説明

コンデンサ素子およびデバイス

【課題】大容量の低ESLのコンデンサ素子を提供する。
【解決手段】弁作用を備えた板状の基体23と、基体23の第1の面23aに順次積層された誘電体酸化被膜24a、固体電解質層25aおよび電極層26aを含む第1の機能層31と、基体23の第2の面23bに順次積層された誘電体酸化被膜24b、固体電解質層25bおよび電極層26bを含む第2の機能層32と、基体23の第1の面23aの少なくとも1部が現れることにより形成された電極部21と、基体23を貫通する貫通孔27とを有するコンデンサ素子20を提供する。貫通孔27の内周面27aに、基体23に接する側から順次積層された誘電体酸化被膜24c、固体電解質層25cおよび貫通電極28を含む第3の機能層33が設けられており、貫通電極28が、第1の機能層31の電極層26aと、第2の機能層32の電極層26bを電気的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に採用されるコンデンサ素子およびそれを内蔵した実装用のデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、他の多くの電子部品と共にコンデンサを基板上に実装する際に配線回路長が長くなり、これによりESR特性、ESL特性が悪化して高周波応答性が劣るという課題を解決し、接続に伴う特性の悪化が少なく、高周波応答性に優れた固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする技術が記載されている。特許文献1には、固体電解コンデンサであって、厚み方向に複数の貫通孔を設けた陽極体と、この陽極体の貫通孔内に埋設された陽極リード部からなり、この陽極リード部の表出部分を陽極端子部とし、陰極層の表出部分を陰極端子部とした構成とすることにより、同一面上に陽極と陰極が交互に配列されることによってESRが低くなると共に、ESLが打ち消し合って高周波でのインピーダンス特性を大きく低減することができるようになり、その結果、高周波応答性が著しく向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−237431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の高周波化に伴って電子部品の一つであるコンデンサにも高周波領域でのインピーダンス特性がさらに優れたコンデンサ素子が求められている。たとえば、電子機器のCPU周りに用いられるコンデンサには、小型大容量であることに加え、さらに、高周波化に対応し、ノイズ除去や過渡応答性に優れた性能を得るために、低ESR(等価直列抵抗)および低ESL(等価直列インダクタンス)であることが要求されている。
【0005】
特許文献1に開示された技術においては、貫通孔の数を増やすことによりコンデンサ素子の陰極層の面積が確保しにくくなるので、静電容量を大きくすることが難しい。また、コンデンサ素子の上面と下面に形成されている陰極層の電気的な接続を図るための手段を別途設ける必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的の1つは、簡易な構成で上面と下面に形成されている陰極層の電気的な接続を図れ、さらに、陰極層の面積が確保しやすいコンデンサ素子およびそれを有するデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、弁作用を備えた板状の基体と、基体の第1の面に順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第1の機能層と、基体の第2の面に順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第2の機能層と、第1の面の第1の機能層の周縁を覆う第1の絶縁層と、第2の面の第2の機能層の周縁を覆う第2の絶縁層と、基体の第1の面の少なくとも1部が第1の絶縁層の外周側に現れることにより形成された電極部と、基体を貫通する少なくとも1つの貫通孔とを有するコンデンサ素子である。このコンデンサ素子においては、さらに、少なくとも1つの貫通孔の内周面に、基体に接する側から順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第3の機能層が設けられており、第3の機能層の電極層が、第1の機能層の電極層と、第2の機能層の電極層を電気的に接続している。
【0008】
このコンデンサ素子は、貫通孔に設けられた第3の機能層の電極層により、典型的には陰極となる第1の機能層の電極層と、第2の機能層の電極層とを電気的に接続できる。したがって、弁作用を備えた基体の両面に設けられた電極層を、基体内の構造により電気的に接続できる。さらに、貫通孔の内周面に第3の機能層を設けることにより、貫通孔の内周面に固体電解コンデンサとして機能する層を形成できる。このため、基体に設けられる貫通孔により第1の面(上面)および第2の面(下面)の面積が低下することによる容量の低下を抑制できる。したがって、簡易な構成で上面と下面に形成されている電極層(典型的には陰極部(陰極))の電気的な接続を図れ、さらに、電極層の面積の低下を抑制できるコンデンサ素子を提供できる。
【0009】
このコンデンサ素子においては、電極層と絶縁層により分離された電極部(典型的には陽極部(陽極))を、周縁の全周に断続的に配置できる。さらに、電極部を、基体の周縁の全周に連続的に配置することが可能となる。電極部を基体の周縁の全周に連続的に配置することにより、コンデンサ素子を搭載する基板の配線パターンに対するフレキシビリティをいっそう向上できる。すなわち、このコンデンサ素子においては、基体の第1の機能層の電極層および第2の機能層の電極層は、貫通孔に設けられた第3の機能層の電極層により電気的に接続されている。このため、基体の周辺(周縁部分)を用いて第1の機能層の電極層および第2の機能層の電極層を電気的に接続する必要がない。したがって、第1の機能層の周縁の全周および第2の機能層の周縁の全周をそれぞれ第1および第2の絶縁層により覆い、絶縁層の外周側に、基体の周縁の全周にわたり、電極層と絶縁層により分離された電極部を設けることができる。
【0010】
さらに、基体の内部(中心部など)を貫通するように基体の両面に設けられた陰極を接続し、基体の周縁に陽極を断続または連続的に配置することにより、コンデンサ素子における極間の距離が縮まるのでESRを低減しやすく、また、コンデンサ素子における電流の流れる方向を多様化できるのでESLを低減しやすい。したがって、小型大容量で、低ESRおよび低ESLであり、さらに、接続端子の配置に対してフレキシブルに対応しやすいコンデンサ素子を提供できる。
【0011】
貫通孔の少なくとも1つは、この基体のほぼ中央に設けられていることが望ましい。貫通孔に設けられた第3の機能層と、基体の周縁に沿って配置される電極部との距離が大きく変動することを抑制でき、電流の流れる方向を多様化できるので、さらに低ESRおよび低ESLのコンデンサ素子を提供しやすい。複数の貫通孔を基体に線および/または点対称に配置することも有効である。
【0012】
典型的なコンデンサ素子では、電極部は当該コンデンサ素子の陽極であり、第1の機能層の電極層、第2の機能層の電極層、第3の機能層の電極層は当該コンデンサ素子の陰極である。なお、典型的には陰極として機能する電極層は、固体電解質層が真の陰極として機能する役割を担っている。
【0013】
本発明の異なる態様の一つは、上記のコンデンサ素子と、上記のコンデンサ素子の電極部に電気的に接続された第1の接続電極および、第1の機能層の電極層または第2の機能層の電極層に電気的に接続された第2の接続電極を含む基板とを有し、外装用の樹脂によりコンデンサ素子および基板を含めて一体に成形された表面実装用のデバイスである。低ESRおよび低ESLのコンデンサ素子を備えたデバイスであって、接続電極の配置をフレキシブルにアレンジできる表面実装用のデバイスを提供できる。
【0014】
このデバイスでは、電極部と第1の接続電極とはワイヤーボンディングにより接続できる。このデバイスは、さらに、基板の上に積み重ねられた複数のコンデンサ素子を有するものであってもよい。下側のコンデンサ素子の第1の機能層の電極層と上側のコンデンサ素子の第2の機能層の電極層を電気的に接続することができる。また、基板の表面に積み重ねられた少なくとも1つのコンデンサ素子と、基板の裏面に積み重ねられた少なくとも1つのコンデンサ素子を有するデバイスであってもよい。
【0015】
また、本発明の異なる態様の一つは、上記デバイスが実装されたプリント配線板、およびそのプリント配線板を有する電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】デバイスの概要を示す斜視図。
【図2】デバイスの実装面を示す図。
【図3】デバイスを、モールド樹脂を除いた状態で示す斜視図。
【図4】デバイスを基板とコンデンサ素子に展開した図。
【図5】デバイスの断面図。
【図6】コンデンサ素子を平面(第1の面側)から見た様子を示す図。
【図7】コンデンサ素子を底面(第2の面側)から見た様子を示す図。
【図8】コンデンサ素子の構造を示す断面図。
【図9】コンデンサ素子の構造を拡大して示す断面図。
【図10】デバイスを搭載したプリント配線板の一部を示す断面図。
【図11】異なるコンデンサ素子を平面(第1の面側)から見た様子を示す図。
【図12】さらに異なるコンデンサ素子の斜視図。
【図13】図12に示すコンデンサ素子の断面図。
【図14】さらに異なるコンデンサ素子の斜視図。
【図15】図14に示すコンデンサ素子の積層した状態を示す平面図。
【図16】異なるデバイスの構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明に係るコンデンサ素子を含むデバイスの一例を示している。このデバイス1は、基板10と、基板10の搭載側の面11に搭載されたコンデンサ素子20とを有し、外装用の樹脂(モールド樹脂)30により基板10およびコンデンサ素子20を含めて方形または矩形となるように一体に成形された表面実装用のデバイスである。
【0018】
図2に、デバイス1の実装面2を示している。このデバイス1では、基板10の実装側の面12が外装用の樹脂30に覆われておらず、実装面2として現れている。デバイス1の実装面2、すなわち、基板10の実装側の面12には、全周13にわたり、第1の端子電極51と、第2の端子電極52とが近接するように配置されている。このデバイス1の第1の端子電極51は、コンデンサ素子20の陽極に接続された陽極端子である。デバイス1は、4つの陽極端子(端子電極)51を備えており、基板10の実装側の面12の4隅15a〜15dのそれぞれに形成されている。デバイス1の第2の端子電極52は、コンデンサ素子20の陰極に接続された陰極端子であり、基板10の実装側の面12の、陽極端子51を除いた部分に配置されている。陽極端子51および陰極端子(端子電極)52は、絶縁用のギャップ59により区切られている。絶縁用のギャップ59は、0.1mmから2mm程度であり、0.2mmから1mm程度であることが好ましい。ギャップ59は、空間であっても、絶縁用の樹脂により埋められていてもよい。
【0019】
図3にデバイス1のモールド樹脂30を除いた状態を示している。図4に基板10とコンデンサ素子20とを分離した状態を示している。図5にデバイス1の断面図(図1のV-V断面)を示している。デバイス1の基板10はほぼ正方形にカットされたガラス布・エポキシ樹脂銅張積層板(ガラエポ基板)である。基板10の搭載側の面11および実装側の面12の銅箔がエッチングなどによりパターニングされ、両方の面11および12に同一の電極パターンが形成されている。したがって、基板10の搭載側の面11には、実装側の面12の複数の陽極端子51に対峙する位置に陽極端子51と同じ形状の複数の接続電極が形成されており、コンデンサ素子20の電極(陽極)部21に接続するための陽極接続電極56となっている。また、基板10の搭載側の面11には、実装側の面12の陰極端子52に対峙する位置に、陰極端子52と同じ形状の接続電極が形成されており、コンデンサ素子20の電極層26b(陰極部22)に接続するための陰極接続電極57となっている。
【0020】
すなわち、基板10の搭載側の面11には、全周13に沿って陽極接続電極56および陰極接続電極57が配置されており、4つの陽極接続電極56は搭載側の面11の4隅15a〜15dのそれぞれに形成されている。陰極接続電極57は、基板10の搭載側の面11の、陽極接続電極56を除いた部分に配置されている。陽極接続電極56および陰極接続電極57は、実装側の面12と同様に絶縁用のギャップ59により分離されている。
【0021】
さらに、それぞれの陽極端子51と陽極接続電極56とは基板10を貫通する貫通電極(スルーホール、ビアホール)55により電気的に接続されている。また、陰極端子52と陰極接続電極57も基板10を貫通する貫通電極55により電気的に接続されている。貫通電極55は、陽極端子51と陽極接続電極56との間、陰極端子52と陰極接続電極57との間の電気抵抗(接続抵抗)を抑制するように適当な数が適当なピッチで設けられている。
【0022】
図6に、コンデンサ素子20の平面図(第1の面(上面)から見た様子)を示している。図7に、コンデンサ素子20の底面図(第2の面(下面)から見た様子)を示している。図8に、コンデンサ素子20の断面図(図7のVIII-VIII断面)を示している。さらに、図9に、コンデンサ素子20の構造を一部拡大した断面により示している。
【0023】
コンデンサ素子(コンデンサコア)20は、固体電解コンデンサ(固体電解コンデンサ素子)であり、ほぼ正方形にカットされた板状または薄膜状の弁作用基体23を有する。弁作用基体23はエッチングなどにより多孔質化が施された第1の面23aおよび第2の面23bを含む。この例では、第2の面23bは、基板10の搭載側の面11に面した下側の面(下面)であり、第1の面23aは第2の面23bの反対側の上側の面(上面)である。これらの面23aおよび23bは上下逆転してもよく、左右に面していてもよい。
【0024】
基体23の第1の面23aには、第1の機能層31が形成されている。第1の機能層31は、第1の面23aに順次積層された誘電体酸化被膜24a、固体電解質層25a、および電極層26aを含む。弁作用基体23としては、エッチドアルミニウム箔、タンタル焼結体、ニオブ焼結体またはチタン焼結体があげられる。表面実装用の薄型のデバイス1を形成するという点を考慮すると、エッチドアルミニウム箔を用いたコンデンサ素子20が適している。誘電体酸化被膜24aは、基体23がエッチドアルミニウム箔であれば、その表面に形成された酸化アルミニウムである。固体電解質層25aは、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子を電解重合などにより誘電体酸化被膜24aの上に積層させることにより形成できる。電極層26aの一例は、固体電解質層25aの上に積層された導電性ペーストであり、陰極部22を構成する。第1の機能層31は、接触抵抗を低減させるために固体電解質層25aと電極層26aの間に積層される高導電性のグラファイト層などを含んでいてもよい。なお、本明細書において陰極部22として機能するように記載している電極層26aは見かけ上の陰極であって、固体電解質層25aが真の陰極として機能する役割を担っている。以下においても同様である。
【0025】
基体23の第2の面23bには、第2の機能層32が形成されている。第2の機能層32は、第2の面23bに順次積層された誘電体酸化被膜24b、固体電解質層25b、および電極層26bを含む。電極層26bはコンデンサ素子20の陰極部22となる。
【0026】
さらに、基体23の第1の面23aには、第1の機能層31の周縁31cを全周にわたり覆う第1の絶縁層29aが形成されている。また、基体23の第2の面23bには、第2の機能層32の周縁32cを全周にわたり覆う第2の絶縁層29bが形成されている。基体23の第1の面23aの周面(周縁)23cは第1の絶縁層29aの外周側(外側、外縁側、周辺側)に現れ、コンデンサ素子20の電極(陽極)部21となっている。なお、絶縁層29aおよび29bの一例は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの絶縁性の樹脂からなる膜である。
【0027】
コンデンサ素子20は、さらに、弁作用基体23の中央を貫通する貫通孔(スルーホール)27を含む。この貫通孔27の内周面27aには、第3の機能層33が形成されている。第3の機能層33は、弁作用基体23に接する側から順次積層された誘電体酸化被膜24cおよび固体電解質層25cを含む。さらに、貫通孔27には、銀ペーストなどの導電性ペーストが充填され、貫通電極28が形成されている。したがって、第3の機能層33は、基体23の側から誘電体酸化被膜24c、固体電解質層25cおよび貫通電極28が積層された構成となっている。
【0028】
第3の機能層33の誘電体酸化被膜24cは第1の機能層31の誘電体酸化被膜24aおよび第2の機能層32の誘電体酸化被膜24bと一体で生成されている。第3の機能層33の固体電解質層25cは、第1の機能層31の固体電解質層25aおよび第2の機能層32の固体電解質層25bと一体で生成されている。貫通孔27の内周面27aであっても、電解重合などの方法により、基体23の表面とともに固体電解質層25cを形成できる。さらに、第3の機能層33の貫通電極28は、第1の機能層31の電極層26aおよび第2の電極層32の電極層26bと物理的および電気的に接するように設けられている。したがって、コンデンサ素子20においては、これら第1〜第3の機能層31〜33により、表面23aおよび23bとともに貫通孔27の内周面27aが固体電解質コンデンサとして機能するように構成されており、さらに、これらの機能層31〜33が陰極となる電極23a、23bおよび28により並列に接続されている。
【0029】
図5に示すように、このコンデンサ素子20は、基体23の第2の面23bの第2の機能層32が基板10に面して搭載され、デバイス1が形成(製造)される。図7に示すように、このコンデンサ素子20は、第2の面23bの中央部分に電極層26b(陰極部22)が現れており、基体23の第2の面23bの周囲(第2の機能層32の周縁32c)は絶縁層29bにより全て覆われている。したがって、基板10の搭載側の面11に第2の面23bを向け、素子固定用の導電性ペースト61を介してコンデンサ素子20を載せることにより、コンデンサ素子20の陰極部22と基板10の陰極接続電極57とを電気的に接続できる。
【0030】
また、図6に示すように、弁作用基体23の第1の面23a、すなわち、搭載される側と反対側の面の4方の辺および4隅を含む周囲(全周、第1の機能層31の周縁31c)には、絶縁層29aの外周側に弁作用基体23が現れており陽極部21が形成されている。たとえば、第2の面23bの絶縁層29bと同様の絶縁層29aを第1の面23aにも形成し、その絶縁層29aの一部を剥いだり、カットして基体23の表面23aを現すことにより、陽極部21を形成できる。
【0031】
図5に示すように、デバイス1においては、コンデンサ素子20の第1の面23aの周囲に沿って現れている陽極部21と、基板10の陽極接続電極56とは、金線、銅線、アルミニウム線などの導電性の金属ワイヤー62によりボンディングすることにより電気的に接続できる。陽極部21が、平面視四角形のコンデンサ素子20の第1の面23aの全周に沿って現れているので、基板10の陽極接続電極56がコーナー部分に限らず、基板10の搭載側の面11の周囲に沿った位置に設けられていれば、ワイヤーボンディング62により接続できる。ボンディングワイヤを含めて、コンデンサ素子20は、外装用の樹脂(モールド樹脂)30により保護される。モールド樹脂30としては、エポキシ樹脂などの封止樹脂があげられる。したがって、このタイプのコンデンサ素子20は、基板10の様々な電極配置に対してフレキシブルに対応できる。
【0032】
このコンデンサ素子20においては、弁作用基体23の第1の面23a、すなわち、搭載される側と反対側の面に第1の機能層31が形成され、その表面の電極層26aが陰極部22になっている。そして、電極層26aの4方の辺および4隅を含む周囲(全周)は、絶縁層29aを挟んで弁作用基体23が現れており電極(陽極)部21が形成されている。このため、陽極(電極)部21と陰極部22(電極層26a)とが対向した状態でそれらが接近して配置されるので、低ESLのコンデンサ素子20を提供しやすい。また、陽極部21と電極層26aとの位置関係(対峙する方向)は、第1の機能層31の周縁31cに沿って変わり、さらに、電極層26aは基体23の中央を貫通する第3の機能層33の貫通電極28を介して基板10と接続する第2の機能層32の電極層26bと接続されている。したがって、第1の機能層31を流れる電流の向きは多様になり、この点でも低ESLのコンデンサ素子20を提供しやすい構成である。
【0033】
また、このコンデンサ素子20においては、基体23の中心を貫通するように設けられた貫通電極28により基体23の両面23aおよび23bに設けられた陰極部22(電極層26aおよび26b)を接続し、基体23の周縁に陽極(電極)部21を連続して配置している。したがって、貫通電極28を含めた陰極部22に対する陽極部21の配置が対称的であり、さらに、基体23の中心を貫通する貫通電極28により両面の陰極部22が接続されているので、コンデンサ素子20は全体として電極間距離が縮まる。したがって、このコンデンサ素子20は、ESRも低減しやすい。
【0034】
さらに、貫通孔27の内周面27aに第3の機能層33を形成することにより、貫通孔27の内周面27aを固体電解コンデンサとして機能する面積に加えることができる。このため、基体23の中心部あるいはその近傍を貫通するように貫通孔27を配置しても貫通孔27による容量の低下(基体23の表面の利用率の低下)を低減でき、貫通孔27を基体23の所望の場所にフレキシブルに配置できる。
【0035】
また、陽極部21が電極層26aを取り囲むようにコンデンサ素子20の全周にわたり形成されているため、様々な個所からの電気的な接続が可能でコンデンサ素子20を搭載する基板10の配線パターンに対するフレキシビリティを向上させることができる。
【0036】
図10に、コンデンサ素子20を含むデバイス1が搭載されたプリント配線板70の一部を断面により示している。プリント配線板(プリント基板)70の上面71にはCPU75が搭載されており、プリント配線板70の下面72の、CPU75の中央部分の電源端子76に対峙する位置に本例のコンデンサデバイス1が搭載されている。CPU75の電源端子76とデバイス1の実装面2の端子電極51および52は、プリント配線板70を貫通する複数の貫通電極79により電気的に接続され、デバイス1はデカップリングコンデンサあるいはバイパスコンデンサとして機能する。
【0037】
デバイス1は、たとえば、1辺の長さが10mm程度、厚さが2〜4mm程度の薄くコンパクトな表面実装用のコンデンサチップであり、固体電解コンデンサ素子20を内蔵した低ESR、低ESLで大容量の薄くコンパクトなコンデンサデバイスである。このため、デバイス1の実装に要するスペースは小さい。また、デバイス1は実装面2に複数の陽極端子51が設けられた多極化デバイスなので、従来多数のコンデンサを搭載していた用途を1つまたは数少ないデバイス1により置き換えることができる。このため、コンパクト化が進んでいるノート型のパーソナルコンピュータなどの情報処理端末や、携帯電話、PDAなどの携帯型の情報処理端末などの電子機器に好適である。
【0038】
図11は、本発明に係る異なるコンデンサ素子の例を示している。図11に示したコンデンサ素子81は、基体23の外形が長方形であり、対角線の交点に貫通孔27を設け、第1の機能層31と第2の機能層32とを第3の機能層33により接続している。このように、本発明に係るコンデンサ素子の形状は、正方形に限らず、長方形あるいはその他の平面視多角形であってもよい。さらに、コンデンサ素子は円形であってもよい。表面実装用のデバイス1の平面視はほとんど四角形であり、大容量のコンデンサデバイスを提供するためのスペース効率を考慮すると、コンデンサ素子も平面視はほぼ正方形あるいはほぼ長方形などの四角形であることが望ましい。
【0039】
図12は、本発明に係るさらに異なるコンデンサ素子82の例を示している。図13に、コンデンサ素子82の構成を断面図により示している。このコンデンサ素子82は、図11に示すコンデンサ素子81と同様、ほぼ長方形にカットされた板状または薄膜状の弁作用基体23を有しており、2つの貫通孔27が短手方向の中心にそって、長手方向の2箇所に、中心を挟んで対称な位置に設けられている。それぞれの貫通孔27の内周面27aには第3の機能層33が設けられており、第1の機能層31および第2の機能層32は、複数の第3の機能層33により接続されている。
【0040】
低ESLおよび低ESRのコンデンサ素子を提供するためには、コンデンサの陽極と陰極(グランド)との距離をできる限り小さくすることが望ましい。特に、基板10と接続される端子間距離を短くすることが好ましく、この例であると、基板10に搭載される裏面(第2の面)23bの側の陰極部22、すなわち、第2の機能層32の電極層26bと、陽極部21との電気的な距離を短縮し、その間の電気的抵抗が小さいことが望ましい。コンデンサ素子82に基体23を貫通する孔27を多数設け、貫通孔27の断面積を小さくすることは有効である。貫通孔27を設けることによる第1および第2の面23aおよび23bの面積欠損は半径の二乗に比例し、貫通孔27の内周面に設けられる第3の機能層33の面積増加は半径に比例するからである。
【0041】
さらに、貫通孔27を2箇所またはそれ以上設けることにより、電流経路が短縮され、電流経路がさらに多様化されるので、さらに容量が大きく、低ESRおよび低ESLのコンデンサ素子を提供できる。
【0042】
図14に、本発明に係るさらに異なるコンデンサ素子83の斜視図を示している。また、図15に、複数のコンデンサ素子83を積み上げて容量を増加したコンデンサ素子84を示している。個々のコンデンサ素子83は、弁作用基体23の第1の面23aに設けられた第1の機能層31、第2の面23bに設けられた第2の機能層32、貫通孔27に設けられた第3の機能層33に加え、基体23の周面(側面)23cに設けられた第4の機能層34を備えている。第4の機能層34は、周面23cに順次積層された誘電体酸化被膜24d、固体電解質層25dおよび電極層26dを含む。
【0043】
このコンデンサ素子83においては、第3の機能層33に加え、第4の機能層34により、第1の機能層31および第2の機能層32が接続されている。すなわち、弁作用基体23の第1の面23aの電極層26aおよび第2の面23bの電極層26bは、弁作用基体23を貫通するように弁作用基体23の中央(中心)またはその近傍に形成された貫通孔27の内周面に設けられた貫通電極28だけでなく周面23cに設けられた電極層26dによっても電気的に接続されている。また、周面23cに設けられた第4の機能層34により、固体電解コンデンサとしての容量をさらに確保できる。
【0044】
弁作用基体23の第1の面23aの第1の機能層31の4隅は切り欠かれており、切り欠かれることにより形成された第1の機能層31の周縁は、第1の絶縁層29aにより覆われている。そして、第1の絶縁層29aにより第1の機能層31および第4の機能層34から隔離されるように弁作用基体23の4隅(4コーナー)が現れて陽極部21が形成されている。このコンデンサ素子83は、陽極部21が四方(4箇所)に断続的に現れている。このため、コンデンサ素子83を搭載する基板10の配線パターンに対し、フレキシブルに接続することができる。
【0045】
図15に示したコンデンサ素子84は、4端子のコンデンサ素子83を中央の貫通孔27を中心に回転させながら積層した(積み重ねた)ものである。したがって、このコンデンサ素子84により、さらに大容量のコンデンサを得られ、4端子のコンデンサ素子83を用い、5端子以上の多端子構造のコンデンサ素子84が得られる。したがって、このコンデンサ素子84を基板10に搭載することにより、多種多様な配線パターンを備えた基板10に対応でき、大容量、低ESRおよび低ESLのコンデンサデバイスを提供できる。
【0046】
図16に、本発明の異なるデバイスの例を示している。このデバイス5においては、基板10の両面にそれぞれコンデンサ素子20を搭載している。複数のコンデンサ素子20は、基板10の一方の面ではなく、両方の面に搭載することも可能であり、コンデンサとしての容量を増加させることができる。
【0047】
なお、上記に示したコンデンサ素子およびデバイスは、本発明に含まれるコンデンサ素子およびデバイスのいくつかの例であり、本発明は上記に限定されない。また、本発明に係る表面実装用のデバイスは、CPUとの組み合わせだけではなく、他の回路素子と組み合わせて用いることも可能であり、たとえば、DC−DCコンバータの平滑回路などにも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 表面実装用のデバイス、 2 デバイスの実装面
10 基板、 11 基板の搭載側の面、 12 基板の実装側の面
20、81、82、83、84 コンデンサ素子
21 陽極(電極)部、 22 陰極部
23 弁作用基体、 23a 第1の面、 23b 第2の面
24a、24b、24c、24d 誘電体酸化被膜
25a、25b、25c、25d 固体電解質層
26a、26b、26d 電極層
27 貫通孔、 28 貫通電極
29a、29b 絶縁層
31、32、33、34 固体電解コンデンサの機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用を備えた板状の基体と、
前記基体の第1の面に順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第1の機能層と、
前記基体の第2の面に順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第2の機能層と、
前記第1の面の前記第1の機能層の周縁を覆う第1の絶縁層と、
前記第2の面の前記第2の機能層の周縁を覆う第2の絶縁層と、
前記基体の前記第1の面の少なくとも1部が前記第1の絶縁層の外周側に現れることにより形成された電極部と、
前記基体を貫通する少なくとも1つの貫通孔とを有し、
前記少なくとも1つの貫通孔の内周面に、前記基体に接する側から順次積層された誘電体酸化被膜、固体電解質層および電極層を含む第3の機能層が設けられており、前記第3の機能層の電極層が、前記第1の機能層の電極層と、前記第2の機能層の電極層を電気的に接続している、コンデンサ素子。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の絶縁層は、前記第1の面の前記第1の機能層の周縁を全周にわたり覆う層であり、前記第2の絶縁層は、前記第2の面の前記第2の機能層の周縁を全周にわたり覆う層である、コンデンサ素子。
【請求項3】
請求項1または2において、前記電極部は、前記第1の面の周縁に断続的に現れている、コンデンサ素子。
【請求項4】
請求項2において、前記電極部は、前記第1の面の周縁の全周にわたり連続的に現れている、コンデンサ素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記基体のほぼ中央に設けられている、コンデンサ素子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記電極部は当該コンデンサ素子の陽極であり、前記第1の機能層の電極層、前記第2の機能層の電極層、前記第3の機能層の電極層は当該コンデンサ素子の陰極である、コンデンサ素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の前記電極部に電気的に接続された第1の接続電極および、前記第1の機能層の電極層または前記第2の機能層の電極層に電気的に接続された第2の接続電極を含む基板とを有し、
外装用の樹脂により前記コンデンサ素子および前記基板を含めて一体に成形された表面実装用のデバイス。
【請求項8】
請求項7において、前記電極部と前記第1の接続電極とはワイヤーボンディングされている、デバイス。
【請求項9】
請求項7または8において、前記基板の上に積み重ねられた複数の前記コンデンサ素子を有し、下側の前記コンデンサ素子の前記第1の機能層の電極層と上側の前記コンデンサ素子の前記第2の機能層の電極層が電気的に接続されている、デバイス。
【請求項10】
請求項7または8において、前記基板の表面に積み重ねられた少なくとも1つの前記コンデンサ素子と、前記基板の裏面に積み重ねられた少なくとも1つの前記コンデンサ素子を有する、デバイス。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかに記載のデバイスが実装されたプリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−9507(P2011−9507A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152193(P2009−152193)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000190091)ルビコン株式会社 (38)
【出願人】(509140548)ルビコン・カーリット株式会社 (5)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)