説明

コンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法

【課題】コンディショニングディスク上における活性砥粒数の正確で一貫した測定方法を提供する。
【解決手段】この方法は、(a)ダイヤモンドコンディショニングディスクのダイヤモンド砥粒含有面が検査体の硬質面と対向するように、ダイヤモンドコンディショニングディスクを硬質面と接触させる工程と、(b)ダイヤモンドコンディショニングディスクのダイヤモンド砥粒含有面上に存在する任意の活性砥粒が、それぞれの活性砥粒に対応する痕跡を残すように、硬質面を横切って荷重下でダイヤモンドコンディショニングディスクを移動させる工程と、(c)ダイヤモンドコンディショニングディスク上の活性砥粒数を測定するための痕跡を計数する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド等を砥粒として用いたコンディショニングディスクは、ポリウレタン等からなる研磨パッドの粗度を維持するためにCMP工程に使用されている。これらのディスクは、品質及び性能の信頼性を高めるために標準化され、いくつかの会社によって生産、販売されている。一般的に、ダイヤモンドコンディショニングディスクは、特に、ディスクの表面上に存在するダイヤモンド砥粒の総数、及び一定期間に亘る使用または環境試験後に残っているダイヤモンド砥粒数に基づいて評価される。しかし、ダイヤモンドコンディショニングディスクの性能は、ディスクの表面に存在する砥粒の総数に依存するのではなく、実際に研削に寄与する活性砥粒数に依存する。
【0003】
活性砥粒は、CMP工程の間、CMPパッドの表面と実質的に接触して研磨する砥粒である。ダイヤモンドコンディショニングディスクの表面の、よりトポグラフィー的に突出した領域上にあるダイヤモンド砥粒、及び、ダイヤモンド砥粒がディスクの表面上に一緒に集まっている領域では、他の砥粒よりもディスク表面から突出しているダイヤモンド砥粒は、簡単な幾何学的見地から、CMPパッドの表面に接触するためにもっとも有用である。与えられた条件下での活性砥粒数は、ダイヤモンドコンディショニングディスク上のダイヤモンド砥粒の総数、それらのグループ化、トポグラフィーを含むダイヤモンドコンディショニングディスクの表面特性、及びダイヤモンドコンディショニングディスクにかけられる荷重に依存する。ダイヤモンドコンディショニングディスクの表面上におけるダイヤモンド砥粒の大略の総数を測定するために、ダイヤモンドコンディショニングディスクの局部領域での簡単な顕微鏡試験、並びに初期砥粒の配置及び表面積の幾何学的パターンに基づいた評価が行われてきたが、これまでのところ、活性砥粒数を測定するための簡単で、信頼性のある、コスト効率のよい方法はなかった。
【0004】
ダイヤモンドコンディショニングディスクの表面上における活性砥粒数が容易に測定できれば、これにより、製造者は、CMP工程の間、CMPパッドの研磨において、それらの実在的な有効性によりディスクの品質を制御し、さらによく維持することができると思われる。ダイヤモンドコンディショニングディスクの表面は、完全に平面ではなく、ダイヤモンド砥粒は、生産方法及びコンディショナー基板の表面の特異的なトポグラフィーによってグループ化されていてもよい。さらに、ダイヤモンド砥粒は、同一のディスク上に異なる工程により固定されていても良いし、異なるディスク上に異なるグループとして固定されてもよい。コンディショニングディスク上のダイヤモンド砥粒の総数が同じであったとしても、上述したトポグラフィー及びダイヤモンド砥粒グループ化により、活性砥粒数及び研削結果が如何に変化し、これらのダイヤモンドコンディショニングディスクがCMPパッドの表面を如何に研磨できるかについては、ディスク間で相当な相違があり得る。
【0005】
活性砥粒の効果的な計数方法は、今まで開示されておらず、製造者及びユーザは、コンディショニングディスク表面上に存在するダイヤモンド砥粒の総数の評価という、ほとんど効果のない方法に依存してきた。
【0006】
例えば、米国特許第7,011,566号は、どのようにしてCMPパッドのコンディショニングが効果的に行われるかを決めるための方法を開示している。しかし、‘566特許によって開示された方法は、ダイヤモンドコンディショナー基板上における活性砥粒数も、ダイヤモンド砥粒の総数も示さない。(特許文献1参照)
【0007】
同様に、http://www.abrasive-tech.com/pdf/effectsdiamond.pdfから入手できるBubnick等の“Effects of Diamonds Size and Shape on Polyurethane Pad Conditioning”、Abrasive Technologies、2004においては、ダイヤモンド砥粒の大きさ及び形状は、ダイヤモンドコンディショナーの有効寿命に重要な関連があると開示されているが、ダイヤモンド砥粒の総数及び活性砥粒数は測定されておらず、また考慮もされていない。(非特許文献1参照)
【0008】
また、http://www.abrasive-tech.com/pdf/tcmptungsten.pdfから入手できるBubnick等の“Optimizing Diamond Conditioning Disks for the Tungsten CMP Process”、Abrasive Technologies、2002においては、他のダイヤモンド砥粒特性とともに、“ダイヤモンド砥粒の密度”のコントロールが、ダイヤモンドコンディショナー上におけるダイヤモンド砥粒の寿命延長に役立つことを開示しているが、一般的に、ダイヤモンド砥粒の密度、または特に活性砥粒の密度をどのようにして測定するのかについては開示がない。(非特許文献2参照)
【0009】
さらに、Goers等の“Measurement and Analysis of Diamond Retention in CMP Diamond Pad Conditioners”2000においては、ダイヤモンドコンディショニングディスクの表面上におけるダイヤモンド砥粒の総数を、一般的に用いられる顕微鏡レベルで観察し、ダイヤモンド砥粒の特異整列及び配置に触れている。しかし、活性砥粒数は、ダイヤモンド砥粒の総数のみから算出、または推定することはできない。全表面ダイヤモンド砥粒数に対して、活性砥粒数は少なくとも2〜3桁少ないためである。Goers等は、活性砥粒の記述、それらの重要性の検討、またはどれだけ多くの活性砥粒が存在するかに対する測定手段については、提供していない。(非特許文献3参照)
【0010】
DyerとSchlueterの“Characterizing CMP pad conditioning using diamond abrasives”においては、ダイヤモンドコンディショニングディスク表面上のダイヤモンド砥粒を顕微鏡検査し、“ダイヤモンド砥粒損失”の測定について触れられている。ダイヤモンドコンディショナー表面上で予め測定されたグリッド上に個別に配置されたダイヤモンド砥粒に加えて、1−9のクラスタに配列されたダイヤモンド砥粒からダイヤモンド砥粒の総数を推定しているが、活性砥粒数の存在または測定に対しては何の言及もない。(非特許文献4参照)
【0011】
http://www.diamonex.com/diabond_key_factors.htmから入手できるZimmerとStubbmannの、“Key factors influencing performance consistency of CMP pad conditioners”においては、コンディショナーの総面積により分けられたパッドと接触する砥粒の総数として「作業砥粒密度」の概念が議論されている。著者は、使用後のコンディショナーを綿密に検査し、与えられた領域内における砥粒粒子の総数と比較して物理的摩耗を示す砥粒粒子の数を計数することにより、作業砥粒密度が測定され得ることを開示する。両密度の比は、その後、コンディショナーの品質に対する評価として用いられる。(非特許文献5参照)
【0012】
同様に、http://www.morganadvancedceramics.com/articles/cmp_optimization.htmから入手できるThearとKimockの“Improving productivity through optimization of the CMP conditioning process”において、与えられた領域内における砥粒粒子の総数と比較して物理的摩耗を示す砥粒粒子の数として作業砥粒密度が定義されている。このような計算は、使用後、コンディショナーを綿密な検査により得られ、コンディショナーの品質を示すために用いられる。しかし、これらの参照文献により開示された、使用後の可視的な綿密な検査手続きは、摩耗したディスクについてのみ効果的に用いられ、多様な寿命段階での活性砥粒数に対する直接的な情報は提供しない。さらに、パッドを研削したことにより摩耗したダイヤモンド砥粒と、パッドに接触して摩耗はしているが研削はしなかった砥粒との区別は困難である。(非特許文献6参照)
【0013】
ダイヤモンドコンディショニングディスクのユーザは、常に一貫した検査により効率よく、ダイヤモンドコンディショニングディスク製造者から同一の品質の製品を納入していることが確認できなければならない。また、試験により、ユーザは自らが必要とする製品の規格を決定できなければならない。ユーザはまた、特定の操作条件下でディスクがどのように機能しているかを理解する必要があり、ダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を正確に測定する方法があれば、このような観点から有用な情報をユーザーは得ることができる。最後に、研究及び開発の観点から、このような試験方法があれば、ダイヤモンドコンディショナーの製造者は、ダイヤモンドコンディショニングディスクの存在する製造方法を如何に改善できるか理解できる上、新しいCMPの開発及び関連工程について一層有用な情報を得ることができる。
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,011,566号
【非特許文献1】http://www.abrasive-tech.com/pdf/effectsdiamond.pdfから入手できるBubnick等の“Effects of Diamonds Size and Shape on Polyurethane Pad Conditioning”、Abrasive Technologies、2004
【非特許文献2】http://www.abrasive-tech.com/pdf/tcmptungsten.pdfから入手できるBubnick等の“Optimizing Diamond Conditioning Disks for the Tungsten CMP Process”、Abrasive Technologies、2002
【非特許文献3】Goers等の“Measurement and Analysis of Diamond Retention in CMP Diamond Pad Conditioners”2000
【非特許文献4】DyerとSchlueterの“Characterizing CMP pad conditioning using diamond abrasives”
【非特許文献5】http://www.diamonex.com/diabond_key_factors.htmから入手できるZimmerとStubbmannの、“Key factors influencing performance consistency of CMP pad conditioners”
【非特許文献6】http://www.morganadvancedceramics.com/articles/cmp_optimization.htmから入手できるThearとKimockの“Improving productivity through optimization of the CMP conditioning process”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、コンディショニングディスク上における活性砥粒数の正確で一貫した測定方法を提供するものである。本発明の効果は、ここに提供された発明の記述から明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、コンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定する方法を提供する。この方法は、(a)コンディショニングディスクの砥粒含有面が検査体の硬質面と対向するように、コンディショニングディスクを硬質面と接触させる工程と、(b)コンディショニングディスクの前記砥粒含有面上に存在する任意の活性砥粒が、それぞれの活性砥粒に対応する痕跡を残すように、前記硬質面へ向けてコンディショニングディスクに荷重をかけた状態で前記硬質面に沿って前記コンディショニングディスクを移動させる工程と、(c)前記硬質面に形成された痕跡を計数して前記コンディショニングディスク上の活性砥粒数を測定する工程とを具備する。
【0017】
本発明の好ましい様態に係る方法では、前記検査体の硬質面はコントラスト物質層を含み、コンディショニングディスクが硬質面を横切って移動する時に、コンディショニングディスクの一端から他端がコントラスト物質層上を通過し、活性砥粒がコントラスト物質層および硬質面を引っ掻いて明瞭な痕跡が形成されるようにする。
【発明の効果】
【0018】
前記硬質面に形成された痕跡を計数することにより、コンディショニングディスク上の活性砥粒数を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
出願人は、コンディショニングディスクの表面上における活性砥粒数を正確、かつ一貫して測定するための方法を開発した。この方法では、コンディショニングディスクの砥粒含有面を検査体の硬質面と対向させてこれに接触させ、コンディショニングディスクの一端から他端までが、検査体の硬質面を完全に通過するようにコンディショニングディスクを移動させる。検査体の硬質面には、コントラスト物質からなるコントラスト物質層が設けられてもよい。コントラスト物質層は、検査体の硬質面に取付けられてもよいし、検査体の硬質面に彩色、染色、または着色が施されて形成されていても良い。コントラスト物質層は、光学またはその他の手段により硬質シートと区別される色を提供することが好ましい。軸方向に荷重(例えば、一定荷重でもよい)をかけつつ検査体の硬質面を横切ってダイヤモンドコンディショニングディスクを移動させることにより、ディスク上の活性砥粒は、硬質面及び/または存在するならコントラスト物質層を通じて痕跡または条痕(条痕)を形成する。得られた痕跡(条痕)を光学顕微鏡またはその他の適当な手段により計数することにより、活性砥粒の数を測定することができる。
【0020】
具体的にいうと、(1)水平及び垂直の動きに対して適当な規制を有する平坦な作業表面上において、大きさ約8インチ(約20.32cm)×約10インチ(約25.4cm)及び厚さ約3/32インチ(約2.38mm)の長方形のポリカーボネートシートを置き、(2)前記シートの長軸に対し垂直に、前記シートの表面の上を横切って、消えない濃いフェルトチップマーカーを用いて長さ4〜5インチ(10.16cm〜12.7cm)の一定幅の狭い帯状層を形成し、(3)帯状層の始点上または始点の付近に外周縁が位置するようにダイヤモンドコンディショニングディスクを置き、(4)総荷重が約25ポンド(約11.325kg)以下になるように、ダイヤモンドコンディショニングディスク上に荷重を置き、(5)ディスク表面がフェルトマーカーによる帯状層上を通過するようにシートの長軸に対して平行に約1〜2インチ/秒(約2.54〜5.08cm/秒)程度の一定な速度でダイヤモンドコンディショニングディスクを機械的に引き、ダイヤモンドコンディショニングディスクの後端が帯状層を通過した時にディスクの移動を停止し、(6)最後に、フェルトマーカーによるコントラスト帯状層を横切っている条痕を光学顕微鏡で計数することにより、その荷重における活性砥粒数を、容易にかつ再現性のある方法で測定できることが分かった。なお、本発明はダイヤモンドコンディショニングディスクへの適用に限定されるものではなく、CBNなど他種の砥粒を用いたコンディショニングディスクに用いてもよい。
【0021】
ダイヤモンド砥粒数は、他の非光学手段、例えばプロファイロメータの使用を通じて条痕の数を測定することによっても計数できる。この場合、フェルトチップマーカーなどを用いて帯状層を形成し、光学的なコントラスト(明瞭化)を引き起こす必要はない。上記の両手段は、適当な条件下で使い分け可能である。
【0022】
計数された活性砥粒数は、試験の間に、ダイヤモンドコンディショニングディスクの整列によって変化される。このような変化は、ダイヤモンド砥粒が活性なのか否かを測定する因子の性質を理解できるように与えられる。しかし、活性砥粒に対する最大及び最小の計数の差は、数十万であってもよい、コンディショニングディスク上のダイヤモンド砥粒の総数よりさらに小さい桁である。したがって、方向によって少しの変動があっても、本発明の方法を用いて得られたその“範囲”の値によって、コンディショニングディスクを特徴付けることが可能である。
【0023】
さらに、出願人は、コンディショニングディスクを単に約1/4インチ(6.35mm)程度の短距離で押し、得られた各条痕の原点をマークすることにより、活性砥粒の計数及び活性砥粒の位置のマップ化の両方が可能であることを見出した。本発明の方法のこのような実施様態は、また、コントラスト物質層を必要とせず、条痕は、ポリカーボネートシートを背後から照らして暗い背景に対してそれを視察することにより、目視で容易に計数される。
【0024】
本発明の方法の結果は、容易に再現され、信頼できる。さらに、本発明の方法を行う費用は、特に光学顕微鏡による最終観測で、物質がポリカーボネートシートの場合、非常に少ない。さらに、本発明の方法は、このような目的のために存在し、または開発される特定装置が特に産業的環境において信頼することができ、問題が起こらず、さらに再現性のある方式で本工程を収容するために適用されなくてもよいという示唆はなかったものの、最小の装置または製造により容易に行われる。
【0025】
本発明において、検査体の硬質面は、プラスチック、金属、ガラスなどのような任意の硬質平滑材料からなる。硬質面は、約65〜約75MPaの降伏強度を有する物質で形成されていることが好ましく、約70MPa付近の降伏強度を有する物質がさらに好ましい。好ましくは、前記硬質物質はプラスチックであり、適当な降伏強度を有する任意の硬質プラスチックが用いられてもよい。前記プラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル、セルロースなどが好ましく、ポリカーボネートがさらに好ましい。好ましいアクリル酸重合体には、ポリメタクリレート及びポリメチルメタクリレートが含まれる。
【0026】
検査体の硬質面を構成する物質の色、透明性または外観は、本発明では特に限定されない。検査体の色とは明瞭に異なる任意のコントラスト色が、コントラスト物質層のために用いられてもよく、その場合は黒色及び紺青色が好ましい。プロファイロメトリーが条痕の数を測定するために用いられる場合を除き、透明、または半透明の物質または任意の程度の色または透明性または任意の外観を有する物質が用いられると測定が容易である。ただし、光学方法が条痕を計数するために用いられる場合、合理的な程度の透明、または半透明で、条痕が作られた層または薄いコントラスト付着物を横切って視覚的に充分に区別できる物質が好ましい。CMPパッドで使用される固体ポリウレタンは、本発明の検査体の硬質面として非常に適しているが、このような透明でない物質が使用される場合には、プロファイロメトリーは測定方法として好ましい。ただし、条痕測定の光学方法も排除されない。
【0027】
硬質物質の形態は任意の適当な形態であってもよい。テーブルまたは平らな作業台の上の平坦な面、あるいはその平坦面に固定されたシートであってもよい。本発明では特に、シートが好ましい。シートは安価であるし、テーブルまたは作業台の上に着脱可能に取り付けることにより、試験毎に容易に取り替えられる。シートを用いない場合には、硬質面の表面から条痕を取り除くために何らかの処理が必要である。検査体の硬質面の寸法は、特に限定されないが、ディスクが、染色された帯状層またはその他測定区域を全体的に通過して移動できれば十分であり、好ましくは、長さ約9インチ(約22.86cm)及び幅約5インチ(約12.7cm)以内である。また、シートは、選択されたいずれかの測定手段、典型的には光学顕微鏡によって、条痕の観測を困難にさせたり、または妨害したりする程度に大きくない方が好ましい。約5インチ(約12.7cm)×約8インチ(約20.32cm)、約9インチ(約22.86cm)×約12インチ(約30.48cm)の大きさがさらに好ましく、約8インチ(約20.32cm)×約10インチ(約25.4cm)の寸法がさらにより好ましい。
【0028】
シートの厚さは特に限定されないが、シートは剛性を有すべきであり、かつある程度の可撓性を有しなければならない。シートが薄すぎると、ダイヤモンドコンディショニングディスクが移動する際に、シートが引っ張られて変形または歪み、条痕の数が不正確になる。シートが厚すぎると扱いにくく、特に、光学透明性または半透明性が光学測定に対し重要な場合、またはプロファイロメトリーが使用される場合、測定の精度を落とすことがある。また、シートが厚すぎて荷重下で少し曲がり、シートが置かれた平坦な作業表面に倣う場合、シートの製造工程における固有の平面性の偏差により、測定結果の正確度が相当な影響を受けることになる。
【0029】
上述した寸法は、ダイヤモンドコンディショニングディスクの実際の大きさが直径4インチ(10.16cm)である場合に基づいたものである。シートおよび検査体の寸法は、ダイヤモンドコンディショニングディスクの大きさが変化した場合には、適当に調整されてもよい。
【0030】
コントラスト物質層の形態及び物質は、特に限定されない。コントラスト物質層は、典型的に、光学方法が条痕の数を計数するために使用されるときに好適に使用される。コントラスト物質の薄層は、任意の時点で形成されてもよいが、好ましくは、検査体またはシートの製造時に適用される。例えば、彩色、染色または着色された層が製造され、任意の時点に硬質物質の表面に塗布または適用され、物質の性質により指定される方式で乾燥または硬化される。乾燥、硬化または固着する時、コントラスト物質は、ダイヤモンド砥粒がコントラスト物質層に傷を付けられないほど硬質であってはならない。
【0031】
一方、条痕のきれいなパターンが、本発明の方法により合理的に得られず、または維持できないため、コントラスト物質層はあまりに軟質であってはならない。コントラスト物質層のために使用され得る物質は、特に限定されない。いくつかの実施様態において、濃い色の消えないマーカーインクは、検査体の表面を形成する硬質物質が透明または白色の時、特に好ましい。他の実施様態として、検査体の硬質面への使用に好ましい染色、または着色されたプラスチックを用いてもよい。コントラスト物質層は、基体を構成する第1のプラスチック上に第2のプラスチック層を配置し、熱、圧力または硬化によって二つのプラスチック層を積層する技術によって形成されてもよいし、または接着剤で張りあわされてもよい。
【0032】
コントラスト物質層は、特に、機械装置を使用した測定方法または測定の標準化のために必要であれば、コントラスト物質層の寸法に合わせて形成された硬質面内における凹部にはめ込んで、融合または積層されてもよい。この場合、得られた表面は、精度及び信頼性があるように平滑でなければならない。層付着の結果として、硬質面に沿ってダイヤモンドコンディショニングディスクが移動する際に、平滑な移動を妨げる有意なトポグラフィー変化(凹凸)が生じることはあってはならない。さらに、コントラスト物質層は、任意の適当な手段により、コントラスト物質層の厚さに対応した深さの検査体の凹部に顔料、染料または他の光学的コントラスト物質を層状に充填して形成されてもよい。
【0033】
コントラスト物質の薄層により硬質面が構成される場合、コントラスト物質層の硬度は特に限定されない。一般的に、コントラスト物質層の硬度は、検査体を形成する基礎硬質物質の硬度と等しいか、またはそれ未満の硬度が好ましい。しかし、基礎硬質物質よりさらに軟質である場合であっても、あまりに軟質であると測定を行うまでの間に条痕の外観を保ちにくくなるので、あまり軟質であってはならないし、また擦られて不鮮明化したり、簡単に除去されてもいけない。
【0034】
コントラスト物質層の塗布方法は、特に限定されるものではなく、層は、検査体の硬質面をコーティング、キャスティング、硬化、ペインティング、噴射、ワイピング、マーキング、彩色、着色、または染色によって行われてもよい。いくつかの実施様態において、コントラスト物質層は、例えば、コーティング、キャスティング、ペインティングなどにより検査体の硬質面に別個の層を取り付けることにより製造される。他の実施様態において、コントラスト物質層は、例えば、検査体の硬質面の染色、彩色、または着色によって検査体の硬質面に物質を混入することにより製造される。乾燥または固体化に時間がかかる層の製造に使用された物質は、条痕を作る前に、乾燥のために十分な時間を与えなければならない。
【0035】
コントラスト物質層の寸法は、特に限定されない。一般的に、長さは、試験を受けるダイヤモンドコンディショニングディスクの直径以上でなければならない。また、一般的に厚さは、測定の間、多くの活性砥粒が、コントラスト物質層を貫通して検査体の表面まで条痕しない程度に厚くなければならない。しかし、コントラスト物質層は、条痕を検出するように十分なコントラストを提供するのに充分な程度厚くなければならない。コントラスト物質層は、好ましくは、約0.0001インチ(0.00254mm)〜約0.1インチ(2.54mm)(例えば、約0.001インチ(0.0254mm)〜約0.01インチ(0.254mm))の範囲の厚さを有する。
【0036】
硬質物質の表面に対し、コントラスト物質層の位置または配向は、特に限定されない。コンディショニングディスクが直線的にコントラスト物質層を完全に横切って移動できる任意の位置または配向が用いられる。しかし、コントラスト物質層は、ダイヤモンドコンディショニングディスクが移動される範囲の中間に位置し、その長軸がダイヤモンドコンディショニングディスクが移動される方向に対して直角となるように位置するのが好ましい。
【0037】
活性砥粒数は、一般に、ダイヤモンドコンディショニングディスクにかけられる荷重の関数となる。ダイヤモンドコンディショニングディスクに適用される荷重は特に限定されない。本発明で用いられる荷重は、ディスクの実際の使用時の荷重条件を反映するように選択される。一般には、ディスクの総重量と印加荷重の合計が、約2ポンド(908g)〜約25ポンド(11350g)になるような荷重が好ましい(例えば、約3ポンド(1362g)〜約15ポンド(6810g)、または約4ポンド(1816g)〜約10ポンド(4540g)である)。
【0038】
ダイヤモンドコンディショニングディスクを移動させる移動手段は、特に限定されるものではなく、コンディショニングディスクは、その目的のために製造された機械的装置により、または手動で移動されてもよい。例えば、コンディショニングディスクは、硬質面を横切って押したり、引いたり、回転したり、所定の振幅で振られたりしてもよい。適当な機械的装置は、例えば、コンディショニングディスクが合理的な速度でシート上を移動する間に、コンディショニングディスクでシート表面を軽く叩くようにしてもよいし、または振子の末端上にディスクを吊ってそれを振ってもよい。駆動源として、気体圧力、電動力、磁気力、機械力(例えば、ピストン、チェーン、スクリュー、ギア、レバーを用いる)、または油圧的に駆動される機械類を用いてもよい。
【0039】
本発明の方法への使用に適当な機械的装置の例は、図1に示される。この装置は、例えば深さ約9インチ(22.86cm)〜約12インチ(30.48cm)、長さ約2.5フィート(76.2cm)、及び幅約1.5フィート(45.72cm)のケース10を有する。モーター20は、前方壁の内部に取り付けられる。壁の内部には減速ギアボックス30が配置されている。モーター20のシャフトには小さい方のギアが取り付けられ、大きい方のギアは、内側壁上に固定された定着物によって回転自在に支持されている。大きいギヤには、ケース10の全長に延びるスクリュー40(直径1/3インチ(0.84cm)−1/2インチ(1.27cm))が取り付けられている。スクリュー40は、2枚の金属板50の間に平行かつ安定に支持されている。スクリュー40には、雌ねじ穴を有する硬質金属バー60(長さ約4インチ、厚さ約1/16インチ、幅約3/4インチ)が緩やかに螺合されている。スクリュー40が回ると、十分滑らかに、かつ容易に硬質金属バー60が前後に移動する。したがって、モーター20に通電すると、ケース10のヘッド及びモーター20の方向へのネジ山の回転によってバー60が動かされるようになっている。実施例において記述されたようなポリカーボネートシート70は、ケース10の上面と硬質金属バー60との間に位置する。実施例において記述されたように、ポリカーボネートシート70のほぼ全幅に亘って、かつシート70の長さ方向の約中央位置に、例えばフェルトチップマーカーによって作られた帯状層80(コントラスト物質層)が設けられている。ダイヤモンドコンディショニングディスク90を、ポリカーボネートシート70上においてダイヤモンド砥粒面を下にして置き(すなわち、ケースの上面に対向して置き)、硬質金属バー60を、帯状層80の後端縁がダイヤモンドコンディショニングディスクの前端縁に対応するまで、スクリュー40を回転することにより移動させる。モーター20は、矢印により示す方向に、ダイヤモンドコンディショナー90が帯状層80を横切って移動するように係合される。硬質金属バー60及びディスク90の速度は、実施例において示す速度でモーター20に電流を供給するケーブルに接続された可変抵抗器により調整される。ダイヤモンドコンディショニングディスク90の後端縁が帯状層80の前端縁に達するまで移動を継続する。
【0040】
コンディショニングディスク90を移動させると同時に、検査体70の硬質面を、コンディショニングディスク90の表面に沿って移動させてもよい。注意深く制御されるなら、湾曲された進路とすることもできる。この場合、特定目的、例えばわずかな条痕検証を考慮することができる。しかし一般には、コンディショニングディスク90の移動は、好ましくは直線的である。移動速度は一定であることが好ましいが、途中で加速または減速されてもよい。硬質物質70の表面(存在する場合にはコントラスト物質層または他の同等な物質の層80)を横切るダイヤモンドコンディショニングディスク90の速度は、限定されるものではないが、好ましくは、約0.25インチ/秒(6.35mm/秒)〜約4インチ/秒(10.16cm/秒)(例えば、約0.5インチ/秒(1.27cm/秒)〜約3インチ/秒(7.62cm/秒))である。速度は、さらに好ましくは、約1〜約2インチ/秒(2.54〜5.08cm/秒)である。速度が小さすぎると、物質によって、条痕が効果的に作られないこともあるが、速度が大きすぎると、基礎物質が移動方向に歪み、実質的に計数時の正確性及び精度が減少するおそれがある。
【0041】
条痕の長さは、ダイヤモンドコンディショニングディスク90が走行する距離によって決まる。好ましくは、コントラスト物質層80を全体的に横切るに十分な長さである。しかし、条痕の長さは、光学観測、顕微鏡光学観測、プロファイロメトリー観測、または本発明で使用される任意の形態の観測に適当な任意値であってもよい。
【0042】
条痕の観測手段は、特に限定されるものではない。原則として、多様な装置が条痕と周りの平滑な表面との間でコントラストを観測するために使用されてもよい。しかし、コントラスト物質層80により光学コントラストが提供される場合は、光学顕微鏡による観測が好ましい。プロファイロメータまたは他のトポグラフィー測定技術を使用してもよい。この場合、コントラスト物質層がなく、または条痕をコントラストする他の視覚的な手段が使用されない場合に特に好ましい。
【0043】
好ましい実施様態の変形としては、ダイヤモンドコンディショニングディスクを擦りつける対象として、硬質物質の代りに実際のCMPパッドを使用してもよい。但し、この場合、CMPパッドは固体材料でなければならない。この場合、プロファイロメトリーまたは類似トポグラフィー測定技術を用いて結果を測定することが好ましい。
【実施例1】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例はもちろん、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
実施例として、本発明によりダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための方法を説明する。
【0046】
8インチ(20.32cm)×10インチ(25.4cm)で厚さ3/32インチ(2.38mm)の寸法を有するポリカーボネートシート(GE Plastics社製「XL10 Lexan」(商品名))を、平坦できれいな表面を有する厚さ3/8インチ(9.525mm)のガラス板上に置き、ガラス板の上に前記シートの水平及び垂直動作を防止するように拘束装置を取り付けた。拘束装置は、一つ以上の直線エッジを有するポリカーボネートストリップ、長方形のアルミニウムブロック、及び金属の定規から構成され、これらはいずれも、両面テープでガラス板に取り付けられた。ポリカーボネートシートの上には、消えない黒色フェルトペンを使って一連の連続線が描かれた。帯はシートの長手方向の軸線に対して直角に、シートの長手方向のほぼ中央にマーカーで描かれ、その太さは約1/8インチ(3.175mm)とされた。
【0047】
研削面上に粒度200のダイヤモンド砥粒をほぼ202,000個有する、使用済みの直径4.25インチの三菱マテリアル株式会社製「トリプル・リング・ドット(MMC TRD)ダイヤモンドコンディショニングディスク」(商品名)を用意した。このディスクのダイヤモンド砥粒面を下に向けて、ディスクの先端側のエッジが、消えないフェルトペンで描かれた帯の近い側の側縁に触れるように、かつ、ディスクの一端が左側のシート拘束装置に触れるようにディスクを配置した。ダイヤモンドコンディショニングディスクの重量と合計して7.37ポンド(3346g)となるように金属錘をディスク上に載せた。コンディショニングディスク及び金属錘を、長方形のメラミンブロックにより後から押すことにより、ディスクの先端縁がフェルトチップマーカー帯状層の遠い方の側縁を横切る位置まで、秒当たり約1インチの速度で、帯状層の最も長い寸法に対し直角な方向へ向けて移動させた。その後、ディスク及び金属錘を取り除き、シートを外して、光学顕微鏡(ニコン製「SMA−10」(商品名)10倍率)を用いて条痕の数が測定された。シートは、上側から照明した状態で観察した。
【0048】
図2は、上述した方法でダイヤモンドコンディショニングディスクを移動することにより形成された帯状層上の条痕を示す写真である。343個の活性砥粒に対応する計343本の条痕が、ニコン製「SMA−10」光学顕微鏡を用いて倍率10×で計数された。
【実施例2】
【0049】
ダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための本方法の他の実施例を説明する。
【0050】
実施例1と同様の方法で、7.37lbf(3346gf)で実験を2回繰り返して行った。ダイヤモンドコンディショニングディスクの周縁上にマークを付け、このマークを、ポリカーボネートシート上に付けたマークに揃えることにより、各実験毎にスライド方向に対するディスクの向きを合わせた。シートは左側の拘束装置からコンディショニングディスクの直径の半分の位置に配置した。第1回目の実験では、計393±21の条痕が観測された。第2回目の実験では327であった。実施例1に対し、2回の実験で得られた値は、それぞれ14.5%及び4.7%ずれた。
【実施例3】
【0051】
本実施例では、プロファイロメトリーを用いたダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための別の方法を説明する。
【0052】
半径3μmの探針チップ、2.778μmの水平ステップ、及び0.26μmの垂直分解能を有するスキャニングスタイラスプロファイロメータ(Veeco社製「Dektak V200 SI」(商品名))を用いて、実施例2の第1回目の実験で得られたポリカーボネートシートの表面をスキャンした。スキャンラインの長さは100mmであり、色コントラスト帯状層のすぐ上の位置から測定を開始した。データを得た後、シート表面に沿って1000点での移動平均を計算し、それを生データから差し引くことにより、ポリカーボネートシートの傾斜及び非平面性による表面の高さにおける変化を数学的に除去した。図3はこうして得られたスキャニング・プロファイロメトリー・プロットを示すグラフである。
【0053】
その後、市販のソフトウェアを用いて、傷の付いていないポリカーボネートシート表面のノイズレベルを超えた表面凹凸変化をもたらす条痕を検出し、条痕の数を自動的に計数した。プロファイロメトリー・スキャンの手動試験も行い、計数された条痕の数が正しいことを確認した。計201個の条痕がプロファイロメトリーを用いて発見された。光学的観測方法に比べて、プロファイロメトリーでは条痕の数が49%少なくなったが、その理由は、いくつかの条痕が不連続的で、スキャンラインを横切っておらず、また、凹凸度がシート表面のノイズレベルを充分に超過していないためであった。
【実施例4】
【0054】
本実施例では、ディスクを移動させるための機械的装置を使用して、ダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための方法を説明する。
【0055】
実施例1における試験方法と同じ条件で、コンディショニングディスク及び金属錘を移動させる機械的装置を使用して、荷重7.37lbf(3346gf)で実験を行った。前記装置は、減速ギアを有する電気モーターと、これによって駆動されるスクリューに連結された金属バーを有し、金属バーでコンディショニングディスクを押す。スライド速度は、秒当たりほぼ1インチ(2.54cm)であった。観測者一人で光学顕微鏡を使用して、計333±10の条痕がコントラスト帯上に計数された。
【実施例5】
【0056】
本実施例は、本発明によりダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための方法を説明する。
【0057】
実施例1と同じダイヤモンドコンディショニングディスクを用いて、スライド距離を短くしてコントラスト物質層を使用せず、荷重7.37lbf(3346gf)で実験を行い、条痕数を測定した。ポリカーボネートシートは、左側の側面及び底部上に拘束装置を有する厚さ3/8インチ(9.525mm)のガラス板上に置かれた。シート上には、左側の拘束装置からコンディショニングディスク直径の1/2の距離を離して整列マークを描いた。コンディショニングディスク及び錘は、ディスクの一つのエッジがシートの左側の拘束装置に触れるように、かつ、コンディショニングディスクのエッジ上のマークがシート上の整列マークと揃うように、ポリカーボネートシート上に置かれた。長方形のアルミニウムブロックからなる拘束装置は、その後、両面テープでコンディショナー及び錘の右側面に沿ってポリカーボネートシートに取り付けられた。
【0058】
先の細いフェルトペンを用いて、ダイヤモンドコンディショニングディスクの初期位置の輪郭を描いた。コンディショニングディスク及び錘を、メラミンブロックで後ろから押し、1/4インチ(6.35mm)の距離だけ移動させた。コンディショニングディスク、錘、及びポリカーボネートシートを取り除き、ポリカーボネートシートを、顕微鏡を使用せずに、及び条痕を最も明るくするための逆光照明を用いて可視的に検査した。各条痕の原点を、先の細いフェルトペンでマークした。計327個の条痕が確認された。図4は、条痕の原点をマークした位置を示す(上から下へスライドした)。コンディショニングディスク上の“1”と表示されたマークは、実験前にポリカーボネートシート上の整列マーク上に置かれた。図5は、三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)の作業面上に、条痕の原点(灰色の点)の位置を重ね合わせた図面である。
【実施例6】
【0059】
本実施例は、ダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定するための本発明の方法の他の実施例を説明する。
【0060】
ダイヤモンドコンディショニングディスクの周方向等間隔毎(45゜)に7個の初期位置から、実施例5と同様の方法で、7.37lbfで追加実験を行った。実験を行う毎に、コンディショニングディスクを、元の位置から反時計方向に45°回転して7回の実験を行った。各位置における条痕の数を表1にまとめた。
【0061】
【表1】

【実施例7】
【0062】
本実施例は、ダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数を測定する際に、荷重を変えた場合の効果の差を説明する。
【0063】
実施例5と同じ方法により、荷重を3.1lbf(1407gf)、5.2lbf(2361gf)、及び9.5lbf(4313gf)に変えて、実験を行った。実験を行う毎に、コンディショニングディスクを45°回転して荷重を変えて次の実験を行った。活性砥粒の総数は、総荷重の関数として図6にプロットした。図6のグラフにおいて、回帰線は原点を通過しないが、その理由は、いくつかのダイヤモンド砥粒が、非常に軽い荷重でもディスクを支持する必要があるためである。
【実施例8】
【0064】
本実施例は、使用済みのコンディショニングディスクと比較して、新しいディスクを用いた場合のダイヤモンドコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定結果を説明する。
【0065】
実施例1と同様の方法により、粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)を新品の状態で用い、活性砥粒の数を測定した。2種の荷重で新しいコンディショニングディスクの活性砥粒を測定した。図7は、同一のコンディショニングディスクに対し、使用済みの状態と、新品の状態で活性砥粒数を比較したグラフである。この結果から、コンディショナーが摩耗すると、活性砥粒の測定数が増大することがわかった。
【0066】
以上、本発明を具体例を挙げて説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、前記各構成に当業者に自明な技術を追加してもよいし、前記各構成を周知技術と置換してもよいし、前記構成のうち本発明にとって必須でない構成を削除してもよいことは勿論である。また、前記各形態の各構成を相互に取捨選択して組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法によれば、従来は測定が難しかった活性砥粒数を正確に測定することができ、コンディショニングディスクの評価に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】検査体の硬質面を横切ってダイヤモンドコンディショニングディスクを移動させるための機械的装置の上面図である。
【図2】粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)に対し、荷重7.37lbf(32.78176N)をかけて実験を行い、活性砥粒により生成された痕跡を示すコントラスト物質層の一部の写真である。
【図3】粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)の活性ダイヤモンド砥粒により製造されたコントラスト物質の帯状層で検出された条痕をスキャンしたプロファイロメトリー・プロット結果を示すグラフである。
【図4】粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)により生成された、先の細いフェルトペンを用いて表示された条痕の始点を示す写真である。
【図5】三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)の研削面に、図4に示した条痕の開始点を投影した写真である。
【図6】粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)における活性ダイヤモンド砥粒の測定数と、総荷重とをプロットしたグラフである。
【図7】粒度200の三菱マテリアル株式会社製「TRDコンディショニングディスク」(商標名)について、使用済みのコンディショニングディスクと、新しいコンディショニングディスクを比較するために、活性ダイヤモンド砥粒数と総荷重をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0069】
10 ケース
20 モータ
30 ギヤボックス
40 スクリュー
50 金属板
60 硬質バー
70 シート
80 塗布層
90 コンディショニングディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法であって、
(a)コンディショニングディスクの砥粒含有面が検査体の硬質面と対向するように、コンディショニングディスクを硬質面と接触させる工程と、
(b)コンディショニングディスクの前記砥粒含有面上に存在する任意の活性砥粒が、それぞれの活性砥粒に対応する痕跡を残すように、前記硬質面へ向けてコンディショニングディスクに荷重をかけた状態で前記硬質面に沿って前記コンディショニングディスクを移動させる工程と、
(c)前記硬質面に形成された痕跡を計数して前記コンディショニングディスク上の活性砥粒数を測定する工程とを具備する、コンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項2】
前記検査体の前記硬質面は、約65MPa〜約75MPaの降伏強度を有する請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項3】
前記検査体の前記硬質面がプラスチックを含む請求項1記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項4】
前記検査体の前記硬質面はシートである請求項1記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項5】
前記検査体の前記硬質面はプラスチックシートである請求項4記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項6】
前記プラスチックシートは、透明または半透明である請求項5記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項7】
前記プラスチックシートは、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、及びポリメチルメタクリレートからなる群より選択された硬質重合体プラスチックを含む請求項6記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項8】
前記検査体の前記硬質面は、ポリウレタンを含む請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項9】
前記検査体の前記硬質面は、コントラスト物質からなるコントラスト物質層で構成されており、前記コンディショニングディスクを前記硬質面に沿って移動させる際に、活性砥粒は前記コントラスト物質層を引っ掻いて痕跡を残す請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項10】
前記コントラスト物質層は、コーティング、キャスティング、硬化、ペインティング、噴射、ワイピング、マーキング、彩色、または染色により形成されている請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項11】
前記コントラスト物質層は、前記検査体の色とは異なるコントラスト色を有する請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項12】
前記コントラスト物質層は、彩色、染色、または着色された層である請求項11に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項13】
前記コントラスト物質層は、前記検査体の硬度とは異なるコントラスト硬度を有する請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項14】
前記コントラスト物質層は、フェルトマーカーまたはマーキング装置またはカラリング装置により前記検査体上に着色された物質を含む請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項15】
前記検査体の前記硬質面が透明または半透明のプラスチックシートである請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項16】
前記プラスチックシートが、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、及びポリメチルメタクリレートからなる群より選択された硬質重合体プラスチックを含む請求項15に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項17】
前記コントラスト物質層は、約0.001インチ(0.0254mm)〜約0.1インチ(2.54mm)の厚さを有し、前記検査体上に設けられた濃色かつ半透明のプラスチックシートからなる請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項18】
前記コンディショニングディスクにかける荷重は、約2ポンド(908g)〜約25ポンド(11350g)である請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項19】
前記痕跡をプロファイロメータを用いて計数する請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項20】
前記痕跡を光学顕微鏡を用いて計数する請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項21】
前記検査体の硬質面は、平坦な作業面に固定された長方形のポリカーボネートシートであり、前記硬質面は、ポリカーボネートシートの長軸に対し直角方向に延びる一定の幅の帯状のコントラスト物質層を含み、前記コンディショニングディスクは、前記コンディショニングディスクの前端縁が前記コントラスト物質層の始点または付近にあるように前記硬質面と接触する位置から、前記コンディショニングディスクが前記コントラスト物質層を完全に通過する位置まで、前記ポリカーボネートシートの長軸と平行に一定の速度で移動する請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項22】
前記コンディショニングディスクは、前記長軸と平行に一定の速度で機械的に移動される請求項21に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項23】
前記コンディショニングディスクを、約0.001インチ(0.0254mm)〜約0.5インチ(12.7mm)移動させる請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項24】
前記コンディショニングディスクを、約3/8インチ(9.525mm)〜約5/8インチ(15.875mm)の間で直線的に移動させる請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記活性砥粒に対応する痕跡は、前記検査体の前記硬質面に形成された引っ掻き傷である請求項1に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。
【請求項26】
前記活性砥粒に対応する痕跡は、前記コントラスト物質層に形成された引っ掻き傷である請求項9に記載のコンディショニングディスク上における活性砥粒数の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−80480(P2008−80480A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190099(P2007−190099)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(507245629)アラカ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】