説明

コーティングラインにおける方法およびそのライン構成

本発明は、ファイバ(2)がファイバ出発点(1)から引張り装置(5)によって金型部分(7)およびトーピド部分を備える押出しヘッド(3)へと巻回を解かれ、それによって、一次被覆されたファイバの表面に前記一次被覆されたファイバに密着接触する緩衝層が配置される、コーティングラインにおける方法および構成であって、かつ前記方法において前記密着被覆されたファイバは前記押出しヘッド(3)の下流側で所定の方式で冷却される方法および構成に関する。まず、ライン張力の標的値が、ライン張力と緩衝層の離型に要する力との間の相関により求められ、かつ前記押出しヘッド(3)と前記引張り装置(5)の間のライン張力が測定される。得られた測定データは、前記ライン張力と前記緩衝層の離型に要する力との間の前記相関により得られる前記標的値と比較され、前記押出しヘッド(3)の前記金型部分(7)および/または前記トーピド部分の位置が前記ファイバの軸方向で調整され、それによって前記ライン張力測定から得られる測定値が前記標的値に到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバがファイバ出発点から引張り装置によって巻回を解かれかつさらに金型部分およびトーピド部分を備える押出しヘッドに掛けられ、それによって、一次被覆されたファイバの表面に前記一次被覆されたファイバに密着接触する緩衝層が配置される、コーティングラインにおける方法であって、かつ前記方法において前記密着被覆されたファイバは前記押出しヘッドの下流側で所定の方式で冷却される方法に関する。本発明はまた、前記コーティングラインの構成にも関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの方法および構成は、光ファイバの製造および加工に関して現在よく知られているものである。光ファイバは元来比較的に脆く、過剰な引張応力等の様々な張力、曲折もしくは捻りを受けた場合にはその減衰特性がかなり低下するため、ファイバ線引き工程で一次被覆を施したファイバの表面に緩衝層が配置される。緩衝層は、ファイバの周りに溶融状態で供給される適切なプラスチック材料を含むことが可能とされる。緩衝層は、ファイバの周りに緩やかに回らすか、あるいはファイバに直に、密着接触が可能とされる。本発明は特に、緩衝層が一次被覆ファイバに密着接触する構造に関する。その構造は、当分野で「タイト・バッファド・ファイバ」として知られる。米国特許第5838862号、第5181268号および第3980390号は、従来技術の例とすることができる。
【0003】
従来技術の欠点は、ファイバの表面に配置された緩衝層の離型に関係する。緩衝層の離型に要する力は、ファイバのコーティング工程が如何様に行われたかによって様々に異なる。離型力は、押出しヘッド部品同士に対して、金型部分またはトーピド部分をファイバの方向に移動することによって、言い換えれば、緩衝層を構成するコーティング材料がファイバ表面に接触するポイントにおけるコーティング材料の溶融圧力を変えることによって調節することが可能とされる。
【0004】
従来技術においては、離型力調節はオフラインで行われ、言い換えれば、様々な検査資料を得るためにテストランが行われ、その後に検査資料が測定された。そのことが離型力を調節するためのオンライン情報が入手できず、かつさらに、本番運転の準備をしながらテストランで材料と時間を浪費するという問題を引き起こす。
【0005】
従前は、離型力調節は、例えば、機械を特定の設定で運転しかつ試験片を測定して所要の離型力を求めることによっても行われた。次いで、所望の最終結果を得るために押出しヘッドが調整され、機械をまた新たな設定で運転し、新たな試験片を測定し、以下同様に行う。この作業は所望の離型力に到達するまで繰り返される。この工程は生産が開始される都度実行されなければならない。さらに、この工程の実施はオペレータの技量等に依存するところが大きいことに留意されたい。押出しヘッド部品の位置は測定することがきわめて難しいため、この工程を反復可能とすることは困難とされる。この工程は、オペレータの能力によっては所望の離型力に到達するまでに要する調節回数がきわめて多くなる可能性があるため、材料の浪費が問題とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点を無くすることが可能な方法および構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それは、本発明の方法および構成によって達成される。本発明の方法は、ライン張力の標的値をライン張力と緩衝層の離型に要する力との間の相関により求めるステップと、押出しヘッドと引張り装置の間のライン張力を測定するステップと、得られた測定データを前記ライン張力と前記緩衝層の離型に要すると力の間の前記相関により得られる前記標的値と比較するステップと、前記押出しヘッドの金型部分および/またはトーピド部分の位置を前記ファイバの軸方向で調整し、それによって前記ライン張力測定から得られる測定値が前記標的値に到達するステップとを特徴とする。次いで本発明の構成は、前記押出しヘッドの前記金型部分および/または前記トーピド部分の位置を、前記ファイバの軸方向で、ライン張力を測定する手段から得られた測定データおよび既知の前記ライン張力と緩衝層の離型に要する力との間の相関によって得られた標的値に基づいて調整するように構成された調節装置を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明は、離型力の調節をオンラインで行い、かつしたがって従来技術の困難な反復作業を排除可能とすることが有利とされる利点を有する。さらに、従来技術に関して生起する材料の不利な浪費を排除可能とすることを利点とする。本発明のさらに別の利点は、本発明を既存の生産ラインに関して有利に適用可能とする、言い換えれば、旧式の生産ラインを、本発明の構成を同生産ラインに付加することによって、いわば更新することが可能とされる点にある。
【0009】
以下に本発明を添付の図面における実施形態を用いてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は光ファイバ用コーティングラインを概略的に示し、同ラインは本発明による構成を含む。用語「ファイバ」は、この関係においては、一次被覆されたファイバを指す。ファイバの一次被覆は、概して当初のファイバ線引き工程において施される。符号1はファイバ出発点を示し、被覆されるファイバ2がここから押出しヘッド3に導かれ、同ヘッドにより、一次被覆されたファイバの表面に密着接触する緩衝層がファイバの表面に配置される。押出しヘッドの下流側では、被覆されたファイバは冷却装置4に導かれ、同冷却装置によって、被覆ファイバは所望の、既定の方法で冷却される。冷却装置4は、例えば、冷却シュートとしてもよい。図1の符号5は引張り装置で、例えば、キャプスタン式としてもよい。図1の符号6は密着被覆ファイバが導かれるコイルを概略的に示す。
【0011】
上記は当業者にはすべて従来技術とされ、したがって、これに関してさらに詳しくは説明しない。
図2は押出しヘッド3の概略図である。図2の符号7および8は、押出しヘッドの金型部分およびトーピド(Torpedo)部分を示す。上記部分は従来の押出しヘッド部分であり、その作動は当業者には知られている技術とされる。被覆されるファイバは図1と同じく符号2により示す。ファイバ2は、図2に示すように、トーピド部分および金型部分を通り抜ける。PVC、PA、HFFR等もしくは他に適切な材料とされる、緩衝層を形成する材料は、金型部分7とトーピド部分8の間に形成された溝部を介して供給され、それによってファイバの周りに展開されかつファイバの表面に密着する。
【0012】
本発明の基本的発想によれば、ライン張力と離型力の間には相関があると推定される。金型部分とトーピド部分の間の間隔が増すとき、ライン張力も増すことが知られている。さらに、金型部分とトーピド部分の間の間隔を様々に変え、通された製品からコーティングの離型に要する力を求めることが考えられる。図3は、上述の相関の一例を示す。図3の例は、ライン速度毎分200メートルで測定された。運転速度もまた上述の従属性に影響を及ぼす。図4および5は、それぞれ速度毎分400メートル(図4)および毎分600メートル(図5)で運転した図3の製品から得られた結果を示す。様々なファイバ/緩衝材料について固有の相関を求めることも必要とされる。
【0013】
ライン張力の標的値は、上記の相関によって求められる。標的値は、様々な場合において運転速度、材料、その他上述の詳細次第により、様々に異なる。また、本発明は押出しヘッド3と引張り装置5の間のライン張力を測定することも重要である。測定は、手段10によって行うことが可能とされる。次いで、得られた測定データが標的値と比較され、押出しヘッド3の金型部分7および/またはトーピド部分8の位置がファイバの進行方向で調整され、それによって、ライン張力測定から得られた測定値が標的値に到達するであろう。ライン張力を測定するための構成は調節装置9を備え、同装置は、押出しヘッド3の金型部分7および/またはトーピド部分8のファイバ軸方向の位置を、ライン張力を測定する手段10から得られた測定データおよび既知のライン張力と離型力との間の相関により得られた標的値に基づいて調整するように構成される。金型部分7および/またはトーピド部分8の位置は、したがって、ライン張力が上記のように求めた標的値に到達するように調整され、それによって、製品の離型に要する力もまた所望の値となるであろう。ファイバの軸方向とは、ファイバの進行方向または進行方向に対向する方向を指す。
【0014】
調節装置9にはメモリ手段を設けるのが有利とされ、同手段によって様々な状況に関して標的値をメモリに入力することが可能とされる。同調節装置には、例えばライン張力を測定する手段10から得られた測定データを表示する表示手段11も備えることが可能とされる。標的値および他の光学的データも前述の表示手段11に表示することが可能とされる。
【0015】
押出しヘッド3の調整は、様々な方法で実施することが可能とされる。図2は、1つの実施例を概略的に示す。押出しヘッド3に関しては、リム部12を配置することが考えられ、同リム部の回転運動が、例えば螺旋コイル伝達により、金型部分7および/またはトーピド部分8に伝達されるように構成される。リム部12は、動力源13および動力伝動機構14によって回転するように構成することが考えられる。例えば、リム部12ははめば歯車とすることができ、伝動機構は、例えばコグドベルトを備えることが可能とされる。動力源は、例えば電動機とすることが可能とされる。嵌め歯歯車/コグドベルト機構に代えて、ピニオン/チェーン機構等を使用することが考えられる。
【0016】
図2の例においては、リム部12は金型部分7に配置され、それによって金型部分7は可動部として設けられる。トーピド部分8を可動部として設けることも可能である。また、金型部分7およびトーピド部分8双方とも可動部とする構造を設けることも考えられる。
【0017】
押出しヘッド3の位置調整は、シリンダ、液圧式シリンダ、リニアモータ、熱膨張アクチュエータもしくは別の適切な機構により実施することも可能とされる。
上述の実施形態は本発明を何ら制限せず、本発明は請求項の範囲内で自由に変更が可能とされる。したがって、本発明の構成もしくはその詳細は必ずしも図面に見る通りとする必要はなく、他の解決法もまた考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による構成を含む光ファイバ用コーティングラインの概略的側面図である。
【図2】本発明による構成の実施形態の概略的側面図である。
【図3】様々な状況においてコーティングの離型に要する力と金型部分の位置との間の相関の例を示す図である。
【図4】様々な状況においてコーティングの離型に要する力と金型部分の位置との間の相関の例を示す図である。
【図5】様々な状況においてコーティングの離型に要する力と金型部分の位置との間の相関の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ(2)がファイバ出発点(1)から引張り装置(5)によって金型部分(7)およびトーピド部分(8)を備える押出しヘッド(3)へと巻回を解かれ、それによって、一次被覆されたファイバの表面に前記一次被覆されたファイバに密着接触する緩衝層が配置される、コーティングラインにおける方法であって、かつ前記方法において前記密着被覆されたファイバは前記押出しヘッド(3)の下流側で所定の方式で冷却される方法において、ライン張力の標的値をライン張力と前記緩衝層の離型に要する力との間の相関により求めるステップと、前記押出しヘッド(3)と前記引張り装置(5)の間のライン張力を測定するステップと、得られた測定データを前記ライン張力と前記緩衝層の離型に要する前記力との間の前記相関により得られる前記標的値と比較するステップと、前記押出しヘッド(3)の前記金型部分(7)および/または前記トーピド部分(8)の位置を前記ファイバの軸方向で調整し、それによって前記ライン張力測定から得られる測定値が前記標的値に到達するステップとを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ライン張力と前記離型力の間の前記相関は、様々なファイバ/緩衝材料およびその組合わせに関しておよび/または前記ラインの様々な進行速度に関して求められることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ライン張力と前記離型力の間の前記相関はメモリに記憶されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ファイバ(2)がファイバ出発点(1)から引張り装置(5)によって金型部分(7)およびトーピド部分(8)を備える押出しヘッド(3)へと巻回を解かれるように構成され、前記金型部分(7)および前記トーピド部分(8)は一次被覆されたファイバの表面に緩衝層を塗布するように構成され、前記緩衝層は前記一次被覆されたファイバと密着接触し、この生産ラインにおいて、前記密着被覆されたファイバは前記押出しヘッド(3)の下流側で所定の方式で冷却されかつ前記生産ラインは前記押出しヘッド(3)と前記引張り手段(5)の間のライン張力を測定する手段(10)を備える、コーティングラインにおける構成において、前記押出しヘッド(3)の前記金型部分(7)および/または前記トーピド部分(8)の位置を、前記ファイバの軸方向で、前記ライン張力を測定する前記手段(10)から得られた測定データおよび既知の前記ライン張力と離型力との間の相関によって得られた標的値に基づいて調整するように構成された調節装置(9)を備えることを特徴とする構成。
【請求項5】
前記調節装置(9)は、様々な標的値を記憶するためのメモリ手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の構成。
【請求項6】
前記調節装置(9)は、前記ライン張力を測定する前記手段から得られる前記測定データを表示するための表示手段(11)を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の構成。
【請求項7】
前記押出しヘッド(3)に関し、リム部(12)が配置され、その回転運動が螺旋コイル伝動によって前記金型部分(7)および/または前記トーピド部分(8)に伝達されるように構成されること、かつ前記リム部(11)は動力源(13)および動力伝動機構(14)によって回転されるように構成されることを特徴とする請求項4に記載の構成。
【請求項8】
前記リム部(12)は歯車リムとし、前記動力伝動機構(14)はコグドベルトまたはチェーンとし、かつ前記動力源(13)は電動機とすることを特徴とする請求項7に記載の構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−509202(P2009−509202A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531725(P2008−531725)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050327
【国際公開番号】WO2007/034023
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508087859)
【Fターム(参考)】