コンバイン
【課題】疎植栽培に有り勝ちな穀稈層の厚い搬送穀稈を、脱穀作業に適する穀稈層まで薄く均しながらフィードチェンに受継がせ、脱穀装置の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を高める。
【解決手段】走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成とする。
【解決手段】走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からコンバインを構成する走行フレームに搭載した脱穀装置のフィードチェンの始端部には、供給される穀稈が一時的に多量になっても詰まらせることなく、円滑に脱穀装置に供給できる各種の工夫が施されている。
【0003】
例えば、実開平5−48636号公開実用新案公報(特許文献1参照)には、図面と共に、次のようなに記載されている。すなわち、
〔目的〕搬送穀稈が急増しても挟持レールの始端部での穀稈詰まりをなくして円滑にフィードチェンに受渡しができるコンバインを提供する。
【0004】
〔構成〕フィードチェン2に対向する挟持レール3の始端部に、フィードチェン2で搬送される穀稈に上方から接触して追従回転可能な回転ローラ13を遊 転支承する。
と記載され、実施例として、穀稈の穂先側に複数個の噛込みローラ9が軸架され、それと同軸(伝動軸11)の株元側に回転ローラ13とが軸架されて、供給される穀稈量に応じて挟持レール3と共に上下に移動しながら円滑に穀稈の移送ができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−48636号公開実用新案公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、水稲の栽培方法として、植付時に疎植を行なう疎植栽培法が行なわれているが、この方法によると、通風や、採光が良くなって、稲株は、太く、分けつ本数も多くなって健苗に成育するために増収になるが、一株の本数が増えて、太くなるために、コンバイン前部の刈取搬送装置による刈取、搬送の工程では穀稈の層厚が厚くなることが知られている。したがって、疎植栽培の穀稈は、そのままフィードチェンに受継がれて脱穀装置に供給すると、穀稈層が厚いために、脱穀選別能力が追い付かず、脱穀作用が不充分となって、多くの場合、扱ぎ残しが発生し、未脱粒のまま機外に排出される部分が多くなる課題があった。
【0007】
更に、このような疎植栽培稲の脱穀作業では、一度に多量の穀稈が脱穀装置に供給されるから、前述のとおり、脱穀、選別能力が不足して、枝梗付着粒の発生が増大し、三番飛散やその他のロスも多く発生する課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、前記脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成としたことを特徴とするコンバインとした。
【0009】
上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、刈取搬送装置(3)から受継いだ搬送穀稈の層を、互いの搬送速度の差によって薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に受継がせ、疎植栽培でありながら、適確に脱穀、選別作用を行わせてロスをなくし、前記課題を解決するものとした。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、前記フィードチェン(5)の搬送始端部(5a)内側に沿わせると共に搬送方向を同一にして配置し、上側供給チェン(6)の搬送速度を下側供給チェン(7)の搬送速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0011】
上側供給チェン(6)は、刈取搬送装置(3)から受継いだ穀稈の層の上層部分を、下側供給チェン(7)が搬送する下層部分より速く送って、穀稈の層を順次薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に、極力薄い層厚にして受継がせるものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記上側供給チェン(6)の穀稈搬送工程を下側供給チェン(7)の穀稈搬送工程よりも長く設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインとした。
【0013】
搬送穀稈の層厚を薄くするための上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)からフィードチェン(5)への穀稈の受継ぎを整然と乱れなく行なわんとするものである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)の双方の搬送ラグ(8)または上側供給チェン(6)の搬送ラグ(8)のみを、フィードチェン(5)の搬送ラグ(9)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0015】
搬送穀稈の表面の層に浅く係合して移送しながら層厚を薄くする方向に均し易くするために、搬送ラグ(8)の高さを低くしたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によると、上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)が、刈取搬送装置(3)から受継いだ搬送穀稈の層を、互いの搬送速度の差によって穀稈層の上層部分と下層部分とに差をつけて薄く均しながら搬送して薄い穀稈層にすることができる。従って、疎植栽培に有り勝ちな穀稈層の厚い搬送穀稈を、脱穀作業に適する穀稈層まで薄く均しながら、フィードチェン(5)に受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、一方の上側供給チェン(6)が、刈取搬送装置(3)から受継いだ穀稈層の上層部分を係止し、他方の下側供給チェン(7)が係止して搬送する下層部分より速く送って、上下の移送速度の差によって穀稈の層を順次、薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に、薄い層厚にして受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を更に高めることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果を奏するうえに、上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)によって搬送穀稈の層厚を薄く均しながら搬送して、フィードチェン(5)へ穀稈を受継がせる工程において、フィードチェン(5)に対向する上側供給チェン(6)の搬送工程を長くすることによってフィードチェン(5)への受継ぎを、乱れなく、整然と行うことができ、脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によると、層状になって送られる搬送穀稈の表層部分に浅く係合して移送しながら、厚い層厚を薄くする方向に上下の速度差によって均し易くすることができ、フィードチェン(5)に、薄い層厚にして受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の要部側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの側面図
【図4】実施例の伝動機構図
【図5】コンバインの平面図
【図6】上側供給チェンに開閉機構を設けた平面図
【図7】上側供給チェンと開閉機構との側面図
【図8】前図7の作用側面図
【図9】上側供給チェンの開閉方向を変えた別実施例の作用側面図
【図10】上側供給チェンの別実施例の平面図
【図11】前図10から上側供給チェンを取外した作用側面図
【図12】上側供給チェンの駆動に関する別実施例の平面図
【図13】上側供給チェンの伝動機構の平面図
【図14】上下供給チェンの別実施例の側面図
【図15】上下供給チェンと引継ぎガイドとの側面図
【図16】上下供給チェンの配置に関する別実施例の平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を具体的に説明する。
まず、コンバイン4は、図1、乃至図3に示すように、クローラ10,10を装備した走行フレーム1上に、脱穀装置2を、穀稈供給口11を前側に位置させて搭載し、その前方には4条刈の刈取搬送装置3を設けて構成している。そして、脱穀装置2は、前記穀稈供給口11より前側に搬送始端部分5aを位置したフィードチェン5と挟扼杆12とを、扱口に沿わせて後方まで延長し、穂先側を扱室に挿入した穀稈の株元側を挟持して後方の排藁部まで搬送する構成としている。
【0022】
そして、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、図面に示すように、前記フィードチェン5の搬送始端部分5aに沿わせて内側(図2の平面視参照)に配置し、後述する刈取搬送装置3の搬送終端部から受継いだ搬送穀稈をフィードチェン5に受継がせる構成としている。この場合、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、伝動機構の一例として、図2に示すように、刈取入力プーリー15、刈取入力軸16、出力プーリー17、入力プーリー18、供給チェン入力軸19等を介して伝動される構成としている。なお、下側供給チェン7は、上側供給チェン6から減速機構を介して伝動されるが、その機構は、つぎに述べるように、速度差を与えるために、図示は省略したが,通常の減速機構を採用した構成としている。
【0023】
そして、上下一対の供給チェン6,7は、上記した減速機構を利用して、上側供給チェン6の搬送速度を、下側供給チェン7の速度より高速で駆動する構成としている。更に、上側供給チェン6は、搬送穀稈を係止して搬送する工程を、下側供給チェン7の搬送工程より長くして、フィードチェン5の上方から穀稈を搬送しながら円滑に受継がせる構成としている。この場合、上側供給チェン6は、図1に示す実施例のように、搬送終端部分を下側供給チェン7の搬送終端部分より後方まで穀稈への作用位置を伸ばして搬送工程を長く構成することによって、フィードチェン5への穀稈の受継ぎをより正確にすることができる。そして、上側供給チェン6は、その搬送終端部分を挟扼杆12の始端部分に、内側から前後方向に重ねて配置すると、フィードチェン5への穀稈の受継ぎを、更に正確にすることができる。
【0024】
そして、前記上下一対の供給チェン6,7は、その搬送ラグ8を、フィードチェン5の搬送ラグ9の高さより低い構成にしているが、その作用については後述する。
つぎに、刈取搬送装置3は、走行フレーム1上の前記脱穀装置2の前側に位置する懸架台上に、基部を懸架・支持した刈取後フレーム20と、この刈取後フレーム20の前部に連結した横向きの伝動ケース21とを取付け用のベースとして、前部から分草杆22、穀稈引起し装置23、刈取装置24、穀稈搬送装置25等を取付け支持し、伝動可能に構成している。
【0025】
つぎに、疎植栽培によって成育させ稔った稲の圃場におけるコンバイン作業についてその作用を説明する。
まず、コンバイン4は、エンジンを始動して回転各部を駆動しながら圃場の刈取脱穀作業を開始すると、圃場の穀稈は、前部低位置の分草杆22によって分草されながら穀稈引起し装置23の引起しラグに係止されて、倒伏状態から順次直立状態に引起し作用を受ける。そして、穀稈は、株元が刈取装置24に達して刈り取られ、穀稈搬送装置25の始端部に挟持されて順次上方に搬送される。この場合、圃場の穀稈は、疎植栽培によって成育されているから、従来の通常栽培に比較して、一株の分けつ本数が大幅に増えて束そのものが大束に成長し、稔りも多く増収が見込まれる状態になっている。
【0026】
このようにして、搬送穀稈は、刈取搬送装置3の穀稈搬送装置25の搬送終端部分からフィードチェン5の搬送始端部分5aに達して、上側供給チェン6と下側供給チェン7との始端部分に受継がれて上下で挟持した状態に搬送が開始される。そのとき、受継がれた穀稈は、層が上下に厚く高速の上側供給チェン6と低速の下側供給チェン7とに挟持されて上層が速く送り方向に剥ぎ取られる状態で送られ、それに対して、穀稈層の下層部分が遅れながら送られるから、穀稈の上層と下層との間で前後に搬送速度のズレが生じて穀稈層が前後に引き伸ばされる作用が働き、搬送が進むにつれて順次薄く均されながら送られる。
【0027】
この作用中に、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、搬送ラグ8の高さが低いために搬送穀稈の上層部分と下層部分とに浅く引っ掛かった状態で回動して深く穀稈層に食い込まず、均し作用が上層の穀稈に効果的に働くことができる。
【0028】
このようにして、上下供給チェン6,7は、目的を達成した後の比較的薄い層に均した穀稈層を搬送しながら順次フィードチェン5側に自然に受継がせて脱穀装置2の穀稈供給口11から扱室内に供給するのである。この場合、穀稈は、株元がフィードチェン5と挟扼杆12とによってがっちり挟持されて、穂先側が扱室内に挿入された状態で移動しながら脱穀作用を受けるのである。そして、脱穀穀稈は、扱室に供給された穀稈の層が、説明したように、上下供給チェン6,7の作用を受けて層の厚さが脱穀装置2の脱穀・選別能力に合った程度に薄く均されて供給されているから、脱穀、選別作用が適確に行われ、従来の疎植栽培の稲に見られた課題を解消することができた。
【0029】
以下、他の関連する実施例について説明する。
既に説明したように、上下供給チェン6,7の搬送速度の関係については、上側供給チェン6を下側供給チェン7に比較して速く駆動する構成を説明したが、フィードチェン5を加えた三者の速度関係は、フィードチェン5>上側供給チェン6>下側供給チェン7の順番に構成するか、又は、フィードチェン=上側供給チェン6として、両チェンを同速にし、それらよりも下側供給チェン7の速度を遅くする構成にしても良い。
【0030】
そして、上側供給チェン6は、フィードチェン5への穀稈受継ぎ作用をより円滑に行うためには、搬送速度を最も速く設定して、上側供給チェン6>フィードチェン5>下側供給チェン7の速度関係に構成すると効果的である。このように、上側供給チェン6の搬送速度を速くすると、扱室に供給された穀稈は、穂先先行で送り込まれて脱穀時の姿勢が良好に保たれる利点があり、脱穀性能も向上する。
【0031】
つぎに、上側供給チェン6と下側供給チェン7との搬送速度を、走行速度(刈取速度)にシンクロさせて構成した実施例について説明する。
通常、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、刈取搬送装置3の穀稈搬送装置25から搬送穀稈を受継いだ後、薄い層に均してフィードチェン5に受継がせる機能を有するものであるから、作業中は、常に、刈取速度に同調する速度で駆動されることが望ましい。そこで、実施例は、図4に示すように、上側供給チェン6と下側供給チェン7とを走行速度にシンクロさせた構成としている。
【0032】
すなわチェンジン30は、図4に示すように、回転動力を、HST31から走行ミッション装置32側と、脱穀ギヤボックス33側とに分岐して伝動する構成としている。そして、該脱穀ギヤボックス33は、上側供給チェン6と下側供給チェン7と、刈取搬送装置3とに伝動するHST34を装備した構成としている。そして、該HST34は、前記走行ミッション装置31に車速センサを設け、その検出情報に基づいて前記上側供給チェン6と下側供給チェン7用のHST34を、制御する構成としている。
【0033】
このように、前記上側供給チェン6と下側供給チェン7は、走行ミッション装置32から検出された情報に基づいてHST34のトラニオン軸が制御操作され、走行速度に同調した速度で穀稈搬送ができるように制御される構成となっている。したがって、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、走行速度、すなわち、刈取作業速度(能率)に応じて駆動されて刈取搬送装置3側から搬送穀稈を受継ぎ、脱穀作業に適する層厚まで薄く均してフィードチェン5に受継がせることができるものとなった。
【0034】
なお、前記脱穀ギヤボックス33は、既に公知の構成であるから詳細な説明を省略したが、脱穀装置2の回転各部と刈取搬送装置の回転各部とに伝動する構成であるが、刈取搬送装置の回転各部には、走行速度に同調した回転動力を伝動できるように、前記HST34を装備した構成としている。
【0035】
つぎに、図5に示した実施例を説明する。
既に、図2に基づいて、上側供給チェン6の伝動機構を説明したが、実施例は、図2に示した入力プーリー18に代えて、図5に示すように、割りプーリーからなる変速プーリー36を装備したものである。該実施例に係る上側供給チェン6は、図5に示すように、刈取入力プーリー15から刈取入力軸16、出力プーリー17、からベルト37を介して変速プーリー36に伝動され、変速操作によって供給チェン入力軸19が変速され、搬送速度が変速できる構成となっている。
【0036】
このように、実施例は、上側供給チェン6の搬送速度を穀稈の量に対応して変速することによって、搬送姿勢を変えたり、搬送ラグ8による均し状態に変化を与えて穀稈層を均すことができる。
【0037】
つぎに、上側供給チェン6と下側供給チェン7とから構成した供給チェン6,7において、手扱ぎ時に邪魔になる上側供給チェン6を、比較的容易に着脱することができる実施例を、図6、乃至図11に基づいて説明する。
【0038】
まず、上側供給チェン6は、図8に示すように、前部支持軸40を回動支点にして後部を上方に回動(跳ね上げる)する着脱構成と、逆に、図9に示すように、後部の供給チェン入力軸19を回動支点にして上方に回動する構成の二つの実施例が考えられる。
【0039】
そこで、上側供給チェン6は、図7、及び図8に示す場合、供給チェン入力軸19をカップリング41(図6参照)によって係脱自在に接続し、その供給チェン入力軸19側に円弧状軸保持具42と先端にフック43を設けた着脱ハンドル44とからなる開閉機構45を設けて着脱自在に構成している。この場合、着脱ハンドル44の開閉操作によって、先端部のフック43を、定置側の固定ピン46に係脱して固定と離脱とに切り替え操作する構成としている。
【0040】
つぎに、上側供給チェン6は、図9に示すように、供給チェン入力軸19を回動支点にする場合には、図6、乃至図8に示した前記実施例の逆側に開閉機構45を装置する構成にすればよい。
【0041】
また、上側供給チェン6は、図10、及び図11に示すように、前部支持軸40と後部の入力軸19との前後両方を分離して完全に上方に取外す構成では、図8、及び図9の実施例を組み合わせることによって構成することができる。
【0042】
以上述べたように、上側供給チェン6は、着脱ハンドル44の操作によって、固定ピン46からフック43を回動して外し、開閉機構45を開放すれば、脱穀装置2から何れか一方側を跳ね上げるか、或いは全体を取り外してフィードチェン5の搬送始端部分5aを開放することができる。したがって、作業者は、始端部が解放されたフィードチェン5に、例えば、枕刈穀稈を手作業で供給しながら手扱ぎ作業を行うことができる。
【0043】
つぎに、図12に示した構成は、上側供給チェン6に専用の制御モータ48を伝動可能に装備してモータ駆動に構成し、伝動構成を簡略化した実施例である。この実施例の場合は、前記制御モータ48を、刈取駆動部に装備した回転センサに制御可能に接続することによって、刈取側とシンクロさせた駆動をすることが比較的簡単な構成で可能となる。既に、図4に示した実施例において、走行速度に、上側供給チェン6をシンクロさせて伝動する構成の説明をしているが、同様の作用・効果を簡単な構成で得ることができる特徴がある。
【0044】
更に、図12の実施例は、前部の刈取搬送装置3における穀稈の搬送中に穀稈量(搬送穀稈の層厚)検出センサを装備して、穀稈量が一定に達しない場合、前記制御モータ48を停止する制御を行う構成にすることができる。この場合、上側供給チェン6は、既に説明した、図8に示すように、上方に回動しておけば、搬送穀稈の障害を回避することもできて有効に活用できる。
【0045】
つぎに、図13に示した実施例は、刈取入力軸16の出力プーリー17と、供給チェン入力軸19側の入力プーリー18との間に巻き掛けているベルト37にテンションローラを設けてテンションクラッチ装置49を装備し、上側供給チェン6への伝動を入り、切操作ができる構成としている。
【0046】
このように構成すると、上側供給チェン6は、必要時に伝動し、不要時には伝動を中断することができる。
つぎに、図14に示した実施例は、上側供給チェン6と下側供給チェン7は、入り口側では穀稈の厚い層を受継ぐことができるように中間部分以降に比較して上下方向に広く開口させた構成とし、刈取搬送装置3側からの層の厚い穀稈でも比較的楽に受け入れができるようにしたものである。
【0047】
そして、図15に示した実施例は、挟扼杆12から前方側に引継ぎガイド50を前方側に延長して配置し、上下一対の供給チェン6,7からフィードチェン5と挟扼杆12側へ受継ぎ乱れなく、整然と行なわんとするものである。
【0048】
そして、図16に示した実施例は、脱穀装置2の穀稈供給口11のすぐ前において、フィードチェン5の内側に下側供給チェン7を配置し、該チェン7の内側に上側供給チェン6を配置して構成している。実施例は、図面のように構成することによって、フィードチェン5の搬送始端部分5aにおいて、高速で搬送する上側供給チェン6を最も内側に設けて穀稈の穂先側を先行搬送させて穂先先行の搬送状態を形成し、脱穀作用の精度の向上を図る効果を有するものである。
【符号の説明】
【0049】
1 走行フレーム
2 脱穀装置
3 刈取搬送装置
4 コンバイン
5 フィードチェン
5a フィードチェンの搬送始端部分
6 上側供給チェン
7 下側供給チェン
8 上下供給チェンの搬送ラグ
9 フィードチェンの搬送ラグ
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からコンバインを構成する走行フレームに搭載した脱穀装置のフィードチェンの始端部には、供給される穀稈が一時的に多量になっても詰まらせることなく、円滑に脱穀装置に供給できる各種の工夫が施されている。
【0003】
例えば、実開平5−48636号公開実用新案公報(特許文献1参照)には、図面と共に、次のようなに記載されている。すなわち、
〔目的〕搬送穀稈が急増しても挟持レールの始端部での穀稈詰まりをなくして円滑にフィードチェンに受渡しができるコンバインを提供する。
【0004】
〔構成〕フィードチェン2に対向する挟持レール3の始端部に、フィードチェン2で搬送される穀稈に上方から接触して追従回転可能な回転ローラ13を遊 転支承する。
と記載され、実施例として、穀稈の穂先側に複数個の噛込みローラ9が軸架され、それと同軸(伝動軸11)の株元側に回転ローラ13とが軸架されて、供給される穀稈量に応じて挟持レール3と共に上下に移動しながら円滑に穀稈の移送ができる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−48636号公開実用新案公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、水稲の栽培方法として、植付時に疎植を行なう疎植栽培法が行なわれているが、この方法によると、通風や、採光が良くなって、稲株は、太く、分けつ本数も多くなって健苗に成育するために増収になるが、一株の本数が増えて、太くなるために、コンバイン前部の刈取搬送装置による刈取、搬送の工程では穀稈の層厚が厚くなることが知られている。したがって、疎植栽培の穀稈は、そのままフィードチェンに受継がれて脱穀装置に供給すると、穀稈層が厚いために、脱穀選別能力が追い付かず、脱穀作用が不充分となって、多くの場合、扱ぎ残しが発生し、未脱粒のまま機外に排出される部分が多くなる課題があった。
【0007】
更に、このような疎植栽培稲の脱穀作業では、一度に多量の穀稈が脱穀装置に供給されるから、前述のとおり、脱穀、選別能力が不足して、枝梗付着粒の発生が増大し、三番飛散やその他のロスも多く発生する課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、前記脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成としたことを特徴とするコンバインとした。
【0009】
上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、刈取搬送装置(3)から受継いだ搬送穀稈の層を、互いの搬送速度の差によって薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に受継がせ、疎植栽培でありながら、適確に脱穀、選別作用を行わせてロスをなくし、前記課題を解決するものとした。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、前記フィードチェン(5)の搬送始端部(5a)内側に沿わせると共に搬送方向を同一にして配置し、上側供給チェン(6)の搬送速度を下側供給チェン(7)の搬送速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0011】
上側供給チェン(6)は、刈取搬送装置(3)から受継いだ穀稈の層の上層部分を、下側供給チェン(7)が搬送する下層部分より速く送って、穀稈の層を順次薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に、極力薄い層厚にして受継がせるものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記上側供給チェン(6)の穀稈搬送工程を下側供給チェン(7)の穀稈搬送工程よりも長く設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインとした。
【0013】
搬送穀稈の層厚を薄くするための上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)からフィードチェン(5)への穀稈の受継ぎを整然と乱れなく行なわんとするものである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)の双方の搬送ラグ(8)または上側供給チェン(6)の搬送ラグ(8)のみを、フィードチェン(5)の搬送ラグ(9)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0015】
搬送穀稈の表面の層に浅く係合して移送しながら層厚を薄くする方向に均し易くするために、搬送ラグ(8)の高さを低くしたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によると、上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)が、刈取搬送装置(3)から受継いだ搬送穀稈の層を、互いの搬送速度の差によって穀稈層の上層部分と下層部分とに差をつけて薄く均しながら搬送して薄い穀稈層にすることができる。従って、疎植栽培に有り勝ちな穀稈層の厚い搬送穀稈を、脱穀作業に適する穀稈層まで薄く均しながら、フィードチェン(5)に受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、一方の上側供給チェン(6)が、刈取搬送装置(3)から受継いだ穀稈層の上層部分を係止し、他方の下側供給チェン(7)が係止して搬送する下層部分より速く送って、上下の移送速度の差によって穀稈の層を順次、薄く均しながら搬送してフィードチェン(5)に、薄い層厚にして受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を更に高めることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果を奏するうえに、上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)によって搬送穀稈の層厚を薄く均しながら搬送して、フィードチェン(5)へ穀稈を受継がせる工程において、フィードチェン(5)に対向する上側供給チェン(6)の搬送工程を長くすることによってフィードチェン(5)への受継ぎを、乱れなく、整然と行うことができ、脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によると、層状になって送られる搬送穀稈の表層部分に浅く係合して移送しながら、厚い層厚を薄くする方向に上下の速度差によって均し易くすることができ、フィードチェン(5)に、薄い層厚にして受継がせ、脱穀装置(2)の脱穀選別能力に合わせてロスを最小に止めて穀粒の回収効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の要部側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの側面図
【図4】実施例の伝動機構図
【図5】コンバインの平面図
【図6】上側供給チェンに開閉機構を設けた平面図
【図7】上側供給チェンと開閉機構との側面図
【図8】前図7の作用側面図
【図9】上側供給チェンの開閉方向を変えた別実施例の作用側面図
【図10】上側供給チェンの別実施例の平面図
【図11】前図10から上側供給チェンを取外した作用側面図
【図12】上側供給チェンの駆動に関する別実施例の平面図
【図13】上側供給チェンの伝動機構の平面図
【図14】上下供給チェンの別実施例の側面図
【図15】上下供給チェンと引継ぎガイドとの側面図
【図16】上下供給チェンの配置に関する別実施例の平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を具体的に説明する。
まず、コンバイン4は、図1、乃至図3に示すように、クローラ10,10を装備した走行フレーム1上に、脱穀装置2を、穀稈供給口11を前側に位置させて搭載し、その前方には4条刈の刈取搬送装置3を設けて構成している。そして、脱穀装置2は、前記穀稈供給口11より前側に搬送始端部分5aを位置したフィードチェン5と挟扼杆12とを、扱口に沿わせて後方まで延長し、穂先側を扱室に挿入した穀稈の株元側を挟持して後方の排藁部まで搬送する構成としている。
【0022】
そして、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、図面に示すように、前記フィードチェン5の搬送始端部分5aに沿わせて内側(図2の平面視参照)に配置し、後述する刈取搬送装置3の搬送終端部から受継いだ搬送穀稈をフィードチェン5に受継がせる構成としている。この場合、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、伝動機構の一例として、図2に示すように、刈取入力プーリー15、刈取入力軸16、出力プーリー17、入力プーリー18、供給チェン入力軸19等を介して伝動される構成としている。なお、下側供給チェン7は、上側供給チェン6から減速機構を介して伝動されるが、その機構は、つぎに述べるように、速度差を与えるために、図示は省略したが,通常の減速機構を採用した構成としている。
【0023】
そして、上下一対の供給チェン6,7は、上記した減速機構を利用して、上側供給チェン6の搬送速度を、下側供給チェン7の速度より高速で駆動する構成としている。更に、上側供給チェン6は、搬送穀稈を係止して搬送する工程を、下側供給チェン7の搬送工程より長くして、フィードチェン5の上方から穀稈を搬送しながら円滑に受継がせる構成としている。この場合、上側供給チェン6は、図1に示す実施例のように、搬送終端部分を下側供給チェン7の搬送終端部分より後方まで穀稈への作用位置を伸ばして搬送工程を長く構成することによって、フィードチェン5への穀稈の受継ぎをより正確にすることができる。そして、上側供給チェン6は、その搬送終端部分を挟扼杆12の始端部分に、内側から前後方向に重ねて配置すると、フィードチェン5への穀稈の受継ぎを、更に正確にすることができる。
【0024】
そして、前記上下一対の供給チェン6,7は、その搬送ラグ8を、フィードチェン5の搬送ラグ9の高さより低い構成にしているが、その作用については後述する。
つぎに、刈取搬送装置3は、走行フレーム1上の前記脱穀装置2の前側に位置する懸架台上に、基部を懸架・支持した刈取後フレーム20と、この刈取後フレーム20の前部に連結した横向きの伝動ケース21とを取付け用のベースとして、前部から分草杆22、穀稈引起し装置23、刈取装置24、穀稈搬送装置25等を取付け支持し、伝動可能に構成している。
【0025】
つぎに、疎植栽培によって成育させ稔った稲の圃場におけるコンバイン作業についてその作用を説明する。
まず、コンバイン4は、エンジンを始動して回転各部を駆動しながら圃場の刈取脱穀作業を開始すると、圃場の穀稈は、前部低位置の分草杆22によって分草されながら穀稈引起し装置23の引起しラグに係止されて、倒伏状態から順次直立状態に引起し作用を受ける。そして、穀稈は、株元が刈取装置24に達して刈り取られ、穀稈搬送装置25の始端部に挟持されて順次上方に搬送される。この場合、圃場の穀稈は、疎植栽培によって成育されているから、従来の通常栽培に比較して、一株の分けつ本数が大幅に増えて束そのものが大束に成長し、稔りも多く増収が見込まれる状態になっている。
【0026】
このようにして、搬送穀稈は、刈取搬送装置3の穀稈搬送装置25の搬送終端部分からフィードチェン5の搬送始端部分5aに達して、上側供給チェン6と下側供給チェン7との始端部分に受継がれて上下で挟持した状態に搬送が開始される。そのとき、受継がれた穀稈は、層が上下に厚く高速の上側供給チェン6と低速の下側供給チェン7とに挟持されて上層が速く送り方向に剥ぎ取られる状態で送られ、それに対して、穀稈層の下層部分が遅れながら送られるから、穀稈の上層と下層との間で前後に搬送速度のズレが生じて穀稈層が前後に引き伸ばされる作用が働き、搬送が進むにつれて順次薄く均されながら送られる。
【0027】
この作用中に、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、搬送ラグ8の高さが低いために搬送穀稈の上層部分と下層部分とに浅く引っ掛かった状態で回動して深く穀稈層に食い込まず、均し作用が上層の穀稈に効果的に働くことができる。
【0028】
このようにして、上下供給チェン6,7は、目的を達成した後の比較的薄い層に均した穀稈層を搬送しながら順次フィードチェン5側に自然に受継がせて脱穀装置2の穀稈供給口11から扱室内に供給するのである。この場合、穀稈は、株元がフィードチェン5と挟扼杆12とによってがっちり挟持されて、穂先側が扱室内に挿入された状態で移動しながら脱穀作用を受けるのである。そして、脱穀穀稈は、扱室に供給された穀稈の層が、説明したように、上下供給チェン6,7の作用を受けて層の厚さが脱穀装置2の脱穀・選別能力に合った程度に薄く均されて供給されているから、脱穀、選別作用が適確に行われ、従来の疎植栽培の稲に見られた課題を解消することができた。
【0029】
以下、他の関連する実施例について説明する。
既に説明したように、上下供給チェン6,7の搬送速度の関係については、上側供給チェン6を下側供給チェン7に比較して速く駆動する構成を説明したが、フィードチェン5を加えた三者の速度関係は、フィードチェン5>上側供給チェン6>下側供給チェン7の順番に構成するか、又は、フィードチェン=上側供給チェン6として、両チェンを同速にし、それらよりも下側供給チェン7の速度を遅くする構成にしても良い。
【0030】
そして、上側供給チェン6は、フィードチェン5への穀稈受継ぎ作用をより円滑に行うためには、搬送速度を最も速く設定して、上側供給チェン6>フィードチェン5>下側供給チェン7の速度関係に構成すると効果的である。このように、上側供給チェン6の搬送速度を速くすると、扱室に供給された穀稈は、穂先先行で送り込まれて脱穀時の姿勢が良好に保たれる利点があり、脱穀性能も向上する。
【0031】
つぎに、上側供給チェン6と下側供給チェン7との搬送速度を、走行速度(刈取速度)にシンクロさせて構成した実施例について説明する。
通常、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、刈取搬送装置3の穀稈搬送装置25から搬送穀稈を受継いだ後、薄い層に均してフィードチェン5に受継がせる機能を有するものであるから、作業中は、常に、刈取速度に同調する速度で駆動されることが望ましい。そこで、実施例は、図4に示すように、上側供給チェン6と下側供給チェン7とを走行速度にシンクロさせた構成としている。
【0032】
すなわチェンジン30は、図4に示すように、回転動力を、HST31から走行ミッション装置32側と、脱穀ギヤボックス33側とに分岐して伝動する構成としている。そして、該脱穀ギヤボックス33は、上側供給チェン6と下側供給チェン7と、刈取搬送装置3とに伝動するHST34を装備した構成としている。そして、該HST34は、前記走行ミッション装置31に車速センサを設け、その検出情報に基づいて前記上側供給チェン6と下側供給チェン7用のHST34を、制御する構成としている。
【0033】
このように、前記上側供給チェン6と下側供給チェン7は、走行ミッション装置32から検出された情報に基づいてHST34のトラニオン軸が制御操作され、走行速度に同調した速度で穀稈搬送ができるように制御される構成となっている。したがって、上側供給チェン6と下側供給チェン7とは、走行速度、すなわち、刈取作業速度(能率)に応じて駆動されて刈取搬送装置3側から搬送穀稈を受継ぎ、脱穀作業に適する層厚まで薄く均してフィードチェン5に受継がせることができるものとなった。
【0034】
なお、前記脱穀ギヤボックス33は、既に公知の構成であるから詳細な説明を省略したが、脱穀装置2の回転各部と刈取搬送装置の回転各部とに伝動する構成であるが、刈取搬送装置の回転各部には、走行速度に同調した回転動力を伝動できるように、前記HST34を装備した構成としている。
【0035】
つぎに、図5に示した実施例を説明する。
既に、図2に基づいて、上側供給チェン6の伝動機構を説明したが、実施例は、図2に示した入力プーリー18に代えて、図5に示すように、割りプーリーからなる変速プーリー36を装備したものである。該実施例に係る上側供給チェン6は、図5に示すように、刈取入力プーリー15から刈取入力軸16、出力プーリー17、からベルト37を介して変速プーリー36に伝動され、変速操作によって供給チェン入力軸19が変速され、搬送速度が変速できる構成となっている。
【0036】
このように、実施例は、上側供給チェン6の搬送速度を穀稈の量に対応して変速することによって、搬送姿勢を変えたり、搬送ラグ8による均し状態に変化を与えて穀稈層を均すことができる。
【0037】
つぎに、上側供給チェン6と下側供給チェン7とから構成した供給チェン6,7において、手扱ぎ時に邪魔になる上側供給チェン6を、比較的容易に着脱することができる実施例を、図6、乃至図11に基づいて説明する。
【0038】
まず、上側供給チェン6は、図8に示すように、前部支持軸40を回動支点にして後部を上方に回動(跳ね上げる)する着脱構成と、逆に、図9に示すように、後部の供給チェン入力軸19を回動支点にして上方に回動する構成の二つの実施例が考えられる。
【0039】
そこで、上側供給チェン6は、図7、及び図8に示す場合、供給チェン入力軸19をカップリング41(図6参照)によって係脱自在に接続し、その供給チェン入力軸19側に円弧状軸保持具42と先端にフック43を設けた着脱ハンドル44とからなる開閉機構45を設けて着脱自在に構成している。この場合、着脱ハンドル44の開閉操作によって、先端部のフック43を、定置側の固定ピン46に係脱して固定と離脱とに切り替え操作する構成としている。
【0040】
つぎに、上側供給チェン6は、図9に示すように、供給チェン入力軸19を回動支点にする場合には、図6、乃至図8に示した前記実施例の逆側に開閉機構45を装置する構成にすればよい。
【0041】
また、上側供給チェン6は、図10、及び図11に示すように、前部支持軸40と後部の入力軸19との前後両方を分離して完全に上方に取外す構成では、図8、及び図9の実施例を組み合わせることによって構成することができる。
【0042】
以上述べたように、上側供給チェン6は、着脱ハンドル44の操作によって、固定ピン46からフック43を回動して外し、開閉機構45を開放すれば、脱穀装置2から何れか一方側を跳ね上げるか、或いは全体を取り外してフィードチェン5の搬送始端部分5aを開放することができる。したがって、作業者は、始端部が解放されたフィードチェン5に、例えば、枕刈穀稈を手作業で供給しながら手扱ぎ作業を行うことができる。
【0043】
つぎに、図12に示した構成は、上側供給チェン6に専用の制御モータ48を伝動可能に装備してモータ駆動に構成し、伝動構成を簡略化した実施例である。この実施例の場合は、前記制御モータ48を、刈取駆動部に装備した回転センサに制御可能に接続することによって、刈取側とシンクロさせた駆動をすることが比較的簡単な構成で可能となる。既に、図4に示した実施例において、走行速度に、上側供給チェン6をシンクロさせて伝動する構成の説明をしているが、同様の作用・効果を簡単な構成で得ることができる特徴がある。
【0044】
更に、図12の実施例は、前部の刈取搬送装置3における穀稈の搬送中に穀稈量(搬送穀稈の層厚)検出センサを装備して、穀稈量が一定に達しない場合、前記制御モータ48を停止する制御を行う構成にすることができる。この場合、上側供給チェン6は、既に説明した、図8に示すように、上方に回動しておけば、搬送穀稈の障害を回避することもできて有効に活用できる。
【0045】
つぎに、図13に示した実施例は、刈取入力軸16の出力プーリー17と、供給チェン入力軸19側の入力プーリー18との間に巻き掛けているベルト37にテンションローラを設けてテンションクラッチ装置49を装備し、上側供給チェン6への伝動を入り、切操作ができる構成としている。
【0046】
このように構成すると、上側供給チェン6は、必要時に伝動し、不要時には伝動を中断することができる。
つぎに、図14に示した実施例は、上側供給チェン6と下側供給チェン7は、入り口側では穀稈の厚い層を受継ぐことができるように中間部分以降に比較して上下方向に広く開口させた構成とし、刈取搬送装置3側からの層の厚い穀稈でも比較的楽に受け入れができるようにしたものである。
【0047】
そして、図15に示した実施例は、挟扼杆12から前方側に引継ぎガイド50を前方側に延長して配置し、上下一対の供給チェン6,7からフィードチェン5と挟扼杆12側へ受継ぎ乱れなく、整然と行なわんとするものである。
【0048】
そして、図16に示した実施例は、脱穀装置2の穀稈供給口11のすぐ前において、フィードチェン5の内側に下側供給チェン7を配置し、該チェン7の内側に上側供給チェン6を配置して構成している。実施例は、図面のように構成することによって、フィードチェン5の搬送始端部分5aにおいて、高速で搬送する上側供給チェン6を最も内側に設けて穀稈の穂先側を先行搬送させて穂先先行の搬送状態を形成し、脱穀作用の精度の向上を図る効果を有するものである。
【符号の説明】
【0049】
1 走行フレーム
2 脱穀装置
3 刈取搬送装置
4 コンバイン
5 フィードチェン
5a フィードチェンの搬送始端部分
6 上側供給チェン
7 下側供給チェン
8 上下供給チェンの搬送ラグ
9 フィードチェンの搬送ラグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、前記脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、前記フィードチェン(5)の搬送始端部(5a)内側に沿わせると共に搬送方向を同一にして配置し、上側供給チェン(6)の搬送速度を下側供給チェン(7)の搬送速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記上側供給チェン(6)の穀稈搬送工程を下側供給チェン(7)の穀稈搬送工程よりも長く設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)の双方の搬送ラグ(8)または上側供給チェン(6)の搬送ラグ(8)のみを、フィードチェン(5)の搬送ラグ(9)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
走行フレーム(1)に搭載した脱穀装置(2)の前方に刈取搬送装置(3)を設け、前記脱穀装置(2)に装備したフィードチェン(5)の搬送始端部分(5a)に沿わせて穀稈搬送用の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を配置し、該上下一対の上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)を、互いの穀稈搬送速度に差を有して穀稈の搬送層厚を薄く均しながら搬送して該穀稈の株元部分を順次フィードチェン(5)に受継がせる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)は、前記フィードチェン(5)の搬送始端部(5a)内側に沿わせると共に搬送方向を同一にして配置し、上側供給チェン(6)の搬送速度を下側供給チェン(7)の搬送速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記上側供給チェン(6)の穀稈搬送工程を下側供給チェン(7)の穀稈搬送工程よりも長く設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記上側供給チェン(6)と下側供給チェン(7)の双方の搬送ラグ(8)または上側供給チェン(6)の搬送ラグ(8)のみを、フィードチェン(5)の搬送ラグ(9)の高さよりも低く設定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
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【図11】
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【図16】
【公開番号】特開2011−67147(P2011−67147A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221719(P2009−221719)
【出願日】平成21年9月26日(2009.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月26日(2009.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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