説明

コークス炉の排ガスからの窒素酸化物の還元方法

本発明は、複数のコークス化室(1)と、コークス化室を間接的に加熱するための加熱煙道(12、12’)を備える、該コークス化室の間に配置される加熱壁(2)とを有する、コークス炉の排ガスからの窒素酸化物を還元する方法に関する。該加熱煙道(12、12’)中では、その全部又は一部がコークス炉ガスからなる燃焼ガス(16)が燃焼され、その際、窒素酸化物を含む排ガスが発生する。該排ガスには、700℃〜1100℃の間の温度で還元剤が供給され、そして、該還元剤と該窒素酸化物との間の均質のガス反応により、該排ガスの窒素酸化物の割合が減少される。該排ガスは、引き続きリジェネレータ(4)を介して熱回収へ送られる。更に、燃焼ガス供給部の高温部分における炭素堆積物が脱黒鉛化空気(21)で燃焼され、その際、該脱黒鉛化空気は、前記加熱煙道(12’)への燃焼ガスの供給が停止されているリジェネレータの半期の間、配設された燃焼器供給管(19’)及び燃焼ガスノズル(15’)を介して加熱煙道(12’)中に導入され、そして他方の加熱煙道(12)からの高温の排ガスと共に排出される。本発明によれば、還元剤が脱黒鉛化空気に計量添加され、そしてそれと一緒に、高温の排ガスと接触される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコークス化室と、該コークス化室を間接的に加熱するための加熱煙道(Heizzuegen)を備える、それらコークス化室間に配設された加熱壁とを有するコークス炉からの排ガスからの窒素酸化物の還元方法に関する。該加熱煙道中では、全部又は一部がコークス炉ガスからなる燃焼ガスが燃焼され、そして、窒素酸化物を含む排ガスが発生する。その排ガスには、700℃〜1100℃の間の温度で還元剤が供給され、そして、その還元剤と窒素酸化物との間における均質のガス反応によって、該排ガスの窒素酸化物部分が還元される 。その排ガスは、引き続きリジェネレータ を介して熱回収へ送られる。
【背景技術】
【0002】
そのような方法の一つは、欧州特許出願公開第0217045A2号(特許文献1)から知られている。その公知の方法の場合、リジェネレータの内部空間中で還元剤は、装填材料 層(Besatzmaterialschichten)の上の方に噴霧されるか、又は吹き込まれる。そのためには、耐熱性材料からなる噴射ランスが使用される。排ガスが依然として高温、例えば、900〜1100℃の温度を有する領域中では、還元剤の一様な分配が困難である。その際に必要なランス装置(Lanzenanordnung)は、技術的に煩雑である。還元剤と混合された排ガスは、引き続き、リジェネレータを介して熱回収へ案内され、そのリジェネレータの装填材料は、少なくとも、200〜500℃の温度帯域において、窒素酸化物を選択的還元するための触媒として形成される。
【0003】
コークス化室が、リッチガス(Starkgas)、例えばコークス炉ガスで又はコークス炉ガスを高い割合で有する燃焼ガスで加熱されるコークス炉中では、そのリッチガス が貫流する管路の高温部分、特に、燃焼ガスノズルにおいて炭素が堆積するに至り、その炭素堆積物は、通常、脱黒鉛化空気の供給によって燃焼させなければならない。その脱黒鉛化空気は、燃焼装置中のリッチガスを停止する リジェネレータ半期の期間中に、適切な燃焼器供給管を介して送り込まれることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0217045A2号
【0005】
これを背景として、本発明は、コークス化室がリッチガスで加熱されるコークス炉の排ガスからの窒素酸化物を還元するという課題に基づくものである。これとの関連で、リッチガスは、その全部又は少なくとも本質的な部分がコークス炉ガスからなる、高カロリーの燃焼ガスを指して言う。炭素析出物は、同様に取り除かれるべきである。
【0006】
冒頭に記載した方法から出発して、上記の課題は、本発明により、燃焼ガス供給管の高温部分における炭素堆積物を脱黒鉛化空気で燃焼させ、その際、該脱黒鉛化空気を、加熱煙道への燃焼ガス供給が停止されているリジェネレータの半期の間に、配設された燃焼器供給管及び燃焼ガスノズルを介して加熱煙道中に導入させ、そして脱黒鉛化空気に還元剤を計量添加して、これと一緒に高温の排ガスと接触させることによって解決される。
【0007】
本発明によれば、脱黒鉛化空気及び還元剤からなる混合物は、加熱段階の間だけ、供給管を通して、コークスガスには閉じられているが、脱黒鉛化空気のために開かれた切り替えコックを通して、供給管及び噴射管を通して、あるいは供給チャネル及び噴射チャネルを通して、並びにコークス炉ガスノズルを通して、それぞれ燃焼している加熱煙道中へ導入される。これによって、約700℃〜1100℃、主として約900℃〜1000℃の温度範囲において、還元剤と窒素酸化物との間における均質なガス反応が起き、その結果として窒素酸化物が低減される。脱黒鉛化空気への還元剤の添加には二つの利点がある。本発明の方法は、既存の技術設備を用いるものである。既存の燃焼ガスノズルを介して、脱黒鉛化空気流を有する混合物へ還元剤を供給することよって、高温の窒素酸化物を含む排ガス流との一様な接触及び混合が可能になり、それでもって、効果の大きい均質なガス反応のための必要条件が達成される。
【0008】
送風機を使って、所定の脱黒鉛化空気マスフローを発生させる。そのとき、計量添加すべき還元剤流は、その還元剤の空気流中での濃度が、引火可能な混合物の濃度を下回るように算定される。
【0009】
脱黒鉛化するのに使用される還元剤/空気混合物は、空気導管システム中に提供され、その際、該空気導管システム及び燃焼ガス供給管は、切り替えデバイス(Umstellarmatur)に連結され、そしてその際、その切り替えデバイス の操作によって、加熱煙道の燃焼ガスノズルへの、燃焼ガス又は還元剤/空気混合物の供給を交互に開通することが可能となる。
【0010】
熱回収のためのリジェネレータは複数の単セルを含み、該単セルは加熱煙道の下に配置される。本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、少なくとも、側端の、外部からアクセス可能なリジェネレータセルは、それぞれ、コークス化室のコークス側及びコークス化室の機械側に、装填材料を備えたリジェネレータ層を含み、該装填材料は、200℃〜500℃の温度範囲において、窒素酸化物を選択的に還元するための触媒として作用するものである。側端部のリジェネレータセルの触媒として作用するそのリジェネレータ層は、好ましくは、交換可能なカートリッジ中に収容される。
【0011】
本発明の方法は、いわゆるアンダージェットとしても構想されるコークス炉において使用できるだけでなく、いわゆる頭部加熱されるコークス炉、又はサイドバーナーとして構築されるコークス炉においても使用できる。本発明の方法は、リッチガスだけで稼働される、炭鉱コークス製造工場中のコークス炉に適している。しかしながら、本発明の方法は、精錬所と連結されていわゆるコンビネーション炉として稼働されるコークス炉だけでなく、リーンガスあるいはリッチガスで加熱されるコークス炉の場合にも使用できる。本発明の方法は、燃焼ガス供給部の高温部分における炭素析出物を脱黒鉛化空気で燃焼させることができるための設備が存在するいずれの場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下に、本発明を、単に実施例として描かれた図面に基づいて説明する。
【図1】図1は、コークス炉のための加熱システムを示す図である。
【図2】図2は、図1の加熱システムの双加熱煙道(Zwillingsheizzug)を示す図である。
【図3】図3は、コークス炉の排ガスからの窒素酸化物を還元できる方法を実施するための還元剤のための計量添加ステーションを備える脱黒煙化空気システムを示す図である。
【0013】
図1は、複数のコークス化室と、コークス化室を間接的に加熱するための加熱煙道を備える、それらコークス化室の間に配置された加熱壁とを有するコークス炉に関する図であり、そして、異なる断面において、その図の右半分はコークス化室1を通る断面図を、図の左半分は加熱壁2を通る断面図を、そして図の下半分は、熱回収のためのリジェネレータ4を備えた下炉(Unterofen)3の断面を示している。コークス化室1は、中間天井5によって下炉3から分離されている。リジェネレータの下方には、空気及び排ガスのための底部流路6、7が延びている。
【0014】
コークス炉のコークス化室1は、上方から、炉天井8内に配設された装入開口部9を介して装填される。完成したコークスは、コークス側10で、横側に押し出される。発生した粗製ガスは、上昇管11を介して受け器に導出される。コークス化室1の間には、加熱煙道12、12’を備えた、高温耐性のレンガでできた加熱壁2がある。該加熱煙道12の間の隔壁13は、中空のトラフから構成されており、この中空トラフは、空気並びに排ガスのための流路を形成し、そして開口部によって加熱煙道12と連結している。加熱煙道12の下端部には、燃焼ガスノズル15が配置されており、該ノズルは、燃焼ガス導管と連結されている。燃焼ガス導管は、例えば、コークス炉の中間天井5中に配設される。
【0015】
加熱煙道12、12’は対として連結して、いわゆる双加熱煙道17を形成する。そのような双加熱煙道17における流れの案内が図2に描かれている。底部流路6を通って流れ込む空気14は、リジェネレータ4を通して案内され、そして予熱される。その予熱された空気14は、下側の空気開口部を通って、並びに加熱煙道の高さにわたって分布して配置された更に別の開口部を通って、双加熱煙道17の第一の加熱煙道中に進入する。リッチガスとしてその全部がコークス炉ガスからなるか又は少なくとも本質的な部分がコークス炉ガスからなる燃焼ガス16は、燃焼ガス導管を介して、加熱煙道に配設された燃焼器供給管19へ到達し、そして、加熱煙道の下部端に配設された燃焼ガスノズル15を通って加熱煙道12中へ導入される。そこでは、燃焼ガス16が、加熱煙道12中へ導入された空気流の酸素と共に燃焼される。その高い温度に起因して窒素酸化物を含む排ガスは、頭部側から双加熱煙道17の第二の加熱煙道12’中へ移動し、下方に向かってそこを貫流し、そして、第二の加熱煙道12’をその空気開口部を介して出る。排ガス流は第二の加熱煙道12’に配設されたリジェネレータ4を貫流し、それに熱を与え、そして少なくとも200℃〜280℃又は希にそれ以上の温度をもって、配設された底部流路7に導出される。
【0016】
コークス化室をリッチガス、つまり、コークス炉ガス又は高い割合でコークス炉ガスを含む燃焼ガスで加熱することによって炭素が生じ、その炭素は、リッチガスが貫流する管路の高温部分、特に、燃焼ガスノズル15に付着し、そして、通常は、脱黒鉛化空気を供給させることによって焼失させなければならない。その脱黒鉛化空気は、加熱煙道12、12’への燃焼ガス供給が停止されているリジェネレータの半期の間、配設された燃焼器供給管19’及び燃焼ガスノズル15’を介して加熱煙道12’中に導入され、そして、双加熱煙道17の他方の加熱煙道12からの高温の排ガスと共に排出される。
【0017】
その際に、排ガスの窒素酸化物含有量を低減するために、脱黒鉛化空気に還元剤を計量添加し、そしてそれと一緒に、700℃〜1100℃の温度を有する高温の排ガスと接触させる。還元剤としてはアンモニアが好ましく使用される。
【0018】
とりわけ、図3からは、空気送風機20、あるいは、複数の空気送風機を含むこともできる送風装置を使って、所定の脱黒鉛化空気マスフロー21が発生し、そして空気流中の還元剤の濃度が、引火可能な混合物の濃度を下回るように算定される量である、所定の還元剤流22がそれに計量添加されることがわかる。アンモニアを使用する際、脱黒鉛化空気流中の最大NH3濃度は2体積%であってよい。アンモニアは、蒸気の状態で脱黒鉛化空気流に供給され、そして蒸発装置23中で発生させる。還元剤流22並びに空気マスフロー21は、調整されたプロセスの制御変数である。
【0019】
脱黒鉛化に使用される還元剤/空気混合物18は、空気導管系中に供給され、該系は、燃焼ガス供給と同様に、3方デバイスとして形成された切り替えコック25に接続される。その切り替えコック25の操作により、加熱煙道12の燃焼ガスノズル15への燃焼ガス16あるいは還元剤/空気混合物18の供給が交互に開通される。
【0020】
図1には、熱回収するために、複数の単セルを含むリジェネレータ4が使用されていることを示した。その際、該単セルは、加熱煙道の下方に配置される。少なくとも、端側の、外側からアクセス可能なリジェネレータのセルは、それぞれが、コークス化室のコークス側及びコークス化室の機械側で、200℃〜500℃の温度範囲で窒素酸化物の選択的還元のための触媒として効力を有する装填材料を有するリジェネレータ層26を含む。端側のリジェネレータセルの触媒として作用するリジェネレータ層26は、交換可能なカートリッジ中に収容される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコークス化室(1)と、それらコークス化室(1)を間接的に加熱するための加熱煙道(12、12’)を備える、該コークス化室の間に配置される加熱壁(2)を有する、コークス炉の排ガスからの窒素酸化物を還元する方法であって、
その際、該加熱煙道(12、12’)中では、その全部又は一部がコークス炉ガスからなる燃焼ガスが燃焼され、そして窒素酸化物を含む排ガスが発生し、
その際、該排ガスには、700℃〜1,100℃の間の温度で還元剤(22)が供給され、そして、該還元剤と該窒素酸化物との間の均質のガス反応により、該排ガスの窒素酸化物の割合が減少され 、そして、
その際、該排ガスは、引き続きリジェネレータ(4)を介して熱回収へ送られる、方法であって、
燃焼ガス供給部の高温部分における炭素堆積物が脱黒鉛化空気(21)で燃焼され、その際、該脱黒鉛化空気は、前記加熱煙道(12’)への燃焼ガスの供給が停止されているリジェネレータの半期の間、配設された燃焼器供給管(19’)及び燃焼ガスノズル(15’)を介して加熱煙道(12’)中に導入され、そして他方の加熱煙道(12)からの高温の排ガスと共に排出されること、及び、前記還元剤(22)が前記脱黒鉛化空気(21)に計量添加され、そしてそれと一緒に前記高温の排ガスと接触させることを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
還元剤(22)としてアンモニアが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
空気送風機(20)を使って所定の脱黒鉛化空気マスフロー(21)を発生させること、及び、計量添加すべき還元剤流量(22)は、空気流中における該還元剤の濃度が引火可能な混合物の濃度を下回るように決められることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
脱黒鉛化するために使用される還元剤/空気混合物(18)が、空気導管系中に提供され、その際、該空気導管系及び前記燃焼ガス供給部が、切り替えコック(25)に連結され、そしてその際、該切り替えコック(25)の操作によって、前記加熱煙道(12’)の燃焼ガスノズル(15’)への燃焼ガス又は還元剤/空気混合物の供給が交互に開通されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
熱回収のために複数の単セルを含むリジェネレータ(4)が使用され、その際、該単セルは、前記加熱煙道(12、12’)の下方に配置され、そしてその際、少なくとも、端側の、外側からアクセス可能なリジェネレータのセルは、それぞれ、コークス化室(1)のコークス側及びコークス化室の機械側に、200℃〜500℃の温度範囲で窒素酸化物の選択的還元のための触媒として有効な装填材料(Besatzmaterial)を有するリジェネレータ層26を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
端側のリジェネレータセルの触媒として有効なリジェネレータ層(26)が、交換可能なカートリッジ中に収容されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511580(P2013−511580A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539256(P2012−539256)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066136
【国際公開番号】WO2011/061042
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(597014730)ティッセンクルップ・ウーデ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (20)
【Fターム(参考)】