説明

コンニャクライス

【課題】
ご飯としてコンニャクを食することをなんら意識することなく、通常の食生活の中で安定してコンニャクを摂れ、食事のカロリー制限をきわめて容易に行うことができる、米と一緒にあるいは単独に炊飯して食することのできるコンニャクライス及びその製造方法。
【解決手段】
こんにゃく精粉1重量部とデンプン8〜15重量部とを含み、通常手段により米粒状に混練成形された水分散ゾルを、デンプンの糊化温度以下でゲル化させて乾燥することを特徴としたコンニャクライスおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米と一緒にあるいは単独に炊飯して食することのできるコンニャクライス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メタボリックシンドロームに代表されるように、糖尿病等の生活習慣病が深刻な状況になっており、その原因のひとつである肥満への対策が国家的な課題となっている。
【0003】
コンニャクは、低カロリーの食品素材として高い評価を得ており、これを食生活の中に多く取り入れることで食事のカロリーコントロールに寄与することができる。しかしながら、市販のコンニャクは、その特有の臭いと味染みが低いなどの理由により、おでんやすき焼きなどごく限られた料理にしか使われていないのが現状である。
【特許文献1】特許出願公告 平3-70461
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記コンニャク食品の課題を解決せんとするものであって、その目的は、米と一緒にあるいは単独に炊飯して食することのできるコンニャクライス及びその製造方法に関するものである。いわゆるご飯としてコンニャクを食することをなんら意識することなく、通常の食生活の中で安定してコンニャクを摂れ、食事のカロリー制限をきわめて容易に行うことができる。また、本発明による製造方法においては、デンプンの糊化温度以下でゲル化させて乾燥することにより、デンプンの糊化に伴う吸水を抑えて、きわめて効率的に乾燥することができる。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的によるこの発明のコンニャクライスは、こんにゃく精粉1重量部とデンプン8〜15重量部とを含み、通常手段により米粒状に混練成形された水分散ゾルを、デンプンの糊化温度以下でゲル化させて乾燥することを特徴とする乾燥コンニャクゲルに係る。
【0006】
本発明においては、まず通常のコンニャク製造の手法に準じてこんにゃく精粉とデンプンとを使用して水分散ゾルを調製する。すなわち、こんにゃく精粉1重量部とデンプン8〜15重量部とをこんにゃく精粉重量の20〜50倍量程度、好ましくは30〜40倍量程度の0℃〜60℃の水で分散させてゾルを調製する。
【0007】
デンプンとしては、キャッサバ、ばれいしょ、とうもろこし等由来の生デンプンが好ましく、アルファー化された加工デンプンは使用しない。
【0008】
次いで、上記の如くして得られた水分散ゾルを粒状に成型してゲル化する。ゲル化の方法は、食品に用いることが許されたアルカリをこんにゃく精粉に反応させて行う。すなわち、こんにゃく精粉の主成分であるグルコマンナン中の親水性のアセチル基が、アルカリとの化学反応により酢酸となって外れ、不可逆性のゲルを作る性質を用いる。
【0009】
例えばアルカリが水酸化カルシウムの場合は、当初のこんにゃく精粉重量の3〜10%程度、好ましくは5〜7%を水分散液の状態で水分散ゾルに均一に混合し、粒状に成型して0℃〜60℃の水中、好ましくは40℃〜60℃の水中でゲル化するまで放置する。ゲル化の時間はアルカリ濃度と水温によって変化する。アルカリが水酸化カルシウムで、当初のこんにゃく精粉重量の5%の時の水温とゲル化時間の関係を第1図に示したが、例えば水温が10℃の場合は約15分でゲル化し、水温が60℃の場合は約2分でゲル化が完了する。
【0010】
本発明におけるゲル化工程において最も重要なことは、水温をデンプンの糊化温度以下に抑制してゾル中のデンプンを糊化させないということである。デンプンの糊化を防ぐことにより、デンプンの吸水を抑制して後工程であるゲルの乾燥を著しく容易にすることができる。第2図にこんにゃく精粉に対するデンプンの量と、デンプンの糊化の有無によるゲル固形分の関係を、第3図にゲル固形分と90℃の熱風乾燥における乾燥時間示したが、デンプンの糊化によって吸水が増えてゲルの固形分が少なくなり、乾燥に不利な条件になることがわかる。なお、デンプンの糊化がなくともコンニャクのゲル化のみで充分に成型を保つことができ、ゲル化工程での水中へのデンプン粒の流出もごく僅かであることが確認された。
【0011】
本発明においては、次に上記デンプン含有コンニャクゲルを乾燥する。乾燥方法は特に限定されないが、熱風による乾燥が最も効率的で簡単であり、ゲルの水分含量が10〜15%程度となるまで乾燥してコンニャクライスを得る。
【0012】
本発明によるコンニャクライスは、水を加えて煮沸することにより多量の水を吸水して膨潤し、米を炊飯した通常のご飯と似た食感となる。

【発明の効果】
【0013】
本発明のコンニャクライスは、米と一緒にあるいは単独に炊飯してコンニャクを食することをなんら意識することなく、通常の食生活の中で安定してコンニャクを摂れ、食事のカロリー制限をきわめて容易に行うことができる。
【0014】
本発明によるコンニャクライスの製造方法において、デンプンの糊化温度以下でゲル化させることにより、きわめて効率的に乾燥することができ、安価に製造することができる。

【実施例】
【0015】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]成形工程 こんにゃく精粉1kgに水25kgを加え、良く攪拌して1時間放置した後の材料に、タピオカでんぷん10kgを加え良く混練した後、石灰乳(水酸化カルシウム60g,水3kg)を加えて良く混練し、粒こんにゃく成形機の回転ノズルによって直径3〜5mmの粒状に成形して、60℃に温度調整した水中に投入し攪拌した。10分間攪拌を続けデンプン含有コンニャクゲルを得た。
乾燥工程 熱風乾燥機により80〜90℃の温度で含水率が10〜15%となるまで乾燥して、コンニャクライスを得た。
【0016】
[実施例2]成形工程 こんにゃく精粉1kgに水25kgを加え、良く攪拌して1時間放置した後の材料に、タピオカでんぷん12kgを加え良く混練した後、炭酸ナトリウム100gを水3kgに溶解した水溶液を加えて良く混練し、粒こんにゃく成形機の回転ノズルによって直径3〜5mmの粒状に成形して、40℃に温度調整した水中に投入し攪拌した。30分間攪拌を続けデンプン含有コンニャクゲルを得た。
乾燥工程 熱風乾燥機により80〜90℃の温度で含水率が10〜15%となるまで乾燥して、コンニャクライスを得た。
【0017】
上記実施例によるコンニャクライスを1合(150g)と精白米2合(300g)に、精白米4合分の水を加えて炊飯器で通常の条件にて炊飯して4合分のコンニャクライス入りご飯を得た。本品と100%米飯とを10人のパネラーにより比較試食した結果を第1表に示した。

【表1】

【0018】
上記実施例によるコンニャクライスと、水を加えて20分間煮沸して得たゲルの組成を第2表に示す。

【表2】

【0019】
上記実施例によるコンニャクライスの炊飯後の熱量は、100g当り約73Kcalとなり、精白米の熱量(100g当り148Kcal)の約50%にすきない。したがって、炊飯後のコンニャクライスが精白米の50%を占めるように炊飯した場合、その熱量は110Kcalとなり、精白米飯の約74%となる。
【0020】
本発明によるコンニャクライスが、精白米に代替してきわめて容易にカロリー制限ができることは明らかである。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水温とゲル化時間の関係
【図2】澱粉/こんにゃく粉比と固形分の関係
【図3】こんにゃくゲル固形分と乾燥時間の関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
こんにゃく精粉1重量部とデンプン8〜15重量部とを含み、通常手段により米粒状に混練成形された水分散ゾルを、デンプンの糊化温度以下でゲル化させて乾燥することを特徴としたコンニャクライスの製造方法。
【請求項2】
上記デンプンは、キャッサバ、ばれいしょ、とうもろこし等由来のデンプンからなることを特徴とする請求項1記載のコンニャクライス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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