説明

コージェネレーションシステム

【課題】 エンジンの運転状態を適切に管理することで、無駄な燃料消費が少なく、しかも、運転開始時刻からエンジンにて適切に熱供給を行うことが可能となるコージェネレーションシステムを提供する。
【解決手段】 発電装置を駆動するエンジン1と、そのエンジン1の排熱を回収する排熱回収手段と、各部の運転を制御する運転制御手段とが設けられ、その運転制御手段が、起動前のエンジン1の温度が基準温度よりも高い場合には、運転開始時刻又はそれに近い時刻にて、直ちに定格運転に移行する形態でエンジン1の運転を制御し、エンジン1の温度が基準温度よりも低い場合には温度の差が大きいほど長い時間となる補正時間だけ早い暖機運転開始時刻を求めてその時刻にてエンジン暖機運転の実行を開始し、その後、定格運転に移行する形態で、エンジン1の運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置を駆動するエンジンと、そのエンジンの排熱を回収する排熱回収手段と、各部の運転を制御する運転制御手段とが設けられ、その運転制御手段が、設定された運転開始時刻に基づいて前記エンジンの運転を制御するように構成されているコージェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のコージェネレーションシステムは、エンジンにて発電装置を駆動して電力負荷を賄うようにしながら、エンジンの排熱を回収して、例えば暖房負荷としての暖房装置を加熱するようにしたり給湯用の湯を貯湯させること等ができるようにしたものであるが、このようなコージェネレーションシステムにおいて、従来では、次のように構成したものがあった。
【0003】
例えば、上記したような暖房負荷としての暖房装置等を使用するための運転開始時刻を予め使用者が予約設定することが可能なように構成されており、使用者が運転開始時刻を予約設定しているような場合において、その運転開始時刻よりも所定時間前の時刻になるとエンジンのアイドリング運転を開始することにより、前記運転開始時刻においては、エンジンを定格運転して、エンジンの排熱を回収して暖房装置を使用する暖房負荷に熱供給を行えるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−138298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来構成においては、前記運転開始時刻よりも所定時間前にエンジン暖機運転(定格運転が可能な状態となるようにエンジンを暖める運転)を開始するものであるから、次のような不利があった。
すなわち、上記従来構成では、エンジンの温度が、エンジン暖機運転を行わなくても直ちに定格運転に移行することが可能な高い温度になっている場合であっても、前記運転開始時刻よりも所定時間前にエンジン暖機運転を開始するので、不必要なエンジン暖機運転を行うことにより無駄に燃料を消費する不利がある。又、エンジンの温度が低い場合に、前記運転開始時刻よりも所定時間前にエンジン暖機運転を開始しても、運転開始時刻においてエンジンが充分に暖機していないことがあり、エンジン暖機運転の時間が不足して、運転開始時刻になっても暖房負荷に熱供給を行うことができず、暖房が行えない状態になるおそれがあった。
【0006】
要するに、上記従来構成においては、常に一定の前記所定時間だけエンジン暖機運転を行うものであるから、起動前のエンジンの温度の違いによりエンジン暖機運転の時間に過不足を生じるものであり、エンジン暖機運転が必要以上に長く行われて燃料が無駄になったり、暖機運転が短か過ぎて前記運転開始時刻からエンジンを定格運転させることができないものとなる等の不利があった。
【0007】
本発明の目的は、エンジンを適正なタイミングでエンジン暖機運転を開始することにより、運転開始時刻から良好にエンジンを定格運転することが可能となるコージェネレーションシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコージェネレーションシステムは、発電装置を駆動するエンジンと、そのエンジンの排熱を回収する排熱回収手段と、各部の運転を制御する運転制御手段とが設けられ、その運転制御手段が、設定された運転開始時刻に基づいて前記エンジンの運転を制御するように構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高い場合には、前記運転開始時刻又はそれに近い時刻にて、直ちに定格運転に移行する形態で前記エンジンの運転を制御し、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低い場合には、前記運転開始時刻よりも前記エンジンの温度と前記暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きいほど長い時間となる補正時間だけ早い暖機運転開始時刻を求めて、その暖機運転開始時刻にてエンジン暖機運転の実行を開始し、その後、定格運転に移行する形態で、前記エンジンの運転を制御するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、起動前のエンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高い場合には、運転開始時刻又はそれに近い時刻にてエンジンを直ちに定格運転に移行する形態でエンジンの運転が制御されることになる。すなわち、エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高いときには、エンジン暖機運転(定格運転が可能な状態となるようにエンジンを暖める運転)を行うことなく直ちに定格運転に移行するから、無駄な燃料の消費を抑えて、運転開始時刻から定格運転を行うことにより排熱回収手段はエンジンの排熱を回収することが可能となる。
【0010】
又、前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低い場合には、エンジンの温度と暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きいほど長い時間となる補正時間だけ早い暖機運転開始時刻を求めて、その暖機運転開始時刻にてエンジン暖機運転の実行を開始することになる。
【0011】
すなわち、エンジン暖機運転を行う時間に相当する補正時間は、起動前のエンジンの温度と前記暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きいほど長い時間となるものであるから、起動前のエンジンの温度に対応した適切なタイミングでエンジン暖機運転を開始することができる。
【0012】
例えば、起動前のエンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、エンジンの温度と暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きい場合には、補正時間が長くなるから、長い時間にわたってエンジン暖機運転が行われることになり、その後は定格運転に移行するので、前記運転開始時刻においては、エンジンが充分に暖機されており、運転開始時刻からエンジンを適正に定格運転することができ、排熱回収手段はエンジンの排熱を回収することが可能となる。
【0013】
又、起動前のエンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、エンジンの温度と暖機運転要否判別用の基準温度との差が小さい場合には、前記補正時間が短いので、エンジン暖機運転が行う時間が短いものとなるから、不必要に長くエンジン暖機運転を行うことがなく、エンジンが無駄に燃料消費することがない。
【0014】
従って、エンジンを適正なタイミングでエンジン暖機運転を開始することにより、運転開始時刻から良好にエンジンを定格運転することが可能となるコージェネレーションシステムを提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、
前記エンジンを冷却するエンジン冷却用熱媒を加熱する加熱手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、且つ、起動可否判別用の基準温度よりも高い場合は、
前記エンジン暖機運転として、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、前記補正時間としてアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成され、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が前記起動可否判別用の基準温度よりも低い場合は、
前記エンジン暖機運転として、前記エンジンの回転停止状態で前記加熱手段にて前記エンジン冷却用熱媒を加熱する熱媒加熱式のエンジン暖機運転を前記エンジンの温度が前記起動可否判別用の基準温度よりも高くなるまで実行し、次に、前記アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、前記補正時間として熱媒加熱式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転の夫々を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、起動前のエンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、且つ、起動可否判別用の基準温度よりも高い場合は、エンジンを回転させて起動させることが可能であるから、エンジン暖機運転としてアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するのである。つまり、エンジンを始動させて無負荷状態でエンジンを回転させて暖機する。しかも、前記補正時間としてアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されているから、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するのに適した時間だけ早くエンジン暖機運転を開始することになる。
【0017】
そして、起動前のエンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低い場合は、例えば、エンジンオイルの粘度が高くエンジンを回転させて起動させることが難しい状態であるから、エンジンの回転停止状態で加熱手段にてエンジン冷却用熱媒を加熱する熱媒加熱式のエンジン暖機運転を行うことによりエンジンの暖機を行い、エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも高くなると、エンジンを始動させることが可能であるからアイドリング状態でのエンジン暖機運転を行うのである。
【0018】
しかも、前記補正時間として、熱媒加熱式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転の夫々を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されているから、熱媒加熱式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転の夫々を実行するのに適した時間だけ早くエンジン暖機運転を開始することになる。
【0019】
従って、エンジンの温度の検出結果に基づいて、エンジンの温度に応じた適切な種類のエンジン暖機運転を行うことができ、しかも、そのときのエンジン暖機運転を実行するのに適した時間だけ早くエンジン暖機運転を開始することになり、運転開始時刻からエンジンにて適切に熱供給を行うことが可能となるのである。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、
前記排熱回収手段が、
湯水を貯留する貯湯タンクと、湯水通流路を通して前記貯湯タンク内の湯を循環通流させる循環通流手段と、熱媒循環路を通して循環通流させる前記エンジン冷却用熱媒と前記湯水通流路を通して循環通流される湯水との間で熱交換する排熱回収用熱交換器と、前記貯湯タンクを迂回させる状態で前記排熱回収用熱交換器を通過するように湯水を循環通流させる迂回通流路と、この迂回通流路を通して循環通流する湯水を加熱する補助加熱手段とを備えて、前記貯湯タンク内の湯水を前記排熱回収用熱交換器を通過するように前記湯水通流路を通して循環通流させる貯湯温水循環状態と、前記補助加熱手段にて加熱しながら前記迂回通流路を通して湯水を循環通流する加熱温水循環状態とに切り換え自在に構成され、且つ、前記加熱手段を兼用するように構成され、
前記貯湯タンク内に貯留される湯水の温度を検出する湯温検出手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、前記湯温検出手段にて検出される前記湯水の温度が設定温度より高い場合は、前記熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、前記排熱回収手段を前記貯湯温水循環状態に切り換えて、前記エンジンの回転停止状態において前記貯湯タンク内の湯水とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによって前記エンジン冷却用熱媒を加熱する貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成され、
前記エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、前記湯温検出手段にて検出される前記湯水の温度が設定温度より低い場合は、前記熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、前記排熱回収手段を前記加熱温水循環状態に切り換えて、前記エンジンの回転停止状態において前記補助加熱手段にて加熱した湯と前記エンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによって前記エンジン冷却用熱媒を加熱する加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成されている点にある。
【0021】
第3特徴構成によれば、エンジンが定格運転を行っている状態では、熱媒循環路を通して循環通流させるエンジン冷却用熱媒と湯水通流路を通して循環通流される湯水との間で熱交換することで、エンジン冷却用熱媒が保有するエンジンの排熱によって湯水が加熱され、加熱された湯水が貯湯タンクに貯湯される。
【0022】
そして、エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、湯温検出手段にて検出される湯水の温度が設定温度より高い場合は、排熱回収手段を貯湯タンク内の湯水を前記排熱回収用熱交換器を通過するように前記湯水通流路を通して循環通流させる貯湯温水循環状態に切り換えて、エンジンの回転停止状態において貯湯タンク内の湯水とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱する貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行するのである。つまり、エンジンの排熱を回収して貯湯タンクに貯湯されている湯水の熱によってエンジンを暖機するのである。
【0023】
又、エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、湯温検出手段にて検出される湯水の温度が設定温度より低い場合は、排熱回収手段を補助加熱手段にて加熱しながら迂回通流路を通して湯水を循環通流する加熱温水循環状態に切り換えて、エンジンの回転停止状態において補助加熱手段にて加熱した湯とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱する加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行するのである。つまり、補助加熱手段にて加熱しながら循環通流する湯水の熱によってエンジンを暖機するのである。
【0024】
このようにして、湯水が貯湯される貯湯タンクの構成並びに湯水を循環通流するように構成された排熱回収手段の構成を有効利用して、簡単な構成で熱媒加熱式のエンジン暖機運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかるコージェネレーションシステムの実施形態について図面に基づいて説明する。
このコージェネレーションシステムは、図1および図2に示すように、エンジン1によって発電装置2を駆動するように構成された熱電併給装置3と、その熱電併給装置3にて発生する熱を利用しながら、貯湯タンク4への貯湯および熱消費端末5への熱媒供給を行う貯湯ユニット6と、熱電併給装置3および貯湯ユニット6の運転を制御する運転制御手段としての運転制御部7などから構成されている。
【0026】
前記発電装置2の出力側には、系統連系用のインバータ8が設けられ、そのインバータ8は、発電装置2の出力電力を商用系統9から供給される電力と同じ電圧および同じ周波数にするように構成されている。前記商用系統9は、例えば、単相3線式100/200Vであり、商業用電力供給ライン10を介して、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの電力負荷11に電気的に接続されている。
【0027】
また、インバータ8は、コージェネ用供給ライン12を介して商業用電力供給ライン10に電気的に接続され、発電装置2からの発電電力がインバータ8およびコージェネ用供給ライン12を介して電力負荷11に供給するように構成されている。
【0028】
前記商業用電力供給ライン10には、電力負荷11の負荷電力を計測する電力負荷計測手段13が設けられ、この電力負荷計測手段13は、商業用電力供給ライン10を通して流れる電流に逆潮流が発生するか否かをも検出するように構成されている。そして、逆潮流が生じないように、インバータ8により発電装置2から商業用電力供給ライン10に供給される電力が制御され、発電電力の余剰電力は、その余剰電力を熱に代えて回収する電気ヒータ14に供給されるように構成されている。
【0029】
前記電気ヒータ14は、複数の電気ヒータから構成され、冷却用熱媒循環ポンプ17の作動により熱媒循環路15を通流するエンジン冷却用熱媒を加熱することが可能なように設けられ、インバータ8の出力側に接続された作動スイッチ16によりON/OFFが切り換えられている。また、作動スイッチ16は、余剰電力の大きさが大きくなるほど、電気ヒータ14の消費電力が大きくなるように、余剰電力の大きさに応じて電気ヒータ14の消費電力を調整するように構成されている。
【0030】
前記エンジン1には、エンジン1の内部における潤滑油の温度を検出することにより、エンジン1の温度を検出するエンジン温度検出センサS1が設けられている。又、排気ガスが通流する排ガス通路内には、排気ガス中の酸素濃度を検出することによってエンジン1における燃焼状態が良好に行われているか否か、換言すると不完全燃焼しているか否かを検出するための酸素センサS2も設けられている。
【0031】
前記貯湯ユニット6は、温度成層を形成する状態で湯水を貯湯する貯湯タンク4、湯水通流路18を通して貯湯タンク4内の湯水などを循環させる循環通流手段としての湯水循環ポンプ19、熱媒循環路20を通して熱媒を熱消費端末5に循環供給させる熱媒循環手段としての熱媒循環ポンプ21、湯水通流路18を通流する湯水を加熱させる排熱回収用熱交換器22、熱媒循環路20を通流する熱媒を加熱させる熱媒加熱用熱交換器23、ファン24を作動させた状態でのバーナ25の燃焼により湯水通流路18を通流する湯水を加熱させる補助加熱用熱交換器26などを備えて構成されている。
【0032】
前記排熱回収用熱交換器22においては、熱電併給装置3にて発生する熱を回収した熱媒循環路15の冷却水を通流させることにより、湯水通流路18を通流する湯水を加熱させるように構成されている。そして、排熱式加熱手段Nが、排熱回収用熱交換器22により構成され、補助加熱手段Mが、ファン24、バーナ25、補助加熱用熱交換器26により構成されている。ちなみに、補助加熱手段Mは、バーナ25の燃焼量を調整することにより、湯水の温度が貯湯設定温度や熱媒加熱用熱交換器23に供給するための熱媒加熱用設定温度、更には、後述するようなエンジン暖機用設定温度等になるように加熱させるように構成されている。
【0033】
前記熱媒加熱用熱交換器23においては、排熱回収用熱交換器22や補助加熱用熱交換器26にて加熱された熱源用湯水を通流させることにより、熱媒循環路20を通流する熱媒を加熱させるように構成されている。前記熱消費端末5は、床暖房装置や浴室暖房装置などの暖房端末にて構成されている。
【0034】
前記湯水通流路18には、貯湯タンク4の下部と連通する取り出し路27と貯湯タンク4の上部と連通する貯湯路28が接続され、貯湯路28には、貯湯弁29が設けられている。湯水通流路18には、取り出し路27との接続箇所から湯水の循環方向の順に、排熱回収用熱交換器22、湯水循環ポンプ19、補助加熱用熱交換器26が設けられ、この湯水通流路18に連なる暖房用通流路35には、湯水の通流を断続する断続弁30、熱媒加熱用熱交換器23が設けられている。
【0035】
前記湯水通流路18における排熱回収用熱交換器22より湯水の循環方向上手側箇所と、補助加熱用熱交換器26の湯水の循環方向下手側箇所とを接続する迂回通流路33が設けられ、その迂回通流路33には湯水の通流を断続する断続弁34が設けられている。また、貯湯タンク4から取り出した湯水を給湯するときの給湯熱負荷を計測する給湯熱負荷計測手段31が設けられ、熱消費端末5での端末熱負荷を計測する端末熱負荷計測手段32も設けられている。
【0036】
前記貯湯タンク4には、その貯湯タンク4内に貯留されている湯水の温度を検出するための湯温検出手段としての貯湯温度センサS3が設けられている。
【0037】
そして、運転制御部7は、熱電併給装置3の運転中には冷却用熱媒循環ポンプ17を作動させる状態で、熱電併給装置3の運転および冷却用熱媒循環ポンプ17の作動状態を制御するとともに、湯水循環ポンプ19、熱媒循環ポンプ21、断続弁30、断続弁34等の作動状態を制御することによって、貯湯タンク4内に湯水を貯湯する貯湯運転や、暖房スイッチのON操作により熱消費端末5に熱媒を供給する熱媒供給運転を行うように構成されている。
【0038】
ちなみに、給湯するときには、貯湯タンク4内に貯湯用設定温度の湯水が貯湯されていれば、その湯水を給湯し、貯湯タンク4内に貯湯用設定温度の湯水が貯湯されていなければ、補助加熱手段Mを作動させて、その補助加熱手段Mにて加熱された湯水を給湯するように構成されている。
【0039】
従って、この実施形態では、貯湯タンク4と、湯水通流路18、湯水循環ポンプ19、熱媒循環路15、排熱回収用熱交換器22、迂回通流路33、補助加熱手段M等により、エンジン1の排熱を回収する排熱回収手段が構成されるが、この排熱回収手段は、後述するように、エンジン冷却用熱媒を加熱する加熱手段を兼用する構成となっている。
【0040】
前記運転制御部7による熱電併給装置3の運転の制御について説明を加える。
前記運転制御部7は、実際の使用状況に基づいて、1日分の時系列的な過去負荷データを曜日と対応付ける状態で更新して記憶するデータ更新処理を行い、日付が変わるごとに、記憶されている1日分の時系列的な過去負荷データから、その日1日分の時系列的な予測負荷データを求める予測負荷演算処理を行い、その予測負荷データから熱電併給装置3の運転パターンを設定する運転パターン設定処理を行うように構成されている。
【0041】
前記データ更新処理について説明を加えると、1日のうちのどの時間帯にどれだけの電力負荷、熱負荷としての給湯熱負荷と端末熱負荷があったかの1日分の時系列的な過去負荷データを曜日と対応付ける状態で更新して記憶するように構成されている。
【0042】
まず、時系列的な過去負荷データについて説明すると、時系列的な過去負荷データは、時系列的な電力負荷データ、時系列的な給湯熱負荷データ、時系列的な端末熱負荷データの3種類の時系列的な負荷データからなり、図3に示すように、1日分の時系列的な過去負荷データが日曜日から土曜日までの曜日ごとに区分けした状態で記憶するように構成されている。
【0043】
そして、1日分の時系列的な過去負荷データは、24時間のうち1時間を単位時間として、単位時間当たりの電力負荷データの24個、単位時間当たりの給湯熱負荷データの24個、および、単位時間当たりの端末熱負荷データの24個から構成されている。
【0044】
上述のような過去負荷データを更新する構成について説明を加えると、実際の使用状況から、単位時間当たりの実電力負荷、実給湯熱負荷、および、実端末熱負荷の夫々を、電力負荷計測手段13、給湯熱負荷計測手段31、および、端末熱負荷計測手段32にて計測し、その計測した実電力負荷、実給湯熱負荷、および、実端末熱負荷を記憶する状態で1日分の時系列的な実負荷データを曜日と対応付けて記憶させる。
【0045】
そして、1日分の時系列的な実負荷データが1週間分記憶されると、曜日ごとに、時系列的な過去負荷データと時系列的な実負荷データとを所定の割合で足し合わせることにより、新しい時系列的な過去負荷データを求めて、その求めた新しい時系列的な過去負荷データを記憶して、時系列的な過去負荷データを更新するように構成されている。
【0046】
日曜日を例に挙げて具体的に説明すると、図3に示すように、時系列的な過去負荷データのうち日曜日に対応する時系列的な過去負荷データD1mと、時系列的な実負荷データのうち日曜日に対応する時系列的な実負荷データA1とから、下記の〔数1〕により、日曜日に対応する新しい時系列的な過去負荷データD1(m+1)が求められ、その求められた時系列的な過去負荷データD1(m+1)を記憶する。
なお、下記の〔数1〕において、D1mを、日曜日に対応する時系列的な過去負荷データとし、A1を、日曜日に対応する時系列的な実負荷データとし、Kは、0.75の定数であり、D1(m+1)を、新しい時系列的な過去負荷データとする。
【0047】
〔数1〕
D1(m+1)=(D1m×K)+{A1×(1−K)}
【0048】
前記予測負荷演算処理について説明を加えると、0時になるなど日付が変わるごとに実行され、その日のどの時間帯にどれだけの電力負荷、給湯熱負荷、端末熱負荷が予測されているかの1日分の時系列的な予測負荷データを求めるように構成されている。
すなわち、曜日ごとの7つの過去負荷データのうち、その日の曜日に対応する過去負荷データと前日の実負荷データとを所定の割合で足し合わせることにより、どの時間帯にどれだけの電力負荷、給湯熱負荷、端末熱負荷が予測されているかのその日1日分の時系列的な予測負荷データを求めるように構成されている。
【0049】
月曜日1日分の予測負荷データを求める場合を例に挙げて具体的に説明すると、図3に示すように、曜日ごとの7つの過去負荷データD1m〜D7mと曜日ごとの7つの実負荷データA1〜A7とが記憶されているので、月曜日に対応する過去負荷データD2mと、前日の日曜日に対応する実負荷データA1とから、下記の〔数2〕により、月曜日の1日分の時系列的な予測負荷データBを求める。
【0050】
そして、1日分の予測負荷データBは、図4に示すように、1日分の時系列的な予測電力負荷データ、1日分の時系列的な予測給湯熱負荷データ、1日分の時系列的な予測端末熱負荷データからなり、図4の(イ)は、1日分の時系列的な予測電力負荷を示しており、図4の(ロ)は、1日分の時系列的な予測端末熱負荷を示しており、図4の(ハ)は、1日分の時系列的な予測給湯熱負荷を示している。
なお、下記の〔数2〕において、D2mを、月曜日に対応する過去負荷データとし、A1を、日曜日に対応する実負荷データとし、Qは、0.25の定数であり、Bは、予測負荷データとする。
【0051】
〔数2〕
B=(D2m×Q)+{A1×(1−Q)}
【0052】
次に、運転パターン設定処理について説明を加える。
先ず、時系列的な予測給湯熱負荷データを用いて、現時点から基準値用時間先までの間に必要となる貯湯必要量を賄えるように熱電併給装置3を運転させた場合に、熱電併給装置3を運転させることによって省エネルギー化を実現できる省エネ度を求める。
【0053】
例えば、単位時間を1時間とし、基準値用時間を12時間として説明を加えると、まず、時系列的な予測負荷データによる予測電力負荷、予測給湯熱負荷、および、予測端末熱負荷から、下記の〔数3〕により、図5に示すように、熱電併給装置3を運転させた場合の予測省エネ度を1時間ごとに12時間先までの12個分を求めるとともに、熱電併給装置3を運転させた場合に貯湯タンク3に貯湯することができる予測貯湯量を1時間ごとに12時間先までの12個分を求める。
【0054】
具体的に説明を加えると、現時点が0時であると、0時から1時まで熱電併給装置3を運転させた場合の予測省エネ度については、0時から1時までの予測電力負荷、予測給湯熱負荷、および、予測端末熱負荷から、下記の〔数3〕により求められ、0時から1時まで熱電併給装置3を運転させた場合の予測貯湯量についても、0時から1時までの予測電力負荷、予測給湯熱負荷、および、予測端末熱負荷から求められる。
このようにして、現時点が0時である場合には、1時間ごとの予測省エネ度と予測貯湯量とを12時までの12個分求めるようにしている。
【0055】
〔数3〕
省エネ度P={(EK1+EK2+EK3)/熱電併給装置3の必要エネルギー}×100
【0056】
ただし、EK1は、有効発電出力E1を変数とする関数であり、EK2は、有効暖房熱出力E2を変数とする関数であり、EK3は、有効貯湯熱出力E3を変数とする関数であり、
EK1=有効発電出力E1の発電所一次エネルギー換算値
=f1(有効発電出力E1,発電所での必要エネルギー)
EK2=有効暖房熱出力E2の従来給湯器でのエネルギー換算値
=f2(有効暖房熱出力E2,バーナ効率(暖房時))
EK3=有効貯湯熱出力E3の従来給湯器でのエネルギー換算値
=f3(有効貯湯熱出力E3,バーナ効率(給湯時))
熱電併給装置3の必要エネルギー:5.5kW
(熱電併給装置3を1時間稼動させたときに必要な都市ガス使用量を0.433m3とする)
発電所での必要エネルギー:2.8kW
バーナ効率(暖房時):0.8
バーナ効率(給湯時):0.9
【0057】
また、有効発電出力E1、有効暖房熱出力E2、有効貯湯熱出力E3の夫々は、下記の〔数4〕〜〔数6〕により求められる。
【0058】
〔数4〕
E1=電力負荷11での消費電力=熱電併給装置3の発電電力−(電気ヒータ14の消費電力+各種補機の消費電力)
ちなみに、各種補機とは、このコージェネレーションシステムで固有に補助的に用いられる装置や機械であり、冷却用熱媒循環ポンプ17や湯水循環ポンプ19などがこれに該当する。
【0059】
〔数5〕
E2=熱消費端末5での消費熱量
【0060】
〔数6〕
E3=(熱電併給装置3にて発生する熱量+電気ヒータ14の回収熱量−有効暖房熱出力E2)−放熱ロス
ただし、電気ヒータ14の回収熱量=電気ヒータ14の消費電力×ヒータの熱効率とする。
【0061】
そして、図5に示すように、1時間ごとの予測省エネ度および予測貯湯量を12個分求めた状態において、まず、時系列的な予測給湯熱負荷データから12時間先までに必要とされている予測必要貯湯量を求め、その予測必要貯湯量から現時点での貯湯タンク4内の貯湯量を引いて、12時間先までの間に必要となる必要貯湯量を求める。
例えば、予測給湯熱負荷データから12時間後に9.8kWの給湯熱負荷が予測されていて、現時点での貯湯タンク4内の貯湯量が2.5kWである場合には、12時間先までの間に必要となる必要貯湯量は7.3kWとなる。
【0062】
そして、単位時間の予測貯湯量を足し合わせる状態で、その足し合わせた予測貯湯量が必要貯湯量に達するまで、12個分の単位時間のうち、予測省エネ度の数値が高いものから選択していくようにしている。
【0063】
説明を加えると、例えば、上述の如く、必要貯湯量が7.3kWである場合には、図5に示すように、まず、予測省エネ度の一番高い7時間先から8時間先までの単位時間を選択し、その単位時間における予測貯湯量を足し合わせる。次に予測省エネ度の高い6時間先から7時間先までの単位時間を選択し、その単位時間における予測貯湯量を足し合わせて、そのときの足し合わせた予測貯湯量が1.1kWとなる。また次に予測省エネ度の高い5時間先から6時間先までの単位時間を選択し、その単位時間における予測貯湯量を足し合わせて、そのときの足し合わせた予測貯湯量が4.0kWとなる。
【0064】
このようにして、予測省エネ度の数値が高いものからの単位時間の選択と予測貯湯量の足し合わせを繰り返していくと、図5に示すように、8時間先から9時間先までの単位時間を選択したときに、足し合わせた予測貯湯量が7.3kWに達する。従って、この図5に示す例では、5時から11時までの時間帯が省エネ度が高い運転時間帯として求められる。つまり、この場合には、5時が設定された運転開始時刻に対応することになる。
尚、この場合には、12時に達すると、さらに、次の12時間について上記したような省エネ度の演算を行うことになる。
【0065】
前記運転制御部7は、エンジン温度検出センサS1にて検出される起動前のエンジン1の温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高い場合には、前記運転開始時刻又はそれに近い時刻にて、直ちに定格運転に移行する形態でエンジン1の運転を制御し、エンジン温度検出センサS1にて検出される起動前のエンジン1の温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低い場合には、前記運転開始時刻よりもエンジン1の温度と暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きいほど長い時間となる補正時間だけ早い暖機運転開始時刻を求めて、その暖機運転開始時刻にてエンジン暖機運転(定格運転が可能な状態となるようにエンジンを暖める運転)の実行を開始し、その後、定格運転に移行する形態で、エンジン1の運転を制御するように構成されている。
【0066】
そして、前記運転制御部7は、エンジン温度検出センサS1にて検出される起動前のエンジン1の温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、且つ、起動可否判別用の基準温度よりも高い場合は、前記エンジン暖機運転として、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、前記補正時間としてアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されている。又、エンジン温度検出センサS1にて検出される起動前のエンジン1の温度が起動可否判別用の基準温度よりも低い場合は、エンジン暖機運転として、エンジン1の回転停止状態で加熱手段としての排熱回収手段にてエンジン冷却用熱媒を加熱する熱媒加熱式のエンジン暖機運転をエンジン1の温度が起動可否判別用の基準温度よりも高くなるまで実行し、次に、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、補正時間として熱媒加熱式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転の夫々を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されている。
【0067】
又、運転制御部7は、エンジン1の温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、貯湯温度センサS3にて検出される湯水の温度が設定温度より高い場合は、熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、貯湯タンク4内の湯水を排熱回収用熱交換器22を通過するように湯水通流路18を通して循環通流させる貯湯温水循環状態に切り換えて、エンジン1の回転停止状態において貯湯タンク4内の湯水とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱する貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成され、エンジン1の温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、貯湯温度センサS3にて検出される湯水の温度が設定温度より低い場合は、熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、補助加熱手段Mにて加熱しながら迂回通流路33を通して湯水を循環通流する加熱温水循環状態に切り換えて、エンジン1の回転停止状態において補助加熱手段Mにて加熱した湯とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱する加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成されている。
【0068】
以下、運転制御部7におけるエンジン制御の具体的な動作について説明する。尚、このエンジン制御は設定単位時間毎に繰り返し実行されることになる。
図7、図8に示すように、エンジン温度検出センサS1にて検出されるエンジン1の温度T1が前記暖機運転要否判別用の基準温度としての第1判定温度Ta1(50℃)より高い場合は、エンジン1の運転を開始する開始時刻t’として、上記した運転パターン設定処理にて設定された運転開始時刻tと同じ時刻を設定する(ステップ1、2)。
【0069】
エンジン温度検出センサS1にて検出されるエンジン1の温度T1が第1判定温度Ta1(50℃)よりも低く、且つ、エンジン起動可否判別用の基準温度として設定されている第2判定温度Ta2(10℃)よりも高い場合には、開始時刻t’として、上記した運転パターン設定処理にて設定された運転開始時刻tに対して設定時間だけ早めるための時刻補正処理を実行する(ステップ3、4)。つまり、t’=t−a(Ta1−T1)で求めて補正した時刻t’を開始時刻として設定する(図6参照)。つまり、a(Ta1−T1)で求められる時間が、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間であり、エンジン1の温度と暖機運転要否判別用の基準温度(第1判定温度Ta1)との差から求められる補正時間である。このときは、第1判定温度Ta1との温度偏差は小さいので、補正時間が短いものとなる。但し、「a」は所定の係数である。
【0070】
そして、エンジン温度検出センサS1にて検出されるエンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも低く、且つ、貯湯温度センサS3にて検出される貯湯タンク4内の湯水の温度T2が設定温度Tb(60℃)よりも高い場合には、開始時刻t’として、上記した運転パターン設定処理にて設定された運転開始時刻tに対して設定時間だけ早めるための時刻補正処理を実行する(ステップ5、6)。つまり、t’=t−b(Ta1−T1)で求めて補正した時刻t3を開始時刻として設定する(図6参照)。つまり、b(Ta1−T1)で求められる時間が、後述するような貯湯温水循環式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間であり、エンジン1の温度と暖機運転要否判別用の基準温度(第1判定温度Ta1)との差から求められる補正時間である。このときは、第1判定温度Ta1との温度偏差は大きいので、補正時間が長いものとなる。但し、「b」は所定の係数である。
【0071】
前記エンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも低く、且つ、貯湯温度センサS3にて検出される貯湯タンク4内の湯水の温度T2が設定温度Tbよりも低い場合には、開始時刻t’として、上記した運転パターン設定処理にて設定された運転開始時刻tに対して設定時間だけ早めるための時刻補正処理を実行する(ステップ7)。つまり、t’=t−c(Ta1−T1)で求めて補正した時刻t’を開始時刻として設定する(図6参照)。つまり、c(Ta1−T1)で求められる時間が、後述するような加熱温水循環式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間であり、エンジン1の温度と暖機運転要否判別用の基準温度(第1判定温度Ta1)との差から求められる補正時間である。このときは、第1判定温度Ta1との温度偏差は大きいので、補正時間が長いものとなる。但し、「c」は所定の係数である。図6では、貯湯温水循環式のエンジン暖機運転の場合と同じ時間を例示しているが、それらは異なる時間になることがある。
【0072】
そして、開始時刻t’において、エンジン1の温度T1が第1判定温度Ta1よりも高ければ、図示しないセルモータを用いてエンジン1を始動させて直ちに定格運転に移行する(ステップ8、9、10、11)。つまり、エンジン1を始動させて、その後直ぐに定格運転を行う運転状態とするのである。この定格運転によって発電装置2を駆動するとともに排熱回収用熱交換器22にてエンジン排熱を回収する通常の熱電併給運転状態にすることができる。その後、運転時間帯の運転終了時刻に至るとエンジン1を停止させる(ステップ12、13)。
【0073】
前記開始時刻t’において、前記エンジン1の温度T1が第1判定温度Ta1よりも低く、且つ、第2判定温度Ta2よりも高い場合には、エンジン1を始動させて、発電装置2を駆動しない無負荷状態でのアイドリング運転を行ってエンジン1の暖機を行う(ステップ14、15、16)。そして、酸素センサS2の出力が適正に得られることが確認されるとアイドリング運転を終了して定格運転に移行する(ステップ17)。
【0074】
前記開始時刻t’において、前記エンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも低く、且つ、貯湯温度センサS3にて検出される貯湯タンク4内の湯水の温度T2が設定温度Tb(60℃)よりも高ければ、貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行する(ステップ18、19)。
【0075】
この貯湯温水循環式のエンジン暖機運転は、エンジン1を始動させずに停止状態を維持したままで、前記貯湯タンク4内の湯水を排熱回収用熱交換器22を通過するように湯水通流路18を通して循環通流させる貯湯温水循環状態に切り換えて、貯湯タンク4内の湯水とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱するものである。
【0076】
具体的には、図9に示すように、貯湯弁29を開弁させ断続弁30及び断続弁34を閉弁させた状態で湯水循環ポンプ19を作動させて、貯湯タンク4内の湯水を湯水通流路を通して循環通流させる。一方、冷却用熱媒循環ポンプ17を作動させてエンジン冷却用熱媒を循環通流させる。その結果、貯湯タンク4内の湯水が保有する熱によってエンジン冷却用熱媒が加熱され、エンジン1が暖機されることになる。
【0077】
前記貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行しているときに、前記エンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも高くなると、その貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を停止して(ステップ20)、エンジン1を始動させてアイドリング運転を行う。その後は、上述したように定格運転に移行する。
【0078】
前記開始時刻t’において、前記エンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも低く、且つ、貯湯温度センサS2にて検出される貯湯タンク4内の湯水の温度T2が設定温度Tbよりも低ければ、加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行する(ステップ21)。
【0079】
この加熱温水循環式のエンジン暖機運転は、エンジン1を始動させない状態で、補助加熱手段Mにて加熱しながら迂回通流路33を通して湯水を循環通流する加熱温水循環状態に切り換えて、補助加熱手段Mにて加熱した湯とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによってエンジン冷却用熱媒を加熱するものである。
【0080】
具体的には、図10に示すように、貯湯弁29及び断続弁30を閉弁させ、断続弁34を開弁させて迂回通流路33を通過して湯水が循環通流する状態に切り換えた状態で湯水循環ポンプ19を作動させて、迂回通流路33、補助加熱手段M及び排熱回収用熱交換器22を通過する状態で湯水を循環通流させる。そのとき、循環通流する湯水の温度がエンジン暖機用設定温度(例えば、70℃)になるように補助加熱手段Mによって加熱する補助加熱処理を合わせて実行する。一方、冷却用熱媒循環ポンプ17を作動させてエンジン1の冷却用熱媒を循環通流させる。その結果、補助加熱手段Mによって加熱された高温の湯が保有する熱によってエンジン1の冷却用熱媒が加熱され、エンジン1が暖機されることになる。
【0081】
前記加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行しているときに、エンジン1の温度T1が第2判定温度Ta2よりも高くなると、その加熱温水循環式のエンジン暖機運転を停止して(ステップ22)、エンジン1を始動させてアイドリング運転に移行する。その後は、上述したように定格運転に移行する。
【0082】
この実施形態では、暖機運転要否判別用の基準温度として50℃を設定し、起動可否判別用の基準温度として10℃を設定したが、このような温度に限らず、それらの温度と少し異なる温度を設定してもよく、それらの温度に限定されるものではない。
【0083】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を説明する。
【0084】
(1)上記実施形態では、熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、加熱温水循環式のエンジン暖機運転と、貯湯温水循環式のエンジン暖機運転のいずれかを選択的に実行するようにしたが、前記熱媒循環式のエンジン暖機運転として、貯湯温水循環式のエンジン暖機運転だけを行う構成としてもよく、加熱温水循環式のエンジン暖機運転だけを行う構成としてもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、エンジン暖機運転として、起動前のエンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも高い場合にはアイドリング運転を行うように構成したが、このような構成に代えて、エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高くなるまで熱媒加熱式のエンジン暖機運転を行うようにして、エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高くなると、直ちに定格運転に移行するようにしてアイドリング運転を実行しない構成としてもよい。
【0086】
(3)上記実施形態では、過去の負荷データから電力負荷や熱負荷等の予測負荷データを演算にて求めて、その予測負荷データに基づいて最適な運転開始時刻を自動的に設定するような構成としたが、このような構成に限らず、例えば、前記熱消費端末を使用するための時刻を予め使用者が予約設定しておくことが可能なように構成して、その予約時刻を運転開始時刻として上記したようなエンジンの制御を実行するように構成してもよい。
【0087】
(4)上記実施形態では、上記したような熱媒加熱式のエンジン暖機運転において、前記エンジン冷却用熱媒を加熱する加熱手段として前記電気ヒータを用いて加熱するように構成して実施することも可能である。
【0088】
(5)上記実施形態では、エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段として、潤滑湯の温度を検出するものを例示したが、この構成に限らず、エンジンの外壁の温度やエンジンの近傍の温度を検出してもよく、又、運転制御手段がエンジンの運転と停止とを管理するものであれば外気温度にてエンジン温度を代用して用いるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】コージェネレーションシステムの概略構成図
【図2】制御ブロック図
【図3】データ更新処理における説明図
【図4】1日分の時系列的な予測負荷を示すグラフ
【図5】省エネ度基準値演算処理における説明図
【図6】時刻修正処理における説明図
【図7】エンジン制御の動作を示すフローチャート
【図8】エンジン制御の動作を示すフローチャート
【図9】貯湯温水循環状態の通流状態を示す図
【図10】加熱温水循環状態の通流状態を示す図
【符号の説明】
【0090】
1 エンジン
4 貯湯タンク
7 運転制御手段
15 熱媒循環路
18 湯水通流路
19 循環通流手段
22 排熱回収用熱交換器
33 迂回通流路
S1 エンジン温度検出手段
S3 湯温検出手段
M 補助加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置を駆動するエンジンと、そのエンジンの排熱を回収する排熱回収手段と、各部の運転を制御する運転制御手段とが設けられ、その運転制御手段が、設定された運転開始時刻に基づいて前記エンジンの運転を制御するように構成されているコージェネレーションシステムであって、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも高い場合には、前記運転開始時刻又はそれに近い時刻にて、直ちに定格運転に移行する形態で前記エンジンの運転を制御し、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低い場合には、前記運転開始時刻よりも前記エンジンの温度と前記暖機運転要否判別用の基準温度との差が大きいほど長い時間となる補正時間だけ早い暖機運転開始時刻を求めて、その暖機運転開始時刻にてエンジン暖機運転の実行を開始し、その後、定格運転に移行する形態で、前記エンジンの運転を制御するように構成されているコージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記エンジンを冷却するエンジン冷却用熱媒を加熱する加熱手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が暖機運転要否判別用の基準温度よりも低く、且つ、起動可否判別用の基準温度よりも高い場合は、
前記エンジン暖機運転として、アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、前記補正時間としてアイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成され、
前記エンジン温度検出手段にて検出される起動前の前記エンジンの温度が前記起動可否判別用の基準温度よりも低い場合は、
前記エンジン暖機運転として、前記エンジンの回転停止状態で前記加熱手段にて前記エンジン冷却用熱媒を加熱する熱媒加熱式のエンジン暖機運転を前記エンジンの温度が前記起動可否判別用の基準温度よりも高くなるまで実行し、次に、前記アイドリング状態でのエンジン暖機運転を実行するように構成され、且つ、前記補正時間として熱媒加熱式のエンジン暖機運転及びアイドリング状態でのエンジン暖機運転の夫々を実行するための時間を設定して前記暖機運転開始時刻を求めるように構成されている請求項1記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記排熱回収手段が、
湯水を貯留する貯湯タンクと、湯水通流路を通して前記貯湯タンク内の湯を循環通流させる循環通流手段と、熱媒循環路を通して循環通流させる前記エンジン冷却用熱媒と前記湯水通流路を通して循環通流される湯水との間で熱交換する排熱回収用熱交換器と、前記貯湯タンクを迂回させる状態で前記排熱回収用熱交換器を通過するように湯水を循環通流させる迂回通流路と、この迂回通流路を通して循環通流する湯水を加熱する補助加熱手段とを備えて、前記貯湯タンク内の湯水を前記排熱回収用熱交換器を通過するように前記湯水通流路を通して循環通流させる貯湯温水循環状態と、前記補助加熱手段にて加熱しながら前記迂回通流路を通して湯水を循環通流する加熱温水循環状態とに切り換え自在に構成され、且つ、前記加熱手段を兼用するように構成され、
前記貯湯タンク内に貯留される湯水の温度を検出する湯温検出手段が設けられ、
前記運転制御手段が、
前記エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、前記湯温検出手段にて検出される前記湯水の温度が設定温度より高い場合は、前記熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、前記排熱回収手段を前記貯湯温水循環状態に切り換えて、前記エンジンの回転停止状態において前記貯湯タンク内の湯水とエンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによって前記エンジン冷却用熱媒を加熱する貯湯温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成され、
前記エンジンの温度が起動可否判別用の基準温度よりも低く、且つ、前記湯温検出手段にて検出される前記湯水の温度が設定温度より低い場合は、前記熱媒加熱式のエンジン暖機運転として、前記排熱回収手段を前記加熱温水循環状態に切り換えて、前記エンジンの回転停止状態において前記補助加熱手段にて加熱した湯と前記エンジン冷却用熱媒との間で熱交換を行うことによって前記エンジン冷却用熱媒を加熱する加熱温水循環式のエンジン暖機運転を実行するように構成されている請求項2記載のコージェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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