説明

コンバイン

【課題】脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態又は手扱脱穀作業状態でのいずれであっても、処理物をチャフシーブで精度良く選別することができるコンバインを提供する。
【解決手段】チャフシーブ53の開度を調節するチャフシーブアクチュエータ130と、排藁量を検出する排藁量検出装置160と、チャフシーブ53上の処理物の量を検出する処理物量検出装置163と、刈取脱穀作業状態と、手扱脱穀作業状態とを検出する脱穀作業状態検出装置120と、チャフシーブアクチュエータ130を制御して、チャフシーブ53の開度をあらかじめ設定された基準値から変更する制御装置12とを備え、制御装置12は刈取脱穀作業状態時、チャフシーブアクチュエータ130を排藁量検出装置160の検出値に基づいて制御し、手扱脱穀作業状態時、チャフシーブアクチュエータ130を処理物量検出装置163の検出値に基づいて制御するコンバイン1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳細には、選別部のチャフシーブ及び唐箕ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁量に応じて、選別部のチャフシーブの開度を自動的に調節可能としたコンバインは公知となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排藁量に応じてチャフシーブの開度を自動調節するようにしたコンバインの脱穀装置(選別部)において、フィードチェンの駆動及び刈取スイッチのオフでもって手扱脱穀作業状態と判別する手扱きモード手段を備え、手扱脱穀作業状態判別時にチャフシーブの開度を設定より一定値開き制御するように設けたコンバインの脱穀装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に示すような脱穀装置を備えるコンバインにおいては、脱穀後の排藁量を検出する排藁量検出装置は、排藁チェンと挟扼杆とにより挟持されつつ搬送される排藁の層厚によって排藁量を検出する。そして、チャフシーブの開閉が当該排藁量検出装置で検出される排藁量に応じて自動調節される。
【0005】
また、このようなコンバインにおいては、刈取部及び脱穀部が作動している刈取脱穀作業状態の場合には、脱穀後の排藁が連続的に排藁量検出装置へ搬送されるため、排藁の検出が安定して行われる(排藁の検出タイミングが安定している)。よって、排藁量検出装置と連動するチャフシーブの開閉も排藁量検出装置で検出される排藁量に応じて安定して行われ、処理物をチャフシーブで精度良く選別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3607458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示すような脱穀装置を備えるコンバインにおいては、刈取部が停止し、かつ脱穀部が作動している手扱脱穀作業状態の場合には、脱穀後の排藁が間欠的に排藁量検出装置へ搬送されるため、排藁の検出タイミングが不安定となって、排藁量検出装置と連動するチャフシーブの開閉が不安定となる。よって、チャフシーブの開閉による処理物の選別ロスが生じるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態又は手扱脱穀作業状態でのいずれであっても、処理物をチャフシーブで精度良く選別することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、第1の発明に係るコンバインは、穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を選別する選別部と、を備えるコンバインであって、前記選別部のチャフシーブの開度を調節可能なチャフシーブアクチュエータと、脱穀後に搬送される排藁量を検出する排藁量検出装置と、前記チャフシーブ上の処理物の量を検出する処理物量検出装置と、前記刈取部及び前記脱穀部が作動して穀稈が処理される刈取脱穀作業状態と、前記刈取部が作動せず脱穀部が作動して穀稈が処理される手扱脱穀作業状態と、を検出する脱穀作業状態検出装置と、前記チャフシーブアクチュエータを前記排藁量検出装置又は前記処理物量検出装置の検出値に基づいて制御して、前記チャフシーブの開度をあらかじめ設定された基準値から変更する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記刈取脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブアクチュエータを前記排藁量検出装置の検出値に基づいて制御し、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブアクチュエータを前記処理物量検出装置の検出値に基づいて制御するものである。
【0011】
第2の発明に係るコンバインは、前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブの開度の基準値を、前記刈取脱穀作業状態時の前記基準値より大きく変更するものである。
【0012】
第3の発明に係るコンバインは、前記選別部の唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータを備え、前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記唐箕アクチュエータを制御し、回転駆動中の前記唐箕ファンの風量を、前記刈取脱穀作業状態時の前記唐箕ファンの風量よりも低減するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
第1の発明に係るコンバインにおいては、脱穀作業状態に応じて、チャフシーブの開度調節における制御を適切に変更することができる。従って、脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態又は手扱脱穀作業状態でのいずれであっても、処理物をチャフシーブで精度良く選別することができる。
【0015】
第2の発明に係るコンバインにおいては、チャフシーブ上の処理物の量が刈取脱穀作業状態に比べて減少する手扱脱穀作業状態において、チャフシーブ上の処理物をチャフシーブの下へ円滑に落下させることができる。その結果、処理物が唐箕ファンからの選別風の影響を受け過ぎず、処理物の飛散量が少なくなる。従って、3番ロス(処理物の機体外部への損失)を低減することができる。
【0016】
第3の発明に係るコンバインにおいては、チャフシーブ上の処理物の量が刈取脱穀作業状態に比べて減少する手扱脱穀作業状態において、処理物が唐箕ファンからの選別風の影響を受け過ぎず、処理物の飛散量が少なくなる。従って、3番ロス(処理物の機体外部への損失)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係るコンバインの側面図。
【図2】脱穀部及び選別部を示す側面断面図。
【図3】角度調節装置及び風量調節装置を示す側面図。
【図4】選別制御の構成を示す概略図。
【図5】コンバインの脱穀作業状態を移行する条件を示す図。
【図6】選別制御に用いるマップを示す図。(a)波形を示す図。(b)第1ギヤアーム角度とチャフフィン角度との関係を示す図。(c)選別ダイヤル角度と選別ダイヤル補正角度との関係を示す図。(d)排藁センサ角度と排藁補正角度との関係を示す図。
【図7】選別制御に用いるマップを示す図。(a)シーブセンサ角度とシーブ補正角度との関係を示す図。(b)唐箕ダイヤル角度と唐箕ダイヤル補正補正角度との関係を示す図。(c)排藁センサ角度と排藁補正回転数との関係を示す図。(d)シーブセンサ角度とシーブ補正回転数との関係を示す図。
【図8】制御装置におけるチャフシーブアクチュエータ及び唐箕アクチュエータの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、コンバイン1においては、走行部2が機体の下部に設けられ、刈取部3が機体の前部に昇降可能に設けられる。また、脱穀部4が機体の左上側に配置され、選別部5が機体の左下側で脱穀部4の下方に配置される。さらに、穀粒貯溜部6が機体の右後側に配置され、排藁処理部7が機体の後側で脱穀部4及び選別部5の後方に配置される。そして、操縦部8が機体の右前側に配置される。
【0021】
そして、コンバイン1は、操縦部8における各種操作に応じて、動力をエンジン9から各部に適宜に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を機体外部へ排出可能に穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により処理して機体外部へ排出することができるように構成される。
【0022】
次に、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備える。扱胴42は前後方向の回転軸回りに回転可能に設けられる。受網45は扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように配置される。フィードチェン41は扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置される。
【0024】
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。揺動選別装置50は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置される。
【0025】
風選別装置は、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を有し、吸引ファン59を除いて揺動選別装置50の下方に配置される。穀粒搬送装置は、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、二番還元装置156を有し、揺動選別装置50の下方及び右側方に配置される。
【0026】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が受網45より漏下し、選別部5へ落下する。
【0027】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0028】
そして、チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑等が、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
【0029】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃等は、吸引ファン59により吸引されて排出される。藁屑等は、三番口から外部に排出される。
【0030】
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンクに搬送されて、グレンタンクに貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置50及び風選別装置により再選別される。
【0031】
次に、揺動選別装置50のチャフシーブ53の構成について説明する。
【0032】
図2及び図3に示すように、チャフシーブ53は、選別部5の前後中途部上側に配置される。チャフシーブ53は、多数のチャフフィン16・16・・・と、左右一対の第1枢支片137・137と、左右一対の第2枢支片138・138等から構成される。多数のチャフフィン16・16・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第1枢支片137・137及び左右の第2枢支片138・138の間に横架される。左側の第1枢支片137及び第2枢支片138には、後述する角度調節装置13の調節レバー134が枢結される。
【0033】
図3に示すように、角度調節装置13は、チャフフィン16の角度を調節するための装置である。角度調節装置13は、電動式モータからなるチャフシーブアクチュエータ130と、第1ギヤ131と、ワイヤ132と、調節レバー134と、付勢部材136等を備える。角度調節装置13は、多数のチャフフィン16・16・・・の角度を予め設定された角度に対して増大又は減少するように調節する。
【0034】
このようなチャフシーブ53において、チャフシーブアクチュエータ130が駆動することによって、調節レバー134が回動し、その回動に応じてチャフフィン16の水平方向に対する角度(以下、「チャフフィン角度θ」と記す)が変化する。ここで、チャフフィン16の角度が小さくなると、隣り合うチャフフィン16・16の間隔(最短距離)が狭まり、チャフシーブ53の開度が減少することとなる。チャフフィン16の角度が大きくなると、隣り合うチャフフィン16・16の間隔(最短距離)が広がり、チャフシーブ53の開度が増大することとなる。
【0035】
次に、風選別装置の唐箕ファン17の構成について説明する。
【0036】
図2及び図3に示すように、唐箕ファン17は、選別部5の前部下側に配置される。唐箕ファン17は、回転軸171や複数の羽根体172・172・・・等から構成される。唐箕ファン17は左右方向の回転軸回りに回転可能に設けられる。
【0037】
唐箕ファン17には、唐箕ファン17の風量を調節するための風量調節装置14が設けられる。風量調節装置14は、電動式モータからなる唐箕アクチュエータ140と、カム機構144・145と、ベルト147と、唐箕ファンプーリ148等を備える。風量調節装置14は、唐箕ファン17の風量を予め設定された初期風量(基準回転数)に対して増大又は減少するように調節する。
【0038】
図3に示すように、唐箕ファン17の回転軸171には風量調節装置14の唐箕ファンプーリ148が設けられ、エンジン9からの動力が当該唐箕ファンプーリ148にベルト147等を介して伝達可能とされる。そして、唐箕ファンプーリ148が、その溝幅を唐箕アクチュエータ140によりカム機構144・145等を介して変更可能とする。
【0039】
このような唐箕ファン17において、唐箕アクチュエータ140が駆動することによって、唐箕ファンプーリ148の溝幅が変化する。動力がエンジン9から唐箕ファンプーリ148に伝達されている場合、唐箕ファンプーリ148の溝幅が狭まると、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン回転数Nが減少して、唐箕ファン17の風量が減少することとなる。唐箕ファンプーリ148の溝幅が広くなると、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン回転数Nが増大して、唐箕ファン17の風量が増大することとなる。
【0040】
次に、チャフシーブアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御構成について説明する。
【0041】
図4に示すように、コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バス等を備える。制御装置12には、第1設定操作具84と、第2設定操作具85と、排藁量検出装置160と、処理物量検出装置163と、チャフ角度検出装置167と、唐箕風量検出装置170と、脱穀作業状態検出装置120と、が接続される。さらに、制御装置12には、チャフシーブアクチュエータ130と、唐箕アクチュエータ140とが接続される。
【0042】
第1設定操作具84は、チャフフィン16の角度を人為的に補正するものである。第1設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第1設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、ダイヤル84aの角度(以下、「選別ダイヤル角度A」と記す)がセンサ部84bで検出される。センサ部84bは、選別ダイヤル角度Aを検出信号として制御装置12に送信する。
【0043】
第2設定操作具85は、唐箕ファン17の風量を人為的に補正するものである。第2設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第2設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、ダイヤル85aの角度(以下、「唐箕ダイヤル角度E」と記す)がセンサ部85bで検出される。センサ部85bは、唐箕ダイヤル角度Eを検出信号として制御装置12に送信する。
【0044】
排藁量検出装置160は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される排藁の量を検出する装置である。
【0045】
ここで、排藁搬送装置71は、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76等から構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
【0046】
排藁量検出装置160は、アーム部161と、ポテンショメータ等からなるセンサ部162とを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出装置160では、アーム部161の一端部がセンサ部162の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部161の他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部161がその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部161の角度(以下、「排藁センサ角度B」と記す)が、センサ部162で検出される。センサ部162は、排藁センサ角度Bを検出信号として制御装置12に送信する。
【0047】
処理物量検出装置163は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ53上の処理物量を検出する装置である。処理物量検出装置163は、検出板164と、復帰板165と、ポテンショメータ等からなるセンサ部166とを有し、チャフシーブ53の上方に配置される。処理物量検出装置163では、検出板164の一端部が、センサ部166の回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板164の他端部が、検出板164が初期位置にあるとき、チャフフィン16から所定距離だけ上方に位置するように配置される。当該所定距離とは、揺動選別装置50が揺動選別を行う場合に、処理物量検出装置163の検出板164及び復帰板165がチャフフィン16と干渉することがない程度の距離とする。復帰板165が検出板164の後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板164に接触する場合には、検出板164が処理物の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動される。一方、処理物が検出板164に接触しない場合には、検出板164が復帰板165の重みにより初期位置に保持される。そして、検出板164の角度(以下、「シーブセンサ角度C」と記す)がセンサ部166で検出される。センサ部166は、シーブセンサ角度Cを検出信号として制御装置12に送信する。
【0048】
図3に示すように、チャフ角度検出装置167は、チャフフィン16の角度を検出する装置である。チャフ角度検出装置167は、アーム部168と、ポテンショメータ等からなるセンサ部169と、を備える。チャフ角度検出装置167では、アーム部168の一端部がセンサ部169の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられる。アーム部168は、チャフシーブアクチュエータ130の駆動量に応じて上下方向へ回動する。そして、アーム部168の角度(以下、「第1ギヤアーム角度D」と記す)がセンサ部169で検出される。センサ部169は、第1ギヤアーム角度Dを検出信号として制御装置12に送信する。
【0049】
図2及び図3に示すように、唐箕風量検出装置170は、唐箕ファン17により前被覆板173から選別方向の下手側向けて送られる唐箕ファン17の風量を検出する装置である。唐箕風量検出装置170は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン17の回転軸171の近傍に配置される。唐箕風量検出装置170では、唐箕ファン17が回転駆動される場合、回転軸171の回転速度に応じた波形F(図6(a))が検出される。唐箕風量検出装置170は、検出された波形Fを、制御装置12に送信する。
【0050】
脱穀作業状態検出装置120は、脱穀作業状態が、刈取部3及び脱穀部4が作動する刈取脱穀作業状態(刈取部3で刈り取られた穀稈が脱穀部4に供給されて脱穀が行われる脱穀作業状態)と、刈取部3が停止し脱穀部4が作動する手扱脱穀作業状態(手作業で穀稈が脱穀部4に供給されて脱穀が行われる脱穀作業状態)と、刈取部3及び脱穀部4が停止している待機状態と、のいずれの脱穀作業状態であるかを検出するものである。本実施形態において、脱穀作業状態検出装置120は、刈取「入」「切」検出手段121と、脱穀「入」「切」検出手段122とから構成される。
【0051】
刈取「入」「切」検出手段121は、刈取部3への動力を入り切りする刈取クラッチを操作するための刈取クラッチレバーの操作位置を検出するものであり、スイッチにより構成されている。刈取クラッチレバーが「入」位置に回動操作されると、スイッチがONとなり検出信号が制御装置12に送信される。但し、本実施形態では検知手段としてスイッチを用いているが、非接触センサ等を用いることも可能であり、その構成は特に限定するもではない。また、本実施形態では刈取クラッチレバーの「入」「切」位置を検出しているが、刈取部3への動力を入り切りを検出するものであれば限定するものではない。
【0052】
脱穀「入」「切」検出手段122は、脱穀部4への動力を入り切りする脱穀クラッチを操作するための脱穀クラッチレバーの操作を検出するものであり、スイッチにより構成されている。脱穀クラッチレバーが「入」位置に回動操作されると、スイッチがONとなり検出信号が制御装置12に送信される。但し、本実施形態では検知手段としてスイッチを用いているが、非接触センサ等を用いることも可能であり、その構成は特に限定するもではない。また、本実施形態では脱穀クラッチレバーの「入」「切」位置を検出しているが、脱穀部4への動力を入り切りを検出するものであれば限定するものではない。
【0053】
以上の第1設定操作具84、第2設定操作具85、排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、チャフ角度検出装置167、唐箕風量検出装置170、脱穀作業状態検出装置120の具体的な構成は、特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
【0054】
次に、コンバイン1における脱穀作業状態について説明する。
【0055】
図5に示すように、コンバイン1における脱穀作業状態には、待機状態と、刈取脱穀作業状態と、手扱脱穀作業状態と、がある。
【0056】
コンバイン1の脱穀作業状態おける「待機状態(待機モード)」とは、刈取部3及び脱穀部4がともに作動していない状態をいう。コンバイン1において、電源投入時には脱穀作業状態が待機状態となっている。脱穀作業状態が「待機状態」である場合、刈取クラッチレバー及び脱穀クラッチレバーは「切」位置となっており、脱穀作業状態検出装置120、即ち、刈取「入」「切」検出手段121及び脱穀「入」「切」検出手段122は、各クラッチレバーの操作位置が「切」位置にあることを検出する。
【0057】
また、コンバイン1の脱穀作業状態おける「刈取脱穀作業状態(刈取脱穀モード)」とは、刈取部3及び脱穀部4が作動して、穀稈が刈取部3及び脱穀部4で順に処理される状態をいう。即ち、穀稈が刈取部3で刈り取られ、刈り取られた穀稈が脱穀部4へ搬送されて脱穀される状態をいう。コンバイン1の脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」である場合、刈取クラッチレバー及び脱穀クラッチレバーは「入」位置となっており、脱穀作業状態検出装置120、即ち、刈取「入」「切」検出手段121及び脱穀「入」「切」検出手段122は、各クラッチレバーの操作位置が「入」位置にあることを検出する。
【0058】
ここで、コンバイン1においては、穀稈が刈取部3において刈り取られ始める段階であるため、脱穀部4から排藁搬送装置71へ排藁が搬送されておらず、搬送されるまでに所定時間を要する。そのため、コンバイン1の脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」である場合には、さらに、排藁量検出装置160において、排藁センサ角度Bが閾値以上であることを検出する。排藁量検出装置160において、排藁センサ角度Bが閾値以上であることが検出されることで、脱穀部4から排藁搬送装置71へ排藁が搬送されている状態、即ち、刈取部3で刈り取られた穀稈がすでに脱穀部4で脱穀されている状態、にあると判断される。なお、当該閾値は、実験や数値計算等の結果に基づいて予め任意に定められる。
【0059】
さらに、コンバイン1の脱穀作業状態おける「手扱脱穀作業状態(手扱モード)」とは、刈取部3が作動せず脱穀部4が作動して、穀稈が脱穀部4で処理される状態をいう。即ち、穀稈が人手により脱穀部4へ供給され、当該脱穀部4で脱穀されている状態をいう。コンバイン1の脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合、刈取クラッチレバーは「切」位置となり、脱穀クラッチレバーは「入」位置となる。そして、脱穀作業状態検出装置120の刈取「入」「切」検出手段121は、刈取クラッチレバーの操作位置が「切」位置にあることを検出し、脱穀作業状態検出装置120の脱穀「入」「切」検出手段122は、脱穀クラッチレバーの操作位置が「入」位置にあることを検出する。
【0060】
次に、「待機状態」と「刈取脱穀作業状態」と「手扱脱穀作業状態」との関係について、図5に基づいて説明する。
【0061】
コンバイン1は、脱穀作業状態が「待機状態」である場合に、刈取クラッチレバー及び脱穀クラッチレバーの操作位置が「入」位置とされると、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取り、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀して、脱穀後の穀稈を排藁として排藁処理部7に搬送する。そして、排藁センサ角度Bが閾値以上となると、コンバイン1の脱穀作業状態は、「刈取脱穀作業状態」となる(矢印90)。
【0062】
また、コンバイン1の脱穀作業状態が「待機状態」にある場合において、刈取クラッチレバーの操作位置が「切」位置とされ、脱穀クラッチの操作位置が「入」位置とされると、コンバイン1の脱穀作業状態は、「手扱脱穀作業状態モード」へ移行する(矢印91)。
【0063】
コンバイン1は、脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合において、刈取クラッチレバーの操作位置を「入」位置として刈取作業を行い、穀稈が脱穀されて排藁が排藁処理部7に至り、排藁センサ角度Bが閾値以上となると、コンバイン1の脱穀作業状態は、「手扱脱穀作業状態」から「刈取脱穀作業状態」へ移行する(矢印92)。
【0064】
また、コンバイン1の脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」又は「手扱脱穀作業状態」にある場合において、刈取クラッチレバーの操作位置が「切」位置とされ、脱穀クラッチレバーの操作位置が「切」位置とされると、コンバイン1の脱穀作業状態は、「待機状態」へ移行する(矢印93、矢印94)。
【0065】
まず、制御装置12におけるチャフシーブアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御態様について説明する。
【0066】
制御装置12は、チャフシーブアクチュエータ130を駆動制御することにより、図4に示すチャフフィン16の水平方向に対する角度(チャフフィン角度θ)を調節して、チャフシーブ53の開度を変更する。
【0067】
制御装置12には、図6(b)に示す第1ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、チャフ角度検出装置167で検出された第1ギヤアーム角度Dに基づいて、当該マップからチャフフィン角度θを算出して記憶する。制御装置12は、チャフフィン角度θを随時更新する。なお、図6(b)に示すマップは一例であり、第1ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により予め決定される。
【0068】
そして、制御装置12は、上記マップから算出されるチャフフィン角度θが、コンバイン1における脱穀作業状態ごとに算出されるチャフフィン角度目標値θと一致するように、チャフフィン角度θを調節する。
【0069】
ここで、チャフフィン角度目標値θとは、チャフシーブアクチュエータ130によってチャフフィン角度θを調節する際のチャフフィン角度θの目標値である。
【0070】
また、制御装置12は、唐箕アクチュエータ140を駆動制御することにより、唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)を調節する。ここで、制御装置12は、図6(a)に示す唐箕風量検出装置170の出力波形Fに基づいて、唐箕ファン回転数Nを算出する。
【0071】
そして、制御装置12は、算出した唐箕ファン回転数Nが、コンバイン1における脱穀作業状態ごとに算出される唐箕ファン回転数目標値Nと一致するように、唐箕ファン回転数Nを調節する。
【0072】
ここで、唐箕ファン回転数目標値Nとは、唐箕アクチュエータ140によって唐箕ファン回転数Nを調節する際の唐箕ファン回転数Nの目標値である。
【0073】
次に、制御装置12によるチャフシーブアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御態様について説明する。
【0074】
まず、コンバイン1の脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」である場合におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御について説明する。
【0075】
上述のように、制御装置12は、チャフシーブアクチュエータ130を制御して、チャフフィン角度θの調節を、第1設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度Aと、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度B、及び/又は、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cと、に基づいて変更する。即ち、選別ダイヤル角度Aと、排藁センサ角度B、及び/又は、シーブセンサ角度Cとの変動に応じて、チャフフィン16の角度が制御装置12により変更される。
【0076】
コンバイン1において、脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」である場合、排藁量検出装置160には、脱穀部4において処理された後の排藁が連続的に投入される。そのため、排藁量検出装置160においては、排藁量が安定したタイミングで検出される。即ち、排藁センサ角度Bが急激に変動することがない。従って、排藁センサ角度Bに応じて変動するチャフフィン16の角度も急激に変動することがない。
【0077】
また、排藁量検出装置160は、排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の層厚によって排藁量を検出する。そのため、排藁量検出装置160における排藁量の検出精度は、脱穀部4で処理される穀稈の量が少ないことにより低下することはない。なお、処理物量検出装置163は、検出板164をチャフシーブ53の上方に設けて、チャフシーブ53上の処理物を上方から検出するため、脱穀部4で処理される処理物の量が少ない場合には、検出板164がチャフシーブ53上の処理物を十分に検出しきれない場合がある。即ち、処理物量検出装置163における処理物量の検出精度は、脱穀部4で処理される穀稈の量が少ないことにより低下する場合がある。
【0078】
以上のことから、コンバイン1が「刈取脱穀作業状態」にある場合におけるチャフフィン16の角度調節は、排藁量検出装置160によって検出される排藁量に基づいて行われる。制御装置12は、チャフシーブアクチュエータ130を制御して、チャフフィン角度θを基準角度から変更し、排藁量が多い場合にはチャフフィン角度θを基準角度よりも大きくし、逆に、排藁量が少ない場合にはチャフフィン角度θを排藁量が多い場合に比べて小さくする。
【0079】
具体的には、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120から刈取脱穀作業状態であるという検出信号を取得すると、刈取脱穀作業状態におけるチャフフィン16のチャフフィン角度目標値θを演算する。
【0080】
刈取脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θは、以下の数1に示す関係式で表され、基準角度に対して、第1設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度A(選別ダイヤル補正角度α)と、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度B(排藁補正角度β)との増減に従って変化する。
【0081】
【数1】

【0082】
ここで、初期角度φは、補正角度を加味しない場合のチャフフィン16の角度である。即ち、初期角度φは、チャフフィン16の角度θにおいて予め設定された基準角度(基準値)である。従って、チャフフィン16の角度θは、初期角度φを基準として、その他の補正角度に応じて変化する。
【0083】
選別ダイヤル補正角度αは、第1設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度Aに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、選別ダイヤル補正角度αは、制御装置12に記憶される図6(c)に示す選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示すマップから算出される。図6(c)に示すマップは、選別ダイヤル角度Aが小さい範囲では、選別ダイヤル角度Aに対する選別ダイヤル補正角度αの増加率が小さくなるように設定される。なお、図6(c)に示すマップは一例であり、選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係はこれに限るものではない。
【0084】
作業者は、第1設定操作具84を操作することにより、選別ダイヤル補正角度αを任意の値に設定することができる。これによって、例えば湿気や三番ロスの量等に応じて、数1より算出されるチャフフィン角度目標値θを大小に任意に調節することができる。
【0085】
排藁補正角度βは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、排藁補正角度βは、制御装置12に記憶される図6(d)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示すマップから算出される。図6(d)に示すマップは、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正角度βを零とする不感帯を有するように設定される。なお、図6(d)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係はこれに限るものではない。
【0086】
制御装置12は、チャフフィン角度目標値θを演算すると、当該チャフフィン角度目標値θと、チャフフィン角度θとが一致するように、チャフシーブアクチュエータ130を制御する。即ち、チャフフィン16の角度が、チャフフィン角度目標値θに対応する角度となるように調節される。
【0087】
なお、本実施形態においては、刈取脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θを、第1設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度Aから算出される選別ダイヤル補正角度αと、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bから算出される排藁補正角度βと、に基づいて演算しているが、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cから算出されるシーブ補正角度γを補完的に用いて、以下の数2に示す関係式からチャフフィン角度目標値θを演算しても構わない。
【0088】
【数2】

【0089】
ここで、シーブ補正角度γは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、シーブ補正角度γは、制御装置12に記憶される図7(a)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップから算出される。図7(a)に示すマップは、シーブセンサ角度Cが小さい範囲では、シーブ補正角度γを零とする不感帯を有するように設定される。また、当該マップは、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正角度γを一定とする不感帯を有するように設定される。なお、図7(a)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係はこれに限るものではない。
【0090】
次に、コンバイン1の脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」にある場合における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)を調節するための制御について説明する。
【0091】
上述のように、制御装置12は、唐箕アクチュエータ140を制御して、唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)の調節を、第2設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eと、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度B、及び/又は、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cと、に基づいて変更する。即ち、唐箕ダイヤル角度Eと、排藁センサ角度B、及び/又は、シーブセンサ角度Cとの変動に応じて、唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)が制御装置12により変更される。
【0092】
コンバイン1が「刈取脱穀作業状態」にある場合における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)の調節は、排藁量検出装置160によって検出される排藁量に基づいて行われる。制御装置12は、唐箕アクチュエータ140を制御して、唐箕ファン回転数Nを初期回転数Vから変更し、排藁量が多い場合には唐箕ファン回転数Nを初期回転数Vよりも大きくして唐箕ファン17の風量を多くし、逆に、排藁量が少ない場合には唐箕ファン回転数Nを排藁量が多い場合に比べて小さくして唐箕ファン17の風量を少なくする。
【0093】
具体的には、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120から刈取脱穀作業状態であるという検出信号を取得すると、刈取脱穀作業状態における唐箕ファン17の唐箕ファン回転数目標値Nを演算する。
【0094】
刈取脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nは、以下の数3に示す関係式で表され、初期回転数Vに対して、第2設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度E(唐箕ダイヤル補正回転数P)と、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度B(排藁補正回転数Q)との増減に従って変化する。
【0095】
【数3】

【0096】
ここで、初期回転数Vは、補正回転数を加味しない場合の唐箕ファン17の回転数である。即ち、初期回転数Vは、唐箕ファン17の回転数において予め設定された基準回転数(基準値)である。従って、唐箕ファン回転数Nは、初期回転数Vを基準として、その他の補正回転数に応じて変化する。
【0097】
唐箕ダイヤル補正回転数Pは、第2設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、唐箕ダイヤル補正回転数Pは、制御装置12に記憶される図7(b)に示す唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示すマップから算出される。図7(b)に示すマップは、唐箕ダイヤル角度Eが小さい範囲では、唐箕ダイヤル角度Eに対する唐箕ダイヤル補正回転数Pの増加率が小さくなるように設定される。なお、図7(b)に示すマップは一例であり、唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係はこれに限るものではない。
【0098】
作業者は、第2設定操作具85を操作することにより、唐箕ダイヤル補正回転数Pを任意の値に設定することができる。これによって、例えば枝梗が付いている籾の量や湿気等に応じて、数3より算出される唐箕ファン回転数目標値Nを大小に任意に調節することができる。
【0099】
排藁補正回転数Qは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、排藁補正回転数Qは、制御装置12に記憶される図7(c)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップから算出される。図7(c)に示すマップは、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正回転数Qを零とする不感帯を有するように設定される。なお、図7(c)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係はこれに限るものではない。
【0100】
制御装置12は、唐箕ファン回転数目標値Nを演算すると、当該唐箕ファン回転数目標値Nと、唐箕ファン回転数Nとが一致するように、唐箕アクチュエータ140を制御する。即ち、唐箕ファン17の風量が、唐箕ファン回転数目標値Nに対応する風量となるように調節される。
【0101】
なお、本実施形態においては、刈取脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nを、第2設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eから算出される唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bから算出される排藁補正回転数Qと、に基づいて演算しているが、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cから算出されるシーブ補正回転数Rを補完的に用いて、以下の数4に示す関係式から唐箕ファン回転数目標値Nを演算しても構わない。
【0102】
【数4】

【0103】
ここで、シーブ補正回転数Rは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。具体的には、シーブ補正回転数Rは、制御装置12に記憶される図7(d)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップから算出される。図7(d)に示すマップは、シーブセンサ角度Cが小さい範囲では、シーブ補正回転数Rを零とする不感帯を有するように設定される。また、当該マップは、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正回転数Rを一定とする不感帯を有するように設定される。なお、図7(d)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係はこれに限るものではない。
【0104】
このように、コンバイン1においては、脱穀作業状態が「刈取脱穀作業状態」にある場合には、排藁量検出装置160が排藁量を排藁センサ角度Bとして電気的に検出し、制御装置12が、チャフフィン角度目標値θ及び唐箕ファン回転数目標値Nを、検出された排藁センサ角度Bと、図6(c)に示すマップ(選別ダイヤル補正角度α)と、図6(d)に示すマップ(排藁補正角度β)と、図7(b)に示すマップ(唐箕ダイヤル補正回転数P)と、図7(c)に示すマップ(排藁補正回転数Q)とに基づいて演算する。そして、制御装置12は、チャフシーブアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を、演算したチャフフィン角度目標値θ及び唐箕ファン回転数目標値Nに基づいて個別に駆動制御することで、チャフフィン角度θをチャフフィン角度目標値θに対応する角度とし、唐箕ファン17の風量を唐箕ファン回転数目標値Nに対応する風量とする。
【0105】
次に、コンバイン1の脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合におけるチャフフィン16の角度を調節するための制御について説明する。
【0106】
コンバイン1において、脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合、刈取後の穀稈の束が脱穀部4に手動で間欠的に投入されることになるため、排藁量検出装置160により排藁量を検出する場合、排藁量が連続して検出されない。そのため、排藁センサ角度Bが急激に変動する。従って、「刈取脱穀作業状態」と同様の制御を行うと、チャフフィン16の角度も急激に変動することになる。
【0107】
処理物量検出装置163は、検出板164をチャフシーブ53の上方に設けて、チャフシーブ53上の処理物を上方から検出する。そのため、選別部5で処理される処理物の量が少ない場合には、検出板164において当該処理物を十分に検出しきれない場合がある。しかし、脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合、処理物がチャフシーブ53上で一時的に滞留するため、選別部5内では処理物量検出装置163が処理物を検出できる程度の処理物量があり、当該処理物を十分に検出できる。
以上のことから、コンバイン1が「手扱脱穀作業状態」である場合には、チャフフィン16の角度調節は、処理物量検出装置163からの検出値を用いて行われる。
【0108】
具体的には、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120から手扱脱穀作業状態であるという検出信号を取得すると、手扱脱穀作業状態におけるチャフフィン16のチャフフィン角度目標値θを演算する。
【0109】
手扱脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θは、以下の数5に示す関係式で表され、基準角度に対して、第1設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度A(選別ダイヤル補正角度α)と、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度C(シーブ補正角度γ)と、手扱ぎ補正角度δと、の増減に従って変化する。
【0110】
【数5】

【0111】
ここで、手扱ぎ補正角度δは、正の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正角度δは、コンバイン1の脱穀作業状態が手扱脱穀作業状態である場合に設定される。
【0112】
数5に示すように、手扱脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θを演算する場合、基準角度(基準値)は、正の一定値である「手扱ぎ補正角度δ」を「初期角度φ」に加えた角度に設定される。即ち、手扱脱穀作業状態におけるチャフフィン16の基準角度(基準値)は、刈取脱穀作業状態におけるチャフフィン16の基準角度(基準値)と比べて「手扱ぎ補正角度δ」分だけ大きく設定される。
【0113】
手扱脱穀作業状態においては、脱穀部4で処理される穀稈の量が、刈取脱穀作業状態の場合と比べて少ないので、チャフシーブ53上の処理物量も少ない。そのため、チャフフィン16の角度を刈取脱穀作業状態の場合と同程度にすると、チャフシーブ53から落下する量が少なくなり、藁屑とともに穀粒も機体後方へ送られて、三番ロスが増加する。つまり、選別性能が低下する。
【0114】
以上のことから、手扱脱穀作業状態においては、制御装置12は、チャフフィン16の基準角度を刈取脱穀作業状態の場合と比べて大きく設定して、チャフフィン16の角度が刈取脱穀作業状態の場合に比べて大きくなる傾向とし、それにより穀粒等のチャフシーブ53からの落下を円滑にしてその落下量が多くなるように制御する。
【0115】
次に、コンバイン1の脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)を調節するための制御について説明する。
【0116】
脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」である場合、制御装置12は、チャフフィン16の角度を制御する場合と同じ理由によって、唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)を処理物量検出装置163からの検出値を用いて制御する。
【0117】
即ち、コンバイン1が「手扱脱穀作業状態」である場合における唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)の調節は、処理物量検出装置163によって検出されるチャフシーブ53上の処理物量を基準に行われる。制御装置12は、唐箕アクチュエータ140を制御して、唐箕ファン回転数Nを初期回転数Vから変更し、チャフシーブ53上の処理物量が多い場合には唐箕ファン回転数Nを大きくして唐箕ファン17の風量を多くし、逆に、チャフシーブ53上の処理物量が少ない場合には唐箕ファン回転数Nをチャフシーブ53上の処理物量が多い場合に比べて小さくして唐箕ファン17の風量を少なくする。
【0118】
具体的には、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120から手扱脱穀作業状態であるという検出信号を取得すると、手扱脱穀作業状態における唐箕ファン17の唐箕ファン回転数目標値Nを演算する。
【0119】
手扱脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nは、以下の数6に示す関係式で表され、初期回転数Vに対して、第2設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度E(唐箕ダイヤル補正回転数P)と、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度B(排藁補正回転数Q)と、手扱ぎ補正回転数Sとの増減に従って変化する。
【0120】
【数6】

【0121】
ここで、手扱ぎ補正回転数Sは、正の一定値であり、予め任意の値に決定される。手扱ぎ補正回転数Sは、コンバイン1の脱穀作業状態が手扱脱穀作業状態にある場合に設定される。
【0122】
数6に示すように、手扱脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nを演算する場合、基準回転数(基準値)は、「初期回転数V」から正の一定値である「手扱ぎ補正回転数S」を引いた回転数に設定される。即ち、手扱脱穀作業状態における唐箕ファン17の初期風量(基準回転数)は、刈取脱穀作業状態における唐箕ファン17の初期風量(基準回転数)と比べて「手扱ぎ補正回転数S」分だけ小さく設定される。
【0123】
手扱脱穀作業状態においては、脱穀部4で処理される穀稈の量が、刈取脱穀作業状態の場合と比べて少ないので、チャフシーブ53上の処理物量も少ない。そのため、唐箕ファン17の風量を刈取脱穀作業状態の場合と同程度にすると、藁屑とともに穀粒も飛散して、三番ロスが増加する。つまり、選別性能が低下する。
【0124】
以上のことから、手扱脱穀作業状態においては、制御装置12は、唐箕ファン17の初期風量(基準回転数)を刈取脱穀作業状態の場合と比べて小さく設定して、唐箕ファン17の風量が刈取脱穀作業状態の場合に比べて小さくなる傾向とし、それにより穀粒等の飛散量が少なくなるように制御する。
【0125】
このように、コンバイン1においては、脱穀作業状態が「手扱脱穀作業状態」にある場合には、処理物量検出装置163がチャフシーブ53上の処理物量をシーブセンサ角度Cとして電気的に検出し、制御装置12がチャフフィン角度目標値θ及び唐箕ファン回転数目標値Nを、検出されたシーブセンサ角度Cと、図6(c)に示すマップ(選別ダイヤル補正角度α)と、図7(a)に示すマップ(シーブ補正角度γ)と、予め設定される手扱ぎ補正角度δと、図7(b)に示すマップ(唐箕ダイヤル補正回転数P)と、図7(d)に示すマップ(シーブ補正回転数R)と、予め設定される手扱き補正回転数Sと、に基づいて演算する。そして、制御装置12は、チャフシーブアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140を、演算したチャフフィン角度目標値θ及び唐箕ファン回転数目標値Nに基づいて個別に駆動制御することで、チャフフィン角度θをチャフフィン角度目標値θに対応する角度とし、唐箕ファン17の風量を唐箕ファン回転数目標値Nに対応する風量とする。
【0126】
また、前述のチャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の回転数(唐箕ファン回転数N)の調節は、まとめると制御装置12により次のような流れで行われる。
【0127】
図8に示すように、ステップS1において、制御装置12は、予め設定された各種設定値とその時点の各種信号を読み込む(S1)。例えば、脱穀作業状態検出装置120からの検出信号と、排藁量検出装置160からの検出信号と、処理物量検出装置163からの検出信号と、チャフ角度検出装置167からの検出信号と、唐箕風量検出装置170からの検出信号とを読み込む。
【0128】
ステップS2において、制御装置12は、ステップS1で読み込んだ脱穀作業状態検出装置120からの検出信号に基づいて、コンバイン1における脱穀作業状態が待機状態であるか否かを判断する(S2)。
【0129】
制御装置12は、コンバイン1における脱穀作業状態が待機状態であると判断すると(S2−Yes)、引き続き、ステップS1において、予め設定された各種設定値とその時点の各種信号を読み込む(S1)。
【0130】
制御装置12は、コンバイン1における脱穀作業状態が待機状態でないと判断すると(S2−No)、ステップをステップ3に移行させる。
【0131】
ステップS3において、制御装置12は、ステップS1で読み込んだ脱穀作業状態検出装置120からの検出信号に基づいて、コンバイン1における脱穀作業状態が手扱脱穀作業状態(又は刈取脱穀作業状態)であるか否かを判断する(S3)。
【0132】
制御装置12は、コンバイン1における脱穀作業状態が手扱脱穀作業状態でない、即ち、コンバイン1における脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態であると判断すると(S3−No)、ステップをステップS4に移行させる。
【0133】
また、制御装置12は、コンバイン1における脱穀作業状態が手扱脱穀作業状態であると判断すると(S3−Yes)、ステップをステップS5に移行させる。
【0134】
ステップS4において、制御装置12は、上記数1に示す関係式に基づいて、刈取脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θを演算するとともに、上記数3に示す関係式に基づいて、刈取脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nを設定する(S4)。そして、ステップをステップS6に移行させる。
【0135】
ステップS5において、制御装置12は、上記数5に示す関係式に基づいて、手扱脱穀作業状態におけるチャフフィン角度目標値θを演算するとともに、上記数6に示す関係式に基づいて、手扱脱穀作業状態における唐箕ファン回転数目標値Nを演算する(S5)。そして、ステップをステップS6に移行させる。
【0136】
ステップS6において、制御装置12は、演算したチャフフィン角度目標値θと、チャフ角度検出装置167により検出したチャフフィン角度θとが一致するように、チャフシーブアクチュエータ130を制御する(S6)。
【0137】
さらに、ステップS7において、制御装置12は、演算した唐箕ファン回転数目標値Nと、唐箕風量検出装置170により検出した唐箕ファン回転数Nとが一致するように、唐箕アクチュエータ140を制御する(S7)。
【0138】
以上のように、コンバイン1は、穀稈を刈り取る刈取部3と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部4と、脱穀処理された処理物を選別する選別部5と、を備えるコンバイン1であって、選別部5のチャフシーブ53の開度を調節可能なチャフシーブアクチュエータ130と、脱穀後に搬送される排藁量を検出する排藁量検出装置160と、チャフシーブ53上の処理物の量を検出する処理物量検出装置163と、刈取部3及び脱穀部4が作動して穀稈が処理される刈取脱穀作業状態と、刈取部3が作動せず脱穀部4が作動して穀稈が処理される手扱脱穀作業状態と、を検出する脱穀作業状態検出装置120と、チャフシーブアクチュエータ130を排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163の検出値に基づいて制御して、チャフシーブ53の開度をあらかじめ設定された基準値から変更する制御装置12と、を備え、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120が前記刈取脱穀作業状態を検出したとき、チャフシーブアクチュエータ130を排藁量検出装置160の検出値に基づいて制御し、脱穀作業状態検出装置120が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、チャフシーブアクチュエータ130を処理物量検出装置163の検出値に基づいて制御するものである。
【0139】
このようにコンバイン1を構成することで、刈取後の穀稈が脱穀部4へ連続的に供給される状況となる刈取脱穀作業状態では、制御装置12がチャフシーブアクチュエータ130を排藁量検出装置160の検出値に基づいて制御して、チャフシーブ53の開度を調節する。一方、刈取後の穀稈が脱穀部4へ間欠的に供給される状況となる手扱脱穀作業状態では、制御装置12がチャフシーブアクチュエータ130を処理物量検出装置163の検出値に基づいて制御して、チャフシーブ53の開度を調節する。つまり、制御装置12は、脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態又は手扱脱穀作業状態のいずれであるか(刈取後の穀稈の脱穀部4へ供給状況)に応じて、チャフシーブ53の開度調節における制御に用いる検出装置の検出値を変更し、その制御を適切に変更することができる。従って、脱穀作業状態が刈取脱穀作業状態又は手扱脱穀作業状態でのいずれであっても、処理物をチャフシーブ53で精度良く選別することができる。
【0140】
また、従来、チャフシーブと、排藁量検出装置及び処理物量検出装置のそれぞれとの間にワイヤ等の機械的なリンク機構を設け、チャフシーブを排藁量検出装置、詳しくはその検出アームにワイヤを介して連動させて、チャフシーブの開度を調節する構造を有するコンバインがあった。これに対し、本実施形態に係るコンバイン1は、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163からの検出値に基づいて、アクチュエータを電気的に制御する構成であるため、チャフシーブ53と、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163のそれぞれとの間にワイヤ等の機械的なリンク機構を設ける必要がなく、構造が簡単である。
【0141】
また、コンバイン1においては、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120が手扱脱穀作業状態を検出したとき、チャフシーブ53の開度の基準値を、刈取脱穀作業状態時の前記基準値より大きく変更する。
【0142】
このようにコンバイン1を構成することで、脱穀作業状態が、チャフシーブ53上の処理物の量が刈取脱穀作業状態に比べて減少する手扱脱穀作業状態である場合、チャフシーブ53の開度が刈取脱穀作業状態に比べて大きくなる傾向となり、チャフシーブ53上の処理物をチャフシーブ53の下へ円滑に落下させることができる。その結果、処理物が唐箕ファン17からの選別風により十分に選別されながらも当該選別風の影響を受け過ぎず、処理物の飛散量が少なくなる。従って、3番ロス(処理物の機体外部への損失)を低減することができる。
【0143】
さらに、コンバイン1においては、選別部5の唐箕ファン17の風量を調節可能な唐箕アクチュエータ140を備え、制御装置12は、脱穀作業状態検出装置120が手扱脱穀作業状態を検出したとき、唐箕アクチュエータ140を制御し、回転駆動中の唐箕ファン17の風量を、刈取脱穀作業状態時の唐箕ファン17の風量よりも低減する。
【0144】
このようにコンバイン1を構成することで、脱穀作業状態が、チャフシーブ53上の処理物の量が刈取脱穀作業状態に比べて減少する手扱脱穀作業状態である場合、唐箕ファン17の風量が刈取脱穀作業状態に比べて低減して、処理物が唐箕ファン17からの選別風により十分に選別されながらも当該選別風の影響を受け過ぎず、処理物の飛散量が少なくなる。従って、3番ロス(処理物の機体外部への損失)を低減することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 コンバイン
3 刈取部
4 脱穀部
5 選別部
12 制御装置
17 唐箕ファン
53 チャフシーブ
120 脱穀作業状態検出装置
130 チャフシーブアクチュエータ
140 唐箕アクチュエータ
160 排藁量検出装置
163 処理物量検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を選別する選別部と、を備えるコンバインであって、
前記選別部のチャフシーブの開度を調節可能なチャフシーブアクチュエータと、
脱穀後に搬送される排藁量を検出する排藁量検出装置と、
前記チャフシーブ上の処理物の量を検出する処理物量検出装置と、
前記刈取部及び前記脱穀部が作動して穀稈が処理される刈取脱穀作業状態と、前記刈取部が作動せず脱穀部が作動して穀稈が処理される手扱脱穀作業状態と、を検出する脱穀作業状態検出装置と、
前記チャフシーブアクチュエータを前記排藁量検出装置又は前記処理物量検出装置の検出値に基づいて制御して、前記チャフシーブの開度をあらかじめ設定された基準値から変更する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記刈取脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブアクチュエータを前記排藁量検出装置の検出値に基づいて制御し、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブアクチュエータを前記処理物量検出装置の検出値に基づいて制御するコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記チャフシーブの開度の基準値を、前記刈取脱穀作業状態時の前記基準値より大きく変更する請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記選別部の唐箕ファンの風量を調節可能な唐箕アクチュエータを備え、
前記制御装置は、前記脱穀作業状態検出装置が前記手扱脱穀作業状態を検出したとき、前記唐箕アクチュエータを制御し、回転駆動中の前記唐箕ファンの風量を、前記刈取脱穀作業状態時の前記唐箕ファンの風量よりも低減する請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−160722(P2011−160722A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27018(P2010−27018)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】