説明

コンベア

【課題】ベルト緩めの際の操作を安全に行えるようにする。
【解決手段】ローラ支持板51の溝52の奥端から円弧状の外縁までの距離が、側板41のピン42から側板41の前縁までの距離とほぼ等しく設定されている。したがって、ローラ支持板51を回動操作する際に、ローラ支持板51の外縁は側板41の前縁とほぼ連続する円弧状の軌跡を描き、その交差角はほぼ180度で一定であり、しかも側板41の先端側外縁との間に隙間を生じさせないので、回動操作の際に指を挟まれることがなく、安全に作業が行える。また、ローラ支持板51を上方に回動させた状態をロックピン43と第2ロック穴58との係合により保持できるため、作業中に従動ローラ50の重みでローラ支持板51が下に回動して従動ローラ50が落下する等の事故が発生せず、さらに安全性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのローラ間に掛け渡された搬送ベルトを周回駆動して物品を搬送するコンベアで、一方のローラの両端を支持する支持板を回動自在にして、搬送ベルトに緩みを与えることができる構造のコンベアにおいて、支持部材の回動操作を安全に行えるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベアの基本的な構造は、2つのローラを平行且つ回転自在に支持し、そのローラ間に無端状の搬送ベルトを掛け渡して適度な張力を与え、モータ等の回転力を搬送ベルトに与えて周回駆動する構造を有している。
【0003】
このようなコンベアのうち、食品等の製造ラインで用いられているコンベアは、頻繁に清掃を行う必要性があるため、搬送ベルト等の着脱が容易にできる必要がある。
【0004】
無端状の搬送ベルトを緩めるための機構として、例えば一方のローラの両端を支持するローラ支持板をコンベアの固定フレームなどに対して回動できる構造とし、そのローラ支持板を、両ローラの距離が短くなる方向に回動操作することで、搬送ベルトを緩めることができるようにしたものが従来からあった(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−334833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなローラ支持板を回動式にした従来のコンベアでは、ローラ支持板が長円や長方形等の細長の外形を有し、一端側がフレームに回動自在に支持され、ローラを支持している他端側がベルトの両側に配置された側板の前縁から前方に突出しているため、ローラ支持板を回動操作する際に、ローラ支持板の外縁と側板の先端側外縁との間に、その交差角が徐々に狭まる部分を生じさせ、この部分に指を挟まれて怪我をするという問題があった。
【0007】
また、ローラ支持板の回動によりローラを上方に移動させる構造の場合、作業中にローラに誤って触れてローラ支持板が下方に勢いよく回動して、重量のあるローラが手などにぶつかり怪我をする場合もあった。
【0008】
本発明は、この問題を解決して、ベルト緩めの際の操作を安全に行えるコンベアを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のコンベアは、
平行に配置された複数のローラ(35、50)と、
前記複数のローラの間に掛け渡されて周回する無端状の搬送ベルト(60)と、
前記複数のローラを支持する支持体(21、31、41)とを有し、
前記支持体が、少なくとも一つのローラの両端近傍位置にそれぞれ配置された一対の側板(41)と、該一対の側板に回動自在に支持されその回動中心から離間した位置で前記ローラの両端を支持する一対のローラ支持板(51)とを含み、該一対のローラ支持板を回動操作することにより前記搬送ベルトに緩みを与える構造を有するコンベアにおいて、
前記ローラ支持板および側板は、前記ローラ支持板が回動する際に、該ローラ支持板の外縁と前記側板の先端側外縁の交わり角度が一定あるいは鈍角の範囲内で変化するように形成されている。
【0010】
また、本発明の請求項2のコンベアは、請求項1記載のコンベアにおいて、
前記ローラ支持板の外縁の形状が、その回動中心を中心とする円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項3のコンベアは、請求項1または請求項2記載のコンベアにおいて、
前記側板に対する前記ローラ支持板の角度を、前記搬送ベルトに所定張力が付与される第1角度と、前記搬送ベルトが緩んだ状態となる第2角度にそれぞれ保持でき、且つその解除が可能なロック機構(43、57、58)が設けられていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項4のコンベアは、請求項1〜3のいずれかに記載のコンベアにおいて、
前記ローラ支持板は前記側板に対して、ピン(42)と該ピンを受け入れる溝(52)とを介して回動自在に支持され、前記搬送ベルトを緩める方向に回動した状態で、前記ピンが前記溝から抜ける方向に移動することで前記側板との連結を解除できるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明のコンベアでは、ローラ支持板および側板は、ローラ支持板が回動する際に、ローラ支持板の外縁と側板の先端側外縁の交わり角度が一定あるいは鈍角の範囲内で変化するように形成されているので、ローラ支持板の回動操作の際に、ローラ支持板の外縁と側板の先端側縁部との間に指等が挟まれることがなくなり、安全な作業が行える。
【0014】
また、請求項3のコンベアのようにロック機構を設けたものでは、ローラが上方に移動した状態のときに、ローラ支持板に触れてもロック機構でその回動が規制されるので、ローラが勢いよく落下する等の事故は発生せず、より安全に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図7は、本発明を適用したコンベアを有する金属検出機20の構造を示している。
【0016】
この金属検出機20の基台21の下面側四隅には、高さ調整用の脚22と、移動用のキャスタ23が設けられており、基台21の上面中央には、枠状の検出ヘッド25が支持されている。
【0017】
検出ヘッド25は、その前面側に設けられた指示器26により駆動され、枠の内側に磁界を発生し、枠内を通過する物品による磁界の変化を検出して指示器26に出力するように構成されている。指示器26は、検出に必要な各種パラメータの設定操作と検出結果等の表示が可能になっている。
【0018】
コンベア30は、検出ヘッド25の枠内に物品を通過させるためのものであり、基台21の上に支持されている。
【0019】
即ち、基台21の一端側上面には、平行に対向する一対の側板31、31が立設されており、側板31、31の先端側上部には、駆動ローラ35の両端35aが回転自在に支持されている。また、側板31、31は、その上縁でベルト受け40の一端側の両縁部を支持している。
【0020】
図4、図7に示しているように、側板31、31の間でベルト受け40の下面側よりやや低い位置には、後述する搬送ベルト60をベルト受け40の下面側へ寄せた状態で周回させるガイドローラ34が取付けられている。なお、側板31、31は連結部材32、33により連結されている。
【0021】
さらに、一方の側板31の内側には駆動モータ37が取付けられ、その駆動モータ37と駆動ローラ35の間に駆動ベルト38が掛け渡され、駆動モータ37の回転力が駆動ベルト38を介して駆動ローラ35に伝達される構造となっている。
【0022】
ベルト受け40は、駆動ローラ35と後述する従動ローラ50との間で且つ搬送ベルト60の内側に配置され、上方を通過する搬送ベルト60の垂れ下がりを規制するためのものであり、金属検出に悪影響を与えないように合成樹脂製の長方形に形成され、前記検出ヘッド25の枠の内側下部を通過し、基台21の他端側上方まで延びている。このベルト受け40は、一枚構造だけでなく、複数枚に分割されたものを連続するように並べて支持する構造であってもよい。なお、図中の符号70は、検出ヘッド25の近傍位置で磁界に影響を与えないようにベルト受け40を支持する合成樹脂製の支持板である。
【0023】
基台21の他端側には、平行に対向する一対の側板41、41が立設されている。この側板41、41は、一端側の側板31、31とほぼ対称に形成され、その上縁でベルト受け40の他端側の両縁を支持している。
【0024】
側板41、41の間でベルト受け40の下面側よりやや低い位置には、搬送ベルト60をベルト受け40の下面側へ寄せた状態で周回させるガイドローラ47が取付けられている。なお、側板41、41は連結部材48、49により連結されている。
【0025】
図8に示しているように、側板41は外形が略平行四辺形で、先端側上部に矩形の切欠41aが形成され、その切欠41aの横の内側にピン42が突設され、切欠41aの下方でピン42から所定距離の位置にロックピン43が取付けられている。ロックピン43は、常時はその先端を側板41の内面側へ突出させるように付勢されており、側板41の外側からの引っ張り操作で側板41の内面側から引っ込ませることができる。側板41の上部にはベルト受け40を支持するためのフランジ41bが内側に延び、下部には側板41を基台21に固定するためのフランジ41cが外側に延びている。なお、この上下のフランジは、側板31にも同様の目的で形成されている。
【0026】
側板41、41の内側には、従動ローラ50の両端(ベアリング部)を支持するためのローラ支持板51、51が回動自在に取付けられている。ローラ支持板51、51は、図8に示しているように、外形が略半円状で、その半円の中心位置から径方向に延び、側板41のピン42を受け入れるU字状の溝52が形成され、この溝52と反対方向には従動ローラ50の両端部(ベアリング部)50aを受け入れるローラ支持溝53が延びている。ローラ支持溝53の端部には、張力調整用のネジ54を取付けるためのネジ支持板55が立設されている。また、ローラ支持板51のローラ支持溝53側の上縁には、回動操作用の把手56が形成されている。
【0027】
ローラ支持板51の溝52の奥端から前記所定距離の位置で且つ溝52に対して第1角度(例えば20°)をなす位置(図8ではローラ支持溝53の下方位置)に第1ロック穴57が形成され、第1ロック穴57から所定角度(例えば115°)回転した第2角度の位置(図8では右端の位置)に第2ロック穴58が設けられている。2つのローラ支持板51は連結部材59を介して一体化されている。
【0028】
ローラ支持板51は、図9の(a)のように、溝52の奥端にピン42を受け入れた状態で、把手56を下げるように回動操作し、第1ロック穴57にロックピン43を係合させて回動が規制された状態にすることで、ローラ支持溝53がほぼ水平となる状態、即ち、従動ローラ50を駆動ローラ35から最も遠い位置に固定することができ、この状態でネジ54の位置を調整して、両ローラ間に掛け渡された搬送ベルト60(図9では図示せず)に物品搬送に適した張力を付与することができる。
【0029】
また、図9の(b)のように、第1ロック穴57に対するロックピン43の係合を解除し、把手56を引き上げるように回動操作し、第2ロック穴58にロックピン43を係合させて回動が規制された状態にすることで、従動ローラ50が駆動ローラ35に近づいた状態で固定することができ、両ローラ間に掛け渡された搬送ベルト60を弛ませることができ、搬送ベルト60の取り外し作業などを行うことができる。
【0030】
なお、実際に搬送ベルト60を取り外す際には、側板31、41および支持板70によるベルト受け40の支持を解除して、ベルト受け40および従動ローラ50を搬送ベルト60の内側から抜き去り、駆動ローラ35を外すという操作を行う。
【0031】
また、図示しないが、図9の(b)の状態で、ロックピン43のロックを解除してローラ支持板51を引き上げることで、溝52とピン42との係合が解除され、ローラ支持板51を側板41から取り外すことができ、分解清掃作業等が容易に行える。
【0032】
さらに、従動ローラ50は、その両端部50aがローラ支持板51のローラ支持溝53に受け入れられ、ネジ54に当接した位置で支持されているので、搬送ベルト60が弛んだ状態であれば、ローラ支持板51から容易に引き抜くことができ、分解清掃作業等が容易に行える。
【0033】
この実施形態では、ローラ支持板51の溝52の奥端から円弧状の外縁までの距離が、側板41のピン42から側板41の前縁41dまでの距離とほぼ等しく設定されている。
【0034】
したがって、ローラ支持板51を回動操作する際に、ローラ支持板51の外縁は側板41の前縁41dとほぼ連続する円弧状の軌跡を描き、その交差角はほぼ180度で一定であり、しかも側板41の先端側外縁(上部の切欠41aおよび前縁41d)との間に隙間を生じさせないので、回動操作の際に指を挟まれることがなく、安全に作業が行える。また、ローラ支持板51を上方に回動させた状態をロックピン43と第2ロック穴58との係合により保持できるため、作業中に従動ローラ50の重みでローラ支持板51が下に回動して従動ローラ50が落下する等の事故が発生せず、さらに安全性が高い。
【0035】
また、ここでは、ローラ支持板51の外縁形状をその回動中心を中心とする円弧状に形成して、側板41の先端側外縁との交差角が変化しないようにしていたが、その交差角が鈍角の範囲であれば指が挟まれることは発生しない。
【0036】
したがって、側板41の先端側外縁との交差角が鈍角の範囲であれば、ローラ支持板51の外縁形状が楕円状、多角形状であってもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、ローラ支持板51の回動を規制するためのロック機構として、側板41側にロックピン43を設け、ローラ支持板51側に第1ロック穴57、第2ロック穴58を設けていたが、ロック機構の構造は任意である。例えば、側板41側に第1ロック穴、第2ロック穴を設け、ローラ支持板51側にロックピンを設けてもよい。また、ローラ支持板51の外縁に凹部や凸部を設け、それに係合する凸部や凹部を側板41側に設けてロックおよびその解除ができるようにしてもよい。
【0038】
上記実施形態では、搬送ベルト60が、駆動ローラ35と従動ローラ50の2つのローラ間に掛け渡されていて、従動ローラ50側のローラ支持板51を回動操作する構造のコンベアについて説明したが、駆動ローラ35側にも同様の機構を設けてもよい。
【0039】
また、ほぼ同一高さに支持された2つの従動ローラとそれより低い位置に支持された駆動ローラとを有し、これら3つのローラ間に掛け渡された搬送ベルトを周回駆動する構造のコンベアの場合には、従動ローラの少なくとも一方を支持するローラ支持板と側板の形状について本発明を適用すればよい。
【0040】
また、上記実施形態は、金属検出機20の搬送部として用いられるコンベア30であったが、複数のローラの少なくとも一つのローラを側板に対して回動自在なローラ支持板により支持する構造のコンベアであれば本発明を同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の斜視図
【図2】実施形態の正面図
【図3】実施形態の平面図
【図4】実施形態の底面
【図5】実施形態の左側面図
【図6】実施形態の右側面図
【図7】図5のA−A線断面図
【図8】実施形態の要部の分解斜視図
【図9】実施形態の要部の動作説明図
【符号の説明】
【0042】
20……金属検出機、21……基台、25……検出ヘッド、26……指示器、30……コンベア、31……側板、32、33……連結部材、34……ガイドローラ、35……駆動ローラ、37……駆動モータ、38……駆動ベルト、40……ベルト受け、41……側板、42……ピン、43……ロックピン、47……ガイドローラ、48、49……連結部材、50……従動ローラ、51……ローラ支持板、52……溝、53……ローラ支持溝、54……ネジ、55……ネジ支持板、56……把手、57……第1ロック穴、58……第2ロック穴、59……連結部材、60……搬送ベルト、70……支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された複数のローラ(35、50)と、
前記複数のローラの間に掛け渡されて周回する無端状の搬送ベルト(60)と、
前記複数のローラを支持する支持体(21、31、41)とを有し、
前記支持体が、少なくとも一つのローラの両端近傍位置にそれぞれ配置された一対の側板(41)と、該一対の側板に回動自在に支持されその回動中心から離間した位置で前記ローラの両端を支持する一対のローラ支持板(51)とを含み、該一対のローラ支持板を回動操作することにより前記搬送ベルトに緩みを与える構造を有するコンベアにおいて、
前記ローラ支持板および側板は、前記ローラ支持板が回動する際に、該ローラ支持板の外縁と前記側板の先端側外縁の交わり角度が一定あるいは鈍角の範囲内で変化するように形成されていることを特徴とするコンベア。
【請求項2】
前記ローラ支持板の外縁の形状が、その回動中心を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項3】
前記側板に対する前記ローラ支持板の角度を、前記搬送ベルトに所定張力が付与される第1角度と、前記搬送ベルトが緩んだ状態となる第2角度にそれぞれ保持でき、且つその解除が可能なロック機構(43、57、58)が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンベア。
【請求項4】
前記ローラ支持板は前記側板に対して、ピン(42)と該ピンを受け入れる溝(52)とを介して回動自在に支持され、前記搬送ベルトを緩める方向に回動した状態で、前記ピンが前記溝から抜ける方向に移動することで前記側板との連結を解除できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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