説明

コンバインの刈取搬送装置

【課題】刈取穀稈を円滑に搬送できるものとしてコンバインによる刈取作業の能率を向上させる。
【解決手段】左右根元挟持搬送装置(18,18)の合流部に接続するように後部穂先係止搬送装置(19)及び後部根元搬送装置(20)を設ける。また、後部穂先係止搬送装置(19)を、後部穂先係止搬送ベルト(19a)と、対向する後部穂先搬送ガイド杆(19b)により構成し、後部穂先搬送ガイド杆(19b)の始端側を搬送フレーム(14)に軸支し、後部穂先搬送ガイド杆(19b)の終端側をバネ(22)により後部穂先係止搬送ベルト(19a)に接近する側に押圧付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取搬送装置において、挟持レールを株元搬送チェンに対して接近離間自在に且つ接近方向に付勢した状態で設け、株元搬送チェンに対するバネ線材からなるバトンタッチ用の挟持レール杆を、前記挟持レールから後向き片持ち状に延出し、この挟持レール杆の株元搬送チエンから離間方向への移動量に基づく搬送穀稈量の増大を検出する状態に警報用センサを設置したものは公知である(特許文献1)。
【0003】
また、穀稈引起し装置の後方に穀稈搬送装置を設け、穀稈搬送装置の内、穂先側を係止搬送する穂先係止搬送装置に対向して配置している穀稈ガイド部材を弾性的に後退変位可能に構成し、穀稈ガイド部材の設定量以上の後退変位を検出する検出装置と、検出装置の検出により警報を発する警報装置を設けたものは公知である(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−47号公報
【特許文献2】実開平5−9233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンバインの穀稈搬送装置において、穀稈根元部を根元搬送装置により強固に挟持し、穀稈穂先部を穂先係止搬送ベルトと穂先搬送ガイド杆により弾圧支持しながら、脱穀部のフィードチェンに確実に引継ぎ搬送しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、刈取搬送部(5)には刈取穀稈を左右両側から中央部へ搬送する左右根元挟持搬送装置(18,18)を設け、該左右根元挟持搬送装置(18,18)の合流部に接続するように後部穂先係止搬送装置(19)及び後部根元搬送装置(20)を設けて合流穀稈を後方の脱穀部(4)のフィードチェン(24)に引継搬送する構成とし、前記後部穂先係止搬送装置(19)を後部穂先係止搬送ベルト(19a)と該後部穂先係止搬送ベルト(19a)に対向配置した後部穂先搬送ガイド杆(19b)とで構成し、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の始端側を搬送フレーム(14)に軸支し、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の終端側を前記後部穂先係止搬送ベルト(19a)に接近あるいは離間可能な構成とし、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の終端側をバネ(22)により後部穂先係止搬送ベルト(19a)に接近する側に押圧付勢したことを特徴とするコンバインの刈取搬送装置とする。
【0006】
前記構成によると、刈取穀稈は左右根元挟持搬送装置18,18により左右両側から中央部へ掻込搬送され、更に、後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20に引き継がれて後方の脱穀部4のフィードチェン24に引継ぎ搬送される。また、後部穂先係止搬送装置19は後部穂先係止搬送ベルト19aと対向配置している後部穂先搬送ガイド杆19bにより構成されていて、搬送穀稈の根元部は後部根元搬送装置20により強固に挟持搬送され、穀稈穂先部は後部穂先係止搬送ベルト19aと後部穂先搬送ガイド杆19bの間にバネ22により押圧支持されながら、穀稈穂先部の増減あるいは後部根元搬送装置20の扱ぎ深さ調節に対応して、後部穂先搬送ガイド杆19bが接近あるいは離間しながら搬送される。
【0007】
請求項2の発明は、穀稈穂先部が所定量より多くなり前記後部穂先搬送ガイド杆(19b)が前記バネ(22)による押圧付勢に抗して前記後部穂先係止搬送ベルト(19a)から離間すると、リミットスイッチ(23)がONしブザー(26)が作動する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取搬送装置とする。
【0008】
前記構成によると、請求項1発明の前記作用に加えて、穀稈穂先部が所定量より多くなり後部穂先搬送ガイド杆19bがバネ22に抗して後部穂先係止搬送ベルト19aから離間すると、リミットスイッチ23がONしブザー26が作動する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、脱穀部4のフィードチェン24へ引き継がれる搬送穀稈は、根元部を後部根元搬送装置20に強固に挟持され、穂先部は後部穂先係止搬送ベルト19aと後部穂先搬送ガイド杆19bの間に押圧支持されながら搬送され、この搬送穀稈の量が変化しても、後部穂先搬送ガイド杆19bが円滑に接近あるいは離間しながら確実に搬送することができ、コンバインによる刈取作業の能率を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、穀稈穂先部が所定量より多くなるとブザー26が鳴るため、オペレータは搬送穀稈の増加を知ることができ、搬送穀稈の詰まりを未然に防止してコンバインによる刈取作業の能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、図1乃至図3基づき本発明を具備するコンバインの全体構成について説明する。図1にはコンバインの全体側面図、図2には全体平面図、図3には正面図が図示されている。
【0012】
コンバインの走行車台1の下方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車台1上の右側前部に操縦部3を、左側前部に脱穀部4を搭載し、走行車台1の前側部には刈取搬送部5を昇降自在に設けている。この刈取搬送部5には、複数の分草杆6,…、穀稈引起し装置7、…、刈刃装置8、穀稈搬送装置9等を設けている。
【0013】
前記構成により、コンバイン1の回転各部を駆動走行し刈取作業を開始すると、走行クローラ2,2が回転してコンバイン1は走行を開始する。すると、圃場の穀稈は刈取搬送部5の前側部の分草杆6,…により穀稈条列毎に分草されながら穀稈引起し装置7,…に案内され、引起しラグにより引き起される。引起された穀稈は刈刃装置8で刈り取られ、穀稈搬送装置9により後方に搬送され、脱穀部4のフィードチェン24に引き継がれ脱穀される。
【0014】
次に、図1乃至図4に基づき刈取搬送部9について具体的に説明する。
刈取搬送部5の後側部には、伝動装置の内装されている刈取搬送フレーム11を設けている。この刈取搬送フレーム11の前端部には伝動装置の内装されている下部ギヤケース12を設け、該下部ギヤケース12の左右一端側から立ち上げた引起伝動筒(図示省略)の上端部に穀稈引起し装置7,…を取り付けている。
【0015】
また、下部ギヤケース12の前方に刈刃フレーム13を左右方向に沿うように設け、この刈刃フレーム13に下側刈刃と、上側刈刃からなる刈刃装置8を装着している。
また、この刈刃フレーム13から、左右方向所定間隔おきに、分草杆6,…を設けている。
【0016】
また、図4に示すように、前側部から後側部にかけて、複数の根元係止掻込搬送装置16,…、根元掻込回転体17,…、左右根元挟持搬送装置18,…を順次配設し、穀稈穂先部を根元係止掻込搬送装置16,…により後方に掻き込み、刈刃装置8で穀稈根元部を切断し、根元掻込回転体17,…で後方に掻き込み、左右根元挟持搬送装置18,…により後側中央に合流するように掻込搬送している。
【0017】
この左右根元挟持搬送装置18,18の後部合流部に接続するように、後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20を設け、合流穀稈を引継ぎ後方へ搬送し、脱穀部4のフィードチェン24に供給するように構成している。
【0018】
前記後部根元搬送装置20は、前側根元搬送装置20aと、後側の引継ぎ搬送装置20bにより構成し、前側根元搬送装置20aの後側部を上下に調節し扱ぎ深さを調節可能に構成している。前記後部穂先係止搬送装置19は、図4に示すように、後部穂先係止搬送ベルト19aと、対向配置されている後部穂先搬送ガイド杆19bにより構成している。
【0019】
この後部穂先搬送ガイド杆19bの始端側を搬送フレーム14にピン19cにより軸支し、後部穂先搬送ガイド杆19bの終端側を穂先穀稈の搬送量の多少に応じて、後部穂先係止搬送ベルト19aに接近あるいは離間可能に構成している。搬送サイドフレーム21に装着したバネ22により、後部穂先搬送ガイド杆19bを接近側に押圧付勢している。
【0020】
また、搬送サイドフレーム21にはリミットスイッチ23を設け、穂先部が所定量より多くなり後部穂先搬送ガイド杆19bがバネ22に抗して離間方向に回動すると、後部穂先搬送ガイド杆19bの作動片19dがリミットスイッチ23の感知板23aに当接し、リミットスイッチ23がONするように構成している。リミットスイッチ23がONすると、コントローラ(図示省略)の指令により、操縦部3に設けたブザー26が作動する構成である。
【0021】
前記構成によると、後部穂先係止搬送装置19で多量の穀稈搬送時には、後部穂先係止搬送ベルト19aと後部穂先搬送ガイド杆19bの間で穂先部を適度に押圧しながら、後部穂先搬送ガイド杆19bが離間するので、穂先部の係止搬送性能を向上させることができる。また、後部根元搬送装置20の搬送終端側では搬送穀稈が脱穀部4のフィードチェン24に引き継がれる関係で、縦方向の搬送穀稈が順次横方向に倒れながら搬送されるが、穀稈の穂先側は後部穂先係止搬送ベルト19aと後部穂先搬送ガイド杆19bとの間を適度に拡げながら後部穂先搬送ガイド杆19bによる係止押圧支持されながら、穂先部を円滑に搬送することができる。
【0022】
また、穀稈の穂先部が所定量より多くなると、リミットスイッチ23がONしてブザー26が鳴るので、オペレータは搬送穀稈が多くなったことを知ることができる。
次に、図4及び図5に基づき穀稈搬送装置9の制御について説明する。
【0023】
刈取搬送部5の前側部左右両側には、刈取穀稈の有無を検出する左穀稈センサ31、右穀稈センサ32及び中央穀稈センサ36を設け、刈取搬送部5の後部である左右根元挟持搬送装置18,18の合流部後方に、搬送穀稈の有無を検出する後穀稈センサ33を設け、後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20の上方には穂先扱ぎ深さセンサ34、根元穂先扱ぎ深さセンサ35を設けている。
【0024】
そして、扱ぎ深さスイッチ(図示省略)が入りの状態では、後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20で搬送中の穂先部先端が穂先扱ぎ深さセンサ34と根元穂先扱ぎ深さセンサ35の間を通過するように、脱穀部4のフィードチェン24に対して後部根元搬送装置20の前側根元搬送装置20aが遠近に調節される扱ぎ深さ制御が実行される。
【0025】
また、刈取作業の初めに左穀稈センサ31のみが穀稈を検知したときには、コントローラ(図示省略)が畔際の右回り刈取作業と自動判定して扱ぎ深さ制御を開始する。すると、刈取開始時には穂先扱ぎ深さセンサ34及び根元穂先センサ35が穀稈を検知していないので、刈取穀稈が到達するまでの間は後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20が深扱ぎ側に移動調節される構成である。
【0026】
コンバイン1の通常の左回り刈取作業では、圃場の四隅に刈り残しが生じる。そこで、この左回り刈取作業により圃場中央部の刈取作業が終了すると、次いで、右回り刈取作業をし、畔際の刈り残し穀稈の刈取作業を行なう。この畔際の刈取作業では、刈取搬送部5を畔に衝突しないように上昇して刈取作業をすることになり、刈取穀稈が短くなってしまう。
【0027】
この短い穀稈に対して通常の扱ぎ深さ制御のように、後穀稈センサ33が搬送穀稈を検知してから制御を開始すると、浅扱ぎになりすぎて、扱ぎ残しや脱穀部4のフィードチェン24に引き継がれない穀稈が生じるという不具合が発生する。
【0028】
しかし、前記構成によると、刈取作業の初めに左穀稈センサ31のみが穀稈を検知したときには、コントローラ(図示省略)が畔際の右回り刈取作業と自動判定し、扱ぎ深さ制御を開始するので、刈取穀稈が脱穀部4のフィードチェン24に到達するまでの間に、後部穂先係止搬送装置19及び後部根元搬送装置20が深扱ぎ側に調節され、前記不具合を解消することができる。
【0029】
また、刈取作業の初めに左穀稈センサ31及び中央穀稈センサ36のみが穀稈を検知し、右穀稈センサ32が穀稈を検知していないときには、コントローラ(図示省略)が畔際の右回り刈取作業と自動判定し、扱ぎ深さ制御を開始するように構成しても、同様に前記不具合を解消することができる。
【0030】
また、刈取作業の初めに右穀稈センサ32、中央穀稈センサ36及び左穀稈センサ31が穀稈を検知しているときには、コントローラ(図示省略)が通常の左回り刈取作業と自動判定し、後穀稈センサ33が穀稈を検出すると、扱ぎ深さ制御を開始するように構成してもよい。
【0031】
次に、図6乃至図9に基づきグレンタンク41の穀粒排出装置について説明する。
グレンタンク41の底部に下部ラセン移送装置42を設け、下部ラセン移送装置42で終端側に移送した穀粒を縦ラセン移送装置43で上方に移送し、更に、上部横ラセン移送装置44及びベルトコンベヤ排出装置45を経由して穀粒を機外に排出するように構成している。
【0032】
このベルトコンベヤ排出装置45は、上部横ラセン移送装置44のケース部44aに左右方向の軸回りに枢支されている断面偏平四辺形状で搬送方向に長いコンベヤケース45aと、コンベヤケース45aの基端側の駆動軸45b,先端の従動軸45cに巻き架けているベルトコンベヤ45dと、コンベヤケース45aの先端に取り付けている排出筒体45eにより構成されている。
【0033】
また、上部横ラセン移送装置44の上部横ラセン軸44bの先端部にスプロケット46を取り付け、このスプロケット46からチエン47を介して駆動軸45bのスプロケット48に動力を伝達し、また、上部横ラセン軸44bの回転速度よりも駆動軸45bの回転速度を速くしながら、ベルトコンベヤ45dを駆動している。
【0034】
また、ベルトコンベヤ45dには多数の穀粒移送板45f,…を設けている。図9に示すように、ベルトコンベヤ45dの終端側が上り傾斜での移送状態において、穀粒移送板45f,…にはベルト移送面に直交する方向に対して先端側が下手側にα傾斜する鈍角状の穀粒支持面を形成し、また、穀粒移送板45fが先端の従動軸45c回りを下方に回動する際には、先端ほど上り傾斜になる傾斜角度βを形成し穀粒を放出しながら回動するように構成している。
【0035】
前記構成によると、ベルトコンベヤ排出装置45のベルトコンベヤ45dと穀粒移送板45f,…で穀粒の落下及び損傷を防止しながら移送し、終端側では穀粒の持ち回りを防止し詰まりを回避しながら迅速に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】刈取搬送部の平面図
【図5】刈取搬送部の正面図
【図6】グレンタンクの側面図
【図7】グレンタンクの平面図
【図8】ベルトコンベヤ排出装置の斜視図
【図9】ベルトコンベヤ排出装置の斜視図、側面図
【符号の説明】
【0037】
4 脱穀部
5 刈取搬送部
14 搬送フレーム
18 左右根元挟持搬送装置
19 後部穂先係止搬送装置
19a 後部穂先係止搬送ベルト
19b 後部穂先搬送ガイド杆
20 後部根元搬送装置
22 バネ
23 リミットスイッチ
24 フィードチェン
26 ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取搬送部(5)には刈取穀稈を左右両側から中央部へ搬送する左右根元挟持搬送装置(18,18)を設け、該左右根元挟持搬送装置(18,18)の合流部に接続するように後部穂先係止搬送装置(19)及び後部根元搬送装置(20)を設けて合流穀稈を後方の脱穀部(4)のフィードチェン(24)に引継搬送する構成とし、前記後部穂先係止搬送装置(19)を後部穂先係止搬送ベルト(19a)と該後部穂先係止搬送ベルト(19a)に対向配置した後部穂先搬送ガイド杆(19b)とで構成し、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の始端側を搬送フレーム(14)に軸支し、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の終端側を前記後部穂先係止搬送ベルト(19a)に接近あるいは離間可能な構成とし、該後部穂先搬送ガイド杆(19b)の終端側をバネ(22)により後部穂先係止搬送ベルト(19a)に接近する側に押圧付勢したことを特徴とするコンバインの刈取搬送装置。
【請求項2】
穀稈穂先部が所定量より多くなり前記後部穂先搬送ガイド杆(19b)が前記バネ(22)による押圧付勢に抗して前記後部穂先係止搬送ベルト(19a)から離間すると、リミットスイッチ(23)がONしブザー(26)が作動する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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