説明

コーティング材料

【課題】高い疎油性値を有するコーティング材料を提供すること。
【解決手段】一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)の少なくとも1つの化合物A〔Rは加水分解されない有機基〕、及び一般式R'MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)の少なくとも1つの化合物B〔R'は加水分解されない有機基、少なくとも1つのR'は少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、Mは、主族III〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素、Zは、加水分解される有機基、少なくとも1つのRは少なくとも1つのR'と等しくない〕の縮合物を包含するコーティング材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾されたポリシルセキシオキサン(高い架橋性を示す物質、例えば、実験式RSiO1.5を有する)を基にしたコーティング材料、その合成及びコーティング材料の応用に関し、その応用は、表面、とくに多孔性ポリマーの表面にコーティングを行い、温度に対して高い安定性を示す疎油性を得ることを目的とする。さらに本発明は、コーティング材料を有するコーテッド基材及びその使用、並びに換気及び排気エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー表面は、疎水性を示すが、一方、疎油性ではない性質の典型であり、表面張力が低い液体(溶媒)に対して湿潤性を示す。疎水性と疎油性が高いことで知られる微細多孔質のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でさえも、表面張力<28mN/mを有する液体により濡れが生じる(特許文献1参照)。
【0003】
ポリマー表面乃至は多孔性表面を、疎油化するフッ素含有のコーティング組成は、すでに数多くが知られてはいるが、とくに疎油性、温度安定性のグレード乃至は高温における温度安定性に改良の余地が残されている。
【0004】
特許文献1において、フッ素化した(メタクリル)アクリル酸アルキルに基づいたコーティング材料を使用してポリオレフィン(PP、PE)に行うコーティングが記載されている。
【0005】
特許文献2には、テフロン(登録商標)AFによる微細多孔質PTFE(ePTFE)の疎油性コーティングが記載されている。
【0006】
特許文献3は、微細多孔質ポリマーに対する撥油性コーティングとしてペルフルオロポリエーテルの使用を記載する。
【0007】
特許文献4において、側鎖にペルフルオロポリエーテルを有するケイ素アルコキシドを、シリコン表面の汚染防止層に使用することが記載されている。
【0008】
特許文献5において、アルコキシシラン、有機的に加水分解されない側鎖を有するアルコキシシラン及び空気に接する表面が架橋した後にペルフルオロ基が豊富になるようなペルフルオロ化側鎖を有するシランの混合物を基にしたコーティング材料が記載される。R.Kasemannらは、非特許文献1において、このような官能性層を、ゾルゲル法によって製造する方法を述べている。
【0009】
特許文献6からは、無機酸化物からゲルを製造する方法だけが知られるが、この場合に、少なくとも1つのフッ素化した無機酸化物前駆物質が、フッ素化した酸と混合物される。フッ素化した溶媒の添加が、無条件に必要とされる。この方法は、費用がかかり、そして環境問題が問題になる。その他に、このようにして製造された物質からなる層を、フッ素ポリマー層に対する“付着助層”として使用することが開示されている。これを疎油性の層として使用する可能性があることは記載されていない。特許文献7には、フッ素ポリマー及び特許文献6の方法により製造された無機酸化物から構成される組成が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP0,581,168
【特許文献2】EP0,561,875
【特許文献3】WO92/21715
【特許文献4】特開平4−213384号公報
【特許文献5】EP0 587 667
【特許文献6】WO97/01508
【特許文献7】WO97/01599
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】R.Kasemannら、New J. Chem.,1994,18,1117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明による課題は、高い疎油性値を示すコーティング材料を提供することにある。
【0013】
さらに課題は、基体、とくに微細多孔質ポリマーの表面にコーティング材料を塗布して、そのコーティングした基体が高い疎油性値を示すようにすることにある。
【0014】
さらに次の課題は、高い疎油性を示すコーテッド基体を製造し、高い温度安定性を付与することにある。
【0015】
さらに課題は、コーテッド基体を製造して、コーティングにより基体に生ずる通気性変化が極めて僅かであり、そして多孔性基体の場合には、多孔性への悪影響が、実質的に生じないようにすることにある。
【0016】
さらに次の課題は、環境問題に重要な、とくにフッ素化した溶媒を用いる必要がなく、このようなコーティング材料を製造することにある。
【0017】
最終的な課題は、多方面に使用することができて、そして液体の流入乃至は通過を阻害するような換気及び排気エレメントを調製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によるコーティング材料は、一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、及び一般式R' MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B〔式中、R' は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR' は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III 〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR' とは等しくない〕の縮合物を包含する。
【0019】
本発明により、コーティング材料を、基体の表面に塗布することができる。優先される実施形態においては、基体は、多孔性ポリマー、とくに繊維質の平面構成物又はフッ素ポリマー乃至はフッ素ポリマーブレンドであり、とくに微細多孔質の形状、例えば、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が優れている。
【0020】
さらに本発明は、コーティング材料を製造する方法を提供するが、ここで一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、及び一般式R' MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B〔式中、R' は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR' は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III 〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR' とは等しくない〕が混合されている。
【0021】
さらに本発明は、基体にコーティングを施す方法を提供するが、ここで本発明によるコーティング材料は、基体に塗布されて、そして硬化する。その他にも本発明は、コーティング材料を包含する換気及び排気エレメントを供給し、このエレメントは、基体とその少なくとも1つの表面に塗布されたコーティング材料を有し、ここでコーティング材料は、一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、及び一般式R' MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B〔式中、R' は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR' は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III 〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR' とは等しくない〕の縮合物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ねじの形状をした換気及び排気エレメントの図式的断面図である。
【図2】カバーをかけたねじの形状をした換気及び排気エレメントの図式的断面図である。
【図3】本発明による換気及び排気エレメントの中にあるコーテッド基材13の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
" 縮合物" とは、少なくとも1つの金属−酸素−金属の結合を有するオリゴマー又はポリマーを意味し、この結合は、通常、金属原子に結ぶ2つのOH基の縮合によって生じる。
【0024】
" 加水分解されない有機基" については、1個の金属原子に結合する任意の有機基であると理解されるが、この場合、反応媒体の中において金属と有機基(例えば、Si−C結合)の間の結合は、加水分解により開裂されない。
【0025】
" 加水分解される有機基" は、1個の金属原子Mに結合する任意の基であり、この基は、水との反応、必要な場合には、酸又は塩基による触媒作用によってM−O−M基を生成することができる。
【0026】
" ペルフルオロポリエーテル構造" とは、ポリフルオロオキシアルキレン基を意味し、式中、一般的に、少なくとも1つの酸素橋を通してポリ−又はペルフルオロ基が結合している。
【0027】
" 膜" は、本出願の意味において、多孔性フィルムである。
【0028】
" 多孔性" とは、相互に結合している孔部又は中空部に名付けられた構造であり、物質中をパス又は通路が貫いて形成される。
【0029】
基体の" 表面" とは、外表面を意味し、そして存在する場合には、内表面も含める。内表面とは、多孔性基体の孔部又は中空部の壁を意味する。
【0030】
本発明者らの最初の発見によれば、少なくとも2つの化合物からなる混合物の加水分解及び縮合によって、すなわち加水分解される基を有する少なくとも1つの金属化合物、及び少なくとも1つの加水分解されない有機基を有する少なくとも1つの金属化合物を使用することによって、この場合、少なくとも1つの加水分解されない基は、ペルフルオロポリエーテル構造を含まなければならないが、コーティング材料を得ることができて、発明の課題が解決された。
【0031】
このようなコーティング層は、非常に高い疎油性によって特徴づけられる。この場合に、コーティング層及びコーテッド基体の油価は、>3、とくに>5、そして好ましくは>7であることを目標とする。非常に高い疎油性は、層表面に濃縮化されているペルフルオロポリエーテル鎖が、層表面の下で、高架橋性のポリ縮合物から形成されているマトリックスの影響によって極端に秩序化された構造(例えば、結晶化)をとることによって説明することができる。
【0032】
重要なのは、前記の少なくとも2つの化合物、すなわち、それぞれ化合物A及び化合物Bの存在である。1つの化合物だけを選んだ場合には、高い油価を得ることはできない。
【0033】
コーテッド基体の油価は、さらに基体表面の多孔性に依存する。
【0034】
さらにコーティング層は、高温においても高い疎油性乃至は温度安定性を示している。このようにコーテッド基体の油価は、160℃において12時間、とくに200℃において2時間、そしてとくに好ましくは250℃において2時間の熱処理を行っても変化が見られない。ギヤオイル(Automatic Transmission Fluid - ATF Oil, Autran DXII, BP ハンブルク)は、200℃における12時間までも構造物を湿潤させない。これが特に意味することは、コーティング層の上において、それに続く160℃、12時間の熱処理を経てギヤオイルの液滴が示す接触角が≧10°であることである。
【0035】
金属原子Mの好ましい例は、Al、B、Ge、Sn、Ti、Zrであり、とくにSiが優先される。
【0036】
遊離体(モノマー化合物又は必要な場合には、種々の原子Mを有するオリゴマー乃至はポリマーの前縮合物)における加水分解される基Zの例として、ハロゲン、そして特に好ましくはOR”基が挙げられ、式中、R”は、例えば、アルキル基、特に好ましくは1〜5個の炭素原子(メチル、エチルなど)を有するアルキル基のような有機基、例えば、C=OCH又はC=OCHCHのようなカルボニル官能基、例えば、フェニルのようなアリール化合物、アルキルメトキシ化合物又はアルキルエトキシ化合物のようなアルコキシ官能アルカンである。とくに優れた有機基R”は、加水分解によって、沸点<200℃、とくに好ましくは<100℃のアルコールを生成するが、これによって離脱する加水分解生成物の除去が、簡単な方法によって可能になるために優れている。加水分解されるOR”基の代替として、ほかの基(例えば、ハロゲン)を使用することもできるが、このとき加水分解によってMOH基が生成する。いずれにしても、これらの基は、とくには好ましくなく、同時に生成する加水分解の生成物(酸、塩)を層から除去することが、通常、簡単にできないことによる。
【0037】
加水分解されない基R又はR’において、ここで1つの金属原子Mに、1つ又はそれ以上のR又はR’も結合することができるが、その例に、次のようなフッ素を含まない基が挙げられる:アルケニル(とくにC−C−アルケニル)、アルキニル(C−C)、アクリル、メタクリル、アリール(とくにC−C10)であり、ここで優先される基は、アルキル基(C−C、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)である。
【0038】
一般式RMZ又はR' MZで表わされるモノマー化合物のほかに、必要な場合には、種々の金属原子M、そして基R又はR’を有するオリゴマー乃至はポリマーの前縮合物を使用することもできる。
【0039】
フッ素を含み、加水分解されない基R、R’の例は、ペルフルオロポリエーテル側鎖を有する一般式の化合物で表わされる:
(R−X−)MRmb;(a+b+c=3、4;a=1〜3;b=0、1、2)、
式中、Rは、加水分解されない有機基である。とくにM=Si及び/又はZ=OR”が優先される。
は、ペルフルオロポリエーテル構造を表わし、例えば、
CFCFCF〔OCF(CF)CFOCF(CF)(CFCF(x及びy≧0、好ましくはx=1〜10)
又は
CF〔OCF(CF)CF(OCF(d及びe≧0、好ましくはd=1〜10)である。
【0040】
ここでペルフルオロポリエーテル構造は、好ましくは6〜100個のフッ素原子を含有する。
【0041】
Xが表わす基は、Rを、少なくとも2つの原子によってSiから分離するが、例えば、次の基がある:
−(CH(z=2〜4)、COOCH(CH)(OH)CH、COO、SONH、CONH、COOCHCH(OH)(CH(z=2〜4)、COO(CH(z=2〜4)、SONH(CH(z=2〜4)、CONH−(CH(z=2〜4)。
【0042】
加水分解される基Z及び加水分解されない基Rの例、R基を有する成分の例は、上記のRMZ乃至はR' MZ化合物の場合と同じである。
【0043】
優先される化合物Aは、Si(OR”)、とくに優先される化合物Aは、RSi(OR”)であり、式中、Rは、加水分解されない有機基であり、そしてR”は、C〜Cアルキルである。
【0044】
化合物Bにおいては、R' Si(OR”)が優先され、式中、R' は、加水分解されない有機基である。とくに優先される化合物Bは、次からなる:
CF〔OCF(CF)CF(OCFOCONHCHCHCHSi(OR)(d及びe≧0、好ましくはd=1〜10)。
【0045】
基R:R' のモル比は、とくに 0.1 : 100 と 100 : 0.1 に間に存在する。
【0046】
添加成分として、例えば、元素Ti、Zr、Al、Siの金属酸化物粒子の懸濁液を加えることもできる。優先して使用される粒子サイズは、<1μm、とくに好ましくは<100nmである(例えば、シリカゾル(SiO)、例えば、Bayer 社製) 。これらの成分は、表面のOH基を通じて縮合反応により無機の網目構造に組み込まれ、そして層の機械的性質が改良される。
【0047】
コーティング材料は、好ましくはゾルゲル法によって製造される。ゾルゲル法とは、加水分解される基を有する分子から出発して、縮合によりコロイド分散的に溶解する粒子(ゾル)を形成する方法であると定義される。このようなゾルにおいては、通常、縮合反応は、完全には進行しない。ゾルとは、コーティング材料として使用できる液体状の中間段階である。コーティングが行われ、縮合により生成した構造が完全に構築されると、このとき、必要な場合には、ほかの架橋機構(例えば、有機官能基の重合)も使用してもよいが、この時点において構造内にある孔部に溶媒が満たされる(ゲル)。溶媒を除去(例えば、熱的方法、真空処理)すると、基体上に層として残る物質が生成する。
【0048】
従って、コーティング成分を製造するためには、上に詳しく述べた遊離体の混合と加水分解を行う。混合物を、最も簡単に加水分解するには、周囲温度と周囲圧力のもとで行い、その他の添加剤を加えず、さらに物理的な処理を行うこともしない。しかしながら、この遊離体に、好ましくは水(基Zの1モルについて、好ましくは>0.5 モル)を加え、乃至は触媒として比較的少量の酸又は塩基を添加する。酸及び/又は塩基の優先される濃度は、混合物の1リットルについて>0.1 ミリモル、とくに好ましくは混合物の1リットルについて> 0.1ミルモルと< 10 モルの間である。無機乃至は有機の酸又は塩基の例として、とくにアンモニア、アルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物(NaOH、KOH)、アミン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸が挙げられる。とくに優れるのは、揮発性の化合物であり、これらは、例えば、熱で誘発される硬化ステップの際に容易に層から除去される。触媒の混合物を使用してもよく、その場合には、触媒の全濃度を、1リットルについて 10 モルまで用いることができる。合成の間は、攪拌することが好ましく、必要な場合には、コーティングまで行う。反応速度を低下させるためには、混合物を冷却すれば可能になる。
【0049】
通常の技術水準からは外れるが、段階的に加水分解を進めることが、概して有利であり、この場合に、1つ又はそれ以上のステップにおいて、R基をもたない成分の加水分解を行うが、例えば、水を添加し、そしてこれに続くステップにおいてR基を有する成分を加える。すべての成分を含む混合物の加水分解を、単一のステップで行うと、しばしばコーティング成分の相分離が観察されて、不均一な層が形成されることになる。
【0050】
加水分解のステップ後又はステップ間に、適切な、環境に問題のない溶媒(例えば、1つ又はそれ以上の官能性アルコール(C〜C10、とくに揮発し易いメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい)を優先的に添加して固体含量(好ましくは 0.1〜50重量%) を調節する。
【0051】
とくに無機酸を、触媒として合成中に使用すると、それぞれの加水分解ステップの後に、又は合成が終了してから、イオン交換体を使用することができ、化学的安定性乃至は可使時間を減少させるイオンが分離される。この場合に、イオン交換体は、通常、固体の形状で添加され、引き続いて濾過によって分離される。使用されるイオン交換体の例として、アニオン交換体乃至はカチオン交換体、例えば、Dowex 50 W X 2、アンバーライトA-21 (フルカ化学株式会社 Fluka Chemie AG、スイス) がある。
【0052】
溶媒として、水を使用しなければならない場合には、加水分解乃至は部分縮合ステップの後に、生成した揮発性成分の大部分が、例えば、蒸留によって分離される。引き続いて水が加えられて懸濁液が生成し、次に必要な場合には、懸濁液に表面活性物質(表面活性剤)を、表面張力の低下と濡れ特性向上ために添加する。微細多孔質基体を濡らすことによって、基体の内部表面についても均一なコーティングをすることが可能になる。
【0053】
コーティングを行う基体としては、実質的にあらゆる物質を使用することができるが、例えば、金属、ガラス又はポリマー、とくに多孔性ポリマーが挙げられる。
【0054】
基体として適切なポリマーには、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、とくに延伸膨張PTFE(ePTFE)、微細多孔質の延伸PTFEのようなフッ素ポリマー〔米国特許 3,953,566 及び 4,187,390に記載される〕、親水性の浸透剤及び/又は層が備えられている延伸PTFE〔米国特許 4,194,041に記載される〕、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン; ポリアミド; ポリエステル; ポリカーボネート; ポリウレタン; コポリエーテルエステルのようなエラストマー、そしてその類似物、並びにポリマーブレンドが包含される。
【0055】
基体は、種々の形状をとることができるが、例えば、膜又はフィルム、パッキング又は繊維質の平面構成物として存在する。繊維質の平面構成物は、編物、ニット製品、織物又はフリースであると理解される。基体は、積層物であってもよく、膜又はフィルムからなる少なくとも1つの層及び繊維質の平面構成物からなる少なくとも1つの層により構成される。層は、相互に接合し、例えば、貼付け、溶接又は貼合わせの形状をとる。基体を、積層物又はフィルムの形状にしなければならない場合は、例えば、コーティング処理の後で繊維質の平面構成物層と接合させてもよい。
【0056】
コーティング材料を、通常のコーティング技術によって基体表面に塗布した後に、好ましくは架橋を熱的に誘発させ、又は揮発性成分(水、加水分解の際に生成するか、添加されるアルコール類)を気化させると、均一な薄膜が得られる。多孔性構造の場合には、多孔性乃至は孔サイズを著しく減少させないために、内表面に均一で、非常に薄い層(ナノメートルからマイクロメートルの範囲)を設けなければならなく、例えば、フィルム形成又は孔部の充填を回避しないと、通気性が著しく減少する結果になる。このとき層の厚さは、当然ではあるが塗布量に依存し、例えば、塗布量を増すことによって、通常は通気性の減少が観察される。コーティングを行うことによって、通気性への影響は、幸いにもごく僅かになり、すなわち通気性の減少は、コーティングを行わない基体に比べて高々40%、好ましい場合には高々20%になる。
【0057】
基体表面に、極性の表面基、とくにOH基を生成させるためには、基体を前処理すればよいが、例えば、コロナ又はプラズマによる前処理を行い、基体表面のOH基とゾル成分のOH基を縮合させて、基体とコーティング材料の化学結合を可能にする。
【0058】
液状媒質に適用するために知られているあらゆる塗布方式が使用できるが、例えば、スプレー、ディッピング、ドクターブレード、スクリーン捺染があり、とくにローラ塗布技術が用いられる。ここで濃度、溶液中の固形物含量及び/又は圧力又は温度を変化させることができる。本発明による方法においては、コーティング材料の固形物含量を調整し、それによって層厚を制御することが簡単にできるが、例えば、合成中又は合成後に添加する溶媒量(例えば、イソプロパノール、エタノール)の変化によって行う。
【0059】
コーティングステップに引き続いてコーテッド基体の硬化を行う。硬化には、例えば、熱処理、IR照射又は真空処理を使用することができる。このようにしてコーティング層を、例えば、50℃〜250℃において 0.1〜60分、好ましくは120℃〜180℃において硬化させる。このような処理は、溶媒を蒸発させるためにも行われる。
【0060】
本発明によるコーテッド基材は、例えば、フォイル、膜又は積層物の形状を示す多孔性基体であってよく、通気性、温度安定性及び疎油性が良好であることにより、例えば、フィルタ材料などの多方面の用途がある。換気及び排気エレメントへの使用においても、本発明によるコーテッド基材は、とくに適性を示すが、それは材料の性能により、本発明によるコーテッド基材は、同時に液体媒質が流入又は貫流することを阻止できるからである。このような使用例は、なかんずくエレクトロニクスケース、センサ、照明器具、溶液タンクに用いる圧力調整エレメントにあり、とくに技術的な又は自動車への応用が見られる。
【0061】
多孔性でない基体の場合には、本発明によるコーティング材料は、その性質から、例えば、汚染防止剤乃至は固化防止剤として使用される。
【0062】
本発明による換気及び排気エレメントは、ここの記載した発明によるコーテッド基材を包含するが、通常は、換気及び排気容器の開口部を、発明によるコーテッド基体を用いてカバーする形で使用される。本発明によるコーテッド基体(膜、積層物)と容器の開口部の縁を接合させるためには、形状と接合技術は任意でよく、これによって液体を遮断する接合をすることができる。接合技術の例には、締めつけ、貼りつけ、吹きつけの方式がある。優れているのは、本発明によるコーテッド基体を、自動粘着フォイルを用いて換気及び排気容器の開口部の縁に貼りつける方法である。さらに優れた変形方法としては、フレームが、優先されるが、このフレームには、少なくとも1つの空気流入口乃至は排出口が備えられ、空気が流入乃至は排出する開口部が、コーテッド基材によってカバーされる。フレームの機能によって換気及び排気容器との接合技術が容易に使用され、例えば、ばね式ラッチのねじ込み、噛み合わせなどが用いられる。
【0063】
コーテッド基材を有するか、コーテッド基材に接合されているフレームの形状と材料は、多角的に変えることができる。
【0064】
使用する領域に応じて、フレームの素材を、金属、セラミクス、合成樹脂(とくにポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE))にすることができる。
【0065】
フレームの形状とサイズは、エレメントが差し込まれる換気及び排気容器の外口部乃至は開口部に依存している。本発明による換気及び排気エレメントのフレームは、リング又はさや形ケースの形状を取ることができる。本発明による換気及び排気エレメントにおいては、軸方向に貫通して穿孔されるねじの形状が優先され、このとき穿孔を行うねじヘッドの部分は、完全にコーテッド基材によってカバーされている。
【0066】
コーテッド基材を、種々の方式によりフレームに接合させることができる。例えば、2つのリングからなる2部構成フレームにおいて、リングの間を締めつけて固定する。好ましくはコーテッド基材を、フレームに貼りつける。この場合には、コーテッド基材に粘着層を付けて、フレームを製造するときに固定させる。
【0067】
次に示す図を用いて換気及び排気エレメントの優先される実施形態を記す。
【0068】
図1において、換気及び排気エレメント1が示されるが、そのフレーム10は、軸方向に貫通した穿孔部11をもつねじの形状をとる。ねじヘッド12の領域においては、貫通穿孔部11が、コーテッド基材13によって覆われている。この実施形態におけるコーテッド基材13は、好ましくは、例えば、ePTFEからなる膜15の形をした基体、又は膜15の層及び繊維質の平面構成物16の層からなる積層物の形をした基体から構成される(図3参照)。この基体には、本発明によるコーティング材料が塗布されている。
【0069】
フレーム10の外側に取り付けられている螺旋14によって、換気及び排気エレメントを、ケースの中にある外口部に、例えば、穿孔部に容易にねじ込むことができる。
【0070】
フレームにおけるコーテッド基材の位置は、それぞれの使用と製造方法によってねじヘッド12の上端部又は貫通穿孔部11のある深さの箇所に置いてよい。
【0071】
図2において、換気及び排気エレメント1の別の実施形態が示されるが、この図では図1に記載される実施形態に加えて、カバー20が取り付けられている。カバー20は、ねじヘッドの周辺上に間隔をおいて置かれている、例えば、爪のような固定素子21を介して、さや形ケース10と強力に接合している。さや形ケース10の上端部とカバー20の下端部の間に、ある距離が置かれ、ここを通して空気の流出入が行われる。
【0072】
本発明による換気及び排気エレメントは、使用したコーテッド基材の性質に基づき、化学的及び熱的に優れた安定性を示すが、高温においても、コーテッド基材は疎油性を有している。従って、本発明による換気及び排気エレメントは、例えば、密閉キャップの圧力調整エレメントとして使用することができるが、このとき容器から液体の流出が回避され、そして同時に容器の十分な換気と排気が保証される。
【0073】
撥油性
油価は、AATCC118−1983(米国国家規格)によって求める。
【0074】
ここでは室温において、定義された表面張力(液体1から8までの方向に向けて減少する)を有する定義された8つの液滴を、対象の表面に載せる。油価の測定は、30秒の間に表面乃至は構造物を濡らさない液体(1〜8)を定めることによって行う。液体番号(油価)が高いほど、撥油性(疎油性)も高くなる。
【0075】
コーティング材料自体の油価を測定するために、その材料のフィルムを、次の方法によって作る。すなわち、例えば、アルミニウムフォイルにコーティングを施してから、例えば、層の熱硬化を行い、その後、希酸によってアルミニウムをエッチングすると材料の薄膜だけが得られる。非多孔性の表面の場合には、その濡れにくさの定義を、対象の液体について接触角を高めていき、接触角が≧50°を示す時点において行う。
【0076】
通気性
通気性を求めるために使用した機器は、Coulter Electronics Limited 社製(Luton 英国)の Typ PorometerIIである。定義された圧力(1バール)のもとにおいて、1分あたりに1cmの面積を通過した空気量を測り、これをリットルで表わす。
【0077】
接触角
接触角の測定には、ゴニオメータ顕微鏡(クリュス有限会社 Kruss Gmbh、ハンブルク、Typ G40)を使用した。ここでコーテッド表面に載せられた液滴の接触角を室温において光学的に測定した。
【0078】
微孔サイズの測定
微孔サイズを求めるために使用した機器は、Coulter Electronics Limited 社製(Luton 英国)の Typ PorometerIIである。この機器により、微細多孔質材料にある微孔サイズの分布が、定義のように液体を気化して自動的に測定されるが、この方法はASTM Std. F316 - 86(米国国家規格)に記載される。標準微孔サイズは、平均の微孔サイズを使用する。
【0079】
本発明を、次の実施例を用いて詳しく説明する。本発明の内容に相当する、他のすべてのコーティング成分並びに基体に適用されることも自明の理である。
【実施例】
【0080】
実施例1及び2は、本発明によるコーティング材料の合成、本コーティング材料の基体への塗布、そしてコーテッド基体の性質について記述する。例として挙げた2つのコーテッド基体の油価は7を示す。
【0081】
実施例3及び4は、本発明によるコーテッド基材について記述するが、基体として積層物が使用されている。
【0082】
比較例1においては、本発明の加水分解される基によって官能化されたペルフルオロポリエーテルに代えて、欧州特許 EP-PS 0 587 667の教示によるペルフルオロ化したn−アルカンを有するアルコキシドを使用した。この層を用いると実施例1及び2と同じ基体上において、油価は2に達しただけであった。
【0083】
比較例2については、アルコキシにより官能化されたペルフルオロポリエーテルを、単一成分として用い、日本特許 JP-OS 4-213384 又は国際特許 WO 97/01508 の多くの実施例にも開示されるようにして、加水分解を行い、そしてコーティング材料として使用した。同じくこの場合にも油価2だけが得られた。この結果に示されるように、2つの成分を使用したときだけ、所望する高い油価を得ることができる。
【0084】
比較例3の場合には、2つの成分(テトラエトキシシラン及びC13CHCHSi(OC)が、原則として国際特許 WO 97/01508の実施例4の教示に相当する物質として、コーティング層の製造に使用された。このときも油価2だけが得られた。この結果によって再び示されたように、少なくとも2つの成分を使用することが、最少限に必要であるばかりではなく、高い疎油性を得るためには、本発明による成分を、特別に選ばなければならない。本実施例においては、国際特許 WO 97/01508の実施例の教示に相当するフッ素化した溶媒を使用した。
【0085】
比較例4は、原則として比較例3に相当するが、差異は、本発明において優れた点として記載されるように、溶媒として水とイソプロパノールの混合液を使用したことにある。この場合にも、油価2だけが得られた。
【0086】
実施例1
メチルトリエトキシシラン(ヒュルス Huels 製) 357g、テトラエトキシシラン(ヒュルスHuels製) 113g及びシリカゾル(バイエル Bayer製 Levasil 300/30 (30 % SiO/水)) 200g からなる混合物に、塩酸(37%)4gを、強く攪拌しながら加える。反応混合物を2時間以内に冷却して、イソプロパノール1348g を攪拌しながら添加する。14時間の攪拌を経た後に、上記の混合物(混合物A)100gに、イソプロパノール89g 及びペルフルオロポリエーテルで官能化したトリエトキシシラン11.25g
(CF〔OCF(CF)CF(OCFOCONHCHCHCHSi(OC、分子量 : 800〜900 ; Ausimont製 MF 407 )を加える。
【0087】
コーティング材料は、ローラ塗布技術(コーティング材料が充填されている2ローラの間でコーティングする)を使用して、米国特許 US 4,194,041 に記載される方法により、微細多孔質ポリマー膜上に塗布される(標準の微孔サイズ:0.2 μm、厚さ: 0.03mm)。塗布量は、実質的に固形物含量(この場合には11%)並びにローラ間隙の調整、そしてローラ圧によって定められる。
【0088】
溶媒の蒸発乃至は層を熱硬化させるために、塗布ステップに引き続いて膜を、150℃において連続加熱炉に入れ、そしてコーテッド基材を 1.5分の滞留時間のもとに処理する。
【0089】
固形物の塗布量を、示差秤量法で測ると 4.4g/mが得られる。
【0090】
油価は、両面とも7である。膜を移動してから、160℃で12時間、200℃で2時間、そして250℃で2時間の処理をした後に、それぞれについて油価を求める。すべての測定において、油価は、不変であり、7を示す。コーテッド膜の通気性は、cmあたり 4.8L/分である。
【0091】
液滴ATF油を、コーテッド表面に載せて、引き続き移動して160℃で12時間のもとに保つと、液滴の接触角は>10°を示す。
【0092】
実施例2
テトラエトキシシラン 22.6g及びイソプロパノール 20gからなる混合物を攪拌しながら、MF407 85gを加える。引き続いて 0.1モルHCl 6.3gを添加して一夜の攪拌を与える。この物質をコーティングする前に、重量比で1:4のイソプロパノールを加えて稀釈する。
【0093】
次の処理は、実施例1に類似して行う。この場合、コーティングしていない膜の通気性は、cmあたり 4.4L/分である。
【0094】
固形物の塗布量を測ると、6.8g/m が得られる。
【0095】
油価は、両面とも7である。コーテッド膜の通気性は、cmあたり3.0L/分である。
【0096】
液滴ATF油を、コーテッド表面に載せて、引き続き移動して160℃で12時間のもとに保つと、液滴の接触角は>10°を示す。
【0097】
実施例3
コーティング材料、コーティング技術及び硬化は、実施例1に類似して行う。基体としては、米国特許 US 4,194,041 に記載されるePTFE(公称の微孔サイズ 0.5μm) 及び Nylon Taffeta Texilからなる積層物(単位面積重量95±10g/ m、厚さ 0.1mm)を使用する。
【0098】
固形物の塗布量を、示差秤量法で測ると 5g/ mが得られる。
【0099】
油価は、ePTFE表面でも Nylon Taffeta表面でも7である。コーテッド膜の通気性は、圧力 0.1バールのもとで、cmあたり 0.6L/分であり、コーティングをしていない積層物と比較しても変化がみられない。
【0100】
液滴ATF油を、コーティングしたePTFE表面に載せて、引き続き移動して160℃で12時間のもとに保つと、油は、多孔性構造中には入らず、つまり液滴の接触角は>10°を示す。
【0101】
実施例4
コーティング材料、コーティング技術及び硬化は、実施例1に類似して行う。基体としては、米国特許 US 4,194,041 に記載されるePTFE(公称の微孔サイズ 0.9μm) 及び Polyester Texil (不織布) からなる積層物(単位面積重量99±10g/ m、厚さ 0.1mm)を使用する。
【0102】
油価は、ePTFE上でもポリエステル表面でも6〜7である。コーテッド膜の通気性は、圧力 0.1バールのもとで、cmあたり 1.7L/分であり、従って、変化は、コーティングしていない積層物と比較しても20%以下である。
【0103】
液滴ATF油を、コーティングしたePTFE表面に載せて、引き続き移動して160℃で12時間のもとに保つと、油は、多孔性構造の中には入らず、つまり液滴の接触角は>10°を示す。
【0104】
比較例1
実施例1に類似して処理するが、混合物A 100g に対して、MF407に代えてC13CHCHSi(OC)(ABCR社) 14g及びイソプロパノール188gを加える。
【0105】
次の処理は、実施例1に類似して行う。コーティングをしていない膜の通気性は、cmあたり 4.4L/分である。
【0106】
固形物の塗布量を測ると、4.4g/ mが得られる。
【0107】
油価は、両面とも2である。コーテッド膜の通気性は、cmあたり 3L/分である。
【0108】
比較例2
MF407 15gにイソプロパノール185gを加えて稀釈し、攪拌しながら 0.1モルHCl 0.95g を加えて一夜攪拌する。
【0109】
次の処理は、実施例1に類似して行う。コーティングをしていない膜の通気性は、cmあたり 4.2L/分である。
【0110】
固形物の塗布量を測ると、2g/ m が得られる。
【0111】
油価は、両面とも2である。コーテッド膜の通気性は、cmあたり 3.0L/分である。
【0112】
比較例3
テトラエトキシシラン5g、C13CHCHSi(OC 5g及びFC75 50g(ペルフルオロナフチル−テトラヒドロフラン、商標名Fluorinert FC 75のもとに PCR, Inc. Gainesville, Florida から購入できる) を混合し、攪拌しながらトリフルオロ酢酸 14.9gを加えて3時間の攪拌を与える。引き続いてFC75 75.9gを加え、引き続いて実施例1に類似させて、ローラ塗布を使用したコーティングをePTFEに行う。硬化は、150℃において30分行う。油価は2である。塗布量は、10g/mである。通気性の測定は、cmについて 1.2L/分である。
【0113】
比較例4
テトラエトキシシラン208.8g及びイソプロパノール200gを攪拌しながら 0.1nHClと混合する。17時間の攪拌を行った後に、反応混合物 10gにC13CHCHSi(OC 12.5g及びイソプロパノール 75gを加える。引き続き実施例1に類似させてローラ塗布を用いてePTFEにコーティングする。硬化は、140℃において30分行う。油価は2である。塗布量は、3.5g/mである。通気性を測ると、cmあたり 3.7L/分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A
〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、
及び
一般式R'MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B
〔式中、R'は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR'は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR'と等しくない〕
の縮合物を包含するコーティング材料。
【請求項2】
Mが、Siである請求項1に記載のコーティング材料。
【請求項3】
Zが、OR”であり、そしてR”が、有機基である請求項1又は2に記載のコーティング材料。
【請求項4】
少なくとも1つの化合物Bが、R'Si(OR)であり、そしてR'が、加水分解されない有機基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項5】
少なくとも1つの化合物Bが、
CF〔OCF(CF)CF(OCFOCONHCHCHCHSi(OR)(d及びe≧0、好ましくはd=1〜10)
である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項6】
ペルフルオロポリエーテル構造が、6〜100個のフッ素原子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項7】
基R:R'のモル比が、0.1:100と100:0.1の間に存在する請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項8】
少なくとも1つの化合物Aが、Si(OR”)であり、そしてR”が、C〜Cアルキルである請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項9】
少なくとも1つの化合物Aが、RSi(OR”)であり、Rが、加水分解されない有機基であり、そしてR”が、C〜Cアルキルである請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項10】
該材料が、SiO粒子も含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項11】
油価≧3を示す請求項1〜10のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項12】
油価≧5を示す請求項1〜10のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項13】
油価≧7を示す請求項1〜10のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項14】
一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A
〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、
及び
一般式R' MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B
〔式中、R'は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR'は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR' と等しくない〕
の混合物を包含するコーティング材料の製造方法。
【請求項15】
化合物A及びBが、水と混合される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
添加される水の量が、1モルの基Zについて>0.5モルである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
酸又は塩基が添加される請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
酸又は塩基の濃度が、1リットルの混合物について>0.1ミリモルである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
金属酸化物の粒子が添加される請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
金属酸化物粒子がシルカゾルである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基体及び基体の少なくとも1つの表面に塗布されたコーティング材料を含むコーテッド基材において、
一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A
〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、
及び
一般式R'MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B
〔式中、R'は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR'は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR'と等しくない〕
の縮合物が包含されるコーテッド基材。
【請求項22】
基体が、多孔性ポリマーである請求項21に記載のコーテッド基材。
【請求項23】
ポリマーが、少なくとも1種のフッ素系ポリマーからなるグループから選ばれる請求項22に記載のコーテッド基材。
【請求項24】
ポリマーが、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である請求項23に記載のコーテッド基材。
【請求項25】
基体が、膜、パッキング又は繊維質の平面構成物の形状である請求項21〜24のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項26】
基体が、少なくとも1つの膜層及び少なくとも1つの繊維質の平面構成物からなる積層物の形状である請求項21〜24のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項27】
基体が、膜であり、そして繊維質の平面構成物に接合している請求項21〜25のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項28】
油価≧3を示す請求項21〜27のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項29】
油価≧5を示す請求項21〜27のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項30】
油価≧7を示す請求項21〜27のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項31】
160℃において12時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項21〜30のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項32】
200℃において2時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項21〜30のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項33】
250℃において2時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項21〜30のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項34】
160℃において12時間の熱処理をした後に、コーティング層に載せたギヤオイル(ATF油)の液滴が、接触角>10°を示す請求項21〜33のいずれか1項に記載のコーテッド基材。
【請求項35】
請求項1記載のコーティング材料が、基体の上に塗布され、そして硬化される基体のコーティング方法。
【請求項36】
熱処理によってコーティング層が硬化される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
50℃〜250℃において0.1〜60分、好ましくは120℃〜180℃においてコーティング層の硬化が行われる請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項21〜34のいずれか1項に記載されるコーテッド基材の、フィルタ媒質としての使用。
【請求項39】
請求項21〜34のいずれか1項に記載されるコーテッド基材の、換気及び排気エレメントとしての使用。
【請求項40】
換気及び排気エレメントが、コーテッド基材を含有し、そのコーテッド基材が、基体及び基体の少なくとも1つの表面に塗布されたコーティング材料からなり、ここにコーティング材料が、
一般式RMZ(a=0〜3;b=1〜4;a+b=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物A
〔式中、Rは、加水分解されない有機基である〕、
及び
一般式R'MZ(x=1〜3;y=1〜3;x+y=3、4)で表わされる少なくとも1つの化合物B
〔式中、R'は、加水分解されない有機基であり、そして少なくとも1つのR'は、少なくとも2つの原子によってMから分離されたペルフルオロポリエーテル構造を含み、ここでMは、主族III〜V又は亜族II〜IVから選ばれた周期系の元素であり、そしてZは、加水分解される有機基であり、そして式中の少なくとも1つのRは、少なくとも1つのR'と等しくない〕
の縮合物を包含することを特徴とする換気及び排気エレメント。
【請求項41】
基体が、多孔性ポリマーであることを特徴とする請求項41に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項42】
ポリマーが、少なくとも1つのフッ素系ポリマーからなるグループから選ばれる請求項41に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項43】
ポリマーが、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である請求項42に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項44】
基体が、膜、パッキング又は繊維質の平面構成物の形状をとる請求項40〜43のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項45】
基体が、少なくとも1つの膜層及び少なくとも1つの繊維質の平面構成物からなる積層物の形状である請求項40〜43のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項46】
基体が、膜であり、そして繊維質の平面構成物に接合している請求項40〜44のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項47】
油価≧3を示す請求項40〜46のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項48】
油価≧5を示す請求項40〜46のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項49】
油価≧7を示す請求項40〜46のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項50】
160℃において12時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項40〜49のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項51】
200℃において2時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項40〜49のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項52】
250℃において2時間の熱処理をした後に、コーテッド基体の油価が不変である請求項40〜49のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項53】
160℃において12時間の熱処理をした後に、コーティング層に載せたギヤオイル(ATF油)の液滴が、接触角>10°を示す請求項40〜52のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項54】
換気及び排気エレメントが、フレームを有し、このフレームに、少なくとも1つの空気流入口乃至は排出口が具備され、そして空気が流入乃至は排出する開口部が、コーテッド基材によってカバーされていることを特徴とする請求項40〜53のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項55】
コーテッド基材が、フレームに貼りつけられていることを特徴とする請求項54に記載の換気及び排気エレメント。
【請求項56】
フレームが、軸方向に貫通して穿孔されているねじ形状をとり、このときねじヘッド部分における貫通穿孔部が、コーテッド基材によって完全にカバーされていることを特徴とする請求項54又は55のいずれか1項に記載の換気及び排気エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138410(P2010−138410A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53645(P2010−53645)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2000−503155(P2000−503155)の分割
【原出願日】平成10年7月14日(1998.7.14)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】