コンバイン
【課題】エンジンの振動による出力軸と入力軸の軸間距離の変化により、ベルト張力も変化する。
【解決手段】機体フレーム1の下方に走行装置2を上方に脱穀装置3を前方に刈取部4を設け、該機体フレーム1にエンジン10をマウントゴム13を介在させて搭載し、エンジン10の出力軸16に設けた出力プーリ17と前記走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置22の入力プーリ24との間にベルト20を掛け回し、該ベルト20にはテンションアーム26の先端に設けたテンションプーリ25を当接させ、前記テンションアーム26は前記マウントゴム13の取付部材11に係止したテンションスプリング28により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【解決手段】機体フレーム1の下方に走行装置2を上方に脱穀装置3を前方に刈取部4を設け、該機体フレーム1にエンジン10をマウントゴム13を介在させて搭載し、エンジン10の出力軸16に設けた出力プーリ17と前記走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置22の入力プーリ24との間にベルト20を掛け回し、該ベルト20にはテンションアーム26の先端に設けたテンションプーリ25を当接させ、前記テンションアーム26は前記マウントゴム13の取付部材11に係止したテンションスプリング28により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体フレームの下方に走行装置を、上方に脱穀装置を、前方に刈取部を夫々設け、前記機体フレームには前記走行装置と前記脱穀装置と前記刈取部の各部を駆動させるエンジンを搭載し、エンジンの出力軸の出力プーリと前記走行装置のミッションケースに設けた油圧式変速装置の入力プーリとの間にベルトを掛け回し、ベルトにはテンションプーリを当接させた構成は、公知である。
【特許文献1】特開号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、単にベルトにテンションプーリを当接させているだけであるため、エンジンの出力軸とミッションケース側の入力軸の軸間距離がエンジンの振動により変化して、ベルト(テンションプーリ)の張力は常時変化し、ベルトの過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルトのスリップ等が起こるという課題がある。
本願は、ミッションケース側へ回転入力するベルト伝動機構を工夫し、前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、機体フレーム1に対して、その下方に走行装置2を設け、上方に脱穀装置3を設け、前方に刈取部4を設け、該機体フレーム1に、前記走行装置2と脱穀装置3と刈取部4の各部を駆動させるエンジン10をマウントゴム13を介在させて搭載し、エンジン10の出力軸16に設けた出力プーリ17と前記走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置22の入力プーリ24との間にベルト20を掛け回し、該ベルト20にはテンションアーム26の先端に設けたテンションプーリ25を当接させ、前記テンションアーム26は前記エンジン10と一体振動するマウントゴム13の取付部材11に係止したテンションスプリング28により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、エンジン10の回転が、出力軸16と、出力プーリ17と、ベルト20と、入力プーリ24と、入力軸23と伝達されて走行装置2を駆動し、ベルト20はテンションプーリ25により常時テンションスプリング28の弾力で緊張させられる。このとき、ベルト20はエンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、テンションスプリング28はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
本発明は、前記マウントゴム13はエンジン10に設けた取付部材11と前記機体フレーム1に設けた支持部材12との間に介在させ、前記取付部材11にテンションスプリング28の一端を係止し、該テンションスプリング28の他端をテンション調節フック27を介してテンションアーム26に張力調節自在に取付けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、テンションプーリ25は取付部材11にテンションスプリング28の一端を係止し、テンションスプリング28の他端はテンション調節フック27を介してテンションアーム26にテンションスプリング28の弾力調節自在に取付けてベルト20を緊張させる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28はエンジン10と一体振動してテンションプーリ25の張力の変化を減少させることができる。これによって、ベルト20の摩耗を少なくして耐久性を向上させることができると共に、伝動状態を安定させてコンバインの刈取作業の能率を高めることができる。
請求項2の発明では、テンションプーリ25の張力変化を減少させる構成を、簡素にでき、部品点数を増加させず、製造・組立を容易にして、製造コストを低減して安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6は操縦部、7はグレンタンクから穀粒を排出する穀粒排出オーガである。
前記脱穀装置3の前方の機体フレーム1には、走行装置2,脱穀装置3,刈取部4の各部を駆動させるエンジン10を搭載する。
エンジン10には取付部材11を設け、取付部材11を前記機体フレーム1に設けた支持部材12にマウントゴム13を介在させて取付ける。取付部材11と支持部材12とマウントゴム13の構成は任意であるが、マウントゴム13を円筒形状に形成し、マウントゴム13に取付軸14を挿通し、取付軸14によりマウントゴム13を支持部材12に取付ける。支持部材12に取付けたマウントゴム13の外周に取付部材11の筒部15を嵌合させる。
【0007】
エンジン10の出力軸16には出力プーリ17を設ける。出力プーリ17にはベルト20を掛け回し、ベルト20は走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置(HST)22の入力軸23の入力プーリ24に掛け回す。ベルト20にはテンションプーリ25を当接させる。テンションプーリ25はテンションアーム26の先端に取付ける。テンションアーム26の基部はミッションケース21または油圧式無段変速装置22の任意の固定部に回動自在に取付ける。テンションアーム26にはテンション調節フック27を取付け、テンション調節フック27にはテンションスプリング28の一端を係止する。テンションスプリング28の他端は取付部材11に係止する。
そのため、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28およびテンション調節フック27はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、テンションスプリング28およびテンション調節フック27(テンションプーリ25)はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
【0008】
したがって、ベルト20の過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルト20のスリップ等を防止する。
しかして、前記ミッションケース21には、図示は省略するが、油圧式無段変速装置22により伝達される回転を刈取部4に主力する刈取用変速出力軸(図示省略)を設ける。刈取用変速出力軸は走行同調伝達経路(図示省略)により走行装置2の走行速度と同期した回転を刈取部4に出力伝達して、刈取部4の回転数を走行速度と同調させて変更させるように構成する。
一方、エンジン10の回転を脱穀装置3に伝達する脱穀回転伝達経路Aの一部は分岐させ、脱穀装置3に伝達する脱穀回転を刈取部4に伝達する一定回転伝達経路Bを設ける。
30は脱穀回転伝達経路Aの入力プーリ、31は中間軸、32は中間歯車、33は中間傘歯車、34は入力傘歯車、35は扱胴軸である。
36は一定回転伝達経路Bの中間歯車32に噛み合う中間歯車、37は中間軸、38は中間歯車、39は中間歯車38に噛み合う中間歯車、40はワンウエイクラッチ内蔵歯車、41は刈取用一定回転主力軸、42は刈取用一定回転出力プーリである。
【0009】
一定回転伝達経路Bには、前記走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りのとき、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転を刈取用一定回転主力軸41を介して刈取用一定回転主力42に伝達して出力する刈取用一定回転入切クラッチ45を設ける。
刈取用一定回転入切クラッチ45はワンウエイクラッチ内蔵歯車40にクラッチ爪46を設け、クラッチ爪46に係脱するクラッチ爪47を有する摺動体48を刈取用一定回転主力軸41に摺動のみ自在に設けて構成する。摺動体48にはシフタ49を取付け、シフタ49は軸50に取付ける。軸50にはアーム51の基部を固定する。
アーム51にはピン52を設け、ピン52はトルクスプリング53の両端部54の夫々の間に位置させて挟持させる。トルクスプリング53は軸55に取付け、軸55には別のアーム56を設ける。アーム56は軸55によりケース57に取付ける。アーム56の先端には長孔58を形成し、長孔58にはモータ59により往復反転移動する係合ピン60を係合させる。
61はアーム51の先端に形成した長孔、62は長孔61内に位置するピン62であり、ピン62はアーム56に設ける。
【0010】
モータ59は、走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りになると、長孔58に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の入り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を入り方向に押し、他方の端部54が入り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させる。アーム51が回動すると、シフタ49を介して摺動体48を移動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47を噛み合わせて刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする。
そのため、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転が刈取用一定回転入切クラッチ45を介して刈取用一定回転主力軸41に伝達して刈取用一定回転主力42に出力し、刈取部4に一定回転伝達経路Bの一定回転を伝達して駆動する。
反対に、通常の走行同調伝達経路Aから刈取部4への回転伝達を入りすると、長孔58に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の切り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を切り方向に押し、他方の端部54が切り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47の噛み合わせを外して刈取用一定回転入切クラッチ45を切りにする。
【0011】
この場合、トルクスプリング53の端部54の一方が刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切り方向にピン52を移動させてアーム51を回動させた後も、端部54の他方がピン52を移動させるように付勢しているので、トルクスプリング53は刈取用一定回転入切クラッチ45の入りまたは切り状態を保持するように付勢する。
また、トルクスプリング53はモータ59による操作を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達して刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切りにする構成(アーム56とアーム51はトルクスプリング53を介してモータ59の作動を伝達する)となるので、クラッチ爪46とクラッチ爪47が噛み合うとき、トルクスプリング53の弾力が作用して、クラッチ爪46とクラッチ爪47が合わないときには無理に噛み合わせないで済み、刈取用一定回転入切クラッチ45の破損を防止する。
前記ミッションケース21内には、副変速軸65を設け、副変速軸65には高速と低速の二段に切替える副変速歯車66を設け、副変速歯車66に選択的に伝動歯車67を噛み合わせる(図5)。また、図示は省略するが、前記油圧式無段変速装置22は、モータの斜板の角度の変更により二段階に速度切替え可能に構成する。
【0012】
そして、前記副変速歯車66の噛み合わせを変更操作する副変速レバー68は、低速走行する低速位置と、標準速度走行する標準位置と、路上走行するときの走行位置との三段階に変速しうるように構成すると共に、前記低速位置と標準位置との間に中立位置を設ける。
本願では、副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板の夫々が二段切替え可能であり、副変速機構と油圧式無段変速装置22の夫々の二段切替えを掛け合わせると四段の変速も可能であるが、これを一本の副変速レバー68により三段の変速に操作可能とすると共に、副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させる中立位置を設けたものである。
即ち、副変速レバー68はミッションケース21の副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板との双方の操作が可能となるように連結すると共に、副変速レバー68による副変速機構の操作に当たって、副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させた中立位置とするように構成する。
【0013】
油圧式無段変速装置22のポンプの斜板を操作する主変速レバー69では、機体走行の停止に合わせて一緒に刈取部4も停止させてしまうので、機体の走行を停止させた状態で刈取部4を駆動させて行う手刈り穀稈の供給ができなくなってしまうが、本願では副変速レバー68により副変速機構をメカ的に中立位置にさせて走行停止させ、刈取部4を駆動させることができる。
したがって、一本の副変速レバー68により刈取部4を駆動させたまま走行停止させことができ、操作性および作業性を向上させ、走行停止の中立状態の保持の確実性も向上させる。
また、副変速レバー68を低速位置と標準位置との間に位置させたとき、ミッションケース21の副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67が位置するように、副変速レバー68と副変速機構を連結するだけであるので、特別な構成を必要とせず、製造・組立のコスト上昇をさせず、安価にできる。
また、低速走行から標準速度に走行速度が変速される間で伝動歯車67を切り替えるので、変速時のショックも抑制できて、好適である。
【0014】
しかして、前記操縦部6は、運転席70の前方にステップ71を設け、ステップ71の前方にフロントパネル(図示省略)を有するフロントカバー72を設け、ステップ71の側方に側部操作パネル73を有して構成している。側部操作パネル73には左右一対の前後方向の縦サイドフレーム74を設ける。縦サイドフレーム74は角筒形状に形成し、左右に所定間隔を置いて設ける。左右の縦サイドフレーム74の間には、前記副変速レバー68および主変速レバー69等を設ける。左右の縦サイドフレーム74の前部上面側には左右方向の連結部材75を固定し、左右の縦サイドフレーム74を連結する。連結部材75の後部は上方に立ち上げ、連結部材75の前側は下方に屈曲させて形成する。連結部材75の前側屈曲部には下側連結部材76の上部を固定する。下側連結部材76は平面視逆L型形状に形成し、下側連結部材76の側面は前記フロントカバー72の側面に固定する。
側部操作パネル73は左右一対の前後方向の縦フレーム74を設けているので、側部操作パネル73のフレーム構造を強固にする。左右の縦サイドフレーム74の前部上面側は連結部材75により連結固定し、連結部材75に下側連結部材76を固定しているから、構造が簡素で、構成部品を減らすことができる。
【0015】
また、側部操作パネル73の縦サイドフレーム74は連結部材75および下側連結部材76を介してフロントカバー72に固定しているから、側部操作パネル73はフロントカバー72と一体状に連結され、操縦部6の剛性を向上させる。
しかして、前記油圧式無段変速装置22はミッションケース21の上部に設ける。油圧式無段変速装置22の取付構成は任意であるが、ミッションケース21の側部には油圧式無段変速装置22を取付ける取付部材の一部を構成する変速装置取付メタル79を設ける。変速装置取付メタル79には、別途支持部材80を設け、支持部材80に油圧式無段変速装置22のラインフィルタ81を取付ける。
そのため、充分な剛性を有する変速装置取付メタル79にラインフィルタ81を取付けることができ、ラインフィルタ81に流れる油圧オイルに脈動が起こっても、強固に支持し、振動を抑制して騒音発生を抑制する。
【0016】
また、油圧式無段変速装置22の近傍にラインフィルタ81を設けているので、ホース82の配管が短くでき、ラインフィルタ81の設置スペースを小さくできる。
前記ミッションケース21には油圧式無段変速装置22からの出力された回転が入力される入力軸83を設ける。入力軸83とミッションケース21に設けた車軸84車軸84の間に回転伝達を入切する左右サイドクラッチ85を設ける。左右サイドクラッチ85の両方を入りにすると直進し、左右サイドクラッチ85の一方を切りにすると旋回する。
左右サイドクラッチ85のうち切りにした側の車軸84には旋回用の駆動回転を伝達して機体を旋回させるように構成する。この場合の旋回用の駆動回転を伝達させる旋回駆動回転伝達機構は任意であり、図11の実施例では左右一対の遊星歯車機構86により構成し、図12の実施例では差動機構87により構成している。旋回駆動回転伝達機構と車軸84の間には旋回駆動回転伝達機構からの回転を入切させる旋回用クラッチ90を設ける。
【0017】
旋回用クラッチ90は所謂多板クラッチにより構成し、油圧機構により入切させる。この油圧機構の初期圧力を上げると操向レバー91の操作に応じて感度が敏感になり、油圧機構の初期圧力を下げると操向レバー操向レバー91の操作に応じた感度が鈍感になるように構成する。
この旋回用クラッチ90の油圧機構の感度(初期圧力)は変更可能に構成し、グレンタンクから穀粒を排出させる穀粒排出クラッチ92が入りのとき、自動的に旋回用クラッチ90の油圧機構の初期圧力を低くするように構成する。
そのため、穀粒排出クラッチ92が入りにしていれば、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させられる。
即ち、穀粒排出作業中に、機体を移動させて穀粒排出オーガの位置合わせを行うことがあり、このとき、旋回ショックが大きいと、穀粒排出オーガの位置合わせが容易でないが、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させているので、機体を移動させて行う穀粒排出オーガの位置合わせを容易にする効果を期待でき、作業性・操作性を向上させることができる。
【0018】
(実施例の作用)
エンジン10を始動すると、エンジン10の回転が油圧式無段変速装置22を介してミッションケース31に伝達され、ミッションケース31は走行装置2を駆動して走行し、また、ミッションケース31から走行速度に同調した回転を刈取部4に伝達して、刈取部4を駆動する。
この場合、油圧式無段変速装置22は、エンジン10の出力軸16、出力プーリ17、ベルト20、入力プーリ24、油圧式無段変速装置22の入力軸23の順に回転伝達され、ベルト20に当接するテンションプーリ25のテンションスプリング28およびテンション調節フック27はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28およびテンション調節フック27(テンションプーリ25)はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
したがって、ベルト20の過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルト20のスリップ等を防止する。
【0019】
しかして、刈取部4は、通常、走行速度に同調した回転を伝達して、走行速度に合わせて刈取部4を駆動して、刈取作業を行うが、機体走行を停止させると一緒に刈取部4も停止させてしまうから、機体の走行を停止させた状態で刈取部4を駆動させて行う手刈り穀稈の供給ができなくなってしまうが、本願では走行同調伝達経路Aとは別に脱穀装置3に伝達する脱穀回転を刈取部4に伝達する一定回転伝達経路Bを設け、一定回転伝達経路Bには、前記走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りのとき、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転を刈取用一定回転主力軸41を介して刈取用一定回転主力42に伝達して出力する刈取用一定回転入切クラッチ刈取用一定回転入切クラッチ45を設けているから、刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにすると、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転が刈取用一定回転入切クラッチ45を介して刈取用一定回転主力軸41に伝達されて刈取用一定回転主力42に出力され、刈取部4に一定回転伝達経路Bの一定回転を伝達して駆動させられる。
【0020】
この場合、モータ59に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の入り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を入り方向に押し、他方の端部54が入り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させる。アーム51が回動すると、シフタ49を介して摺動体48を移動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47を噛み合わせて刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする。
そのため、アーム56とアーム51はトルクスプリング53を介してモータ59の作動を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達するから、トルクスプリング53はモータ59による操作を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達して刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする構成となる。
したがって、クラッチ爪46とクラッチ爪47が噛み合うとき、トルクスプリング53の弾力が作用して、クラッチ爪46とクラッチ爪47が合わないときには無理に噛み合わせないで済み、刈取用一定回転入切クラッチ45の破損を防止する。
【0021】
また、トルクスプリング53の端部54の一方が刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切り方向にピン52を移動させてアーム51を回動させた後も、端部54の他方がピン52を移動させるように付勢しているので、トルクスプリング53は刈取用一定回転入切クラッチ45の入りまたは切り状態を保持するように付勢する。
したがって、作業者の操作以外の振動等に起因する刈取用一定回転入切クラッチ45の不用意な入りまたは切り状態になるのを回避でき、作業の安定性を向上させる。
しかして、操縦部6に設けた副変速レバー68は、ミッションケース21の副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板との双方の操作が可能となるように連結すると共に、副変速レバー68による副変速機構の操作に当たって、副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させた中立位置とするように構成しているから、副変速レバー68を低速走行する低速位置に合わせると、条合わせ等を容易に行え、副変速レバー68を標準速度走行する標準位置すると、通常の刈取作業を行え、副変速レバー68を走行位置に合わせると、路上走行を行える。
【0022】
また、低速位置と標準位置との間の中立位置に副変速レバー68を位置させると、副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させるから、副変速機構をメカ的に中立位置にさせて走行停止させる。
そのため、走行停止させても刈取部4を駆動させることができ、作業性を向上させる。
したがって、一本の副変速レバー68により走行速度の変更操作および刈取部4を駆動させたまま走行停止させことができ、操作性および作業性を向上させ、走行停止の中立状態の保持の確実性も向上させる。
また、副変速レバー68は、中立位置にするための副変速歯車66と副変速歯車66の間への伝動歯車67の移動を、低速走行から標準速度に走行速度が変速される間で行うので、変速時のショックを抑制する。
【0023】
しかして、ミッションケース21には旋回用クラッチ90を設け、油圧機構により入切させるが、この油圧機構の初期圧力を、グレンタンクから穀粒を排出させる穀粒排出クラッチ穀粒排出クラッチ92が入りのとき、自動的に旋回用クラッチ90の油圧機構の初期圧力を低くするように構成しているから、穀粒排出クラッチ92が入りにしていれば、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させられる。
即ち、穀粒排出作業中に、機体を移動させて穀粒排出オーガの位置合わせを行うことがあり、このとき、旋回ショックが大きいと、穀粒排出オーガの位置合わせが容易でないが、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させているので、機体を移動させて行う穀粒排出オーガの位置合わせを容易にする効果を期待でき、作業性・操作性を向上させることができる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの例の側面図。
【図2】エンジン付近の側面図。
【図3】脱穀装置付近の一部展開正面図。
【図4】図3の一部拡大図。
【図5】副変速機構概略図。
【図6】副変速レバー操作状態図。
【図7】側部操作パネル付近の平面図。
【図8】同側面図。
【図9】ミッション付近の側面図。
【図10】同平面図。
【図11】遊星歯車機構を有する一実施例のミッション内の概略図。
【図12】差動機構を有する一実施例のミッション内の一部概略図。
【図13】図12の差動機構を有するミッション内の一部概略図。
【図14】ブロック図。
【符号の説明】
【0025】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取部、5…グレンタンク、6…操縦部、7…穀粒排出オーガー、10…エンジン、11…取付部材、12…支持部材、13…マウントゴム、14…取付軸、15…筒部、16…出力軸、17…出力プーリ、20…ベルト、21…ミッションケース、22…油圧式無段変速装置、23…入力軸、24…入力プーリ、25…テンションプーリ、26…テンションアーム、27…テンション調節フック、28…テンションスプリング、30…入力プーリ、40…ワンウエイクラッチ内蔵歯車、41…刈取用一定回転主力軸、42…刈取用一定回転主力、45…刈取用一定回転入切クラッチ、46…クラッチ爪、47…クラッチ爪、48…摺動体、49…シフタ、50…軸、51…アーム、52…ピン、53…トルクスプリング、54…端部、56…アーム、55…軸、57…ケース、58…長孔、59…モータ、60…係合ピン、62…ピン、65…副変速軸、66…副変速歯車、67…伝動歯車、68…副変速レバー、69…主変速レバー、71…ステップ、72…フロントカバー、73…側部操作パネル、74…縦サイドフレーム、75…連結部材、76…下側連結部材、79…変速装置取付メタル、80…支持部材、81…ラインフィルタ、83…入力軸、84…車軸、85…サイドクラッチ、86…遊星歯車機構、87…差動機構、90…旋回用クラッチ、91…操向レバー、92…穀粒排出クラッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体フレームの下方に走行装置を、上方に脱穀装置を、前方に刈取部を夫々設け、前記機体フレームには前記走行装置と前記脱穀装置と前記刈取部の各部を駆動させるエンジンを搭載し、エンジンの出力軸の出力プーリと前記走行装置のミッションケースに設けた油圧式変速装置の入力プーリとの間にベルトを掛け回し、ベルトにはテンションプーリを当接させた構成は、公知である。
【特許文献1】特開号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、単にベルトにテンションプーリを当接させているだけであるため、エンジンの出力軸とミッションケース側の入力軸の軸間距離がエンジンの振動により変化して、ベルト(テンションプーリ)の張力は常時変化し、ベルトの過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルトのスリップ等が起こるという課題がある。
本願は、ミッションケース側へ回転入力するベルト伝動機構を工夫し、前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、機体フレーム1に対して、その下方に走行装置2を設け、上方に脱穀装置3を設け、前方に刈取部4を設け、該機体フレーム1に、前記走行装置2と脱穀装置3と刈取部4の各部を駆動させるエンジン10をマウントゴム13を介在させて搭載し、エンジン10の出力軸16に設けた出力プーリ17と前記走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置22の入力プーリ24との間にベルト20を掛け回し、該ベルト20にはテンションアーム26の先端に設けたテンションプーリ25を当接させ、前記テンションアーム26は前記エンジン10と一体振動するマウントゴム13の取付部材11に係止したテンションスプリング28により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、エンジン10の回転が、出力軸16と、出力プーリ17と、ベルト20と、入力プーリ24と、入力軸23と伝達されて走行装置2を駆動し、ベルト20はテンションプーリ25により常時テンションスプリング28の弾力で緊張させられる。このとき、ベルト20はエンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、テンションスプリング28はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
本発明は、前記マウントゴム13はエンジン10に設けた取付部材11と前記機体フレーム1に設けた支持部材12との間に介在させ、前記取付部材11にテンションスプリング28の一端を係止し、該テンションスプリング28の他端をテンション調節フック27を介してテンションアーム26に張力調節自在に取付けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、テンションプーリ25は取付部材11にテンションスプリング28の一端を係止し、テンションスプリング28の他端はテンション調節フック27を介してテンションアーム26にテンションスプリング28の弾力調節自在に取付けてベルト20を緊張させる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28はエンジン10と一体振動してテンションプーリ25の張力の変化を減少させることができる。これによって、ベルト20の摩耗を少なくして耐久性を向上させることができると共に、伝動状態を安定させてコンバインの刈取作業の能率を高めることができる。
請求項2の発明では、テンションプーリ25の張力変化を減少させる構成を、簡素にでき、部品点数を増加させず、製造・組立を容易にして、製造コストを低減して安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6は操縦部、7はグレンタンクから穀粒を排出する穀粒排出オーガである。
前記脱穀装置3の前方の機体フレーム1には、走行装置2,脱穀装置3,刈取部4の各部を駆動させるエンジン10を搭載する。
エンジン10には取付部材11を設け、取付部材11を前記機体フレーム1に設けた支持部材12にマウントゴム13を介在させて取付ける。取付部材11と支持部材12とマウントゴム13の構成は任意であるが、マウントゴム13を円筒形状に形成し、マウントゴム13に取付軸14を挿通し、取付軸14によりマウントゴム13を支持部材12に取付ける。支持部材12に取付けたマウントゴム13の外周に取付部材11の筒部15を嵌合させる。
【0007】
エンジン10の出力軸16には出力プーリ17を設ける。出力プーリ17にはベルト20を掛け回し、ベルト20は走行装置2のミッションケース21に設けた油圧式無段変速装置(HST)22の入力軸23の入力プーリ24に掛け回す。ベルト20にはテンションプーリ25を当接させる。テンションプーリ25はテンションアーム26の先端に取付ける。テンションアーム26の基部はミッションケース21または油圧式無段変速装置22の任意の固定部に回動自在に取付ける。テンションアーム26にはテンション調節フック27を取付け、テンション調節フック27にはテンションスプリング28の一端を係止する。テンションスプリング28の他端は取付部材11に係止する。
そのため、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28およびテンション調節フック27はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、テンションスプリング28およびテンション調節フック27(テンションプーリ25)はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
【0008】
したがって、ベルト20の過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルト20のスリップ等を防止する。
しかして、前記ミッションケース21には、図示は省略するが、油圧式無段変速装置22により伝達される回転を刈取部4に主力する刈取用変速出力軸(図示省略)を設ける。刈取用変速出力軸は走行同調伝達経路(図示省略)により走行装置2の走行速度と同期した回転を刈取部4に出力伝達して、刈取部4の回転数を走行速度と同調させて変更させるように構成する。
一方、エンジン10の回転を脱穀装置3に伝達する脱穀回転伝達経路Aの一部は分岐させ、脱穀装置3に伝達する脱穀回転を刈取部4に伝達する一定回転伝達経路Bを設ける。
30は脱穀回転伝達経路Aの入力プーリ、31は中間軸、32は中間歯車、33は中間傘歯車、34は入力傘歯車、35は扱胴軸である。
36は一定回転伝達経路Bの中間歯車32に噛み合う中間歯車、37は中間軸、38は中間歯車、39は中間歯車38に噛み合う中間歯車、40はワンウエイクラッチ内蔵歯車、41は刈取用一定回転主力軸、42は刈取用一定回転出力プーリである。
【0009】
一定回転伝達経路Bには、前記走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りのとき、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転を刈取用一定回転主力軸41を介して刈取用一定回転主力42に伝達して出力する刈取用一定回転入切クラッチ45を設ける。
刈取用一定回転入切クラッチ45はワンウエイクラッチ内蔵歯車40にクラッチ爪46を設け、クラッチ爪46に係脱するクラッチ爪47を有する摺動体48を刈取用一定回転主力軸41に摺動のみ自在に設けて構成する。摺動体48にはシフタ49を取付け、シフタ49は軸50に取付ける。軸50にはアーム51の基部を固定する。
アーム51にはピン52を設け、ピン52はトルクスプリング53の両端部54の夫々の間に位置させて挟持させる。トルクスプリング53は軸55に取付け、軸55には別のアーム56を設ける。アーム56は軸55によりケース57に取付ける。アーム56の先端には長孔58を形成し、長孔58にはモータ59により往復反転移動する係合ピン60を係合させる。
61はアーム51の先端に形成した長孔、62は長孔61内に位置するピン62であり、ピン62はアーム56に設ける。
【0010】
モータ59は、走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りになると、長孔58に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の入り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を入り方向に押し、他方の端部54が入り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させる。アーム51が回動すると、シフタ49を介して摺動体48を移動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47を噛み合わせて刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする。
そのため、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転が刈取用一定回転入切クラッチ45を介して刈取用一定回転主力軸41に伝達して刈取用一定回転主力42に出力し、刈取部4に一定回転伝達経路Bの一定回転を伝達して駆動する。
反対に、通常の走行同調伝達経路Aから刈取部4への回転伝達を入りすると、長孔58に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の切り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を切り方向に押し、他方の端部54が切り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47の噛み合わせを外して刈取用一定回転入切クラッチ45を切りにする。
【0011】
この場合、トルクスプリング53の端部54の一方が刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切り方向にピン52を移動させてアーム51を回動させた後も、端部54の他方がピン52を移動させるように付勢しているので、トルクスプリング53は刈取用一定回転入切クラッチ45の入りまたは切り状態を保持するように付勢する。
また、トルクスプリング53はモータ59による操作を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達して刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切りにする構成(アーム56とアーム51はトルクスプリング53を介してモータ59の作動を伝達する)となるので、クラッチ爪46とクラッチ爪47が噛み合うとき、トルクスプリング53の弾力が作用して、クラッチ爪46とクラッチ爪47が合わないときには無理に噛み合わせないで済み、刈取用一定回転入切クラッチ45の破損を防止する。
前記ミッションケース21内には、副変速軸65を設け、副変速軸65には高速と低速の二段に切替える副変速歯車66を設け、副変速歯車66に選択的に伝動歯車67を噛み合わせる(図5)。また、図示は省略するが、前記油圧式無段変速装置22は、モータの斜板の角度の変更により二段階に速度切替え可能に構成する。
【0012】
そして、前記副変速歯車66の噛み合わせを変更操作する副変速レバー68は、低速走行する低速位置と、標準速度走行する標準位置と、路上走行するときの走行位置との三段階に変速しうるように構成すると共に、前記低速位置と標準位置との間に中立位置を設ける。
本願では、副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板の夫々が二段切替え可能であり、副変速機構と油圧式無段変速装置22の夫々の二段切替えを掛け合わせると四段の変速も可能であるが、これを一本の副変速レバー68により三段の変速に操作可能とすると共に、副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させる中立位置を設けたものである。
即ち、副変速レバー68はミッションケース21の副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板との双方の操作が可能となるように連結すると共に、副変速レバー68による副変速機構の操作に当たって、副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させた中立位置とするように構成する。
【0013】
油圧式無段変速装置22のポンプの斜板を操作する主変速レバー69では、機体走行の停止に合わせて一緒に刈取部4も停止させてしまうので、機体の走行を停止させた状態で刈取部4を駆動させて行う手刈り穀稈の供給ができなくなってしまうが、本願では副変速レバー68により副変速機構をメカ的に中立位置にさせて走行停止させ、刈取部4を駆動させることができる。
したがって、一本の副変速レバー68により刈取部4を駆動させたまま走行停止させことができ、操作性および作業性を向上させ、走行停止の中立状態の保持の確実性も向上させる。
また、副変速レバー68を低速位置と標準位置との間に位置させたとき、ミッションケース21の副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67が位置するように、副変速レバー68と副変速機構を連結するだけであるので、特別な構成を必要とせず、製造・組立のコスト上昇をさせず、安価にできる。
また、低速走行から標準速度に走行速度が変速される間で伝動歯車67を切り替えるので、変速時のショックも抑制できて、好適である。
【0014】
しかして、前記操縦部6は、運転席70の前方にステップ71を設け、ステップ71の前方にフロントパネル(図示省略)を有するフロントカバー72を設け、ステップ71の側方に側部操作パネル73を有して構成している。側部操作パネル73には左右一対の前後方向の縦サイドフレーム74を設ける。縦サイドフレーム74は角筒形状に形成し、左右に所定間隔を置いて設ける。左右の縦サイドフレーム74の間には、前記副変速レバー68および主変速レバー69等を設ける。左右の縦サイドフレーム74の前部上面側には左右方向の連結部材75を固定し、左右の縦サイドフレーム74を連結する。連結部材75の後部は上方に立ち上げ、連結部材75の前側は下方に屈曲させて形成する。連結部材75の前側屈曲部には下側連結部材76の上部を固定する。下側連結部材76は平面視逆L型形状に形成し、下側連結部材76の側面は前記フロントカバー72の側面に固定する。
側部操作パネル73は左右一対の前後方向の縦フレーム74を設けているので、側部操作パネル73のフレーム構造を強固にする。左右の縦サイドフレーム74の前部上面側は連結部材75により連結固定し、連結部材75に下側連結部材76を固定しているから、構造が簡素で、構成部品を減らすことができる。
【0015】
また、側部操作パネル73の縦サイドフレーム74は連結部材75および下側連結部材76を介してフロントカバー72に固定しているから、側部操作パネル73はフロントカバー72と一体状に連結され、操縦部6の剛性を向上させる。
しかして、前記油圧式無段変速装置22はミッションケース21の上部に設ける。油圧式無段変速装置22の取付構成は任意であるが、ミッションケース21の側部には油圧式無段変速装置22を取付ける取付部材の一部を構成する変速装置取付メタル79を設ける。変速装置取付メタル79には、別途支持部材80を設け、支持部材80に油圧式無段変速装置22のラインフィルタ81を取付ける。
そのため、充分な剛性を有する変速装置取付メタル79にラインフィルタ81を取付けることができ、ラインフィルタ81に流れる油圧オイルに脈動が起こっても、強固に支持し、振動を抑制して騒音発生を抑制する。
【0016】
また、油圧式無段変速装置22の近傍にラインフィルタ81を設けているので、ホース82の配管が短くでき、ラインフィルタ81の設置スペースを小さくできる。
前記ミッションケース21には油圧式無段変速装置22からの出力された回転が入力される入力軸83を設ける。入力軸83とミッションケース21に設けた車軸84車軸84の間に回転伝達を入切する左右サイドクラッチ85を設ける。左右サイドクラッチ85の両方を入りにすると直進し、左右サイドクラッチ85の一方を切りにすると旋回する。
左右サイドクラッチ85のうち切りにした側の車軸84には旋回用の駆動回転を伝達して機体を旋回させるように構成する。この場合の旋回用の駆動回転を伝達させる旋回駆動回転伝達機構は任意であり、図11の実施例では左右一対の遊星歯車機構86により構成し、図12の実施例では差動機構87により構成している。旋回駆動回転伝達機構と車軸84の間には旋回駆動回転伝達機構からの回転を入切させる旋回用クラッチ90を設ける。
【0017】
旋回用クラッチ90は所謂多板クラッチにより構成し、油圧機構により入切させる。この油圧機構の初期圧力を上げると操向レバー91の操作に応じて感度が敏感になり、油圧機構の初期圧力を下げると操向レバー操向レバー91の操作に応じた感度が鈍感になるように構成する。
この旋回用クラッチ90の油圧機構の感度(初期圧力)は変更可能に構成し、グレンタンクから穀粒を排出させる穀粒排出クラッチ92が入りのとき、自動的に旋回用クラッチ90の油圧機構の初期圧力を低くするように構成する。
そのため、穀粒排出クラッチ92が入りにしていれば、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させられる。
即ち、穀粒排出作業中に、機体を移動させて穀粒排出オーガの位置合わせを行うことがあり、このとき、旋回ショックが大きいと、穀粒排出オーガの位置合わせが容易でないが、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させているので、機体を移動させて行う穀粒排出オーガの位置合わせを容易にする効果を期待でき、作業性・操作性を向上させることができる。
【0018】
(実施例の作用)
エンジン10を始動すると、エンジン10の回転が油圧式無段変速装置22を介してミッションケース31に伝達され、ミッションケース31は走行装置2を駆動して走行し、また、ミッションケース31から走行速度に同調した回転を刈取部4に伝達して、刈取部4を駆動する。
この場合、油圧式無段変速装置22は、エンジン10の出力軸16、出力プーリ17、ベルト20、入力プーリ24、油圧式無段変速装置22の入力軸23の順に回転伝達され、ベルト20に当接するテンションプーリ25のテンションスプリング28およびテンション調節フック27はエンジン10と一体振動する取付部材11に取付けているので、エンジン10の出力軸16とミッションケース21側の入力軸23の軸間距離がエンジン10の振動により変化しても、テンションスプリング28およびテンション調節フック27(テンションプーリ25)はエンジン10と同期して振動し、テンションプーリ25の張力の変化を減少させる。
したがって、ベルト20の過張力による耐久性の低下や張力不足によるベルト20のスリップ等を防止する。
【0019】
しかして、刈取部4は、通常、走行速度に同調した回転を伝達して、走行速度に合わせて刈取部4を駆動して、刈取作業を行うが、機体走行を停止させると一緒に刈取部4も停止させてしまうから、機体の走行を停止させた状態で刈取部4を駆動させて行う手刈り穀稈の供給ができなくなってしまうが、本願では走行同調伝達経路Aとは別に脱穀装置3に伝達する脱穀回転を刈取部4に伝達する一定回転伝達経路Bを設け、一定回転伝達経路Bには、前記走行同調伝達経路Aからの刈取部4の回転伝達が切りのとき、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転を刈取用一定回転主力軸41を介して刈取用一定回転主力42に伝達して出力する刈取用一定回転入切クラッチ刈取用一定回転入切クラッチ45を設けているから、刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにすると、ワンウエイクラッチ内蔵歯車40の回転が刈取用一定回転入切クラッチ45を介して刈取用一定回転主力軸41に伝達されて刈取用一定回転主力42に出力され、刈取部4に一定回転伝達経路Bの一定回転を伝達して駆動させられる。
【0020】
この場合、モータ59に通電して係合ピン60を回転させ、係合ピン60は刈取用一定回転入切クラッチ45の入り方向にアーム56を回動させ、アーム56のピン62がトルクスプリング53の一方の端部54を入り方向に押し、他方の端部54が入り方向に移動するように作用し、トルクスプリング53の弾力でピン52を介してアーム51を回動させる。アーム51が回動すると、シフタ49を介して摺動体48を移動させて、クラッチ爪46とクラッチ爪47を噛み合わせて刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする。
そのため、アーム56とアーム51はトルクスプリング53を介してモータ59の作動を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達するから、トルクスプリング53はモータ59による操作を刈取用一定回転入切クラッチ45に伝達して刈取用一定回転入切クラッチ45を入りにする構成となる。
したがって、クラッチ爪46とクラッチ爪47が噛み合うとき、トルクスプリング53の弾力が作用して、クラッチ爪46とクラッチ爪47が合わないときには無理に噛み合わせないで済み、刈取用一定回転入切クラッチ45の破損を防止する。
【0021】
また、トルクスプリング53の端部54の一方が刈取用一定回転入切クラッチ45を入りまたは切り方向にピン52を移動させてアーム51を回動させた後も、端部54の他方がピン52を移動させるように付勢しているので、トルクスプリング53は刈取用一定回転入切クラッチ45の入りまたは切り状態を保持するように付勢する。
したがって、作業者の操作以外の振動等に起因する刈取用一定回転入切クラッチ45の不用意な入りまたは切り状態になるのを回避でき、作業の安定性を向上させる。
しかして、操縦部6に設けた副変速レバー68は、ミッションケース21の副変速機構と油圧式無段変速装置22のモータの斜板との双方の操作が可能となるように連結すると共に、副変速レバー68による副変速機構の操作に当たって、副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させた中立位置とするように構成しているから、副変速レバー68を低速走行する低速位置に合わせると、条合わせ等を容易に行え、副変速レバー68を標準速度走行する標準位置すると、通常の刈取作業を行え、副変速レバー68を走行位置に合わせると、路上走行を行える。
【0022】
また、低速位置と標準位置との間の中立位置に副変速レバー68を位置させると、副変速機構の副変速歯車66と副変速歯車66の間に伝動歯車67を位置させるから、副変速機構をメカ的に中立位置にさせて走行停止させる。
そのため、走行停止させても刈取部4を駆動させることができ、作業性を向上させる。
したがって、一本の副変速レバー68により走行速度の変更操作および刈取部4を駆動させたまま走行停止させことができ、操作性および作業性を向上させ、走行停止の中立状態の保持の確実性も向上させる。
また、副変速レバー68は、中立位置にするための副変速歯車66と副変速歯車66の間への伝動歯車67の移動を、低速走行から標準速度に走行速度が変速される間で行うので、変速時のショックを抑制する。
【0023】
しかして、ミッションケース21には旋回用クラッチ90を設け、油圧機構により入切させるが、この油圧機構の初期圧力を、グレンタンクから穀粒を排出させる穀粒排出クラッチ穀粒排出クラッチ92が入りのとき、自動的に旋回用クラッチ90の油圧機構の初期圧力を低くするように構成しているから、穀粒排出クラッチ92が入りにしていれば、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させられる。
即ち、穀粒排出作業中に、機体を移動させて穀粒排出オーガの位置合わせを行うことがあり、このとき、旋回ショックが大きいと、穀粒排出オーガの位置合わせが容易でないが、旋回用クラッチ90の旋回初期圧力を低くして、旋回ショックを軽減させているので、機体を移動させて行う穀粒排出オーガの位置合わせを容易にする効果を期待でき、作業性・操作性を向上させることができる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの例の側面図。
【図2】エンジン付近の側面図。
【図3】脱穀装置付近の一部展開正面図。
【図4】図3の一部拡大図。
【図5】副変速機構概略図。
【図6】副変速レバー操作状態図。
【図7】側部操作パネル付近の平面図。
【図8】同側面図。
【図9】ミッション付近の側面図。
【図10】同平面図。
【図11】遊星歯車機構を有する一実施例のミッション内の概略図。
【図12】差動機構を有する一実施例のミッション内の一部概略図。
【図13】図12の差動機構を有するミッション内の一部概略図。
【図14】ブロック図。
【符号の説明】
【0025】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取部、5…グレンタンク、6…操縦部、7…穀粒排出オーガー、10…エンジン、11…取付部材、12…支持部材、13…マウントゴム、14…取付軸、15…筒部、16…出力軸、17…出力プーリ、20…ベルト、21…ミッションケース、22…油圧式無段変速装置、23…入力軸、24…入力プーリ、25…テンションプーリ、26…テンションアーム、27…テンション調節フック、28…テンションスプリング、30…入力プーリ、40…ワンウエイクラッチ内蔵歯車、41…刈取用一定回転主力軸、42…刈取用一定回転主力、45…刈取用一定回転入切クラッチ、46…クラッチ爪、47…クラッチ爪、48…摺動体、49…シフタ、50…軸、51…アーム、52…ピン、53…トルクスプリング、54…端部、56…アーム、55…軸、57…ケース、58…長孔、59…モータ、60…係合ピン、62…ピン、65…副変速軸、66…副変速歯車、67…伝動歯車、68…副変速レバー、69…主変速レバー、71…ステップ、72…フロントカバー、73…側部操作パネル、74…縦サイドフレーム、75…連結部材、76…下側連結部材、79…変速装置取付メタル、80…支持部材、81…ラインフィルタ、83…入力軸、84…車軸、85…サイドクラッチ、86…遊星歯車機構、87…差動機構、90…旋回用クラッチ、91…操向レバー、92…穀粒排出クラッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)に対して、その下方に走行装置(2)を設け、上方に脱穀装置(3)を設け、前方に刈取部(4)を設け、該機体フレーム(1)に、前記走行装置(2)と脱穀装置(3)と刈取部(4)の各部を駆動させるエンジン(10)をマウントゴム(13)を介在させて搭載し、エンジン(10)の出力軸(16)に設けた出力プーリ(17)と前記走行装置(2)のミッションケース(21)に設けた油圧式無段変速装置(22)の入力プーリ(24)との間にベルト(20)を掛け回し、該ベルト(20)にはテンションアーム(26)の先端に設けたテンションプーリ(25)を当接させ、前記テンションアーム(26)は前記エンジン(10)と一体振動するマウントゴム(13)の取付部材(11)に係止したテンションスプリング(28)により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記マウントゴム(13)はエンジン(10)に設けた取付部材(11)と前記機体フレーム(1)に設けた支持部材(12)との間に介在させ、前記取付部材(11)にテンションスプリング(28)の一端を係止し、該テンションスプリング(28)の他端をテンション調節フック(27)を介してテンションアーム(26)に張力調節自在に取付けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
機体フレーム(1)に対して、その下方に走行装置(2)を設け、上方に脱穀装置(3)を設け、前方に刈取部(4)を設け、該機体フレーム(1)に、前記走行装置(2)と脱穀装置(3)と刈取部(4)の各部を駆動させるエンジン(10)をマウントゴム(13)を介在させて搭載し、エンジン(10)の出力軸(16)に設けた出力プーリ(17)と前記走行装置(2)のミッションケース(21)に設けた油圧式無段変速装置(22)の入力プーリ(24)との間にベルト(20)を掛け回し、該ベルト(20)にはテンションアーム(26)の先端に設けたテンションプーリ(25)を当接させ、前記テンションアーム(26)は前記エンジン(10)と一体振動するマウントゴム(13)の取付部材(11)に係止したテンションスプリング(28)により緊張側に付勢する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記マウントゴム(13)はエンジン(10)に設けた取付部材(11)と前記機体フレーム(1)に設けた支持部材(12)との間に介在させ、前記取付部材(11)にテンションスプリング(28)の一端を係止し、該テンションスプリング(28)の他端をテンション調節フック(27)を介してテンションアーム(26)に張力調節自在に取付けたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−165447(P2009−165447A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10297(P2008−10297)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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