説明

コンバイン

【課題】エンジンを上方に障害物がない状態に開放できながら、エンジンボンネット及び運転座席を楽に移動操作でき、かつ、開き状態になったエンジンボンネット及び運転座席の自走機体外への突出量を抑制できるようにする。
【解決手段】運転部開放軸芯Xを、エンジン28よりも自走機体後方側で、かつ、エンジン28の自走機体横方向での機体外側端28bよりも自走機体内方側に配置する。エンジンボンネットの連結部39aを運転部開放軸芯Xまわりで回動自在に支持するよう自走機体フレーム2に固定された機体側支柱35を備え、機体側支柱35の連結部39aが回動自在に連結する部位35aを、エンジン28の最上端28cよりも高い配置高さに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のコンバインにおいて、従来、たとえば特許文献1,2に示されるものがあった。
特許文献1に示されるものでは、運転座席がエンジンカバーの上面に装着されている。ハンドル塔、ステップ、エンジンカバー、側板を一体化したカバー体が支点金具を介して機体フレームに支持されている。カバー体が支点金具の縦向き支点を中心にして少し横外方に揺動されるとともに支点金具の横向き支点を中心にして上方に揺動されることにより、エンジンカバー及び運転座席が機体フレームに対して上昇回動し、エンジンが開放される。
【0003】
特許文献2に示されるものでは、運転座席がエンジンボンネットに支持されている。エンジンボンネットがボンネット支持部に起伏開閉自在に支持され、ボンネット支持部が、運転部の床板前端側の下方で機体上下向きの旋回軸芯まわりで回動自在に機体フレームに連結されている。エンジンボンネットが倒伏開放されるとともにボンネット支持部が旋回軸芯まわりで回動されることにより、エンジンボンネットと運転座席が旋回軸芯まわりで機体フレームに対して自走機体横外側に旋回移動し、エンジンが開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−136823号(段落〔0041〕、〔0053〕−〔0055〕、図2,3,7)
【特許文献2】特開2004−34780号(段落〔0013〕、〔0017〕、〔0018〕、〔0023〕、図11,14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される技術を採用することによってエンジンの開放を可能すると、エンジンボンネット及び運転座席が自走機体横向きの軸芯まわりで回動する。このため、エンジンの上方に作業障害物がない状態にエンジンを開放できるようにするには、エンジンボンネットや運転座席などを閉じ状態から高所まで上昇させる必要が生じる。すると、開閉操作が重くなりがちであった。
【0006】
特許文献2に示される技術を採用することによってエンジンの開放を可能にすると、エンジンを開放した際、エンジンボンネット及び運転座席が自走機体から横外側に大きくはみ出た状態になっていた。
【0007】
本発明の目的は、エンジンを上方に障害物がない状態に開放できながら、エンジンボンネット及び運転座席を楽に移動操作することができ、かつ、開き状態になったエンジンボンネット及び運転座席の自走機体外への突出量を抑制することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンボンネット及び前記運転座席を、エンジンよりも自走機体後方側で、かつ、エンジンの自走機体横方向での機体外側端よりも自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに、エンジンボンネットがエンジンを覆った閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンよりも自走機体後方側に位置してエンジンを開放した開き状態とに回動切り換え自在に構成してある。
【0009】
本第1発明の構成によると、エンジンボンネット及び運転座席を閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで回動移動させてエンジンを開放することができる。また、開き状態になったエンジンボンネット及び運転座席が極力エンジンの後方側に位置し、エンジンボンネット及び運転座席の自走機体から外側への突出量を極力小にした状態でエンジンを開放することができる。
【0010】
これにより、開き状態になったエンジンボンネット及び運転座席がエンジンよりも自走機体後方側に位置し、エンジンの上方にエンジンボンネットなどの障害物がなくて点検作業などが行いやすい状態にエンジンを開放することができるものでありながら、エンジンボンネット及び運転座席を閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで回動移動させて楽に開き操作することができる。さらに、開き状態になったエンジンボンネット及び運転座席の自走機体外への突出量を抑制し、エンジンボンネットなどが作業の障害物になりにくくて点検作業などが行いやすい。
【0011】
本第2発明は、本第1発明の構成において、前記運転部開放軸芯に平行な軸芯まわりで自走機体フレームに揺動自在に連結された支持フレームを備えるとともに、前記エンジンボンネットの遊端側を前記支持フレームの遊端側に摺動自在に支持させてある。
【0012】
本第2発明の構成によると、エンジンボンネットが開閉回動されると、エンジンボンネットの遊端側が支持フレームと摺動し合いながら支持フレームを揺動操作していき、支持フレームが開閉回動するエンジンボンネットの荷重を支持していく。
【0013】
これにより、エンジンボンネットの荷重が支持フレームによって支持される分、エンジンボンネットをスムーズにかつ軽く回動させ、エンジンボンネットの開閉操作を一層軽く行うことができる。
【0014】
本第3発明は、本第1又は第2発明の構成において、前記運転座席の前方に位置した運転部床及び操縦塔、運転部床の横側方で運転部の内外を仕切る横側壁、運転座席の横側方に位置した操作盤を備え、前記操縦塔と前記横側壁と前記操作盤と前記運転部床とが、前記運転部開放軸芯まわりで前記エンジンボンネットと一体に自走機体フレームに対して回動自在に支持されている。
【0015】
本第3発明の構成によると、エンジンボンネットを開き状態に回動させてエンジンが開放されると、操縦塔、横側壁、操作盤、運転部床もエンジンボンネットと共に一挙に回動し、エンジン前方側での自走機体も開放される。
【0016】
これにより、エンジン、及びエンジン前方での自走機体を速やかに開放し、エンジンの点検などの作業の他に、エンジンから走行装置や刈取り前処理部への伝動系の点検などの作業も能率よく行うことができる。しかも、エンジン前方側を作業しやすい状態に開放するのに、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで楽に移動させ、この面からも有利に点検作業を行うことができる。
【0017】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、エンジンボンネットの連結部を前記運転部開放軸芯まわりで回動自在に支持するよう、自走機体フレームに固定された機体側支柱を備え、前記機体側支柱の前記連結部が回動自在に連結する部位を、エンジンの最上端よりも高い配置高さに配置してある。
【0018】
本第4発明の構成によると、エンジンボンネットの組み付け作業を行うに当たり、エンジンボンネットを自走機体の外部から内部に持ち込む作業の面から行いやすくなる。
すなわち、機体側支柱のエンジンボンネットの連結部を連結する部位がエンジン最上端よりも低く位置していると、エンジンボンネットが機体側支柱に回動自在に連結した組み付け状態になった場合のエンジンボンネットの機体フレームに対する配置高さよりも大きく持ち上げた支持高さでエンジンボンネットを搬入装置によって支持し、エンジンボンネットをその支持高さに維持しながら自走機体の外部から内部に持ち込む。つまり、エンジンボンネットがエンジンの上方を移動する際、エンジンボンネットの連結部などがエンジンなどに当たることを回避しながら、エンジンボンネットを自走機体内部に持ち込む。この後、エンジンボンネットの連結部が機体側支柱の上方に位置すると、エンジンボンネットを下降操作し、連結部を機体側支柱に連結するという組み付け方法を採用する必要がある。これに対し、本第4発明の構成によると、エンジンボンネットを組み付け状態での機体フレームに対する配置高さと大きく相違しない支持高さで搬入装置によって支持し、その支持高さで自走機体の外部から内部に持ち込むという組み付け方向を採用しても、エンジンボンネットのエンジンとの当たりを回避しながらエンジンボンネットを自走機体の内部に持ち込むことができる。そして、この組み付け方向を採用した場合、エンジンボンネットの連結部が機体側支柱の上方に位置すると、エンジンボンネットをわずかに下降操作するだけで、エンジンボンネットの連結部を機体側支柱に連結できる。
【0019】
これにより、エンジボンネットの組み付け作業を迅速に能率よく行い、コストダウンできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインのエンジンボンネット開き状態での平面図
【図4】運転部の側面図
【図5】エンジンボンネットの天板取り外し状態での平面図
【図6】エンジンボンネットの開閉を示す平面図
【図7】原動部の後面図
【図8】原動部の防熱板取り外し状態での後面図
【図9】エンジンボンネット支持構造の平面図
【図10】スイッチ操作盤の正面図
【図11】エンジンボンネットの組み付け要領を示す平面図
【図12】エンジンボンネットの組み付け要領を示す後面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、クローラ走行装置1を有した自走機体と、この自走機体の自走機体フレーム2(以下、機体フレーム2と略称する。)の前部に連結された刈取り部10と、前記機体フレーム2の後部に自走機体横方向に並べて搭載された脱穀装置3と穀粒タンク4を備えている。
【0022】
このコンバインは、稲,麦などの穀粒を収穫するものである。すなわち、刈取り部10は、この刈取り部10の主フレーム11が油圧シリンダ(図示せず)によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、刈取り部10の前端部に刈取り部横方向に並んで位置する分草具12が地面近くに位置した下降作業状態と、前記分草具12が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作される。刈取り部10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り部10は、前記各分草具12によって刈り取り対象の植立穀稈を分草具12の後方に位置する引起し経路13に導入し、各引起し経路13に導入された植立穀稈を引起し経路13の横側に位置する引起し装置14によって引起し処理するとともに引起し経路13の終端部に位置するバリカン型の刈取り装置15によって刈取り処理し、刈取り装置15からの刈取り穀稈を供給装置16によって自走機体後方向きに搬送して脱穀装置3に供給する。脱穀装置3は、脱穀フィードチェーン(図示せず)によって刈取り穀稈の株元側を挟持して自走機体後方向きに搬送しながら刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を脱穀処理する。穀粒タンク4は、脱穀装置3から搬送された脱穀粒を回収して貯留する。この穀粒タンク4は、タンク内の底部に位置する排出スクリュー5と、穀粒タンク4の後部に位置する縦スクリューコンベヤ6と、この縦スクリューコンベヤ6の上端部に連結した横スクリューコンベヤ7とによってタンク内の脱穀粒を排出する。横スクリューコンベヤ7は、縦スクリューコンベヤ6に対して旋回および起伏操作できる。
【0023】
自走機体は、前記クローラ走行装置1と前記機体フレーム2とを備える他、前記穀粒タンク4の前方近くに位置したエンジンボンネット21を有した原動部20と、前記エンジンボンネット21の上方に位置した運転座席51を有した運転部50とを備えている。
【0024】
図4は、原動部20の側面図である。図5は、原動部20のエンジンボンネット21の天板22を取り除いた状態での平面図である。図7は、原動部20の後面図である。図8は、原動部20の防熱板25,26を取り除いた状態での後面図である。これらの図に示すように、原動部20は、前記エンジンボンネット21を備える他、このエンジンボンネット21の自走機体横外側端部の内部に配置したエンジン冷却ラジエータ27と、前記エンジンボンネット21の内部の前記エンジン冷却ラジエータ27よりも自走機体の横方向での内側に配置したエンジン28と、エンジン28の後方を覆うことによって原動部20の排熱を後方に出にくくしている前記防熱板25と、エンジンボンネット21の後端側の上部に連設された吸気ケース29と、この吸気ケース29の内部に設けたエヤクリーナ30とを備えている。
【0025】
図5,7,8に示すように、エンジン28は、エンジン28の一端側に連結された冷却ファン31と、エンジン28の他端側に連結された出力プーリ32とを備え、冷却ファン31が自走機体横外側に位置し、出力プーリ32が自走機体横内側に位置した搭載姿勢で機体フレーム2に支持装置33を介して支持されている。冷却ファン31は、エンジン28によって駆動回動され、エンジンボンネット21の外部の空気をエンジンボンネット21の横壁体23の吸気口23aからエンジンボンネット21の内部に吸引し、冷却風を発生させてエンジン冷却ラジエータ27に供給する。また、冷却ファン31は、吸気ケース29の内部の空気をエンジンボンネット21の前記吸気口23aからの冷却風に合流させてエンジン冷却ラジエータ27に供給する。出力プーリ32は、エンジン28の出力を走行装置1、刈取り部10、脱穀装置3に伝達する。エンジン冷却ラジエータ27は、機体フレーム2に固定されたラジエータフレーム34に支持されている。図8に示すように、ラジエータフレーム34は、このラジエータフレーム34の上端部と、機体フレーム2に立設された機体側支柱35の上端部とにわたって連結された支持フレーム36を介して前記機体側支柱35にも支持されている。前記防熱板25は、前記機体側支柱35と前記ラジエータフレーム27とにわたって連結されており、ラジエータフレーム27の補強部材になっている。図7に示すように、防熱板25は、脱着式の蓋板37によって開閉自在な管理口37aを備えている。この管理口37aは、図8に示す如くエンジン28に装備されたファン切換え装置38を点検や調整操作するものである。ファン切換え装置38は、前記冷却ファン31の切換え操作部(図示せず)に操作ワイヤ38aを介して連動された扇形ギヤ38b、この扇形ギヤ38bに連動した減速機構38c、この減速機構38cに連動された電動モータ38dを備え、この電動モータ38dの駆動力によって冷却ファン31を冷却状態と除塵状態とに切換え操作する。冷却状態に切換えられた冷却ファン31は、エンジン冷却ラジエータ27に冷却風を導入するようエンジンボンネット21の前記吸気口23aと前記吸気ケース29とから吸気する。除塵状態に切換えられた冷却ファン23aは、エンジンボンネット21の前記吸気口23aに付着した塵埃を吹き飛ばすよう吸気口23aに送風する。前記エヤクリーナ30は、蛇腹ホースで成るインレットホース30aを介してエンジン28の吸気マニホールド28aに接続されており、エンジン28の吸気作用により、吸気ケース29の内部の空気を吸引して除塵し、除塵後の空気をエンジン28に燃焼用空気として供給する。吸気ケース29の自走機体横外向きの吸気口29aは、吸気ケース29の横側壁に複数の貫通孔を設けて形成してある。吸気ケース29の自走機体後向きの吸気口29bは、徐塵網を備えている。吸気ケース29の横側壁は、エンジンボンネット21の横壁体23を樹脂材の成型によって形成する際、この横壁体23と一体に形成してある。
【0026】
図4は、エンジンボンネット21の自走機体側面視での構造を示す。図5は、エンジンボンネット21の天板22を取り除いた状態での自走機体平面視での構造を示す。図7は、エンジンボンネット21の自走機体後面視での構造を示す。これらの図に示すように、エンジンボンネット21は、エンジン28およびエンジン冷却ラジエータ27の上方を覆う前記天板22と、エンジン28およびエンジン冷却ラジエータ27の自走機体横外側方を覆う前記横壁体23とを備える他、エンジン28の前方を覆う前側壁板24を備えて構成してある。
【0027】
図4,5に示すように、エンジンボンネット21は、エンジンボンネット前端側の自走機体横外側に位置する角部に設けた三角形状の面取り部21aを備えている。この面取り部21aは、エンジンボンネット21の乗降口に望む角部の外向き面を上端側ほど機体内側に位置した傾斜面に形成し、エンジンボンネット21を運転部40に対する乗り降りの障害になりにくくしている。図7に示すように、エンジンボンネット21の後側に、前記防熱板26を設けてある。この防熱板26は、前記吸気ケース29と前記防熱板25との間を覆い、原動部20の排熱を後方に出にくくしている。このボンネット側の防熱板26の下端部26aは、前記機体側の防熱板25の上端部と自走機体前後方向に重なり合い、防熱効果を高めている。この下端部26aは、エンジンボンネット21の開放の障害にならないように機体側の防熱板25の外面側に重なっている。図4に示すように、前記横壁体23の前記吸気口23aは、横壁体23に複数の貫通孔を設けて形成してある。
【0028】
図5,8に示すように、エンジンボンネット21の後側の外部に連結部材39を介して取り付けた筒体で成る連結部39aが機体フレーム2に立設された前記機体側支柱35の上端部に位置する支持部位35aに回転自在に連結している。これにより、エンジンボンネット21は、前記支持部位35aが有する自走機体上下向きの運転部開放軸芯X(以下、開放軸芯Xと略称する。)まわりで回動自在に支持されている。前記開放軸芯Xは、エンジン28よりも自走機体後方側で、かつ、エンジン28のクランク軸端で成る自走機体横方向での機体外側端28b(図8参照)よりも自走機体内方側に配置してある。前記支持部位35aは、エンジン28の吸気マニホールド28aの上端で成る最上端28cよりも高い配置高さに位置している。
【0029】
つまり、エンジンボンネット21は、図2,3,6に示す如く回動切換え自在になっている。図2は、エンジンボンネット21の閉じ状態で平面視状態を示し、図3は、エンジンボンネット21の開き状態での平面視状態を示す。図6に実線で示すエンジンボンネット21は、閉じ状態を示し、二点鎖線で示すエンジンボンネット21は、開き状態を示す。これらの図に示すように、エンジンボンネット21は、前記開放軸芯Xのまわりで回動操作されることにより、開放軸芯Xよりも自走機体前方側に位置してエンジン28を覆った閉じ状態と、エンジン28よりも自走機体後方側に位置してエンジン28を開放した開き状態とに切り換わる。エンジンボンネット21が閉じ状態になると、前記連結部材39が備えている係止部39bが脱穀装置3の機体に固定された支持部材40に係合し、連結部39aが支持部材40を介して脱穀装置3に支持される。係止部39bは、エンジンボンネット21の開き状態に向けての回動操作によって支持部材40から自ずと離脱する。
【0030】
図9は、エンジンボンネット支持構造の平面図である。この図に示すように、エンジンボンネット支持構造は、機体フレーム2に前記機体側支柱35よりも自走機体横外側に配置して設けたブラケット41に前記開放軸芯Xに平行な軸芯Pまわりで揺動自在に支持された支持フレーム42と、エンジンボンネット21の前側壁板24および横壁体23の下部に沿ったボンネットフレーム43に連結された運転部床フレーム52の横フレーム部52aと前記支持フレーム42の遊端側とにわたって設けた連結部材44とを備えている。支持フレーム42は、支持フレーム42の遊端側に設けたガイド溝42aを備えている。連結部材44は、上端側で前記横フレーム部52aに連結され、連結部材44の下端側に備えてあるローラを介して前記ガイド溝42aに摺動自在に係合している。
すなわち、支持フレーム42は、エンジンボンネット21が回動操作されると、エンジンボンネット21による運転部床フレーム52と連結部材44とを介しての操作のためにエンジンボンネット21に追従して揺動し、回動するエンジンボンネット21の遊端側の荷重を運転部床フレーム52と連結部材44とを介して支持する。
【0031】
図2は、運転部50の平面視での構造を示している。図4は、運転部50の側面視での構造を示している。こられの図に示すように、運転部50は、前記運転座席51を備える他、運転座席51の前方に配置した運転部床53及び操縦塔54と、運転部床53の乗降口側とは反対側の端部に位置した横側壁55と、運転座席51の乗降口側とは反対側の横側方に配置した操作盤56とを備えている。前記横側壁55は、運転部内のエンジンボンネット21と前記操縦塔54との間の空間を刈取り部側の外部と仕切り、刈取り部10から運転部内に塵埃が入り込むことを防止している。操縦塔54は、自走機体の操向操作と刈取り部10の昇降操作とを行う操作レバー60と、エンジン28に関する稼動時間などの情報などを示す計器盤61とを備えている。前記操作盤56は、変速レバー62と、脱穀クラッチレバー63と、変速レバー62及び脱穀クラッチレバー63よりも自走機体前方側に配置したスイッチ盤64とを備えている。変速レバー62は、自走機体前後方向に揺動操作されることにより、静油圧式無段変速装置(図示せず)を変速操作し、走行装置1の駆動、停止、変速操作を行う。脱穀クラッチレバー63は、自走機体前後方向に揺動操作されることにより、脱穀クラッチ(図示せず)を切換え操作し、脱穀装置3を駆動、停止操作する。スイッチ盤64は、前記横スクリューコンベヤ7を旋回、起伏操作するスイッチ(図示せず)と、横スクリューコンベヤ7の自動運転を入り状態と切り状態とに切換え操作するスイッチ(図示せず)と、横スクリューコンベヤ7が自動運転によって停止される排出位置を選択して設定する操作手段(図示せず)とを備えている。図10に示すように、前記スイッチ盤64は、運転座席51に着座した操縦者から見やすいよう自走機体前後方向視で運転座席側ほど低くなった傾斜状態になっている。
【0032】
図9に示すように、前記運転部床フレーム52と前記ボンネットフレーム43とが連結されている他、前記操作盤56及び横側壁55に沿った横側壁フレーム57と前記連結部材39とが連結され、前記横側壁フレーム57と前記運転部床フレーム52とが連結されている。操縦塔54は、運転部床53の前端部に立設されている。これらにより、運転部床53と操縦塔54と横側壁55と操作盤56とは、一つの上部構造体となり、開放軸芯Xまわりでエンジンボンネット21と共に機体フレーム2に対して回動開閉する。
【0033】
運転座席51は、図4に示す如く前記エンジンボンネット21の天板22に座席支持装置51aを介して支持されている。これにより、図2,3に示すように、運転座席51は、エンジンボンネット21と共に回動し、エンジンボンネット21が開き状態に切換えられると、エンジン28よりも自走機体後方側に位置してエンジン28を開放する。
【0034】
つまり、原動部20や、走行装置1及び刈取り部10への伝動構造の点検や修理作業を行うに当たり、エンジンボンネット21を開放軸芯Xまわりで閉じ状態から自走機体横外側に回動操作する。このとき、エヤクリーナ30をエンジン28に接続しているインレットホース30aは、蛇腹ホースのために屈伸自在となり、エヤクリーナ30とエンジン28の分離を不要にしている。また、このとき、エンジンボンネット21は、エンジンボンネット21の遊端側を支持フレーム42によって支持されながら回動し、エンジンボンネット21の回動操作が軽くなる。エンジンボンネット21が開き状態になると、エンジンボンネット21と運転座席51とがエンジン28より自走機体後方側に位置し、エンジン28が開放される。このとき、運転部床53と操縦塔54と横側壁55と操作盤56とがエンジンボンネット21と共に回動移動し、通常時は運転部床53の下方に位置している機体部分も、通常時は横側壁55でカバーされている刈取り部部分も開放される。尚、このとき、図3に示すように、穀粒タンク4を縦スクリューコンベヤ6の軸芯6aまわりで自走機体横外側に揺動開放し、エンジンボンネット21がエンジン28の後方に位置するスペースを確保する。
【0035】
図11は、エンジンボンネット21の組み付け要領を示す平面図である。図12は、エンジンボンネット21の組み付け要領を示す後面図である。これらの図に示すように、エンジンボンネット21と運転部床53などとが一体になった構造体と、搬入装置の一対の支持アーム70とを連結部材71を介して連結し、エンジンボンネット21をエンジンボンネット21の連結部39aが機体側支柱35の支持部位35aよりもやや高く位置した支持高さにして一対の支持アーム70,70によって支持させる。エンジンボンネット21をこの支持高さに維持しながら自走機体の横外側からエンジン28の上方を通して内部に持ち込む。連結部39aが機体側支柱35の上方に位置すると、エンジンボンネット21を下降操作し、連結部39aを機体側支柱35の支持部位35aに連結する。
【符号の説明】
【0036】
2 自走機体フレーム
21 エンジンボンネット
28 エンジン
28b エンジンの機体外側端
28c エンジンの最上端
35 機体側支柱
35a 機体側支柱の部位
39a エンジンボンネットの連結部
42 支持フレーム
51 運転座席
53 運転部床
54 操縦塔
55 横側壁
56 操作盤
X 運転部開放軸芯
P 支持フレームの揺動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインであって、
前記エンジンボンネット及び前記運転座席を、エンジンよりも自走機体後方側で、かつ、エンジンの自走機体横方向での機体外側端よりも自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに、エンジンボンネットがエンジンを覆った閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンに対して自走機体外方後方に移動してエンジンを開放した開き状態とに回動切り換え自在に構成し、
前記エンジンボンネットの連結部を前記運転部開放軸芯まわりで回動自在に支持するよう、自走機体フレームに固定された機体側支柱を備え、
前記機体側支柱の前記連結部が回動自在に連結する部位を、エンジンの最上端よりも高い配置高さに配置してあるコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンボンネットの自走機体横外側端部の内部に配備されたラジエータを前記自走機体フレームに固定されたフレームに支持し、前記フレームの上端部と前記機体側支柱の上端部とに亘って支持フレームを連結してある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−19536(P2011−19536A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248948(P2010−248948)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2006−241518(P2006−241518)の分割
【原出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】