説明

コンバインの刈取装置

【課題】刈取装置のメンテナンスを短時間で行え、引起装置の上昇回動時の引起爪の破損を防止し、引起装置の下降回動時の入力軸と出力軸の噛み合わせを短時間に行うことができるコンバインの刈取装置を提供する。
【解決手段】第2引起装置(80)の支持アーム(81)の上方部を横軸(60)に取付け、引起伝動筒(30)上部のギヤケース(40)に軸支された上部伝動軸(41)の可動ギヤ(42)と対向する支持アーム(81)側の部位に、離脱伝動軸(90)に軸支した離脱ギヤ(91)を設け、伸縮具(65)の伸長作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に下降回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)が噛み合い、伸縮具(65)の縮短作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に上昇回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)の噛み合いが外れる構成により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引起装置を備えて機体前部で昇降可能に支持されるコンバインの刈取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、走行装置を備えた機台の左右一側に脱穀装置を設け、脱穀装置の横側に穀粒貯留装置を設け、穀粒貯留装置の前側に操縦部を設け、操縦部および脱穀装置の前側に刈取装置を設け、刈取装置の前端部に植立穀稈を分草する分草体を設け、分草体の後側に穀稈を引起す引起装置を設け、引起装置の後側に穀稈を刈り取る刈刃と刈取後の穀稈を後方の合流部まで搬送する搬送装置を設け、刈取装置の後側下部に引起装置と刈刃と搬送装置に駆動力を分配する左右方向の下部伝動ケースを設け、下部伝動ケースから引起伝動軸を内装した引起伝動筒を上方へ延出させ、引起伝動筒の上端部に出力軸を備えた伝動ケースを取り付け、引起ケースの上部に出力軸と同軸に駆動スプロケットを軸支して設け、引起ケースの下部に従動ローラを軸支し、前記駆動スプロケットと従動ローラとの間に多数の引起爪を備えたチェンを巻き掛けて前記引起装置を構成し、該引起装置を前記引起伝動筒と分草体を支持する分草フレームとに固定して設けている。
【0003】
濡れたり、倒れている穀稈の刈取作業にあっては、刈取られた穀稈が搬送装置の終端の合流部に詰まりやすい。合流部は刈取装置の後方に設けられていることから、刈取作業を中断し合流部に詰まった穀稈を取り除き、メンテナンスを行なうには長時間かかるため、刈取作業能率が低下する問題がある。
【0004】
刈取装置内部のメンテナンスを短時間で行なうために、特許文献1には、引起装置を、引起装置の上方に設けられた左右方向の伝動軸を中心として、伝動軸と引起装置の駆動スプロケットとの伝動状態を維持したまま、引起装置を非刈取作業位置まで上昇させる技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、引起伝動筒の上端部に出力軸を備えた伝動ケースを取り付け、引起ケースの上部に入力軸を備えた駆動スプロケットを軸支し、駆動スプロケットに多数の引起爪を備えたチェンを巻き掛けて引起装置を構成し、引起装置を上方に配置した左右方向の軸芯を中心として上下回動自在に支持し、引起装置の非刈取作業位置への上昇回動によって出力軸と入力軸とが分離する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4017233号公報
【特許文献2】特開2009―261349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、引起装置の駆動を停止した状態、即ち伝動軸の回転が停止している状態において、引起装置を上昇回動させると、引起装置の駆動スプロケットと伝動軸とが伝動状態を維持していることによって、伝動軸が停止しているために駆動スプロケットが回転せざるをえない。
そして、この駆動スプロケットが回転させられる方向が、通常の刈取作業における引起爪の移動方向と逆であると、倒伏状態の引起爪が、通常とは逆方向への移動によって、この引起爪を起立案内する起立案内レールに衝突し、ロック状態を起こして破損する恐れがある。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、引起装置を非刈取作業位置から刈取作業位置に下降回動させた場合に、入力軸側の入力伝動爪と出力軸側の出力伝動爪の噛み合わせに時間がかかる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、刈取装置のメンテナンスを短時間で行え、引起装置の上昇回動時の引起爪の破損を防止し、引起装置の下降回動時の入力軸と出力軸の噛み合わせを短時間に行うことができるコンバインの刈取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、刈取懸架台(2)に支持した刈取回動支軸(3)から前側下方に延出する後フレーム(10)を設け、該後フレーム(10)に中央部を取付け左右側に延出する下部伝動ケース(15)を設け、該下部伝動ケース(15)に下方部を取付け前側上方に延出する引起伝動筒(30)上端部の支柱部材(32)と前記後フレーム(10)の後側上部に後端部を取付け前側上方に延出する上部フレーム(50)の前側部とにより伝動機構を有しない横軸(60)を軸支し、該横軸(60)は、左右側部に上方に延出するリンク部(61)を有し、前記引起伝動筒(30)に下部を取付け後側上方に延出する左側連結パイプ(63)を設け、該左側連結パイプ(63)の上方部と前記上部フレーム(50)の中央部に設けられた支持片(51)とは、後側連結ピン(64)により連結し、左右一対の伸縮具(65)を前記リンク部(61)の自由端側に軸支した前側連結ピン(62)と該後側連結ピン(64)との間に装架し、
第2引起装置(80)の支持アーム(81)の上方部を前記横軸(60)に取付け、前記引起伝動筒(30)上部のギヤケース(40)に軸支された上部伝動軸(41)の可動ギヤ(42)と対向する支持アーム(81)側の部位に、離脱伝動軸(90)に軸支した離脱ギヤ(91)を設け、
前記伸縮具(65)の伸長作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に下降回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)が噛み合い、伸縮具(65)の縮短作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に上昇回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)の噛み合いが外れる構成としたことを特徴とするコンバインの刈取装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記後フレーム(10)に後端部を取付け前側上方に延出する中央連結パイプ(67)の前側部によって、前記上部フレーム(50)の右側で横軸(60)を軸支する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、刈幅方向に複数設けた引起装置のうち、左右両端側の第1引起装置(70)を除く第2引起装置(80)の支持アーム(81)の一体とされた上方部を前記横軸(60)に取付けたことを特徴とする請求項1または2記載のコンバインの刈取装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記上部フレーム(50)に、前側連結ピン(62)に接触する接触センサアーム(53)を有する接触センサ(52)を設けていることを特徴とする請求項3記載のコンバインの刈取装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記伸縮具(65)が油圧シリンダであることを特徴とする請求項4記載のコンバインの刈取装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、左右一対の伸縮具(65)をリンク部(61)の自由端側に軸支した前側連結ピン(62)と後側連結ピン(64)との間に装架していることから、第2引起装置(80)の上昇および下降回動がスムーズに行なえ、上昇および下降回動時の刈取装置の振動、騒音を低減することができる。
【0016】
第2引起装置(80)の支持アーム(81)の上方部を横軸(60)に取付け、引起伝動筒(30)上部のギヤケース(40)に軸支された上部伝動軸(41)の可動ギヤ(42)と対向する支持アーム(81)側の部位に、離脱伝動軸(90)に軸支した離脱ギヤ(91)を設けていることから、引起装置の下降回動時の可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)との噛み合いが短時間で行うことができる。
【0017】
伸縮具(65)の縮短作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に上昇回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)の噛み合いが外れる構成としたことから、合流部に詰まった穀稈を容易に取り除け、刈取装置のメンテナンスを短時間で行なうことができ、引起装置の上昇回動時の引起爪の破損を防止することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、後フレーム(10)に後端部を取付け前側上方に延出する中央連結パイプ(67)の前側部によって、前記上部フレーム(50)の右側で横軸(60)を軸支する構成としたことから、刈取装置の強度アップが図られ、第2引起装置(80)の上昇および下降回動時の刈取装置の振動、騒音をさらに低減することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によると、請求項1および2記載の発明の効果に加えて、刈幅方向に複数設けた引起装置のうち、左右両端側の第1引起装置(70)を除く第2引起装置(80)の支持アーム(81)の一体とされた上方部を前記横軸(60)に取付けたことから、上昇および下降回動される第2引起装置(80)の条数が減り、伸縮具(65)を小型化でき、刈取装置の軽量化をさらに図ることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によると、請求項1〜3記載の発明の効果に加えて、上部フレーム(50)に、前側連結ピン(62)に接触する接触センサアーム(53)を有する接触センサ(52)を設けていることから、第2引起装置(80)の上昇および下降回動角度範囲を制御でき、第2引起装置(80)の操作部あるいは穂先カバー(66)への衝突を防止することができる。
【0021】
請求項5記載の発明によると、請求項1〜4記載の発明の効果に加えて、伸縮具(65)が油圧シリンダであることから、第2引起装置(80)の上昇および下降回動を短時間に、安定して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】刈取装置の側面図である。
【図2】刈取装置の平面図である。
【図3】刈取装置の透視平面図である。
【図4】刈取装置の拡大側面図である。
【図5】刈取作業位置の接触センサの説明図である。
【図6】非刈取作業位置の接触センサの説明図である。
【図7】接触センサアームの動作説明図である。
【図8】第2実施形態の刈取装置の側面図である。
【図9】第2実施形態の刈取装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
4条刈のコンバインを例示し本発明の実施形態について説明する。以下、操縦部に着座する操縦者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0024】
<第1実施形態>
図1〜図7は、本発明の第1実施形態を示している。図1に示すとおり、機台の前側に取付けられた刈取懸架台2に支持した刈取回動支軸3の中心部に後フレーム10の後端部が取付けられている。後フレーム10は、前側下方に延出し、刈取回動支軸3を中心とし上下方に回動する。また、後フレーム10の内部には、後部と前部とで軸支された伝動軸11が設けられている。
【0025】
後フレーム10の前側端部に下部伝動ケース15の中央部が取付けられている。下部伝動ケース15は、左右側に延出し、下部伝動ケース15の前側面部に3本の分草パイプ20の後側端部が取付けられている。また、下部伝動ケース15の内部には、右部と左部とで軸支された伝動軸16が設けられている。
【0026】
分草パイプ20の前側端部には、それぞれ支持フレーム21の下方部が取付けられている。支持フレーム21の上方部には、分草体25の後側面部に設けられたフック部26と係合する係合ピン22が設けられている。
【0027】
図2,3に示すとおり、分草体25は、左端側の第1引起装置70または第2引起装置80の左側下方部と、中央部の2条の第2引起装置80の間の下方部と、右端側の第1引起装置70の右側下方部にそれぞれ取付けられている。
【0028】
下部伝動ケース15の左側端部に引起伝動筒30の下方部が取付けられている。引起伝動筒30は、前側上方に延出し、上部には右側に延出するギヤケース40が設けられ、さらにギヤケース40を超えた上端部には支柱部材32が設けられている。また、引起伝動筒30の内部には、下方部と上方部とで軸支された引起伝動軸33が設けられ、ギヤケース40の内部には、左側部と右側部で軸支された上部伝動軸41が設けられている。引起伝動軸33と上部伝動軸41とは、後述する変速部34を介し連結されている。
【0029】
引起伝動筒30の左側上部には変速ケース31が取付けられている。変速ケース31の内部には、引起伝動軸33の上端部にベベルギヤを介して左側に延出する変速出力軸35が軸支され、変速出力軸35の中央部には直径が異なる2つの固定ギヤ36が並列し設けられている。また、変速ケース31の内部には、上部伝動軸41の左側部が延出し、上部伝動軸41の左側部には直径が異なる2つの可動ギヤ42が並列し設けられている。
【0030】
操縦部の左側に設けられたグリップ43を前後側に回倒することによって、グリップ43の下部と上部伝動軸41の左側部とを連結するレバー44が左右側に移動する。レバー44が左右側に移動することよって、上部伝動軸41が左右側に移動し、変速出力軸35のいずれか一方の固定ギヤ36と上部伝動軸41の左側部に設けられたいずれか一方の可動ギヤ42とが噛み合い変速部34の引起伝動軸33と上部伝動軸41の回転速度を変速する。
なお、第1実施形態にあっては、変速部34を形成する固定ギヤ36、可動ギヤ42の軸芯が、引起伝動軸33の軸芯に対し直角に設けられているが、固定ギヤ36、可動ギヤ42の軸芯を引起伝動軸33の軸芯に対し平行に設けても良い。
【0031】
後フレーム10の後側上部に上部フレーム50の後端部が取付けられている。上部フレーム50は、前側上方に延出し、支柱部材32の上方端部に対向する。
【0032】
上部フレーム50の上方端部と支柱部材32の上方端部とにより左右側部が軸支された伝動機能を有しない横軸60の左右側部には、上方に延出するそれぞれリンク部61が設けられておりリンク部61は横軸60と一体に回動する。また、左側リンク部61と右側リンク部61とは前側連結ピン62により連結されている。
【0033】
引起伝動筒30に左側連結パイプ63の下部が取付けられている。左側連結パイプ63は、後側上方に延出し、左側連結パイプ63の上方端部と上部フレーム50の中央部に設けられた支持片51とは後側連結ピン64により連結されている。
【0034】
前側連結ピン62と後側連結ピン64との間には、上部フレーム50の左側近傍に取付けられる油圧シリンダ65と、左側連結パイプ63の右側近傍に取付けられる油圧シリンダ65のロットの前側端部と、ピストンの後側端部とがそれぞれ装架されている。
なお、油圧シリンダ65は、油圧回路(図示省略)により制御されロッドが伸長/縮短する。
【0035】
左右一対の油圧シリンダ65は、操縦部に着座する操縦者に合流部からの砂利、藁等の粉塵の飛来を防止する合流部を覆う穂先カバー66の左右側にそれぞれ配置されている。
なお、第1実施形態にあっては、左右一対の2本の油圧シリンダ65を取付けているが、上部フレーム50の左側近傍あるいは左側連結パイプ63の右側近傍にのみ1本の油圧シリンダ65を取付けても良く、また、油圧シリンダ65に替えて、ウオームギヤとモータとの組合せ機構、ウオームギヤと手動クランクアームと組合せ機構を用いることもできる。
さらに、穂先カバー66の前側部は、引起装置との衝突を防止するため、傾斜が設けられるのが好適であり、さらに、穂先カバー66の前側部あるいは右側部に接触センサ52を設けることもできる。
【0036】
後フレーム10に中央連結パイプ67の後端部が取付けられている。中央連結パイプ67は前側上方に延出し、フレームの強度を高め振動、騒音を抑制するために、中央連結パイプ67の上方端部は上部フレーム50の上方端部の右側で横軸60をさらに軸支する。
なお、フレームの強度を高め振動、騒音を抑制するために、分草パイプ20に連結パイプの下方端部を取付け、後側上方に延出させ、連結パイプの上方端部を引起伝動筒30の中心部に取付けるのが好適である。
【0037】
合流部に詰まった穀稈を取り除き、刈取装置1のメンテナンス作業をする場合、左側から3条の第2引起装置80あるいは中央部の2条の第2引起装置80を非刈取作業位置に上昇回動させ作業を行なうことが効果的である。
【0038】
図2には、刈幅方向に複数設けた引起装置のうち、右端側の第1引起装置70を除く3条の第2引起装置80の上方部が横軸60に取付けられている形態を示し、図3には、右端側と左端側の第1引起装置70を除く2条の第2引起装置80の上方部が横軸60に取付けられている形態を示している。
【0039】
図2の右端側の第1引起装置70、図3の右端側と左端側の第1引起装置70は、非刈取作業位置、刈取作業位置に上昇回動、下降回動しない引起装置であり、第1引起装置70の支持アーム71の上方部はギヤケース40の前側面部に取付けられている。
【0040】
第1引起装置70の支持アーム71の下方部は引起ケース72の後側面部の上部に、上方部はギヤケース40の前側面部に取付けられている。第1引起装置70の支持アーム71の内部には、入力ギヤ73が設けられた入力軸74が軸支され、入力ギヤ73は、ギヤケース40の内部に取付けられた上部伝動軸41の可動ギヤ42と噛み合っている。
【0041】
入力軸74の下方端部は、ベベルギヤを介し、引起ケース72に駆動スポロケット76を軸支する駆動スポロケットキヤに噛み合っている。引起ケース72には、駆動スポロケット76と対をなし、多数の引起爪が軸着されたチェン(図示省略)が巻き掛けされている従動ローラが引起ケース72の下方に軸支されている。
【0042】
刈取懸架台2の動力は、後フレーム10の伝動軸11、下部伝動ケース15の伝動軸115、引起伝動軸33、上部伝動軸41を介し駆動スポロケット76に伝動され、第1引起装置70の多数の引起爪を回動する。
【0043】
図2の右端側の第1引起装置70を除く3条の第2引起装置80、図3の右端側と左端側の第1引起装置70を除く2条の第2引起装置80は、第2引起装置80の支持アーム81の上方部は連結され一体になっており、横軸60を中心とし非刈取作業位置、刈取作業位置に上昇回動、下降回動する引起装置である。
【0044】
第2引起装置80の支持アーム81の下方部は引起ケース82の後側面部の上部に取付けられ、支持アーム81の上方部は連結され一体構造に形成され、一体となった支持アーム81の上方部は、横軸60に取付けられ、横軸60と一体となり回動する。
【0045】
第2引起装置80の支持アーム81の内部には、それぞれ入力ギヤ83が設けられた入力軸84が軸支され、入力ギヤ83は、後述する離脱伝動軸90の下方に平行に軸支された中間伝動軸92の左右端部のベベルギヤと噛み合っている。
【0046】
中間伝動軸92の中央部に設けられたベベルギヤは、後述する離脱伝動軸90の右端部に設けられたベベルギヤと噛み合っている。
【0047】
支持アーム81の上端部には、離脱ギヤ91が設けられた離脱伝動軸90が軸支されており、第2引起装置80が刈取作業位置にある場合、離脱ギヤ91はギヤケース40の内部に取付けられた上部伝動軸41の可動ギヤ42と噛み合っている。
なお、離脱伝動軸90、離脱ギヤ91、中間伝動軸92は一体となった支持アーム81の上方部に設けられている。
【0048】
入力軸84の下方端部は、ベベルギヤを介し、引起ケース82に駆動スポロケット86を軸支する駆動スポロケットキヤに噛み合っている。引起ケース82には、駆動スポロケット86と対をなし、多数の引起爪が軸着されたチェン(図示省略)が巻き掛けされている従動ローラが引起ケース82の下方に軸支されている。
【0049】
第2引起装置80が刈取作業位置にある場合、刈取懸架台2の動力は、後フレーム10の伝動軸11、下部伝動ケース15の伝動軸15、引起伝動軸33、上部伝動軸41、離脱伝動軸90、中間伝動軸92を介し駆動スポロケット86に伝動され、第2引起装置80の多数の引起爪を回動する。
【0050】
一方、図4に示すとおり、油圧シリンダ65のロッドを縮短作動させることによって、横軸60のリンク部61が時計方向に回動し、横軸60を中心に横軸60と一体となり第2引起装置80が非刈取作業位置に上昇回動する。そして、第2引起装置80が非刈取作業位置に上昇回動した場合、離脱ギヤ91と上部伝動軸41の可動ギヤ42との噛み合いは外れ、刈取懸架台2の動力の引起ケース82の駆動スポロケット86への伝動は中断される。
よって、該第2引起装置80を非刈取作業位置に上昇回動した場合、引起爪が逆方向に移動することなく、引起爪が破損することはない。
【0051】
第2引起装置80のメンテナンス終了時には、油圧シリンダ65のロッドを伸長作動させることによって、横軸60のリンク部61が反時計方向に回動し、横軸60を中心に第2引起装置80が刈取作業位置に下降回動し、再び、該第2引起装置80の離脱ギヤ91が可動ギヤ42に噛み合い、刈取懸架台2の動力により第2引起装置80の多数の引起爪が回動する。
なお、該引起装置中間軸80が非刈取作業位置に上昇回動された場合、支持フレーム21に取付けられたロックアーム23により引起爪が固定され、離脱ギヤ91は回転しない。
よって、離脱ギヤ91の状態は上昇回動直前の状態に保持され該第2引起装置80を刈取作業位置に下降回動させた場合に、離脱ギヤ91と可動ギヤ42とのギヤズレが発生することはない。
【0052】
図5〜図7に示すように、上部フレーム50の左側面には接触センサアーム53を有する接触センサ52が取付けられている。操縦部あるいは穂先カバー66に第2引起装置80への衝突を防止するため、前側連結ピン62の下方面に接触センサアーム53の前側部を接触させ、横軸60を中心として回動する前側連結ピン62の回動角度を検出することにより、横軸60の中心に回動する第2引起装置80の回動角度を制御する。
なお、第1実施形態にあっては、操縦部、穂先カバー66への第2引起装置80の衝突を防止するため上部フレーム50に接触センサ52を取付けているが、操縦部、穂先カバー66の前側面、左側面に接触センサ52を取付けてもよい。
【0053】
<第2実施形態>
図8,9は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態は、第1実施形態と異なり、横軸60を中央連結パイプ67の上方端部と支柱部材32の上方端部とにより軸支する形態である。
【0054】
以下、第1実施形態と重複する説明は省略し、第1実施形態と異なる第2実施形態の構成について詳述する。
図8,9に示すとおり、機台の前側に取付けられた刈取懸架台2に支持された刈取回動支軸3の中心部に後フレーム10の後端部が取付けられている。後フレーム10は、前側下方に延出し、刈取回動支軸3を中心とし上下方に回動する。
【0055】
後フレーム10の前側端部に下部伝動ケース15の中央部が取付けられている。下部伝動ケース15は、左右側に延出する。
【0056】
下部伝動ケース15の左側端部に引起伝動筒30の下方部が取付けられている。引起伝動筒30は、前側上方に延出し、上部には右側に延出するギヤケース40が設けられ、さらにギヤケース40を超えた上端部には支柱部材32が設けられている。
【0057】
後フレーム10に中央連結パイプ67の下端部が取付けられている。中央連結パイプ67は前側上方に延出し、支柱部材32の上方端部に対向する。
【0058】
中央連結パイプ67の上方端部と支柱部材32の上方端部とにより左右側部が軸支された横軸60の左右側部には、上方に延出するそれぞれリンク部61が設けられており、リンク部61は横軸60と一体に回動する。また、左側リンク部61と右側リンク部61とは前側連結ピン62により連結されている。
【0059】
後フレーム10の後側上部に上部フレーム50の後端部が取付けられ、上部フレーム50の前側端部には支持片51が設けられている。
【0060】
引起伝動筒30に左側連結パイプ63の下部が取付けられている。左側連結パイプ63は、後側上方に延出し、左側連結パイプ63の上方端部と上部フレーム50の前側端部に設けられた支持片51とは後側連結ピン64により連結される。
【0061】
前側連結ピン62と後側連結ピン64との間には、中央連結パイプ67の左側近傍に取付けられる油圧シリンダ65と、左側連結パイプ63の右側近傍に取付けられる油圧シリンダ65のロットの前側端部と、ピストンの後側端部とがそれぞれ装架されている。
なお、油圧シリンダ65は、油圧回路(図示省略)により制御されロッドが伸長/縮短する。
【0062】
左右一対の油圧シリンダ65は、操縦部に着座する操縦者に合流部からの砂利、藁等の粉塵の飛来を防止する合流部を覆う穂先カバー66の左右側にそれぞれ配置されている。
【0063】
第2実施形態は、上述した構成をとることにより、刈取装置の一層の軽量化が図られ、部品点数の削減にも繋がる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、2条〜7条刈りコンバインの刈取装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 刈取装置
2 刈取懸架台
3 刈取回動支軸
10 後フレーム
15 下部伝動ケース
30 引起伝動筒
32 支柱部材
40 ギヤケース
41 上部伝動軸
42 可動ギヤ
50 上部フレーム
51 支持片
52 接触センサ
53 接触センサアーム
60 横軸
61 リンク部
62 前側連結ピン
63 左側連結パイプ
64 後側連結ピン
65 油圧シリンダ
67 中央連結パイプ
70 引起装置
80 引起装置
81 支持アーム
90 離脱伝動軸
91 離脱ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取懸架台(2)に支持した刈取回動支軸(3)から前側下方に延出する後フレーム(10)を設け、該後フレーム(10)に中央部を取付け左右側に延出する下部伝動ケース(15)を設け、該下部伝動ケース(15)に下方部を取付け前側上方に延出する引起伝動筒(30)上端部の支柱部材(32)と前記後フレーム(10)の後側上部に後端部を取付け前側上方に延出する上部フレーム(50)の前側部とにより伝動機構を有しない横軸(60)を軸支し、該横軸(60)は、左右側部に上方に延出するリンク部(61)を有し、前記引起伝動筒(30)に下部を取付け後側上方に延出する左側連結パイプ(63)を設け、該左側連結パイプ(63)の上方部と前記上部フレーム(50)の中央部に設けられた支持片(51)とは、後側連結ピン(64)により連結し、左右一対の伸縮具(65)を前記リンク部(61)の自由端側に軸支した前側連結ピン(62)と該後側連結ピン(64)との間に装架し、
第2引起装置(80)の支持アーム(81)の上方部を前記横軸(60)に取付け、前記引起伝動筒(30)上部のギヤケース(40)に軸支された上部伝動軸(41)の可動ギヤ(42)と対向する支持アーム(81)側の部位に、離脱伝動軸(90)に軸支した離脱ギヤ(91)を設け、
前記伸縮具(65)の伸長作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に下降回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)が噛み合い、伸縮具(65)の縮短作動によって、第2引起装置(80)が横軸(60)を中心に上昇回動して可動ギヤ(42)と離脱ギヤ(91)の噛み合いが外れる構成としたことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記後フレーム(10)に後端部を取付け前側上方に延出する中央連結パイプ(67)の前側部によって、前記上部フレーム(50)の右側で横軸(60)を軸支する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
刈幅方向に複数設けた引起装置のうち、左右両端側の第1引起装置(70)を除く第2引起装置(80)の支持アーム(81)の一体とされた上方部を前記横軸(60)に取付けたことを特徴とする請求項1または2記載のコンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記上部フレーム(50)に、前側連結ピン(62)に接触する接触センサアーム(53)を有する接触センサ(52)を設けていることを特徴とする請求項3記載のコンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記伸縮具(65)が油圧シリンダであることを特徴とする請求項4記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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