説明

コンデンサに用いるためのニオブ酸化物粉末の製法

本発明は、高い純度と大きい比表面積と制御された酸素及び窒素の含有量とコンデンサの製造に用いるのに適切な形態とを有する一酸化ニオブ(NbO)粉末の製法であって、第1の段階と第2の段階とを包含する五酸化ニオブ(Nb)の二段階還元であって、第1の段階は、水素によって五酸化ニオブ(Nb)を二酸化ニオブ(NbO)まで還元する工程を含み、第2の段階は、二酸化ニオブ(NbO)からの酸素原子が酸素ゲッター材へ移動するのを可能にする雰囲気の中、一酸化ニオブ(NbO)を形成するのに適した時間と温度との条件の下、該酸素ゲッター材を用いることによって、該二酸化ニオブ(NbO)を該一酸化ニオブ(NbO)まで還元する工程を含む、二段階還元を包含することを特徴とする、上記製法に関する。本方法を用いて生成される一酸化ニオブ(NbO)粉末の粒子は小さくて、大きい表面積と適切な形態とを有し、コンデンサを作るのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化ニオブ(NbO)粉末の製法において、第1の段階と第2の段階とを包含する五酸化ニオブ(Nb)の二段階還元であって、第1の段階が、水素によって五酸化ニオブ(Nb)を二酸化ニオブ(NbO)まで還元する工程を含み、第2の段階が、該二酸化ニオブ(NbO)からの酸素原子が酸素ゲッター材(oxygen getter material)へ移動するのを可能にする好都合な雰囲気の中、一酸化ニオブ(NbO)を形成するのに適切な時間と温度条件の下、該酸素ゲッター材を用いることによって、該二酸化ニオブ(NbO)を該一酸化ニオブ(NbO)まで還元する工程を含む、二段階還元を特徴とする、上記製法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,391,275号、同第6,416,730号、及び同第6,462,934号明細書において注目することができるように、単一段階によるニオブ酸化物の部分還元であって、酸素原子の移動を可能にする雰囲気の中で、酸素ゲッター材として、耐火性金属若しくは反応性金属、及び/又は耐火性金属若しくは反応性金属の水素化物を用いる部分還元は、当該技術分野では知られている。しかし、単一段階における、ニオブ酸化物を部分還元する工程の主な問題は、上記に引用される諸特許明細書の中に認められるように、生成物の組成中に一酸化ニオブのみを有する生成物を得ることの困難さである。このことは、そのニオブによって想定し得る様々な酸化状態が存在することに起因するだけでなく、単一段階法において部分還元が行われる間に形成され得る非常に多くの種類のニオブ酸化物が存在することにも起因する。該一酸化ニオブの他に、2種以上のニオブ酸化物が存在すること又は残存金属ニオブさえも存在することは、コンデンサに該一酸化ニオブを使用する上で有害である。更に、得られる最終の形態を制御することは困難であり、また、そのことは通常、高性能(大きい静電容量及び低い漏れ電流)のコンデンサを製造するのに最適であるという訳ではない。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0003】
五酸化ニオブ(Nb)を二段階で一酸化ニオブ(NbO)に還元することによって、各々の還元段階のより良好な制御が可能となり、最も好都合な原料を使用すること、及び該方法の各々の段階で最も適切な装置を使用することが可能となり、このようにして、その製造コストが低下する。更に、最も重要なことであるが、この方法によって、それにより得られる生成物の化学的、物理的及び形態学的な特性をより良好に制御することが可能となる。
加えて、第2の処理段階では、原料として五酸化ニオブ(Nb)ではなく、二酸化ニオブ(NbO)が使用されるので、酸素ゲッター材は、より弱い酸化を受け、そのプロセスをより効率的に制御し、より少ない量のゲッター材の使用を可能にさせる。
【0004】
この工程の結果、一酸化ニオブ(NbO)は、制御されたやり方で還元することができ、多孔質の高純度粉末であって、制御された形態を有し、見かけ密度が小さく且つ比表面積が大きい粉末を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一酸化ニオブ(NbO)粉末の製法において、五酸化ニオブ(Nb)の二段階還元であって、ニオブの他の酸化物又は残存金属ニオブの検出可能な存在量を生じさせる還元プロセスの制御の欠如が解消される二段階還元を特徴とする上記製法に関する。
別々の還元段階を用いることによって、反応の駆動力(driving force)を制御することが可能となり、そうなることによって、各段階における、該プロセスのより良好な制御が可能になり、還元剤のポテンシャル(potential)を制御することが可能となるために、ニオブ酸化物が還元される。適切な粒径と形態とを有する粉末形態の原料の使用は、基本的に、第1の段階においては、五酸化ニオブ(Nb)から成り、第2の段階においては、二酸化ニオブ(NbO)と、高純度の耐火性金属若しくは反応性金属及び/又はそれらの水素化物から成り、形態が制御された一酸化ニオブ(NbO)であって、望ましくない粒径の凝集物が形成されることなく適切な粒度分布を生じている一酸化ニオブ(NbO)を形成することが可能となる。
【0006】
第1の段階における還元剤は、水素ガス、又は、例えば、一酸化炭素のような、適切な還元ポテンシャルを有する他のいずれかのガス若しくはガス混合物であるのに対して、第2の段階における還元剤は、酸素ゲッターとも呼ばれ、耐火性金属、反応性金属、耐火性合金若しくは反応性合金、及び/又は、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、好ましくはニオブ又はタンタルのような耐火性金属若しくは反応性金属の水素化物である。
第1の段階において用いられる五酸化ニオブ(Nb)は、如何なる形状又は粒径を有していても良い。該五酸化ニオブ(Nb)は、粉末又は凝集粒子の形態が好ましい。用いることのできる粉末の種類の例は、薄片状(flaked)粉末、棒様粉末、角状粉末、ノジュラー(nodular)粉末、スポンジ様粉末及び/又はそれらの混合物又はそれらの変形を包含するが、これらの例に限定されない。五酸化ニオブ(Nb)は好ましくは、二酸化ニオブ(NbO)により効果的に導く適切な気孔率を有する粉末の形態が望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
好ましい五酸化ニオブ(Nb)粉末の例は、2.0mmから0.04mmまでのメッシュサイズ(10タイラー・メッシュ(Mesh Tyler)及び325タイラー・メッシュ)を有するものである。
第1の還元段階は、水素;又は、水素と、例えば、アルゴン、ヘリウム及び窒素のような他の不活性ガスとの様々な比での組合せ;又は、例えば、一酸化炭素のような、適切な還元ポテンシャルを有するいずれかのガス若しくはガス混合物;の雰囲気の中で行う。そのプロセスの間のガスの圧力は、13.3kPaから266.6kPaまで(100トールから2000トールまで)、好ましくは13.3kPaから160kPaまで(100トールから1200トールまで)の様々であってよい。
【0008】
第1の還元段階の温度及び時間は、五酸化ニオブ(Nb)が二酸化ニオブ(NbO)まで還元されるのを保証するのに十分であることが望ましい。その反応は通常、700℃〜1500℃の間、好ましくは800℃〜1200℃の間の温度で、15分から300分まで、好ましくは30分から180分までの様々な時間の間で行うことができる。反応が終了した後、反応生成物は、プロセス雰囲気が周囲温度に到達するまで、そのプロセス雰囲気中で冷却する。
第1の還元段階は、マッフル型(muffle-type)炉、レトルト型(retort-type)炉、ボギー炉床炉(bogie-hearth furnaces)、連続式コンベアベルト炉床炉(continuous conveyor belt hearth furnaces)、又は、所要温度を達成することができ且つ前記プロセスに必要な還元雰囲気を維持することのできる他のいずれかのタイプの装置で行うことができる。
【0009】
第1の還元段階の生成物は、二酸化ニオブ(NbO)を含有する。生成された二酸化ニオブ(NbO)は、1μm以下の一次粒子を有し、適切な直径を持つ粒子の間に結合性「突出部」(“neck”)を有するスポンジ様形態を有するのが好ましい。この生成物は、コンデンサのアノードに変形された場合、高レベルの静電容量を達成させるのに好都合な気孔率(porosity)を有する。図1及び図2の走査電子顕微鏡画像は、本発明のタイプの二酸化ニオブ(NbO)を示す。これらの画像に見られるように、本発明の二酸化ニオブ(NbO)は、大きな比表面積と、水銀ポロメータ法によって測定された場合に少なくとも50%の気孔率を有する多孔質構造とを有する。本発明の二酸化ニオブ(NbO)は物理的に、0.5m/g〜20.0m/g、好ましくは0.8m/g〜12.0m/gの比表面積を有すると見なすことができる。
第1の還元段階によって、気孔率と比表面積とが制御された二酸化ニオブ(NbO)が得られる。この制御は、二酸化ニオブ(NbO)を適切に選定することによって、且つ、プロセス変量(反応の時間、温度及び圧力)を制御することによって達成することができる。
【0010】
第2の還元段階において、第1の還元段階から得られた二酸化ニオブ(NbO)は、酸素ゲッター材と混合する。本発明の目的のための酸素ゲッター材は、そのプロセスで特定される二酸化ニオブ(NbO)を一酸化ニオブ(NbO)まで還元することのできる材料であれば如何なるものでも良い。好ましくは、酸素ゲッター材は、耐火性金属、反応性金属、耐火性合金若しくは反応性合金及び/又はそれらの水素化物を含有し、ニオブ及び/又はタンタルを用いるのが好ましく、ニオブが最も好ましい材料である。本発明の目的のために酸素ゲッターとして用いられるニオブは、二酸化ニオブ(NbO)中に存在する酸素を除去するか又は還元することのできる金属ニオブを含有するいずれかの材料である。従って、ゲッター材として用いられるニオブは、ニオブと他の成分との混合物を含有する合金又は材料を含有することができる。ゲッター・ニオブは好ましくは、排他的ではないにしても、主として金属ニオブを含有する。このニオブの純度は重要でないが、プロセスの間、他の不純物が導入されるのを回避するために高純度の金属ニオブを用いるのが好ましい。
【0011】
酸素ゲッター材は、如何なる形状又は大きさを有しても良い。ゲッター材は、酸素ゲッターとして適切に機能するのに十分な表面積を有するように、粉末形態であるのが好ましい。従って、ゲッター材は、角状形状、薄片状形状、棒様形状、ノジュラー形状、スポンジ様形状、及び/又はこれらの形状の混合物又は変形を有することがある。ゲッター材は、ニオブ水素化物及び/又は金属ニオブであって、生成された一酸化ニオブ粉末を篩分けによって容易に分離することのできる顆粒の形態のものであるのが好ましい。
二酸化ニオブ(NbO)を一酸化ニオブ(NbO)まで還元するのに十分な量のゲッター材が存在することが望ましい。二酸化ニオブ(NbO)との反応において存在するゲッター材の量は、二酸化ニオブ(NbO)を一酸化ニオブ(NbO)まで十分に還元するための化学量論量の1〜6倍であるのが好ましい。
【0012】
第2の還元段階は、例えば、電気真空炉のような、ニオブ及び/若しくはタンタルを処理するのに通常使用される炉又は反応器の中で行う。二酸化ニオブ(NbO)のゲッター材との反応は、二酸化ニオブを還元して一酸化ニオブを生じさせるのに十分な温度及び時間で行う。そのプロセスの温度及び時間は、例えば、装填される二酸化ニオブ及びゲッター材の量、形態並びに粒度分布のような幾つかの因子と、これらの材料の混合物の形態とによって決まる。プロセスの温度は、1000℃〜1700℃の間、好ましくは1200℃〜1600℃の間であり、10分間〜720分間の間、好ましくは30分間〜360分間の間とすることができる。
【0013】
第2の還元段階は、二酸化ニオブ(NbO)の酸素原子が酸素ゲッター材へ移動するのを可能にする雰囲気の中で行う。反応は、水素ガスを含有する雰囲気、好ましくは水素ガスのみから成る雰囲気の中で行う。水素の他に、窒素及び/又はアルゴン及び/又はヘリウムのような他のガスが、これらのガスが該水素の還元ポテンシャルを低下させないという条件で、存在する場合がある。第2の還元段階の間のそれらのガスの圧力は、好ましくは100トールから2000トールまで、最も好ましくは500トールから1500トールまでである。
第2の還元段階で生成された、本発明の一酸化ニオブ(NbO)は、1:0.6〜1:1.5の間の[ニオブ]対[酸素]原子比、好ましくは1:0.7〜1:1.1の間の[ニオブ]対[酸素]原子比を示す。換言すれば、該一酸化ニオブは、NbO0.6〜NbO1.5の間の配合、好ましくはNbO0.7〜NbO1.1の間の配合を有する。
【0014】
第2の還元段階の生成物は、供給原料の二酸化ニオブ(NbO)に類似する形態を有する一酸化ニオブである。従って、二酸化ニオブ(NbO)の形態、気孔率及び粒子分布を制御することによって、コンデンサを製造するための適切な特性を有する一酸化ニオブ(NbO)を得ることが可能となる。
第2の還元段階のための原料として二酸化ニオブを用いる利点は、それの融点が五酸化ニオブの融点よりも実質的に高いという点にある。二酸化ニオブの、このいっそう高い融点のために、高温下で行われる最終還元反応の間、それら粒子の形態は実質的に変化しないままとなる。
【0015】
生成される一酸化ニオブ(NbO)は選択的に、1μm以下の一次粒子を有し、適切な直径を持つ諸粒子の間に結合性「突出部」を有するスポンジ様形態を有する。この生成物は、コンデンサのアノードを作るのに用いられた場合、高レベルの静電容量を達成させるのに好都合な気孔率を有する。図3及び図4の走査電子顕微鏡画像は、本発明のタイプの一酸化ニオブ(NbO)を示す。これらの画像に見られるように、本発明の一酸化ニオブ(NbO)は、大きな比表面積と、少なくとも50%の気孔率を有する多孔質構造とを有する。本発明による一酸化ニオブ(NbO)は物理的に、0.5m/g〜20.0m/g、好ましくは0.8m/g〜6.0m/gの比表面積を有すると見なすことができる。
【0016】
本発明による一酸化ニオブ(NbO)は、それの製造過程に起因する、コンデンサのアノードとしてのその電気的特性によって特徴付けられた。コンデンサのアノードは、一酸化ニオブ(NbO)粉末を加圧してアノードを成形し、次いで、それらのアノードを適切な温度で焼結し、次いで、アノード処理して(anodizing)、電解コンデンサアノードを作ることによって製造することができる。電解コンデンサアノードは、それらの電気特性について試験を行うことができる。
【0017】
本発明による一酸化ニオブ(NbO)粉末を加圧することによって作られるアノードは、100mgの質量を有した。アノードは、約6.7×10−3Pa(5.0×10−5トール)の真空中、1400℃の温度で10分間焼結した。アノード処理は、0.1質量%のHPO溶液で行った。使用したアノード処理電圧は30ボルトであった。アノード処理後の静電容量は、ブリッジLCR アジレント4284Aを用いて測定した。用いた電解質は、18質量%のHSO溶液であった。用いた周波数は120Hzであった。漏れ電流の測定は、0.1質量%のHPO溶液で行った。用いた電圧は、アノード処理電圧の70%、即ち、21ボルトに相当した。また、電圧を加えた後180秒間、その電流を監視した。
以下に記述される諸実施例によって、本発明を更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0018】
第1の還元段階: 五酸化ニオブ粉末200gを、管状炉の中に装填した。水素ガスをその炉室に入れて、炉温度を、室温から800℃に上昇させた。その装填材料は、この温度で300分間維持し、次いで、加熱を止めた。装填材料が室温に到達するまでその水素雰囲気を維持し、次いで、炉から装填材料を取り去る前、炉室を窒素で加圧した。この第1の反応段階の生成物は、次の諸特性を有した。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 3.2m/g
気孔率: 83.8%
【0019】
第2の還元段階: 第1の還元段階で生成した二酸化ニオブ6gを、0.6mm未満であり且つ0.3mmより大きい粒径を有する水素化ニオブ粉末34gと一緒に、ニオブるつぼの中に装填した。その混合物の入っているるつぼを、電気真空炉室の中に装填した。炉室は、排気して、その後、水素ガスで、大気圧よりも4kPa(30トール)高い圧力まで加圧した。その温度は、室温から1200℃の反応温度まで上昇させ、そのレベルで180分間維持した。180分間が経過した時、炉を止めて、炉室は、0.067Pa(5×10−4トール)の圧力に到達するまで排気した。炉室を窒素で加圧する前、炉室が室温まで冷却されるまで待った。その加圧を行った後、炉室を開放し、装填材料を炉から回収した。その一酸化ニオブ粉末は、0.2mmメッシュサイズのスクリーンを用いた篩分けによって、そのゲッター材粉末から分離した。その生成物について試験を行って、次の結果が得られた。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 1.1m/g
静電容量: 77,133CV/g
漏れ電流: 0.2nA/CV
化学分析(ppm)
C=59
B<3
Ca=11
Cr=7
Fe<5
=49
Mg=6
Mn=4
=70
Ni<10
Si=154
Ta=1334
Zr<2
【実施例2】
【0020】
第1の還元段階: 五酸化ニオブ粉末250gを、管状炉の中に装填した。水素ガスをその炉室に入れて、炉温度を、室温から800℃に上昇させた。その装填材料は、この温度で150分間維持し、次いで、加熱を止めた。装填材料が室温に到達するまでその水素雰囲気を維持し、次いで、炉から装填材料を取り去る前、炉室を窒素で加圧した。この第1の反応段階の生成物は、次の諸特性:
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 3.5m/g
気孔率: 84.4%
を有した。
【0021】
第2の還元段階: 第1の還元段階で生成した二酸化ニオブ180gを、0.6mm未満であり且つ0.3mmより大きい粒径を有する水素化ニオブ粉末1000gと一緒に、ニオブるつぼの中に装填した。その混合物の入っているるつぼを、電気真空炉室の中に装填した。炉室は、排気して、その後、水素ガスで、大気圧よりも4kPa(30トール)高い圧力まで加圧した。その温度は、室温から1200℃の反応温度まで上昇させ、そのレベルで180分間維持した。180分間が経過した時、炉を止めて、炉室は、0.067Pa(5×10−4トール)の圧力に到達するまで排気した。炉室を窒素で加圧する前、炉室が室温まで冷却されるまで待った。その加圧を行った後、炉室を開放し、装填材料を炉から回収した。その一酸化ニオブ粉末は、0.2mmメッシュサイズのスクリーンを用いた篩分けによって、そのゲッター材粉末から分離した。その生成物について試験を行って、次の結果が得られた。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 1.9m/g
静電容量: 62,257CV/g
漏れ電流: 0.5nA/CV
化学分析(ppm)
C=46
B<3
Ca=54
Cr=5
Fe=35
=112
Mg=8
Mn=8
=10
Ni<10
Si=141
Ta=1242
Zr<2
【実施例3】
【0022】
第1の還元段階: 五酸化ニオブ粉末1000gを、管状炉の中に装填した。水素ガスをその炉室に入れて、炉温度を、室温から800℃に上昇させた。その装填材料は、この温度で90分間維持し、次いで、加熱を止めた。装填材料が室温に到達するまでその水素雰囲気を維持し、次いで、炉から装填材料を取り去る前、炉室を窒素で加圧した。この第1の反応段階の生成物は、次の諸特性を有した。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 7.0m/g
気孔率: 80.4%
【0023】
第2の還元段階: 第1の還元段階で生成した二酸化ニオブ890gを、0.6mm未満であり且つ0.3mmより大きい粒径を有する水素化ニオブ粉末5000gと一緒に、ニオブるつぼの中に装填した。その混合物の入っているるつぼを、電気真空炉室の中に装填した。炉室は、排気して、その後、水素ガスで、大気圧よりも4kPa(30トール)高い圧力まで加圧した。その温度は、室温から1200℃の反応温度まで上昇させ、そのレベルで360分間維持した。360分間が経過した時、炉を止めて、炉室は、0.067Pa(5×10−4トール)の圧力に到達するまで排気した。炉室を窒素で加圧する前、炉室が室温まで冷却されるまで待った。その加圧を行った後、炉室を開放し、装填材料を該炉から回収した。その一酸化ニオブ粉末は、0.2mmメッシュサイズのスクリーンを用いた篩分けによって、そのゲッター材粉末から分離した。その生成物について試験を行って、次の結果が得られた。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 1.1m/g
静電容量: 91,737CV/g
漏れ電流: 0.2nA/CV
化学分析(ppm)
C<30
B<3
Ca=6
Cr<4
Fe<5
=243
Mg=4
Mn=3
<10
Ni<10
Si=145
Ta=1357
Zr<2
【実施例4】
【0024】
第1の還元段階: 五酸化ニオブ粉末500gを、管状炉の中に装填した。水素ガスをその炉室に入れて、炉温度を、室温から900℃に上昇させた。その装填材料は、この温度で150分間維持し、次いで、加熱を止めた。装填材料が室温に到達するまでその水素雰囲気を維持し、次いで、炉から装填材料を取り去る前、炉室を窒素で加圧した。この第1の反応段階の生成物は、次の諸特性を有した。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 1.6m/g
気孔率: 77.0%
【0025】
第2の還元段階: 第1の還元段階で生成した二酸化ニオブ6gを、0.6mm未満であり且つ0.3mmより大きい粒径を有する水素化ニオブ粉末34gと一緒に、ニオブるつぼの中に装填した。その混合物の入っているるつぼを、電気真空炉室の中に装填した。炉室は、排気して、その後、水素ガスで、大気圧よりも4kPa(30トール)高い圧力まで加圧した。その温度は、室温から1300℃の反応温度まで上昇させ、そのレベルで180分間維持した。180分の時間が経過した時、炉を止めて、炉室は、0.067Pa(5×10−4トール)の圧力に到達するまで排気した。炉室を窒素で加圧する前、炉室が室温まで冷却されるまで待った。その加圧を行った後、炉室を開放し、装填材料を該炉から回収した。その一酸化ニオブ粉末は、0.2mmメッシュサイズのスクリーンを用いた篩分けによって、そのゲッター材粉末から分離した。その生成物について試験を行って、次の結果が得られた。
X線回折: NbO
比表面積、BET分析法: 1.2m/g
静電容量: 91,600CV/g
漏れ電流: 0.3nA/CV
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】二酸化ニオブ(NbO)凝集物の走査電子顕微鏡写真−5000倍の倍率。
【図2】二酸化ニオブ(NbO)凝集物の走査電子顕微鏡写真−10,000倍の倍率。
【図3】一酸化ニオブ(NbO)凝集物の走査電子顕微鏡写真−800倍の倍率。
【図4】一酸化ニオブ(NbO)凝集物の走査電子顕微鏡写真−6,000倍の倍率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化ニオブ粉末の製法において、第1の段階と第2の段階とを包含するニオブ酸化物の二段階還元であって、第1の段階は、水素によって五酸化ニオブを二酸化ニオブまで還元する工程を含み、第2の段階は、該二酸化ニオブからの酸素原子が酸素ゲッター材へ移動するのを可能にする雰囲気の中、該酸素ゲッター材を用いることによって、該二酸化ニオブを一酸化ニオブまで還元する工程であって、該ゲッター材が耐火性金属若しくは反応性金属、又は耐火性金属若しくは反応性金属の水素化物である場合がある工程を含む、二段階還元を包含することを特徴とする、一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項2】
前記第1の還元段階は、700℃〜1500℃の間、好ましくは800℃〜1200℃の間の温度で、15分間から300分間までの様々な時間の間、好ましくは30分間〜180分間の間で行う、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項3】
前記第1の還元段階は、水素ガスの雰囲気、又は水素ガスと、アルゴン、ヘリウム及び窒素のような他の不活性ガスとの様々な割合での組合せの雰囲気の中で行う、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項4】
前記第1の還元段階は、一酸化炭素の雰囲気、又は適切な還元ポテンシャルを有する他のいずれかのガス若しくはガス混合物の雰囲気の中で行う、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項5】
前記第1の還元段階において、微孔構造と、0.5m/g〜20m/gの間の比表面積とを有する二酸化ニオブを生成する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項6】
前記第1の還元段階において、微孔構造と、少なくとも41%の気孔率とを有する二酸化ニオブを生成する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項7】
前記第1の還元段階において、微孔構造と、低残存含有量の五酸化ニオブとを有する二酸化ニオブを生成する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項8】
前記第2の還元段階において、0.5m/g〜20m/gの間の比表面積を有する二酸化ニオブを使用する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項9】
前記第2の還元段階において、少なくとも41%の気孔率を有する二酸化ニオブを使用する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項10】
前記第2の還元段階における酸素ゲッター材として、粉末形態のニオブ金属及びそれの合金、並びに/又はニオブ金属及びそれの合金の水素化物を使用する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項11】
前記第2の還元段階における酸素ゲッター材として、粉末形態のタンタル金属及びそれの合金、並びに/又はタンタル金属及びそれの合金の水素化物を使用する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項12】
前記第2の還元段階における、前記酸素原子の移動を可能にする前記雰囲気は、水素ガスを含有しており、該水素ガスの還元ポテンシャルを低下させない他のガスを含有することが可能である、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項13】
前記第2の還元段階の前記雰囲気は、前記の形成された一酸化ニオブに窒素をドーピングするような方法で、水素ガス及び窒素を含有している、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項14】
前記第2の還元段階は、1000℃〜1700℃の間、好ましくは1200℃〜1600℃の間の温度で、10分間〜720分間の間、好ましくは30分間〜360分間の間行う、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項15】
生成される前記一酸化ニオブは、X線回折によって検出することのできる残存量の二酸化ニオブも金属ニオブも含有しない、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項16】
前記第2の還元段階で生成される前記一酸化ニオブは、前記二酸化ニオブと同様の形態を有する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項17】
前記第2の還元段階で生成される前記一酸化ニオブは、1:0.6〜1:1.5の間の[ニオブ]対[酸素]原子比、好ましくは1:0.7〜1:1.1の間の[ニオブ]対[酸素]原子比を有する、請求項1に記載の一酸化ニオブ粉末の製法。
【請求項18】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブであって、二酸化ニオブの残存含有量が5%以下であることを特徴とする、上記一酸化ニオブ。
【請求項19】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブであって、金属ニオブの残存含有量が5%以下であることを特徴とする、上記一酸化ニオブ。
【請求項20】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブであって、二酸化ニオブの残存含有量が5%以下であり、且つ、金属ニオブの残存含有量が5%以下であることを特徴とする、上記一酸化ニオブ。
【請求項21】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブであって、0.5m/gから20.0m/gまでの、好ましくは0.8m/gから6.0m/gまでの比表面積を有することを特徴とする、上記一酸化ニオブ。
【請求項22】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブであって、少なくとも41%の気孔率を有する微孔構造を有することを特徴とする、上記一酸化ニオブ。
【請求項23】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブを用いて製造されたコンデンサであって、50,000CV/g〜200,000CV/gの間の静電容量を有することを特徴とする、上記コンデンサ。
【請求項24】
請求項1に記載の製法によって生成された一酸化ニオブを用いて製造されたコンデンサであって、1.0nA/CV未満の漏れ電流値を有することを特徴とする、上記コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506634(P2007−506634A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527231(P2006−527231)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/BR2004/000003
【国際公開番号】WO2005/028370
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505163763)コンパニア ブラジレイラ デ メタルージャ エ ミネラサオ (2)
【出願人】(506100152)アイピーティー − インスティテュート デ ペスキサス テクノロジカス ド エスタド デ サン パウロ エス/エイ (1)
【Fターム(参考)】