説明

コンバイン

【課題】濡れ扱ぎ状態においても、良好な脱穀選別を可能にする。
【解決手段】走行装置1を有する車台2の前方には、植立穀稈を刈り取る刈取装置3を設け、前記車台2の上方には、刈取装置3で刈り取られて搬送されてきた穀稈を脱穀選別する脱穀装置9と、該脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯留するグレンタンク16と、運転操作を行なう操作部13と、エンジン52とを設けたコンバインにおいて、該エンジン52を通過後の冷却水を前記脱穀装置6に設けている熱交換器57方向へ送水可能に構成したことを特徴とするコンバインの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場内の植立穀稈を刈り取って脱穀選別するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置内に電気ヒーターを設け、濡れ扱ぎ時においては、電気ヒーターを起動して脱穀装置内の各部材(特にシーブ)を暖めて濡れ扱ぎに対応する構成である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−9641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、電気ヒーターの電線が破損したり、また、暖めすぎて穀粒が焼けるという不具合があった。また、暖めすぎて穀粒が焼けるという不具合を防止するためには、温度センサーで制御する必要があるが、高価で構成が複雑になるという欠点がある。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、走行装置1を有する車台2の前方には、植立穀稈を刈り取る刈取装置3を設け、前記車台2の上方には、刈取装置3で刈り取られて搬送されてきた穀稈を脱穀選別する脱穀装置9と、該脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯留するグレンタンク16と、運転操作を行なう操作部13と、エンジン52とを設けたコンバインにおいて、該エンジン52を通過後の冷却水を前記脱穀装置6に設けている熱交換器57方向へ送水可能に構成したことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0006】
請求項1の作用は、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、脱穀装置6に設けている熱交換器57方向へ送水される。
請求項2記載の発明では、前記エンジン52を通過後の冷却水を前記グレンタンク16に設けている熱交換器57方向へ送水可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとしたものである。
【0007】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、グレンタンク16に設けている熱交換器57方向へ送水される。
請求項3記載の発明では、前記エンジン52を通過後の冷却水を前記脱穀装置9及びグレンタンク16のいずれか一方、又は、脱穀装置9及びグレンタンク16の両方へ送水可能とする切換バルブ60を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバインとしたものである。
【0008】
請求項3の作用は、請求項1又は請求項2の作用に加え、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、切換バルブ60によって、脱穀装置6及びグレンタンク16のいずれか一方、又は、脱穀装置6及びグレンタンク16の両方へ送水される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、脱穀装置9に設けている熱交換器57方向へ送水され、この熱交換器57の熱で脱穀装置6が暖かくなり、脱穀装置9内の被処理物の乾燥が促進される。そして、濡れ扱ぎ状態でも良好な脱穀選別が可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、グレンタンク16に設けている熱交換器57方向へ送水され、この熱交換器57の熱でグレンタンク16が暖かくなり、グレンタンク16内の穀粒の乾燥が促進される。
【0011】
請求項3記載の発明においては、請求項1又は請求項2の効果に加え、エンジン52を通過後の温度の上昇した冷却水は、切換バルブ60によって、脱穀装置9及びグレンタンク16のいずれか一方、又は、脱穀装置9及びグレンタンク16の両方へ送水されるので、能率の良い作業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0013】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0014】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0015】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0016】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0017】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0018】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0019】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0020】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0021】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図である。
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。33aは扱室33終端部に設けられている排出口である。
【0022】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0023】
さらに、図5は図4にて示すA−A断面図であるが、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0024】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0025】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a,二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン51は、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35と対向する位置に設けられている。52は揺動選別棚38を揺動駆動させるクランク軸である。
【0026】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0027】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例においては、二番処理胴39の処理歯39aは、連続のラセン構成である。
【0028】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0029】
前記排塵処理胴35の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状となっている。
【0030】
しかし、本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35aと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに、二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0031】
前述のように、扱室33内の脱穀物で揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送されていく。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向下手側に搬送されていく。また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
【0032】
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分においても、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けていて、該排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないようにしている。
【0033】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0034】
図6に示す52はエンジンであり、53はラジエ−タである。通常、エンジン52内の冷却水は、ポンプ55でラジエ−タへ送られ、ラジエ−タファン54の回転により起風された空気がラジエ−タ53を通過することで冷却水の温度が下げられ、温度の低下した冷却水は、再びエンジン53へと向かってエンジン53を冷却する構成である。また、ラジエ−タファン54の回転により起風された空気は、ラジエ−タ53を通過しているので空気の温度は上昇しているが、エンジン52の周囲を通過することで、エンジン52周辺の雰囲気温度を下げる効果もある。
【0035】
前述のような冷却水を、脱穀装置9へと導いて脱穀装置9を加熱するように構成する。切換バルブ60を切り換えることで、冷却水を脱穀装置9方向へ向かわせるようにする。切換バルブ60通過後の冷却水は、送り側配管56から熱交換器57送られ、その後、戻り側配管59からエンジン52へと戻る構成である。
【0036】
特に、前記送り側配管56については、冷却水が脱穀装置9へ到達するまでに冷却されないように、断熱材等で覆う必要がある。そして、熱交換器57においては、冷却水の熱が脱穀装置9へと効率良く導かれるようにするために、断熱材等では覆わないようにする。
【0037】
前記熱交換器57については、一番ラセン46の一番棚先60の下方に設ける構成とする(図3と図7参照)。そして、一番棚先60は、熱交換器57を通過する温度の高い冷却水の熱により温められて温度が上昇するようになる。従来、濡れ扱ぎ等の場合においては、一番棚先60に被処理物(穀粒や藁屑)がへばり付いてしまい、一番ラセン46への穀粒の取り込みが悪くなるという不具合が発生していたが、一番棚先60が温められることで、一番棚先60に被処理物(穀粒や藁屑)がへばり付くのを防止できるようになり、一番ラセン46への穀粒の取り込みがスム−ズに行なわれるようになる。また、エンジン52で温度の上昇した冷却水は、前記熱交換器57を通過する循環サイクルとなるので、一番棚先60は連続的に温められるようになる。
【0038】
図7は前記熱交換器57の断面図である。熱交換器57はパイプ形状とし、左右両側のプレ−ト57aを介して、ボルトナット57bで脱穀装置9の左右両側の側板9aに取り付ける構成である。このように、熱交換器57は脱穀装置9全体の強度を上げるための強度メンバ−にもなっているので、脱穀装置9の振動や撓みを抑制することが可能となる。また、熱交換器57を容易に取り外しすることができるので、メンテナンスも容易となる。
【0039】
また、熱交換器57の位置を唐箕43の風洞部61下部に設けるように構成してもよい(図3と図8参照)。これにより、唐箕43から送風される選別風自体の温度が上昇するようになるので、被処理物の乾燥が促進されて穀粒の選別性能が向上するようになる。また、後工程における乾燥機での乾燥時間が短くなるので、乾燥機での燃料消費量を低減させることができるようになる。
【0040】
この場合においても、熱交換器57はパイプ形状とし、左右両側のプレ−ト57aを介して、ボルトナット57bで脱穀装置9の左右両側の側板9aに取り付ける構成である。このように、熱交換器57は脱穀装置9全体の強度を上げるための強度メンバ−にもなっているので、脱穀装置9の振動や撓みを抑制することが可能となる。また、熱交換器57を容易に取り外しすることができるので、メンテナンスも容易となる。また、湿田走行時において、下方から泥等が押し上がって来ても熱交換器57が保護する役目もある。
【0041】
図10に示すように、前記熱交換器57を一番ラセン46の一番棚先60の下方に設け、さらに、唐箕43の風洞部61下部にも設けるように構成する。そして、これら2つの熱交換器57を直列で接続するように構成してもよい。これにより、一番棚先60と唐箕43の風洞部61の両方を同時に加熱可能となる。
【0042】
また、図11に示すように、熱交換器57を一番ラセン46の一番棚先60の下方に設け、さらに、唐箕43の風洞部61下部にも設け、これら2つの熱交換器57を並列で接続するように構成してもよい。この場合も、一番棚先60と唐箕43の風洞部61の両方を同時に加熱可能となる。
【0043】
図12と図13については、前記熱交換器57をグレンタンク16の下部に設けるように構成してもよい。これにより、グレンタンク16内の穀粒の乾燥が促進されるようになり、後工程における乾燥機での乾燥時間が短くなるので、乾燥機での燃料消費量を低減させることができるようになる。
【0044】
また、図14については、切換バルブ60の詳細構成を示している。
切換バルブ60の位置を弁60aに切り換えると、エンジン52の冷却水はラジエ−タ53方向のみへ送られる。
【0045】
切換バルブ60の位置を弁60bに切り換えると、エンジン52の冷却水はグレンタンク16の下部のみに送られる。
切換バルブ60の位置を弁60cに切り換えると、エンジン52の冷却水はラジエ−タ53、グレンタンク16下部、一番ラセン46の一番棚先60の下方、及び唐箕43の風洞部61下部方向へ送られる。
【0046】
切換バルブ60の位置を60dに切り換えると、エンジン52の冷却水は一番ラセン46の一番棚先60の下方、及び唐箕43の風洞部61下部方向へ送られる。
特に、前述のように、切換バルブ60を設け、この切換バルブ60の位置を弁60bに切り換えると、エンジン52の冷却水はグレンタンク16の下部のみに送られ、また、切換バルブ60の位置を弁60dに切り換えると、エンジン52の冷却水は一番ラセン46の一番棚先60の下方、及び唐箕43の風洞部61下部方向、即ち、脱穀装置9のみに送られる。これにより、必要に応じてグレンタンク16方向と脱穀装置9方向に切り換えられるので、冷却水の冷却能率が向上するようになる。
【0047】
また、エンジンの負荷変動に応じて、冷却水をラジエータ53方向のみに送ったり、脱穀装置9方向のみへ送ったりできるので、エンジンの負荷変動による広範囲の温度差を一定の温度で保つことができるようになる。
【0048】
前述のように、切換バルブ60を切換えて、冷却水をグレンタンク16の熱交換器57方向へ送ったり、脱穀装置9の熱交換器57方向へ送ったりする場合は、脱穀装置9が駆動状態のときに行なうようにする。具体的には、脱穀装置9の駆動をする脱穀クラッチレバーの入り状態を検出するようにする。また、脱穀装置9の各部の駆動状態を検出するようにしてもよい。また、脱穀装置9が駆動していない場合においても、冷却水の温度が異常に高くなると、冷却水をグレンタンク16の熱交換器57方向へ送ったり、脱穀装置9の熱交換器57方向へ送ったりするように構成する。これにより、オーバーヒートを防止できるようになる。
【0049】
そして、脱穀クラッチレバーが切り状態になると、エンジン52からの冷却水は、ラジエ−タ53のみに送るようにする。
また、前記グレンタンク16内に穀粒の水分値を検出する水分センサーを設け、この水分値が所定値以上になると、エンジン52からの冷却水をグレンタンク16の熱交換器57方向へ送ったり、脱穀装置9の熱交換器57方向へ送ったりしてもよい。これにより、コンバインでの作業時において、予め穀粒をある程度乾燥させることができるようになり、後工程の乾燥機での乾燥時間が短くなり、乾燥機の燃料消費量を少なくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置正面の断面図
【図6】平面図
【図7】脱穀装置正面断面図
【図8】平面図
【図9】脱穀装置正面断面図
【図10】平面図
【図11】平面図
【図12】平面図
【図13】正面の断面図
【図14】冷却水回路図
【符号の説明】
【0051】
1 走行装置
2 車台
3 刈取装置
9 脱穀装置
13 操作部
16 グレンタンク
52 エンジン
57 熱交換器
60 切換バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)を有する車台(2)の前方には、植立穀稈を刈り取る刈取装置(3)を設け、前記車台(2)の上方には、刈取装置(3)で刈り取られて搬送されてきた穀稈を脱穀選別する脱穀装置(9)と、該脱穀装置(9)で脱穀選別された穀粒を一時貯留するグレンタンク(16)と、運転操作を行なう操作部(13)と、エンジン(52)とを設けたコンバインにおいて、該エンジン(52)を通過後の冷却水を前記脱穀装置(6)に設けている熱交換器(57)方向へ送水可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記エンジン(52)を通過後の冷却水を前記グレンタンク(16)に設けている熱交換器(57)方向へ送水可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記エンジン(52)を通過後の冷却水を前記脱穀装置(9)及びグレンタンク(16)のいずれか一方、又は、脱穀装置(9)及びグレンタンク(16)の両方へ送水可能とする切換バルブ(60)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−228865(P2007−228865A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54005(P2006−54005)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】