説明

コンバインの引起し構造

【課題】刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備したコンバインの引起し構造において、引起し装置の並列台数の異なった刈取り部を低コストで製作できるようにする。
【解決手段】引起し装置13の上部に横長の支持フレーム38を横架配備し、この支持フレーム38の横方向複数箇所に引起し駆動ケース40を支持するとともに、各引起し駆動ケース40に各引起し装置13を連動連結し、支持フレーム38に並列支持された引起し駆動ケース40をカウンタ軸41で連動連結して全引起し装置13を同調駆動するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備したコンバインの引起し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
3台以上の引起し装置を並列配備した刈取り部においては、例えば、特許文献1に示されるように、引起し装置の上方にカウンタ軸(特許文献1の図7および図9の39)を挿通した筒状のカウンタケース(特許文献1の図7および図9の30a,30b)を横架するとともに、このカウンタケースに横方向所定間隔をもって形成した取付け座(特許文献1の図14の52)に、複数の引起し駆動ケース(特許文献1の図7および図9の31)を連結し、カウンタ軸から取り出した動力を引起し駆動ケースを介して各引起し装置に伝達する構造が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−148926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造においては、引起し条数の異なった刈取り部を構成する場合、機種ごとに異なった仕様のカウンタケースを製作する必要があり、製造コストが高くつくものとなっている。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、引起し装置の並列台数の異なった刈取り部を低コストで製作できるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備したコンバインの引起し構造において、
前記引起し装置の上部に横長の支持フレームを横架配備し、この支持フレームの横方向複数箇所に引起し駆動ケースを支持するとともに、各引起し駆動ケースに各引起し装置を連動連結し、支持フレームに並列支持された引起し駆動ケースをカウンタ軸で連動連結して全引起し装置を同調駆動するよう構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、所定の長さに設定した支持フレームに、同一仕様に構成した所定台数の引起し駆動ケースおよび引起し装置を並列連結することで、所望の引起し条数の刈取り部を構成することができる。そして、異なる長さの支持フレームに、前述の引起し駆動ケースおよび引起し装置を前述とは異なる個数だけ並列連結することにより、引起し装置の並列台数の異なった刈取り部を得ることができる。
【0008】
従って、第1の発明によると、製造コストが比較的高いカウンタケースを機種ごとに異なった仕様に製作するのではなく、製造コストが比較的低い支持フレームを異なる長さで用意することにより、引起し装置の並列台数の異なった刈取り部を低コストで製作できる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記支持フレームを、上側部と後側部とを備えて、前記支持フレームの上側部および後
側部で前記引起し駆動ケースを支持してあるものである。
【0010】
上記構成によると、支持フレームを板金構造、あるいは、アルミ押し出し成型材、等で構成することで、横方向に長いものでありながら曲げ強度の高いものにすることができる。このように剛性の高い支持フレームに異なった方向から強固に引起し駆動ケースを連結支持することができ、軽量でありながら頑強な引起し構造を得ることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記支持フレームに支持ブラケットを連結し、この支持ブラケットに前記引起し駆動ケースを前記カウンタ軸の軸心周りに上下揺動可能に支持してあるものである。
【0012】
上記構成によると、引起し駆動ケースに連結した引起し装置を振り上げ揺動することができ、引起し装置後方の穀稈搬送径路での詰まり除去作業や、メンテナンス作業を前方を開放した広い空間から容易に行うことができる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、
上下揺動可能に支持された複数の前記引起し駆動ケースをステーで連結してあるものである。
【0014】
上記構成によると、並列配備された複数台の引起し装置を一緒に振り上げ開放して横幅の広いメンテナンス作業空間を得ることができ、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取り部の平面図
【図3】引起し装置を開放した刈取り部の側面図
【図4】引起し装置駆動構造の全体を示す背面図
【図5】引起し装置駆動構造の縦断側面図
【図6】引き起こし駆動ケースとカウンタ軸との連動構造を示す正面図
【図7】引起し変速装置の縦断正面図
【図8】引起し駆動系の概略を示す斜視図
【図9】引起し装置駆動構造の別実施例を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、自脱型コンバインの前部の側面図が示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に6条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、アンローダ付きの穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0017】
刈取り部3には、伝動ケースを兼ねた筒状の刈取り部フレーム10が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム10の後端基部が、走行機体2の前端部に立設された支持台11に横向きの支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されるとともに、油圧シリンダ12で上下に駆動揺動されるようになっている。刈取り部フレーム10には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す6台の引起し装置13、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置14、引起し穀稈を各条ごとに後方に軽く掻き込む補助搬送ベルト15、刈取り穀稈の株元を各条ごとに後方に掻き込み搬送する回転パッカ16、刈取り穀稈を2条づつ刈幅内の中間部位に搬送して合流する3組の合流搬送装置17,18,19、および、合流された穀稈を脱穀装置5の横外側に備えられたフィードチェーン7の始端部にまで搬送する供給搬送装置20、等が備えられている。
【0018】
図2に示すように、機体左側の前記合流搬送装置17は、左2条の刈取り穀稈の株元を挟持搬送する株元搬送機構17aと穂先を係止搬送する穂先搬送機構17bとで構成され、中央部の前記合流搬送装置18は、中2条用の株元搬送機構18aと穂先搬送機構18bとで構成され、機体右側の前記合流搬送装置19は、右2条用の株元搬送機構19aと穂先搬送機構19bとから構成されている。そして、各株元搬送機構17a、18a,19aの前端に前記補助搬送ベルト15および回転パッカ16がそれぞれ装備されるとともに、2条単位で隣接する回転パッカ16同士が噛み合い連動されている。
【0019】
前記供給搬送装置20は、右2条の穂先搬送機構19bをフィードチェーン7の前方まで延長してなる穂先係止搬送機構21と、3組の前記合流搬送装置17,18,19による穀稈合流箇所から後方に延出された株元挟持搬送機構22と、フィードチェーン7の前方に配備された横回し型の中継搬送機構23とで構成されており、合流搬送装置17,18,19で合流された立姿勢の穀稈は供給搬送装置20の始端部に受取られ、後方上方に搬送されながら穀稈が横倒れ姿勢に変更されてフィードチェーン7の始端部に受け渡されるようになっている。
【0020】
前記株元挟持搬送機構22は、前部支点を中心に上下揺動して搬送終端位置を変更することで、フィードチェーン7への穀稈受け渡し位置を稈長方向に変更して脱穀装置6への穀稈挿入長さを変更調節する機能、いわゆる扱き深さ調節機能が備えられている。
【0021】
刈取り部フレーム10は、内部に伝動軸を挿通した筒型の伝動ケースとしての機能が備えられており、前記支点Pに伝達された走行速度と同調した動力がこの刈取り部フレーム10を介して刈取り部3の前部に伝達され、前記引起し装置13、刈取り装置14、補助搬送ベルト15、回転パッカ16、合流搬送装置17,18,19、および、供給搬送装置20の株元挟持搬送機構22が走行速度と同調した速度で駆動されるようになっている。供給搬送装置20の株元挟持搬送機構22は、刈取り部フレーム10の途中箇所から分岐して取り出された動力で駆動され、供給搬送装置20の穂先係止搬送機構21と中継搬送機構23は、支点Pで分岐された動力で駆動されるようになっている。
【0022】
図4に示すように、引起し装置13は、引起しケース31の上部に配備された駆動スプロケット32およびテンションプレート33と、ケース下部に配備された案内ローラ34とに亘って引起しチェーン35が巻回張設されるとともに、この引起しチェーン35に多数本の引起し爪36が起伏自在に所定ピッチで枢着されて構成されたものであり、前記駆動スプロケット32が以下のように駆動される。
【0023】
図3に示すように、前記刈取り部フレーム10の基端ボス部から山形に屈曲されたパイプ製の支持アーム37が前方に向けて延出され、この支持アーム37の前端に横長の支持フレーム38が連結されている。支持フレーム38は板材を屈曲して上側部38a、後側部38b、および、コーナー部38cを備えた曲げ強度の高い断面形状に形成されており、そのコーナー部38cに支持アーム37の前端が連結されている。
【0024】
図4,図5,図6に示すように、支持フレーム38の横方向6箇所には、上側部38aと後側部38bを介して板金構造の支持ブラケット39がボルト連結され、各支持ブラケット39にアルミダイキャスト成型された縦長の引起し駆動ケース40の上端部が、横向き支点X周りに上下揺動可能に嵌合支持されている。引起し駆動ケース40は、左右対称形の左右二つ割り構造に構成されており、その上端部に前記横向き支点Xと同心に六角軸からなるカウンタ軸41が貫通支持されている。この例の場合、中央側の4台の引起し駆動ケース40は、臨設する2台づつに共通のカウンタ軸41が挿通されて互いに接続スリーブ42で突き合わせ連結されるとともに、左右両端の引起し駆動ケース40のカウンタ軸41に接続スリーブ42を介して突き合わせ連結され、カウンタ軸41が一本軸として回動するよう構成されている。
【0025】
各引起し駆動ケース40にはケース長手方向に沿って縦向きに伝動軸43が支承され、この伝動軸43がベベルギヤG1,G2を介してカウンタ軸41に連動連結されるとともに、引起し駆動ケース40の下部に前後方向に向けて支承された引起し駆動軸44と前記伝動軸43とがベベルギヤG3,G4を介して連動連結されている。各引起し駆動ケース40の下部に引起しケース31の上部が連結されるとともに、前記引起し駆動軸44が引起しケース31の前方に貫通突出され、その突出部に前記駆動スプロケット32が連結されている。この場合、図8に示すように、カウンタ軸41が前方上方に向かう方向Aに回動されることで各引起し装置13の引起しチェー35が所定の引起し方向に回動されるように各引起し駆動軸44がカウンタ軸41にベベルギヤ連動されているのである。
【0026】
刈取り部フレーム10の前端に横長筒状の駆動ケース46が直交して連結され、この駆動ケース46の左右両端近くからパイプ製の支柱47,48が立設されており、機体左側の支柱47には引起し駆動用の縦向き伝動軸49が挿通されている。駆動ケース46の内部には刈取り部フレーム10を介して伝達された動力で回転駆動される横向き伝動軸50が挿通配備されており、この横向き伝動軸50の左端部と前記縦向き伝動軸49とがベベルギヤ連動されている。
【0027】
機体左側の支柱47の上端部には変速ケース51が連結されて、左端の引起し駆動ケース40に連結されている。変速ケース51には前記縦向き伝動軸と平行に出力軸52が装備され、この出力軸52とカウンタ軸41とがベベルギヤG5,G6を介して連動連結されるとともに、縦向き伝動軸49と出力軸52との間に引起し変速機構53が装備されている。
【0028】
図7に示すように、引起し変速機構53は、縦向き伝動軸49に連結固定された小径駆動ギヤG7および大径駆動ギヤG8と、大径従動ギヤG9と小径従動ギヤG10を一体装備して出力軸52にスプライン装着されたシフトギヤSGとから構成されており、シフトギヤSGを上方にシフトして大径従動ギヤG9を小径駆動ギヤG7に咬合することで出力軸52を低速駆動し、シフトギヤSGを下方にシフトして小径従動ギヤG10を大径駆動ギヤG8に咬合することで出力軸52を高速駆動するよう構成されている。
【0029】
前記シフトギヤSGに係合されたシフトフォーク54を備えた変速操作軸55が変速ケース51に挿通支持されており、この変速操作軸55が押し引き操作されるようになっている。
【0030】
前記シフトギヤSGは、デテント機構60によって、上方の定速位置「L]、下方の高速位置「H」、および、その中間の中立位置「N」に保持可能となっている。デテント機構60は、出力軸52に組み込まれてバネ61によって径方向外方に突出付勢されたデテントボール62をシフトギヤSGの内周に軸心方向3箇所に形成した環状溝63のいずれかに選択係合させることでシフトギヤSGを弾性的に位置保持するよう構成されており、引起し変速機構53を中立に保持することで、出力軸52にギヤ連動されたカウンタ軸41を自由回動可能な状態に保持することができる。
【0031】
引起し装置13の背部における穀稈搬送経路での詰まり除去作業や搬送手段の点検整備作業を容易にするために、並列配備された6台の引起し装置13の内、両端の引起し装置13(L),13(R)を除く内側4台の引起し装置13を振り上げ揺動して、刈取り部前方を開放することができるよう構成されている。
【0032】
図3に示すように、内側4台の引起し装置13における引起しケース31の下部は、前記駆動ケース46から前方に延出された分草フレーム64の前部ブラケット65に分離可能に連結されており、前部ブラケット65と引起しケース31との連結を解除するとともに、分草フレーム64の前端に差込み連結された分草具66を取り外すことで、この引起し装置13を引起し駆動ケース40と共にカウンタ軸軸心と同心の横向き支点X周りに略90°上方に振り上げ揺動することが可能となっている。引起し駆動ケース40とその背部に固定配備されたステー67に亘ってガススプリング68が架設されており、振り上げた引起し装置13は、ガススプリング68の伸長付勢力によってその振り上げ姿勢に保持されるようになっている。
【0033】
なお、図5に示すように、前記支持フレーム38の前端にはカウンタ軸41を前方から覆う化粧カバー69が支点y周りに上下揺動可能に装着されており、引起し装置13を振り上げ揺動する際には、この化粧カバー69が引起し装置13の上部前面によって押し上げ揺動されることになる。支持フレーム38を連結支持する前記支持アーム37は、供給搬送装置20の上方を覆う防塵カバー70の支持部材を兼ねている。
【0034】
引起し装置13を振り上げ揺動するに先立って、引起し変速機構53を中立に切換え保持して、カウンタ軸41を自由回転可能な状態にしておく。これによって、引起し駆動ケース40の振り上げ揺動に伴って回転自由なカウンタ軸41が正規の引起し駆動方向Aへ引起し駆動ケース40の振り上げ角度と同角度だけ回動される。引起し装置13が振り上げ揺動されてカウンタ軸41が引起し駆動方向Aに回動されることで、振り上げられない引起し装置13が正規駆動方向に少し作動することになる。
【0035】
〔他の実施例〕
(1)図9に示すように、中央側の4台の引起し装置13における引起し駆動ケース40を隣接する2台ずつステー71で連結して2台づつ引起し装置13を振り上げ揺動する形態にし、ステー71を取外して引起し装置13を1台づつ振り上げ揺動可能な形態に戻して実施することもできる。中央側の4台の引起し装置13における引起し駆動ケース40の上部あるいは引起し装置13自体を図示されていないステーで連結して、中央側の4台の引起し装置13を同時に振り上げ揺動できるようにすることもできる。
【0036】
(2)中央4台のみならず左右両端の引起し装置13も独自に振り上げ揺動可能に構成して実施することも可能である。
【0037】
(3)6台の引起し装置13における引起し駆動ケース40あるいは引起し装置13自体を図示されないステーで連結して、全部の引起し装置13を同時に振り上げ揺動できるようにすることもできる。
【0038】
(4)前記支持フレーム38をアルミの押し出し成形材で長い尺に構成し、並列配備する引起し装置13の台数に応じた長さに切断して使用するように構成することもできる。
【0039】
(5)引起し装置13を振り上げ揺動させない仕様の刈取り部3においては、前記支持フレーム38に引起し駆動ケース40を直接に連結固定することもできる。
【符号の説明】
【0040】
3 刈取り部
13 引起し装置
38 支持フレーム
40 引起し駆動ケース
41 カウンタ軸
71 ステー
X 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り部の前部に複数の引起し装置を左右に並列配備したコンバインの引起し構造において、
前記引起し装置の上部に横長の支持フレームを横架配備し、この支持フレームの横方向複数箇所に引起し駆動ケースを支持するとともに、各引起し駆動ケースに各引起し装置を連動連結し、支持フレームに並列支持された引起し駆動ケースをカウンタ軸で連動連結して全引起し装置を同調駆動するよう構成してあることを特徴とするコンバインの引起し構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−29698(P2012−29698A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249129(P2011−249129)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2011−82706(P2011−82706)の分割
【原出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】