説明

コンピュータ用パネル及びコンピュータ

【課題】記憶媒体読取装置が取り付けられるコンピュータ用パネル1において、電磁波シールドの効果が高く、記憶媒体読取装置からの電磁波の漏れや、外部からの電磁波によって記憶媒体読取装置の読み取り間違いが少ないコンピュータ用パネル及びコンピュータを提供する。また、リサイクルが容易で環境負荷が小さく、成形が容易で、耐熱性に優れたコンピュータ用パネル及びコンピュータを提供する。
【解決手段】本発明のコンピュータ用パネル1は、略矩形蓋形状の成形体本体10の内側に、成形体本体10と同様の形状にプレス成形された圧延鋼板からなるシールド部材20が密着して一体成形されており、DVD装置を挿入するための矩形孔1bが開けられている。シールド部材20には、孔20aが縦横等間隔に並んで開けられており孔20aの内部にはポリ乳酸系樹脂がシールド部材20と面一となるように充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部への電磁波の漏れ及び該外部からの電磁波による影響が少ないコンピュータ用パネル及びコンピュータに関し、医療電子機器用コンピュータや自動車における制御用コンピュータ等、電磁波による誤動作の排除が厳しく要求される場所でのコンピュータに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの情報処理量も飛躍的に多くなり、発熱や使用電力の低減の要求に対応すべく、作動電圧も従来5V程度であったものが、最近では0.7V程度にまで下がっている。このような状況下においては、微弱な電磁波によってもコンピュータが誤動作する危険性があり、電磁波の漏れや、外部からの電磁波による影響を防止するため、コンピュータには電磁波シールドがなされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、コンピュータのハウジング開口部を塞ぐコンピュータ用パネルには、CD−ROM等の記憶媒体を読み取るための記憶媒体読取装置が取り付けられることも多い。記憶媒体読取装置にはモータ等の電磁波を発生する機器が備えられるため、電磁波の発生源となるおそれがある。また、記憶媒体からの読み取り誤動作を防ぐために、電磁波の進入を防ぐことも必要となる。このため、コンピュータ用パネルの開口部に取り付けられる記憶媒体読取装置には電磁波シールド部材が取り付けらたり、アース方法を工夫したり、電磁波フィルター回路が設けられる等、EMI対策がなされている。
【0004】
一方、環境問題が大きな社会問題となっている今日において、コンピュータのハウジングについてもリサイクルや廃棄しても環境負荷の小さい素材が求められている。こうした問題を解決するためのプラスチックとして、ポリ乳酸系樹脂組成物が注目されている。ポリ乳酸系樹脂組成物は比較的安価であり、機械的強度が大きく、射出成形が可能で、透明性にも優れているため、例えば電気・電子・OA分野への適用が検討されてきている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−178293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の記憶媒体読取装置がパネルの開口部に取り付けられたコンピュータにおいては、未だ電磁波シールドの効果は充分とはいえなかった。また、環境負荷の小さいポリ乳酸系樹脂組成物をコンピュータ用のパネルに使用しようとしても、射出成形を行った場合に型からの抜けが悪く、金型設計の自由度が低いという問題があった。また、耐熱性が良くないため、コンピュータ内部からの熱や、高い温度環境下で使用される場合には、変形などの危険性があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、記憶媒体読取装置が取り付けられるコンピュータ用パネルにおいて、電磁波シールドの効果が高く、記憶媒体読取装置からの電磁波の漏れや、外部からの電磁波によって記憶媒体読取装置の読み取り間違いが少ないコンピュータ用パネル及びコンピュータを提供することを目的とする。
また、リサイクルが容易で環境負荷が小さく、成形が容易で、耐熱性に優れたコンピュータ用パネル及びコンピュータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンピュータ用パネルは、内部にコンピュータ用電子回路を収容するハウジング本体の開口部を塞ぐコンピュータ用パネルであって、金属製の薄板状素材からなるシールド部材と、該シールド部材の片面を覆うポリ乳酸系樹脂組成物とが一体成形された成形体からなり、記憶媒体読取装置を取り付けるための取付口が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のコンピュータ用パネルは、金属製の薄板状素材からなるシールド部材と、該シールド部材の片面を覆うポリ乳酸系樹脂組成物とが一体成形された成形体から構成されている。ここで、「金属製の薄板状素材からなるシールド部材と、該シールド部材の片面を覆うポリ乳酸系樹脂組成物とが一体成形された」とは、金属製の薄板状素材からなるシールド部材の一面側がポリ乳酸系樹脂組成物と接着されて一体となっており、シールド部材の他面側は、ポリ乳酸系樹脂組成物と接着することなく、剥き出しとなるように成形されていることをいう。このため、記憶媒体読取装置を本発明のコンピュータ用パネルの取り付けた場合において、記憶媒体読取装置から漏れる電磁波を、金属製の薄板状素材からなるシールド部材が遮蔽する。また、外部からの電磁波がシールド部材によって遮蔽されるため、記憶媒体読取装置の読み取り誤動作を防止できる。特に、記憶媒体読取装置が光学式ドライブである場合には、CD等を高速回転するモータからの電磁波を遮蔽することができるため、効果的である。
なお、金属製の薄板状素材はメッシュ状の素材でもよい。こうであっても電磁波を遮蔽することは可能だからである。また、軽量化を図ることもできる。
【0010】
また、金属製の薄板状素材からなるシールド部材が補強材としての役割を担うこととなり、パネルの機械的強度が高められる。このため、成形型からの型抜き時の変形が防止され、成形が容易となる。また、金属製の薄板状素材が一体成形されていることによって、金属製の薄板状素材の形状や板厚を変えることでパネルの固有振動数や振動モードを変更することも可能となり電子機器の共振対策も容易となる。
【0011】
さらには、リサイクル利用を行なう場合においても、金属製の薄板状素材からなるシールド部材は、一面側においてポリ乳酸系樹脂と接着して一体とされており、シールド部材の他面側は、ポリ乳酸系樹脂と接着することなく、剥き出しとなるように成形されているため、他面側からシールド部材をポリ乳酸系樹脂から引き剥がすだけで、金属とポリ乳酸系樹脂を分別して収集することができる。このため、金属とポリ乳酸系樹脂との分別収集が極めて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のコンピュータ用パネルに用いるポリ乳酸系樹脂としては、ポリ乳酸を主成分とする樹脂であれば、他のプラスチック、軟化剤、難燃剤、滑剤、増量剤等の各種の添加剤が添加されていてもよい。
【0013】
ポリ乳酸は、使用者が自ら合成してもよいが、入手のし易さから市販されているものを用いることも可能である。具体的には、Cargill−DOW社製のNature Works(登録商標)、トヨタ自動車(株)製のU’z(登録商標)、島津製作所(株)製のラクティ(登録商標)、ユニチカ( 株)製のテラマック(登録商標)、三井化学(株)製のレイシア(登録商標)、カネボウ合繊社製ラクトロン(登録商標)、三菱樹脂社製のエコロージュ(登録商標)、クラレ(株)社製のプラスターチ(登録商標)、東セロ(株)社製のパルグリーン(登録商標)等が挙げられる。
【0014】
また、ポリ乳酸を構成している乳酸は、L−乳酸、D−乳酸及びL−乳酸とD−乳酸との混合物のいずれであってもよい。また、ポリ乳酸の重量平均分子量は3万以上、100万以下であることが好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量が3万未満では、成形品とした場合の強度が小さなものとなり、100万を超えた場合、加熱時の流動性に欠け、射出成形が困難となる。
【0015】
本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物には、発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて副次的な添加物を加えて様々な改質を行うことが可能である。副次的な添加物の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、抗菌剤、安定剤、静電剤、核形成材、各種フィラー等その他の類似のものが挙げられる。
【0016】
一方、ポリ乳酸系樹脂と一体成形されるシールド部材は、金属製の薄板状素材をプレス成形する等により製造することができる。金属製の薄板状素材は耐腐食性を向上させるためにめっき等が施されていてもよい。また、プレス成形等が容易なようにリン酸塩皮膜等の化成皮膜が形成されている金属製の薄板状素材を用いてもよい。金属製の薄板状素材の材質としては特に限定は無く、鉄、アルミ、ステンレス、銅、亜鉛、真ちゅう等を用いることができる。この中でも、鉄は安価で機械的強度にも優れるため、ポリ乳酸系樹脂層を補強する効果が大きく、好適である。
金属製の薄板状素材の厚さは、材質や、要求される機械的強度、電磁波遮蔽性能等によって適宜選択されるが、一般的には0.1mm〜1.0mmである。
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例のコンピュータ用パネルについて図面を参照しつつ詳述する。
【0018】
(実施例1)
図1に示した実施例1のコンピュータ用パネル1は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ本体の前面パネルに用いられるものである。このコンピュータ用パネル1は、略矩形蓋形状の成形体本体10の内側に、成形体本体10と同様の形状にプレス成形された圧延鋼板からなるシールド部材20(図2参照)が密着して一体成形されている(図3参照)。圧延鋼板の厚さは0.3mmである。コンピュータ用パネル1は、図1に示すように、傾斜面1aが設けられており、さらには記憶媒体読取装置としてのDVD装置を挿入するための矩形孔1bが開けられている。
【0019】
図2に示すように、シールド部材20には、直径6mmの孔20aが縦横等間隔に並んで開けられており、図4に示すように、孔20aの内部にはポリ乳酸系樹脂がシールド部材20と面一となるように充填されている。
【0020】
<ポリ乳酸系樹脂の製造>
以上のように構成された実施例1のコンピュータ用パネル1を構成する成形体本体1の原料としては、次の組成のポリ乳酸系樹脂を用いた。
ポリ乳酸(ユニチカ(株)製、テラマックTE4000)・・90重量部
(100°Cで4時間乾燥させたもの)
ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ(登録商標)#1020)(以下「PBS」と略す)・・・・・・・・・・・・10重量部
【0021】
そして、これらを混合した後、中型二軸押出機(テクノベル(株)製、KZW15−30TGN)に投入して加熱溶融混練してペレット化した。
【0022】
<成 形>
上記のようにして得られたポリ乳酸系樹脂のペレットを用いて、以下のようにして成形した。すなわち、まず圧延鋼板を用意し、図2に示すシールド部材20の展開図の形状に切断した後、プレス加工してシールド部材20を作製する。そして、図5及び図6に示すように、シールド部材20に沿って密着する凸部30aを有する雄金型30にシールド部材20を被せる。
【0023】
次に、図7に示すように、雌金型31を雄金型30と合体させる。ここで、雌金型31は雄金型30との合体で、コンピュータ用パネル1の成型金型形状に整合する隙間ができるように形成されており、さらには、樹脂を射出させるためのゲート32が形成されるようになっている。ゲート32は、図8に示すように、シールド部材20に対して垂直方向からポリ乳酸系樹脂が射出されるように形成されている。このため、射出成型時において、シールド部材20は溶融したポリ乳酸系樹脂の導入によって雄金型30側に押し付ける力が働く。このため、ポリ乳酸系樹脂がシールド部材20と雄金型30との間に入り込むことが防止される。そして図示しない射出成形機からゲート32に溶融したポリ乳酸樹脂を射出する。なお、このとき、シールド部材20と雄金型30とを両面テープを用いて密着させることも好ましい。こうであれば、ポリ乳酸系樹脂がシールド部材20と雄金型30との間に入り込むことをさらに確実に防止することができる。
【0024】
最後に、雌金型31と雄金型30とが離され、実施例1のコンピュータ用パネル1が型から外され、成形が終了する。
【0025】
(実施例2)
実施例2では、次の組成のポリ乳酸系樹脂を用いた。その他は実施例1と同様であり、説明を省略する。
・ポリ乳酸(ユニチカ(株)製、テラマックTE4000)・・90重量部
(100°Cで4時間乾燥させたもの)
・ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ(登録商標)
#1020)(以下「PBS」と略す)・・・・・・・・・・・・10重量部
・RP剤(旭化成デュラネートTSA)・・・・・・・・・・・0.5重量部
【0026】
(実施例3)
実施例3では次の組成のポリ乳酸系樹脂を用いた。その他は実施例1と同様であり、説明を省略する。
・ポリ乳酸(ユニチカ(株)製、テラマックTE4000)・・90重量部
(100°Cで4時間乾燥させたもの)
・ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ(登録商標)
#1020)(以下「PBS」と略す)・・・・・・・・・・・10重量部
・RP剤(旭化成デュラネートTSA(登録商標))・・・・・0.5重量部
・難燃剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10重量部
(ポリリン酸アンモニウム(クラリアント社製:ペコフレーム)
【0027】
(実施例4)
実施例4では次の組成のポリ乳酸系樹脂を用いた。その他は実施例1と同様であり、説明を省略する。
・ポリ乳酸(ユニチカ(株)製、テラマックTE4000)・・90重量部
(100°Cで4時間乾燥させたもの)
・ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ(登録商標)
#1020)(以下「PBS」と略す)・・・・・・・・・・・10重量部
・RP剤(旭化成デュラネート(登録商標)TSA)・・・・・0.5重量部
・難燃剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10重量部
(ポリリン酸アンモニウム(クラリアント社製:ペコフレーム)
・造核剤(日産化学製)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1重量部
【0028】
(比較例1)
比較例1では、シールド部材20を用いることなく、全てポリ乳酸系樹脂で成形を行った。用いたポリ乳酸系樹脂は、実施例1と同じである。
【0029】
(比較例2)
比較例1では、シールド部材20を用いることなく、全てポリ乳酸系樹脂で成形を行った。用いたポリ乳酸系樹脂は、実施例2と同じである。
【0030】
(比較例3)
比較例1では、シールド部材20を用いることなく、全てポリ乳酸系樹脂で成形を行った。用いたポリ乳酸系樹脂は、実施例3と同じである。
【0031】
(比較例4)
比較例1では、シールド部材20を用いることなく、全てポリ乳酸系樹脂で成形を行った。用いたポリ乳酸系樹脂は、実施例4と同じである。
【0032】
以上のように得られた実施例1〜4及び比較例1〜4のコンピュータ用パネルについて、電磁適合性(EMC)試験及び成形体の寸法精度について測定を行った。
【0033】
<電磁環境適合性(EMC)試験>
実施例3及び比較例1のコンピュータ用パネルを図示しないコンピュータ本体に取り付け、さらにDVD装置やダイヤルその他の部品を取り付けてコンピュータを完成させ、コンピュータから発生する電磁妨害(EMI)及び電磁妨害からの妨害耐力(EMS)を測定するため、EMC試験を行なった。試験方法は、コンピュータを電波暗室内において、各種の周波数において発生する電磁波を測定することにより行なった。測定は、電波暗室内におかれたテーブル(高さ80cm)上に360度回転するターンテーブルを置き、その上に測定対象となるコンピュータを載せ、回転させながら測定を行なった。受信用のアンテナは測定対象となるコンピュータから10mの位置とし、ターンテーブルを回転させたときに最も電磁波の強い角度の時において測定した。アンテナは高さ1〜4mの稼動範囲において電磁波強度が最大となる高さで行い、水平方向及び垂直方向の両方で測定を行なった。
【0034】
実施例3における測定結果を図10に、比較例1における測定結果を図11にそれぞれ示す。これらの図から、実施例1のコンピュータ用パネルでは、VCCIクラスBの基準(図中のステップ状の実線)を満たしているのに対し、比較例1のコンピュータ用パネルでは、図11に示すように、507.93MHzでの測定においてアンテナを垂直にした場合、VCCIクラスBの基準(図中のステップ状の実線)を大きく超過した(図11における丸で囲んだ×印のピーク)。以上の結果から、実施例3のコンピュータ用パネルにおいては、シールド部材があるために、電磁波遮蔽効果が著しく大きくなることが確認された。
【0035】
<寸法精度>
成形体の寸法精度は、図9に示すように、コンピュータ用パネル1の長手方向直線部分の中央における設計値からのずれの距離G(図9参照)によって評価した。その結果、表1に示すように、シールド部材20を入れた実施例1〜4では、ずれの距離Gが1mmであるのに対して、シールド部材20を入れていない比較例1〜4ではいずれも2.2mm以上となり、シールド部材20を入れることにより、成形体の寸法精度が飛躍的に良くなることが確認された。
【0036】
【表1】

【0037】
以上のように得られたコンピュータ用パネル1では、金属板からなるシールド部材20がポリ乳酸系樹脂1によって覆われて一体成形されているため、金属板からなるシールド部材20によって電磁波が遮蔽される。このため、電子機器から発生する電磁妨害(EMI)が防止され、電磁妨害からの妨害耐力(EMS)にも優れることとなる。このため、開口1bに挿入されるDVD装置に起因する電磁妨害が防止され、読み取り誤動作も防止できる。
【0038】
また、コンピュータ用パネル1の機械的強度が圧延鋼板からなるシールド部材20によって高められているため、成形型からの型抜き時の変形が防止され、成形が容易となる。
【0039】
さらには、コンピュータ用パネル1を構成するプラスチックが生分解性に優れたポリ乳酸系樹脂であるため、廃棄処分にされても、微生物によって分解が可能である。また、コンピュータ用パネル1のリサイクル利用を行なう場合においても、圧延鋼板からなるシールド部材20を成形体本体10から引き剥がすだけで、圧延鋼板とポリ乳酸系樹脂を分別して収集することができ、再利用され易くなる。
【0040】
したがって、実施例のコンピュータ用パネル1によれば、成形が容易で、電磁波遮蔽性に優れ、リサイクル利用時における分別も容易となる。
【0041】
また、シールド部材20には複数の孔20aが開けられており、孔20aにはポリ乳酸系樹脂がシールド部材20の表面と面一となるように充填されているため、圧延鋼板を使用する量が少なくてすむため、軽量化が図られ、製造コストも低廉となる。
【0042】
<振動解析>
上記実施例1及び比較例1のコンピュータ用パネルの固有振動数について、数値解析を有限要素法に従って行なった。数値解析にあたっては、パソコンにおける一般的な光学式ドライブとして、最高回転数10000rpm(振動数では167Hz)の光学式ドライブを搭載したと仮定した。
【0043】
その結果、シールド部材を用いていない比較例1では、3次の固有振動数が171.1Hzとなり、共振する可能性があるのに対し、シールド部材を用いた実施例1では、145Hzまで固有振動数が下がっており、光学式ドライブとの共振問題が回避できることが分かった。
以上の結果から、シールド部材と一体成形することによって、コンピュータ用パネルの共振対策が図りやすくなることが確認できた。
【0044】
なお、上記実施例では金属製の薄板状素材として鉄製の薄板材を使用したが、その代わりにメッシュ状の金網素材を用いても良い。こうであっても電磁波を遮蔽することはでき、さらには軽量化が図られることとなる。
【0045】
<耐熱試験>
上記実施例1及び比較例1のコンピュータ用パネルを用いて組み立てたパソコンについて、耐熱試験を行なった。評価はパソコンを35℃に設定した恒温槽の中心に横置きで入れ、5時間放置し、動作確認を行なった。また、パソコン内のCPUヒートシンクにCH1の熱電対を設置し、チップセットヒートシンクにCH2の熱電対を設置し、HDD表面にCH3の熱電対を設置し、DVD後部にCH4の熱電対を設置し、さらに比較のために外気にCH5の熱電対を設置して、温度変化を測定した。
【0046】
その結果、5時間の放置においても、なんらの誤動作も生じなかった。また、観測された最大温度については、CPUヒートシンクで55.1℃、チップセットヒートシンクで65.9℃、HDD表面で℃、DVD後部で49.6℃、外気で37.3℃となった。
【0047】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1のコンピュータ用パネルの斜視図である。
【図2】シールド部材の斜視図である。
【図3】実施例1のコンピュータ用パネルの断面図である。
【図4】実施例1のコンピュータ用パネルの一部拡大断面図である。
【図5】シールド部材と雄金型の断面図である。
【図6】シールド部材を雄金型に被せた状態の断面図である。
【図7】シールド部材を雄金型に被せ、さらに雌金型を被せた状態での断面図である。
【図8】シールド部材を雄金型に被せ、さらに雌金型を被せた状態でのゲート付近の拡大断面図である。
【図9】コンピュータ用パネル1の底面図である。
【図10】実施例3のコンピュータ用パネルの電磁環境適合性試験結果を示すグラフである。
【図11】比較例1のコンピュータ用パネルの電磁環境適合性試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
10…成形体本体
20…シールド部材
24…貫通孔
30…第1の金型(雄金型)
31…第2の金型(雌金型)
32…ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコンピュータ用電子回路を収容するハウジング本体の開口部を塞ぐコンピュータ用パネルであって、
金属製の薄板状素材からなるシールド部材と、該シールド部材の片面を覆うポリ乳酸系樹脂組成物とが一体成形された成形体からなり、記憶媒体読取装置を取り付けるための取付口が設けられていることを特徴とするコンピュータ用パネル。
【請求項2】
前記記憶媒体読取装置は光学式ドライブであることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ用パネル。
【請求項3】
請求項1乃至3のいずれか1項のコンピュータ用パネルを備えたコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−223855(P2009−223855A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70683(P2008−70683)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593227132)ダイトーエムイー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】