説明

コンバイン

【課題】回り刈り作業でも中割り刈り作業でも穀稈の引起しに伴うトラブルやクローラベルトによる踏み付けを回避しやすい状態で刈り取り走行できるコンバインを提供する。
【解決手段】第一外分草具22と第一中分草具23の先端での間隔D1を、第二外分草具25と第二中分草具24の先端での間隔D3、第一中分草具22と第二中分草具23の先端での間隔D2よりも大にしてある。第一外分草具22の先端の位置とクローラベルト16の外側端の位置とが、走行機体横方向でほぼ一致している。第二外分草具25の先端の位置とクローラベルト16の外側端の位置とが、走行機体横方向で一致している。第一外引起し装置26の引起しケース26aの中心と第一外分草具22の先端との走行機体横方向での間隔D4と、第一外引起し装置26の引起しケース26aの中心と第一中分草具23の先端との走行機体横方向での間隔D5とを同一にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のクローラ走行装置を有した走行機体を備え、走行機体横方向に並ぶ四つの分草具を備えた刈取前処理部が前記走行機体の前部に連結され、引起し爪が引起しケースから走行機体横向きに突出して穀稈に引起し作用する引起し装置の三つを走行機体横方向に並べて前記刈取前処理部に設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されたコンバインがあった。
特許文献1に記載されたコンバインは、刈取部4の刈取部主フレーム9を原動軸19に沿って横スライド可能に支持させ、刈取部主フレーム9に係合した横送り部材75と、この横送り部材75に螺合したネジ軸76と、このネジ軸76を駆動回動するギヤードモータ77を有した横送り機構Cを備え、刈取部4を横送り機構Cによって機体1に対して最大限左方にスライド変位させて回り刈り作業を行い、刈取部4を横送り機構Cによって機体1に対して最大限右方にスライド変位させて中割り作業を行なうものである。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−327644号公報(段落〔0034〕,〔0036〕,〔0037〕、図2,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回り刈り作業の形態での刈取り走行も、中割り刈り作業の形態での刈取り走行も行なうことができるコンバインを得るのに、上記した従来の技術を適用した場合、刈取前処理部を横スライド自在に支持する支持構造が必要になっていた。さらに、刈取前処理部によって刈り取られた刈り取り穀稈を脱穀装置に供給する搬送装置による穀稈搬送が刈取前処理部の変位にかかわらず支障なく行なわれるように構成する必要があり、全体として構造面及び重量面で不利になっていた。
【0005】
本発明の目的は、回り刈り作業でも中割り刈り作業でも穀稈の引起しに伴うトラブルの発生や、穀稈のクローラベルトによる踏み付けを回避しやすい状態で刈り取り走行することができ、しかも構造面及び重量面で有利に得ることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、左右一対のクローラ走行装置を有した走行機体を備え、
走行機体横方向に並ぶ四つの分草具を備えた刈取前処理部が前記走行機体の前部に連結され、
引起し爪が引起しケースから走行機体横向きに突出して穀稈に引起し作用する引起し装置の三つを走行機体横方向に並べて前記刈取前処理部に設けてあるコンバインであって、
前記四つの分草具のうちの走行機体横方向での一方の最も端に位置する第一外分草具とこの第一外分草具に隣り合って位置する第一中分草具との先端どうしの間隔を、前記四つの分草具のうちの走行機体横方向での他方の最も端に位置する第二外分草具とこの第二外分草具に隣り合って位置する第二中分草具との先端どうしの間隔、及び前記第一中分草具と前記第二中分草具との先端どうしの間隔よりも大に設定し、
前記第一外分草具の先端の位置と、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記第一外分草具が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向での外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記第二外分草具の先端の位置と、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記第二外分草具が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向での外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記三つの引起し装置のうちの前記第一外分草具が位置する側の端に位置する第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と前記第一外分草具の先端との走行機体横方向での間隔と、前記第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と前記第一中分草具の先端との走行機体横方向での間隔とを同一に設定し、
前記三つの引起し装置のうちの前記第二外分草具が位置する側の端に位置する第二外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が、前記第二外分草具と前記第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置し、
前記三つの引起し装置のうちの中間に位置する中引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が、前記第一中分草具と前記第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置している。
【0007】
本第1発明の構成によると、回り刈り作業の形態でも中割り刈り作業の形態でも刈り取り走行を行なうことができる。
【0008】
つまり、図5(a)は、回り刈り作業の場合の走行要領を示している。図5(a)に記載の○は、植立穀稈を示し、図5(a)に記載の×は、切り株を示している。この図に示すように、第一外分草具22が既刈り地Cに位置する状態で、第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間の前方に三条の植立穀稈が位置するように刈取前処理部を植立穀稈に対して位置合わせしながら走行機体を走行させる。
すると、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間、第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間、第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間それぞれに一条の植立穀稈を導入することができる。第二外分草具25と第二中分草具24の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Aに位置する植立穀稈との間に第二外分草具25を位置させて、第二外分草具25によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草することができ、三条の植立穀稈の刈り取りを行いながら回り刈り作業の形態で刈取り走行を行うことができる。
【0009】
この刈取り走行の場合、第二外分草具25の先端25aの位置と、第二外分草具25が位置する走行機体横端側のクローラ走行装置におけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致又はほぼ一致しているものだから、第二外分草具25の横外側に位置する未刈り地Aの植立穀稈とクローラベルト16との間隔を確保しやすくて、未刈り地Aの植立穀稈のクローラベルト16による踏み付けを回避しやすい。
【0010】
図5(b)は、中割り刈り作業の場合の走行要領を示している。図5(b)に記載の○は、植立穀稈を示している。この図に示すように、第一外分草具22及び第二外分草具25の横外側に未刈り地AあるいはBが位置する状態で、第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間の前方に四条の植立穀稈が位置するように刈取前処理部を植立穀稈に対して位置合わせしながら走行機体を走行させる。
すると、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間を、第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間、及び第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間よりも大に設定してあるものだから、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間に二条の植立穀稈を導入することができ、第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間、及び第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間に一条の植立穀稈を導入することができる。第一外分草具22と第一中分草具23の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Bに位置する植立穀稈との間に第一外分草具22を位置させて、第一外分草具22によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草することができる。第二外分草具25と第二中分草具24の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Aに位置する植立穀稈との間に第二外分草具25を位置させ、第二外分草具25によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草することができ、四条の植立穀稈の刈り取りを行いながら中割り刈り作業形態で刈取り走行を行なうことができる。
【0011】
この刈取り走行の場合、第一外分草具22の先端22aの位置と、第一外分草具22が位置する走行機体横端側のクローラ走行装置におけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、第二外分草具25の先端25aの位置と、第二外分草具25が位置する走行機体横端側のクローラ走行装置におけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致又はほぼ一致しているものだから、第一外分草具22の横外側に位置する未刈り地Bの植立穀稈とクローラベルト16との間隔も、第二外分草具25の横外側に位置する未刈り地Aの植立穀稈とクローラベルト16との間隔も確保しやすくて、両横側の未刈り地A,Bのいずれもの植立穀稈のクローラベルト16による踏み付けを回避しやすい。
【0012】
本第1発明の構成によると、第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と第一外分草具の先端との走行機体横方向での間隔と、第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と第一中分草具の先端との走行機体横方向での間隔とを同一に設定し、第二外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が第二外分草具と第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置し、中引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が第一中分草具と第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置しているものだから、第一外引起し装置、第二外引起し装置及び中引起し装置の仕様を同一にしても、第一外分草具からの植立穀稈が第一外引起し装置によって引起し処理される際の植立穀稈の倒伏角を極力小に済ませながら、かつ第一中分草具からの植立穀稈が第一引起し装置によって引起し処理される際の植立穀稈の引起し爪からのすり抜けを発生しにくくしながら第一外引起し装置による引起し処理を行なわせることができる。
【0013】
したがって、回り刈り作業と中割り刈り作業のいずれの形態での刈取り走行を行なうことができるものでありながら、いずれの形態での刈取り走行を行なう場合も、植立穀稈の引起し時のすり抜けや倒伏に起因したり、未刈り地の植立茎稈のクローラベルトによる踏み付けに起因したりした穀粒の損失を回避しながら作業を行なうことができる。しかも、第一外引起し装置、第二外引起し装置及び中引起し装置として同一仕様の引起し装置を採用して、かつ分草具どうしの間隔を適切な間隔に設定しただけの簡単な構造で済ませて、軽量かつ安価に得ることができる。
【0014】
本第2発明では、前記左右一対のクローラ走行装置のクローラベルトにおける走行機体横方向での外側端どうしの間隔を、前記第一外分草具と前記第二外分草具の先端どうしの間隔よりも大に設定してある。
【0015】
本第2発明の構成によると、左右一対のクローラ走行装置のクローラベルトにおける外側端どうしの間隔を第一外分草具と第二外分草具の先端どうしの間隔よりも大に設定したものだから、回り刈り作業及び中割り刈り作業のいずれの形態で刈取り走行を行なう場合でも、走行地の走行機体横方向での広い範囲にわたってクローラ走行装置を接地させながら走行することができる。
【0016】
したがって、回り刈り作業と中割り刈り作業のいずれの形態での刈取り走行も行なうことができるものでありながら、いずれの形態での刈取り走行を行なう場合も、走行地の走行機体横方向での広い範囲にわたってクローラ走行装置させて安定的に走行しながら作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体を示す側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】コンバインを示す正面図である。
【図4】分草具、クローラ走行装置、引起し装置の配置を示す平面図である。
【図5】(a)は、回り刈り作業を行なう場合の走行要領を示す説明図、(b)は、中割り刈り作業を行なう場合の走行要領を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態に係るコンバインを示す正面図である。これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置10a,10bが装備された走行機体を備え、この走行機体の機体フレーム1の前部に前処理部フレーム21が連結されている刈取前処理部20を備え、走行機体の機体フレーム1の後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置2と穀粒タンク3を備えて構成してある。
【0019】
このコンバインは、稲、麦などの収穫作業を行なうものであり、詳しくは次の如く構成してある。
【0020】
走行機体は、機体フレーム1の前端側の右端部に設けたエンジン4が装備された原動部を備え、エンジン4が出力する駆動力によって左右一対のクローラ走行装置10a,10bを駆動して自走する。走行機体は、エンジン4の上方に設けた運転座席5aが装備された運転部5を備え、この運転部5に搭乗して運転するよう乗用型になっている。
【0021】
図1に示すように、左右のクローラ走行装置10a、10bは、走行機体の機体フレーム1に前後一対の支持フレーム11を介して連結されたトラックフレーム12、機体フレーム1の前端部に設けたミッションケース6に駆動自在に支持されたクローラ駆動輪体13、トラックフレーム12に走行機体前後方向に並べて設けた接地輪体14、トラックフレーム12の後端部に回転自在に設けたクローラ緊張輪体15、各輪体13,14,15にわたって巻回されたゴム製のクローラベルト16を備えて構成してある。
【0022】
刈取前処理部20の前処理部フレーム21は、機体フレーム1に軸芯Pまわりに上下揺動自在に連結されている。刈取前処理部20は、前処理部フレーム21が昇降シリンダ7によって機体フレーム1に対して上下に揺動操作されることにより、刈取前処理部20の前端部に走行機体横方向に並べて設けてある四つの分草具22〜25が圃場面近くに下降した下降作業状態と、四つの分草具22〜25が圃場面から高く上昇した非作業状態とに昇降する。
【0023】
刈取前処理部20を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取前処理部20は、植立穀稈を引起すとともに刈取り、刈り取り穀稈を脱穀装置2の脱穀フィードチェーン2aの始端部に供給する。脱穀装置2は、脱穀フィードチェーン2aによって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送し、これによって刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク3は、脱穀装置2から搬送された脱穀粒を回収して貯留する。
【0024】
刈取前処理部20について詳述する。
図1,2に示すように、刈取前処理部20の前処理部フレーム21は、走行機体の機体フレーム1から走行機体前方向きに軸芯Pまわりに上下揺動自在に延出したメインフレーム21a、及びこのメインフレーム21aの延出端側に走行機体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ配置で連結された四本の走行機体前後向きの分草具支持杆21bを備えて構成してある。
【0025】
刈取前処理部20は、四つの分草具22〜25を備える他、分草具22〜25の走行機体後方側に走行機体横方向に並べて設けた三つの引起し装置26,27,28を備え、分草具支持杆21bの基端側に設けた一つのバリカン形の刈取装置29、刈取装置29の上方から脱穀フィードチェーン2aの始端部の前方にわたって設けた搬送装置30を備えて構成してある。
【0026】
四つの分草具22〜25は、四本の分草具支持杆21bのうちの対応する分草具支持杆21bの前端部に固定されている。
【0027】
図4は、分草具22〜25及びクローラ走行装置10a,10bの配置を示す平面図である。この図及び図3に示すように、四つの分草具22〜25の配置は、四つの分草具22〜25のうち運転部5が位置する側の横端に位置する第一外分草具22とこの第一外分草具22に隣り合って位置する第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間隔D1を、運転部5が位置する側とは反対側の横端に位置する第二外分草具25とこの第二外分草具25に隣り合って位置する第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間隔D3、及び第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間隔D2よりも大に設定した配置になっている。
【0028】
第一外分草具22のクローラ走行装置10a、10bに対する配置は、第一外分草具22の先端22aの位置と、第一外分草具22が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置10b(以下、右側のクローラ走行装置10bと呼称する。)におけるクローラベルト16の走行機体横方向での外側端16aの位置とが走行機体横方向でほぼ一致した配置になっている。すなわち、第一外分草具22の先端22aが右側のクローラ走行装置10bのクローラベルト16の外側端16aに対して走行機体内側に若干位置ずれした配置になっている。
【0029】
第一外分草具22の右側のクローラ走行装置10bに対する配置としては、第一外分草具22の先端22aが右側のクローラベルト16の外側端16aに対して走行機体外側に、若干位置ずれした配置、あるいは、第一外分草具22の先端22aの位置と右側のクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致した配置を採用してもよい。
【0030】
第二外分草具25のクローラ走行装置10a,10bに対する配置は、第二外分草具25の先端25aの位置と、第二外分草具15が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置10a(以下、左側のクローラ走行装置10aと呼称する。)におけるクローラベルト16の走行機体横方向での外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致した配置になっている。
【0031】
第二外分草具25の左側のクローラ走行装置10aに対する配置としては、第二外分草具25の先端15aが左側のクローラ走行装置10aにおけるクローラベルト16の外側端16aに対して走行機体外側に、あるいは走行機体内側に若干位置ずれした配置を採用してもよい。
【0032】
図3,4に示すように、第一外分草具22、第一中分草具23、第二外分草具25は、分草具22,23,25の先端側から後方に位置する引起し装置26,27,28に向かって延出したガイド杆22b,23b,25bを備えており、このガイド杆22b,23b,25bによって植立穀稈の株元側を後方に位置する引起し装置26,27,28に案内する。
【0033】
図5(a)は、回り刈り作業を行なう場合の走行要領を示す説明図である。図5(b)は、中割り刈り作業を行なう場合の走行要領を示す説明図である。図5(a)、図5(b)に記載の○は、植立穀稈を示し、図5(a)に記載の×は、切り株を示す。これらの図に示すように、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間隔D1は、回り刈り作業の場合に一条の植立穀稈を導入でき、中割り刈り作業の場合に二条の植立穀稈を導入できる大きさの間隔になっている。第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間隔D3、及び第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間隔D2は、回り刈り作業の場合にも中割り刈り作業の場合にも一条の植立穀稈を導入できる大きさの間隔になっている。
【0034】
図4に示すように、刈取装置29は、四本の分草具支持杆21bのうちの走行機体横方向での一方の端に位置する分草具支持杆21bと、他方の端に位置する分草具支持杆21bとにわたって設けてあり、刈取装置29の切断作用域は、第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間隔D2にほぼ等しい大きさの切断作用域になっている。
【0035】
図1,2,3に示すように、各引起し装置26,27,28は、前処理部フレーム21に支持された前記引起しケース26a,27a,28aを備え、この引起しケース26a,27a,28aの内部に設けた無端回動形の引起しチェーン31を備えて構成してある。各引起し装置26,27,28の引起しケース26a,27a,28aは、上端側が下端側よりも若干走行機体後方側に位置した傾斜姿勢で支持されている。
【0036】
引起しチェーン31は、引起しケース26a,27a,28aの内部の上端側に駆動自在に位置する輪体32と、引起しケース26a,27a,28aの内部の下端側に遊転自在に位置する輪体33とにわたって巻回されており、上側の輪体32によって駆動されて引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での一端側を上昇移動し、引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での他端側を下降移動する。引起しチェーン31は、これの長手方向に所定間隔で取り付けられた引起し爪34を備えている。各引起し爪34は、引起しチェーン31が引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での一端側を上昇移動する際、引起し爪34の先端側が引起しケース26a,27a,28aから走行機体横向きに突出した取り付け姿勢となって上昇移動して植立穀稈に引起し作用する。
【0037】
三つの引起し装置26,27,28は、図3,4に示す配置になっている。
すなわち、三つの引起し装置26,27,28のうちの第一外分草具22が位置する側の端に位置する第一外引起し装置26は、第一外引起し装置26の引起しケース26aの走行機体横方向での中心26bと第一外分草具22の先端22aとの走行機体横方向での間隔D4と、第一外引起し装置26の引起しケース26aの走行機体横方向での中心26bと第一中分草具23の先端23aとの走行機体横方向での間隔D5とが同一になる配置になっている。
【0038】
第一外引起し装置26は、引起し爪34を引起しケース26aから三つの引起し装置26,27,28のうちの中間に位置する中引起し装置27が位置する側に向けて突出させ、第一外引起し装置26の引起しケース26aと、中引起し装置27における引起しケース27aの引起し側とは反対側に沿わせて設けた引起しガイド35との間を上昇移動する引起し爪34により、第一外分草具22及び第一中分草具24からの植立穀稈の引き起こしを行なう。
【0039】
三つの引起し装置26,27,28のうちの第二外分草具25が位置する側の端に位置する第二外引起し装置28は、第二外引起し装置28における引起しケース28aの走行機体横方向での中心28bが第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの走行機体横方向での間に位置する配置になっている。
【0040】
第二外引起し装置28は、引起し爪34を引起しケース28aから三つの引起し装置26,27,28のうちの中間に位置する中引起し装置27が位置する側に向けて突出させ、第二引起し装置28の引起しケース28aと中引起し装置27の引起しケース27aとの間を上昇移動する引起し爪34により、第二外分草具25及び第二中分草具24からの植立穀稈の引起しを行なう。
【0041】
三つの引起し装置26,27,28のうちの中間に位置する中引起し装置27は、中引起し装置27の引起しケース27aの走行機体横方向での中心27bが第二中分草具24と第一中分草具23の先端24a,23aどうしの走行機体横方向での間に位置する配置になっている。
【0042】
中引起し装置27は、引起し爪34を引起しケース27aから第二外引起し装置28が位置する側に向けて突出させ、中引起し装置27の引起しケース27aと第二外引起し装置28の引起しケース28aとの間を上昇移動する引起し爪34により、第一中分草具23および第二中分草具24からの植立穀稈の引起しを行なう。
【0043】
図4に示すように、搬送装置30は、第一外引起し装置26の後方で、かつ刈取装置29の上方に搬送始端部が位置し、搬送終端部が脱穀フィードチェーン2aの搬送始端部の前方付近に位置した第一搬送装置30aと、第二外引起し装置28及び中引起し装置27の後方で、かつ刈取装置29の上方に搬送始端部が位置し、搬送終端側が第一搬送装置30aの途中に連なった第二搬送装置30bとを備えて構成してある。
【0044】
搬送装置30は、第一外引起し装置26によって引起し処理されるとともに刈取装置29によって刈り取り処理された刈取穀稈を、第一搬送装置30aによって搬送して脱穀フィードチェーン2aに供給する。搬送装置30は、第二外引起し装置28及び中引起し装置27によって引起し処理されるとともに刈取装置29によって刈り取り処理された刈取穀稈を、第二搬送装置30bによって第一搬送装置30aの途中に搬送して、第一搬送装置30aが搬送始端部から搬送してきた刈取穀稈に合流させることにより、脱穀フィードチェーン2aに供給する。
【0045】
図3,4に示すように、左右一対のクローラ走行装置10a,10bのクローラベルト16における走行機体横方向での外側端どうしの間隔D6を、第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間隔D7よりも大に設定してある。
【0046】
つまり、回り刈り作業の場合、図5(a)に示す走行要領で刈取り走行を行なう。図5(a)に記載の○は、植立穀稈を示し、図5(a)に記載の×は、切り株を示す。
すなわち、第一外分草具22が既刈り地Cに位置する状態で、地第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間の前方に三条の植立穀稈が位置するように刈取前処理部20を植立穀稈に位置合わせしながら走行機体を走行させる。すると、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間、第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間、第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間それぞれに一条の植立穀稈を導入することができる。第二外分草具25と第二中分草具24の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Aに位置する植立穀稈との間に第二外分草具25を位置させて、第二外分草具25によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草できて、三条の植立穀稈の刈り取りを行いながら回り刈り作業の形態で刈取り走行を行うことができる。
【0047】
この刈取り走行の場合、第二外分草具25の先端25aの位置と、第二外分草具25が位置する走行機体横端側のクローラ走行装置10aにおけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致していることにより、第二外分草具25の横外側に位置する未刈り地Aの植立穀稈とクローラベルト16との間隔を確保しやすくて、未刈り地Aの植立穀稈のクローラベルト16による踏み付けを回避しながら刈取り走行できる。
【0048】
中割り刈り作業を行なう場合、図5(b)に示す走行要領で刈取り走行を行なう。図5(b)に記載の○は、植立穀稈を示す。
すなわち、第一外分草具22の横外側に未刈り地Bが位置し、第二外分草具25の横外側に未刈り地Aが位置する状態で、第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間の前方に四条の植立穀稈が位置するように刈取前処理部20を植立穀稈に位置合わせしながら走行機体を走行させる。
すると、第一外分草具22と第一中分草具23の先端22a,23aどうしの間に二条の植立穀稈を導入することができ、第一中分草具23と第二中分草具24の先端23a,24aどうしの間、及び第二外分草具25と第二中分草具24の先端25a,24aどうしの間に一条の植立穀稈を導入することができる。第一外分草具22と第一中分草具23の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Aに位置する植立穀稈との間に第一外分草具22を位置させて、第一外分草具22によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草することができる。第二外分草具25と第二中分草具24の間に導入する植立穀稈と、この植立穀稈に隣り合った状態で未刈り地Bに位置する植立穀稈との間に第二外分草具25を位置させ、第二外分草具25によって植立穀稈を刈取対象の植立穀稈と非刈取対象の植立穀稈とに分草することができて、四条の植立穀稈の刈り取りを行いながら中割り刈り形態で刈取り走行を行うことができる。
【0049】
この刈取り走行の場合、第一外分草具22の先端22aの位置と、右側のクローラ走行装置10bにおけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向でほぼ一致し、第二外分草具25の先端25aの位置と、左側のクローラ走行装置10aにおけるクローラベルト16の外側端16aの位置とが走行機体横方向で一致していることにより、第一外分草具22の横外側に位置する未刈り地Bの植立穀稈と右側のクローラ走行装置10bにおけるクローラベルト16との間隔も、第二外分草具25の横外側に位置する未刈り地Aの植立穀稈と左側のクローラ走行装置10aにおけるクローラベルト16との間隔も確保しやすくて、両未刈り地A,Bのいずれもの植立穀稈のクローラベルト16による踏み付けを回避しながら刈取り走行できる。
【0050】
回り刈り作業及び中割り刈り作業のいずれの形態で刈取り走行を行なう場合でも、左右一対のクローラ走行装置10a,10bのクローラベルト16における外側端16aどうしの間隔D6が第一外分草具22と第二外分草具25の先端22a,25aどうしの間隔D7よりも大であることにより、左右一対のクローラ走行装置10a,10bは、走行地の走行機体横方向での広い範囲にわたって接地して走行機体を安定的に走行させる。
【0051】
回り刈り作業及び中割り刈り作業のいずれの形態で刈取り走行を行なう場合でも、第一外引起し装置26における引起しケース26aの走行機体横方向での中心26bと第一外分草具22の先端22aとの走行機体横方向での間隔D4と、第一外引起し装置26における引起しケース26aの走行機体横方向での中心26bと第一中分草具23の先端23aとの走行機体横方向での間隔D5とが同一であることにより、第一外引起し装置26は、引起し爪34を引き起こしガイド35に精度よく沿わせ上昇移動させ、植立穀稈が引起し爪34と引起しガイド35との間からすり抜けることを発生しにくくしながら引起し処理を行う。
【0052】
〔別の実施形態〕
四つの分草具のうちの運転部側の端に位置する分草具とこれに隣り合って位置する分草具の先端どうしの間隔を、運転部側とは反対側の端に位置する分草具とこれに隣り合って位置する分草具の先端どうしの間隔よりも大に設定するに替え、四つの分草具のうちの運転部側とは反対側の端に位置する分草具とこれに隣り合って位置する分草具の先端どうしの間隔を、運転部側の端に位置する分草具とこれに隣り合って位置する分草具の先端どうしの間隔よりも大に設定し、中割り刈り作業の場合に四条の植立茎稈の刈り取りを可能にする構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、中引起し装置として、引起し爪が引起しケースから第一外引起し装置が位置する側に向かって突出するよう構成した引起し装置を採用したコンバインにも利用できる。
【符号の説明】
【0054】
10a,10b クローラ走行装置
16 クローラベルト
16a クローラベルトの外側端
20 刈取前処理部
22 第一外分草具
22a 第一外分草具の先端
23 第一中分草具
23a 第二外分草具の先端
24 第二中分草具
24a 第二中分草具の先端
25 第二外分草具
25a 第二外分草具の先端
26 第一外引起し装置
26a 第一外引起し装置の引起しケース
26b 第一外引起し装置の引起しケースの中心
27 中引起し装置
27a 中外引起し装置の引起しケース
27b 中引起し装置の引起しケースの中心
28 第二外引起し装置
28a 第二外引起し装置の引起しケース
28b 第二外引起し装置の引起しケースの中心
34 引起し爪
D1 第一外分草具と第一中分草具の先端どうしの間隔
D2 第一中分草具と第二中分草具の先端どうしの間隔
D3 第二外分草具と第二中分草具の先端どうしの間隔
D4 第一外引起し装置の引起しケースの中心と第一外分草具の先端との走行機体横方向での間隔
D5 第一外引起し装置26の引起しケース26aの中心と第一中分草具23の先端との走行機体横方向での間隔
D6 クローラベルトの外側端どうしの間隔
D7 第一外分草具と第二外分草具の先端どうしの間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置を有した走行機体を備え、
走行機体横方向に並ぶ四つの分草具を備えた刈取前処理部が前記走行機体の前部に連結され、
引起し爪が引起しケースから走行機体横向きに突出して穀稈に引起し作用する引起し装置の三つを走行機体横方向に並べて前記刈取前処理部に設けてあるコンバインであって、
前記四つの分草具のうちの走行機体横方向での一方の最も端に位置する第一外分草具とこの第一外分草具に隣り合って位置する第一中分草具との先端どうしの間隔を、前記四つの分草具のうちの走行機体横方向での他方の最も端に位置する第二外分草具とこの第二外分草具に隣り合って位置する第二中分草具との先端どうしの間隔、及び前記第一中分草具と前記第二中分草具との先端どうしの間隔よりも大に設定し、
前記第一外分草具の先端の位置と、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記第一外分草具が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向での外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記第二外分草具の先端の位置と、前記左右一対のクローラ走行装置のうちの前記第二外分草具が位置する側の走行機体横端側に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向での外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記三つの引起し装置のうちの前記第一外分草具が位置する側の端に位置する第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と前記第一外分草具の先端との走行機体横方向での間隔と、前記第一外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心と前記第一中分草具の先端との走行機体横方向での間隔とを同一に設定し、
前記三つの引起し装置のうちの前記第二外分草具が位置する側の端に位置する第二外引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が、前記第二外分草具と前記第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置し、
前記三つの引起し装置のうちの中間に位置する中引起し装置における引起しケースの走行機体横方向での中心が、前記第一中分草具と前記第二中分草具の先端どうしの走行機体横方向での間に位置しているコンバイン。
【請求項2】
前記左右一対のクローラ走行装置のクローラベルトにおける走行機体横方向での外側端どうしの間隔を、前記第一外分草具と前記第二外分草具の先端どうしの間隔よりも大に設定してある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−246427(P2010−246427A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97088(P2009−97088)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】