説明

コンバイン

【課題】 コンバインの刈取脱穀作業によって排出される切断藁を、圃場内を満遍なく全面的に拡散排出することができ、この切断藁を堆肥とした土質の改善をむらなく行えるものとする。
【解決手段】 刈取部(3)が所定高さ以上に上昇すると、刈取部(3)と脱穀フィードチエン(13)の駆動を停止し、刈取部(3)が所定の刈高さ位置までに下降すると刈取部が駆動し、刈り始め時の刈取搬送穀稈が脱穀フィードチエン(13)の始端部に受継可能な位置近くにまで達すると、これを検出する穀稈センサ(16)の検出結果に基づき脱穀フィードチエン(13)の駆動を再開するよう連動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されているように、刈取部が所定高さ以上に上昇すると、刈取部と脱穀フィードチェンの駆動を停止し、刈取部が所定の刈高さ位置まで下降すると刈取部と脱穀フィードチェンの駆動を再開するようにした技術は知られている。
【特許文献1】特開平9−74879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
刈取再開時、刈取部及び脱穀部での搬送穀稈停止状態から次の穀稈が刈り取られて所定位置に送られて来るまでに搬送停止穀稈も送られてしまうので、連続搬送とならず間欠的搬送となる。この間欠搬送が各コーナ部の刈取時に発生し、圃場面への切断藁排出状態がまちまちとなり、切断藁が排出されない所や、2重に排出される所も発生し、圃場面での均一な全面拡散が行えない問題があった。
【0004】
本発明の課題は、上記問題点を解消し、圃場面に排出される切断藁が全面的に満遍なく拡散処理されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、刈取部(3)が所定高さ以上に上昇すると、刈取部(3)と脱穀フィードチェン(13)の駆動を停止し、刈取部(3)が所定の刈高さ位置までに下降すると刈取部が駆動し、刈り始め時の刈取搬送穀稈が脱穀フィードチェン(13)の始端部に受継可能な位置近くにまで達すると、これを検出する穀稈センサ(16)の検出結果に基づき脱穀フィードチェン(13)の駆動を再開するよう連動してあることを特徴とするコンバインとする。
【0006】
一行程の刈り終わり時に、刈取部(3)を所定高さ以上に上昇させると、刈取部の駆動が停止し、刈取部の終端に設けられた穀稈センサ(16)が刈取搬送穀稈の最終穀稈であることを検出すると、この検出結果に基づいて脱穀フィードチェン(13)の駆動が停止する。
【0007】
そして、次の行程の刈り始め時に、刈取部を所定の刈高さ位置まで下降させると刈取部が駆動し、前記の穀稈センサ(16)が刈り始め時の刈取搬送穀稈の最初に送られてきた穀稈であることを検出すると、この検出結果に基づき脱穀フィードチェン(13)の駆動が再開する。
【0008】
刈り始め時、刈取搬送穀稈が穀稈センサ部に搬送されてくるまでは脱穀フィードチェンは停止したままであり、穀稈センサが穀稈の存在を検出して初めて脱穀フィードチェンが駆動する。そのため、搬送穀稈の間欠(途切れ)部分が減少し、圃場面に排出される切断藁の空白地帯と2重排出部分が減少し、全面的に拡散排出が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、刈取部(3)の搬送終端部或は脱穀部に搬送穀稈が停止している状態から刈り始めても、刈取搬送穀稈が穀稈センサ(16)部に搬送されるまでは脱穀フィードチェン(13)は停止したままであり、穀稈センサ(16)が穀稈の存在を検出して初めて脱穀フィードチェン(13)が駆動するため、搬送穀稈の間欠部分が減少し、圃場面に排出される切断藁は、圃場内を満遍なく全面的に拡散排出することができ、この切断藁を堆肥とした土質の改善をむらなく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
コンバインは、主として立毛穀稈を刈り取って搬送する走行クローラ2を具備した車体1前部の刈取部3と、刈取部3から搬送供給される穀稈を脱穀処理する車体後部の脱穀部4とからなる。
【0011】
刈取部3は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体5,5…、分草後の穀稈を引き起す6条分の穀稈引起し装置6…、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式の刈取装置7、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置8、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送し後方の脱穀部4に搬送供給する刈取穀稈搬送装置9等からなり、車体に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた刈取縦フレーム17及び該刈取縦フレームの先端に左右横方向に沿わせて設けた刈取横フレーム18に装備している。刈取穀稈搬送装置9の終端側には、穀稈を扱深さ調節チェン10を介して脱穀部4側に搬送供給する株元側供給チェン11と穂先側ラグ付き供給チェン12が上下に配して設けられ、前記脱穀部4の脱穀フィードチェン13に適正姿勢で穀稈を受け継ぎさせるように配置構成している。
【0012】
穀稈の株元側を受け継いで挟持搬送する脱穀フィードチェン13の穀稈穂先側には、前記供給チェン11からの穀稈を引き継いで搬送する引継ぎ搬送チェン14が設けられ、脱穀フィードチェンと連動して回転する構成としている。
【0013】
エンジンEの回転動力は、刈取クラッチ19を介して刈取部3に伝達されると共に、脱穀部4には脱穀クラッチ20を介して動力が伝達されるようになっている。刈取クラッチ19及び脱穀クラッチ20は、刈脱クラッチレバー21a,21bによって入り切り操作される。脱穀クラッチ20の入りの状態では扱胴15、脱穀フィードチェン13、唐箕等の選別装置が駆動されるようになっている。脱穀フィードチェン13を駆動する駆動スプロケット22への回転動力は制御モータ23によりチェン断続クラッチ24を介して断続制御する構成としている。
【0014】
刈取昇降レバー25の操作で、刈取部3を所定高さ以上まで上昇させると、刈取部3への刈取クラッチ19が切り、且つ、後記する穀稈存否検出用の穀稈センサ16を介して脱穀フィードチェン13へのチェン断続クラッチ24も切りとなり、刈取部3の回転駆動停止後に脱穀フィードチェン13が停止するようになっている。また、刈取部3を所定の刈高さ位置まで下降させると、刈取部の駆動が再開され、脱穀フィードチェン13の駆動は前記穀稈センサ16の穀稈存在検出結果に基づき再開されるようになっている。
【0015】
脱穀部4の後部側には脱穀後の排藁を搬出する排藁搬送チェン30が配設され、脱穀フィードチェン13とは別駆動構成になっている。排藁搬送チェン30の終端側には搬出後の排藁を切断処理する排藁カッターCが配備されている。排藁搬送チェン30は、該チェン30への駆動を入り切りする排藁クラッチ31が設けられ、排藁制御モータ32によって排藁クラッチ31を入り切り作動させるように連動構成している。前記穀稈センサ16のON.OFFにより、コントローラから脱穀フィードチェンの制御モータ23と排藁搬送チェン30の排藁制御モータ32に駆動・停止の指令が入力されるようになっている。従って、刈取部「下げ」で前進中の時、穀稈センサ16がONになれば、脱穀フィードチェン13・排藁搬送チェン30が駆動し、OFFになれば、脱穀フィードチェン13・排藁搬送チェン30とも駆動が停止する。
【0016】
刈取搬送穀稈の存否を検出する前記穀稈センサ16は、刈取穀稈搬送装置9終端側の株元側供給チェン11の終端近くに設置されている。一行程の刈り終わり時に、刈取部3を所定高さ以上に上昇させると、刈取部の駆動が停止し、穀稈センサ16がこのセンサ部まで送られてくる刈取搬送穀稈の最終穀稈であることを検出すると、この検出結果に基づいて脱穀フィードチェン13の駆動が停止する。
【0017】
そして、次行程の刈り始め時に、刈取部を所定の刈高さ位置まで下降させると刈取部の駆動が再開され、穀稈センサ16が刈り始め時の刈取搬送穀稈の最初に送られてきた穀稈であることを検出すると、該センサ16のON動作により、その検出結果をコントローラ27に送信し、コントローラ27はその入力信号に基づき出力信号を発進し、制御モータ23を駆動してチェン断続クラッチ24を「入り」にし、脱穀フィードチェン13の駆動が再開されるようになっている。
【0018】
要するに、脱穀フィードチェン13は、穀稈センサが穀稈存在検出状態のON、刈取部「下げ」で機体「前進」時のみ駆動され、穀稈センサ16が穀稈不存在検出状態のOFFの時には必ず停止するようになっている。また、刈取部の駆動条件としては、穀稈センサによる穀稈存否検出結果に関係なく、刈取部「下げ」、機体「前進」時においてのみ成立する。
i.穀稈センサがOFFで、直ちに脱穀フィードチェンが停止すると、刈脱引継ぎ部(刈取穀稈搬送終端部と脱穀フィードチェン始端部との引継ぎ部)で穀稈が残り稈の落下や搬送乱れが生じる。
ii.穀稈センサがONで一定時間後に脱穀フィードチェンが駆動すれば、脱穀フィードチェン部で停止していた穀稈と刈取部から送られてきた穀稈との間欠部分が減少するが、穀稈が脱穀フィドチェンに送られても脱穀フィードチェンが駆動していない場合もあり、この時は稈詰りや搬送穀稈の停滞が発生する。
【0019】
そこで、上記問題点は、次のような技術的手段を講じることによって解決することができた。すなわち、
i.穀稈センサがON→OFFした後、一定時間後に脱穀フィードチェンが停止するようにする。
ii.穀稈センサがOFF→ONになれば、直ちに脱穀フィードチェンが駆動を開始するようにする。
【0020】
従って、i脱穀フィードチェン停止時には脱穀フィードチェン部に穀稈が残らない。また、ii刈取部から送られてきた穀稈よりも先に脱穀フィードチェンが確実に駆動するので、稈詰りや搬送穀稈の停滞が発生しない。
【0021】
また、(1)穀稈センサがON→OFFした後、一定時間後に脱穀フィードチェンが停止し、(2)穀稈センサがOFF→ONした後、一定時間後に脱穀フィードチェンが駆動する構成とし、更に、(3)上記一定時間を、作業速が速い時は時間が短く、遅い時は長くなるように制御する。
【0022】
穀稈センサがOFFで、即、脱穀フィードチェンが停止すると、刈脱引継ぎ部で穀稈が残り、稈の落下や搬送乱れが生じるが、上記(1)及び(3)の構成により解決することができる。穀稈センサがONで、即、脱穀フィードチェンが駆動すれば、脱穀フィードチェン部で停止していた穀稈と刈取部から送られてきた穀稈との間が間欠搬送となるが、上記(2)及び(3)の構成により解決でき、連続搬送によって圃場面に排出される切断藁が全面拡散となる。
【0023】
また、次のような技術的手段を講じることによっても問題解決を図ることができる。すなわち、穀稈センサ16が穀稈の存在を感知してから穀稈が脱穀フィードチェン13に到達する時間を車速、刈取搬送速度からコントローラで演算して、脱穀フィードチェンを駆動させるようにし、しかも、その演算値より早く脱穀フィードチェンを駆動させる構成である。これによれば、従来のように、穀稈センサがOFFで、即、脱穀フィードチェンが停止しないため、刈脱引継ぎ部に穀稈が残らない。しかも、穀稈センサがONで、即、脱穀フィードチェンが駆動しないため、間欠搬送をなくし、連続搬送によって圃場面に排出される切断藁が全面拡散となる。なお、上記構成において、穀稈センサON後、車速、刈取搬送速度をコントローラにて演算し、該穀稈センサに穀稈が到達する時間を過ぎても穀稈センサがONにならない場合はセンサ異常と判断し、従来の穀稈センサ無しの制御とすることができる。
【0024】
図4及び図5に示すように、脱穀フィードチェン13の駆動・停止を決定する穀稈センサ16を挟持レール13aの始端部より上手方向に複数個設け、上手側センサ16aがONになれば、脱穀フィードチェン13を駆動し、下手側センサ16bがOFFになれば、脱穀フィードチェンが停止するように構成することができる。これによれば、穀稈センサが一個だけのものより更なる効果を発揮することができる。なお、上手側の穀稈センサ16aがON→OFFに変化することなく、OFFを維持した状態で下手側の穀稈センサ16bがONになった場合は、上手側の穀稈センサ16aが異常と判断し、全面拡散制御を止めて、従来の穀稈センサ無し制御とすることができる。
【0025】
また、図2において、穀稈センサ16の左右方向一直線上に扱深さ制御用の株元・穂先センサ33a,33bを配置し、穀稈センサが扱ぎ深さの自動制御をON・OFFさせるセンサとしても機能(穀稈センサが扱深さ制御のON・OFFセンサを兼用)するように構成することで、扱深さ制御ON・OFFの切り替わり時に相前後して搬送穀稈が株元・穂先センサ部を通過するので、穀稈未感知による供給調節の誤作動がなくなる。また、センサ構成の簡素化も図ることができる。
【0026】
前記扱深さ制御用の株元センサ33aと穂先センサ33bのいづれかがONした状態で、前記穀稈センサ16がOFFの時は、該穀稈センサが異常と判断して、従来の穀稈センサ無しの制御とすればよい。或は脱穀クラッチレバーONであれば、無条件に脱穀フィードチェンを駆動する。穀稈センサの異常判定をすることで、稈詰りを解消することができる。
【0027】
図6に示す実施例は、脱穀フィードチェン13の後方の排藁搬送チェン30によって穀稈を排藁カッターCへ搬送するコンバインにおいて、排藁搬送チェン30を脱穀フィードチェン13と平行に設置する構成であり、排藁カッター部の株元側はカッター側に下り傾斜の傾斜案内板35を設けて排藁が下向きに落ち込むように構成している。排藁搬送チェンを脱穀フィードチェン後方に平行状に設けることで、排藁カッターの配置をコンパクト化でき、脱穀フィードチェンから排藁搬送チェンへの排藁の引継ぎも良好に行える。
【0028】
また,図7に示す実施例では、脱穀フィードチェン13を後方まで延長して設けて排藁搬送チェンを兼用する構成としている。この後方に配設する排藁カッターCはできるだけフィードチェン側(左側)に寄せることができるので、カッター右側のスペースをグレンタンクGの一部G1として有効利用することができ、容量アップを図ることができる。また、搬送経路が一本化しているので、連続した搬送が円滑に行え、構成も簡単で安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバイン要部の側面図
【図2】コンバイン要部の平面図
【図3】制御ブロック図
【図4】コンバイン要部の概略平面図
【図5】制御ブロック図
【図6】別実施例のコンバインの平面図
【図7】別実施例のコンバインの平面図
【符号の説明】
【0030】
3 刈取部
13 脱穀フィードチェン
16 穀稈センサ
23 制御モータ
24 チェン断続クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部(3)が所定高さ以上に上昇すると、刈取部(3)と脱穀フィードチェン(13)の駆動を停止し、刈取部(3)が所定の刈高さ位置までに下降すると刈取部が駆動し、刈り始め時の刈取搬送穀稈が脱穀フィードチェン(13)の始端部に受継可能な位置近くにまで達すると、これを検出する穀稈センサ(16)の検出結果に基づき脱穀フィードチェン(13)の駆動を再開するよう連動してあることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−75109(P2010−75109A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248411(P2008−248411)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】