説明

コンベヤベルト

【課題】仕切桟の機械的特性の向上と、仕切桟とベルト本体間の接着特性の向上を共に満たすことができるコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】無端状のベルト本体10と、ベルト本体10に接着剤40a,40bを介して接着され、ベルト本体10の表面より立設された波桟20及び横桟30とを備えたコンベヤベルト7であって、波桟20と横桟30は、機械的特性に優れたゴム材より形成された桟本体ゴム部21,31と、桟本体ゴム部21,31のベルト本体10との接着側に加硫接着によって一体に設けられ、接着特性に優れたゴム材より形成された接着ゴム部22,32とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として急傾斜搬送用のベルトコンベヤ装置に使用されるコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンベヤベルトは、無端状のベルト本体と、このベルト本体の長手方向に沿って立設された仕切桟である左右一対の波桟と、ベルト本体の長手方向に間隔を置いて立設され、一対の波桟の間に亘って配置された仕切桟である複数の横桟とを備えている。コンベヤベルトが急傾斜の無限軌道に沿って掛け渡され、ベルト本体上には左右一対の波桟と横桟で囲まれる収納スペースが連続的に形成される。この各収納スペースに搬送物を収容ことによって急傾斜の搬送軌道でも搬送物を下方に滑り落下させることなく搬送できる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、コンベヤベルトは、無限軌道の折り返し箇所や方向変更箇所で柔軟に撓み変形することが要求されるため、可撓性に優れたゴム材をベース素材として形成される。しかし、コンベヤベルトの形状は複雑であり、生ゴム部材を一体加硫によって型成型することができない。そのため、ベルト本体、各波桟、各横桟をそれぞれ別個に加硫成型によって形成し、その後、ベルト本体に一対の波桟及び複数の横桟を接着剤で接着することによって作製する必要があった。
【0004】
ここで、耐久性、載置荷重性等の機械的特性に優れたコンベヤベルトを作製する場合には、ベルト本体、波桟及び横桟に使用されるゴム材を機械特性に優れたものを使用することになる。
【特許文献1】特開2004−238156号公報
【特許文献2】実広昭58−20575号公報
【特許文献3】実開昭55−54216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械的特性に優れたゴム材は、通常では接着特性が劣るため、波桟及び横桟とベルト本体間を強固に接着することができないという問題がある。
【0006】
又、波桟及び横桟をベルト本体に対する接着特性に優れたゴム材を使用すれば、機械的特性の向上が図れない。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、仕切桟の機械的特性の向上と、仕切桟とベルト本体間の接着特性の向上を共に満たすことができるコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴に係る発明は、無端状のベルト本体と、前記ベルト本体に接着剤を介して接着され、前記ベルト本体の表面より立設された仕切桟とを備えたコンベヤベルトであって、前記仕切桟は、機械的特性に優れたゴム材より形成された桟本体ゴム部と、前記桟本体ゴム部の前記ベルト本体との接着側に加硫接着によって一体に設けられ、接着特性に優れたゴム材より形成された接着ゴム部とから成ることを要旨とする。
【0009】
かかる特徴によれば、仕切桟は、桟本体ゴム部によって機械的強度を保持すると共に接着ゴム部を介してベルト本体に強固に接着される。
【0010】
その他の特徴に係る発明は、仕切桟は、前記ベルト本体の長手方向に沿って設けられ、前記ベルト本体の幅方向に間隔を置いて配置された一対の波桟と、前記ベルト本体の長手方向に間隔を置いて設けられ、前記一対の波桟の間に亘って配置された複数の横桟であることを要旨とする。
【0011】
その他の特徴に係る発明は、前記横桟の前記桟本体ゴム部は、耐摩耗性、耐カット性、荷の積載に対する剛性という機械的特性に優れたゴム材より形成されていることを要旨とする。
【0012】
その他の特徴に係る発明は、波桟の前記桟本体ゴム部は、耐カット性、耐熱性、屈曲に対する耐久性という機械的特性に優れたゴム材より形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仕切桟の機械的特性の向上と、仕切桟とベルト本体間の接着特性の向上を共に満たすことができるコンベヤベルトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態を示し、図1はコンベヤベルトが使用されるベルトコンベヤ装置の概略斜視図、図2はコンベヤベルトの一部斜視図、図3はコンベヤベルトの一部平面図、図4は図3のA−A線拡大断面図、図5は波桟の断面図、図6は横桟の断面図、図7は波桟の加硫成型を説明する断面図、図8は横桟の加硫成型を説明する断面図である。
【0015】
(ベルトコンベヤ装置)
先ず、コンベヤベルトが使用されるベルトコンベヤ装置の概要を説明する。図1に示すように、ベルトコンベヤ装置1は、モータユニット2と、このモータユニット2の出力軸に連結され、搬送経路の一端側に配置された駆動側プーリ3と、搬送経路の他端側に配置されたエンドプーリ4と、駆動側プーリ3とエンドプーリ4間に配置された複数の方向変更用プーリ5と、駆動側プーリ3とエンドプーリ4間に配置された複数の補助ローラ6とを備え、駆動側プーリ3とエンドプーリ4を折り返しポイントとし、且つ、途中に急傾斜の搬送路を有する無限軌道上に沿って無端状のコンベヤベルト7が掛け渡されている。無限軌道内の少なくとも急傾斜の搬送範囲が搬送物の搬送に利用される。
【0016】
(コンベヤベルトの構成)
図2〜図4に詳しく示すように、コンベヤベルト7は、無端状のベルト本体10と、ベルト本体10の長手方向に沿って設けられ、ベルト本体10の幅方向に間隔を置いて配置された仕切桟である一対の波桟20と、ベルト本体10の長手方向に間隔を置いて設けられ、一対の波桟20の間に亘って配置された仕切桟である複数の横桟30とから構成されている。波桟20と横桟30は、ベルト本体10に接着剤40a,40bを介して接着され、ベルト本体10の全域に亘って立設されている。各横桟30の両端は、一対の波桟20にネジ41とネジ受部材42によって固定されている。
【0017】
なお、本実施形態では、各横桟30の両端が、一対の波桟20にネジ41とネジ受部材42によって固定されているが、搬送物に応じて横桟を波桟に固定しない構成としてもよい。
【0018】
ベルト本体10は、図4に詳しく示すように、芯体帆布11と、この両面側にそれぞれ配置された補強帆布12と、芯体帆布11の各補強帆布12間に介在された二層の中間ゴム層13と、各補強帆布12の外面側に配置された外面ゴム層14とから構成されている。
【0019】
波桟20は、図4及び図5に詳しく示すように、波状に折り曲げられ、その下端が幅広の平坦形状である桟本体ゴム部21と、この桟本体ゴム部21の下端に設けられた接着ゴム部22とから構成されている。桟本体ゴム部21は、内部に芯体帆布21aを有し、機械的特性に優れたゴム材にて形成されている。接着ゴム部22は、接着特性に優れたゴム材から形成されている。機械的特性に優れたゴム材と、接着特性に優れたゴム材の内容は、下記に詳述する。
【0020】
桟本体ゴム部21と接着ゴム部22の間は、加硫接着によって接着されている。波桟20は、その接着ゴム部22が接着剤40aを介してベルト本体10に接着されている。
【0021】
横桟30は、図4及び図6に詳しく示すように、垂直方向にストレート状に立設され、その下端が幅広の平坦形状である桟本体ゴム部31と、この桟本体ゴム部31の下端に設けられた接着ゴム部32とから構成されている。桟本体ゴム部31は、内部に2枚の芯体帆布31aを有し、機械的特性に優れたゴム材にて形成されている。接着ゴム部32は、接着特性に優れたゴム材から形成されている。機械的特性に優れたゴム材と、接着特性に優れたゴム材の内容は、下記に詳述する。
【0022】
桟本体ゴム部31と接着ゴム部32の間は、加硫接着によって接着されている。横桟30は、その接着ゴム部32が接着剤40bを介してベルト本体10に接着されている。
【0023】
(波桟と横桟に使用される具体的なゴム材の内容)
次に、波桟20と横桟30に使用されるゴム材の内容について説明する。図9に示すように、仕切壁(波桟20、横桟30)とベルト本体10では要求される機械的特性等が異なるが、波桟20と横桟30でも要求される機械的特性等が異なる。
【0024】
波桟20に要求される機械的特性は、耐カット性、耐熱性、屈曲に対する耐久性(より良く延びる)であり、桟本体ゴム部21にはこれら特性に優れたゴム材を使用する。
【0025】
横桟30に要求される機械的特性は、耐摩耗性、耐カット性、荷の積載に対する剛性であり、桟本体ゴム部31にはこれら特性に優れたゴム材を使用する。
【0026】
なお、本実施形態では、波桟20と横桟30に要求される機械特性等が異なるため、異なるゴム材を使用しているが、搬送物に応じて波桟と横桟を同じゴム材で形成してもよい。
【0027】
波桟20及び横桟30とベルト本体10間に使用する接着剤40a,40bの種類によっても接着力は、変化するため、使用する接着剤によってもゴム材の内容は変化することになる。例えば、CR系の接着剤を使用する場合には、機械的特性に優れたゴム材に対してSBR・NBR・BR・CRをより多く含む方が接着特性に優れたゴム材となる。又、NRを多く含むものは、CR系接着剤と相性が悪く、接着力が低くなる。
【0028】
SBRとNRを使用した具体的配合割合の一例を説明すると、機械的特性に優れたゴム材の配合割合は、SBR75対NR25であり、接着特性に優れたゴム材の配合割合は、SBR85対NR15である。ここで、NRを多く含むように配合すれば、屈曲に対する耐久性(より良く延びる)が良くなる。
【0029】
接着力の程度は、機械的特性に優れたゴム材を使用して接着した場合には、60〜100N/inch程度の接着力であるが、接着特性に優れたゴム材を使用して接着した場合には、120〜250N/inch程度の接着力が得られる。
【0030】
(コンベヤベルトの製造工程)
次に、コンベヤベルト7の製造方法を説明する。コンベヤベルト7は、ベルト本体10と波桟20と横桟30をそれぞれ別個に作製する加硫工程と、加硫工程によって作製されたベルト本体10と波桟20と横桟30を接着によって組み付ける接着工程とからなる。以下、説明する。
【0031】
(ベルト本体の加硫工程)
ベルト本体10は、芯体帆布11と、この両面側にそれぞれ配置された補強帆布12と、芯体帆布11の各補強帆布12間に介在される二層の中間生ゴム部材(図示せず)と、各補強帆布12の外面側に配置される外面生ゴム部材(図示せず)とを用意し、これらを加硫金型(図示せず)を用いて加硫成型することによって作製する。
【0032】
(波桟の加硫工程)
波桟20は、図7に示すように、機械的特性に優れたゴム材より形成され、桟本体ゴム部21の波形状に近似した形態の第1生ゴム部材21Aと、機械的特性に優れたゴム材より形成され、桟本体ゴム部21の平坦形状に近似した形態の第2生ゴム部材21Bと、接着特性に優れたゴム材より形成され、接着ゴム部22に近似した形態の第3生ゴム部材22Aとを作製する。次に、加硫装置の固定金型50の成型室50aに第1〜第3生ゴム部材21A,21B,22Aを所定の場所に収納し、その上から移動金型51を被せて加硫成型を行うことによって作製する。ここで、桟本体ゴム部21と接着ゴム部22の間は、加硫接着によって強力に接着される。なお、加硫接着力は下記する波桟20とベルト本体10間の自然加硫接着力よりも強力である。また、本実施形態では、第1生ゴム部材21A、および第2生ゴム部材21Bが、ともに機械的特性に優れたゴム材により形成されているが、搬送物に応じて第1生ゴム部材21Aと第2生ゴム部材21Bの両方を、あるいは第1生ゴム部材21Aを接着特性に優れたゴム材を使用してもよい。
【0033】
(横桟の加硫工程)
横桟30は、図8に示すように、機械的特性に優れたゴム材より形成され、桟本体ゴム部31のストレートの立設形状に近似した形態の第1生ゴム部材31Aと、機械的特性に優れたゴム材より形成され、桟本体ゴム部31の平坦形状に近似した形態の第2生ゴム部材31Bと、接着特性に優れたゴム材より形成され、接着ゴム部32に近似した形態の第3生ゴム部材32Aとを作製する。次に、加硫装置の固定金型52の成型室52aに第1〜第3生ゴム部材31A,31B,32Aを所定の場所に収納し、その上から移動金型53を被せて加硫成型を行うことによって作製する。ここで、桟本体ゴム部31と接着ゴム部32の間は、加硫接着によって強力に接着される。なお、加硫接着力は下記する横桟30とベルト本体10間の自然加硫接着力よりも強力である。また、本実施形態では、第1生ゴム部材31A、および第2生ゴム部材31Bが、ともに機械的特性に優れたゴム材により形成されているが、搬送物に応じて第1生ゴム部材31Aと第2生ゴム部材31Bの両方を、あるいは第1生ゴム部材31Aを接着特性に優れたゴム材を使用してもよい。
【0034】
(接着工程等)
次に、一対の波桟20と複数の横桟30をベルト本体10の表面の所定位置に接着剤40a.40bを介して自然加硫接着によって接着する。最後に、各横桟30の両端をネジ41とネジ受部材42によって一対の波桟20に固定すれば完了する。なお、搬送物に応じて横桟を波桟に固定しない構成としてもよい。
【0035】
以上、本発明では、仕切桟である波桟20と横桟30は、機械的特性に優れたゴム材より形成された桟本体ゴム部21,31と、桟本体ゴム部21,31のベルト本体10との接着側に加硫接着によって一体に設けられ、接着特性に優れたゴム材より形成された接着ゴム部22,32とから成るので、波桟20と横桟30がその桟本体ゴム部21,31によって機械的強度を保持すると共にその接着ゴム部22,32を介してベルト本体10に強固に接着される。従って、波桟20と横桟30の機械的特性の向上と、波桟20及び横桟30とベルト本体10間の接着特性の向上を共に満たすことができる。
【0036】
この実施の形態では、仕切桟は、ベルト本体10の長手方向に沿って設けられ、ベルト本体10の幅方向に間隔を置いて配置された一対の波桟20と、ベルト本体10の長手方向に間隔を置いて設けられ、一対の波桟20の間に亘って配置された複数の横桟30であるが、仕切桟の構成は種々のものが考えられ、本実施の形態に限定されるものではないことはもちろんである。
【0037】
又、横桟30は、垂直方向にストレートに延びるよう構成されているが、搬送物に応じて種々の形状が考えられる。例えば、斜め方向にストレートに立設される形状や、垂直方向にストレートに延びるが、先端側が斜め方向に折れ曲がっている形状が考えられる。波桟20の形状も同様に種々のものが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、コンベヤベルトが使用されるベルトコンベヤ装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示し、コンベヤベルトの一部斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示し、コンベヤベルトの一部平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示し、図3のA−A線拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示し、波桟の断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示し、横桟の断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態を示し、波桟の加硫成型を説明する断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態を示し、横桟の加硫成型を説明する断面図である。
【図9】ベルト本体と波桟と横桟のそれぞれに要求される各種特性等を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
7 コンベヤベルト
10 ベルト本体
20 波桟(仕切桟)
21 桟本体ゴム部
22 接着ゴム部
30 横桟(仕切桟)
31 桟本体ゴム部
32 接着ゴム部
40a,40b 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト本体と、前記ベルト本体に接着剤を介して接着され、前記ベルト本体の表面より立設された仕切桟とを備えたコンベヤベルトであって、
前記仕切桟は、
機械的特性に優れたゴム材より形成された桟本体ゴム部と、
接着特性に優れたゴム材より形成され、且つ前記桟本体ゴム部の前記ベルト本体との接着側に加硫接着によって一体に設けられた接着ゴム部とからなることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記仕切桟は、
前記ベルト本体の長手方向に沿って設けられ、前記ベルト本体の幅方向に間隔を置いて配置された一対の波桟と、
前記ベルト本体の長手方向に間隔を置いて設けられ、前記一対の波桟の間に亘って配置された複数の横桟とからなることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記横桟の前記桟本体ゴム部は、耐摩耗性、耐カット性、荷の積載に対する剛性という機械的特性に優れたゴム材より形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記波桟の前記桟本体ゴム部は、耐カット性、耐熱性、屈曲に対する耐久性という機械的特性に優れたゴム材より形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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