説明

コンバインの排藁処理装置

【課題】メンテナンス性及び操作性に優れたコンバインの排藁処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】脱穀部から搬送されてくる排藁を切断処理するカッター部8と、上記カッター部8上方の排藁導入口9を開閉して排藁を後方へ排出する排藁排出状態とカッター部8へ導入する排藁導入状態とに切換える切換板11と、前記切換板11に一体的に設けられ切換板11を開閉操作する開閉レバー14とを備え、切換板11を排藁導入位置以上に開放可能に構成したコンバインの排藁処理装置において、開閉レバー14と係脱可能且つ運転席4から操作可能な切換アーム23を設け、前記開閉レバー14を切換アーム23との係合解除時に切換板11開方向に単独回動可能に構成し、切換アーム23と開閉レバー14の係合時に切換アーム23によって切換板11の排藁排出位置と排藁導入位置との切換操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの排藁処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀部から搬送されてくる排藁を切断処理するカッター部と、上記カッター部上方の排藁導入口を開閉して排藁を後方へ排出する排藁排出状態とカッター部へ導入する排藁導入状態とに切換える切換板と、前記切換板に一体的に設けられ切換板を開閉操作する開閉レバーとを備え、切換板を排藁導入位置以上に開放可能に構成することにより、カッター部のメンテナンス性を向上させたコンバインの排藁処理装置が公知となっている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−262651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献の排藁処理装置は、カッター部のメンテナンス性が向上する一方で、切換板の切換操作を、カッター部に近接して設けられた開閉レバーのみにより行うため、運転席から切換操作を行うことができないという問題がある。くわえて、開閉レバーと切換板との係合を解除することにより、切換板を排藁導入位置以上に開放するため、切換板を大きく開放させる場合には、オペレータが直接切換板を持って操作をしなければならず、操作性が悪いという欠点もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明のコンバインの排藁処理装置は、脱穀部から搬送されてくる排藁を切断処理するカッター部8と、上記カッター部8上方の排藁導入口9を開閉して排藁を後方へ排出する排藁排出状態とカッター部8へ導入する排藁導入状態とに切換える切換板11と、前記切換板11に一体的に設けられ切換板11を開閉操作する開閉レバー14とを備え、切換板11を排藁導入位置以上に開放可能に構成したコンバインの排藁処理装置において、開閉レバー14と係脱可能且つ運転席4から操作可能な切換アーム23を設け、前記開閉レバー14を切換アーム23との係合解除時に切換板11開方向に単独回動可能に構成し、切換アーム23と開閉レバー14の係合時に切換アーム23によって切換板11の排藁排出位置と排藁導入位置との切換操作を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成される本発明のコンバインの排藁処理装置によれば、排藁を後方へ排出する排藁排出状態とカッター部へ導入する排藁導入状態とに切換える切換板を、排藁導入位置以上に開放可能且つ運転席側から操作可能に構成するため、カッター部のメンテナンス性を良好に保ちつつ、切換板の操作性を向上させることができる。また、切換板を排藁導入位置以上に開放する際にも、開閉レバーによって切換板の開閉操作を行うことができるため、操作性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明を適用したコンバインの側面図である。クローラ式の走行部1を備える走行機体2の前方には穀稈の刈り取りを行う前処理部3が昇降自在に連結され、走行機体2の前部右側には運転席4が設けられている。
【0007】
前処理部3で刈り取られた穀稈はフィードチェーン(図示しない)により前処理部3左部の後方に配置された脱穀部(図示しない)に搬送される。穀稈は脱穀部で脱穀処理され、穀粒はグレンタンク6内に収容され、排藁は排藁チェーン7(排藁搬送装置)によって排藁を切断処理するカッター部8の導入口9(排藁導入口)に搬送される。
【0008】
カッター部8の導入口9は切換板11によって開閉され、導入口9が開放された状態の排藁導入状態になると、搬送されてくる排藁がカッター部8に導入される。カッター部8内には回転自在に円盤状の掻込刃12及び切断刃13が軸支されており、カッター部8内に導入された排藁は掻込刃12と切断刃13の間に掻き込まれ、所定間隔に切断された後、機外に排出される。一方、導入口9が閉じられた状態の排藁排出状態になると、排藁がカッター部8に導入されず、切断処理されない状態のままで、機外に排出される。
【0009】
図2は側板がカバー体で覆われた状態のカッター部の側面図であり、図3は側板がカバー体で覆われてない状態のカッター部の斜視図である。切換板11の開閉操作は、カッター部8周りに設けらえた開閉レバー14又は運転席4周りに設けられた切換操作レバー16によって行う。
【0010】
開閉レバー14は、弾性部材で形成された板バネであり、回動軸17を介して切換板11と連結されている。詳述すると、左右方向長い略長方形状の切換板11の基端部に左右方向の回動軸17が一体的に取付けられている。上記回動軸17はカッター部8の内部の左右の側壁を形成する左右の側板18(左側板は図示しない)の後部上側に回動自在に軸支されており、右端部が右側板18から右方に突出している。
【0011】
上記回動軸17の右端には、開閉レバー14の基端部がボルト固定されている。上記開閉レバー14は、基端から中途部に亘って上記左右の側板18と略平行で、先端部が右側板18から遠ざかる方向(右方)に屈曲しており、切換板11と一体回動する。このため、開閉レバー14を上方(前方)回動操作すると切換板11が上方回動して開作動し、下方(後方)回動操作すると切換板が下方回動して閉作動する。
【0012】
切換操作レバー16は、運転席4の後方に前後揺動可能に設けられ、切換操作レバー16の中途部から基端部を覆う枠体19に形成された前後方向のカイド溝21によって前後の揺動範囲が規定される。また、ガイド溝21は、切換操作レバー16を最前方及び最後方に揺動した状態で固定可能な形状に形成されている。
【0013】
上記構成の切換操作レバー16を後方に揺動操作すると、ワイヤー22及び切換アーム23を介して開閉レバー14が上方回動し、切換板11が開作動する。一方、切換操作レバー16を前方に揺動操作すると、ワイヤー22及び切換アーム23を介して開閉レバー14が下方回動し、切換板11が閉作動する。
【0014】
上記切換アーム23は、切換軸24を介して回動軸17に支持されている。切換軸24は、回動軸17の外周を覆う左右方向のスリープ状の部材で、回動軸17に回動自在に軸支されている。この切換軸24の先端部(左端部)に切換アーム23の基端部を溶接等で一体的に取付けることにより、切換アーム23が回動軸17に回動自在に支持される。
【0015】
この切換アーム23は、基端部及び先端部がカッター部8の右側板18と略平行で、先端部が基端部よりも開閉レバー14に近接するように、基端部と先端部を連接する中途部が屈曲形成されている。この切換アーム23の先端には、バネ26を介して上記ワイヤー22の一端側が取付けられている。
【0016】
上記ワイヤー22の他端側は、運転席4側の切換操作レバー16の基端部に取付けられており、切換操作レバー16を後方揺動操作すると、切換操作レバー16の基端部が前方に移動し、これに連動して切換アーム23の先端が前方に引っ張られ、切換アーム23が上方回動する。
【0017】
また、切換アーム23の先端部には、開閉レバー14方向に向かって係合ピン23aが突設されており、上記係合ピン23aに対応して、開閉レバー14には、係合孔14aが形成されている。この係合孔14aに上記係合ピン23aを挿入すると、開閉レバー14と切換アーム23が係合して一体回動する。
【0018】
なお、切換アーム23が取付けられた切換軸24は、リンク27を介して、カッター部8の左右の側板18の前部上側に回動自在に軸支された左右方向の従動軸28と連結される。上記従動軸28には、左右方向に長い略長方形状の補助カバー29の基端部が取付けられており、この補助カバー29は従動軸28と一体回動する。
【0019】
上記リンク27は、基端部が切換軸24の中途に溶接等で一体的に取付けられた原動アーム31と、基端部がカッター部8の右側板18から右方に突出した従動軸28の右端に一体的にボルト固定された従動アーム32と、原動アーム31の先端部と従動アーム32の先端部を連結する連結杆33とにより構成される両てこ機構である。
【0020】
切換アーム23を上方回動すると、原動アーム31が一体回動し、原動アーム31に連動して従動アーム32が上方回動し、連結杆33が上昇する。そして、連結杆33が所定位置まで上昇するとストッパー部材34と当接する。ストッパー部材34はカッター部8の右側板18にブラケット36等を介してボルト固定されたプレート状の部材であり、このストッパー部材34と連結杆33との当接によって、切換アーム23は所定高さ以上に上方回動しない。
【0021】
カッター部8の右側板18の右方(カッター部8外方)に備え付けられた切換アーム23、切換軸24、リンク27等の各種部材は、カッター部8の右側板18の右側面全体を覆う前後のカバー体37,37によって保護されており、回動軸17の右端部、開閉レバー14及び切換アーム23の係合ピン23a等、一部の部材のみがカッター部8外方に露出している。
【0022】
カバー体37には、切換アーム23の係合ピン23aを露出させるピン孔38が形成されるとともに、切換板11が必要以上に開放されるのを防止するためのストッパーピン39が突設されている。ピン孔38は、切換アーム23の回動に伴う係合ピン23aの円弧状の移動軌跡に対応した形状に形成されており、開閉レバー14と切換アーム23との係脱が上記カバー体37をカッター部8の右側板18に取付けた状態のまま、行えるようになっている。
【0023】
上記構成のコンバインにおいて、開閉レバー14と切換アーム23を係合させて、運転席4側の切換操作レバー16を後方に揺動操作すると、前述したように切換アームが上方回動し、これに伴って開閉レバー14も上方回動して切換板11が開作動するとともに、リンク27を介して補助カバー29が切換板11から遠ざかる方向に回動する。
【0024】
続けて、切換操作レバー16を最後方に揺動操作すると、前述した排藁導入状態になり、切換板11が、排藁導入位置に配置され、前方斜め上方を向いた姿勢になる。排藁導入状態時、前述した連結杆33とストッパー部材34との当接により、切換板11がそれ以上開方向に回動することが防止される。
【0025】
一方、開閉レバー14と切換アーム23を係合させて、切換操作レバー16を前方に揺動操作すると、切換操作レバー16の基端部が後方に移動し、これによって切換アーム23先端に作用している前方への引っ張り力が弱まり、切換板11が自重により閉方向に回動し、開閉レバー14及び切換アーム23もそれに伴って下方回動するとともに、補助カバー29が切換板11に近づく方向に回動する。
【0026】
続けて、切換操作レバー16を最前方に揺動操作すると、前述した排藁排出状態になり、カッター部8の導入口9が切換板11によって閉じられるとともに、補助カバー29が切換板11の先端部(前端部)に近接又は接触することによって、切換板11の先端部付近に形成される隙間からカッター部8内に排藁チェーン7で搬送されてきた排藁が入り込むことが防止される。
【0027】
図4は、排藁導入状態時以上に、カッター部の導入口を開放した状態のカッター部の側面図である。カッター部8のメンテナンス等のために排藁導入状態時以上にカッター部8の導入口9を開放させるためには、開閉レバー14の先端部を右方(カッター部8外方)に引いて、係合孔14aから係合ピン23aを取外し、開閉レバー14と切換アーム23の係合を解除する。
【0028】
上記係合解除によって、開閉レバー14を、切換アーム23とは無関係に単独回動させることができるため、連結杆33とストッパー部材34との当接に係わりなく、切換板11を排藁導入位置以上に開作動させること可能になる。そして、開閉レバー14によって、カッター部8の導入口9をさらに大きく開放させていくと、開閉レバー14が前述したストッパーピン39に当接し、カッター部8の導入口9がそれ以上開放されなくなる。上記構成によって、カッター部8が必要以上に開放されることが防止される。
【0029】
なお、図4に示すように、開閉レバー14とストッパーピン39の当接時においては、切換板11は後方斜め上方を向いた姿勢になり、切換板11の自重によって開閉レバー14が上方回動方向に付勢されるため、開閉レバー14とストッパーピン39の当接によって切換板11が固定された状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用したコンバインの側面図である。
【図2】側板がカバー体で覆われた状態のカッター部の側面図である。
【図3】側板がカバー体で覆われてない状態のカッター部の斜視図である。
【図4】排藁導入状態時以上に、カッター部の導入口を開放した状態のカッター部の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
4 運転席
8 カッター部
9 導入口(排藁導入口)
11 切換板
14 開閉レバー
23 切換アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部から搬送されてくる排藁を切断処理するカッター部(8)と、上記カッター部(8)上方の排藁導入口(9)を開閉して排藁を後方へ排出する排藁排出状態とカッター部(8)へ導入する排藁導入状態とに切換える切換板(11)と、前記切換板(11)に一体的に設けられ切換板(11)を開閉操作する開閉レバー(14)とを備え、切換板(11)を排藁導入位置以上に開放可能に構成したコンバインの排藁処理装置において、開閉レバー(14)と係脱可能且つ運転席(4)から操作可能な切換アーム(23)を設け、前記開閉レバー(14)を切換アーム(23)との係合解除時に切換板(11)開方向に単独回動可能に構成し、切換アーム(23)と開閉レバー(14)の係合時に切換アーム(23)によって切換板(11)の排藁排出位置と排藁導入位置との切換操作を行うコンバインの排藁処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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