説明

コンバイン

【課題】穀粒がセンサに当接する当接期間においても、穀粒量の検出値から外乱の影響を除去することができるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】投口センサ23aにて検出された衝撃力を予め設定した閾値αと比較する。比較結果に基づいて、衝撃力を算出対象に含めるか否かを決定する。例えば衝撃力が閾値αよりも小さい場合、算出すべき対象から除去する。そのため、特に少量の穀粒が搬送されている場合(例えば低速で刈取作業を行っている場合又は手扱モードの場合)において、穀粒量の算出精度を向上させることができる。穀粒の搬送量が少ない場合、穀粒の搬送量が多い場合に比べて、算出された穀粒量に対する外乱の影響が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収した穀粒の量を精度良く検出することができるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場での収穫作業を行う場合には、穀稈の刈取り及び脱穀並びに穀粒の回収を行うコンバインを使用することが多い。コンバインは、クローラにより圃場を走行し、この走行中に刈刃にて穀稈を刈取り、刈取った穀稈を扱胴へ搬送して脱穀する。そして扱胴の下方に配置してあるチャフシーブにて、穀稈から分離した稈及び穀粒の選別を行い、選別された穀粒をチャフシーブから漏下させて、スクリューコンベアを介して穀粒タンクに回収する。
【0003】
スクリューコンベアの先端部には、穀粒を穀粒タンクに投入するための羽根板が取り付けてあり、該羽根板によって投入された穀粒量を検出する穀粒量検出センサが穀粒タンクに設けてある。穀粒量検出センサは圧電素子を備えており、穀粒が当接した場合の圧力に基づいて穀粒量を検出している(例えば特許文献1)。
【0004】
穀粒量検出センサには、エンジンの振動及び凹凸を有する圃場を走行することによって発生した振動などが伝播する。これらの振動は外乱となって穀粒量検出センサの出力に影響する。
【0005】
近年では穀粒量検出センサの検出周期を設定し、検出周期に含まれる穀粒が当接すべき当接期間に検出された検出値を、非当接期間にて検出された検出値に基づいて補正し、外乱の影響を除去する発明が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−24381号公報
【0007】
【非特許文献1】庄司 浩一他2名、「非線形特性をもつ収量センサの現場較正法−電磁ピックアップを搭載することによる精度向上について」、ISMAB 2010 FUKUOKA、2010年4月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スクリューコンベアによって穀粒が搬送されていない場合であっても、穀粒量検出センサの温度特性、羽根板による風圧及び車体の傾きなどの外乱によって、当接期間に穀粒量検出センサから検出値が出力されることがある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、当接期間においても、穀粒量の検出値から外乱の影響を除去することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコンバインは、刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送された穀粒による衝撃力を検出する検出手段と、該検出手段にて検出した衝撃力に基づいて、穀粒量を算出する算出手段とを備えるコンバインにおいて、前記算出手段は、前記検出手段にて検出された衝撃力が予め設定した閾値よりも大きいか否かを判定する判定手段と、該判定手段での判定結果に基づいて、検出された衝撃力を前記算出手段での算出に使用するか否かを決定する決定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、検出手段にて検出された衝撃力を予め設定した閾値と比較する。比較結果に基づいて、衝撃力を算出対象に含めるか否かを決定する。例えば衝撃力が閾値よりも小さい場合、算出すべき対象から除去する。
【0012】
本発明に係るコンバインは、前記搬送手段はスクリューコンベアであり、該スクリューコンベアの端部における軸部分に前記貯留部へ穀粒を投入する羽根板が設けてあり、前記検出手段を前記羽根板に対向させて配置してあることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、検出手段は羽根板に対向しており、羽根板から投入された穀粒は検出手段に確実に当接する。
【0014】
本発明に係るコンバインは、前記算出手段は、前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間に検出された衝撃力を積算する積算手段を有し、積算した積算値に基づいて、穀粒量を算出するようにしてあり、前記判定手段は、前記期間にて、前記衝撃力が前記閾値よりも大きいか否かを判定するようにしてあり、前記決定手段は、前記判定手段にて前記閾値よりも大きいと判定した衝撃力を前記積算手段での積算に使用する決定をするようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間において、閾値よりも大きいと判定した衝撃力のみを積算する。これにより、前記期間内における外乱の影響を除去する。
【0016】
本発明に係るコンバインは、前記算出手段は、前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間に検出された衝撃力を積算する積算手段を有し、積算した積算値に基づいて、穀粒量を算出するようにしてあり、前記判定手段は、前記期間にて、前記衝撃力が前記閾値よりも大きいか否かを判定するようにしてあり、前記決定手段は、前記判定手段にて前記期間の任意の時点に検出された衝撃力が前記閾値よりも大きいと判定した場合に、前記期間内に検出された衝撃力を前記積算手段での積算に使用する決定をするようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、前記期間の任意の時点に検出された衝撃力が前記閾値よりも大きいと判定した場合に、前記期間内に検出された衝撃力全てを積算対象に含める。これにより、前記期間内における外乱の影響を除去する。
【0018】
本発明に係るコンバインは、前記スクリューコンベアの回転数を検出する回転数検出手段と、該回転数検出手段の検出結果に基づいて、前記スクリューコンベアの回転周期を求める手段とを備え、前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間は1回転周期に含まれることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、羽根板の1回転周期毎に前記判定を実行し、前記期間における外乱の除去を実現する。
【0020】
本発明に係るコンバインは、前記算出手段は、前記期間外に検出された前記検出手段の衝撃力に基づいて、前記積算手段の積算結果に含まれる定常偏差を除去する手段を有することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、羽根板から投入された穀粒が検出手段に当接しない非当接期間に検出された衝撃力は、振動などによって生じる定常偏差であり、これを積算結果から除外する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、検出手段にて検出された衝撃力を予め設定した閾値と比較する。比較結果に基づいて、衝撃力を算出対象に含めるか否かを決定する。例えば衝撃力が閾値よりも小さい場合、算出すべき対象から除去する。そのため、特に少量の穀粒が搬送されている場合(例えば低速で刈取作業を行っている場合又は手扱モードの場合)において、穀粒量の算出精度を向上させることができる。穀粒の搬送量が少ない場合、穀粒の搬送量が多い場合に比べて、算出された穀粒量に対する外乱の影響が大きくなる。
【0023】
本発明にあっては、検出手段は羽根板に対向しており、羽根板から投入された穀粒は検出手段に確実に当接する。羽根板による風圧などの外乱が衝撃力に影響を与えても、外乱による検出値を除去するように設計する限り、羽根板に対向する任意の位置に配することができ、仕様に応じた配置が可能となる。
【0024】
本発明にあっては、穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間において、閾値よりも大きいと判定した衝撃力のみを積算する。これにより、前記期間内において外乱を精度良く除去することができる。
【0025】
本発明にあっては、前記期間の任意の時点に検出された衝撃力が前記閾値よりも大きいと判定した場合に、前記期間内に検出された衝撃力全てを積算対象に含める。これにより、前記期間内において外乱を精度良く除去することができる。
【0026】
本発明にあっては、羽根板の1回転周期毎に前記判定を実行し、穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間における外乱の除去を精度良く実現することができる。
【0027】
本発明にあっては、羽根板から投入された穀粒が検出手段に衝突しない期間に検出された値は、振動などによって生じる定常偏差であり、これを積算結果から除外することで、穀粒量の検出精度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1に係るコンバインの外観斜視図である。
【図2】脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図3】穀粒タンクを略示する平面断面図である。
【図4】穀粒タンクを略示する縦断面図である。
【図5】エンジンの駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】エンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルである。
【図8】投口センサの検出値とピックアップセンサの検出値との関係を示すグラフの一例である。
【図9】CPUによる穀粒量演算処理を示すフローチャートである。
【図10】CPUによる補正値算出処理を示すフローチャートである。
【図11】CPUによる警報処理を説明するフローチャートである。
【図12】実施の形態2に係るコンバインの投口センサの検出値とピックアップセンサの検出値との関係を示すグラフの一例である。
【図13】CPUによる穀粒量演算処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの外観斜視図である。
【0030】
図において1は走行クローラであり、該走行クローラ1の上側に機体9が設けてある。該機体9の上には脱穀装置2が設けてある。該脱穀装置2の前側に、刈取り穀稈と非刈取り穀稈とを区別する分草板3a、穀稈を刈取る刈刃3b、及び穀稈を引き起こす引起し装置3cを備える刈取部3が設けてある。前記脱穀装置2の右側には穀粒を収容する穀粒タンク4が設けてあり、前記脱穀装置2の左部には、穀稈を搬送する前後に長いフィードチェン5が設けてある。該フィードチェン5の上側に、穀稈を挟持する挟持部材6が設けてあり、該挟持部材6とフィードチェン5とが対向している。前記フィードチェン5の前端部付近には上部搬送装置7を配設してある。また前記穀粒タンク4には、穀粒タンク4から穀粒を排出する筒状の排出オーガ4aを取り付けてあり、穀粒タンク4の前側にはキャビン8を設けてある。
【0031】
走行クローラ1の駆動によって機体9は走行する。機体9の走行によって刈取部3に穀稈が取り込まれ、刈り取られる。刈り取られた穀稈は上部搬送装置7、フィードチェン5及び挟持部材6を介して脱穀装置2に搬送され、脱穀装置2内にて脱穀される。
【0032】
図2は脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図、図3は穀粒タンク4を略示する平面断面図、図4は穀粒タンク4を略示する縦断面図である。
図2に示すように、脱穀装置2の前側上部に穀稈を脱穀するための扱室10が設けてある。該扱室10内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の扱胴11が軸架してあり、該扱胴11は軸回りに回動可能となっている。扱胴11の周面には多数の扱歯12、12、・・・12が螺旋状に並んでいる。前記扱胴11の下側に、前記扱歯12、12、・・・12と協働して稈を揉みほぐすクリンプ網15が配置してある。前記扱胴11は後述するエンジン40の駆動力によって回動し、穀稈を脱穀する。
【0033】
前記扱室10の上壁に四つの送塵弁10a、10a、10a、10aが前後方向に並設してあり、該送塵弁は扱室10の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0034】
扱室10の後部には処理室13が連設してある。該処理室13内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の処理胴13bが軸架してあり、該処理胴13bは軸回りに回動可能となっている。処理胴13bの周面には多数の扱歯13c、13c、・・・、13cが螺旋状に並んでいる。前記処理胴13bの下側には扱歯13c、13c、・・・、13cと協働して稈を揉みほぐす処理網13dを配置してある。前記処理胴13bはエンジン40の駆動力によって回動し、扱室10から送出された稈及び穀粒から穀粒を分離する処理を行う。処理室13の後端部下側には排出口13eを開設してある。
【0035】
前記処理室13の上壁に四つの処理胴弁13a、13a、13a、13aが前後方向に沿って並設してあり、該処理胴弁13a、13a、13a、13aは処理室13の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0036】
前記クリンプ網15の下側には、穀粒及び稈の選別を行う揺動選別装置16を設けてある。該揺動選別装置16は、穀粒及び稈を均一化すると共に比重選別を行う揺動選別盤17と、該揺動選別盤17の後側に設けてあり、穀粒及び稈の粗選別を行うチャフシーブ18と、該チャフシーブ18の後側に設けてあり、稈に混入した穀粒を落下させるためのストローラック19とを備える。該ストローラック19は図示しない複数の透孔を有している。また前記揺動選別盤17の前部には揺動アーム21が連結してある。該揺動アーム21は前後に揺動するように構成されている。この揺動アーム21の揺動によって揺動選別装置16は揺動し、稈及び穀粒の選別が行われる。
【0037】
揺動選別装置16は、前記チャフシーブ18の下側に設けてあり、穀粒及び稈の精選別を行うグレンシーブ20を更に備える。該グレンシーブ20の下方に、前方を下として傾斜した一番穀粒板22が設けてあり、該一番穀粒板22の前側に、一番スクリューコンベア23が設けてある。該一番スクリューコンベア23は、一番穀粒板22を滑落した穀粒を取り込み、穀粒タンク4へ送給する。
【0038】
図3に示すように、一番スクリューコンベア23の上端部の軸部分23cには、矩形の羽根板23bが設けてある。該羽根板23bは、軸部分23cを中心として放射方向に突出している。該羽根板23bは、一番スクリューコンベア23に同期して回転する。
【0039】
軸部分23c及び羽根板23bは、ケーシング140に収容してある。ケーシング140は、軸部分23c及び羽根板23bの周囲を覆う平面視U形の側面141を備える。該側面141は、軸部分23c及び羽根板23bを間にして、穀粒タンク4の側面(投口4b)に対向している。穀粒タンク4内において、投口4bの下側近傍に押圧式スイッチ4cが設けてある。
側面141の一端部は、穀粒を案内する案内面141aをなす。側面141の他端部は、案内面141aに対向した非案内面141bをなす。案内面141aは、穀粒タンク4の側面に対して鋭角に傾斜しており、非案内面141bと反対方向に延びている。一番スクリューコンベア23及び案内面141aの間の寸法は、一番スクリューコンベア23及び非案内面141bの間の寸法よりも大きい。
【0040】
図3に示すように、L1は、案内面141a及び案内面141aを延長した面上に位置する線である。L2は、軸部分23c及び案内面141aの間においてL1に30度の角度で交差した、一番スクリューコンベア23の外周接線である。穀粒タンク4内において、L1及びL2にて挟まれる領域を第1領域とし(図3における実線ハッチング参照)、L2を基準にして第1領域と反対側の領域を第2領域とする(図3における破線ハッチング参照)。
【0041】
図3に示すように、第2領域内に、投口4bから穀粒タンク4へ投入される穀粒の衝撃値を検出する投口センサ23aが配置してある。図4に示すように、穀粒タンク4の天面から支持部材310が垂下しており、該支持部材310に投口センサ23aが固定してある。該投口センサ23aは、投口4bの下縁部よりも上側に配置してある。また穀粒タンク4が満杯になった場合に、穀粒タンク4に貯留された穀粒の上面よりも上側に位置する。換言すれば、満杯時に、穀粒に埋没しない上下位置及び奥行き位置に投口センサ23aを配置してある。
【0042】
図3において、案内面141a付近の破線矢印及び円形にて示すように、押し出された穀粒の大部分は案内面141aに沿って移動し、穀粒タンク4内の第1領域に、横広がりに連続した帯状になって投入される。図3において、一番スクリューコンベア23付近の破線矢印及び円形にて示すように、残りの穀粒は穀粒タンク4内の第2領域に離散して投入される。
【0043】
第1領域においては、案内面141aに沿って移動する穀粒及び案内面141aに衝突して跳ね返った穀粒などが連続的に穀粒タンク4に投入される。なお案内面141aに接触するので、穀粒は減速して投入される。一方第2領域においては、穀粒は羽根板23bから穀粒タンク4に直接投入される。そのため穀粒は第1領域に投入される穀粒のように案内面141aに接触しないので、ほとんど減速せず、離散した状態で高速投入される。
【0044】
また一番スクリューコンベア23による上方向の力が穀粒に作用する。図4の破線矢印にて示すように、上方向の力と羽根板23bからの横方向の力との合成により、穀粒は斜め上方向に移動する。
【0045】
投口センサ23aは第2領域に配置してあるので、離散した少量の穀粒が投口センサ23aに瞬間的に衝突する。なお投口センサ23aが第1領域に配置してある場合、横広がりに連続した穀粒が投口センサ23aに継続的に衝突する。
【0046】
穀粒は投口4bから、羽根板23bの回転によって間欠的に穀粒タンク4へ投入される。投入された穀粒が投口センサ23aに衝突することによって歪みゲージから電圧が出力され、出力された電圧に基づいて穀粒量が算出される。なお投口センサ23aは、当接した穀粒の衝撃値を検出することができる構成であればよい。例えば歪みゲージに代えて、圧電素子を備えてもよい。
【0047】
なお図3において、L1及びL2のなす角度は30度であるが、L1及びL2のなす角度はこれに限定されない。L2は、投口センサ23aに穀粒が連続的に衝突する第1領域と瞬間的に衝突する第2領域とを区別する線であればよく、L1及びL2のなす角度は設計に応じて適宜選択される。
【0048】
前記グレンシーブ20から一番穀粒板22に落下した穀粒は前記一番スクリューコンベア23に向けて滑落する。滑落した穀粒は一番スクリューコンベア23よって搬送され、投口4bから、羽根板23bの回転によって間欠的に穀粒タンク4へ投入される。図3の破線矢印によって示すように、投入された穀粒が投口センサ23aに当接することによって歪みゲージから電圧が出力され、出力された電圧に基づいて投口量が検出される。
【0049】
前記一番穀粒板22の後部に、後方を下として傾斜した傾斜板24が連設してある。該傾斜板24の後端部に、前方を下として傾斜した二番穀粒板25が連設してある。該二番穀粒板25と前記傾斜板24との連結部分の上側に稈及び穀粒を搬送する二番スクリューコンベア26が設けてある。
前記ストローラック19の透孔から傾斜板24又は二番穀粒板25に落下した落下物は前記二番スクリューコンベア26に向けて滑落する。滑落した落下物は、二番スクリューコンベア26によって前記扱胴11の左側に設けてある処理ロータ14に搬送され、処理ロータ14にて脱穀処理される。
【0050】
前記一番スクリューコンベア23よりも前方であって、前記揺動選別盤17よりも下方に、起風動作を行う唐箕27が設けてある。前記唐箕27の起風動作によって発生した風は、後方へ進行する。唐箕27と前記一番スクリューコンベア23との間に、風を上向きに送り出す整流板28を配設してある。
【0051】
前記二番穀粒板25の後端部に通路板36が連ねてある。該通路板36の上方には下部吸引カバー30が設けてある。該下部吸引カバー30及び通路板36の間は塵埃が排出される排気通路37になっている。
【0052】
下部吸引カバー30の上方に上部吸引カバー31が設けてある。該上部吸引カバー31及び下部吸引カバー30の間に、稈を吸引排出する軸流ファン32を配設してある。該軸流ファン32の後方には排塵口33を設けてある。前記唐箕27の動作によって発生した気流は、前記整流板28、28によって整流された後に、前記揺動選別装置16を通過して、前記排塵口33及び排気通路37に至る。
【0053】
排塵口33及び排気通路37には、圧電素子を備える排出量センサ34、34がそれぞれ配してある。排塵口33及び排気通路37から、穀粒が排出され、排出量センサ34、34に当接する。このとき排出量センサ34、34の圧電素子から電圧信号が出力され、排塵口33及び排気通路37から排出される単位時間あたりの穀粒量(ロス量)が検出される。なお排出量センサ34、34は圧電素子を有するセンサに限るものではなく、発光素子及び受光素子を有する光センサを排出量センサ34として使用し、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒量を検出しても良い。また発信器及び受信機を有する超音波センサを排出量センサ34として使用し、発信器及び受信機の間を通過する穀粒量を検出しても良い。
【0054】
前記上部吸引カバー31の上側であって、前記処理室13の下方に、前方を下向きとして傾斜した流下樋35が設けてある。前記処理室13の排出口13eから排出された排出物は流下樋35を滑落して前記ストローラック19に落下する。
【0055】
前述した走行クローラ1の駆動、刈取部3の刈取動作、扱胴11の回動、処理胴13bの回動、揺動選別装置16の揺動及び一番スクリューコンベア23の回転動作などはエンジン40の駆動力によって行われる。図5はエンジン40の駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【0056】
図5に示すように、エンジン40はHST(Hydro Static Transmission)41を介して
走行ミッション42に連結してある。エンジン40の出力軸の近傍には、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ40aが設けてある。エンジン回転数センサ40aはホール素子などを有する磁気センサであり、出力軸が有する磁性体の通過によって回転数を検出する。
【0057】
HST41は油圧ポンプ(図示せず)と、該油圧ポンプに供給される作動油の流量及び油圧ポンプの圧力を調整する機構(図示せず)と、該機構を制御する変速回路41aとを有している。
【0058】
走行ミッション42は、前記走行クローラ1に駆動力を伝達するギヤ(図示せず)を有している。走行ミッション42には、ホール素子を有する車速センサ43を設けてある。該車速センサ43は前記ギヤの回転数を検出して、ギヤの回転数に対応する機体の車速を示す信号を出力するようにしてある。
【0059】
前記エンジン40は電磁式の脱穀クラッチ44を介して、前記扱胴11及び処理胴13bに連結してあり、また伝動機構50に連結してある。伝動機構50は前記一番スクリューコンベア23に連結してある。伝動機構50と一番スクリューコンベア23とを連結する軸の近傍にピックアップセンサ51が設けてある。該ピックアップセンサ51は、ホール素子などを有する磁気センサであり、前記軸が有する磁性体の通過によって、一番スクリューコンベア23の回転数を検出する。
【0060】
またエンジン40は脱穀クラッチ44を介して偏心クランク45に連結してある。該偏心クランク45は前記揺動アーム21に連結してある。偏心クランク45の駆動により前記揺動選別装置16が揺動する。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27に連結してある。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44及び電磁式の刈取クラッチ46を介して前記刈取部3に連結してある。
【0061】
走行ミッション42を介してエンジン40の駆動力が走行クローラ1に伝達され、機体が走行する。また刈取クラッチ46を介して刈取部3にエンジン40の駆動力が伝達し、刈取部3にて穀稈が刈取られる。
【0062】
脱穀クラッチ44を介して前記扱胴11にエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて穀稈は脱穀される。また脱穀クラッチ44を介して処理胴13bにエンジン40の駆動力が伝達する。処理胴13bは、扱胴11にて脱穀処理された処理物から穀粒を分離する。
【0063】
また前記揺動選別装置16には、脱穀クラッチ44及び偏心クランク45を介してエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11から漏下した稈及び穀粒並びに処理室13の排出口13eから排出された稈及び穀粒の選別が行われる。また脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27にエンジン40の駆動力が伝達し、揺動選別装置16にて選別された稈が唐箕27の起風作用によって排塵口33及び排気通路37から排出される。
【0064】
前記投口センサ23a、エンジン回転数センサ40a及びピックアップセンサ51からの出力に基づいて、穀粒タンク4に貯留する穀粒量を演算する制御部がコンバインに搭載されている。図6は制御部の構成を示すブロック図、図7はエンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルである。
【0065】
制御部100は内部バス100gにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory)100c及びEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、送塵弁10a及び処理胴弁13aの動作制御など必要な制御を実行する。なおCPU100aはタイマを内蔵している。
【0066】
EEPROM100dには、LUT(Look Up Table) 100hが格納してある。
LUT100hには、エンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルが記憶されている(図7参照)。該テーブルは、「エンジン回転数」欄及び「係数β」欄を備えており、各欄の各行には、エンジン回転数と、エンジン回転数に対応した係数βの値(β1〜β6)が格納されている。なおエンジン回転数の大小は、一番スクリューコンベア23の回転数の大小に対応している。
【0067】
またEEPROM100dには、補正変数Xが設定してあり、該補正変数Xには必要に応じて値が格納される。また、投口センサ23aの検出値を穀粒量の算出対象に含めるか否かを判定するための閾値αが設定してある。
【0068】
制御部100は出力インタフェース100fを介して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44に継断信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、表示部83に所定の映像を表示することを示す表示信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、警告ランプ84に点灯又は消灯信号を出力する。
【0069】
刈取スイッチ80、指標設定スイッチ81、操作スイッチ82、投口センサ23a、押圧式スイッチ4c、ピックアップセンサ51、エンジン回転数センサ40a及び脱穀スイッチ85の各出力信号は入力インタフェース100eを介して制御部100に入力されている。
【0070】
なお前記キャビン8内には図示しないダッシュボードパネルが設けてあり、該ダッシュボードパネルに、刈取スイッチ80、指標設定スイッチ81、複数の操作スイッチ82及び脱穀スイッチ85が設けてあり、また液晶パネルを有する表示部83が設けてある。また前記キャビン8内には、警告ランプ84が設けてある。なお刈取スイッチ80のオンオフに対応して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44が継断される。また脱穀スイッチ85のオンオフに対応して、脱穀クラッチ44が継断される。
【0071】
CPU100aは、投口センサ23aの出力信号に係る検出値を積算し、閾値αと比較して積算対象に含めるか否かを判定する。そして積算対象に含める検出値をピックアップセンサ51の出力信号に係る検出値に同期させてEEPROM100dに記憶する。図8は投口センサ23aの検出値とピックアップセンサ51の検出値との関係を示すグラフの一例である。図8Aは、時間と投口センサ23aの検出値との関係を示すグラフである。投口センサ23aの検出値は穀粒の衝突による歪み量を示しており、所定のサンプリング数における移動平均値である。図8Bは、時間とピックアップセンサ51の検出値との関係を示すグラフである。ピックアップセンサ51の検出値は、羽根板23bの一回転における回転開始時点及び回転終了時点を示している。
【0072】
ピックアップセンサ51の検出値は、パルス波として検出され、パルス波の間隔が一番スクリューコンベア23の一回転の周期、すなわち羽根板23bの一回転の周期Pに相当する。CPU100aは、所定のサンプリング周期(例えば100[ms])で投口センサ23aの検出値を取り込み、EEPROM100dに記憶する。またCPU100aは、ピックアップセンサ51からパルス波が入力される都度、タイムスタンプを作成し、該タイムスタンプを、パルス波が入力された時に投口センサ23aから入力された検出値に紐付けて、EEPROM100dに記憶する。
【0073】
図8において、穀粒が羽根板23bによって穀粒タンク4に投入されている場合、P/4〜3P/4の間に、投口センサ23aからCPU100aに穀粒の衝突による検出値が入力される。0〜P/4及び3P/4〜Pの間に投口センサ23aからCPU100aに入力された検出値は、穀粒が投口センサ23aに衝突していない場合の検出値である。
【0074】
図8Aにおいて、閾値αは、投口センサ23aの温度特性、羽根板23bによる風圧及び機体9の傾きなどの外乱によって、投口センサ23aにて検出される検出値に相当する。穀粒が羽根板23bによって穀粒タンク4に投入されていない場合、理想的には、P/4〜3P/4の間に、投口センサ23aからCPU100aに穀粒の衝突による検出値は入力されない。しかし実際は、投口センサ23aからCPU100aに外乱(例えば羽根板23bによる風圧)による検出値(閾値α)が入力される。
【0075】
CPU100aは、P/4〜3P/4の間に投口センサ23aから入力された検出値と閾値αとを比較する。該検出値に、閾値αを超過する値が含まれている場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象に決定する(図8Aの周期P1 、P2 及びP5 における破線ハッチング部分の面積)。積算すべき値は、投口センサ23aへの穀粒の衝突による力積に相当する。
【0076】
検出値に、閾値αを超過する値が含まれていない場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象から除外する(図8Aにおいて、周期P3 及びP4 部分)。
【0077】
一方0〜P/4及び3P/4〜Pの間における投口センサ23aの検出値を積算した値(図8Aの実線ハッチング部分の面積)は定常偏差に相当する。該定常偏差は、エンジン40の振動、凹凸のある圃場を走行中に投口センサ23aに伝播した振動及び投口センサ23aの特性などに起因する。
【0078】
CPU100aは、所定の周期(例えば1[s])で、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における投口センサ23aの検出値を積算した値に必要な処理を行い、EEPROM100dにアクセスして、補正変数Xに格納する。
【0079】
CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における投口センサ23aの検出値を積算する。そして積算した値に含まれる定常偏差を補正変数Xに格納された値を用いて除去する。例えば積算した値から、補正変数Xに格納された値を減算する。
【0080】
CPU100aは、定常偏差を除去した補正値DをRAM100cに記憶する。そして補正値Dに係数βを適用して、穀粒タンク4に貯留した穀粒量を求める。
【0081】
なお案内面141a側(第1領域)に投口センサ23aを配置した場合、周期Pの全期間に亘って穀粒が投口センサ23aに衝突するため、定常偏差を除去することができない。
【0082】
図3に示すように、穀粒タンク4内の第1領域には、横広がりに連続した帯状の穀粒群が投入されている。そのため第1領域に投口センサ23aを配置した場合、周期Pの間継続して投口センサ23aに穀粒が衝突する。換言すれば、穀粒が投口センサ23aに衝突していないはずの0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が衝突する。
【0083】
0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用するためには、0〜P/4及び3P/4〜Pの間に穀粒が投口センサ23aに衝突していない又は衝突していないとみなせる必要がある。しかし0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が投口センサ23aに連続的に衝突しており、0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用することはできない。
【0084】
次にCPU100aによる穀粒量演算処理について説明する。図9は、CPU100aによる穀粒量演算処理を示すフローチャートである。
【0085】
CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオンであるか否か判定し(ステップS1)、刈取スイッチ80がオンになるまで待機する(ステップS1:NO)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS1:YES)、CPU100aは、エンジン回転数センサ40aから信号を取り込む(ステップS2)。そしてCPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてLUT100hを参照し(ステップS3)、エンジン回転数センサ40aから取り込んだ信号が示すエンジン回転数に対応する係数β(β1〜β6)を決定する(ステップS4)。
【0086】
そしてCPU100aは、ピックアップセンサ51及び投口センサ23aから信号を取り込み(ステップS5)、P/4〜3P/4の間の力積を積算する(ステップS6)。このとき、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における投口センサ23aの検出値を積算する。なお投口センサ23aから制御部100には、検出値が一定のサンプリング周期で順次入力されており、CPU100aは、タイムスタンプを参照することによって、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を認識することができる。
【0087】
次にCPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値に、閾値αを超過した検出値が含まれるか否かを判定する(ステップS7)。閾値αを超過した検出値が含まれない場合(ステップS7:NO)、CPU100aは、ステップS12へ処理を進める。
【0088】
閾値αを超過した検出値が含まれる場合(ステップS7:YES)、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスして補正変数Xを参照し(ステップS8)、算出した力積を補正変数Xにて補正し(ステップS9)、補正値Dを求める。例えばCPU100aは、算出した力積から補正変数Xに格納された値を減算する。なお減算は補正の一例であり、補正変数Xに格納された値に基づいて、乗算又は除算してもよい。
【0089】
そしてCPU100aは、補正値Dに係数βを適用する(ステップS10)。例えば補正値Dに係数βを乗算するか又は加算する。なお係数βの乗算又は加算は、係数βの適用の例示であってこれに限定されるものではない。次にCPU100aは、係数β適用後の補正値Dを積算する(ステップS11)。なおステップS11における積算値が穀粒タンク4に貯留した穀粒量に相当する。そしてCPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオフであるか否か判定する(ステップS12)。刈取スイッチ80がオフでない場合(ステップS12:NO)、すなわち、刈取スイッチ80がオンである場合、CPU100aはステップS2へ処理を戻す。刈取スイッチ80がオフである場合(ステップS12:YES)、CPU100aは処理を終了する。なお上述した穀粒量演算処理は、周期P以内に実行されるリアルタイム処理として実行することができる。
【0090】
なおCPU100aは、ステップS10の後に、刈取スイッチ80がオフになった後、扱胴11で処理された穀粒が穀粒タンク4に搬出されるまでの時間が経過するまで待機し、穀粒量演算処理を終了してもよい。またステップS7の判定は、ステップS5の次に実行してもよい。
【0091】
次にCPU100aによる補正値算出処理について説明する。図10はCPU100aによる補正値算出処理を示すフローチャートである。
【0092】
CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオンであるか否か判定し(ステップS21)、刈取スイッチ80がオンになるまで待機する(ステップS21:NO)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS21:YES)、ピックアップセンサ51及び投口センサ23aから信号を取り込み(ステップS22)、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における力積を積算する(ステップS23)。このとき、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における投口センサ23aの検出値を積算する。なお投口センサ23aから制御部100には、検出値が一定のサンプリング周期で順次入力されており、CPU100aは、タイムスタンプを参照することによって、0〜P/4及び3P/4〜Pの間に入力された検出値を認識することができる。
【0093】
そしてCPU100aは、積算した値に所定の処理を実行する(ステップS24)。例えば、変動率を考慮した係数を乗算するか又は前記操作スイッチ82からの入力に応じて、予めEEPROM100dに設定した所定の関数を適用する。次にCPU100aは、処理を施した値を補正変数Xに格納する(ステップS25)。
【0094】
そしてCPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始し、所定時間、例えば1[s]が経過するまで待機する(ステップS26:NO)。所定時間が経過した場合(ステップS26:YES)、CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオフであるか否か判定する(ステップS27)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS27:NO)、CPU100aは、タイマをリセットし(ステップS28)、ステップS22へ処理を戻す。刈取スイッチ80がオフである場合(ステップS27:YES)、CPU100aは処理を終了する。
【0095】
CPU100aは、押圧式スイッチ4cが貯留した穀粒に押圧された場合、すなわち押圧式スイッチ4cがオンになった場合に、警報処理を実行する。図11は、CPU100aによる警報処理を説明するフローチャートである。なお警報処理は、割込処理として実行される。
【0096】
CPU100aは、押圧式スイッチ4cから信号を取り込み、押圧式スイッチ4cがオンするまで待機する(ステップS31:NO)。押圧式スイッチ4cがオンである場合(ステップS31:YES)、警告ランプ84に点灯信号を出力する(ステップS32)。そしてCPU100aは、タイマにて経時を行い、所定時間が経過するまで待機する(ステップS33:NO)。所定時間経過後(ステップS33:YES)、CPU100aは、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85から信号を取り込み、脱穀クラッチ44が切断されているか否かを判定する(ステップS34)。刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85からオフ信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は切断されており、刈取スイッチ80又は脱穀スイッチ85からオン信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は継合している。
【0097】
脱穀クラッチ44が切断されている場合(ステップS34:YES)、すなわち刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85がオフである場合、CPU100aは処理を終了する。この場合、ユーザは警告ランプ84の点灯によって、穀粒タンク4が満杯であることに気付き、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85をオフ操作したものと考えられる。
【0098】
脱穀クラッチ44が継合している場合(ステップS34:NO)、CPU100aは、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46に切断信号を出力する(ステップS35)。なおステップS35を実行する前に、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46を強制的に切断することを表示させる信号を表示部83に出力してもよい。なおステップS32において、ブザーから警報音を発してもよいし、表示部83に穀粒タンク4が満杯である旨を表示させてもよい。
【0099】
実施の形態1に係るコンバインにあっては、投口センサ23aにて検出された衝撃力を予め設定した閾値αと比較する。比較結果に基づいて、衝撃力を算出対象に含めるか否かを決定する。例えば衝撃力が閾値αよりも小さい場合、算出すべき対象から除去する。そのため、特に少量の穀粒が搬送されている場合(例えば低速で刈取作業を行っている場合又は手扱モードの場合)において、穀粒量の算出精度を向上させることができる。穀粒の搬送量が少ない場合、穀粒の搬送量が多い場合に比べて、算出された穀粒量に対する外乱の影響が大きくなる。
【0100】
また投口センサ23aは羽根板23bに対向しており、羽根板23bから投入された穀粒は投口センサ23aに確実に当接する。羽根板23bによる風圧などの外乱が投口センサ23aの検出値に影響を与えても、外乱による値を除去するように設計する限り、投口センサ23aを羽根板23bに対向する任意の位置に配することができ、仕様に応じた配置が可能となる。
【0101】
また期間P/4〜3P/4の任意の時点に検出された衝撃力が閾値αよりも大きいと判定した場合に、期間P/4〜3P/4に検出された衝撃力全てを積算対象に含める。これにより、穀粒の衝突によって検出された衝撃力を積算対象に漏れなく含めることができる。その結果、期間P/4〜3P/4における外乱の除去及び漏れのない検出を両立させることができ、検出精度を向上させることができる。
【0102】
また0〜P/4及び3P/4〜Pの間に検出された衝撃力は、振動などによって生じる定常偏差であり、これを積算結果から除外することで、穀粒量の検出精度を更に向上させることができる。
【0103】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図12は投口センサ23aの検出値とピックアップセンサ51の検出値との関係を示すグラフの一例である。図12Aは、時間と投口センサ23aの検出値との関係を示すグラフである。投口センサ23aの検出値は穀粒の衝突による歪み量を示しており、所定のサンプリング数における移動平均値である。図12Bは、時間とピックアップセンサ51の検出値との関係を示すグラフである。ピックアップセンサ51の検出値は、羽根板23bの一回転における回転開始時点及び回転終了時点を示している。
【0104】
CPU100aは、P/4〜3P/4の間に投口センサ23aから入力された検出値と閾値αとを比較する。CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値において、閾値αを超過した検出値を積算すべき対象に決定する(図12Aの周期P1 、P2 及びP5 における破線ハッチング部分の面積)。積算すべき値は、投口センサ23aへの穀粒の衝突による力積に相当する。CPU100aは、閾値αを超過していない検出値を積算すべき対象から除外する。
【0105】
次にCPU100aによる穀粒量演算処理について説明する。図13は、CPU100aによる穀粒量演算処理を示すフローチャートである。
【0106】
CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオンであるか否か判定し(ステップS41)、刈取スイッチ80がオンになるまで待機する(ステップS41:NO)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS41:YES)、CPU100aは、エンジン回転数センサ40aから信号を取り込む(ステップS42)。そしてCPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてLUT100hを参照し(ステップS43)、エンジン回転数センサ40aから取り込んだ信号が示すエンジン回転数に対応する係数β(β1〜β6)を決定する(ステップS44)。
【0107】
そしてCPU100aは、ピックアップセンサ51及び投口センサ23aから信号を取り込み(ステップS45)、P/4〜3P/4の間の力積を積算する(ステップS46)。このとき、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における投口センサ23aの検出値を積算する。なお投口センサ23aから制御部100には、検出値が一定のサンプリング周期で順次入力されており、CPU100aは、タイムスタンプを参照することによって、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を認識することができる。
【0108】
次にCPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値に、閾値αを超過した検出値が含まれるか否かを判定する(ステップS47)。閾値αを超過した検出値が含まれない場合(ステップS47:NO)、CPU100aは、ステップS53へ処理を進める。
【0109】
閾値αを超過した検出値が含まれる場合(ステップS47:YES)、CPU100aは、閾値αを超過した検出値に係る力積を抽出する(ステップS48)。次にCPU100aは、EEPROM100dにアクセスして補正変数Xを参照し(ステップS49)、抽出した力積を補正変数Xにて補正し(ステップS50)、補正値Dを求める。例えばCPU100aは、抽出した力積から補正変数Xに格納された値を減算する。なお減算は補正の一例であり、補正変数Xに格納された値に基づいて、乗算又は除算してもよい。
【0110】
そしてCPU100aは、補正値Dに係数βを適用する(ステップS51)。例えば補正値Dに係数βを乗算するか又は加算する。なお係数βの乗算又は加算は、係数βの適用の例示であってこれに限定されるものではない。次にCPU100aは、係数β適用後の補正値Dを積算する(ステップS52)。なおステップS52における積算値が穀粒タンク4に貯留した穀粒量に相当する。そしてCPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオフであるか否か判定する(ステップS53)。刈取スイッチ80がオフでない場合(ステップS53:NO)、すなわち、刈取スイッチ80がオンである場合、CPU100aはステップS42へ処理を戻す。刈取スイッチ80がオフである場合(ステップS53:YES)、CPU100aは処理を終了する。なお上述した穀粒量演算処理は、周期P以内に実行されるリアルタイム処理として実行することができる。
【0111】
なおCPU100aは、ステップS52の後に、刈取スイッチ80がオフになった後、扱胴11で処理された穀粒が穀粒タンク4に搬出されるまでの時間が経過するまで待機し、穀粒量演算処理を終了してもよい。またステップS47及びS48の処理は、ステップS45の次に実行してもよい。この場合、投口センサ23aから入力された検出値と閾値αとを比較し、閾値αを超過した検出値を抽出して、力積を求める。
【0112】
実施の形態2に係るコンバインにあっては、期間P/4〜3P/4の間において、閾値αよりも大きいと判定した衝撃力のみを積算する。これにより、期間P/4〜3P/4における衝撃力から外乱の影響を精度良く、確実に除去することができる。
【0113】
実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0114】
実施の形態1及び2は、羽根板23bの回転周期(1周期)毎に、投口センサ23aにて検出された検出値を使用して積算を行うか否かを決定しているが、複数周期(例えば2又は3周期)の検出値をEEPROM100dに記憶し、複数周期を一単位として上記決定を実行してもよい。
【0115】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0116】
2 脱穀装置
4 穀粒タンク(貯留部)
4c 押圧式スイッチ
11 扱胴
23 一番スクリューコンベア(搬送手段、スクリューコンベア)
23a 投口センサ(検出手段)
23b 羽根板
40 エンジン
44 脱穀クラッチ
51 ピックアップセンサ(回転数検出手段)
100 制御部
100a CPU
100b ROM
100c RAM
100d EEPROM
100h LUT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段にて搬送された穀粒による衝撃力を検出する検出手段と、該検出手段にて検出した衝撃力に基づいて、穀粒量を算出する算出手段とを備えるコンバインにおいて、
前記算出手段は、
前記検出手段にて検出された衝撃力が予め設定した閾値よりも大きいか否かを判定する判定手段と、
該判定手段での判定結果に基づいて、検出された衝撃力を前記算出手段での算出に使用するか否かを決定する決定手段と
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記搬送手段はスクリューコンベアであり、
該スクリューコンベアの端部における軸部分に前記貯留部へ穀粒を投入する羽根板が設けてあり、
前記検出手段を前記羽根板に対向させて配置してあること
を特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記算出手段は、
前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間に検出された衝撃力を積算する積算手段を有し、
積算した積算値に基づいて、穀粒量を算出するようにしてあり、
前記判定手段は、前記期間にて、前記衝撃力が前記閾値よりも大きいか否かを判定するようにしてあり、
前記決定手段は、前記判定手段にて前記閾値よりも大きいと判定した衝撃力を前記積算手段での積算に使用する決定をするようにしてあること
を特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記算出手段は、
前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間に検出された衝撃力を積算する積算手段を有し、
積算した積算値に基づいて、穀粒量を算出するようにしてあり、
前記判定手段は、前記期間にて、前記衝撃力が前記閾値よりも大きいか否かを判定するようにしてあり、
前記決定手段は、前記判定手段にて前記期間の任意の時点に検出された衝撃力が前記閾値よりも大きいと判定した場合に、前記期間内に検出された衝撃力を前記積算手段での積算に使用する決定をするようにしてあること
を特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記スクリューコンベアの回転数を検出する回転数検出手段と、
該回転数検出手段の検出結果に基づいて、前記スクリューコンベアの回転周期を求める手段とを備え、
前記羽根板から投入された穀粒が前記検出手段に衝突すべき期間は1回転周期に含まれること
を特徴とする請求項3又は4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記算出手段は、前記期間外に検出された前記検出手段の衝撃力に基づいて、前記積算手段の積算結果に含まれる定常偏差を除去する手段を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−39037(P2013−39037A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172302(P2011−172302)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】