説明

コンテンツ配信装置、受信装置、中継装置、コンテンツ配信システム、コンテンツ配信方法及びプログラム

【課題】IPマルチキャストを用いたコンテンツの配信サービス等において、中継器においてパケットを効率よく転送することにより、遅延時間を少なくしたコンテンツ配信システム等を提供すること。
【解決手段】コンテンツ配信装置が、メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成し、メディアペイロードに基づいてFECペイロードを生成する。そして、メディアペイロード及びFECペイロードに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットとFECパケットとをそれぞれ生成し、受信装置に送信する。受信装置は、メディアパケット及びFECパケットを受信し、メディアペイロードと、FECペイロードとをそれぞれ復元する。メディアペイロードにエラーがある場合には、FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを復号、逆多重化してコンテンツを復号する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるコンテンツ配信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber to the Home)やADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)といったブロードバンド回線の普及に伴い、大容量の映像や音声といったマルチメディアコンテンツをIPネットワーク上で提供する、IP放送等の放送型サービスが増加しつつある。
【0003】
このような配信システムにおいては、多数の受信者に同時に配信が可能な「IPマルチキャスト技術」を用いて実現されることが一般的である。IPマルチキャスト技術は、1つのサーバから特定のマルチキャストグループに加入した複数の受信者に同時に同じデータパケットを伝送する方法であり、このIPマルチキャスト技術を用いることにより、サーバの負荷、および配信ネットワークの負荷を軽減させることが可能となる。
【0004】
マルチキャストグループは、あるサーバから特定のマルチメディアコンテンツを提供されようとする受信者が集まって形成され、参加している受信者は、グループ内で同じマルチキャストアドレスを共有する。
【0005】
このグループ内のデータ伝送経路を制御するルータは、マルチキャストデータを受信すると、そのマルチキャストアドレスを読み取り、該当するマルチキャストグループに属する受信者が接続されている経路へ向けて再送信する。
【0006】
この際、受信者が複数で、かつ、別経路上に存在する場合、ルータは伝送しようとする情報を複製してそれぞれの経路に向けて送信する。このルータの動作により、IPマルチキャスト技術では、当該マルチキャストグループに属する総ての受信者に対して、サーバから独立に情報を送信する場合に比べて、伝送情報量を大きく削減でき、サーバやネットワークへの負荷を軽減できる。
【0007】
また、このIPマルチキャスト技術を用いて、多数のサーバから配信されるマルチキャストコンテンツを1台の受信端末で切り替えながら受信するようなアプリケーションやシステムも考えられる。
【0008】
例えば、放送局から多くの番組がマルチキャスト方式で放送されていて、家庭や施設の受信端末で視聴したい番組に切り替えるようなIP放送サービスシステムや、放送局からのコンテンツが多数のカメラ映像で構成されていて、それぞれがマルチキャスト方式で配信され、受信端末で受信を切り替えることでカメラ映像を選択できるような映像監視システムなどがある。
【0009】
このような配信システムにおいては、効率良くパケットを送信するため、種々の技術が知られている。例えば、特許文献1に示すようなパケット転送方法であったり、特許文献2に示すようなコンテンツデータと、誤り訂正用のFEC(Forward Error Correction)データとを異なるデータ系列として送信し、受信端末は、受信状態に基づいて、それらの中から適切なデータ系列を選択したりする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−78197号公報
【特許文献2】特開2001−45098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、メディアコンテンツのデータ量は拡大し続けており、遅延防止やリソースを有効活用するために、より効率的なパケットの中継方法が所望されている。
【0012】
しかし、例えば上述の特許文献1では、中継器で、パケットセグメント毎の誤り耐性特性(パケットヘッダ部か、ペイロード部か等)を判断し、かつ、その結果に従って異なる誤り訂正方式を選択する必要があり、中継器での伝送遅延時間が発生してしまうといった問題点が生じていた。また、例えばWWWサーバとアクセスルータ、アクセスルータと受信端末の何れにおいても1対1の通信であり、MTU(Maximum Transmission Unit)等のネットワーク条件をネゴシエーションしたり、再送要求したりすることが可能な場合に適用できる技術である。
【0013】
したがって、サーバからメディアコンテンツをマルチキャスト伝送する場合には、1対多の通信であるため、ネゴシエーションを行うことが出来ず、例えばパスMTUディスカバリーと言われるような、伝送路のMTUを予め取得して、その最小サイズに合わせてパケット化するといった手法を用いることは出来なかった。
【0014】
更に、特許文献2を適用した場合、宅内無線ネットワーク等、マルチキャストされたデータをいったん受信し、他のネットワークへ再送信することの出来る中継器が導入された場合、その中継器で異なるネットワーク特性に応じた伝送パケットを再構成する場合に、FECデータを新たな伝送パケット毎に改めて計算して付加する必要があった。従って、この場合には、中継器を介した受信端末に対して伝送遅延が発生してしまう。
【0015】
とくに、中継器は1つの中継器が多くのネットワークからのパケットについて中継処理を行う必要があった。例えば、1つのネットワークから1つのネットワークへ中継するだけなら1通りの経路で良いが、相互に5つのネットワークを中継する場合で25通り、10のネットワークを中継する場合で100通りと、中継器においてかなり負荷がかかってしまう。
【0016】
従って、中継器の負荷によって、ネットワークにおける伝送遅延が発生してしまうという問題点が生じていた。
【0017】
上述した課題に鑑み、本発明が目的とするところは、IPマルチキャストを用いたメディアコンテンツの配信サービス等において、中継器においてパケットを効率よく転送することにより、遅延時間を少なくしたコンテンツ配信システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題に鑑み、本発明のコンテンツ配信装置は、
少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるコンテンツ配信装置において、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成する多重化部と、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成するメディアパッケージ化部と、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成するメディアパケット生成部と、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成するFEC符号化部と、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成するFECパッケージ化部と、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成するFECパケット生成部と、
前記メディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の受信装置は、
コンテンツ配信装置から、IPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続される受信装置において、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信部と、
前記メディアパケットから、メディアパッケージを抽出するメディアパッケージ抽出部と、
前記FECパケットから、FECパッケージを抽出するFECパッケージ抽出部と、
前記メディアパッケージを復号してメディアペイロードを復元するメディアペイロード復元部と、
前記FECパッケージを復号してFECペイロードを復元するFECペイロード復元部と、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行う誤り訂正部と、
メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号するコンテンツ復号部と、
を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の中継装置は、
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続される中継装置において、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信部と、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化する再パケット化部と、
前記再パケット化されたメディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のコンテンツ配信システムは、
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムにおいて、
前記コンテンツ配信装置は、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成し、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成し、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成し、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成し、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成し、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成し、
前記生成されたメディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信し、
前記受信装置は、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
受信されたメディアパケットを復号してメディアペイロードを、FECパケットを復号してFECペイロードをそれぞれ復元し、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号する、
ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のコンテンツ配信システムには、更に中継装置が接続されており、
前記中継装置は、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化して、メディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する、
ことを特徴とする。
【0023】
本発明のコンテンツ配信方法は、
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムにおけるコンテンツ配信方法であって、
前記コンテンツ配信装置において、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成し、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成し、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成し、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成し、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成し、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成し、
前記生成されたメディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信し、
前記受信装置において、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
受信されたメディアパケットを復号してメディアペイロードを、FECパケットを復号してFECペイロードをそれぞれ復元し、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号する、
ことを実現することを特徴とする。
【0024】
本発明のプログラムは、
少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるメディアコンテンツを配信するコンピュータに、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成する多重化機能と、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成するメディアパッケージ生成機能と、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成するメディアパケット生成機能と、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成するFEC符号化機能と、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成するFECパッケージ生成機能と、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成するFECパケット生成機能と、
前記メディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信機能と、
を実現させることを特徴とする。
【0025】
本発明のプログラムは、
コンテンツ配信装置から、IPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるメディアコンテンツを受信するコンピュータに、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信機能と、
前記メディアパケットから、メディアパッケージを抽出するメディアパッケージ抽出機能と、
前記FECパケットから、FECパッケージを抽出するFECパッケージ抽出機能と、
前記メディアパッケージを復号してメディアペイロードを復元するメディアペイロード復元機能と、
前記FECパッケージを復号してFECペイロードを復元するFECペイロード復元機能と、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行う誤り訂正機能と、
メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号するコンテンツ復号機能と、
を実現させることを特徴とする。
【0026】
本発明のプログラムは、
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるパケットを中継するコンピュータに、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信機能と、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化する再パケット化機能と、
前記再パケット化されたメディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信機能と、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コンテンツ配信システムにおいて、コンテンツ配信装置は、一又は複数のメディアコンテンツを符号化してメディアフラグメントを生成し、それらを多重化して不定長のメディアペイロードを生成した後、一又は複数のメディアペイロードをパッケージ化してメディアパッケージを生成し、メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワーク特性(例えば、MTUサイズ)にてFECパケットと、メディアパケットとをそれぞれ生成し、前記生成されたメディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置が接続された受信側ネットワークへそれぞれ送信する。
【0028】
そして、受信装置は、受信側ネットワークからメディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、受信されたメディアパケットをデパケット化、デパッケージ化してメディアペイロードを、同様の手順でFECパケットからFECペイロードをそれぞれ抽出し、メディアペイロードにエラーがある場合には、FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを逆多重化してメディアフラグメントを抽出し、そのメディアフラグメントを復号化してメディアコンテンツを復号する。
【0029】
このように、FEC符号化計算をパケット化より前のネットワーク特性の影響がない処理段階で実施することで、FEC符号化時のネットワーク特性の影響を除くことができるため、例えば中継装置を介した場合であっても、FECパケットを一度復号し、誤り訂正処理を行った後、再度符号化を行うといったFEC計算の処理を行う必要がなくなる。従って、中継装置での処理は、ネットワーク特性に応じて再パケット化するだけとなり、少ない遅延時間でコンテンツの伝送が実現可能である。
【0030】
また、損失パケット等の誤り訂正処理は、受信装置がメディア復号段階で行うこととなり、実質的にサービス品質を維持しつつ、効率の良いネットワーク伝送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態におけるコンテンツ配信システムの全体を説明するための図である。
【図2】パリティFECの説明をするための図である。
【図3】パリティFECの説明をするための図である。
【図4】コンテンツ配信サーバの機能構成を説明するための図である。
【図5】中継器の機能構成を説明するための図である。
【図6】受信端末の機能構成を説明するための図である。
【図7】コンテンツ配信サーバの処理の流れを説明するための図である。
【図8】中継器の処理の流れを説明するための図である。
【図9】受信端末の処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良な形態について説明する。
【0033】
[1.システムの構成]
図1に本発明を適用したコンテンツ配信システム1の全体を示す。コンテンツ配信システム1には、配信側ネットワーク3と、受信側ネットワーク5が含まれており、中継器20にてネットワークが相互に接続されている。配信側ネットワーク3及び受信側ネットワーク5は、例えば、光ファイバ網で構成されたIPネットワークであり、メディアコンテンツ毎に上記マルチキャストアドレスを共有するマルチキャストグループが構成されている。
【0034】
コンテンツ配信サーバは、上記IP放送サービスシステムや映像監視システム用の配信サーバの例であり、番組毎、もしくは、カメラ映像毎に、別のマルチキャストアドレスへメディアコンテンツを配信する。なお、図1では、番組数又はカメラ映像数が2つの場合を示している。
【0035】
中継器は、ネットワークを中継する装置であり、例えば、宅内における無線LANルータが考えられる。その場合、受信側ネットワーク5は、宅内無線LANネットワークを示すことになる。
【0036】
また、別の例としては、中継器が携帯電話等のモバイル機器用の基地局である場合も考えられる。もちろん、受信側ネットワーク5は無線ネットワークである必要はなく、家庭内や企業内での有線LANも考えられる。
【0037】
いずれの場合においても、中継器は、配信側ネットワークから必要なメディアコンテンツを受信し、受信側ネットワークへマルチキャスト技術で再配信することで、受信側ネットワークに接続している多数の受信端末でのメディアコンテンツ受信を実現することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、一例としてコンテンツ配信サーバ10から配信側ネットワーク3のマルチキャストグループを介して中継器20を経由し、さらに、受信側ネットワーク5のマルチキャストグループを介して受信端末30にメディアコンテンツが配信される場合について説明する。
【0039】
[1.1 MTUについて]
ここで、本実施形態において用いられるMTUについて説明する。IPネットワークにおいて、伝送されるデータは、パケットという単位に分割されて伝送される。このパケットのサイズは、伝送するネットワークの種類によってその最大値(MTU:Maximum Transfer Unit)が決まっている。
【0040】
例えば、イーサネットでは1,500バイト、無線LAN規格の1つの802.11bでは2,370バイトである。このMTUは最大値であるため、それ以上のサイズのパケットをそのまま伝送することができず、その場合は、中継器、もしくは、配信サーバで、サイズ変更(パケットの再構成)が必要となる。また、パケットサイズがMTU以下の場合は、サイズ変更せずにそのままでのデータ伝送は可能であるが、1つのパケットで伝送するデータ量が減るため、伝送効率が低下してしまう。
【0041】
配信サーバと受信端末とが1対1の通信を行う、ユニキャスト方式のコンテンツ伝送であれば、予めサーバから受信端末までの全ネットワークのMTUを調べておいて、その最小サイズのパケットで送信する、パスMTUディスカバリー方式と呼ばれる方法を用いることが可能である。しかし、マルチキャスト配信を行う場合には、伝送に関与するネットワークが変動する場合もあるため、予めMTUを調べることは実質的に不可能である。
【0042】
従って、IPマルチキャストでデータ伝送する場合は、入出力両側のネットワーク種類を把握可能な、中継器でパケットの再構成を行うこととなる。
【0043】
[1.2 FECについて]
また、本実施形態において用いられるFECについて説明する。IPマルチキャスト技術では、トランスポート層のプロトコルとしてUDP(User Datagram Protocol)を用いるのが一般的であるため、データ損失に弱いという欠点がある。
【0044】
そのため、何らかの方法で欠落したデータを回復する必要がある。代表的な誤り回復技術には、受信側からの要求に応じて誤り部分を再送して回復する自動再送要求(ARQ:Automatic Report reQuest)と、送信側で特定アルゴリズムに従った符号化による冗長データを付加し、受信側で誤りを訂正するFEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正)等がある。
【0045】
ただし、複数受信者への同時コンテンツ配信という、IPマルチキャストの特徴を活かした、大規模なマルチキャストグループを考えた場合、ARQのように再送要求をサーバへ送る技術では、要求とその応答というやり取りが爆発的に増加する可能性が高くなってしまう。そのため、大規模なマルチキャストグループでもサーバ負荷を急激に増加させないために、誤り回復技術にFECが利用されるのが一般的である。なお、FECの誤り回復限界を超えた誤りが発生するような場合、マルチキャストでもARQとFECとを併用して誤り回復能力を向上させる場合もある。
【0046】
FEC技術は、コンテンツデータに対して、予め設定されたアルゴリズムに従った冗長データを付与することで実現される。その具体的なアルゴリズムとしては、パリティFEC方式、ハミング符号方式、リード・ソロモン方式、LDPC(Low Density Parity Check Codes:低密度パリティ)符号方式等様々なものがある。
【0047】
[1.2.1 パリティFEC]
パリティ符号は、誤り検出・訂正符号の中でも単純なものであり、数学的にはデータの各ビットの排他的論理和(XOR)で説明できる。このXOR演算では、その入力値が1つ変われば、出力値も変化するため、1つのパリティビットで誤りを1つ検出できることになる。
【0048】
従って、複数のパリティビットを使用すれば、複数の誤り検出と訂正が可能となる。例えば、データA、Bがある場合に、A XOR Bも伝送しておけば、何らかの原因でデータが破損した際であっても、A、B、A XOR Bのいずれか2つが受信されれば、AとBの値を回復できることになる。
【0049】
これは、伝送データが任意の長さのビットストリームであっても同様である。例えば、図2に示す通り、「データA」と「データB」とに加えて、パリティ符号として「データA XOR B」も伝送しておけば、例えば、「データB」が伝送中に欠落したとしても、「データA」と「データA XOR B」とから「データB」を回復(復号)できる。
【0050】
また、図3のように、例えば、4つのパケットから1つのFECパケットを計算しておいた場合には、元の4つのパケットのうち、いずれか1つが欠落したとしても、FECパケットと他の3つのパケットを用いて、欠落パケットを回復することができる。図3の場合は、パケット3が欠落した場合について示しており、パケット1、パケット2、パケット4及びFECパケットによりパケット3が回復(復号)されている。
【0051】
ただし、実際の欠落パケットの回復は一般的に2段階のプロセスで実行される。欠落したパケットを回復するために、まず、元のデータパケットとFECパケットの正しい組み合わせを判断する必要があり、その後、第2段階として、データの再構築を行う。
【0052】
その際、パケットの正しい組み合わせを判断するためには、適切なアルゴリズムを使用する必要がある。例えば、FECパケットを受信したら、その基底シーケンス番号とマスクをチェックして、保護対象のデータパケットを判断する。
【0053】
データパケットがすべて受信されていれば、そのFECパケットは不要なため廃棄される。データパケットの1部が欠落していて、これらのシーケンス番号が受信パケットの最大シーケンス番号よりも小さければ、回復作業を試行する。
【0054】
回復に成功した場合は、このFECパケットを廃棄し、回復されたパケットを再生バッファに保管する。データパケットのシーケンス番号が受信パケットの最大シーケンス番号より大きい場合は、後で再利用できるようFECパケットを保管しておく。その後、データパケットを受信したら、保管されているFECパケットをチェックして、この新データパケットによって回復実行可能かどうか調べ、実行した場合には、回復後にそのFECパケットを廃棄し、回復したパケットを再生バッファに入れる。
【0055】
すなわち、このようなアルゴリズムが機能するためには、特定のデータパケットとFECパケットによって、欠落パケットの回復が可能であるかどうかを判断できなければならず、この判断のためには、FECパケットが参照したパケットをすべて調べる必要がある。
【0056】
[1.2.2 FECとデータの別伝送について]
FECによるデータ回復プロセスを行わない、旧型の受信端末がデータを受信することも考慮すると、多くの場合、FECパケットを別のストリームとして、元のパケットと同じ宛先アドレスに、異なるUDPポートで送信する方法が行われる。
【0057】
また、受信端末が、FECによるデータ回復を行う際、ネットワーク品質が悪く、欠落が多い場合には、FECパケットをより多く受信しておくことで解決可能な場合がある。例えば、その場合には、誤り訂正能力の異なるFECパケットを、それぞれ別ストリームで伝送しておき、受信端末が必要に応じて、必要なFECパケットを受信するようにしておくこともできる。
【0058】
[2.機能構成]
続いて、各装置の機能構成について図を用いて説明する。
【0059】
[2.1 コンテンツ配信サーバ]
まず、コンテンツ配信サーバ10について図4を用いて説明する。図4に示すように、コンテンツ配信サーバ10は、メディアコンテンツ格納部102と、符号化部104と、多重化部106と、FEC符号化部108と、パッケージ化部110(パッケージ化部110a、パッケージ化部110b)と、パケット化部112(パケット化部112a、パケット化部112b)と、送信部114とを備えて構成されている。
【0060】
まず、メディアコンテンツ格納部102は、メディアコンテンツが格納されている機能部である。なお、メディアコンテンツ格納部102に外部からメディアコンテンツが一時的に格納されることとしても良いし、予め格納されていてもよい。更に、外部からリアルタイムにメディアコンテンツが入力され、符号化部104に出力する構成としても良い。
【0061】
すなわち、符号化部104に対してメディアコンテンツが入力されれば良いこととなる。なお、メディアコンテンツは、画像、映像、音声、テキスト等のコンテンツが適宜単一、もしくは、組み合わされている、マルチメディアコンテンツである。
【0062】
符号化部104は、入力されたこのマルチメディアコンテンツを特定の符号化方式に従って変換・圧縮する機能部である。符号化方式は、コンテンツの種類によって様々なものがあり、例えば、画像であれば、JPEG、JPEG2000、PNG等、音声なら、MPEGオーディオ、LPCM、ATRAC、WMA等、映像なら、MPEG−1、−2、−4、H.264、VP8、DivX、WMV等、テキストは、例えば日本語であれば、Shift−JIS、EUC−JP、UTF−8等、を用いることが可能である。
【0063】
この符号化処理を経た、メディアフラグメントは、多重化部106で多重化される。例えば、符号化部より出力された、映像フレーム単位の複数のメディアフラグメントに対して、多重化部は、その特徴、時間、順序、同期等の情報に従って組み合わせ、メディアペイロードとして出力する。
【0064】
このメディアペイロードは、パッケージ化部110aで、例えば、画像とテキスト、映像と音声、映像と音声とテキスト、というような組み合わせでパッケージ化され、メディアパッケージとしてパケット化部112aに出力される。
【0065】
ここで、パッケージ化とは、複数のコンテンツデータストリームをまとめ、より高いデータ転送レートで送り出すことを可能にする機構のことであり、この処理により、複数のコンテンツデータをある場所から別の場所へひとつのリンクで送ることができるようになる。
【0066】
パッケージ化部110aでまとめられたメディアパッケージは、コンテンツ配信サーバ10の送出先であるネットワークの特性に合わせてパケット化部112aで適切なパケットデータ(メディアパケット)に変換される。
【0067】
そして、変換されたパケットデータ(メディアパケット)は、送信部114を介して配信側ネットワーク3に送信される。
【0068】
ネットワーク特性の1つが、上述のMTUであり、ここでパケット情報をヘッダに付加した上で、MTUに合わせたサイズのパケットデータが生成される。従来の配信サーバでは、このパケットデータ毎に、上述のFEC符号化処理が行われ、算出された冗長パケットデータが、FECパケットとして、ネットワークへ出力される。
【0069】
しかし、本実施形態におけるコンテンツ配信サーバでは、コンテンツデータが、上述のメディアペイロードの段階でFEC符号化処理を行い、メディアペイロード単位の冗長データ(FECペイロード)を生成することが特徴である。言い換えると、MTU等のネットワークの特性は、パケット化部での処理において考慮されるものであるため、FEC符号化をネットワーク特性に無関係に実施することができる。これによって、配信側ネットワークに接続された中継器が、異種ネットワークへデータを中継する際の、伝送遅延を少なくすることが可能となる。
【0070】
具体的には、FEC符号化部108において、メディアペイロード単位のFECペイ一ロードを生成する。そして、生成されたFECペイロードは、パッケージ化部110bに出力される。
【0071】
パッケージ化部110bは、FECペイロードをパッケージ化し、FECパッケージとしてパケット化部112bに出力する。FECパッケージは、コンテンツ配信サーバ10の送出先であるネットワークの特性に合わせてパケット化部112bで適切なパケットデータに変換される。
【0072】
そして、変換されたFECパケットは、送信部114を介して配信側ネットワーク3に送信される。
【0073】
[2.2 中継器]
続いて中継器20の構成について図5を用いて説明する。中継器20は、配信側ネットワークからデータを取得して、受信側ネットワークへ再送信する役割を持ち、受信部202と、デパケット化部204と、パケット化部206と、送信部208とを備えて構成されている。
【0074】
ここでは、中継器前後の配信側ネットワーク、受信側ネットワークのネットワーク特性の違いとして、MTUサイズが異なる場合を例示する。まず、MTUがaである配信側ネットワーク3から、パケットサイズaのメディアパケットとFECパケットとを受信部202において受信する。そして、メディアパケットをデパケット化部204aに、FECパケットをデパケット化部204bにそれぞれ出力する。
【0075】
デパケット化部204は、パケットデータのヘッダ情報に基づいてメディアパッケージ、FECパッケージをいったん復元し、再度、パケット化部206で、MTUがbの受信側ネットワーク5の特徴に合わせて、パケットサイズbのメディアパケットをパケット化部206aが、FECパケットをパケット化部206bがそれぞれ生成し、送信部208に出力する。そして、送信部208から、受信側ネットワーク5に送信される。
【0076】
従来技術では、配信側ネットワークからメディアパケットとFECパケットを取得した後、メディアパケットに誤り訂正が必要かどうかを誤り訂正処理部で判断し、必要な場合はその誤り訂正処理に必要なFECパケットを用いてメディアパケットを修復してから、デパケット化部でメディアパッケージに変換し、さらに、パケット化部で、MTUがbである受信側ネットワークの特徴に合わせたパケットデータを生成、生成されたパケットデータに対して、再度、FEC符号化部で冗長データを新たに計算、生成し、受信側ネットワークへ送出する必要があった。
【0077】
中継器では、一般に伝送されているマルチメディアコンテンツを再生する必要はないため、FEC復号による誤り訂正処理を行ってメディアパッケージをいったん完全に復元し、再パケット化、FEC再計算される必要はないが、MTU等のネットワーク特性に合わせたパケット再構成処理を行う際、従来の方法では、上記のような処理を行わざるを得なかった。
【0078】
それに対して、本実施形態における中継器20は、単純に、例えば、パケットサイズの変更を行うだけであり、FEC復号・符号化等の不必要な計算処理がなくなるため、配信側ネットワーク3に直接接続している受信端末や、受信側ネットワーク5に接続されている受信端末におけるコンテンツ再生に、余分な遅延を生じさせずに中継することが可能となる。
【0079】
また、受信側ネットワーク5に接続されている受信端末のうちのいずれかが、ネットワークの状態により受信品質が下がった場合、配信側ネットワーク3にさらに冗長度の高いFECパケットがあるかどうかを確認する場合がある。
【0080】
冗長度の高いFECパケットが存在する場合には、さらに別のFECパケットの取得を要求することがある。この場合、中継器での入力は、例えば、メディアパケットと2つの異なるFECパケットということになり、従来方式での処理はそれら3つのデータを用いたFEC復号・符号化の処理が必要となり、さらに複雑化してしまう。それと比較し、本実施形態の中継器20では、単純なパケット再構築処理(デパケット化とパケット化)を1組増やすだけで実現可能である。
[2.3 受信端末]
続いて、受信端末30について図6を用いて説明する。受信端末30は、受信部300と、デパケット化部302と、デパッケージ化部304と、誤り訂正処理部306と、FEC復号部308と、逆多重化部310と、復号部312と、メディアコンテンツ出力部314とを備えて構成されている。
【0081】
ここで、受信端末30は、基本的には配信サーバ10と逆の処理を行う。すなわち、受信しようとするマルチメディアコンテンツに応じて、中継器20から受信側ネットワーク5へ再配信されたいずれかのマルチキャストグループへ参加し、そこからメディアパケットとFECパケットとを受信部300により受け取る。
【0082】
受信されたパケットは、デパケット化部302に出力される。ここで、各パケットヘッダ情報に基づいて、メディアパケットはデパケット化部302aによりメディアパッケージに、FECパケットはデパケット化部302bによりFECパッケージに復元される。
【0083】
これらのメディアパッケージとFECパッケージとはさらにデパッケージ化部304へ出力される。それぞれパッケージされた際のヘッダ情報に基づいて、デパッケージ化部304aによりメディアペイロードが、デパッケージ化部304bによりFECペイロードがそれぞれ復元される。そして、メディアペイロードが誤り訂正処理部306に、FECペイロードがFEC復号部308にそれぞれ出力される。
【0084】
ペイロード単位で誤り訂正処理の必要性を誤り訂正処理部306で判断して、誤り訂正処理が必要な場合には、その処理に必要なFECペイロードをFEC復号部308から取得する。
【0085】
誤り訂正処理が行われた後、逆多重化部310でメディアペイロードからメディアフラグメントを抽出し、復号部312で符号化されたデータを元に戻すことによって、メディアコンテンツを復元し、メディアコンテンツ出力部314に出力する。
【0086】
メディアコンテンツ出力部314は、入力されたメディアコンテンツに基づいて、メディアコンテンツを出力する。例えば、映像データやテキストデータであれば、表示装置に出力し、音声データであれば音声出力装置に出力する。また、メディアコンテンツ出力部314は、例えば一度記憶装置にメディアコンテンツを出力し、保存することとしても良い。
【0087】
[3.処理の流れ]
続いて、各装置における処理の流れについて、図を用いて説明する。
【0088】
[3.1 コンテンツ配信サーバ]
まず、コンテンツ配信サーバ10の処理の流れについて図7を用いて説明する。まず、メディアコンテンツが入力される(ステップS100)。メディアコンテンツが入力されるとは、配信されるメディアコンテンツが、コンテンツ配信サーバ10において配信するサービス(処理)に入力されることをいう。メディアコンテンツは、保存されているコンテンツであっても良いし、放送局やビデオカメラ等からリアルタイムに配信されるコンテンツであってもよい。すなわち、コンテンツ配信サービス10において配信されるコンテンツが入力されればよい。
【0089】
次に、配信されるメディアコンテンツを符号化し、メディアフラグメントを生成する(ステップS102)。そして、メディアフラグメントを多重化して、メディアペイロードを生成する(ステップS104)。
【0090】
次に、メディアペイロードに基づいて、FEC符号に基づいたFECペイロードが生成される(ステップS106)。FECペイロードから、FECパッケージが作成され(ステップS108)、当該FECパッケージから、配信側ネットワーク3におけるMTUにてFECパケットが生成される(ステップS110)。
【0091】
また、メディアペイロードからメディアパッケージが生成され(ステップS114)、当該メディアパッケージから、配信側ネットワーク3におけるMTUにてメディアパケットが生成される(ステップS116)。そして、メディアパケット及びFECパケットを配信側ネットワーク3に送信する(ステップS112)。
【0092】
ここで、配信側ネットワーク3のMTUについては、コンテンツ配信サーバ3が、ネットワークのMTUについて予め記憶していても良いし、ネットワークに問い合わせても良い。また、配信ネットワーク3側からの要求信号に含まれていることとしても良い。
【0093】
[3.2 中継器]
続いて、中継器20の処理の流れについて、図8を用いて説明する。まず、中継器20は、配信側ネットワーク3からパケットを受信すると(ステップS200)、当該パケットを解析し、パケットの種別を判定する(ステップS202)。
【0094】
ここで、受信されたパケットがメディアパケットの場合には(ステップS204;Yes)、デパケット化して、メディアパッケージを抽出する(ステップS206)。そして、抽出されたメディアパッケージを、今度は受信側ネットワーク5のMTUにて再度パケット化し、受信側ネットワーク5に適したメディアパケットを生成する(ステップS208)。
【0095】
他方、受信されたパケットがFECパケットの場合には(ステップS204;No)、デパケット化して、FECパッケージを抽出する(ステップS210)。そして、抽出されたFECパッケージを、今度は受信側ネットワーク5のMTUにて再度パケット化し、受信側ネットワークに適したFECパケットを生成する(ステップS212)。
【0096】
そして、生成されたメディアパケット及びFECパケットを、受信側ネットワーク3に送信する(ステップS214)。
【0097】
[3.3 受信端末]
続いて、受信端末30の処理の流れについて、図9を用いて説明する。まず、受信端末30においてパケットが受信される(ステップS300)。受信されたパケットを解析することにより、当該パケットがメディアパケットである場合には(ステップS302;Yes)、デパケット化して、メディアパッケージを抽出する(ステップS304)。そして、当該メディアパッケージから、メディアペイロードを復元する(ステップS306)。
【0098】
他方、受信されたパケットがFECパケットである場合には(ステップS302;No)、デパケット化してFECパッケージを抽出する(ステップS308)。そして、当該FECパッケージから、FECペイロードを復元する(ステップS310)。
【0099】
ここで、メディアペイロードにエラーがある場合には(ステップS312;Yes)、エラー箇所を特定した上で、その修正に必要なFECペイロードを利用して、当該FECの符号化アルゴリズムに従って誤り訂正処理を実行する(ステップS314)。続いて、誤り訂正処理が施されたメディアペイロードを逆多重化し、メディアフラグメントを抽出する(ステップS316)。
【0100】
抽出されたメディアフラグメントから、メディアコンテンツを復号し(ステップS318)、復号されたメディアコンテンツを出力する(ステップS320)。
【0101】
このように、本実施形態によれば、中継器において、従来のようにFECパケットを一度復号し、メディアパケットの誤りを訂正するFEC計算処理を行って一度メディアパッケージを抽出し、再度MTUに基づいてメディアパケットをパケット化するとともにそれらのメディアパケットを用いてFECパケットを再度符号化するといった処理を行わず、パケットを中継することができる。
【0102】
これにより、中継器での負荷が減ることから、コンテンツを配信する場合に遅延を防止するといったことが可能となり、更にリソースを節約するといったことが可能となる。特に、中継器が中継するパケットが多いほどその効果は顕著に表れることとなる。
【0103】
また、上述の実施形態を適用することにより、例えばVOD等のサービスにおいて、多数の受信端末へ同時にメディアコンテンツを伝送できるIPマルチキャスト環境において、さらにそのメディアコンテンツを、宅内無線LANやモバイル網などへ中継する場合、中継器(再送信器)において伝送パケットの再構築が必要となるが、その際、中継器における誤り訂正符号再計算をする必要がなくなるため、サービス品質をできる限り保持しつつ、より少ない遅延時間で、より多数の受信端末へメディアコンテンツを伝送することが可能となる。
【0104】
[4.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0105】
また、上述の実施形態において実行される処理は、各機能部をハードウェアとして構成しても良いし、ソフトウェアとして実現してもよい。すなわち、図7〜図9の処理を実行するプログラムを各装置において記憶し、制御部(例えば、CPU等)によって実行されることによって実現されることとしても良い。
【0106】
また、上述した実施形態における各装置の一部又は全部を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現してもよい。各装置の各機能ブロックは個
別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
1 コンテンツ配信システム
3 配信側ネットワーク
5 受信側ネットワーク
10 コンテンツ配信サーバ
102 メディアコンテンツ格納部
104 符号化部
106 多重化部
108 FEC符号化部
110、110a、110b パッケージ化部
112、112a、112b パケット化部
114 送信部
20 中継器
202 受信部
204、204a、204b デパケット化部
206、206a、206b パケット化部
208 送信部
30 受信端末
300 受信部
302、302a、302b デパケット化部
304、304a、304b デパッケージ化部
306 誤り訂正処理部
308 FEC復号部
310 逆多重化部
312 復号部
314 メディアコンテンツ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるコンテンツ配信装置において、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成する多重化部と、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成するメディアパッケージ化部と、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成するメディアパケット生成部と、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成するFEC符号化部と、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成するFECパッケージ化部と、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成するFECパケット生成部と、
前記メディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信部と、
を備えることを特徴とするコンテンツ配信装置。
【請求項2】
コンテンツ配信装置から、IPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続される受信装置において、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信部と、
前記メディアパケットから、メディアパッケージを抽出するメディアパッケージ抽出部と、
前記FECパケットから、FECパッケージを抽出するFECパッケージ抽出部と、
前記メディアパッケージを復号してメディアペイロードを復元するメディアペイロード復元部と、
前記FECパッケージを復号してFECペイロードを復元するFECペイロード復元部と、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行う誤り訂正部と、
メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号するコンテンツ復号部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項3】
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続される中継装置において、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信部と、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化する再パケット化部と、
前記再パケット化されたメディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項4】
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムにおいて、
前記コンテンツ配信装置は、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成し、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成し、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成し、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成し、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成し、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成し、
前記生成されたメディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信し、
前記受信装置は、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
受信されたメディアパケットを復号してメディアペイロードを、FECパケットを復号してFECペイロードをそれぞれ復元し、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号する、
ことを特徴とするコンテンツ配信システム。
【請求項5】
前記コンテンツ配信システムには、更に中継装置が接続されており、
前記中継装置は、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化して、メディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載のコンテンツ配信システム。
【請求項6】
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムにおけるコンテンツ配信方法は、
前記コンテンツ配信装置において、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成し、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成し、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成し、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成し、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成し、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成し、
前記生成されたメディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信し、
前記受信装置において、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信し、
受信されたメディアパケットを復号してメディアペイロードを、FECパケットを復号してFECペイロードをそれぞれ復元し、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行った後に、メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号する、
ことを実現するコンテンツ配信方法。
【請求項7】
少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるメディアコンテンツを配信するコンピュータに、
メディアコンテンツを符号化、多重化してメディアペイロードを生成する多重化機能と、
前記メディアペイロードを組み合わせて、メディアパッケージを生成するメディアパッケージ生成機能と、
前記メディアパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてメディアパケットを生成するメディアパケット生成機能と、
前記メディアペイロードに基づいて、FECペイロードを生成するFEC符号化機能と、
前記FECペイロードを組み合わせて、FECパッケージを生成するFECパッケージ生成機能と、
前記FECパッケージに基づいて、送信されるネットワークの特性に応じてFECパケットを生成するFECパケット生成機能と、
前記メディアパケットと、前記FECパケットとを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項8】
コンテンツ配信装置から、IPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるメディアコンテンツを受信するコンピュータに、
メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信機能と、
前記メディアパケットから、メディアパッケージを抽出するメディアパッケージ抽出機能と、
前記FECパケットから、FECパッケージを抽出するFECパッケージ抽出機能と、
前記メディアパッケージを復号してメディアペイロードを復元するメディアペイロード復元機能と、
前記FECパッケージを復号してFECペイロードを復元するFECペイロード復元機能と、
前記メディアペイロードにエラーがある場合には、前記FECペイロードを利用して誤り訂正を行う誤り訂正機能と、
メディアペイロードを逆多重化、復号してメディアコンテンツを復号するコンテンツ復号機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項9】
コンテンツ配信装置から、少なくとも一台の受信装置にIPマルチキャストのメディアコンテンツが配信されるコンテンツ配信システムに接続されるパケットを中継するコンピュータに、
コンテンツ配信装置から、メディアパケット及びFECパケットをそれぞれ受信する受信機能と、
前記受信されたメディアパケット及びFECパケットを、送信先のネットワークの特性に応じて再パケット化する再パケット化機能と、
前記再パケット化されたメディアパケット及びFECパケットを、前記受信装置にそれぞれ送信する送信機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−26917(P2013−26917A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161187(P2011−161187)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】