説明

コーティング済みペットフード組成物

物理的に安定なフィルムでコーティングした物理的に個別のペットフード経口摂取組成物を含み、フィルムは、a)有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効であるペットにおける部位に有益な試剤を運ぶことができるか、または、b)有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効であるペットにおける部位に有益な試剤が移動するにつれて、有益な試剤を口または消化管へと放出することができる成分を含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2003年11月3日に出願した米国仮出願第60/516,914号の非暫定であり、全ての目的で、その内容は、本明細書において参考のためにその全体を引用される。
【背景技術】
【0002】
ペットフード組成物は、ペットが消費するのに十分においしくなければならない。その通常の栄養価以外に、ペットフード組成物は、消費された後にペットに有益な試剤(beneficial agent)の例えば薬剤、プレバイオティクス、プロバイオティクス及びその他同様なものを供給するという試みにおいて使用されてきた。こうしたものは、しばしば、ペットフード中、例えば外側シェルによって囲繞される特殊な組織化中心コア(textured center core)を有する“2種一体化(two-in-one)”キブル中に覆い隠されるかまたは隠されており、ここでは中心コアが有益な試剤(benefit agent)を担う。
【0003】
本願発明者らは最近、個別のペットフード組成物の例えばキブル、固体、トリート若しくは栄養補助剤の外側部分または缶入りフードである“チャンク及びグレービー”食中の“チャンク”さえも、有益な試剤のためのキャリアとして利用できるという異なるタイプの技術を発見した。しかしながら、有益な試剤は、ペットフード組成物の個別の部分の表面に直接には施用されない。むしろ、有益な試剤は、物理的に安定であり、ペットフード組成物の物理的に個別の部分の表面に絞り出すことができるフィルムのマトリックス状の固体表面に供給される。1具体例においては、このフィルムは、口腔中、特に唾液の存在下で急速に溶解するポリマーである。さらなる具体例においては、フィルムは、有益な試剤が有効となり得る部位の例えば胃、小腸または大腸に送達されるまで無傷かまたはほぼ無傷のままでいる材料である。なおさらなる具体例においては、薄いフィルムは急速にまたはかなり急速に溶解するが、有益な試剤は、有益な試剤をさらに消化管の例えば小腸または大腸へと運ぶことを可能にする異なる成分でコーティングでき、消化管において、コーティングは、存在する場合、有益な試剤の活性を得るために有益な試剤を溶解させ、放出する。
【発明の開示】
【0004】
本発明によれば、物理的に安定なフィルムでコーティングした物理的に個別のペットフード経口摂取組成物を含み、フィルムは、a)有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効であるペットにおける部位に有益な試剤を運ぶことができる(または運ぶためのものである)か、または、b)有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効であるペットにおける部位に有益な試剤が移動するにつれて、有益な試剤を口または消化管へと放出することができる(または放出するためのものである)成分を含む、組成物が存在する。
【0005】
本発明のさらなる態様は、物理的に個別のペットフード組成物から発生し、該フード組成物のおいしさにマイナスに影響する1種以上の臭気を抑制する方法であって、物理的に個別のペットフード組成物を、ペットの口腔中で急速に溶解する物理的に安定な臭気抑制フィルムでコーティングすることを含む方法である。
【0006】
本発明のなおさらなる態様は、組成物が、フィルム及び/またはその中の試剤が理由となって延長された寿命を有することである。フィルム及び/またはその中の試剤は、例えば酸化及び/または細菌増殖から保護する仕方で組成物を保護し、それによって組成物の貯蔵寿命を長くする。本発明の上述した態様及び他の態様は、本発明をさらに説明するにつれて当業者には明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施する際に用いることができるペットフード組成物は、ペットフードの通常の物理的に個別の部分である。例えば、こうしたものは、キブル、ビッツ、任意の他の個別の材料、固体トリート、栄養補助剤及びその他同様なものを含むドライペットフード、並びにチャンク及びグレービーウエット食中の“チャンク”さえも含み、フード加工中にチャンクに適切に施用でき、容器の液体環境中で安定なままであるフィルムとなる。
【0008】
表面をコーティングすることは、個別の粒子の表面の少なくとも十分な部分をフィルムで被覆し、それによって所望の効果を実現することを意味する。全表面をコーティングする必要はない。有益な試剤を送達するような特定の態様の場合、コーティング済み表面は、最小で表面積の約10%のみ、好ましくは約20%であることが必要である。しかしながら、粒子の悪臭を弱めるために、表面積のかなりの部分をコーティングすべきであり、これは例えば少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは95〜100%である。
【0009】
物理的に個別のペットフードの表面にポリマーを施用するプロセスは、フィルムを物体に施用する際に有効であることが周知の任意の一般的な手順によって行うことができる。こうした手順は、キャスティング、噴霧、グラフト化スパッタリング、フローイング、カレンダー法、押出し及びその他同様なものを含む。これは、ペットフード組成物を切断して物理的に個別の部分にする前にペットフード組成物に行うことができるが、好ましくは物理的に個別の部分を形成した後に行い、それによって粒子全体の表面に均一に分布することを確実にする(そのように希望すれば)。
【0010】
ペットフードをコーティングする際に使用する化学薬品は、その施用のプロセスの間中物理的に安定であるべきであり、また、任意のさらなる加工工程にさらされる間ペットフード組成物表面でのその寿命の間安定であるべきであるポリマーである。これは、表面、それ自体またはその環境に対して本質的に化学的に不活性のままであるべきであるが、系におけるその機能が著しく損なわれない限りはある程度反応性があり得る。ペットの口腔及び消化管との適合性もまたあるはずである。こうしたポリマーの例としては、ゼイン、カゼイン、デンプン、セルロース、ガム、ゼラチン、デンプン/合成ポリマー、例えばデンプン/低密度ポリエチレン、及びその他同様なものが挙げられる。ポリマーは、好ましくは、口腔中、特に唾液の存在下で急速に解離する特性を有する。コーティングの厚さはさほど重要ではない。これは、フィルムの機能を維持する限りは約1から約2000ミクロン、または約2から約1000ミクロンまで変化し得る。
【0011】
フィルムは、中に有益な試剤を有しないかまたはフィルムマトリックス内部の有益な試剤を有する個別の粒子の表面に存在し得る。有益な試剤は、フィルム内部に完全に可溶かまたはフィルムマトリックス内部に部分的に可溶とすることができ、残りはその中に懸濁する。マトリックスが急速に溶解する場合には、約1〜10、好ましくは約1〜5、より好ましくは約1〜2秒となり得る。口腔及びその中の唾液にさらされた後には、こうした時間は、ペットの口腔中でのペットフードの通常の滞留時間以内である。フィルムは溶解して、口腔中またはさらに消化管中での作用のために有益な試剤を放出し、適切な場合全身性吸収を含み、これは特定の有益な試剤に依存する。
【0012】
フィルムが口腔中で急速に溶解することが重要でない場合、他のフィルム成分、例えばPVA、多糖、及びPE−デンプンを用いることができる。こうした材料は溶解するのがより遅く、消化管、例えば胃または小腸をさらに下りながら有益な試剤(存在する場合には)を放出することができる。加えて、有益な試剤を環境から保護することが必要な場合には、これは有効に放出される箇所に到達するべきである。有益な試剤は、フィルム製造成分中に取り入れられる前に“コーティングされる”ことができる。このようなコーティングの例は、腸溶コーティングの例えば多糖、セルロース、メタクリレート、及び市販のコーティングの例えばユードラジットTM(EudragitTM)である。
有益な試剤の例は、以下のものを含む。
タンパク質:酵素、微生物、免疫グロブリン、免疫調節剤
多糖:デンプン、セルロース、ガム、抽出物

脂質:リン脂質、脂肪酸
ポリペプチド:ゼラチン
ミネラル/ビタミン
着香剤
ポリマー複合体:デンプン/(合成ポリマー)[例えばデンプン−LDPE](低密度ポリエチレン)
活性物質(actives)−任意の数の成分によって定義することが可能である
薬剤:抗菌剤、抗炎症剤、プレバイオティクス、ホルモン、及びその他同様なもの
外部寄生虫駆除薬
ボタニアル/抽出物
抗真菌薬
上記に示すように、施用において使用される有益な試剤は、これを摂取する哺乳類にとって利益を提供できる任意の材料である。
【0013】
下記のものは本発明の実施例である。
【実施例】
【0014】
[実施例1]
典型的な食餌は押出され、切断されてキブルになる。これを18〜15℃に冷却する。次にこれにデンプンの例えばコーンスターチを噴霧して、表面を被覆するか、またはほぼ(95〜100%)被覆するコーティングを提供する。このようなコーティングは、キブルからの任意の悪臭の例えば魚油を抑制することができ、それによってキブルのおいしさを増大させる。コーティングは、キブルを食するペットの例えば犬または猫の口腔中で急速に溶解する。
[実施例2]
実施例1のキブルに他に、ゼイン、カゼイン、セルロース、ガム、ゼラチン、デンプン/合成ポリマー及びこれらの混合物からなる群のうちの1つを噴霧し、同様の結果が得られる。
[実施例3]
実施例1及び2のコーティングを、スパッタリング、グラフト化、キャスティング、吹き付け、押出しまたはカレンダー法のプロセスによって施用する。実施例1と同様の結果が得られる。
[実施例4]
口中での吸収によって有効となるべき有益な試剤である亜鉛塩は、ゼイン溶液中に懸濁し、キブル状に切断済みの犬の食餌の表面に噴霧される。食餌は犬によって摂取され、亜鉛塩はフィルムが溶解した後に口中に放出される。亜鉛塩は今や、口中での活性のために利用できる。
[実施例5]
胃において不活性化する有益な試剤の例えばプロバイオティクをセルロースでコーティングする。コーティング済みプロバイオティクをカゼイン中に懸濁し、切断されてキブルにされている犬の食餌の上に噴霧する。食餌は犬によって摂取され、フィルムが溶解した後にコーティング済みプロバイオティクは口中に放出される。コーティング済みプロバイオティクは、消化管を下って小腸に到達するまで進み、ここで、セルロースコーティングは分解し、プロバイオティクは小腸中に吸収される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的に安定なフィルムでコーティングした物理的に個別のペットフード経口摂取組成物でコーティングした物理的に個別のペットフード経口摂取組成物を含み、前記フィルムは、a)有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効であるペットにおける部位に前記有益な試剤を運ぶことができるか、または、b)前記有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効である前記ペットにおける部位に前記有益な試剤が移動するにつれて、前記有益な試剤を口または消化管へと放出することができる成分を含む、組成物。
【請求項2】
前記成分は、有益な試剤が有益な効果を生じる際に有効である前記ペットにおける部位に前記有益な試剤を運ぶことができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
有益な試剤は存在しない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
有益な試剤は前記フィルム中に存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記フィルムは前記ペットの口腔中で急速に溶解する、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記フィルムはポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーは、ゼイン、カゼイン、デンプン、セルロース、ガム、ゼラチン及びデンプン/合成ポリマーからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記フィルムは前記ペットの前記口腔中で急速に溶解する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記フィルムはポリマーである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーは、ゼイン、カゼイン、デンプン、セルロース、ガム、ゼラチン及びデンプン/合成ポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記有益な試剤はタンパク質、多糖、糖、脂質、ポリペプチド、ミネラル、ビタミン、フラボラント、ポリマー複合体、薬剤、植物性薬品、抽出物、及び抗真菌薬からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
前記有益な試剤は、胃、小腸または大腸中に吸収される、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記有益な試剤は物質でコーティングされ、該物質は、前記有益な試剤が前記ペットの消化管において吸収されるべき箇所に到達するまでその健全性を維持する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記有益な試剤は物質でコーティングされ、該物質は、前記有益な試剤が吸収されるべき部位の前の前記消化管における箇所までその健全性を保持する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
ペットにおいて有益な効果を得る方法であって、前記ペットに請求項1に記載の組成物を経口投与することを含む方法。
【請求項16】
物理的に個別のペットフード組成物から発生し、該フード組成物のおいしさにマイナスに影響する1種以上の臭気を抑制する方法であって、前記物理的に個別のペットフード組成物を、ペットの口腔中で急速に溶解する物理的に安定な臭気抑制フィルムでコーティングすることを含む方法。
【請求項17】
物理的に個別のペットフード組成物の貯蔵寿命を増大させる方法であって、前記物理的に個別のペットフード組成物を、物理的に安定な酸化的若しくは細菌保護フィルム、または、前記組成物を酸化分解から保護するか若しくは前記組成物を細菌増殖から保護する試剤を含むフィルムへとコーティングすることを含む方法。

【公表番号】特表2007−510427(P2007−510427A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539606(P2006−539606)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036482
【国際公開番号】WO2005/041682
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】