末119内の個別情報にしたがった鍵を用いて暗号を解除し、1394IF402と映像復号器403に送る。ユーザの所有するテレビジョン装置120が1394IFを持っていれば、1394のAV伝送プロトコルに従ってデジタル伝送し、テレビジョン装置120がアナログ入力端子しか持たない場合は、映像復号器403で圧縮された映像を復号し、映像信号に戻した後、テレビジョン装置に接続する。デジタル伝送においても、アナログ伝送においてもコンテンツが不正なコピーをされないように、コピー防止信号が掛けられる。特にIEEE1394上でのデジタル伝送では、規格で定められた方式に従い、テレビジョン装置120と再生端末119の間で正当な機器である旨の認証作業を行なった上、伝送路上では特定の暗号が掛けられて伝送される。このため、特にIEEE1394上でのデジタル伝送については、不正コピーに対する安全性が高い。この他、HDMI(High Definition Multimedia Interface)等での接続も考えられる。
【0031】
BSデジタル放送、及び地上デジタル放送の開始により、デジタルハイビジョンを受信可能なテレビジョン装置が普及している。したがって、IEEE1394IFを用い、テレビジョン装置に搭載されているMPEG2デコーダを用いることによって、映像貸出しにハイビジョンコンテンツを用いることが可能となる。BSデジタル放送対応のテレビジョン装置の多くはIEEE1394の端子を備えていること、映画コンテンツを借りるユーザの多くは、高画質、高音質での視聴を望んでおり、本実施例を採用することにより、ユーザの希望に沿った高画質・高音質の映像を安価に提供できる。このために、図1で説明したコンテンツ変換事業者102は、ハイビジョンのコンテンツは放送規格に沿ったMPEG2―MP@HLで圧縮を行なう必要がある。一方、ハイビジョン以外のコンテンツは圧縮の効率を上げるために、再生端末119を配布する時点で、効率の良い圧縮方式を採用し、再生端末119内の映像復号器403をその圧縮方式に対応させておけば良い。これにより、コンテンツ配信事業者102から複数の店舗(例えば店舗105,106,107、契約店舗111,112,113等)にそれぞれ設置されているTAP端末(例えば108〜110,114〜116等)へのコンテンツの配信時間や、コンテンツ利用ユーザがTAP端末からコンテンツを記録再生媒体118へダウンロードする時間を短縮することができる。
【0032】
記録再生媒体へのダウンロード時間を短縮することはコンテンツ貸出し事業では、ユーザ確保の点で特に重要である。課題の項で述べたように、ダウンロード時間が長いと、TAP端末の稼働率が下がり、結果としてユーザ数が限定され、事業運営に十分なユーザ数を見込めないことになる。また、ダウンロード時間が長いとユーザに不要なストレスなどを与えることになり、次回以降のユーザの確保が難しくなる。しかし、本実施例によれば、ダウンロード時間を短縮できるので、ユーザ数の増加が期待できることになる。
【0033】
以上述べた様に、図1に示す本実施例では、映画などのコンテンツを貸し出すサービスが、ハイビジョンコンテンツのような高画質・高音質で、しかも安全に提供可能となる。
【0034】
さらに、図1における本実施例では、ネットワークを介して各店舗内に設置されているアクセス端末に配信するので、コンテンツをユーザにレンタルする事業を専業とするコンテンツ貸出し事業者104の他に、契約店舗111、112、113などに示す所謂多店舗事業者(例えばコンビニエンスストアなど)との連携も可能である。
【0035】
コンテンツ貸出し事業者104は、現在の業務形態から既にVTRやDVD等の媒体の棚を持っており、全てをリムーバブルな媒体を用いた貸出し方式に移行するのは困難である。したがって、貸出し回転率の高い新作映画などと、在庫として置くことのできない特別なコンテンツなどに特化して、TAP端末108などに格納しておく形態を取ることができる。
【0036】
また、コンテンツ配信事業者102は、コンビニエンスストアなどの多店舗事業者と契約することによって、今まで限られた場所にしかなかったコンテンツ貸出し店舗を大幅に増やす事が可能である。本実施例では、TAP端末からローカルに記録再生媒体に圧縮されたコンテンツをダウンロードするので、ダウンロード時間を短縮でき、在庫を持つスペース余裕のないコンビニエンスストアなどの契約店舗でのコンテンツ貸出しビジネスが期待できる。この時にも店舗のスペースに限りのある契約店舗111などには、貸出し回転率の高いコンテンツなどに限って置くことで、自宅の近くの店舗で新作映画などのコンテンツを簡単に借りることができるというユーザへのサービス向上と既存のコンテンツ貸出し事業者の共存を図ることが可能となる。また、既存のコンテンツ貸出し事業者104の会員制度から、TAP端末利用会員への移行を図ることで、事業を素早く立ち上げるビジネスモデルが確立できる。
【0037】
従って、本ビジネスモデルによれば、事業運営に十分なユーザ数を見込めるので、事業運営に十分なコンテンツ貸出し料金を見込むことができ、事業運営者、店舗所有者、コンテンツ配信事業者、コンテンツ変換事業者、コンテンツ所有者への配当を見込むことができる。
【0038】
以上説明した様に、本実施例を用いることによって、ユーザは自宅の近くの店舗で、人気コンテンツを必ず借りることができると共に、コンテンツを今までにない高画質・高音質で楽しむことが可能となる。また、事業者にとっては、店内の在庫スペースを圧縮できる他、人気コンテンツの在庫不足による貸出し不可状態が無くなることによる機会損失の回避、コンテンツ貸出し傾向などの分析の自動化、サービスの向上による会員増加による収益の拡大、従来必要であったテープの巻き戻し作業などによる人件費の圧縮などが可能となる。
【0039】
次に図6を用いて、図1で利用されるコンテンツ提供のメカニズムについて説明する。図6は本実施例によるコンテンツの圧縮体系を説明する図である。図6において、600はコンテンツ圧縮装置、601,602,603は前記コンテンツ圧縮装置600内に含まれる圧縮手段であり、それぞれ高画質で圧縮するHD圧縮部601、中程度の画質で圧縮するSD1圧縮部602、レートを低く押さえたSD2圧縮部603である。605はTAP端末108にて表示される画面内のメニュー、606は高速インターフェース部、609は再生端末119側の高速インターフェース部、610は記録再生媒体118から読み出した信号を処理するパケット処理部、611はSD2圧縮部603に対応したSD2デコーダ、612はIEEE1394規格に準拠した1394IF、613は再生端末119を制御する再生端末制御部である。テレビジョン装置120は、再生端末119に接続されたデジタルテレビジョン放送受信機能を有するテレビジョン装置で、615はアナログベースのビデオ処理部、616はIEEE1394規格に準拠した1394IF、617はSD1圧縮部602、HD圧縮部601に対応したHD/SD1デコーダ、618は表示部、619はテレビジョン装置120を制御するTV制御部である。
【0040】
図1にて説明したコンテンツ制作事業者100で制作されたコンテンツは、コンテンツ変換事業者101でコンテンツのデータ容量を削減するために圧縮されるが、ここでは図6のコンテンツ圧縮装置600に示される様に、複数の圧縮アルゴリズムに対応する。ここでは3つの圧縮アルゴリズムに対応する例を示している。HD圧縮部601は、MPEG2規格のMP@HL(所謂ハイビジョンに対応)にあたる形式でコンテンツを圧縮する。SD1圧縮部602は同じくMPEG2規格のMP@ML(標準画質に対応)でコンテンツを圧縮する。また、SD2圧縮部は上記2形式と異なった規格に準じた圧縮方式で圧縮を行なう。現在、日本のデジタル放送規格ではコンテンツの圧縮方式としてMPEG2が採用され、さらに具体的なパラメータを定義している。ハイビジョンの圧縮では、1920x1080/30i(水平画素数x垂直ライン数/フレーム周波数:インターレース)が基本となっており、約20Mbpsのビットレートで放送されている。標準画質のコンテンツ用としては、720x480/30iが基本となっている。この場合は4乃至6Mbps程度のレートと考えられる。また、コンテンツによってはハイビジョンにおいても1280x720/60p(pは順次走査を示す)等も許されている他、映画コンテンツにおいては24フレームでの圧縮も可能である。したがって、映画コンテンツでは、1280x720/24pでの圧縮が可能であるため、放送規格に則っても上記した半分程度のレートまで圧縮が可能である。標準画質のコンテンツにおいても映画コンテンツを考えた場合は24フレームでの圧縮が可能であり上記4−6Mbpsから更に圧縮レートを下げることが可能である。
【0041】
この様にコンテンツ圧縮装置600における圧縮方法を工夫することにより、現行の放送規格内でコンテンツの容量を大幅に削減することができる。これは、TAP端末108内のディスクの利用効率向上、及びTAP端末108から記録再生媒体118へのコンテンツ転送時間の大幅な短縮に繋がる他、現行のデジタル放送受信機能を有するテレビジョン装置120内に既設の前記HD/SD1デコーダ617をそのまま用いることができるメリットがある。
【0042】
一方、SD2圧縮部603は放送規格策定後に進化したコンテンツの圧縮アルゴリズムを採用することによって、さらに効率良くコンテンツを圧縮可能である。良く知られたアルゴリズムはMPEG4あるいは、H.264等であるが、その他にも様々な圧縮アルゴリズムがあり、本実施例のシステムを事業化する時点で最良のアルゴリズムを選択すれば
良い。新しいアルゴリズムの採用によって、標準解像度のコンテンツは1乃至2Mbpsのレートで圧縮することが可能となる。ただし、この場合には、放送規格に準拠したテレビジョン装置ではデコードできないため、再生端末119内に前記SD2デコーダ611を準備する必要がある。SD2圧縮部603を採用することにより、さらにコンテンツを記録再生媒体118に転送する速度を速くすることが可能となる。
【0043】
また、ここで示したテレビジョン装置120に、SD2圧縮部603に対応したデコーダを搭載することも考えられる。
【0044】
ここで、SD2圧縮部603は標準画質のコンテンツを圧縮することを前提に記載したが、これは、再生端末119内の前記SD2デコーダ611にてハイビジョンレベルのコンテンツも再生する場合、テレビジョン装置120との間でコンテンツの著作権保護を確保できないためである。1394IF612、616経由でコンテンツを圧縮した状態で伝送する場合は、機器間の認証処理や暗号化手段を用いて不正なコピーなどを避けることが可能であるため、著作権保護が重要なハイビジョンのコンテンツでも伝送することが可能となる。
【0045】
一方、ユーザはTAP端末108に表示される前記メニュー605の中から、ユーザの所持するテレビジョン装置に適応した圧縮方式のコンテンツを選択して記録再生媒体118に転送する。ハイビジョン対応のディスプレイを所持していなければSD2圧縮方式で圧縮されたコンテンツを選択すれば良い。
【0046】
この様に、図6に示す構成によって、コンテンツの高速な転送(配信時間の短縮、ダウンロード時間の短縮)、ユーザの所持するテレビジョン装置の活用、再生端末119のコストダウン、TAP端末108内のディスク容量の効率利用等多くのメリットを得ることができ、図1に示すシステム形態でのコンテンツ貸出し事業が成立する要素となる。
【実施例2】
【0047】
図7に前記再生端末119の第2の一実施例を示す。図7は第2の実施例による再生端末と表示装置であるテレビジョン装置のブロック図である。
【0048】
図7において、700は本実施例による再生端末、701は映像の暗号化部、702は本実施例によるテレビジョン装置、703は映像の復号化部である。その他は図6に示す再生端末119、テレビジョン装置120と同じである。本実施例においては、再生端末700の映像出力部即ちSD2デコーダ611の出力部に暗号化部701を設け、またテレビジョン装置702の映像入力部に復号化部703を設けることによって、映像信号の不正な利用を防いでいる。暗号化部701と復号化部703は相互に認証を行ない、暗号鍵の交換を行なうことによって、安全性を確保する。これは、例えば近年採用が始まった前記HDMIインターフェースを用いることによって実現できる。この方法によれば、再生端末608でハイビジョンコンテンツをデコードすることも可能となっている。ただし、事業運営の面から、再生端末119へのコスト要求を鑑みて設計する必要がある。
【0049】
本実施例の形態を導入した場合は、図6に示すSD2圧縮部603にてハイビジョンレベルのコンテンツも圧縮することによって、さらに効率の良くコンテンツの格納や転送時間の短縮を図ることができる。
【実施例3】
【0050】
コンテンツを前記TAP端末108等からユーザの持つ記録再生媒体118へ複写する場合の効率化に関する制御方法の一例を図5を用いて説明する。図5は、記録再生媒体118の記録領域の概念図である。
【0051】
図5において、800はHDDのプラッタ、801、802、803はそれぞれ連続した記録領域を示す。図7における第2の実施例でも説明したように、映画などのコンテンツをリムーバブルな媒体に記録して貸し出す事業においては、リムーバブルな媒体への転送速度の向上が大きな課題となる。HDDへの書き込み読み出し速度を低下させる原因の
一つは、ヘッドのシークタイムにある。したがって、基本的には連続したセクタに記録する必要がある。本発明においては、基本的に映像コンテンツの書き込みが主であるため、例えば3つのコンテンツを保存可能な場合、3つの連続した領域にそれぞれのコンテンツを書き込む制御を行なう。実際には、故障セクタ等もあり、図5と同じにはならないが、基本は同一コンテンツを連続したセクタに書き込むこととする。また、ユーザが、書き込みは、最外周の領域から行ない、例えば、コンテンツを一つ借りるユーザは、最外周の領域801に記録する。コンテンツを2つ借りる場合には、最外周の領域801と中間の領域802に2つのコンテンツを書き込む。コンテンツを3つ借りる場合には、特に優先的に書き込む領域を持つ必要はない。この制御を行なうことによって、少ないコンテンツを借りるユーザが、記録再生媒体118にコンテンツを複写する時間を短縮できる特徴がある。
【0052】
なお、これまで記録再生媒体118やTAP端末108内の記憶装置はHDDを前提に記載してきたが、これらはHDDに限定されるものではなく、半導体メモリ等でも構わない。
【0053】
以上の各実施例において、
(1)事業運営者は、各種ネットワークを介して、選択したコンテンツを各店舗内に設置されているアクセス端末に配信するので、各店舗は限られた数のアクセス端末を設置すれば良く、またアクセス端末でクローズした決裁となるため店舗作業が不要であり、コンテンツ貸出し専業店舗のみならず、それ以外の契約店舗にもコンテンツを配信でき、十分な数の貸出し店舗数を見込むことができる。
(2)携帯型記録媒体(メディア)に効率良く圧縮されたコンテンツをダウンロードするのでダウンロード時間を短縮でき、ユーザ数を増やすことができる。また、ダウンロード時間を短縮できるので、アクセス端末の稼働率を上げることができ、スペース余裕のない契約店舗でのコンテンツ貸出しビジネスが見込め、結果として十分な数の貸出し店舗数を見込むことができる。
(3)ユーザにメリットのある課金体系(料金体系)を提供、及び利便性の高い店舗配置によりリピートユーザの確保が可能となる。
【0054】
従って、事業運営に十分なユーザ数を確保することができる。
【符号の説明】
【0055】
100…コンテンツ制作事業者、101…コンテンツ変換事業者、102…コンテンツ配信事業者、103…ネットワーク、104…コンテンツ貸出し事業者、105,106,107…店舗、108,109,110…TAP端末、111,112,113…契約店舗、114,115,116…TAP端末、117…ユーザ、118…記録再生媒体、119…再生端末、120…テレビジョン装置、200…コンテンツ配信サーバ、201…バックアップ装置、202…統合管理システム、203…顧客管理システム、204…利用実績管理システム、301…暗号化器、302…大容量記憶媒体、303…復号化器、304…暗号化器、305…システム管理部、308…ICカード、400…HDDイ
ンターフェース回路、401…復号化器、402…1394IF、403…映像復号化器、404…制御部、600…コンテンツ圧縮装置、601…HD圧縮部、602…SD1圧縮部、603…SD2圧縮部、605…メニュー、606…高速インターフェース部、608…再生端末、609…高速インターフェース部、610…パケット処理部、611…SD2デコーダ、612…1394IF、613…再生端末制御部、615…ビデオ処理部、616…1394IF、617…HD/SD1デコーダ、618…表示部、619…TV制御部、700…再生端末、701…映像の暗号化部、702…テレビジョン装置、703…映像の復号化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツをネットワークを介して送信する送信器と、
前記送信器により送信されたコンテンツをネットワークを介して入力し、ユーザの指定に応じて記録再生媒体に出力する端末器とを有し、
ユーザが前記記録再生媒体内のコンテンツを入手する構成であることを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテンツ受渡しシステムにおいて、
コンテンツを圧縮する圧縮器を備え、
前記圧縮器は、前記コンテンツを一つのもしくは複数の圧縮率にて圧縮することを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のコンテンツ受渡しシステムにおいて、
コンテンツを圧縮する圧縮器を備え、
前記圧縮器は、前記コンテンツを一つのもしくは複数の圧縮方式にて圧縮することを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のコンテンツ受渡しシステムにおいて、
前記端末機は圧縮されたコンテンツをネットワークを介して入力する入力部と、
前記入力部により入力されたコンテンツを記録する記録部と、
前記記録部に記録されたコンテンツをユーザの指定に応じて記録再生媒体に出力する出力部と、を備えてなることを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のコンテンツ受渡しシステムにおいて、
前記端末機は、コンテンツの圧縮率に関する情報を表示する表示部と、
前記出力部より出力するコンテンツを選択する選択部と、を備え、
前記表示部に表示された圧縮率に関する情報に基づき、前記選択部により選択されたコンテンツを前記出力部より出力することを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項6】
請求項2または請求項3のいずれかに記載のコンテンツ受渡しシステムにおいて、
前記圧縮器は、すくなくともMPEG2形式にて前記コンテンツを圧縮することを特徴とするコンテンツ受渡しシステム。
【請求項7】
コンテンツの受渡しをする端末機であって、
圧縮されたコンテンツをネットワークを介して入力する入力部と、
前記入力部により入力されたコンテンツを記録する記録部と、
前記記録部に記録されたコンテンツをユーザの指定に応じて記録再生媒体に出力する出力部と、
を備えてなることを特徴とする端末機。
【請求項8】
請求項7に記載の端末機において、
前記入力部より入力したコンテンツを暗号化する暗号化器を備えてなることを特徴とする端末機。
【請求項9】
請求項7に記載の端末機において、
前記入力部より入力したコンテンツを暗号化し前記記録部に出力する暗号化器と、
前記暗号化器により暗号化され前記記録部に記録されたコンテンツの暗号を復号する復号化器と、
を備えてなることを特徴とした端末機。
【請求項10】
請求項9に記載の端末機において、
前記復号化器により復号されたコンテンツを暗号化する第2の暗号化器を備えてなることを特徴とする端末機。
【請求項11】
請求項7に記載の端末器において、
前記入力部に入力されるコンテンツは、一つのもしくは複数の圧縮率にて圧縮されていることを特徴とする端末機。
【請求項12】
請求項11に記載の端末器において、
コンテンツの圧縮率に関する情報を表示する表示部と、
前記出力部より出力するコンテンツを選択する選択部と、を備え、
前記表示部に表示された圧縮率に関する情報に基づき、前記選択部により選択されたコンテンツを前記出力部より出力することを特徴とする端末機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−211915(P2010−211915A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86663(P2010−86663)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2005−78370(P2005−78370)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】