説明

コーティング材とこれを用いるコーティング方法

【課題】風化珊瑚を主成分として含み、建築資材として使用可能なコーティング材とこれを用いるコーティング方法を提供する。
【解決手段】風化珊瑚からなる粉体と、この粉体に対して0.5〜10重量%のでんぷん糊を含むコーティング材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング材とこれを用いるコーティング方法に関し、詳しくは、主として建築資材としての内外装、中間層などとして用いるコーティング材とこれを用いるコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気密性、断熱性を高めた建築物が増加しているため、室内外温度差により壁面などに結露を生じて、これが原因となって黴が発生したり、室内に籠もった煙草臭や塗料臭を除去し難くかったり、あるいは壁材(接着剤、防黴材などを含む)から発生した有害ガスのために居住者の健康を阻害したりする問題が多発している。
【0003】
かかる問題を解決するため、例えば、吸放湿性を有する、いわゆる調湿材料である珪藻土を主成分とする内装用壁材を用いて、揮発性有機化合物(VOC)の放散を防止できる技術などが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
もっとも、珪藻土はそのままでは多孔性ではなく、高温加熱して始めて多孔性を有するようになり、必ずしも扱い易い材料ではないため、炭酸カルシウムを主成分とし各種ミネラル成分を含むなど多機能な優れた特性を有し、多孔性を本来的に備えた風化珊瑚が注目されており、これの建築資材としての使用が検討されている。
【特許文献1】特開2003−31396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、風化珊瑚は、珪藻土、石灰など他の主たる材料に添加物として少量混入させることにより内外装材に利用できても、本来的に結合性を有していないため、風化珊瑚を主たる建築材料として使用することはできなかった。そのため、風化珊瑚の有する優れた調湿性、消臭性、防黴性、抗菌性などの諸特性を十分に発揮させることはできていない。
【0006】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ね、試行錯誤を繰り返した結果、好適なバインダーとその使用方法を見出し、粉体状の風化珊瑚と少量のバインダーのみからなる建築材料を実現するに至った。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、風化珊瑚を主成分として含み、建築資材として使用可能なコーティング材とこれを用いるコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係るコーティング材の特徴構成は、風化珊瑚からなる粉体と、この粉体に対して0.5〜10重量%のでんぷん糊を含むことにある。
【0009】
この構成によれば、従来、困難であった風化珊瑚のみからなる粉体に対しても、壁材などの内外装材として使用することができ、風化珊瑚の有する調湿性、消臭性、防黴性、抗菌性、マイナスイオン放出、断熱性、消音性などの諸特性を十分に発揮させることができる。しかも、使用済になった場合も、無害であるため、土壌中に放出することに何ら支障はなく、環境に好ましい資材となり得る。でんぷん糊が0.5重量%未満では、建築資材としての使用時に結合力が弱く、保形性に劣るため好ましくない。しかし、10重量%を越えてでんぷん糊を含ませる必要はなく、その場合、かえって風化珊瑚の優れた機能を低下させることになり好ましくない。
【0010】
その結果、風化珊瑚を主成分として含み、建築資材として使用可能なコーティング材を提供することができた。
【0011】
前記でんぷん糊がコーンスターチからなることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、風化珊瑚の粉体との粘着力が強く、耐久性に富み、風化珊瑚の高多孔性などの機能を損なわず、しかも安価であり、廃棄した場合には、もとより無害である。
【0013】
更に、顔料を0.1〜0.5重量%含むことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、有色の内外装材として使用でき、装飾性を高めることができて利用範囲が広くなる。顔料は、用途によって種々の配合とすることができるが、0.1重量%未満では、有色性に乏しく、0.5重量%を越えて含ませると、風化珊瑚の機能を相対的に低下させる。
【0015】
また、本発明にかかるコーティング方法の特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング材に、水を添加することにより粘度調整し、これをコーティング対象物に被覆することにある。
【0016】
この構成によれば、風化珊瑚を主成分として含み、建築資材として使用可能なコーティング材を用いるコーティング方法を提供することができる。尚、粘度調整のための水は、コーティング手段にもよるが、スプレーガンを用いて効率よく塗布する場合、1.0〜1.4kg/kg程度が好ましい。
【0017】
前記でんぷん糊としてベータ化されたコーンスターチを用いると共に、このコーンスターチを前記風化珊瑚粉体に対して0.5〜10重量%混合し、これらを吹きつけることによりコーティング対象物を被覆することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、風化珊瑚の粉体との粘着力が強く、耐久性に富み、風化珊瑚の高多孔性などの機能を損なわず、しかも安価に仕上げることができ、コーティング作業が効率的となる。特に、ベータ化されたコーンスターチをでんぷん糊として用いると、風化珊瑚の粉体どうしが一層強固に固着される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係るコーティング材は、粉体状の風化珊瑚をバインダーとしてのでんぷん糊を混合したものからなる。風化珊瑚(風化造礁珊瑚)は、死滅した珊瑚が長年にわたり風化されて砂状に形成されたものであり、無機化された骨格から構成されている。これを、そのまま又は適度な粒径に粉砕して、粒度調整し使用することができる。
【0020】
バインダーとしてのでんぷん糊は、粉体状の風化珊瑚に対して0.5〜10重量%程度でよく、十分混合することにより、個々の粉体状風化珊瑚が強固に結合されており、かかる混合物をそのまま壁材として塗布することができる。バインダーを混合したとしても、風化珊瑚自体の多孔性は失われず、壁材として使用した場合でも、調湿性は維持される。
【0021】
バインダーは、植物性であるでんぷん糊を用いる。特に、コーンスターチのベータ化したもの(でんぷん老化)を用いることが好ましい。風化珊瑚の粉体との粘着力が強く、耐久性に富み、風化珊瑚の高多孔性などの機能を損なわず、しかも安価であり、廃棄した場合に無害である。
【0022】
つぎに、本実施形態のコーティング料をコーティングする方法について説明する。
【0023】
上記コーティング材に水を適量添加して粘度を調整した後、スプレーガンを用いて吹きつけることにより、被覆対象物である壁材などにコーティングする。粘度調整に用いる水の添加量は、1.0〜1.4kg/kg程度でよい。木質の壁材にコーティングした場合、風化珊瑚がその抗菌性、防黴性を発揮し、長年にわたって使用できる。
【0024】
また、木質基材に石膏ボードなどを貼付する場合、木質基材と石膏ボードとの間に、上記コーティング材を吹きつけることにより、下地して機能させることができ、従来のように、有害物質を接着剤として大量に使用する必要はない。
【0025】
本実施形態のコーティング材には、少量の顔料を添加することにより、着色することができ、有色コーティング材料として内外装用に使用できる。その場合、顔料としては、0.1〜0.5重量%程度でよく、好ましくは、0.1〜0.3重量%含み、色合いその他、目的に応じて種々の配合とすることができる。この場合、顔料としては、植物性の天然顔料を用いることが好ましい。廃棄した場合に無害となるからである。
【0026】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、コーティング材を、スプレーガンを用いて吹きつける例を説明したが、コーティング対象物に対するコーティング方法は、これに限定されるものではなく、コテやローラーを用いてコーティングするようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、種として内外装の壁材としての使用を説明したが、屋根材として使用し、断熱性を高めることもできる。更に、ハニカム形状に構成し、家屋、種々の建屋などの床下の吸排気孔などとして使用することもできる。ハニカム自体は、不織布などにより形成でき、これに上記風化珊瑚とでんぷん糊とをコーティングすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、建築物の内外装のみならず、床下調湿材、屋根材など種々の建築資材として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風化珊瑚からなる粉体と、この粉体に対して0.5〜10重量%のでんぷん糊を含むコーティング材。
【請求項2】
前記でんぷん糊がコーンスターチからなる請求項1のコーティング材。
【請求項3】
更に、顔料を0.1〜0.5重量%含む請求項1又は2のコーティング材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング材に、水を添加することにより粘度調整し、これをコーティング対象物に被覆するコーティング方法。
【請求項5】
前記でんぷん糊としてベータ化されたコーンスターチを用いると共に、このコーンスターチを前記風化珊瑚粉体に対して0.5〜10重量%混合し、これらを吹きつけることによりコーティング対象物を被覆する請求項4のコーティング方法。

【公開番号】特開2006−160892(P2006−160892A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354889(P2004−354889)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(302030701)中外産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】