説明

コンバイン

【課題】左右一側方で機体前後方向に沿って配置される分草杆を、所定の左右位置に安定した姿勢で保持させることができるコンバインを提供する。
【解決手段】左右一側方で機体前後方向に沿って配置される分草杆30の左右位置を調整可能な位置調整機構40を備えるコンバイン1において、前記位置調整機構40は、前記刈取部7または前記機体に支持される第一アーム61と、一端部を前記第一アーム61に回動自在に連結して、互いに所定距離を隔てて配置される前後一対のリンク体62a、62bと、一端部を前記一対のリンク体62a、62bの他端部に回動自在に連結して、他端部を前記分草杆30に回動自在に連結する第二アーム63と、前記一対のリンク体62a、62bの前記第一アーム61に対する回動角度を任意の回動角度に変更、保持可能な角度変更手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳しくは、分草杆の張出、収納位置への位置調整の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、圃場の未刈取穀稈を機体に巻き込んだり、刈取穀稈の搬送中にその株元が未刈取穀稈に当たって搬送が乱れたりするのを防ぐため、機体左側方に設置した分草杆を張出すことで未刈取穀稈を分草しながら、刈取、脱穀作業を行う。この分草杆は、回動自在に接続された二本のガイド杆で構成されて、中途部を横杆で支持される構成となっており、分草杆を張出、収納する方法としては、運転席付近に設置された操作レバーを揺動操作して、調節する技術が公知となっている(例えば、「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−11820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成のコンバインにおいては、横杆が第一横杆と第二横杆とを互いに回動可能に接続して構成されていたため、この横杆により分草杆を機体側に対して強固に支持することができず、分草杆の姿勢が乱れる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、先端部を刈取部に回動自在に連結して、前記刈取部、または前記刈取部および機体の左右一側方に機体前後方向に沿って配置される分草杆と、前記分草杆を前記刈取部に近接または離間する方向に移動可能に支持して、前記分草杆の左右位置を調整可能な位置調整機構とを備えるコンバインにおいて、前記位置調整機構は、前記刈取部または前記機体に支持される第一アームと、一端部を前記第一アームに回動自在に連結して、互いに所定距離を隔てて配置される前後一対のリンク体と、一端部を前記一対のリンク体の他端部に回動自在に連結して、他端部を前記分草杆に回動自在に連結する第二アームと、前記一対のリンク体の前記第一アームに対する回動角度を任意の回動角度に変更、保持可能な角度変更手段と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記分草杆は、機体前後方向に伸縮可能に構成したものである。
【0008】
請求項3においては、前記分草杆の対地高さを調整する高さ調整機構を備えるものである。
【0009】
請求項4においては、前記角度変更手段は、運転操作部に配置される操作レバーと、前記操作レバーと前記一対のリンク体の何れか一方と連結する一対のワイヤと、操作レバーを所定の位置に保持する保持機構とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、角度変更手段により一対のリンク体の回動角度が所定の回動角度に変更された場合、一対のリンクが、第二アームを介して、分草杆を刈取部に近接または離間する方向に移動させたうえ、所定の左右位置で保持することとなる。そのため、分草杆を所定の左右位置に安定した姿勢で保持することができる。
【0012】
請求項2においては、刈取部が機体に対して左右方向に移動した場合、または上下方向に昇降した場合、分草杆の先端側が基端側に対して刈取部に追従するように移動して、刈取部の動作を吸収する。よって、分草杆は、刈取部の動作の影響を受けずに所定の位置に保持されるので、分草杆が移動しようとすることで、所定の位置に位置決めされた位置調整機構に負荷がかかることを防止することができる。
【0013】
請求項3においては、高さ調整機構を用いて、分草杆の対地高さを変更することが可能となる。したがって、分草杆を圃場の植立穀稈に合わせた適切な対地高さに安定した姿勢で保持することができる。
【0014】
請求項4においては、操作レバーが操作されて、ワイヤが動かされることによって、一対のリンク体の第一アームに対する回動角度が変更、保持されることとなる。したがって、角度変更手段を簡単な構造で構成することができるとともに、分草杆を角度変更手段により容易に操作することができる。また、分草杆が所定の左右位置に安定した状態で保持されるため、組立時、メンテナンス時のワイヤの調整作業は容易であり、コンバインの整備作業を、効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】作業位置(P3)における分草杆の平面図。
【図4】分草杆の位置調整機構を示す斜視図。
【図5】分草杆の位置調整機構及び高さ調整機構を示す斜視図。
【図6】収納位置(P1)における分草杆の平面図。
【図7】(a)は収納位置(P1)における位置調整機構を示す平面図、(b)は作業位置(P2)における位置調整機構を示す平面図、(c)は作業位置(P3)における位置調整機構を示す平面図。
【図8】サイドコラムを示す斜視図。
【図9】分草杆の高さ調整機構を示す組立斜視図。
【図10】分草杆及び高さ調整機構を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図である。図3は作業位置(P3)における分草杆の平面図、図4は分草杆の位置調整機構を示す斜視図、図5は分草杆の位置調整機構及び高さ調整機構を示す斜視図である。図6は収納位置(P1)における分草杆の平面図、図7は(a)は収納位置(P1)における位置調整機構を示す平面図、(b)は作業位置(P2)における位置調整機構を示す平面図、(c)は作業位置(P3)における位置調整機構を示す平面図である。図8はサイドコラムを示す斜視図である。図9は分草杆の高さ調整機構を示す組立斜視図、図10は分草杆及び高さ調整機構を示す背面図である。
【0017】
まず、コンバイン1の全体構成を説明する。なお、以下の説明では、走行機体の進行方向を前側とし、進行方向に向かって左側を単に左側とし、同じく進行方向に向かって右側を単に右側とする。
図1、図2に示すように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1においては、トラックフレーム11の左右にクローラ式走行装置2が設けられ、トラックフレーム11の上に機台3が配設されている。機台3の上には脱穀部4が設けられ、該脱穀部4に扱胴5や当該扱胴5の側方に配設されたフィードチェン6、フィードチェン6のサイドカバー17などが備えられている。そして、脱穀部4の前方に2条刈りの刈取部7が設けられ、後方に排藁処理部8が設けられている。該排藁処理部8には排藁チェン9が備えられ、該排藁チェン9の始端がフィードチェン6の終端に臨むように配置されている。
【0018】
また、脱穀部4の側方に当該脱穀部4からの穀粒を搬入する穀物タンク10が設けられ、該穀物タンク10の後方及び上方に穀物タンク10内の穀粒を機外に排出する排出オーガ12が設けられている。穀物タンク10の前方には運転操作部13が設けられ、該運転操作部13に操向レバーや分草杆操作レバー21を備えるサイドコラム31、運転席15等が備えられ、該運転操作部13の下方にエンジン16が設けられている。こうして、コンバイン1はエンジン16の駆動によって圃場を走行移動しながら穀稈を刈取部7で連続的に刈取ると同時に脱穀部4で脱穀作業を行う。
【0019】
上記作業時、運転操作部13内に配設された分草杆操作レバー21を操作することで、分草杆30を側方に張り出し、これにより未刈取穀稈を分草し、刈取、脱穀作業中に未刈取穀稈を機体に巻き込んだり、搬送穀稈の株元が未刈取穀稈に当たって搬送が乱れたりするのを防止することが出来る。また、運転操作部13内から分草杆30を張出、収納操作することで、作業者の乗降負担が軽減される。さらに、分草杆30については、張出、収納状況を運転操作部13内から作業者が目視で確認し難い位置に配置されているので、該運転操作部13内に分草杆操作部を配置することで、分草杆30の張出や収納を忘れるといった虞を軽減することができる。なお、該分草杆操作レバー21は本実施形態では運転席側部のサイドコラム31に配置している。
【0020】
次に、図1、図2、図4、図8を用いて、運転操作部13について説明する。
図1及び図2に示すように、運転操作部13では、運転席15の前方に操向ハンドル14が配置され、該運転席15及び操向ハンドル14の側方に、サイドコラム31が設けられている。サイドコラム31は、平面状のパネル32と側壁部33とで構成されている。
【0021】
パネル32は、サイドコラム31上面の右側すなわち運転席15左側近傍に位置する平坦なパネルである。パネル32上には、主変速レバーのガイド孔35、副変速レバーのガイド孔36、脱穀クラッチレバーのガイド孔37、刈取クラッチレバーのガイド孔38が配置されている。なお、図8においては、各操作レバーのガイド孔35、36、37、38のみ記している。これらの各操作レバーは、コンバイン1運転中において、とりわけ使用頻度の高いレバーである。
【0022】
側壁部33は、サイドコラム31の左側及び前側に形成される側壁である。また、サイドコラム側壁部には、表示パネル34が配置され、上部に形成された把持部取付部39、39に、把持部49が取り付けられる。
【0023】
また、サイドコラム31には、分草杆操作レバー21が配置されている。分草杆操作レバーガイド23は、パネル32より運転席側、パネル32より若干低い位置に配置されている。分草杆操作レバー21は、刈取部7の左側下部に前後方向に配置した分草杆30を外側方への張出、収納を遠隔操作するレバーである。図4に示すように、分草杆操作レバー21は、前後方向(または左右方向)に揺動可能に軸支されており、該分草杆操作レバー21下部に連結された張出ワイヤ22a、収納ワイヤ22bによって、分草杆30と連繋されている。
【0024】
分草杆操作レバーガイド23には、ガイド孔23aが開口されている。ガイド孔23aは、分草杆操作レバー21の操作時に、分草杆操作レバー21を所望の位置にガイドするものである。ガイド孔23aは、本実施形態において、3段のノッチ孔が形成されている。より具体的には、ガイド孔23aは、図6に示した分草杆30の収納位置(P1)と、第一の作業位置(P2)(図示せず)、及び図3に示した第二の作業位置(P3)の3段階の操作位置を示すノッチ形状とされている。なお、第一の作業位置(P2)及び第二の作業位置(P3)は、分草杆30の張り出し量の異なる操作状態である。
【0025】
図4に示すように、分草杆操作部20において、分草杆操作レバーガイド23の下方には、上下方向に長尺に形成された略直方体状の板状の取付部材25が固定されている。該取付部材25の中間部には軸部材26が挿入固定されている。また、分草杆操作レバー21の下部には、軸部材26が挿入されるボス部27が形成されており、分草杆操作レバー21は取付部材25に対して回動自在に支持されている。また、ボス部27の先端には、略長方形状のプレート28が、固設されている。プレート28は、その中央部にボス部27が挿通された状態でボス部27に固定されており、該プレートの左右両端には、それぞれ張出ワイヤ22aと収納ワイヤ22bが連設されている。張出ワイヤ22aと収納ワイヤ22bは、取付部材25下端に固定された板状のワイヤガイド29に形成されたガイド孔29aに挿通され、下方に案内されている。
【0026】
このように構成される分草杆操作レバー21をD1(又はD2)方向に回動すると、分草杆操作レバー21の根元に固設されたプレート28が回転し、プレート28に連結された張出ワイヤ22a(又は収納ワイヤ22b)が引っ張られて、ワイヤと連結される分草杆30が回動し、分草杆30の張出(または収納)が行われる。
【0027】
また、図8に示すように、分草杆操作レバー21の下部には、分草杆操作レバー21を所望の位置に固定する保持機構78が設けられている。保持機構78は、分草杆操作レバー21の下部に挿通固定されたピン80と、分草杆操作レバー21の下部側に設けられ、ピン孔79a、79a、79aが形成されたガイド板79とで構成される。ガイド孔23aのノッチ孔に沿って移動する分草杆操作レバー21は、ピン80がガイド板79に形成されたピン孔79a、79a、79a挿入されることで掛止され、所望の位置に保持される。
【0028】
なお、分草杆操作レバー21のみを、パネル32より低い位置に配置することで、分草杆操作レバー21とその他各操作レバー(主変速レバー、副変速レバー、脱穀クラッチレバー、刈取クラッチレバー)との誤操作を防止できる。すなわち、分草杆30の操作性を向上できる。
【0029】
他方、このような構成とすることで、その他の各操作レバー(主変速レバー、副変速レバー、脱穀クラッチレバー、刈取クラッチレバー)をゆとりを持ってパネル32上に配置することができる。そのため、オペレーターは、運転中に使用頻度の高い各操作レバー(主変速レバー、副変速レバー、脱穀クラッチレバー、刈取クラッチレバー)を誤認識することがない。このようにして、コンバイン1の操作性を向上している。
【0030】
次に、分草杆30について説明する。
図3に、作業位置(P3)での分草杆30を示す。
分草杆30は、図2に示すように、刈取部の前端に配置された分草板18のうち、もっとも外側(本実施形態においては左側)に位置する分草板18から外後方へ延出されている。
【0031】
図3に示すように、分草杆30は金属管または金属棒からなる第一ガイド杆41と、該第一ガイド杆41に回動自在に接続された第二ガイド杆42とで平面視略弓状に構成されている。分草杆30は、図1に示すように、第一ガイド杆41の前端が、分草板18を支持する分草板支持フレーム19に回動自在に支持され、中途部が、位置調整機構40に回動自在に枢支されている。
【0032】
図3に示すように、分草杆30の第一ガイド杆41は、内筒46と、内筒46の先端部(前端部)に外嵌される外筒47とで伸縮自在に構成され、外筒47の先端部(前端部)が、分草板支持フレーム19に回動自在に支持され、内筒46の後端部が、第二ガイド杆42の前端部と回動自在に接続されている。また、内筒46の後部に、位置調整機構40と連結するためのブラケット48が設けられている。
【0033】
第二ガイド杆42の後端には環状部材43が固設され、図1、図3、図5に示すように、機台3後側部において、ブラケット44に支持されて機体前後方向に延設される支持杆45に、環状部材43が挿通されて、第二ガイド杆42の後端は前後摺動自在、かつ、上下回動自在に連結されている。
【0034】
このように、第一ガイド杆41の長手方向中途部が伸縮自在に構成され、また、第二ガイド杆42の後端は前後摺動自在に連結されることで、刈取部7が機体に対して左右方向に移動した場合、または上下方向に昇降した場合、分草杆30の前端側又は後端側が刈取部7に追従するように移動して、位置調整機構40が刈取部7の動作の影響を受けにくくなる。したがって、刈取部7の動作にかかわらず、分草杆30を所定の左右位置に安定した姿勢で保持することができる。
【0035】
従って、位置調整機構40と連動する分草杆操作レバー21が、刈取部7の左右スライドや昇降の影響を受けて移動することがないため、分草杆30と連結される分草杆操作レバー21のガイド孔23aに、余裕を持たせて大きく形成する必要がない。よって、ガイド孔23aに余裕を持たせることで、分草杆操作レバー21の位置が安定せず、分草杆操作レバー21と連結される分草杆30の位置が、不安定になる不具合が生じることがない。
【0036】
また、分草杆操作レバー21が分草杆30に連動して勝手に動いてしまわないように、分草杆操作レバー21を一方向に付勢して定位置に保持するバネを操作部に設ける必要もない。よって、分草杆操作レバー21全体を付勢する構成とすることで、操作部の構成が複雑となり、組立時、メンテナンス時に、バネの調整等、複雑な調整作業を行う必要が生じることもない。
【0037】
次に、分草杆30の対地高さを調整する、高さ調整機構50について説明する。
図4、図5、図9に示すように、高さ調整機構50は、機台3と位置調整機構40との間に配置される。詳しくは、機台3に取り付けたフレーム51と位置調整機構40の基部側に配置される支持フレーム53との間に配置される。
前記フレーム51の前端には略長方形状の支持側プレート52が左右方向に固定され、該支持側プレート52の一側(機体内側、つまり右側)にボルト孔52aが前後方向に開孔され、他側に、ボルト孔52aを中心とした円弧状の長孔52bが上下方向に形成されている。なお、フレーム51の前部には、張出ワイヤ22aと収納ワイヤ22bを案内する、略台形状の板状のワイヤガイド74が、フレーム51の長手方向に沿って固設されている。
【0038】
また、前記支持フレーム53上には、軸心方向に沿って回動側プレート54が固設され、該回動側プレート54には前記ボルト孔52aと長孔52bとの間隔に合わせて二つのボルト孔54a、54bが開孔されている。前記ボルト孔52aとボルト孔54aにはボルト55が挿入されナットにより締付固定され、長孔52bとボルト孔54bにはワッシャ57とスプリング58を外嵌したボルト56が挿入されナットにより締付固定される。こうして、回動側プレート54は支持側プレート52に対して、ボルト55を中心に長孔52bの範囲内で上下に回動可能となり、任意の位置で保持可能とされる。
【0039】
このようにしてプレート52の一端側のボルト孔を長孔52bに形成したことで、プレートの一端側の高さを、調整することが出来、よって、図10に示すように、位置調整機構40の機体に対する上下角度を変更することが出来る。よって、分草杆30の対地高さを調整することが出来る。
【0040】
なお、分草杆の高さ調整機構50は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、機体側にラック、位置調整機構40側にピニオンを設ける構成として、モーター等でピニオンを回転させて、分草杆30の高さを自動的に調整できるような構成であってもよい。
【0041】
次に、分草杆30の位置調整機構40について説明する。
図3に示すように、分草杆30を支持して折り畳み収納可能とする位置調整機構40は、機体側に支持される第一アーム61と、一端部を前記第一アーム61に回動自在に連結して、互いに所定距離を隔てて配置される前後一対のリンク体62a、62bと、一端部を前記一対のリンク体62a、62bの他端部に回動自在に連結して、他端部を前記分草杆30に回動自在に連結する第二アーム63と、前記一対のリンク体62a、62bの前記第一アーム61に対する回動角度を任意の回動角度に変更、保持可能な角度変更手段とで構成されている。
【0042】
角度変更手段は、第一アーム61の基部に一端側が連結される張出ワイヤ22a、収納ワイヤ22bと、張出ワイヤ22a、収納ワイヤ22bの他端側に連結される分草杆操作レバー21と、分草杆操作レバー21を所定の位置に保持する保持機構78とで構成されている。
【0043】
図4、図5に示すように、第一アーム61は、位置調整機構40を支持する支持フレーム53の先端部に固定された略長方形状の第一フレーム65と、第一フレーム65の上方に、間隔をあけて平行に配置された略長方形状の第二フレーム66と、第一フレーム65と第二フレーム66とを連結し、リンク体62a、62bの一側を回動自在に支持する二本の軸部材67a、67bとで構成されている。第一フレーム65と第二フレーム66との間の空間には後述するワイヤ取付片73aが挿入され、回動時にリンク体62bが捩じれないようにガイドするとともに補強している。
【0044】
第二アーム63は棒状又はパイプ状に形成されたアーム部材75と、アーム部材75の一端側の上方に、アーム部材75と間隔をあけて平行に配置されてアーム部材75より短尺のプレート76と、アーム部材75の一端側に所定間隔を空けて配置され、アーム部材75とプレート76とを連結し、リンク体62a、62bの他側を回動自在に支持する二本の軸部材68a、68bとで構成されている。また、第二アーム63の他端側にはボス部69が設けられている。
【0045】
リンク体62a、62bは、棒状又はパイプ状に形成され、機体前方側に配置されるリンク体62aの両端にはボス部70a、71aが形成され、機体後方側に配置されるリンク体62bの両端にはボス部70b、71bが形成されている。
【0046】
リンク体62aの一端側のボス部70aは、第一アーム61の機体前方側に配置される軸部材67aに挿通されて支持され、他端側のボス部71aは、第二アーム63の機体前方側に配置された軸部材68aに挿通されて支持されている。また、リンク体62bの一端側のボス部70bは、第一アーム61の機体後方側に配置された軸部材67bに挿通されて支持され、他端側のボス部71bは、第二アーム63の機体後方側に配置された軸部材68bに挿通されて支持されている。
そして、前側のリンク体62aの長さは後側のリンク体62bよりも長く形成されている。また、機体内側の第二フレーム66は外側のプレート76よりも長く形成されている。
言い換えれば、軸部材67aと軸部材68aの間の長さは、軸部材67bと軸部材68bの間の長さよりも長く、軸部材67aと軸部材67bの間の長さは、軸部材68aと軸部材68bの間の長さよりも長く形成されている。
【0047】
このように、リンク体62a、62bと第一アーム61と第二アーム63とは、互いに回動自在に連結して、四節リンクを構成している。
【0048】
また、第二アーム63の他側先端にはボス部69が設けられ、該ボス部69は第一ガイド杆41の後部に設けられたブラケット48に掛架された軸部材72によって枢支される。
【0049】
また、リンク体62bの機体側には、ワイヤ取付片73a、73bが前後方向に突出して設けられている。該ワイヤ取付片73aの先端に張出ワイヤ22aの一端が連結され、該ワイヤ取付片73bの先端に収納ワイヤ22bの一端が連結される。ワイヤ22a、22bの中途部は、機体のフレーム51に固設されるワイヤガイド74のワイヤガイド孔74a、74bにそれぞれ挿通されて案内される。
【0050】
なお本実施形態においては、機体後部側のリンク体62b側にワイヤ22a、22bを連結する構成としたが、ワイヤ22a、22bは機体前部側のリンク体62a側に連結する構成としてもよい。
【0051】
このような構成において、分草杆操作レバー21を図4における矢印D1方向に回動させると、プレート28は矢印D3方向に回転され、張出ワイヤ22aが引っ張られて、リンク体62bに固設したワイヤ取付片73aも引っ張られ、図4、図7に示すように、リンク体62bが軸部材67bを中心に機体内方向(矢印D5方向)に回転する。この回転により、リンク体62aが矢印D7方向に回転し、第二アーム63が前後方向から左右方向に向きを変えながら側方へ移動され、分草杆30が機体外側に張り出すこととなる。リンク体62bは、角度変更手段によって、第一アーム61に対する角度αが変更された位置に保持されるので、第一アーム61、第二アーム63、リンク体62a、62bで構成される四角形の形状は決定され、リンク体62a、62b、第二アーム63は位置決めされる。よって、位置決めされた第二アーム63に支持される分草杆30は、張り出した位置に保持される。
【0052】
このとき、軸部材67a、67b、68a、68bのそれぞれの間の長さが同じ長さであると、第二アーム63はリンク体62の長さ分平行移動して外側へ移動するだけである。しかし、本実施形態においては、前述のようにリンク体62aをリンク体62bよりも長くし、第二フレーム66をプレート76よりも長く構成している。第二アーム63は外側へ移動しながら先端側が外方向へ回動し、分草杆30は、リンク体62bの回動に対して所定の位置に位置決めされる範囲(いわゆる支点越えをしない範囲)において、リンク体62aと第二アーム63の長さ分外側へ、大きく張り出すことが可能となっている。本実施形態においては、図7に示すように、ワイヤ取付片73aの近傍に、リンク体62bの回動を規制するストッパ77が設けることで、分草杆30が支点越えすることが防止されている。
【0053】
更に、分草杆30の前端は分草板支持フレーム19に回動自在に支持されており、分草杆30が外側張り出す時に、第二アーム63の先端(ブラケット48)は前後方向にも移動するが、分草杆30の内筒46は先端部(前端部)が外筒47に挿入されて伸縮自在とされて、第二ガイド杆42の後端は支持杆45に前後摺動自在、かつ、上下回動自在に連結されているので、分草杆30は捩じれたり大きな負荷がかかることなく張り出すことができるのである。
こうして、分草杆30を図6に示す収納位置(P1)から図3に示す作業位置(P2)、作業位置(P3)とすることができる。
【0054】
また前記と逆に、分草杆操作レバー21を図4における矢印D2方向に回動させると、プレート28は矢印D4方向に回転され、収納ワイヤ22bが引っ張られて、ワイヤ取付片73bが矢印D6方向に回転される。この回転により、リンク体62bが図7のD8方向に回転され、第二アーム63が、機体内方向に移動して、分草杆30が図3に示す作業位置(P3)、作業位置(P2)から図6に示す収納位置(P1)に移動させることができる。第二アームは内側に移動しながら先端側が内方向に回動するので、リンク体62bの回動に対して所定の位置に位置決めされる範囲(いわゆる支点越えをしない範囲)において、分草杆30は、より機体側に寄せられた状態で収納されて、その位置に保持される。
【符号の説明】
【0055】
1 コンバイン
7 刈取部
21 分草杆操作レバー
22a 張出ワイヤ
22b 収納ワイヤ
30 分草杆
40 位置調整機構
61 第一アーム
62a リンク体
62b リンク体
63 第二アーム
78 保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部を刈取部に回動自在に連結して、前記刈取部、または前記刈取部および機体の左右一側方に機体前後方向に沿って配置される分草杆と、
前記分草杆を前記刈取部に近接または離間する方向に移動可能に支持して、前記分草杆の左右位置を調整可能な位置調整機構とを備えるコンバインにおいて、
前記位置調整機構は、
前記刈取部または前記機体に支持される第一アームと、
一端部を前記第一アームに回動自在に連結して、互いに所定距離を隔てて配置される前後一対のリンク体と、
一端部を前記一対のリンク体の他端部に回動自在に連結して、他端部を前記分草杆に回動自在に連結する第二アームと、
前記一対のリンク体の前記第一アームに対する回動角度を任意の回動角度に変更、保持可能な角度変更手段と、
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記分草杆は、機体前後方向に伸縮可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記分草杆の対地高さを調整する高さ調整機構を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記角度変更手段は、
運転操作部に配置される操作レバーと、
前記操作レバーと前記一対のリンク体の何れか一方と連結する一対のワイヤと、
操作レバーを所定の位置に保持する保持機構とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−50328(P2011−50328A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203050(P2009−203050)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】