説明

コーティングシステム

【課題】各プリント媒体に対して前もって設定されたコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対して適正なコーティングが施されるコーティングシステムを提供する。
【解決手段】 画像データに基づいて形成されたプリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うために、画像データから生成された画像を特徴付ける一次画像特徴データと、前記画像特徴データに対応するプリント媒体に対して施されるコーティングの内容を示すコーティングデータとをリンクさせて格納するデータ格納部2が備えられている。スキャナユニット3によって得られるプリント画像のスキャン画像から生成された二次画像特徴データに基づいてデータ格納部2から抽出された当該プリント媒体のためのコーティングデータに基づいて当該プリント媒体に対してコーティングを行うコーターユニット4が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに基づいて形成されたプリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データに基づいて、印画紙、プリント用紙、プラスチックシート、布などの各種のプリント媒体にプリント画像を形成するプリンタは、種々のタイプのものが実用化されている。そのようなプリンタによって画像形成された出力プリント媒体(以下これを単に出力プリントと称する)の多くにおいて、形成されたプリント画像の色材に耐水性や耐候性がなく長期の保存に問題があるばかりか、さらにはプリント媒体自体にも耐水性や堅牢性(自立性)の弱さから使用目的が限られるという問題がある。このような問題を解決するため、プリント画像を形成した出力プリントの表面に液状のコーティング物質を塗布するプリントシート用コーティング装置が、例えば、特許文献1から知られている。このプリントシート用コーティング装置は、複数の噴射部から所定の方向に液滴粒子を噴射することでプリント媒体の表面にコーティング領域を形成するオンディマンドコーティングヘッドと、このオンディマンドコーティングヘッドをプリント媒体の幅方向(主走査方向)にプリント媒体の上方を往復動させる主コーティング走査手段と、オンディマンドコーティングヘッドとプリント媒体とをプリント媒体の長さ方向(副走査方向)に相対移動させる副コーティング走査手段とを備えている。
【0003】
また、コーティング装置としてのニス引き装置とその後方に設置されてニス引きされた印刷対象物を内部で乾燥する乾燥機とを備えた輪転印刷機は、印刷分野においてはよく知られている。そのような印刷機として、印刷装置によって印刷された枚葉紙が、印刷装置に続くニス引き装置によってニス層で覆われ、それに引き続いて枚葉紙が、IR乾燥機、熱風乾燥機、またはUV乾燥機の形式をなす周知の乾燥装置を通過することにより、乾燥機中で、ニス引きされた枚葉紙が、一時保管される前に排紙積み重ね装置の上で乾燥される、枚葉紙輪転オフセット印刷機がある。このニス層の形成によって印刷製品の摩耗抵抗と光沢とが向上する。例えば、特許文献2から、印刷機において処理加工された印刷対象物をコーティングするためのニス引きユニットを有する、印刷機のコーティング形成装置が知られている。このニス引きユニットでは、コーティングモチーフを可変的に形成するため、別個のインクジェットプリンタが液体コーティング材を印刷対象物に列状に噴射するために使用され、印刷対象物がインクジェットヘッドの出口開口部の下を案内される。さらに、印刷対象物上の塗布後の液体コーティング材料を乾燥させるために、乾燥機が印刷対象物の移送方向に関しインクジェットプリンタの直後に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−202984号公報(段落番号〔0002〕−〔0019〕、図8)
【特許文献2】特開2005−199718号公報(段落番号〔0002〕−〔0017〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術におけるコーティング装置においても、プリント済みプリント媒体に対して、その部分的な特定領域にコーティングを施すことができる。しかしながら、各プリント済みプリント媒体によってコーティングを施す領域が異なる場合には、各プリント済みプリント媒体に割り当てられたコーティング位置を含むコーティング情報を記憶しておき、その記憶順序とコーティングを施すプリント済みプリント媒体のコーティング装置への投入順序を一致させておく必要がある。このことは、プリント装置とコーティング装置がインライン配置されており、同一のプリント媒体に対して連続的にプリント処理とコーティング処理を施すような構成の場合にはあまり問題とならない。しかしながら、プリント装置とコーティング装置が独立して配置されており、プリント処理とコーティング処理とがバッチ処理的に行われる場合では、プリント処理とコーティング処理との間でプリント済みプリント媒体の順番がずれてしまうと、プリント済みプリント媒体に所定のコーティングが施されないという重大な問題が生じる。
本発明の課題は、プリント処理とコーティング処理とが独立して実行されるような場合でも、各プリント媒体に対して前もって設定された所定のコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対してコーティングが施されるコーティングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
画像データに基づいて形成されたプリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムは、上記目的を達成するため、本発明では、前記画像データから生成された画像を特徴付ける一次画像特徴データと、前記一次画像特徴データに対応するプリント媒体に対して施されるコーティングの内容を示すコーティングデータとをリンクさせて格納するデータ格納部と、前記プリント媒体のプリント画像をスキャンするスキャナユニットと、前記スキャナユニットによるスキャン画像から生成された二次画像特徴データに基づいて前記データ格納部から抽出された当該プリント媒体のためのコーティングデータを取得するコーティングデータ取得部と、取得した前記コーティングデータに基づいて当該プリント媒体に対してコーティングを行うコーターユニットとを備えている。
【0007】
この構成では、プリント媒体に形成されるプリント画像のための画像データから得られる画像特徴(一次画像特徴データ)をユニークな識別情報としてこのプリント媒体に施したいコーティング内容をデータ格納部に格納しておき、コーティングを施されるためにコーティングシステムに投入されたプリント媒体のプリント画像をスキャンし、このスキャン画像から得られた画像特徴(二次画像特徴データ)を、データ格納部に格納されている識別情報としての画像特徴(一次画像特徴データ)と照合して、当該プリント媒体に割り当てられているコーティングデータをデータ格納部から読み出して取得する。これにより、プリント処理とコーティング処理とが独立して実行されるような場合でも、各プリント媒体に対して前もって設定された所定のコーティング内容でプリント済みプリント媒体に対してコーティングが施される。
【0008】
本発明では、コーティング内容を示すコーティングデータはデータ格納部に格納される構成を採用しているので、プリント媒体毎にかなり複雑なコーティング内容を設定することも可能である。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記コーティングデータには、前記プリント媒体に対して所定の部分領域にコーティングをするためのコーティング領域位置データが含まれている。これにより、プリント媒体の全面にコーティング層を形成するといった単純なコーティングではなく、プリント媒体毎に、異なる1つ以上の所定の部分領域にコーティング層を形成するといったコーティングを実施することも可能である。
【0009】
コーティングを施されるためにコーティングシステムに投入されたプリント媒体のプリント画像をスキャンし、このスキャン画像から画像特徴を求めるという本発明の特徴構成は、この画像特徴として、付加的に、プリント媒体搬送ラインの基準位置に対する実際のプリント画像の位置が想定される位置とのずれからプリント媒体の搬送ずれ量を求めるとすれば、この搬送ずれ量から、いわゆる搬送蛇行状態を算定することも可能となる。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記スキャン画像から前記プリント媒体の搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する蛇行データ生成部が備えられている。
【0010】
プリント媒体の搬送蛇行状態を検出する機能が備えられた場合、その搬送蛇行を修正するための具体的な構成として以下の2つが提案される。
(1)前記スキャナユニットと前記コーターユニットとがインライン配置され、さらに前記搬送蛇行データに基づいて前記プリント媒体の蛇行をその搬送過程において修正する蛇行修正ユニットが前記スキャナユニットと前記コーターユニットとの間に介装される。これにより、コーターユニットに入る前にプリント媒体の搬送蛇行は物理的に修正されるので、正確なコーティングが実現する。
(2)前記搬送蛇行データに基づいて前記コーティングデータによって設定されたコーティング位置が調整される。これにより、蛇行状態でコーターユニットに入ったプリント媒体は、その蛇行状態、つまり搬送位置ずれを考慮して、コーターユニットにおけるコーティングポイントがソフトウエア的に修正されるので、やはり正確なコーティングが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるコーティングシステムの基本構想を示す構想図である。
【図2】本発明によるコーティングシステムを写真プリント仕上げシステムに適用した場合での概略構成図である。
【図3】コーターステーションからプリントステーションに転送される検索リクエスト情報及びプリントステーションからコーターステーションに転送される抽出結果情報を図解しているダイアグラム図である。
【図4】データ格納部に格納されているレコードのデータ構造とコーティングデータの意味を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、まずは図1を用いて本発明の基本構想を解説する。ここでは、プリント媒体として写真プリント用紙、プリンタとしてインクジェットプリンタを用いて、画像データに基づいて画像を形成した出力プリント媒体(以下これを単に出力プリントと称する)Pに、油性ニス等のオーバープリント液を塗付してコーティング層を形成するコーティングシステムを例とする。
【0013】
出力プリントPに形成された画像のソースとなった画像データから、一次画像特徴データ81として種々の画像特徴値が求められる。また、この出力プリントPに施されるコーティングの内容を示すコーティングデータ91が作成される。一次画像特徴データ81とコーティングデータ91とは互いにリンクされ、データベースとして構成されているデータ格納部である仕上げ情報格納部2における検索抽出可能なレコードとして登録される。つまり、出力プリントPに形成された画像とその出力プリントPに施されるコーティングの内容とが、仕上げ情報格納部2の内部で一次画像特徴データ81とコーティングデータ91との形で関係付けられている。個々の出力プリントPに形成された画像からその出力プリントP毎に施されるべきコーティングの内容が仕上げ情報格納部2から取得することが可能となる。もちろん、、一次画像特徴データ81を得るための画像データとしては、出力プリントPに形成された画像のソースとしての画像データだけでなく、プリントのためにソースである画像データから何らかの画像処理を施して得られた二次的なソース画像データ、例えば他の画像データと合成処理されたものなど、種々なものを利用することができる。なお、この仕上げ情報格納部2における、一次画像特徴データ81とコーティングデータ91とを有するレコードには、ここでは図示されていないがプリントサイズやプリント枚数などの注文データも記録されている。
【0014】
一次画像特徴データ81に含まれる画像特徴値としては、1つ以上の所定数で分割された画像の分割領域における平均濃度、ヒストグラム、色分布などの画像統計値、あるいは顔検出アルゴリズムを用いて得られた顔の数や顔のサイズなどが挙げられる。コーティンデータ91に含まれるコーティング内容としては、プリント媒体におけるコーティングすべき領域の位置、コーティング厚さなどが挙げられる。
【0015】
このコーティングシステムには、スキャナユニット3とコーターユニット4がインライン配置されている。ここでいうインライン配置とは、搬送ラインによって各処理ユニットが接続されており、連続的な処理が可能となる配置を意味している。例えば、写真プリントである出力プリントPを投入部にセットして、このコーティング処理を開始する。まず、処理されるべき出力プリントPがスキャナユニット3に搬送され、出力プリントPに形成されているプリント画像が読み取られる。
【0016】
スキャナユニット3によって読み取られたプリント画像のスキャン画像から二次画像特徴データとして上述したような種々の画像特徴値が算出される。この二次画像特徴データに含まれる画像特徴値の種類は一次画像特徴データに含まれるものと実質的に同じである。次いで、生成された二次画像特徴データの内容を検索条件として、仕上げ情報格納部2から、この二次画像特徴データの内容に実質的に一致する一次画像特徴データをもつレコードを検索する。一次画像特徴データは特定のプリント画像のソースとしての画像データを一意的に規定するものであり、結果的にはプリンタ1によって作成される出力プリントPを実質上一意的に規定する。また、二次画像特徴データは出力プリントPに形成されている画像を実質上一意的に規定するので、二次画像特徴データから、コーティング処理しようとする出力プリントPを一意的に特定することができる。さらに、画像データに基づく出力プリントPの要求時に行われる当該出力プリントPに対するコーティング内容を記述しているコーティングデータは、その出力プリントPに用いられた画像データから得られた一次特徴データとリンクしている。その結果、一次画像特徴データ81と二次画像特徴データ82とが実質的に一致するレコードを仕上げ情報格納部2から抽出すると、当該レコードに含まれているコーティングデータ91がここでスキャンされた出力プリントPに対して予め指示されたコーティング内容を記述したものとみなすことができる。
【0017】
コーターユニット4は、プリント出力の依頼時に要求されていたコーティング仕様を満たすべく、抽出されたコーティングデータ91に基づいて生成されるコーター駆動制御信号によって駆動される。このコーターユニット4の駆動により、出力プリントPの1つ以上の所定の領域に所定の厚さでもってコーティング層が形成される。
【0018】
以上の解説から明らかなように、本発明によるコーティングシステムでは、出力プリントPを出力するプリンタ1と、その出力プリントPにコーティングを施すコーターユニット4とが、インライン配置されておらず、出力された出力プリントPがその順番でコーターユニット4に投入されることが保証されていなくても、予め特定の出力プリントPに割り当てられたコーティング内容が確実にコーターユニット4に認識され、適正なコーティング処理がなされる。また、出力プリントの投入姿勢が天地逆になっていても、その天地逆状態は画像から判別可能であるため、そのような問題に対しても対処可能であり、適切なコーティング処理がなされる。
【0019】
次に、本発明による、具体的な実施の形態について、図2と図3を用いて説明する。図2は、本発明によるコーティングシステムを写真プリント仕上げシステムに適用した場合での概略構成図である。図3は、その写真プリント仕上げシステムにおけるデータの流れを示すダイアグラム図である。
【0020】
この写真プリント仕上げシステムは、顧客から受け取った撮影画像データと、プリントサイズやコーティング処理などを含む写真プリントサービスの注文内容とに基づいて、プリント表面の任意の領域にコーティングを施された写真プリントFPを作製するものである。このシステムでは、付加的に複数の写真プリントを小冊子に綴じて写真アルバムする機能も有する。通常、写真プリントショップに設置されるこの写真プリント仕上げシステムは、店頭に配置されて顧客によって操作される写真プリント受付機100と、店内に配置されるプリントステーションと、コーターステーションから構成されている。プリントステーションは、プリンタ本体1Aとこのプリンタ本体1Aを操作するコントロールユニット1Bとからなる。図示した例では、プリンタ本体1Aは、インクジェット方式のプリンタであるが、その他の形式、例えばミニラボと呼ばれている銀塩式のレーザープリンタなどを採用することも可能であり、出力プリントとしての写真プリントPを連続的に出力することができる。コントロールユニット1Bは、データ通信機能を有する汎用パソコンによって構築可能である。このコントロールユニット1Bには、コーティングデータを含む仕上げ情報を格納する仕上げ情報格納部2であるハードディスク(データ格納部)が内蔵もしくは外部接続の形で備えられている。さらに、このコントロールユニット1Bは、有線または無線のLANを通じて以下に説明するコーターステーションとデータ伝送可能に接続されている。
【0021】
コーターステーションは、コーター本体部60とこのコーター本体部60の各ユニットを制御するコントローラ5とを備えている。
コーター本体部60には、スキャナユニット3、蛇行修正ユニット61、コーターユニット4、ドライユニット62、スイッチバック(SB)ユニット63、パンチユニット64が含まれている。各ユニットは搬送ローラ群からなる搬送機構65によってつながれており、投入された写真プリントPは各ユニットにわたって連続的に処理され、例えば、1セットのコーティング済み写真プリントFPが綴じリングによって綴じられ、最終的には写真アルバムが作製される。なお、図示されていないが、搬送機構65の適所に搬送途中の写真プリントPを検出可能なシート検出センサが設けられており、その検出信号は写真プリントPの搬送位置確認のためコントローラ5に送られる。
【0022】
スキャナユニット3は、読み取り光学系が主走査方向(写真プリントPの搬送方向に直交する方向)に延びたライン走査式で、副走査方向(写真プリントPの搬送方向)の読み取り走査は搬送機構65に兼用されているシート搬送ローラ装置によって行われる。もちろん、一時停止させた写真プリントP上をスキャナヘッドが副走査方向に走査移動する方式を採用してもよい。いずれにせよ、写真プリントPに形成されているプリント画像から読み取ったスキャン画像はコントローラ5に送られる。蛇行修正ユニットは、ミニラボなどで利用されているペーパー搬送技術ではよく知られているが、搬送開始から、あるいは搬送途中での写真プリントPの位置ずれを、左右ローラの回転差、搬送ローラの横移動、チャック搬送機構による横動きなどによって修正するものである。このような写真プリントPの位置ずれが、所定の範囲に収めることができる場合、スキャン画像に基づいて算定された位置ずれ分だけ、後処理のユニットでの処理位置をずらすことで、当該位置ずれを補償することが可能となる。そのような場合では、蛇行修正ユニットを省くことができる。
【0023】
コーターユニット4は、インクジェットプリントヘッドに類似したスプレーヘッドを有し、このスプレーヘッドからコーティング液、例えば油性ニスを写真プリントPの表面または裏面あるいは両面に噴射して、写真プリントPをコーティングする。スプレーヘッドの噴射には、圧縮空気と共にコーティング液を飛散させる方式や音波振動子でミストを発生させる方式などが用いられる。ガイドレールと送りねじ機構とを用いたスプレーヘッドの主走査方向の移動毎に写真プリントPが搬送機構65に兼用されているシート搬送ローラ装置によって副走査方向に搬送される。これにより、このコーターユニット4は、実質的に写真プリントPの任意の領域に対してコーティングを施すことができる。そのようなコーターユニット4の動作は、後で詳しく説明するが、前もって、顧客によって指定されたコーティング処理内容に基づいてコントローラ5が生成した制御信号によって実行される。
【0024】
ドライユニット62は、コーターユニット4によって写真プリントP上に形成されたコーティング層を乾燥させるものであり、ドライユニット62で使用されているコーティング剤の種類によってその構成が決定されるが、最近では、熱源として、赤外線LEDや紫外線LEDが用いられている。
【0025】
スイッチバック(SB)ユニット63は、ミニラボなどではよく用いられている、写真プリントPの表裏を反転するものであり、オプションとして搬送機構65に組み込まれて使用される。写真プリントPがこのSBユニット63の反転経路を利用することで表裏反転した状態となり、その状態でコーターユニット4を越えて逆搬送され、再びコーターユニット4に進入することで他方の面がコーティングされる。
同様にオプションとして搬送機構65に組み込まれるパンチユニット64は、コーティングを施され仕上げられた写真プリントFPの一端縁に列状の孔を形成するものである。この孔を用いて所定枚数の写真プリントFPをリングなどの冊子綴じ具で綴じることで写真アルバムが作製される。
【0026】
コーターステーションのコントローラ5は、実質的にはコンピュータによって構成され、プログラムやハードウエアによって種々の機能が作り出される。本発明に特に関係するものとしては、このコントローラ5の機能全体を管理する管理部50、画像特徴データ生成部51、蛇行データ生成部52、蛇行修正データ生成部53、コーター制御データ生成部54、プリンタステーションのコントロールユニット1Bとの間のデータ伝送を中継する通信インターフェース55と、コーターステーションの各ユニットとの間のデータ伝送を中継するI/Oインターフェース56などが挙げられる。
【0027】
画像特徴データ生成部51は、スキャナユニット3から送られてきたスキャン画像である画像データからその画像の所定の画像特徴値を算定して、二次画像特徴データを生成する。この二次画像特徴データに含まれる画像特徴値の種類は、プリンタステーションのコントロールユニット1Bのデータ格納部である仕上げ情報格納部2に格納されている一次画像特徴データに含まれる画像特徴値の種類と一致している。蛇行データ生成部52は、スキャナユニット3から送られてきたスキャン画像データにエッジ検出フィルタをかけて写真プリントPの輪郭を検出し、適正な搬送姿勢での写真プリントPの輪郭と比較して、写真プリントPの搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する。蛇行修正データ生成部53は、蛇行データ生成部52で生成された搬送蛇行データに基づいて、搬送中の写真プリントPの蛇行 (姿勢ずれ)を評価し、その蛇行を修正するために蛇行修正ユニット61に出力する制御信号を作り出す蛇行修正データを生成する。コーター制御データ生成部54は、搬送されている写真プリントPがコーターユニット4で施されるべきコーティング内容を示すコーティングデータをプリンタステーションのコントロールユニット1Bのデータ格納部である仕上げ情報(コーティングデータなど)格納部2から取得する。さらに、コーター制御データ生成部54は、取得したコーティングデータに基づいて、コーターユニット4に出力する制御信号を作り出すコーター制御データを生成する。これにより、当該写真プリントPには予め指定された所定のコーティングが施される。
【0028】
上述のように構成されたプリントステーションとコーターステーションとからなる写真プリント仕上げシステムにおけるデータの流れを、図1から図4を用いて、処理順序に従って以下に説明する。なお、図3はコーターステーションからプリントステーションに転送される検索リクエスト情報及びプリントステーションからコーターステーションに転送される抽出結果情報を図解しているダイアグラム図である。図4は、仕上げ情報格納部2に格納されているレコードのデータ構造とコーティングデータの意味を示す模式図である。
【0029】
まず、顧客が、受付機100に半導体メモリーなどを装着して、写真プリントPとして出力したい撮影画像データを入力するとともに、希望するプリントサイズなどの写真プリントサービス内容を含むプリント注文情報及びコーティング内容を含むコーティング情報を入力する。入力された撮影画像データ、プリント注文情報、コーティング情報が統合され、DPOFファイル等のフォーマットで注文情報となる。この注文情報が、プリントステーションのコントロールユニット1Bに転送されると、そこで、再び撮影画像データ、プリント注文情報、コーティング情報に分けられる。撮影画像データとプリント注文情報は、従来どおりのプリンタ本体1Bを用いたプリント出力に利用されるが、その制御手順についてはよく知られているので、ここでの説明は省略する。
【0030】
さらに、この撮影画像データからいくつかの画像特徴値が画像特徴データ生成部12によって算定され、それらが、まとめられて一次画像特徴データ化される。また、コーティング情報もコーティングデータ化される。この一次画像特徴データとコーティングデータはリンクされ、レコードIDを付与された単一レコードに含まれるフィールドとなる。このようにして生成されたレコードは、順次、仕上げ情報格納部2に登録されていくが、そのデータ構造が図4に示されている。
【0031】
なお、複数の撮影画像データを区分け配置するによって写真プリントPが作成されるようなケースでは、区分け配置された撮影画像データ毎の画像特徴値が一次画像特徴データとして生成するとよい。さらに、1コマの撮影画像における、顔領域だけ、あるいは特定の輝度領域だけといったように部分領域にコーティングを施すことも可能である。また、写真プリントショップ側で、写真プリントPの補強目的等で、独自のコーティングを施すケースでは、そのようなコーティングデータもここで追加される。例えば、部分的なコーティングのひとつとしてシート紙などのプリント媒体を補強するための補強用コーティングが挙げられる。その際、そのコーティング領域位置として、アルバムの場合は綴じ部近傍領域、パネル的に使用する大判プリントの場合は枠部領域や筋交い部領域が好適である。
【0032】
図4から明らかなように、仕上げ情報格納部2に登録されるレコードには、フィールドとして、複数の画像特徴値を有する画像特徴データとコーティングデータとが設定されている。コーティングデータには、コーティングすべき領域の基準位置座標を示すコーティング基準位置座標とコーティングすべき領域の基準位置からの主走査方向距離と副走査方向距離を示すコーティングサイズとからなるデータセットが1つ以上含まれている。つまり、このデータセットの数だけコーティングすべき領域を指定することができる。図4には、2組のデータセットと2つのコーティングすべき領域との関係が例示されている。
【0033】
図4から明らかなように、ここでは、説明を簡単にするため、コーティング領域は矩形と仮定している。従って、搬送方向で先端側の一端(例えば右コーナ部)を処理すべき写真プリントの基準点として、この基準点から最も近いコーティング領域の位置座標をコーティング基準座標:P1(X1,Y1)とし、その基準位置からの主走査方向距離:M1がコーティング領域の幅を示し、その基準位置からの副走査方向距離:L1がコーティング領域の長さを示している。これにより、第1のコーティング領域が規定される。さらに、コーティング基準座標:P2(X2,Y2)と、コーティングサイズを表す(M2,L2)とによって第2のコーティング領域が規定される。
なお、コーティング領域が円形を含む多角形の場合、その多角形を規定する必要な数の頂点位置座標を登録することになる。
【0034】
プリントステーションにおいて、注文単位の写真プリントPが出力されると、バッチ的な処理の形で、それらの写真プリントPは、コーターステーションに投入される。コーターステーションに投入された写真プリントPは、順次、スキャナユニット3によってスキャニングされ、スキャン画像が生成される。スキャン画像からさらに二次画像特徴データ82が画像特徴データ生成部51によって生成されると、この二次画像特徴データ82、つまり複数の画像特徴値を有する、図6で示すようなコーティングデータリクエストが管理部50で作成され、通信インターフェース55を経てプリントステーションのコントロールユニット1Bに送られる。
【0035】
同時に、スキャン画像に基づいて、写真プリントPの蛇行(姿勢ずれ)が検出された場合、その蛇行(姿勢ずれ)を表す蛇行データが蛇行データ生成部52によって生成され、蛇行修正データ生成部53に転送される。蛇行修正データ生成部53は蛇行データの内容に基づいて蛇行修正ユニット61の蛇行修正動作制御のための蛇行修正データを生成し、蛇行修正ユニット61に制御信号の形で与える。
【0036】
コーティングデータリクエストを受け取ったプリントステーションのコントロールユニット1Bは、コーティングデータリクエストに含まれている画像特徴値を検索条件として、仕上げ情報格納部2のレコードを検索し、一致するレコードを抽出する。コントロールユニット1Bは、抽出されたレコードからコーティングデータを読み出して、データ伝送可能なデータ構造にフォーマットして、処理対象となっている写真プリントPのためのコーティング内容を示している抽出コーティングデータ91を生成し、コーターステーションのコントローラ5に送信する。抽出コーティングデータ91を受け取ったコントローラ5のコーティングデータ取得部として機能する管理部50では、この抽出コーティングデータ91からコーター制御データ生成部54がコーター制御データを生成し、コーター制御信号の形でコーターユニット4に出力する。これにより、コーターユニット4は、搬送されてきた写真プリントPに対して前もって設定されたコーティング内容通りのコーティングを施すことができる。
【0037】
〔別実施の形態〕
図2で模式的に図示されているコーターアッセンブリ60は、直線的な搬送ラインで構成されていたが、この搬送ラインは曲線的であってもよい。さらに、この搬送ラインを円周線とすれば、ドラム式のコーターアッセンブリとなり、装置のコンパクト化に好都合となる。
【符号の説明】
【0038】
1A:プリンタ本体
1B:コントロールユニット
2:仕上げ情報格納部(データ格納部)
3:スキャナユニット
4:コーターユニット
5:コントローラ
50:管理部(コーティングデータ取得部)
51:画像特徴データ生成部
52:蛇行データ生成部
53:蛇行修正データ生成部
54:コーター制御データ生成部
55:通信インターフェース
56:I/Oインターフェース
60:コーター本体部
61:蛇行修正ユニット
62:ドライユニット
63:スイッチバック(SB)ユニット
64:パンチユニット
65:搬送機構
81:一次画像特徴データ
82:二次画像特徴データ
91:コーティングデータ
100:写真プリント受付機
P:写真プリント(出力プリント;プリント媒体)
FP:コーティング済み写真プリント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて形成されたプリント画像を有するプリント媒体に対してコーティングを行うコーティングシステムであって、
前記画像データから生成された画像を特徴付ける一次画像特徴データと、前記一次画像特徴データに対応するプリント媒体に対して施されるコーティングの内容を示すコーティングデータとをリンクさせて格納するデータ格納部と、
前記プリント媒体のプリント画像をスキャンするスキャナユニットと、
前記スキャナユニットによるスキャン画像から生成された二次画像特徴データに基づいて前記データ格納部から抽出された当該プリント媒体のためのコーティングデータを取得するコーティングデータ取得部と、
取得した前記コーティングデータに基づいて当該プリント媒体に対してコーティングを行うコーターユニットと、
を備えたコーティングシステム。
【請求項2】
前記コーティングデータには、前記プリント媒体に対して所定の部分領域にコーティングをするためのコーティング領域位置データが含まれている請求項1のコーティングシステム。
【請求項3】
前記スキャン画像から前記プリント媒体の搬送蛇行状態を示す搬送蛇行データを生成する蛇行データ生成部が備えられている請求項1または2のコーティングシステム。
【請求項4】
前記スキャナユニットと前記コーターユニットとがインライン配置されており、さらに前記搬送蛇行データに基づいて前記プリント媒体の蛇行をその搬送過程において修正する蛇行修正ユニットが前記スキャナユニットと前記コーターユニットとの間に介装されている請求項3のコーティングシステム。
【請求項5】
前記搬送蛇行データに基づいて前記コーティングデータによって設定されたコーティング位置が調整される請求項3のコーティングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73167(P2011−73167A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224316(P2009−224316)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】