説明

コントロールケーブルの端末支持装置

【課題】振動の伝達をさらに抑制することができる端末支持装置を提供する。
【解決手段】端末支持装置10は、インナーケーブルと、そのインナーケーブルが挿通されているアウターケーブルとを有するコントロールケーブルの少なくともいずれか一方の端部を支持する。この端末支持装置10は、アウターケーブルの端部に取付けられ、その外周にフランジを有するハブ12と、ハブの外周を取り囲むように配され、フランジの表面と裏面の両側からフランジに当接するクッション部材14と、クッション部材を収容する収容部を有するハウジング17を備えている。そして、クッション部材と収容部との軸線に直交する方向のクリアランスをCとしたときに0.1mm≦C≦0.8mmとなる。また、クッション部材の軸線方向の長さをXcとしたときに9.5mm≦Xc≦13.5mmとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コントロールケーブル(例えば、自動車のシフトレバーとトランスミッションとの間に配索されるコントロールケーブル等)の端部を支持する装置(以下、端末支持装置という)に関する。
【背景技術】
【0002】
コントロールケーブルは、通常、筒状のアウターケーブルと、そのアウターケーブルに挿通されたインナーケーブルを有している。アウターケーブルの一端は、入力機器のハウジング等に取付けられ、アウターケーブルの他端は、出力機器のハウジング等に取付けられる。アウターケーブルによって、インナーケーブルは、入力機器から出力機器まで案内される。インナーケーブルの一端には、入力機器に入力された操作者の操作(例えば、押し引き操作等)が入力される。インナーケーブルの一端に入力された操作は、インナーケーブルの他端から出力機器に伝達される。
【0003】
上記のように入力機器と出力機器とをコントロールケーブルで接続すると、出力機器の振動がコントロールケーブルを介して入力機器に伝達され、あるいは、入力機器の振動がコントロールケーブルを介して出力機器に伝達されることがある。このため、コントロールケーブルを介して入出力装置間で振動が伝達されることを防止するための技術が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、アウターケーブルの端部がクッション部材を介してハウジングに取付けられる。クッション部材のハウジングと当接する面には複数個の突起が形成される。ハウジングとの当接面に複数の突起を形成することで、振動の伝達を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−019977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す技術を用いることで、ある程度の振動抑制効果は得られるものの、さらなる振動抑制効果を得ることができる技術の実現が望まれている。本明細書では、振動の伝達をさらに抑制することができる端末支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される端末支持装置は、インナーケーブルと、そのインナーケーブルが挿通されているアウターケーブルとを有するコントロールケーブルの少なくともいずれか一方の端部を支持する。この端末支持装置は、アウターケーブルの端部に取付けられ、その外周にフランジを有するハブと、ハブの外周を取り囲むように配され、フランジの表面と裏面の両側からフランジに当接するクッション部材と、クッション部材を収容する収容部を有するハウジングと、を備えている。そして、クッション部材と収容部との軸線に直交する方向のクリアランスをCとしたときに0.1mm≦C≦0.8mmとなる。また、クリアランスCのより好ましい範囲は、0.25mm〜0.8mmの範囲である。
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、クッション部材と収容部とのクリアランスC(詳細には、軸線に直交する方向のクリアランス)が、振動伝達に重要な役割を果たしていることが判明した。すなわち、クッション部材と収容部の軸線に直交する方向のクリアランスCを適切な値とすることによって、クッション部材の軸方向の対角静ばね定数が適切な値に調整され、従来技術と比較して、振動伝達をさらに抑制することができる。
【0008】
なお、クッション部材と収容部の内壁面との間でクリアランスが形成されるか否かは、クッション部材に作用する荷重や、収容部に対するクッション部材の収容状態(例えば、こじり角等)によって変化する。このため、収容部にクッション部材が収容されたときに実際にクリアランスが形成されているか否かは問題ではなく、クリアランスが形成されるような寸法とされていればよい。
【0009】
なお、上記の端末支持装置では、ハブとクッション部材とは一体に成形することができ、ハブとクッション部材との間にはクリアランスが形成されないようにしてもよい。ハブとクッション部材を一体に成形することで、端末支持装置の組立を容易に行うことができる。
【0010】
また、上記の端末支持装置では、クッション部材の軸線方向の長さをXcとしたときに9.5mm≦Xc≦13.5mmとなることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の端末支持装置を用いたATケーブルの全体構成を模式的に示す図。
【図2】端末支持装置を、ケーブル軸線を通る面で切断したときの断面図。
【図3】クッションとハブの断面図。
【図4】ブラケットを、ケーブル軸線を通る面で切断したときの断面図。
【図5】実施例1の変形例に係るクッションとハブの断面図。
【図6】対角静ばね定数を計測する手順を説明するための図。
【図7】対角静ばね定数の測定結果を示す図。
【図8】実施例2の端末支持装置を、ケーブル軸線を通る面で切断したときの断面図。
【図9】実施例2の端末支持装置の変形例(以下、変形例1という)を説明するための断面図。
【図10】実施例2の端末支持装置の他の変形例(以下、変形例2という)を説明するための断面図。
【図11】実施例2の端末支持装置の他の変形例(以下、変形例3という)を説明するための断面図。
【図12】実施例2の端末支持装置の他の変形例(以下、変形例4という)を説明するための断面図。
【図13】変形例4の端末支持装置の一部分を拡大して示す断面図。
【図14】変形例4の端末支持装置の変形例を説明するための図。
【図15】実施例2の端末支持装置の他の変形例(以下、変形例5という)を説明するための断面図。
【図16】変形例5の端末支持装置の一部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る端末支持装置について説明する。実施例1の端末支持装置は、自動車のシフトレバーとオートマチック・トランスミッション(以下、トランスミッションという)の間に配索されるオートマチック・トランスミッション・ケーブル(以下、ATケーブルという)の端部を支持する。図1に示すように、ATケーブル30は、インナーケーブル29とアウターケーブル34を備えている。アウターケーブル34は、樹脂性のライナー31と、樹脂性のライナー31の外周を被覆する被覆部32を有している。被覆部32は、ストランド線及び樹脂被覆によって構成されている。インナーケーブル29は、アウターケーブル34内に挿通され、アウターケーブル34内を進退動可能となっている。インナーケーブル29の一端には入力ロッド20が接続されており、その他端には出力ロッド23が接続されている。
【0013】
入力ロッド20の先端には穴部20aが形成されている。穴部20aには、シフトレバー(図示されていない)が接続されている。出力ロッド23の先端は、リンク部材22を介してエンジンルームに配されたトランスミッション(図示されていない)に接続されている。運転者によってシフトレバーに入力された操作(変位)は、入力ロッド20を介してインナーケーブル29に伝達される。インナーケーブル29に伝達された変位は、出力ロッド23及びリンク部材22を介してトランスミッションに伝達される。
【0014】
アウターケーブル34の入力ロッド20側の端部は、端末支持装置11により支持されている。端末支持装置11は、シフトレバー装置のハウジングに固定されている。アウターケーブル34の出力ロッド23側の端部は、端末支持装置10により支持されている。端末支持装置10は、エンジンルーム内のケーブル固定用部材26に固定されている。アウターケーブル34の中間部位は、止め具24及びリテーナ28によって車体の所定箇所にクランプされている。なお、実施例1では、入力側の端末支持装置11は、従来公知の端末支持装置と同一構造であるため、以下の説明では、出力側の端末支持装置10について説明する。
【0015】
図2〜4を参照して、実施例1の端末支持装置10の構造について説明する。端末支持装置10は、主に、ハブ12とクッション14(クッション部材の一例)とハウジング17によって構成されている。
【0016】
ハウジング17は、取付け板16とブラケット18を有している。取付け板16は、鉄等の金属で形成されている。取付け板16には、開口穴16bが形成されている。開口穴16bには、ハブ12とクッション14の一端が取付けられる。取付け板16は、エンジンルーム内のケーブル固定用部材26に固定されている。
【0017】
ブラケット18は、鉄等の金属で形成されており、取付け板16に固定される。図4に示されるように、ブラケット18は、一端60が開放されており、他端に開口穴62が形成されている。開口穴62には、ハブ12とクッション14の他端が取付けられる。ブラケット18が取付け板16に固定されると、ブラケット18の一端60が取付け板16で閉じられ、ハウジング17内に収容部19が形成される。収容部19は、その軸線が伸びる方向(軸方向)の寸法がXbとされ、その軸線と垂直な方向(径方向)の寸法がDbとされている。
【0018】
図2,3に示すように、ハブ12は、ガイド部12aと本体部12cによって構成されている。本体部12cの一端には、ガイド部12aが略同軸に固定されている。ガイド部12aと本体部12cは、インサート成形によって一体に成形されている。ガイド部12aと本体部12cは、共に筒状形状をしており、ガイド部12aと本体部12cには、双方を連通する貫通孔12dが形成されている。図1に示すように、ATケーブル30がハブ12に接続されると、インナーケーブル29が貫通孔12dに挿通され、アウターケーブル34は、本体部12cの側(図1の右側)から貫通孔12dに挿入されて本体部12cに固定される。また、ガイド部12aには、フランジ12bが形成されている。フランジ12bは、ガイド部12aの外周に形成されており、ガイド部12aの外周を一巡するリング状に形成されている。
【0019】
クッション14は、フランジ12bを取り囲むようにハブ12(ガイド部12a)の外周に配されている。クッション14は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)や、NR(天然ゴム),CR(クロロブレンゴム)等のゴム材料によって形成することができる。クッション14は、取付け板16の開口穴16bに嵌合する第1小径部14aと、ハウジング17の収容部19に収容される大径部14bと、ブラケット18の開口穴62に嵌合する第2小径部14cを有している。第1小径部14aと大径部14bと第2小径部14cは一体に成形されている。
【0020】
第1小径部14aは、ハブ12のガイド部12a側に配されている。第1小径部14aの外周面は、開口穴16bの内壁面に密着している。第2小径部14cは、ハブ12の本体部12c側に配されている。第2小径部14cの外周面は、開口穴62の内壁面に密着している。大径部14bは、フランジ12bの外表面(表裏面、外周面)を取囲むように配されている。収容部19の軸線とハブ12の軸線とが一致する状態(すなわち、こじり角0°)となるようにクッション14が収容部19に収容されたときに、大径部14bとハウジング17(収容部19)の内壁面とは、収容部19の軸線(ケーブル軸線)が伸びる方向(軸方向)にはクリアランスが形成されない一方で、収容部19の軸線(ケーブル軸線)と垂直な方向(径方向)にはクリアランスが形成されるようになっている。
【0021】
すなわち、クッション14がハウジング17の収容部19に収容されていない状態では、大径部14bの軸方向の寸法Xc(図3参照)は、収容部19の軸方向の寸法Xb(図4参照)以上とされる(Xc≧Xb)。一方、大径部14bの径方向の寸法Dc(図3参照)は、収容部19の径方向の寸法Db(図4参照)より小さくされる(Db>Dc)。これによって、図2に示すように、大径部14bと内壁面18bとの間にはクリアランスCが形成され、大径部14bと内壁面16a,18aの間にはクリアランスが形成されていない。大径部14bの軸方向の寸法Xcは9.5mm≦Xc≦13.5mmの範囲とされ、クリアランスCは0.1mm≦C≦0.8mmの範囲とされる。なお、クッション14と収容部19の内壁面16a,18a,18bとの間にクリアランスが形成されるか否かは、クッション14に作用する荷重や、収容部19に対するクッション14の収容状態(例えば、こじり角等)によって変化する。このため、収容部19の内壁面とクッション14の間に実際にクリアランスが形成されているか否かは問題とはならない。すなわち、クッション14が収容部19に収容されていない状態におけるクッション14の寸法が、クッション14と収容部との間に上述したクリアランスが形成されるような寸法とされていればよい。
【0022】
なお、クッション14とハブ12は、インサート成形によって一体に成形することができる。クッション14とハブ12を一体に成形すると、クッション14とハブ12の間にはクリアランスが形成されない。ハブ12とクッション14を一体に成形することで、端末支持装置10の組立を容易に行うことができる。
【0023】
また、実施例1では、クッション14の表面に、突起や溝等は形成されておらず、平坦な平面に形成されている。クッション14の表面に突起や溝等が形成されていないため、クッション14の変形が抑えられ、いわゆるストロークロスが抑えられている。なお、図5に示すように、クッション14には、大径部14bの軸方向の両端部に突条14dが形成されていてもよい。突条14dは、大径部14bの外周面より径方向に突出して形成されている。突条14dは大径部14bの一部にしか形成されないため、突条14dの高さhは、突条14dが収容部19の内壁面18bに当接するような高さとしてもよい。さらには、クッション14の大径部14bの外形状は、円筒形状に限られず、樽形状や鼓形状としてもよい。
【0024】
上述したように、実施例1の端末支持装置10では、収容部19の寸法(Xb,Db)と、クッション14(詳細には大径部14b)の寸法(Xc,Dc)が適切に設定されている。このため、後述するように、収容部19の軸線とハブ12の軸線とがなす角度(こじり角)が0.0〜6.0°の範囲内となるように収容部19にクッション14を収容したときに、こじり角に関係なく、クッション14の軸方向の対角静ばね定数が350〜600N/mmの範囲内となるように調整されている。すなわち、端末支持装置10では、ハウジング17の収容部19にクッション14を収容することで、ハウジング17にハブ12とクッション14が取付けられる。また、クッション14は弾性変形可能な材料で形成されており、クッション14と収容部19の内壁面との間にはクリアランスも形成されるようになっている。このため、ハウジング17に対してハブ12及びクッション14が傾いた状態(すなわち、ハブ12の軸線が図2のA線で示すように傾いた状態)で取り付けられることがある。実施例1の端末支持装置10では、ハウジング17にハブ12及びクッション14が取付けられたときのこじり角が0.0〜6.0°の範囲内では、こじり角に関係なく、クッション14の軸方向の対角静ばね定数が350〜600N/mmの範囲内に調整されている。これにより、後述する実験結果に示すように、実施例1の端末支持装置10は、防振性能を飛躍的に向上することができる。なお、クッション14の静ばね定数として対角静ばね定数を用いたのは、クッション14が、圧縮時の変位と引張時の変位が異なるヒステリシス特性を有するためである。
【0025】
次に、上述した実施例1に係る端末支持装置を実際に製作し、その防振効果を測定した実験について説明する。実験では、クッションの寸法を変えて端末支持装置を実際に製作し、クッションの軸方向の対角静ばね定数と、その防振効果を測定した。具体的には、表1に示される3種類のクッションを有する端末支持装置を製作した。実験例1,2では、収容部19の軸方向の長さXbを13.5mmとし、収容部19の径方向の長さDbを24.0mmとした。なお、実験例1のクッションは図2に示す形状を有しており、実験例2のクッションは図5に示す形状を有していた。一方、比較例1では、収容部19の軸方向の長さXbを9.5mmとし、収容部19の径方向の長さDbを24.0mmとした。なお、上記以外の構成については全て同一とした。
【0026】
【表1】

【0027】
次に、製作した端末支持装置のそれぞれについて、クッションの対角静ばね定数を測定した。すなわち、まず、ハウジング17にハブ12及びクッション14を収容し、ハウジング17に対するハブ12の取付け角度を調整した。具体的には、こじり角が0.0°,2.0°,4.0°,6.0°となるように調整した。次いで、各こじり角0.0°,2.0°,4.0°,6.0°のそれぞれについて対角静ばね定数を測定した。すなわち、図6に示すように、ハブ12の軸方向に引張方向の力と圧縮方向の力を交互に繰り返し作用させ、そのときのハブ12の変位(たわみ)を測定した。そして、ハブ12に引張方向の力を作用させたときにおいて、ハブ12の荷重が+20Nとなるときの変位を特定し、また、ハブ12に圧縮方向の力を作用させたときにおいて、ハブ12の荷重が−20Nとなるときの変位を特定した。そして、ハブ12の荷重が+20Nとなるときの変位と、ハブ12の荷重が−20Nとなるときの変位とから傾きを算出して、対角静ばね定数とした。なお、対角静ばね定数の算出に用いた変位は、2サイクル目の引張力又は圧縮力を作用させたときに測定された値とした。すなわち、ハブ12に引張力と圧縮力を作用させることを1サイクルとしたときに、2サイクル目の引張力を作用させたときの変位と2サイクル目の圧縮力を作用させたときの変位から対角静ばね定数を算出した。図7は測定された対角静ばね定数を示す。図7から明らかなように、実験例1,2では、こじり角0.0〜6.0°のいずれの場合も、対角静ばね定数は350〜600N/mmの範囲となった。一方、比較例1では、こじり角0.0〜6.0°のいずれの場合も、対角静ばね定数は1000N/mmを超えた。
【0028】
次に、製作した端末支持装置のそれぞれについて防振特性を測定した。防振特性の測定は、ハブ12の一端を加振機で加振し、ハブ12の他端に伝達される振動をハウジング17(ブラケット18)で測定し、入力した振動レベルから測定された振動レベルを減算することで防振効果dBを算出した。加振機からハブ12に入力する振動の周波数は、エンジンから入力される振動の周波数に応じたものとし、本実施例では、800〜3000Hzとした。なお、防振特性の測定では、こじり角を0°〜6°で変化させながら測定した。測定結果を表2に示す。表2では、対角静ばね定数も併せて示している。なお、防振効果の負の値が大きいほど、ハブからハウジングに伝達される振動が軽減されており、防振効果が高いことを示している。
【0029】
【表2】

【0030】
表2より明らかなように、実験例1,2の端末支持装置では、比較例1の端末支持装置と比較して、全てのこじり角において良好な防振効果を奏することができた。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2に係る端末支持装置について説明する。実施例2の端末支持装置は、第1実施例と同様、ATケーブルの端部を支持するが、実施例2では、ATケーブルの入力側の端末支持装置(図1の端末支持装置11)が本発明に係る構成を有しており、出力側の端末支持装置(図1の端末支持装置10)は従来公知の構成を有している。このため、以下の説明では、入力側の端末支持装置について主に説明する。なお、端末支持装置以外の部分(例えば、ATケーブル等)については、実施例1と同様であるため、実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図8を参照して、実施例2に係る端末支持装置71の構造について説明する。図8に示すように、端末支持装置71は、ハブ72と、ガイドパイプ13と、クッション75(クッション部材の一例)と、ハウジング74によって構成されている。
【0033】
ハウジング74は、カバー74bとキャップ74aを有している。カバー74bは、樹脂により形成されている。カバー74bの内部には、ハブ72の一部と、クッション75と、ガイドパイプ13の一部が収容される。カバー74bの一端(図8の左端)からはハブ72の一部が突出し、カバー74bの他端(図8の右端)からはガイドパイプ13の一部が突出し、クッション75はカバー74b内に位置している。カバー74bは、シフトレバー装置のハウジングに固定されている。
【0034】
キャップ74aは、樹脂により形成されており、カバー74bの一端(図8の左端)に取付けられる。キャップ74aをカバー74bに取付けるための機構には、例えば、ねじ機構を用いることができる。すなわち、キャップ74aの内周面に雌ねじを形成し、カバー74bの外周面に雄ねじを形成し、これら雌ねじと雄ねじが係合することで、カバー74bにキャップ14aを取付けることができる。キャップ74aがカバー74bに取付けられると、カバー74bの一端がキャップ74aによって閉じられ、キャップ74aとカバー74bによって囲まれる空間内にクッション75が収容される。
【0035】
ハブ72は、筒状に形成されており、円筒部72aとフランジ部72bを有している。円筒部72aの一端(図8においてフランジ部72bより左側)には、アウターケーブル34が固定される。円筒部72aの他端(図8においてフランジ部72bより右側)は、クッション75を介してガイドパイプ13に連結されており、その内部をインナーケーブル29が挿通している。フランジ部72bは、円筒部72aの外周に形成されており、円筒部72aの外周を一巡するリング状に形成されている。
【0036】
ガイドパイプ13は、筒状に形成されており、その内部をインナーケーブル29及び入力ロッド20が挿通する。入力ロッド20は、ガイドパイプ13によって案内される。ガイドパイプ13の基端(図8の左端)は、クッション75を介してカバー74bに揺動可能に取付けられている。このため、入力ロッド20は、シフトレバーの操作に応じてカバー74bに対して揺動することができる。
【0037】
クッション75は、フランジ部72bを取り囲むようにハブ72の外周に配されている。クッション75は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)や、NR(天然ゴム),CR(クロロブレンゴム)等のゴム材料によって形成することができる。クッション75の動倍率は1.7以下とすることが好ましい。クッション75の動倍率を1.7以下とすることで、防振効果を向上することができる。なお、動倍率とは、動ばね定数/静ばね定数の比で表される。
【0038】
クッション75は、フランジ部72bの前面及び後面に当接する大径部76と、大径部76の一端側(図8の左側)に設けられた第1小径部78aと、大径部76の他端側(図8の右側)に設けられた第2小径部78bを有している。第1小径部78aと第2小径部78bは、大径部76の径よりも小さくされている。大径部76と第1小径部78aと第2小径部78bは一体に成形されている。
【0039】
大径部76の外周面76aとカバー74bの内周面との間にはクリアランスが形成されている。すなわち、クッション75がハウジング74に収容されていない状態では、大径部76の径方向の寸法Dcは、ハウジング74の内部空間の径方向の寸法Dbより小さくされている(Db>Dc)。大径部76の外周面76aとカバー74bの内周面との間のクリアランスは、実施例1と同様、0.1mm≦C≦0.8mmの範囲とされている。クリアランスを0.1mmより大きくすることで、高い防振効果を得ることができる。また、クリアランスを0.8mm以下とすることで、クッション75の軸方向の剛性が低くなり過ぎることを防止することができる。
【0040】
一方、大径部76の端面とハウジング74の内面との間にはクリアランスが形成されていない。すなわち、クッション75がハウジング74に収容されていない状態では、大径部76の軸方向の寸法Xcは、ハウジング74の内部空間の軸方向の寸法Xb以上とされている(Xc≧Xb)。したがって、大径部76の端面(ケーブル軸方向の端面)は、ハウジング74の内面と当接している。大径部76の軸方向の寸法Xcは、実施例1と同様、9.5mm≦Xc≦13.5mmの範囲とされている。大径部76の軸方向の寸法Xcを9.5mm以上とすることで、防振効果を高めることができる。また、大径部76の軸方向の寸法Xcを13.5mm以下とすることで、ストロークロスを良好なレベルに抑えることができる。
【0041】
第1小径部78aの内周面は、大径部76の一端側(図8の左側)でハブ72に当接している。第1小径部78aとキャップ74aとの間にクリアランスが形成されている。第1小径部78aの先端は、ハウジング74の外側に位置している。第1小径部78aの外周面には、径方向に突出する凸部80aが形成されている。凸部80aは、クッション75の外周を一巡するリング状に形成されている。
【0042】
第2小径部78bは、大径部76からカバー74b内をガイドパイプ13に向かって伸び、ガイドパイプ13の基端部に連結されている。第2小径部78bの内周面は、その一端側がハブ72に当接し、その他端側がガイドパイプ13に当接している。第2小径部78bの外周面は、ガイドパイプ13に連結される部位においてカバー74bの内面に当接し、それ以外の部位(ハブに当接する範囲を含む)ではカバー74bの内面との間にクリアランスが形成されている。第2小径部78bの先端は、ハウジング74(カバー74b)内に位置する。第2小径部78bの外周面には、径方向に突出する凸部80bが形成されている。凸部80bは、クッション75の外周を一巡するリング状に形成されている。
【0043】
凸部80a,80bは、ハブ72のフランジ部72bに対して対称な位置に配置されている。図8から明らかなように、ハブ72及びアウターケーブル34は、図中のA点を中心にハウジング74に対して傾斜する(いわゆる、こじられる)。ここで、クッション75の小径部78a、78bには、A点に対して対称な凸部80a,80bが形成されている。このため、ハブ72及びアウターケーブル74が傾斜しても、凸部80a,80bがハウジング74の内面に当接し、ハブ72及びアウターケーブル74がさらに傾斜することを抑制することができる。
【0044】
上述したように、第2実施例の端末支持装置71では、クッション75の外周面(詳細には大径部76の外周面)とハウジング74との間にクリアランスが形成されている。そして、このクリアランスが0.1mm≦C≦0.8mmの範囲とされている。さらに、クッション75の大径部76の軸方向の寸法が、9.5mm≦Xc≦13.5mmの範囲とされている。このため、高い防振効果を得ることができる。
【0045】
次に、上述した実施例2に係る端末支持装置71を実際に製作し、その防振効果を測定した実験について説明する。実験では、クッションの寸法を変えて端末支持装置を実際に製作し、クッションの軸方向の対角静ばね定数と、その防振効果を測定した。具体的には、表3に示される10類のクッションを有する端末支持装置を製作した。なお、ハウジング74の内部空間(クッションの大径部を収容する空間(実施例1の収容部19に相当))の寸法は、軸方向の長さを(クッションの軸方向の寸法−0.55mm)とし、その径方向の寸法を24.0mmとした。
【0046】
【表3】

【0047】
次に、製作した端末支持装置のそれぞれについて、クッションの対角静ばね定数を測定した。測定は、こじり角が0.0°の条件で行った。なお、対角ばね定数の測定手順は、実施例1における実験と同様とした。測定結果を表4に示す。表4に示すように、実験例3〜9では、対角静ばね定数は400〜600N/mmの範囲となった。一方、比較例2,3では、対角静ばね定数は600N/mmを超えた。
【0048】
次に、製作した端末支持装置のそれぞれについて防振特性を測定した。防振特性の測定は、実施例1における実験と同様とし、こじり角0.0°の条件で行った。測定結果を表4に示す。表4より明らかなように、実験例3〜9の端末支持装置では、−16.5dB以上の大きな防振効果が得られた。一方、比較例2,3の端末支持装置では、実験例3〜9の端末支持装置と比較して、大きな防振効果が得られなかった。
【0049】
【表4】

【0050】
以上、本明細書によって開示される端末支持装置の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0051】
例えば、実施例2の端末支持装置においては、図9に示すケーブルアッセンブリ90を用いることができる。ケーブルアッセンブリ90は、ハブ72とガイドパイプ13とクッション92が一体化されている。ケーブルアッセンブリ90は、実施例2のハウジング74内に収容される。ケーブルアッセンブリ90では、クッション92内にリング状の金属板94a,94bが配置されている。金属板94a,94bは、ハブ72のフランジ部72bに対して対称に配置されている。クッション92内に金属板94a,94bを配置することで、クッション92が軸方向に分割され、クッション92の軸方向の剛性を2段階に切り替えることができる。すなわち、クッション92は、低荷重域では低ばね定数となり、高荷重域では高ばね定数となる。これによって、防振効果を高めながらストロークロスを低減することができる。
【0052】
また、実施例2の端末支持装置においては、図10に示すケーブルアッセンブリ100を用いることもできる。ケーブルアッセンブリ100では、ハブ102のフランジ部102bが段付形状に形成され、また、クッション104の大径部の端面に、軸方向に突出する突起106が形成されている。突起106は、クッション104の大径部の端面の外周縁に沿って形成されている。図10に示す例では、ハブ102のフランジ部102bが段付形状であるため、クッション104の軸方向の寸法も径方向に2段階に変化する。すなわち、クッション104の内周側でクッション104の軸方向の寸法が小さく、クッション104の外周側でクッション104の軸方向の寸法が大きくなる。このため、図10に示す例でも、クッション104の軸方向の剛性を2段階に切り替えることができ、防振効果を高めながらストロークロスを低減することができる。なお、図10に示すケーブルアッセンブリ100では、クッション104に突起106が形成されているため、コントロールケーブルがこじられたときの影響を抑えることができる。
【0053】
また、実施例2の端末支持装置においては、図11に示すケーブルアッセンブリ110を用いることができる。図11に示すように、ケーブルアッセンブリ110では、クッション112の大径部の外周面114がテーパ状に形成されている。これによって、クッション112の大径部は、その軸方向端面において径が小さくなっている。また、クッション112の小径部の外周面には、ハブ118の揺動中心Aに対して対象に凸部116a,116bが形成されている。これらの構成を備えることで、コントロールケーブルがこじられたときに、そのこじり角が大きくなることが抑制される。また、クッション112の大径部の外周面114がテーパ状に形成されているため、コントロールケーブルがこじられても、外周面114とハウジング74の内面との接触が防止され、クッション112の軸方向の剛性が高くなることを抑制することができる。
【0054】
また、図12に示す端末支持装置120のように、クッション124の大径部126の両端面にクリアランスを部分的に形成してもよい。すなわち、大径部126の両端面の外周部ではハウジング122に当接し、両端面の内周部ではハウジング122との間にクリアランスが形成される。より詳細には、図13に示すように、カバー122bの内面(大径部126の端面126bと対向する面)の一部(外周部)がクッション124側に突出し、クッション124と当接する。なお、大径部126の外周面126aとカバー122bの内面との間には、クリアランスが形成されている。また、キャップ122a側も、カバー122b側と同様に構成される。このような構成によると、クッション124に低荷重が作用するときは、クッション124の大径部126の端面とハウジング122の内面とが完全には接触せず、一部にクリアランスが形成される。したがって、クッション124の軸方向の剛性を低くすることができる。一方、クッション124に高荷重が作用するときは、クッション124の大径部126の端面126bの全体がハウジング122の内面に接触し、クッション124の軸方向の剛性が高くなる。したがって、クッション124の軸方向の剛性を2段階に切り替えることができ、防振効果を高めながらストロークロスを低減することができる。なお、ハウジング122の内面(大径部126と対向する面)の一部を突出させるためには、図14に示すような部品130をハウジング122内に収容するようにしてもよい。部品130は、ワッシャ状の部品であり、ハブ128が貫通する貫通孔132,134が形成されている。部品130をハウジング122内の両端に対向して配置することで、図12に示す端末支持装置120を簡易に構成することができる。
【0055】
さらには、図15,16に示す端末支持装置140のように、クッション148を3つの部分142,144,146に分割してもよい。中央に配置されるクッション部分144は、ハブ150のフランジ部150bに当接し、その両側面にリング状の凹部が形成されている。両側に配置されるクッション部分142,146には、クッション部分144に向かって突出するリング状の凸部が形成されている。クッション部分142,146の各凸部は、クッション部分144の凹部に嵌合している。クッション部分144の硬度は、クッション部分142,146の硬度よりも高くされている。例えば、クッション部分144のゴム硬度を60°とし、クッション部分142,146のゴム硬度を40°とすることができる。このようにクッション148を3つに分割し、各クッション142,144,146の硬度を変えることで、クッション148の軸方向の剛性を2段階(低荷重で低ばね定数+高荷重で高ばね定数)に切替えることができる。これによって、防振効果を高めながらストロークロスを低減することができる。
【0056】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
10:端末支持装置
12:ハブ
14:クッション
16:取付け板
17:ハウジング
18:ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーケーブルと、そのインナーケーブルが挿通されているアウターケーブルとを有するコントロールケーブルの少なくともいずれか一方の端部を支持する端末支持装置であって、
アウターケーブルの端部に取付けられ、その外周にフランジを有するハブと、
ハブの外周を取り囲むように配され、フランジの表面と裏面の両側からフランジに当接するクッション部材と、
クッション部材を収容する収容部を有するハウジングと、を備えており、
クッション部材と収容部との軸線に直交する方向のクリアランスをCとしたときに0.1mm≦C≦0.8mmとなる、コントロールケーブルの端末支持装置。
【請求項2】
クッション部材の軸線方向の長さをXcとしたときに9.5mm≦Xc≦13.5mmとなる、請求項1に記載のコントロールケーブルの端末支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−15215(P2013−15215A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250104(P2011−250104)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】