説明

コンピュータを用いた認知行動療法と生理反応観測を利用した精神衛生向上のための教育システム

【課題】認知行動療法とバイオフィードバックを組み合わせた、インターネット上またはパッケージとして購入し利用できるゲーム感覚のプログラムで、利用者は心と体の関係を、実体験を通して学ぶことができ、短期間または長期間で心理安定化を図り、心の病気の予防を計る、精神衛生向上のための教育システム。
【解決手段】認知行動療法と生理反応の観測、バイオフィードバックを組み合わせることにより上記の問題を解決し、認知行動療法の効果がより高まることが予測される。従来のセンサー商品は医療用目的、またはバイオフィードバックなどの娯楽でのみに用いられ、また現在存在する娯楽用バイオフィードバックシステムはすべてリラクセーション目的のみに用いられている。しかしながら、本発明ではリラクセーション以外の方法で用いる方法、特に自己管理、コントロール目的のモデルを提供している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知行動療法と生理反応の観測を組み合わせ、認知行動療法の効果を高める教育目的プログラムに関するもので、インターネット媒体、または個別プログラムとして幅広い年齢層の精神衛生向上のためのノウハウと実践を紹介し、ゲーム感覚で楽しめるインターアクティブマルチメディアシステム。
【背景技術】
【0002】
従来、CCBT、センサー機器(バイオフィードバックを含む)は単独で用いられ、心理療法と生理療法は別に考えられてきた。
【0003】
認知行動療法の基本は思考が、感情、生理反応、行動にどのように影響をしているかを理論的に理解し、思考を変えることによって感情、生理反応、行動を変えてゆこうという方法であるが、従来の方法心理療法だけでは考えの訓練はできるが、私たちの思考がどのように体(生理反応)に影響しているか(またはその逆)は実際にはつかめていない。つまり、利用者は思考がどのように体に影響を及ぼしているか(またはその逆)は個人的には感知不可である。
【0004】
従来のセンサー商品は医療用目的、またはバイオフィードバックなどの娯楽でのみに用いられている。現在存在する娯楽用バイオフィードバックシステムはすべてリラクセーション目的のみに用いられている。しかしながら、リラクセーション以外の方法で用いる方法、特に自己管理、コントロール目的のモデルはみられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、用いられてきたコンピュータ上の認知行動療法では心理状態の変化を観測するが、これは利用者の主観的な意見を基準としている。本発明では、心理状態の変化を客観的に観測する手段、生理学的な観測を判断基準に加えている。
【0006】
本発明は、利用者が心と体の関係を学び、自己に関する理解を深められるよう訓練、教育するもので、このような方法を幅広い利用者の精神衛向上のために使用することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するため、本発明は、CCBT過程において、利用者の精神状態、生理学的な反応を感知、観測し、測定量の表示にゲーム性を持たせ、心理的、生理的両方の指標を用いて、長期的に本プログラムの前後で精神状態を評価できる方法と、短期的に本プログラムの訓練効果を評価できる方法とを併せ持つCCBTの効果を高めるシステムであって、認知行動療法を用いて心理状態を変化させる手段と、生理状態を感知する手段、心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記CCBTを用いて心理状態を変化させる手段は、認知行動療法の原理を解説する手段と、コンピュータ上で認知行動療法を実践する手段と、心理変化を表示する手段と、を備えたことが好ましい。
【0009】
前記生理状態を感知する手段は、末梢から生理反応(自律神経機能)を感知するセンサーと感知した電気信号を処理するプロセッサと処理された電気信号の変化量を表示する手段と、を備えることが好ましい。
【0010】
前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は、心理状態を反映する自律神経機能を単独または複数の組み合わせにより構成された、バイオフィードバックを行う手段と、を備えることが好ましい。
【0011】
前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は、心理状態の変化に敏感な皮膚抵抗の振動数を用いてバイオフィードバックを行う手段と、を備えることが好ましい。
【0012】
前記CCBTを用いて心理状態を変化させる手段、前記生理状態を感知する手段、前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は通信ネットワークまたPC以外のゲーム機器などを媒体とした手段と、を備えることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、認知行動療法を行う前後の生理学的指標を観測し、それを比較手段として用いることができ、また認知行動療法を実践している状態にあるときに生理反応を観測し、それを利用者に見せることにより、現在行なっている認知行動療法が、実際に利用者の生理反応に影響し、好ましくない状態(過度な汗、心拍の大きい状態)が好ましい状態(皮膚電気抵抗度の増加:汗の減少、心拍の減少)になる過程を実体験させることができ、認知行動療法の効果が高まる。
【発明の効果】
【0014】
本システムはCCBTに、生理学的反応の観測、ゲーム感覚で用いることができるバイオフィードバックを組み合わせて、心と体の関係をより詳しく調べることができ、自己に関する理解を深められる特徴がある。現在、心理的な問題を患う人口は増え続け、100万人を超える引きこもりという社会現象まで出現している。コンピュータ上で行う認知行動療法、センサーを用いた訓練は、外界に出ることなく心理療法、生活指導を受けることができ、ゲーム感覚で自己コントロール能力を身につけることができる。このような教育プログラムは難易度を落として小学生、または中学生、または老人の教育にも用いることができ、幅広い層のソフトとして活用される可能性を持つ。特に子供など、自分の体をよく理解し、体の警告をできるだけ早い段階で感知し、コントロールする技術を学ぶことにより、現在問題となっている引きこもりのような現象を防止できることが考えられる。また長期的な感情と生理反応の変化を追うことにより、自己コントロールの手がかりが得られることができる。
【0015】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態については、図とともに詳細を明示する。本発明では、利用者はネットワーク上で複数の端末(コンピュータ、携帯電話、PDA、ゲーム機器など)に接続して利用する形、またはパッケージとしてソフトウェアをコンピュータなどの複数媒体(携帯電話、PDA、ゲーム機器など)上で利用することもできる。センサーはいずれも利用者端末に直接配布される。プログラムの使用は、インターネット上でIDとパスワードを用い管理される。
【0017】
利用者は認知行動療法において、経験する心理的状態と生理状態の変化を、時系列を追って観測することができる(図1、2)。
【0018】
本発明は、自分の体(生理反応)を理解し、どのように心(感情、思考)と関係しているかを実際に目で見て体験することによって、自己コントロール技術を学べる教育プログラムである。
【0019】
基本的な構成は、コンピュータ上で行う体系化した認知行動療法、生理反応を観測するセンサー(皮膚抵抗、心拍)とゲーム、生理反応を示すグラフ、教育的解説で構成される (図2)。
【0020】
本プログラムはセッションごとに順を追い利用することもできれば、必要なセッションをランダムに利用することもできる。例えば認知行動療法の部分のみを利用、またはリラクセーション目的、自己コントロールを目的にバイオフィードバックゲームのみを行なうことができる。
【0021】
本プログラムは目的、年齢層にあわせて幅広く作成することができ、最長8時間程度のものである。セッションごとに心理状態、また生理状態を観測する機能を有し、自己の変化記録をつけることができる。
【実施例】
【0022】
認知行動療法の一つエクスポージャー(暴露法)は、恐怖の対象となるものに接近して不安症状が治まるまで十分な時間をかけて触れ続ける方法であるが、これを繰り返すことにより症状の軽減が見られる。例えば社会不安を例に取ると、対象画面を2次元的アニメーションから人物ビデオクリップそして3次元的バーチャルリアリティーと現実度を上げてゆき訓練をする。同時に皮膚抵抗、心拍を観測し、反応がなれるまで訓練をする。コンピュータープログラムは皮膚抵抗の反応が一定の粋に収まったときに次のステップに移れるように設定をする。
【0023】
心理的な問題を掘り下げて考える訓練、自己探索では利用者は自己質問を深めるに当たり、皮膚抵抗、心拍変化度、心拍などを同時記録することにより、利用者はどの部分が心に引っかかっているかなどを客観的に見ることができ、そこでの問題を掘り下げて考えてゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明推進に当たってのフローチャートである。
【図2】心理的、生理的観測の例である。
【図3】本発明を実施するための形態様式である。
【図4】自己探索ゲームの概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ上の認知行動療法(Computerized Cognitive Behavioural Therapy:CCBT)過程において、利用者の精神状態、生理学的な反応を感知、観測し、測定量の表示にゲーム性を持たせ、心理的、生理的両方の指標を用いて、長期的に本プログラムの前後で精神状態を評価できる方法と、短期的に本プログラムの訓練効果を評価できる方法とを併せ持つCCBTの効果を高めるシステムであって、認知行動療法を用いて心理状態を変化させる手段と、生理状態を感知する手段、心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段とを備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。
【請求項2】
請求項1記載方法において、前記CCBTを用いて心理状態を変化させる手段は、認知行動療法の原理を解説する手段と、コンピュータ上で認知行動療法を実践する手段と、心理変化を表示する手段とを備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。
【請求項3】
請求項1記載方法において、前記生理状態を感知する手段は、末梢から生理反応(自律神経機能)を感知するセンサーと感知した電気信号を処理するプロセッサと処理された電気信号の変化量を表示する手段を備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。
【請求項4】
請求項1記載方法において、前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は、心理状態を反映する自律神経機能を単独または複数の組み合わせにより構成された、バイオフィードバックを行う手段を備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。
【請求項5】
請求項1記載方法において、前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は、心理状態の変化に敏感な皮膚抵抗の振動数を用いてバイオフィードバックを行う手段を備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。
【請求項6】
請求項1記載方法において、前記CCBTを用いて心理状態を変化させる手段、前記生理状態を感知する手段、前記心理状態と生理状態を基にゲームを行う手段は通信ネットワークまたPC以外のゲーム機器などを媒体とした手段を備えたことを特徴とする精神衛生向上のための教育システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−319638(P2007−319638A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178716(P2006−178716)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(506222340)
【出願人】(506222351)
【出願人】(506222362)
【Fターム(参考)】