説明

コーティングセパレータ、その製造方法およびそれを用いた電気電子部品

【課題】十分な電解液の保持性を有するセパレータを提供すること。
【解決手段】アラミド紙よりなり、且つイオン性物質、水酸基含有物質及びシリコン化合物より選ばれる少なくとも1種の物質がコーティングされている電気電子部品用セパレータであり、セパレータがコーティング前および/または後に熱処理されている。ここでイオン性物質が炭酸カルシウム、塩化カルシウム、無水塩化カルシウム、酸化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリム、硫酸銅、無水硫酸銅、硫酸アルミニウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムより選ばれ、水酸基含有物質がアルコール類、グリコール類及び多糖類より選ばれ、シリコン化合物がシリカゲル、シリカゾル、無水シリカ及びゼオライトより選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティングセパレータ、その製造方法およびそれを用いた電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器や高速情報処理機器等の最近の進歩に象徴されるように、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化には目覚しいものがある。これらを支える要素技術の一つに、電気・電子部品の高性能化が挙げられる。電池等も例外ではなく、高性能部品開発が急速に進展している。これに応えるため、部材、例えば隔壁材料としてのセパレータに関しても技術・品質開発の必要性が高まっている。
【0003】
例えば、アルカリ電池の1つの態様として円筒型のものが知られており、この円筒型アルカリ電池は極板群にセパレータを巻回して製造されるが、電池容量を増やすため或いは電気抵抗を小さくするために、セパレータとして使用する不織布は電解液の保持性に優れている必要がある。そのため、セパレータはできるだけ繊維径の小さい繊維から構成されているのが好ましい。このような不織布を製造する方法として、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる水流により分割可能な分割性繊維を含む繊維ウェブに対して水流を噴出し、分割性繊維を分割することにより繊維径の小さい繊維を発生させる方法が知られているが、この方法には、分割性繊維を十分に分割することができなかったり、十分に分割するためには多大なエネルギーが必要である等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は上記の如き問題点を解決すること、すなわち、十分な電解液の保持性を有するセパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはかかる状況に鑑み、高度な電解液保持性を有するセパレータを開発すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明は、イオン性物質、水酸基含有物質及びシリコン化合物より選ばれる少なくとも1種の物質がコーティングされていることを特徴とする電気電子部品用セパレータを提供するものである。
【0007】
本発明はまた、イオン性物質、水酸基含有物質及びシリコン化合物より選ばれる少なくとも1種の物質を予め水に溶解または分散させた後、その溶解または分散液に未コーティングセパレータを浸漬し、次いで乾燥して水分を蒸発させることを特徴とする上記の本発明のセパレータの製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明はさらに、上記の本発明のセパレータが使用されていることを特徴とする、電池、コンデンサなどの電気電子部品を提供するものである。
【0009】
以下、本発明のコンデンサ、その製造方法及び用途についてさらに詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0010】
(セパレータ)
本発明において「セパレータ」は、電池、コンデンサなどの電気電子部品中で例えば電極などの導電部材間を隔離することにより回路が短絡することを防ぐための構造体と定義される。セパレータとしては、通常、紙、不織布、微多孔フィルムまたはこれらの複合体が使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
また、セパレータを構成する素材としては、例えば、アラミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリイミド、ガラス、カーボン、アルミナ、天然繊維、天然パルプなどが、紙、不織布、微多孔フィルムなどに加工しやすいことから使用される場合が多いが、電気電子部品中の電極などと比較して抵抗値の高いものであれば、材質は特に制限されるものではない。
【0012】
(コーティングセパレータ)
本発明において「コーティングセパレータ」とは、その表面にイオン性物質、水酸基含有物質及びシリコン化合物より選ばれる少なくとも1種の物質が付着したセパレータである。その付着量はセパレータの孔が実質的に塞がらない限り特に制限されるものではないが、一般には、未コーティングセパレータの重量に対して0.004〜20%の範囲内が好ましい。また、コーティングは均一であることが望ましいが、コーティング斑があってもセパレータとして機能する限り問題はない。
【0013】
コーティング方法としては、例えば上記物質を水に溶解または分散させた後、その溶解液または分散液にセパレータを浸漬し、次いで乾燥により水分を蒸発させる方法、または浸漬する前に未コーティングセパレータを予め部品中に組み込み、その全体を溶解液または分散液に浸漬し、次いで乾燥して水分を蒸発させる方法などが好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の乾燥の条件は特に制限されるものではないが、通常、50℃以上で1分以上乾燥することが好ましい。
【0014】
また、上記「部品」とは、電池、コンデンサ等の電気電子部品のことであり、上記溶解液が浸漬可能な空間が存在する限り、特に完成品、半完成品を問わない。
【0015】
(イオン性物質)
本発明に用いられる「イオン性物質」とは、化合物を構成する化学結合にイオン結合を含むものであり、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、無水塩化カルシウム、酸化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリム、硫酸銅、無水硫酸銅、硫酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどがあげあれるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
(水酸基含有物質)
本発明に用いられる「水酸基含有物質」とは、化合物中に水酸基(−OH)を含むものであり、具体的には、アルコール類(例えば、エタノール、ブタノールなど)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、多糖類(例えば、セルロース、デンプンなど)などがあげあれるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
(シリコン化合物)
本発明に用いられる「シリコン化合物」とは、化合物中にケイ素を含むものであり、例えば、シリカゲル、シリカゾル、無水シリカ、ゼオライトなどがあげあれるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
(熱処理)
本発明では、場合により、コーテイング前および/または後にセパレータを熱処理し、
電解液の保持性をさらに高めることができる。特に、コーティング後に熱処理を行うことにより、イオン性物質、水酸基含有物質、シリコン化合物等がセパレータに固定され、電解液保持性が向上する可能性がある。その際の熱処理温度は厳密に制限されるものではないが、一般には、セパレータ構成素材の融点以下であることが好ましい。
【0019】
(電解液保持性)
本発明において「電解液保持性」とは、セパレータが一定時間に電解液などの液体を吸上げる度合であり、具体的には下記式(2)により算出される値として定義される。
2η/γt 式(2)
ここで、hはある液体をt秒間に吸上げる吸上げ高さ(mm)であり、ηは該液体の
粘度(mPaS)であり、γは該液体の表面張力(mN/m)であり、tは吸上げ時
間(秒)である。
【0020】
本発明のコーティングされたセパレータは、上記式(2)で示される電解液保持性が一般に0.7より大きい。
【0021】
以上の如くしてコーティングされた本発明のセパレータは、コーティングによる電解液保持性に優れており、電気電子部品の導電部材間の隔離板として極めて適している。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明する。
【0023】
(測定方法)
(1)シートの坪量、厚みの測定
JIS C2111に準じて実施した。
(2)吸上げ高さの測定
正ブタノールを30秒間に吸上げる高さを測定した。
20℃で正ブタノールの粘度は7(mPaS)、表面張力は24.6(mN/m)
であった。
【0024】
実施例1
特公昭52−151624号公報に記載の湿式沈殿機を用いてポリメタフェニレンイソフタルアミドのファイブリッドを製造した。これを叩解機で処理して濾水度(カナダ標準濾水度)を20mlに調節した。
【0025】
また、帝人(株)製コーネックス(登録商標)を長さ5mmに切断して抄紙原料(アラミドフロック)とした。このフロックの繊度は0.8デニールであった。
【0026】
上記のように調製した紙料を水中にて混合し、タッピ式手抄き機(断面625cm2)でシートを作製した。
【0027】
上記シートをカレンダー加工機にてロール温度330℃、ロール線圧100kgf/cm、速度2m/分の条件でカレンダー加工した。
【0028】
カレンダー加工後のシートを0.25%硫酸ナトリウム水溶液に1分含浸後、熱風オーブンにて150℃×30分乾燥した。
【0029】
得られたシート材の主要特性及びブタノール吸上げ高さを測定した。結果を下記表1に示す。
【0030】
比較例1
上記実施例1と同様にしてカレンダー加工まで行った後、純水に1分含浸後、熱風オーブンにて150℃×30分乾燥した。
【0031】
得られたシート材の主要特性及びブタノール吸上げ高さを測定した。結果を下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
上記表1から明らかなとおり、セパレータに本発明に従いコーティングを施すことにより液保持性が向上する。
【0034】
以上説明したように、本発明に従いコーティングされたセパレータは電解液の保持性が向上する。また、本発明のコーティングセパレーダを電気電子部品に使用することにより、本来その部品が持つ電気特性が電解液の不十分な保持、漏れ等によるロスなく発揮させることができると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド紙よりなり、且つイオン性物質、水酸基含有物質及びシリコン化合物より選ばれる少なくとも1種の物質がコーティングされてなることを特徴とする電気電子部品用セパレータ。
【請求項2】
イオン性物質が炭酸カルシウム、塩化カルシウム、無水塩化カルシウム、酸化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリム、硫酸銅、無水硫酸銅、硫酸アルミニウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムより選ばれることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
水酸基含有物質がアルコール類、グリコール類及び多糖類より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
シリコン化合物がシリカゲル、シリカゾル、無水シリカ及びゼオライトより選ばれることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
セパレータがコーティング前および/または後に熱処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセパレータ。
【請求項6】
下記不等式(1)
0.7<hη/γt 式(1)
ここで、hはある液体をt秒間に吸上げる吸上げ高さ(mm)であり、ηは該液体の
粘度(mPaS)であり、γは該液体の表面張力(mN/m)であり、tは吸上げ時
間(秒)である。
で示される範囲内の吸上げ高さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセパレータ。

【公開番号】特開2009−87948(P2009−87948A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310791(P2008−310791)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2002−189696(P2002−189696)の分割
【原出願日】平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願人】(596001379)デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社 (26)
【Fターム(参考)】