説明

コークス生成を抑制するためのガスタービンシステム及び使用方法

【課題】タービンの液体燃料供給システムにおいて、液体燃料の酸化及び部分分解が生じ、内部にコークスが生成される(「コーキング」と呼ばれる)。コークスは液体燃料供給システム内に硬い堆積物を形成するため、コークス生成を抑制することが必要である。
【解決手段】ガスタービンエンジン10は、液体燃料供給システム20と、液体燃料供給システムと流体連通する添加剤噴射システム50であって、添加剤配合物を液体燃料と混合するように構成されて、液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するように構成された液体燃料・添加剤混合物を形成する添加剤噴射システム50とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、タービン燃焼システムにおけるコークス生成を抑制するためのシステムに関し、より詳細には、気体燃料/液体燃料燃焼タービンシステムの液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電に使用されるような燃焼タービンは、気体炭化水素燃料を燃料とすることが多いが、気体燃料が利用できない又は望ましくない場合に使用される代わりの液体炭化水素燃料を利用できる。燃焼タービンが気体燃料で作動する間、燃焼タービン内の燃料分配器に接続された隣接する液体燃料供給システムは待機モードで液体燃料を貯蔵する。
【0003】
液体燃料供給システムは管と弁の配列を含み、必要又は要求に応じて使用される液体燃料で満たされている。燃焼タービンの作動中の気体燃料の燃焼は、炉の燃焼室において、また液体燃料供給システムが占める領域を含む燃焼室に隣接する領域において高温を発生させる。液体燃料供給システムは液体炭化水素燃料で満たされているが、液体燃料システム内の逆止弁を通って漏れる酸素と空気が含まれることもある。タービンの燃焼室に隣接する液体燃料供給システム内の液体炭化水素燃料、酸素、及び高温の組み合わせによって、液体燃料供給システム内の液体燃料の酸化及び部分分解が生じ、内部にコークスが生成される。この過程は「コーキング」と呼ばれ、コークスは液体燃料供給システム内に硬い堆積物を形成し、これがシステムの関連する弁及び弁スクリーンを詰まらせて塞ぐ可能性がある。過剰なコーキング及び目詰まりは液体燃料供給システムによる効果的な液体燃料移送を妨げ、液体燃料供給システムの清掃又はその部品の交換を行なうためのシャットダウンを燃焼タービンに要求することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7527068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このコーキングの問題は、しばしば気体燃料供給システムから液体燃料供給システムへ移行してシステム構成要素を働かせ、停滞した燃料を燃焼させることによって対処されている。しかしながら、これは、気体燃料による燃焼タービンの作動が通常はより経済的で望ましい場合に、停滞した液体燃料の週一回の燃焼を必要とすることによって運転上且つ財務上の問題を引き起こす。
【0006】
別の提案された解決策は、週一回/週二回液体燃料へ移行するのではなく、液体燃料供給システム内の液体炭化水素燃料を再循環させることである。しかしながら、この選択肢は複雑且つ不経済であるため、望ましくない。
【0007】
更に別の提案された解決策は、液体燃料供給システム内で水冷式逆止弁を使用して、逆止弁表面をコーキング温度未満に維持することである。しかしながら、この選択肢は、逆止弁上の冷却ジャケットだけでなく、システムにハードウェアの変更を要求する。更に、この選択肢は、液体燃料供給システム内のハードウェアのある特定の部分に限られており、水冷を伴わないシステムの領域におけるコーキングの発生を抑制するのに効果的とは思えない。
【0008】
従って、燃焼タービンの液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するための単純で経済的に望ましい方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ガスタービンは、液体燃料をガスタービンの燃焼システムに供給するように構成された液体燃料供給システムと、液体燃料供給システムと流体連通する添加剤噴射システムであって、添加剤配合物を液体燃料と混合するように構成されて、液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するように構成された液体燃料・添加剤混合物を形成する添加剤噴射システムとからなる。
【0010】
本発明の別の態様によれば、二元燃料タービンの液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するための方法は、添加剤配合物を添加剤噴射システム内で液体燃料と混合して液体燃料・添加剤混合物を形成するステップにおいて、添加剤配合物はコーキングを抑制するように構成され、添加剤噴射システムは液体燃料供給システムと流体連通するステップと、液体燃料・添加剤混合物を液体燃料供給システムに噴射するステップとからなる。
【0011】
上記及びその他の利点、特徴は、図面を参照した以下の説明から、より明確になるであろう。
【0012】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結びの特許請求の範囲において具体的に指摘され明確に請求される。本発明の上述及びその他の特徴、利点は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から明確である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】気体/液体燃焼タービンシステムの液体燃料供給システムと連通する添加剤噴射システムの例示的実施形態の概略図である。
【図2】コーキングに対する添加剤配合物の効果を示すための実験の4つの異なる液体燃料サンプルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明は、例として図面を参照して、利点及び特徴と共に本発明の実施形態を説明する。
【0015】
本明細書において、タービン燃焼システムにおけるコークス生成を抑制する、より詳細には、気体燃料/液体燃料燃焼タービンの液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するためのシステムが開示されている。本明細書において開示した気体燃料/液体燃料燃焼タービンシステム(「二元燃料タービン」)は、液体燃料供給システム内のコークス生成を抑制するために1つ以上の燃焼室の液体燃料供給システムと流体連通する添加剤噴射システムを利用して、内部のコークス生成を抑制する。添加剤噴射システムは、二元燃料タービンシステムにおける1つ以上の燃焼室内の液体燃料供給システムと共に利用することができる。添加剤噴射システムは、液体燃料供給システム内のコークス生成を抑制するのに効果的な添加剤を供給するように構成されている。添加剤は、その成分に酸化防止剤、ポリマー抑制剤、及び金属不活性剤を含み得る配合物である。添加剤噴射システムは、添加剤配合物を収容するように構成された貯蔵タンクと、添加剤配合物を液体燃料供給システムに供給するように構成された噴射ポンプと、液体燃料供給システムへの添加剤配合物の供給を制御するように構成された制御システムとを含み得る。
【0016】
上記のように、コークス生成は様々な形でタービンシステムに影響する可能性がある。コークス生成は、液体燃料管の流量面積を減少させることがある。コークス生成は、時間と共に硬化して、システム内の逆止弁を故障させることがある。コークスの破片は、燃料管表面から剥がれ落ち、開放した逆止弁を通って流れ、燃料ノズルを詰まらせることがある。最終的に、これらのコークス生成の様々な影響によって、タービン内の多くの液体燃料供給システムが影響を受けることになり、燃焼器内の燃料の不均等分布に、最後にはタービンのトリップにつながることがある。添加剤噴射システムは、添加剤配合物をシステム内の液体燃料と混合することによって液体燃料供給システム内のコークス生成を抑制するように構成されている。添加剤配合物は、液体燃料供給システム内で停滞した燃料、空気、熱、及び金属の存在が組み合わさることによって発生するコークス生成を実質的に抑制又は防止さえもするように構成されている。従って、添加剤噴射システムは、二元燃料タービンシステムの信頼性を向上させることができる。また、液体燃料供給システムにおける停滞時間を回避するためにしばしば使用される定期的に予定された燃料転換の必要もなくなる。このように、本明細書に記載の添加剤噴射システムを用いてコークス生成を抑制することによって、二元燃料タービンの運転維持費を大幅に削減することができる。更に、添加剤噴射システムは、新規又は既存の二元燃料タービンシステムと共に利用することができ、ごくわずかな変更を加えるだけで実施することができる。
【0017】
図1は、液体燃料を燃焼器に供給するように構成された液体燃料供給システム20と、液体燃料供給システム20と流体連通する添加剤噴射システム50とを含む二元燃料タービン10の概略図である。液体燃料は、タービン10の燃料転送システム等の液体燃料源22から液体燃料供給システム20に供給される。液体燃料運転中、液体燃料供給システム20と液体燃料源22の間の停止弁24が開放し、燃料転送ポンプは液体燃料流を液体燃料ポンプ26の入口に供給する。液体燃料ポンプ26は、燃料フィルタ28を通って、各燃焼器(図示せず)の燃料ノズルの数と等しい複数の流れに燃料を分割するように構成された燃料流量分配器30に入る積極的な燃料流を形成する。逆止弁34は、ガス操業中、液体燃料が液体燃料配管を通って逆流しないように、流量分配器30の下流に配置される。
【0018】
従来の二元燃料タービンのガス操業中、液体燃料は通常は逆止弁34まで向かい、逆止弁34の下流は空気がシステム内の液体燃料に代わるまで熱風でパージされる。液体燃料供給システム20は、長期間、場合によっては最高6カ月間停滞したままでもよい。この停滞期間の間、液体燃料供給システムは、タービン燃焼システムに極めて接近しているため、華氏350度の温度に達する又はその温度を超える可能性がある。温度と停滞時間によって、炭素質堆積物(即ち、コークス)が液体燃料供給システムの逆止弁及び液体燃料配管に生じる可能性がある。熱風パージ後も燃料残留物が配管の表面に存在することがあり、更に熱風が液体燃料逆止弁を通って液体燃料配管/管に入る可能性がある。ガス操業中、液体燃料は逆止弁の上流に存在する。燃料が周囲の燃焼システムの温度によって加熱されるにつれて、燃料は膨張し、システム20の逆止弁34からその下流の液体燃料配管に漏出し始める。この液体燃料がシステム配管のパージ空気及び熱い金属表面と混合して、コーキングが発生し始める。
【0019】
添加剤噴射システム50の例示的実施形態は、図1において液体燃料供給システム20と流体連通して示されている。添加剤噴射システムは、上記の状態の結果として発生する液体燃料供給システム20内のコーキングを実質的に抑制するように構成されている。添加剤噴射システム50は、添加剤配合物を収容するように構成された貯蔵タンク52を含んでいる。貯蔵タンク52は、所望量の添加剤配合物を保持するように構成された任意の大きさと形を有することができ、1つには液体燃料供給システム20の大きさと、そこを通る液体燃料の流量によって決まる。液体燃料供給システム20の液体燃料を添加剤配合物と混合するように構成された混合装置54は、貯蔵タンク52内に配置することができる。例示的な混合装置は添加剤配合物を液体燃料と実質的に完全に混合するものであり、スターラ、アジテータ、パドル、バッフル等を含み得るがこれに限定されるものではない。停止弁56と計量オリフィス58は、液体燃料供給システム20の主液体燃料管と貯蔵タンク52の間に流体連通して配置される。停止弁56は貯蔵タンク52への液体燃料の流れを許容又は阻止するように構成されているのに対して、計量オリフィス58は液体燃料が貯蔵タンク52へ流れる量及び/又は速度を制御するように構成されている。液体燃料は、いつでも液体燃料供給システム20からそらすことができる。例示的実施形態において図1に示すように、添加剤噴射システム50は、停止弁24の上流で液体燃料供給システム20と初期流体連通している。また、燃料ポンプ、最終的には燃焼システムへの液体燃料の流れを制御するのは停止弁24である。この場所において、液体燃料をそらして、何らかの未処理燃料が液体燃料供給システム20、特にコーキングが起こりやすい配管及び逆止弁に導入される前に、所望量の添加剤配合物と混合(即ち、処理)することができる。添加剤噴射システム50は貯蔵タンク52の出口に配置された再循環ポンプ60を更に含んでおり、ポンプ60は液体燃料・添加剤混合物を液体燃料供給システム20へポンプ輸送するように構成されている。例示的実施形態では、再循環ポンプ60は容積型歯車ポンプである。ソレノイド弁62又はその他の同様の流量制御装置を貯蔵タンク52と再循環ポンプ60の間に配置して、ポンプ入口への混合物の流れを制御することができる。最後に、第2の停止弁64が、再循環ポンプ60の下流且つ液体燃料供給システム20の上流に配置される。本実施形態では、停止弁64が開放すると、液体燃料・添加剤混合物は液体燃料停止弁24の下流、液体燃料ポンプ26の上流の液体燃料供給システム20にポンプ輸送される。停止弁56及び64は、必要に応じて添加剤噴射システム50を液体燃料供給システム20から分離する役目をする。更に、停止弁56,64及び計量オリフィス58の動作が貯蔵タンク52への液体燃料の量及び流速を制御する役目をすることによって、液体燃料中の添加剤配合物の濃度を制御する。例示的実施形態では、制御システムが停止弁及び計量オリフィスと動作(例えば、電気)通信している。停止弁及び計量オリフィスの制御によって、制御システムは、添加剤噴射システム50に入る液体燃料流の容積、またそれによって、液体燃料・添加剤混合物の添加濃度を制御することができる。
【0020】
一般的に、二元燃料タービン10にとってできるだけ長く気体燃料で動作することが経済的により望ましい。しかしながら、これは上記の長期にわたる停滞期間につながる。幸いにも、タービン10を液体燃料で動作させる必要がある場合もある。例えば、工場内の気体燃料不足は、気体燃料が補充されて利用可能になるまで液体燃料の使用を必要とすることがある。添加剤噴射システム50は、タービン10が液体燃料で動作している場合に作動する。例示的実施形態では、添加剤噴射システム50は、タービン10が気体燃料運転へ移行する寸前のような液体燃料の遮断直前に作動する。この時点で、タービン10は通常はベース負荷で動作していることになる。液体燃料供給システム20を流れる液体燃料の一部又は全部は、添加剤噴射システム50を通ってそらして、添加剤配合物と混合することができる。タービン10の気体燃料運転への移行前に、実質的に完全に添加剤配合物を液体燃料と所望の濃度に混合するのに効果的な時間だけ、添加剤噴射システム50が作動する(即ち、停止弁56及び64が開放する)。換言すれば、添加剤噴射システムは、気体燃料運転への移行後の配管及び逆止弁内の液体燃料に所望の濃度の添加剤配合物が確実に混合するのに効果的な時間だけ液体燃料に添加剤配合物を混合する。液体燃料供給システム20によって効果的に添加剤を混合するのに必要な時間は変動する可能性があり、サイクル時間、液体燃料容積、液体燃料管寸法等を含むがこれに限定されるものではない様々な要因によって決まる。本明細書で使用しているように、「サイクル時間」は、一般的に液体燃料の全容積が停止弁24から燃焼器へ移動するのにかかる時間を指すことを意図している。この時間は「滞留時間」とも呼ばれる。液体燃料と混合する添加剤配合物の量は、サイクル時間と液体燃料管寸法(即ち、システム内の液体燃料の容積)によって決まる。例示的実施形態では、添加剤配合物は、約1〜約8サイクル、詳細には約2〜約6サイクル、より詳細には約4サイクルの間、液体燃料と混合することができる。
【0021】
運転中、タービンシステム10が液体燃料で動作していて気体燃料へ移行することが望ましい場合、燃焼システムの液体燃料から気体燃料への移行前に、添加剤噴射システム50が所定時間(例えば、数分)作動する。添加剤噴射システム50は、気体燃料運転中は閉鎖位置にある停止弁56を開放することによって作動する。停止弁を開放することによって、液体燃料(又はその一部)が貯蔵タンク52内に移動する。また、計量オリフィス58は、タンクへの液体燃料流の速度及び容積を制御するように構成されている。液体燃料は、貯蔵タンク内で添加剤配合物と所望の濃度に混合される。混合後の液体燃料中に存在する添加剤配合物の量は、やはり液体燃料供給管寸法と液体燃料流サイクル時間によって決まる。例示的実施形態では、添加剤配合物は、100万の液体燃料に対して約10〜約200の添加剤配合物の濃度(ppm)、詳細には約20ppm〜約80ppm、より詳細には約30ppm〜約40ppmで液体燃料と混合される。そして、液体燃料・添加剤混合物は再循環ポンプ60の入口に供給され、ポンプは混合物が開放した停止弁64を通って液体燃料供給システム20の主燃料管へと戻るようにさせる。所定時間の混合及び再循環の後、液体燃料・添加剤混合物が液体燃料供給システム20全体に存在することによって、全体的にコークス生成を効果的に抑制する。例示的実施形態では、液体燃料・添加剤混合物は、停止弁24から下流の液体燃料供給システム20を通って燃焼システムまで存在する。これには、液体燃料供給管、逆止弁、フィルタ、分配器、ノズル等が含まれる。所望の数の液体燃料流サイクル後、気体燃料運転への移行前又はそれと同時に、添加剤噴射システム50が停止弁56及び64を閉鎖することによって停止する。そして、タービンシステム10は、液体燃料運転から気体燃料運転へと移行することができる。一般的なタービンシステムでは、液体燃料供給管はその後熱風によって逆止弁へとパージされる。添加剤噴射システムの事前の運転により、逆止弁に残っている液体燃料と配管上の残留物が液体燃料・添加剤混合物となる。燃焼器からの熱に起因する高圧力及び温度下で混合物が停滞するので、混合物中の添加剤配合物が通常内部で発生するであろうコーキングを実質的に抑制することになる。
【0022】
添加剤噴射システム内で液体燃料と混合する例示的な添加剤配合物は、二元燃料タービンエンジンの液体燃料供給システムにおけるコーキングを抑制するように構成された任意の組成物であってよい。更に、例示的な添加剤配合物は、現在の二元燃料タービンに特有の停滞時間に対して上記に指定した濃度で効果を発揮する。また更に、例示的な添加剤配合物は、二元燃料ガスタービンエンジン内の液体燃料供給システムの温度で効果を発揮する。従って、例示的な添加剤配合物は、華氏約200度〜華氏約400度(摂氏約93度〜摂氏約204度)、詳細には華氏約300度〜華氏約350度(摂氏約149度〜摂氏約177度)の温度で停滞した液体燃料のコーキングを抑制するのに効果的である。一般的に、液体燃料供給システム内のコーキングの原因となる4つのパラメータがあり、残留時間、温度、酸素の存在、及び金属の存在である。既存の二元燃料タービンでは、これらのパラメータのいずれかを回避することは極めて困難である。従って、例示的な添加剤配合物は、液体燃料と、酸素及び金属の間のバリアとして作用するように構成された化学添加物である。換言すれば、添加剤配合物はこれらのパラメータの影響を実質的に制限するのに効果的である。例示的実施形態では、添加剤配合物は3つの異なる成分からなっており、各成分は液体燃料供給システムのコークスの原因となるパラメータに対して特定の効果を有する。例示的な3成分添加剤配合物は、酸化防止剤、ポリマー抑制剤、及び金属不活性剤からなっている。一実施形態では、3成分は添加剤配合物中に均等量存在する。別の実施形態では、3成分は異なる量で添加剤配合物中に存在する。選択された成分の特定の組成及びそれらが添加剤配合物中に存在する量は、液体燃料供給システム内のコークス生成に影響する条件及び要因によって決まる。様々なタービンシステムに関して、最も効果的な添加剤配合物は異なっている。当業者は、限定されるものではないが、液体燃料供給管寸法、液体燃料タイプ、平均システム温度及び圧力等の様々なパラメータに基づいて、酸化防止剤、ポリマー抑制剤、及び金属不活性剤の最も効果的な組み合わせを容易に決定することができるであろう。この成分を混合して、当業者には既知の任意の方法で添加剤配合物を生成することができる。例示的実施形態では、3成分添加剤配合物は、標準の液体燃料供給システム温度の液体であり、液体燃料と混合できる。場合によっては、液体燃料と混合できる製剤を提供するために、無極性溶媒等の溶媒中に1つ以上の成分を溶解することが必要である。
【0023】
3成分添加剤配合物の酸化防止剤成分は、液体燃料供給システム内に存在する液体燃料に対する酸素の影響を抑制するように構成された任意の酸化防止剤組成物であってよい。酸化防止剤組成物は、単一の酸化防止剤組成物又は酸化防止剤の組み合わせであってもよい。個別又は2つ以上の組み合わせのどちらかで使用することができる例示的な酸化防止剤としては、リン含有酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的なリン含有酸化防止剤としては、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルジイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス‐ジノニルフェニルホスファイト、トリス‐(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’‐イソプロピリデンジフェノールアルキルホスファイト、4,4’‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェニルジトリデシルホスファイト)、1,1,3‐トリス(2‐メチル‐4‐ジ‐トリデシルホスファイト‐5‐t‐ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)‐4,4’‐ビスフェニレンジホスファイト、3,4,5,6‐ジベンゾ‐1,2‐オキサフォスファン‐2‐オキシド、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルジエチルホスフェート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
3成分添加剤配合物において使用される例示的なフェノール系酸化防止剤としては、2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール、2‐t‐ブチル‐4‐メトキシフェノール、2,4‐ジメチル‐6‐t‐ブチルフェノール、2,4‐ジエチル‐6‐t‐ブチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐p‐クレゾール、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐エチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシメチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐(N,N‐ジメチルアミノメチル)フェノール、n‐オクタデシル‐β‐(4’‐ヒドロキシ‐3’,5‐ジ‐t‐ブチルフェニル)プロピオネート、2,4‐(n‐オクチルチオ)‐6‐(4‐ヒドロキシ‐3’,5’‐ジ‐t‐ブチルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、トコフェノール、2‐t‐ブチル‐6‐(3’‐t‐ブチル‐5’‐メチル‐2’‐ヒドロキシベンジル)‐4‐メチルフェニルアクリレート、2,2’‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、2,2’‐メチレンビス(4‐エチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、2,2’‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐シクロヘキシルフェノール)、2,2’‐ジヒドロキシ‐3,3’‐ジ(α‐メチルシクロヘキシル)‐5,5’‐ジメチルジフェニルメタン、2,2’‐エチリデンビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェノール)、2,2’‐ブチリデンビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール)、4,4’‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、1,6‐ヘキサンジオールビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス‐3‐(t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオネート、N,N’‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’‐ヘキサメチレンビス‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ)ヒドロシンナミド、2,2’‐チオビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、4,4’‐チオビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)、2,2’‐チオジエチレンビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2‐t‐ブチル‐4‐メチル‐6‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐2‐ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,1,3‐トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェニル)ブタン、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5‐ジ‐t‐4‐ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(4‐t‐ブチル‐3‐ヒドロキシ‐2,6‐ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、カルシウム(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルモノエチルホスホネート)、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、2,4,6‐トリ‐t‐ブチルフェノール、2,5‐ジ‐t‐ブチルヒドロキノン、2,5‐ジ‐t‐アミルヒドロキノン、1,1,3‐トリス‐(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェニル)ブタン、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9‐ビス[2‐{3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ}‐1,1‐ジメチルエチル]‐2,8,10‐テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的な実施形態では、3成分添加剤配合物に使用されるフェノール系酸化防止剤はジメチル‐アミノメチルフェノールであり、その市販例はアルベマール(登録商標)株式会社から入手可能なHitech(登録商標)4702及び4710である。
【0025】
例示的なアミン系酸化防止剤としては、p,p’‐ジオクチルジフェニルアミン、N‐フェニル‐N’‐イソプロピル‐p‐フェニレンジアミン、ポリ‐2,2,4‐トリメチル‐1,2‐ジヒドロキノリン、6‐エトキシ‐2,2,4‐トリメチル‐1,2‐ジヒドロキノリン、チオジフェニルアミン、4‐アミノ‐p‐ジフェニルアミン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
3成分添加剤配合物のポリマー抑制剤成分は、システム内の液体燃料に対する高温及び熱風の影響を抑制するように構成された任意のポリマー抑制剤成分であってよい。ポリマー抑制剤は、燃料中の炭化水素の酸素及び温度による重合化を抑制しなければならない。ポリマー抑制剤成分は、単一のポリマー抑制剤成分又は抑制剤の組み合わせであってもよい。ポリマー抑制剤は、「ガム抑制剤」と呼ばれることもある。個別又は2つ以上の組み合わせのどちらかで使用することができる例示的なポリマー抑制剤としては、例えば、N‐フェニル‐N’(1,3‐ジメチルブチル)‐p‐フェニレンジアミン、N‐フェニル‐N’(1,4‐ジメチルペンチル)‐p‐フェニレンジアミン、N‐フェニル‐N’(1,4‐ジメチルプロピル)‐p‐フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン化合物;例えば、オルト‐tert‐ブチル‐パラ‐メトキシフェノール、クレゾール酸、アミノフェノール、2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、4,4’‐メチレンビス‐(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール)等のフェノール類;例えば、第三級ブチルカテコール、ベンゾキノン、テトラブチルヒドロキノン等のキノン;例えば、カルシウム又はマグネシウム硫化フェネート等のアルキルフェノールスルフィドのアルカリ土類塩;フェノチアジン及びアルキル化誘導体等の硫黄/アミン含有物質;例えば、ジアルキルジチオリン酸の金属又はアミン塩等の硫黄/リン含有物質が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的実施形態では、3成分添加剤配合物に使用されるジアミン系ポリマー抑制剤はN,N’‐ジ‐sec‐ブチル‐1,4‐フェニレン‐ジアミンであり、その市販例はユニバーサル・オイル・プロダクツ(登録商標)社から入手可能なUOP‐5(登録商標)である。
【0027】
3成分添加剤配合物の金属不活性剤成分は、管及び弁表面の金属と、システム内の液体燃料中に存在する液体燃料、蒸気、酸素との間の反応を阻止するように構成された任意の金属不活性剤成分であってよい。金属不活性剤は、金属不活性剤なしでは液体炭化水素燃料中の不純物の重合に触媒作用を及ぼす金属を不活性化するように構成されている。金属不活性剤成分は、単一の金属不活性剤成分又は不活性剤の組み合わせであってもよい。個別又は2つ以上の組み合わせのどちらかで使用することができる例示的な金属不活性剤としては、例えば、N,N‐ジエチルチオ尿素、N,N‐ジブチルチオ尿素、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等の硫黄系金属不活性剤;及び、例えば、S,S,S‐トリブチルホスホロトリチオエート、S,S,S‐トリフェニルホスホロトリチオエート、S,S,S‐トリヒドロカルビルホスホロトリチオエート等のリン系金属不活性剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的実施形態では、3成分添加剤配合物に使用されるリン系金属不活性剤はフェニルジアミンであり、その市販例はBASF(登録商標)社のチバ・ガイギー(登録商標)から入手可能なMD‐115(登録商標)である。
【0028】
本明細書に記載の二元燃料ガスタービンエンジンの液体燃料供給システムにおける添加剤噴射システム及びその使用法は、燃料システムにおけるコーキングを好都合に抑制することができる。コーキングの抑制は、ガスタービンエンジンの寿命、効率、及び生産能力を増加させることができる。添加剤噴射システムは、液体燃料供給システムと流体連通して配置され、液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するのに効果的である添加剤配合物を供給するように構成されている。添加剤配合物をシステム内の液体燃料と混合することによって、添加剤噴射システムは、液体燃料供給システム内で停滞した燃料、空気、熱、及び金属の存在が組み合わさることによって発生するコークス生成を実質的に抑制又は防止さえもすることができる。従って、添加剤噴射システムは、二元燃料タービンの信頼性を向上させることができる。また、液体燃料供給システムにおける停滞時間を回避するためにしばしば使用される定期的に予定された燃料転換の必要もなくなる。従って、添加剤噴射システムを用いてタービンシステムの運転維持費を大幅に削減することができる。更に、本明細書に記載の添加剤噴射システムは、新規又は既存の二元燃料タービンシステムと共に利用することができ、ごくわずかな変更を加えるだけで実施することができる。
【0029】
以下の実施例は、限定ではなく例示を意図するものであり、本明細書に記載の添加剤噴射システム及び液体燃料中のコーキングの抑制に対する添加剤配合物の効果を例証する。
【実施例】
【0030】
以下の実験は、本明細書に記載の添加剤配合物の低温で停滞した液体燃料中のコーキングを防止又は実質的に抑制する能力を測定するために用いた。高速ディーゼル燃料の4つの異なるサンプルをINCONEL(登録商標)合金容器に入れた。4つのサンプルのうちの3つは、電気加熱浴内で摂氏200度の温度まで加熱した。燃料がその温度に達したら、電気加熱浴内の温度調節器は摂氏200度の温度で保持した。圧力計を各サンプル内で使用して、液体燃料を加熱した時の容器内の圧力を観測した。温度の何らかの急上昇の場合に備えて、加熱浴のカバーに安全弁が入れられた。
【0031】
サンプル1は、加熱前の単なる高速ディーゼル燃料(HSD燃料)であって、電気加熱浴には一度も入れなかった。サンプル1は、未使用燃料と、時間と共に熱、金属、及び空気に曝される停滞燃料の比較を示すためのものである。サンプル2は、空気のみに曝露して電気加熱浴内で加熱したHSD燃料である。サンプル2は、燃料に対する空気のみの影響を示すためのものである。サンプル3は、ステンレス鋼に曝して電気加熱浴内で加熱したHSD燃料である。容器は、空気を除去し、燃料に対するステンレス鋼のみの影響を示すために二酸化窒素によってパージした。最後に、サンプル4は、添加剤配合物と混合したHSD燃料である。サンプル4は、HSD燃料・添加剤混合物に対する両者の影響を示すためにステンレス鋼と空気に曝した。サンプル2〜4は、8日の間、摂氏200度で維持した。
【0032】
サンプル4のHSD燃料と混合した添加剤配合物は3成分添加剤配合物であって、10ppmの酸化防止剤、10ppmのポリマー抑制剤、及び10ppmの金属不活性剤を含有する。酸化防止剤は、アルベマール(登録商標)株式会社からHitech(登録商標)4702として市販されているジメチルアミノメチルフェノールである。ポリマー抑制剤は、ユニバーサル・オイル・プロダクツ(登録商標)社からUOP‐5(登録商標)として市販されているN,N’‐ジ‐sec‐ブチル‐1,4‐フェニレン‐ジアミンである。金属不活性剤は、ノニルフェノール系ポリマーであって、BASF(登録商標)社の一部のチバ・ガイギー(登録商標)からMD‐115‐Aとして市販されている金属不活性剤である。
【0033】
図2は、4つのサンプルの各々を示す写真である。各サンプルからのHSD燃料の一部を取り出して、変色を観察するために透明な実験ビーカーに入れた。図2において、左から右に、サンプル1、サンプル2、サンプル4、及びサンプル3である。左端のビーカーのサンプル1は、純粋な未加熱HSD燃料である。従って、サンプル1は、その他のサンプル全体で色の変化を比較するための視覚的な基準値として用意した。色の濃い燃料は、液体燃料の分解及びコークス生成を示す傾向があった。添加剤配合物なしで加熱した2つのサンプル、サンプル2及び3は、容器の底の金属表面上にコークス生成を示した。見てわかるように、加熱し、空気に曝したHSD燃料であるサンプル2は、サンプル1のきれいな未加熱HSD燃料の薄黄色に比べてより濃い茶色であった。サンプル2の燃料はまた、サンプル1の燃料ほど透明ではなかった。同様に、加熱し、ステンレス鋼に曝したHSD燃料であるサンプル3(右端のビーカー)もまた、サンプル1のきれいな未加熱HSD燃料の薄黄色に比べてより濃い茶色であった。やはり、サンプル3の燃料はサンプル1の燃料ほど透明ではなかった。
【0034】
サンプル2及び3の色及び透明度は非常に類似しているため、液体燃料の分解及びコークス生成について、空気への曝露に由来するものとステンレス鋼への曝露に由来するものとの比に関して特定の結論を引き出すことは出来なかった。しかしながら、右から2番目、サンプル2と3の間に位置するサンプル4のHSD燃料・添加剤混合物は、無添加剤加熱サンプルほど濃くも、茶色くも、不透明でもなかったことがわかる。サンプル4は、サンプル2及び3と同じ温度で且つ同じ期間だけ空気及びステンレス鋼の両者に曝したが、基準値のサンプル1にかなり類似した色と透明度を有していた。色及び透明度の変化が少ないことは、サンプル4における液体燃料の分解及びコークス生成が少なかったことを示している。3成分添加剤配合物を有するサンプルは、添加剤なしで熱、空気、金属、及び圧力に曝された両方のサンプルよりも明らかに良い結果が得られた。3成分添加剤配合物は、二元燃料ガスタービンの液体燃料供給システム内で燃料がおかれるであろう状態と同様の状態でHSD燃料における液体燃料の分解及びコークス生成を抑制するのに効果的であった。
【0035】
本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本発明を限定するものではない。本明細書で開示する範囲は、包括的で組み合わせ可能である(例えば、「約25vol%以下、より具体的には、約5vol%〜約20vol%」という範囲は、両端点を含み、「約5vol%〜約25vol%」の範囲の中間値全てを含む)。「組み合わせ」とは、配合物、混合物、合金、反応生成物等を含む。更に、「第1」「第2」等の用語は、いかなる順序、量、重要性を示すものではなく、1つの要素を他の要素と区別するために使用され、「1つの」という冠詞は、量を限定するのではなく、関連要素が少なくとも1つ以上あることを示す。量に関して使用される修飾語「約」は、記載された値を含み、文脈によって趣意が決まる(例えば、特定の量の測定に関連する誤差を含む)。本明細書の接尾辞「(s)」は、修飾する用語の単数と複数両方を含むことを意味し、その用語を1つ以上含む(例えば、「colorant(s)」は、1つ以上の着色剤を含む)。本明細書を通して言及する「一実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」等は、その実施形態に関連して記載される特定の要素(例えば、特性、構造及び/又は特徴)が本明細書の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、その他の実施形態に存在しても存在しなくても良い。また、記載されている要素は、各実施形態で好適な態様に組み合わせても良いことを理解されたい。
【0036】
特に定義されない限り、本明細書で使用する全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の実施形態が属する技術の当業者に一般的に理解される意味と同じである。更に、一般的な辞書で定義される用語等の専門用語は、関連する発明や本発明の文脈での意味と一致する意味を有するものとして解釈され、本明細書で明確に定義されない限り、想像上の意味や過度に形式的な意味で解釈されるものではないことを理解されたい。
【0037】
限られた数の実施形態のみに関連して本発明を詳細に記載してきたが、本発明が開示の実施形態に限定されないことは容易に理解されたい。むしろ、本発明は、本明細書に記載されていないが、本発明の精神及び範囲に相応する様々な変形、変更、置換、等価物を組み込んで修正することが可能である。また、本発明の様々な実施形態を記載してきたが、本発明の態様は、記載した実施形態のいくつかのみを含むことを理解されたい。従って、本発明は、前述の説明に限定されるものと理解されるのではなく、添付の特許請求の範囲に限定されるだけである。
【符号の説明】
【0038】
10 二元燃料タービン
20 液体燃料供給システム
22 液体燃料源
24 停止弁
26 液体燃料ポンプ
28 燃料フィルタ
30 燃料流量分配器
34 逆止弁
50 添加剤噴射システム
52 貯蔵タンク
54 混合装置
56 停止弁
58 計量オリフィス
60 再循環ポンプ
62 ソレノイド弁
64 第2の停止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(10)であって、
液体燃料を前記ガスタービンの燃焼システムに供給するように構成された液体燃料供給システム(20)と、
前記液体燃料供給システムと流体連通する添加剤噴射システム(50)であって、添加剤配合物を前記液体燃料と混合するように構成されて、前記液体燃料供給システムにおけるコークス生成を抑制するように構成された液体燃料・添加剤混合物を形成する前記添加剤噴射システム(50)とからなる、
ガスタービン(10)。
【請求項2】
前記添加剤噴射システム(50)は、
前記添加剤配合物を保持するように構成され、前記液体燃料供給システムの主液体燃料管と流体連通する貯蔵タンク(52)と、
前記貯蔵タンク内に配置されて、前記液体燃料を前記添加剤配合物と混合し、前記液体燃料・添加剤混合物を形成するように構成された混合装置(54)と、
前記貯蔵タンク及び前記主液体燃料管と流体連通し、前記液体燃料・添加剤混合物を前記液体燃料供給システムにポンプ輸送するように構成されたポンプ(60)とからなる、請求項1に記載のガスタービン(10)。
【請求項3】
前記添加剤噴射システム(50)は、前記主液体燃料管と前記貯蔵タンク(52)の間で流体連通して配置され、前記貯蔵タンクへの前記液体燃料の流れを許容又は阻止するように構成された第1停止弁(56)と、前記主液体燃料管と前記ポンプ(60)の間で流体連通して配置され、前記液体燃料供給システムへの前記液体燃料・添加剤混合物の流れを許容又は阻止するように構成された第2停止弁(64)とを更に含む、請求項2に記載のガスタービン(10)。
【請求項4】
前記添加剤噴射システム(50)は、前記第1停止弁(56)と前記貯蔵タンク(52)の間で流体連通して配置され、前記貯蔵タンクへの液体燃料流量を制御することによって、前記液体燃料・添加剤混合物中の前記添加剤配合物の濃度を制御するように構成された計量オリフィス(58)を更に含む、請求項3に記載のガスタービン(10)。
【請求項5】
前記添加剤噴射システム(50)は、前記第1停止弁(56)及び前記第2停止弁(64)並びに前記計量オリフィス(58)と動作通信し、前記添加剤噴射システムの動作を制御するように構成された制御システムを更に含む、請求項4に記載のガスタービン(10)。
【請求項6】
前記添加剤配合物は、酸化防止剤、ポリマー抑制剤、及び金属不活性剤からなる、請求項1に記載のガスタービン(10)。
【請求項7】
二元燃料タービン(10)の液体燃料供給システム(20)におけるコークス生成を抑制するための方法であって、
添加剤配合物を添加剤噴射システム(50)内で液体燃料と混合して液体燃料・添加剤混合物を形成するステップにおいて、前記添加剤配合物はコーキングを抑制するように構成され、前記添加剤噴射システムは前記液体燃料供給システムと流体連通するステップと、
前記液体燃料・添加剤混合物を前記液体燃料供給システムに噴射するステップとからなる、
方法。
【請求項8】
前記二元燃料タービン(10)の液体燃料運転から気体燃料運転への移行前に前記添加剤噴射システム(50)を作動させるステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
液体燃料運転から気体燃料運転への前記移行前に、前記添加剤配合物を前記液体燃料と実質的に完全に混合して、前記液体燃料・添加剤混合物を形成するのに効果的な時間だけ、前記添加剤噴射システム(50)を作動させるステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液体燃料・添加剤混合物の形成後且つ液体燃料運転から気体燃料運転への前記移行前又はそれと同時に前記添加剤噴射システム(50)を停止させるステップを更に含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−99440(P2011−99440A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−247311(P2010−247311)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】