説明

コンベア用潤滑剤

【課題】 コンベア上面及び/又は裏面に必要最小限の量を供給することにより、コンベア上面に対して展延し、十分な潤滑性能を与えることができるコンベア用潤滑剤を提供する。
【解決手段】 下記(A)〜(D):A:アルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤及びポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤、の少なくとも1種;B:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩、並びにアシルアミノ酸型アニオン界面活性剤の少なくとも1種;C:脂肪族アルキルアミン類及びその塩、の少なくとも1種;D:アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤の少なくとも1種;からなる群より選ばれる少なくとも一種と、高沸点溶剤と、水とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビンや缶、PETボトル、紙パック等の各種容器を搬送するための搬送コンベア用潤滑剤組成物に関し、特に、水による希釈を必要とせずに原液にて微量に使用するためのコンベア用潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ビール、酒、清涼飲料、ジュース、調味料、ソース、各種缶詰、食品等(以下、「飲食料品」という)、薬品、化粧品および卓上ガスボンベ等における、ビンや缶、PETボトル、紙パック等の容器(これらを総称して、以下、容器等という)に充填する工程において、これらの容器を搬送する手段として、多数のコンベアプレートを搬送方向に無端状に連ねた搬送コンベアが広く利用されている。なお、容器等の搬送コンベアは、ボトルコンベアとも称される。
【0003】
容器の搬送コンベアは、通常、自動制御により連続運転されており、容器を安定して搬送するとともに、容器等の流れが停止したときでもコンベアのみがそのまま連続して運転できるようにする必要がある。このため、洗浄機から運ばれてきた容器等をそのままボトルコンベア表面の流れに乗せる場合には、コンベア表面は静摩擦力を適度に有する方が好ましく、容器等の流れを停止させる場合には、容器等と接触しているコンベア表面は動摩擦力が低い方が好ましい。これら両要求を満たすために、通常、コンベア表面にコンベア用潤滑剤を塗布することが行われてきている。
【0004】
この種のコンベア用潤滑剤として、従来、脂肪酸とアルカリの反応によって得られる脂肪酸アルカリ塩を主成分とし、これに必要に応じて界面活性剤等を添加してなる脂肪酸石けん潤滑剤が知られている。これは通常、水で100〜200倍、あるいはそれ以上に希釈してボトルコンベア表面に塗布または噴霧することにより使用に供されている。また非イオン界面活性剤を主成分とするコンベア用潤滑剤にあっては、水で400〜800倍、あるいはそれ以上に希釈してボトルコンベア表面に塗布または噴霧することにより使用に供されている。
【0005】
搬送コンベアは通常、自動制御により連続運転されるため、コンベア上の容器の流れが停止してもコンベアのみがそのまま連続して運転される場合がある。この場合、容器とコンベアのプレート表面との間に摩擦が生じてモータの負荷を異常に増したり、容器を傷つけたり、容器が倒れて割れたり、傷つく等の不都合が生じるので、この摩擦を低下させる必要がある。
【0006】
上述の要求を満たす潤滑剤として、従来、水溶性のコンベア用潤滑剤組成物が使用されていた。
【0007】
例えば、こうした水溶性のコンベア用潤滑剤組成物としては、(1)高級脂肪酸石けんを主体としたコンベア用潤滑剤組成物、(2)アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルのアニオン界面活性剤を主体としたコンベア用潤滑剤組成物などが挙げられる。
【0008】
しかしながらこれらは、潤滑性能には優れているものの、希釈水の硬度による影響を受けて水不溶性の金属石けんを生成し、これがスケールとして付着する。また、この生成物は潤滑剤水溶液を供給する際のスプレーのノズル孔を塞いだり、コンベア表面を汚したり、あるいはさらに、これらの汚れが微生物の温床となって、コンベア上に菌巣を形成する原因となることもある。
【0009】
そこで、このような問題を解決するために、エチレンジアミン四酢酸塩等のキレート剤を多量に添加してスケールの付着抑制効果をもたせている場合がある。しかしながら、このようなキレート剤は微生物分解性に乏しいために、これを含む排水を活性汚泥槽で処理しても分解しにくいという問題があった。
【0010】
一方、上述の欠点を排除するため、(3)特公平7−35516号公報には、脂肪族アルキルアミン類の酢酸塩や塩酸塩を主成分として用いたコンベア用潤滑剤組成物が提案されている(特許文献1を参照)。脂肪族アルキルアミン類の酢酸塩や塩酸塩を主体とするコンベア用潤滑剤組成物は、希釈水の硬度による影響を受けることなく、優れた殺菌力と洗浄力を有し、この点においては上述(1)および(2)のコンベア潤滑剤組成物よりも優れている。しかしながら、水に希釈した場合、潤滑性能に劣り、かつ濡れ性にも劣るため、潤滑剤がコンベア表面上に拡がらず、供給スプレーノズルの選定や、過剰量の供給を余儀なくされることがある。
【0011】
また、コンベア用潤滑剤組成物の希釈液とアニオン成分(リン酸、硫酸、炭酸等)とが反応して、水不溶性の錯体を生成する。この生成物は潤滑剤水溶液を供給する際のスプレーのノズル孔を塞いだり、コンベア表面を汚したり、あるいはさらに、これらの汚れが微生物の温床となって、コンベア上に菌巣を形成する原因ともなっている。
【0012】
また、特開平10−158681号公報には、(4)ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を主体とした潤滑剤(特許文献2を参照)、特開2002−275483号公報には、(5)ポリオキシエチレンアルキルまたはアルケニル酢酸またはその塩(特許文献3を参照)を主体とした潤滑剤、特開2004−315634号公報には、(6)両性界面活性剤(アルキルアミノプロピオン酸、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン)を主体とした潤滑剤(特許文献4を参照)等、希釈水の硬度やアニオン成分による影響を受けにくい水溶性の潤滑剤が提案されている。これらの潤滑剤も水に希釈した場合、容器の種類やコンベアのプレートの材質によって潤滑性能に劣る、あるいは発泡性などの問題を抱える場合が多く、一部の生産工程に限定して使用されている場合が少なくない。
【0013】
以上のような(1)〜(6)の水溶性の潤滑剤は、全て水で希釈して潤滑剤希釈液として使用することを前提として考案されている。使用方法の例としては、上記(1)〜(6)のコンベア用潤滑剤に対して、可溶化剤、殺菌剤等を配合して、コンベア用潤滑剤原液を調製し、主に希釈装置を使用してこれを2〜1000倍程度に水で希釈して潤滑剤希釈液として、コンベア上部に設けたノズルから噴霧する方法や、コンベア上面に対して刷毛等により、30〜300ml/分程度の割合で供給する方法がある。
【0014】
このため、例えば、供給箇所が100〜200箇所あるライン規模の飲食料品の製造工場の場合、約1.5〜20トン/日(8時間稼動)という大量の潤滑剤希釈液が必要となり、使用後の潤滑剤希釈液の水処理には、多額の費用を要していた。また、このような大量使用の場合、10〜200kg/日(8時間稼働)程度のコンベア用潤滑剤を要することになるので、コンベア用潤滑剤の容器形態はケミカルドラムや500kg〜1トン容量のコンテナ等と大きくなり、搬送方法や設置・保管場所の問題を生じる場合がある。
【0015】
他方、シリコーン化合物やフッ素化合物を含有する潤滑剤が提案されている。例えば、特表2003−529627号公報には、配合物全体を基準に1重量%以上のポリシロキサンを含有し、さらに、フッ素化合物及びポリヒドロキシ化合物及び/又はそのエーテル及びエステルから選ぶ1つ以上の成分を含有するポリシロキサンをベースとする滑剤及び
その使用が開示され、また、適用システムとしては、適用中に潤滑する表面と直接的に接触することが好ましく、配合物を水で10,000〜100倍に希釈し、噴霧アプリケーターを適用システムとして使用することが開示されている(特許文献5を参照)。
【0016】
また、潤滑剤組成物の分配装置や供給方法としては、例えば、特表2002−519611号公報には、複数の横穿孔を呈する収集管と、好ましくは高密度のフエルトで構成してなり、中空体から底部開口を介して部分的に突出する吸収フエルト布とを内部に収容した中空体を含むことにより、コンベヤ全体に潤滑剤組成物を均一に分配する潤滑剤組成物用の分配装置が開示されている(特許文献6を参照)。
【0017】
また、噴霧による微量供給技術としては、例えば、特開2001−141182号公報に、オイルタンク内の油を吸引吐出する定量式ポンプからの油を霧化機で霧状の油霧にする噴霧給油装置において、油霧から適切な粒径の油霧だけを内部で発生する遠心力で選別吐出するサイクロンを設け、このサイクロンで油霧の粒径を大小に分離して、粒径が小さくて揃った油霧を安定的に供給する噴霧装置が開示されている(特許文献7を参照)。
【0018】
特開平6−249396号公報には、各潤滑対象物に対応する複数のノズル先端部が接続され、オイル・エア装置は、潤滑油を空気流により搬送して間欠分配装置に供給し、そして、制御装置は、オイル・エア装置から送られた潤滑油及び空気流を混合して複数のノズル先端部から各潤滑対象物に間欠的に供給するように、間欠分配装置及びオイル・エア装置を制御する。さらに、間欠分配装置は、複数のノズル先端部の内の一の先端部にはオイル・エア装置から送られた空気流及び潤滑油の大部分を供給し、他の先端部には残りの適当な微少量を供給する潤滑油供給装置が開示されている(特許文献8を参照)。
【0019】
そして、特開平6−171619号公報には、コンベアの側方及び下方に、噴出ノズルを複数設けたコンベアの殺菌潤滑方法及びそのコンベア装置が開示され、噴出ノズルの噴霧量は、コントロールユニットによって制御され、基本的には、コンベアの無端部材(コンベアプレート)の表面が常時濡れた状態となるように、その噴出量が設定されることが開示されている(特許文献9を参照)。
【特許文献1】特公平7−35516号公報
【特許文献2】特開平10−158681号公報
【特許文献3】特開2002−275483号公報
【特許文献4】特開2004−315634号公報
【特許文献5】特表2003−529627号公報
【特許文献6】特表2002−519611号公報
【特許文献7】特開2001−141182号公報
【特許文献8】特開平6−249396号公報
【特許文献9】特開平6−171619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来、コンベア用潤滑剤は、30〜300ml/分程度の割合で、コンベア上面はもとより、裏面に対しても充分にコンベア用潤滑剤希釈液がいきわたるように噴霧、あるいは塗布することにより使用されていたために、大量の潤滑剤希釈液を必要とし、その使用後の潤滑剤希釈液の水処理コストが高いため、その改善が求められていた。また、広い保管場所や運送コストの改善された、よりコンパクトな容器形態が求められていた。したがって、本発明の目的は、コンベア上面及び/又は裏面に必要最小限の量を供給することにより、コンベア上面に対して展延し、十分な潤滑性能を与えることができるコンベア用潤滑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をおこなった結果、従来のように水で希釈せず、かつ、ビン、缶、PETボトル、紙パック等の容器等とステンレス、鉄および樹脂(プラスチック)製のコンベアプレートとの摩擦を解消し、上述のような磨耗の残留を発生させず、泡立ちを抑えるとともに、硬度の高い水が混入した場合でも水の硬度成分と潤滑剤による水不溶性の錯体を生成することなく、優れた潤滑性能と微生物汚染防止性能を有するコンベア用潤滑剤組成物を開発することに成功した。
【0022】
本発明は、水で希釈することなくコンベアプレートの表面及び/又は裏面に供給するために用いられる容器搬送コンベア用潤滑剤組成物であって、下記(A)〜(D):
A:アルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤及びポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤、の少なくとも1種;
B:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩、並びにアシルアミノ酸型アニオン界面活性剤の少なくとも1種;
C:脂肪族アルキルアミン類及びその塩、の少なくとも1種;
D:アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤の少なくとも1種;
からなる群より選ばれる少なくとも1種と、高沸点溶剤と、水とを含有するコンベア用潤滑剤組成物を提供する。
【0023】
好ましくは、上記コンベア用潤滑剤組成物における(A)〜(D)成分の含有量は0.1〜50質量%である。また好ましくは、上記コンベア用潤滑剤組成物における高沸点溶剤の含有量は10〜98質量%である。また好ましくは、上記コンベア用潤滑剤組成物における水の含有量は80質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。なお、本明細書において組成物中の各成分の含有量は重量%で表す。
【0024】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、1.0×10-6〜1.0g/cm2の割合でコンベアプレートの表面及び/又は裏面に連続又は間欠的に微量に供給するために塗布、又は噴霧することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コンベア用潤滑剤組成物(以下、潤滑剤組成物ともいう)を水で希釈することなしに、一定の割合1.0×10-6〜1.0g/cm2で、主として鉄、ステンレス等の材質からなる金属製搬送コンベアやポリアセタール樹脂等の材質からなるプラスチック製搬送用コンベアにおいて、コンベアプレート表面及び/又は裏面に連続的又は間欠的に供給することで、所望の潤滑性能を得ることができる。
【0026】
また、本発明の潤滑剤組成物は、水で希釈することなしに、1.0×10-6〜1.0g/cm2の割合で微量供給するため、潤滑剤組成物の使用量が大幅に少なくなる。このため、潤滑剤組成物の配送管理作業及びその費用、並びに潤滑剤組成物の保管場所等も低減される。
【0027】
さらに、本発明の潤滑剤組成物は、水で希釈することなく原液で用いられるので、微生物の発生や微生物による汚染が防止できる。また、コンベアプレート上に汚れの付着はほとんどなく、また、従来のような、コンベアプレート上及びドレン板上に泡立ちが発生しないという利点を有する。また、水の使用量が激減するとともに、搬送コンベアの潤滑に使用された潤滑剤希釈液による排水量も激減するから、排水の処理作業や排水処理費用の削減となるという利点を有する。
【0028】
その上、本発明の潤滑剤組成物は、石油系溶剤等を必須成分としていないために、鉱油臭など発生せず、食品・飲料工場に対して衛生的であるという利点を有する。
【0029】
容器の搬送コンベアをもつラインでは、容器の充填・殺菌・加温・冷却やラベル工程などにおいて、水やスチーム(蒸気)の使用が前提とされ、これらが容器に付着すると同時にコンベアプレート上にも水が落下する。これらの水は硬度の高い水が使用される場合も多く、常時水が入り込むところでは高希釈にならざるをえない。本発明の潤滑剤組成物は、これらの水が混入した場合であっても水に可溶性であるとともに、優れた潤滑性能を維持し、また硬度成分による水不溶性の錯体を生成せず汚れを発生させない。特に、硬水に可溶性であるため、容器やコンベアプレートを水で容易にすすぎ・洗浄できるというメンテナンスの容易さとともに、水可溶性の洗浄剤の使用も可能であるという利点を有する。
【0030】
さらにまた、本発明の潤滑剤組成物の潤滑性能は容器の種類やコンベアのプレートの材質を選ばず、良好であるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0032】
本発明の搬送コンベア用潤滑剤組成物は、牛乳、ビール、酒、清涼飲料等の飲食料品、薬品、化粧品等を充填するビン、缶、PETボトル、紙パック等の容器の搬送コンベアにおいて、潤滑剤として用いることができる。
【0033】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、下記(A)〜(D):
A:アルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤及びポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤、の少なくとも1種;
B:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩、並びにアシルアミノ酸型アニオン界面活性剤の少なくとも1種;
C:脂肪族アルキルアミン類及びその塩、の少なくとも1種;
D:アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤の少なくとも1種;
からなる群より選ばれる少なくとも1種と、高沸点溶剤と、水とを含有することを特徴とする。
【0034】
本発明の潤滑剤組成物に用いられる(A)成分のアルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル(HLB12.1:花王社製エマルゲン108)、ポリオキシエチレン(8)セチルエーテル(HLB11.9:日本油脂社製ノニオンP−208)、ポリオキシエチレン(8.5)トリデシルエーテル(HLB13:日本油脂社製ノニオンT−208.5)、ポリオキシエチレン(12)オレイルエーテル(HLB13.3:日本油脂社製ノニオンE−212)、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(9)ラウリルエーテル(東邦化学社製ペポールA−0638)、ポリオキシエチレン(4)モノラウレート(HLB13.1:日本油脂社製ノニオンL−4)、ポリオキシエチレン(6)モノラウレート(HLB13.5:日本油脂社製ノニオンO−6)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(HLB16.7:ライオン社製レオドールスーパーTW−L120)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(HLB14.9:ライオン社製レオドールスーパーTW−S120)、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート(HLB10:花王社製エマゾールO−105R)等が挙げられる。
【0035】
本発明の潤滑剤組成物に用いられる(A)成分のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレングリコール(30)(HLB5.8:三洋化成製ニューポールPE−61)、ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレングリコール(30)(HLB6.2:三洋化成製ニューポールPE−62)等が挙げられ、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(HLB9:日本エマルジョン社製EMALEX SS−5602)等が挙げられる。潤滑剤組成物中における(A)成分の配合量は0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
【0036】
本潤滑剤組成物に用いられる(B)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩としては、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成製ビューライトLCA)、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル酢酸(花王社製アキュポRO90VG)等が挙げられる。
アシルアミノ酸型アニオン界面活性剤としては、下記一般式(1)で示されるものを挙げることができる。
R−CO−NCH−CHCHCOOM (1)
(なお、Rは、炭素数3〜20のアルキル基またはアルケニル基、Mは、H及びアルカリ金属、アミンまたはアルカノールアミンである)
上記アシルアミノ酸型アニオン界面活性剤としては、市販のN−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンカリウム27%液(製品名:アラノンALK/川研ファインケミカル社製)、N−ミリストイル−Nーメチル−β−アラニン(製品名:アラノンAMA/川研ファインケミカル社製)等を用いることができる。潤滑剤組成物中における(B)成分の配合量は0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
【0037】
本潤滑剤組成物に用いられる(C)成分の脂肪族アルキルアミン類としては、ココナットプロピレンジアミン(ライオン社製デュオミンCD)、オレイルプロピレンジアミン(日本油脂社製ニッサンアミンDOB−R)、ポリオキシエチレン(2)ドデシルアミン(日本油脂社製ナイミーンL−202)、ポリオキシエチレン(10)オレイルアミン(日本油脂社製ナイミーンO−210、ポリオキシエチレン(1)オクチルアミン(日本油脂社製ナイミーンC−201)等が挙げられ、その塩としては、酢酸、アジピン酸、塩酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸等が挙げられる。潤滑剤組成物中における(C)成分の配合量は0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
【0038】
本潤滑剤組成物に用いられる(D)成分のアルキルアミノカルボン型両性界面活性剤としては、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
R−NH−(CH)nCOOM (2)
(なお、Rは、炭素数3〜20のアルキル基またはアルケニル基、nは1〜2、Mは、H及びアルカリ金属、アミンまたはアルカノールアミンである)
上記アルキルアミノカルボン型両性界面活性剤としては、n−ラウロイル−β−アラニン(川研ファインケミカル社製)、ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム塩20%液(製品名:レボンAPL/三洋化成工業社製)ヤシアルキルアミノプロピオン酸ナトリウム塩20%液(製品名:リポミンLA/ライオン社製)等が挙げられる。
また、グリシン型両性界面活性剤としては下記一般式(3)または(4)で示されるものが挙げられる。
R−(NHCHCHNHCHCOOM (3)
または、
(R−NHCHCHNCHCOOM (4)
(なお、RはC3〜C20のアルキル基またはアルケニル基、Mは、H及びアルカリ金属、アミンまたはアルカノールアミンである)
上記グリシン型両性界面活性剤としては、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン30%液(製品名:レボンS/三洋化成工業社製)、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン50%液(製品名:レボンU/三洋化成工業社製)等が挙げられる。潤滑剤組成物中における(D)成分の配合量は0.1〜50%質量が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
【0039】
本潤滑剤組成物に用いられる高沸点溶剤としては、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン)、グリコール系多価アルコール(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、1,3ブチレングリコール、1,4ブチレングリコール等が挙げられる。潤滑剤組成物中における高沸点溶剤の配合量は10〜98質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。溶剤の沸点は、好ましくは120℃以上、より好ましくは180℃以上である。
【0040】
本潤滑剤組成物に用いられる水としては、例えば、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性及び貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。なお、「水」は、本組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、潤滑剤組成物全体が100質量%となるように配合されるものであり、本潤滑剤組成物にあっては80質量%以下、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは5〜50質量%の範囲に設定される。50質量%を超えると菌による腐敗が起こりやすくなる。
【0041】
さらに、本発明のコンベア用潤滑剤組成物には、必要に応じて、可溶化剤、粘度調整剤、アルコール等の安定化剤、pH値の調整剤としての酢酸,蟻酸,グリコール酸,乳酸,炭素数2〜8のモノまたはジカルボン酸,炭素数10のジカルボン酸等の有機酸あるいは無機酸、抗菌剤、カチオン系界面活性剤等の殺菌剤、非イオン系界面活性剤等の洗浄助剤、グリセリン、アルキルジフェニルエーテル、ロジンエトキシレート等のクレージング抑制剤等を任意に含有することもできる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例および比較例により、本発明の特徴および利点をさらに詳細に説明する。
【0043】
下記の各成分
(A)アルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤及びポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩、アシルアミノ酸型アニオン界面活性剤
(C)脂肪族アルキルアミン類及びその塩
(D)アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤
(E)高沸点溶剤;及び
(F)水
を配合して、表1および2に示す実施例A−1〜14、B−1〜3、C−1〜3、D−1〜2および表3に示す比較例1〜3の組成(各表の数値の単位は質量%である。)の供試組成物を調整し、その潤滑性試験、洗浄性試験、耐硬水性試験、ストレスクラック試験の4項目について試験し評価した。表中における各成分は有り姿の数値にて、質量(質量%)で示した。また、各種試験の結果を後記表1〜3に併せて示した。なお、各試験項目の試験方法、評価基準は、以下に示すとおりである。そしてまた、比較例1〜3の組成は、水で希釈して用いる従来型のコンベア用潤滑剤組成物である。
【0044】
〔潤滑性試験〕
ポリアセタール樹脂製コンベアプレート上に試験用PET容器を置き、次いで、このコンベアプレート上に各供試組成物を以下の供給条件で供給したときの10分後の摩擦係数(μ)を測定し、各供試組成物の潤滑性を以下の評価基準に従って判定した。なお、コンベアの稼動速度は40cm/秒とし、試験PET容器は500mL容量×2本(総重量1070g)とした。また、摩擦係数(μ)は以下の算定式より算出した。
摩擦係数(μ)=バネ秤りによる引張抵抗値(g)/試験PET容器の重量(g)
〔供給方法〕
(1)実施例品について、組成物を希釈せず、0.1g/10分の割合で連続的に供給する。
(2)比較例品について、組成物を水道水(総硬度CaCOとして70mg/L)で400倍に希釈したものを25ml/分の割合で連続的に供給する。また、組成物を希釈せず(原液)試験に供する場合には、0.1g/10分の割合で連続的に供給する。
〔評価基準〕
A:摩擦係数(μ)が、0.08未満(非常にすべり、潤滑性に優れる)
B:摩擦係数(μ)が、0.08〜0.1(潤滑性に問題なく、使用範囲内)
C:摩擦係数(μ)が、0.1超(すべらない:潤滑性に劣る)
【0045】
〔洗浄性試験〕
上記潤滑性試験終了後におけるコンベア表面に対する黒ずみの付着状況を目視で観察し、以下の評価基準に従って判定した。
〔評価基準〕
A:汚れの付着が認められない
B:ごく僅かに汚れの付着が認められた
C:汚れの付着が認められた
【0046】
〔水(硬水)希釈安定性試験方法〕
炭酸カルシウムを100mg/Lの濃度になるように添加混合された硬水を用いて、各供試組成物を25mg/Lになるように希釈した各液200mLを常温にて1時間放置し、外観(濁り、沈殿物の発生)状態を目視観察し、以下の評価基準に従って判定した。
〔評価基準〕
A:透明で白濁せず、沈殿物の析出なし
B:僅かに濁りが生じる、及び/または僅かに沈殿物の析出が見られる
C:濁りが生じる、及び/または沈殿物の析出が見られる
【0047】
〔ストレスクラック試験〕
500mlペタロイドPET容器に炭酸水を充填して、4.0〜4.5ガスVolの圧力(容器容量の4.0〜4.5倍量の炭酸ガス圧力)に調整し、試験用PET容器とした。次いで、各供試組成物を以下の調整条件で調整し、試験用PET容器1本につき1gに浸漬し、40℃80%湿度の条件下に10日間放置する。その間に容器の底割れがないか確認するとともに、10日後のクラックの発生状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って判定した。
〔調整条件〕
(1)実施例については、組成物を希釈せず使用
(2)比較例については、組成物を水道水(総硬度CaCOとして70mg/L)で400倍に希釈したものを使用した場合と、組成物を希釈せず使用した場合
〔評価基準〕
A:クラックの発生が少なく、底割れなし
B:クラックは発生するが、底割れなし(使用範囲内)
C:底割れする
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表1〜3の結果より、実施例A−1〜14、B−1〜3、C−1〜3、D−1〜2のコンベア用潤滑剤組成物は、いずれも、潤滑性、洗浄性、水(硬水)希釈安定性およびストレスクラック試験の全ての評価項目において、優れた性能を有していることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水で希釈することなくコンベアプレートの表面及び/又は裏面に供給するために用いられる容器搬送コンベア用潤滑剤組成物であって、下記(A)〜(D):
A:アルキルポリオキシアルキレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤及びポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体型非イオン界面活性剤、の少なくとも1種;
B:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸並びにこれらの塩、並びにアシルアミノ酸型アニオン界面活性剤の少なくとも1種;
C:脂肪族アルキルアミン類及びその塩、の少なくとも1種;
D:アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤の少なくとも1種;
からなる群より選ばれる少なくとも1種と、高沸点溶剤と、水とを含有することを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項2】
上記コンベア用潤滑剤組成物における(A)〜(D)成分の含有量が0.1〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項3】
上記コンベア用潤滑剤組成物における高沸点溶剤の含有量が10〜98質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
上記コンベア用潤滑剤組成物における水の含有量が80質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
上記コンベア用潤滑剤組成物を1.0×10-6〜1.0g/cm2の割合でコンベアプレートの表面及び/又は裏面に連続又は間欠的に供給するために塗布、又は噴霧するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンベア用潤滑剤組成物を、1.0×10-6〜1.0g/cm2の割合でコンベアプレートの表面及び/又は裏面に連続又は間欠的に供給するために塗布又は噴霧することを特徴とする、コンベア潤滑方法。


【公開番号】特開2008−106253(P2008−106253A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249093(P2007−249093)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000205683)大三工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】