説明

コーティング用組成物およびその製造方法。

【課題】 塗料の分散安定性、および塗膜の透明性に優れた、紫外線吸収能を有する金属酸化物の分散体を提供すること。

【解決手段】紫外線吸収能を有し、且つ窒素吸着法(BET法)による比表面積が30〜160m2/gである金属酸化物100重量部と、分散樹脂5〜50重量部と、ケイ素アルコキシド化合物、金属アルコキシド化合物、活性エネルギー線硬化樹脂またはモノマーから選ばれる塗膜形成性材料5〜95部と、溶剤とを含み、膜厚2〜5μmの乾燥膜とした場合のヘイズが1%以下となるコーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線カット能を有する金属酸化物を用いたコーティング用組成物に関し、分散安定性および塗膜にしたときの透明性に優れたコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、導電性や低〜高と幅広い屈折率、および熱線・紫外線遮蔽能など、電気的・光学的な特性を有するものが多く、近年、ディスプレイパネルや機能性ガラス、機能性フィルムなどの処理材料としての期待が高まっている。中でも、酸化亜鉛、酸化チタンは、紫外線遮蔽材料並びに、その屈折率を利用した液晶ディスプレイ等の反射防止材料として検討されている。しかしながらこれらの材料は、屈折率が約1.9〜2.8であり、一般的な塗膜形成性材料の屈折率との乖離が大きい為、高い機能を得る為に高濃度で使用すると、塗膜にしたときの透明性が得られないといった問題がある。
【0003】
微粒子の可視光散乱強度は、その粒子と媒質が有する屈折率にも依存するが、一般的に粒径が波長の1/2付近で最大となり、それよりも粒径が小さくなるとレイリーの散乱式から示される様に、粒径の6乗に比例して散乱強度は小さくなっていく。よって可視光(波長が400〜800nm)に対しては、粒径が200〜400nmの時に散乱強度が最大、それ以下になるにつれて散乱強度が低下(透明化)していくことになる。即ち、一次粒子径の小さな粒子を高度に分散することが透明性の確保に関しては不可欠となる。
【0004】
しかしながら、金属酸化物の様な無機粒子を溶剤やポリマー中に分散することを考えた場合、無機粒子の表面張力は媒質の表面張力に比べて大きい為、二者間の表面張力の乖離が大きくなる程、粒子と媒質との界面エネルギーも大きくなり粒子は凝集する。また、一次粒子径の小さな無機粒子を使用するということは、同時に粒子の比表面積が増大することを意味し、結果、粒子同士の接触機会が増え、凝集傾向が強くなり、安定した分散体を得ることが更に難しくなる。
【0005】
特許文献1では、屈折率が1.7〜2.7の金属酸化物微粒子(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム)と界面活性剤および溶剤等をボールミルで48時間分散処理することにより、無機微粒子の高分散体を得る方法が例示されているが、これらは分散に長時間を要すること、またメディア型の分散機で長時間分散を行うと、メディアやベッセルの摩耗によるコンタミネーションが起こり、煩雑な濾過工程が必要となること等が懸念される。また特許文献2では、メディア型分散機以外に超音波分散機による分散も例示されているが、一般的な超音波分散機では分散力が弱いこと、またメディア型の分散機を用いた場合でも、フィラーに対する界面活性剤や分散剤の吸着が不十分な場合には、粒子同士が容易に再凝集してしまうという問題がある。更に特許文献3では、二酸化チタンとバインダー成分とをメディア型分散機により分散した塗料において、塗膜中の二酸化チタンの充填量を上げることで、紫外線遮蔽効果と塗膜の透明性を両立する検討がなされているが、単純にメディア分散を行うだけでは、チタンの凝集を一次粒子まで分散することはできず、透明性が不十分であった。

【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2001−262016号公報
【特許文献3】特開2004−002563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を用いた、塗料の分散性および経時安定性が良好、且つ塗膜にした時の透明性に優れる、コーティング組成物を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、紫外線吸収能を有し、且つ窒素吸着法(BET法)による比表面積が30〜160m2/gである金属酸化物100重量部と、分散樹脂5〜50重量部と、塗膜形成性材料5〜95部と、溶剤とを含み、膜厚2〜5μmの乾燥膜とした場合のヘイズが1%以下となるコーティング用組成物に関する。
【0008】
また本発明は、上記金属酸化物が、二酸化チタンもしくは酸化亜鉛より選ばれるコーティング用組成物に関する。
【0009】
また本発明は、上記塗膜形成性材料として、ケイ素アルコキシド化合物もしくは金属アルコキシド化合物を含むことを特徴とするコーティング用組成物に関する。
【0010】
また本発明は、上記塗膜形成性材料として、活性エネルギー線硬化樹脂またはモノマーを含むことを特徴とするコーティング用組成物に関する。
【0011】
更に本発明は、紫外線吸収能を有し、且つ窒素吸着法(BET法)による比表面積が30〜160m2/gである金属酸化物100重量部と、分散樹脂5〜50重量部と、溶剤0〜50重量部からなる混合物を混練処理することにより得られる混練物を、塗膜形成性材料に配合するコーティング用組成物の製造方法に関する。
【0012】
ならびに本発明は、上記混練処理を2本ロールもしくは、乾式粉砕装置で行うことを特徴とするコーティング用組成物の製造方法に関する。
【0013】
更に本発明は、上記混練物をメディア型分散機により、上記塗膜形成性材料および溶剤に分散させるコーティング用組成物の製造方法に関する。

【発明の効果】
【0014】
混練処理における2本ロールの強力な剪断作用、もしくは粉砕メディアの強力な衝撃力により、金属酸化物粒子の凝集が解砕されると同時に、粒子表面への樹脂の強固な吸着が起こる為、微細且つ分散安定性良好、更に塗膜にしたときの透明性に優れる分散体を得ることができる。また、2本ロールもしくは乾式粉砕装置による混練処理と、湿式メディア型分散機による分散処理を併用する為、メディア型分散機単独で長時間分散を行う場合に比して分散時間が大幅に短縮されるとともに、ベッセルやメディアの摩耗等に起因するコンタミネーションを大幅軽減できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に用いる金属酸化物としては、紫外線吸収能を有する金属酸化物であれば特に制限はなく、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等が挙げられる。また、これら金属酸化物は単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良いが、得られる塗膜が無色になること、および紫外線遮蔽能の高さの点から、二酸化チタンもしくは、酸化亜鉛の使用が好ましい。また、二酸化チタンや酸化亜鉛は触媒活性を示し、有機塗膜の劣化(チョーキング)の原因となる為、粒子表面をシリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物やその水和物で表面処理し、触媒活性を落としたものを使用することが好ましい。
【0016】
またコーティング膜の可視光(波長が400〜800nm)に対する透明性を考えた場合、一般にフィラーの分散粒径を波長の1/2 (200〜400nm)以下、さらに好ましくは100nm以下にすることが好ましい。即ち、一次粒径の細かいフィラーを高度に分散することが透明性の確保に関しては不可欠となる。よって本発明においては、窒素吸着法(BET法)により求められる比表面積が30〜160m/gの金属酸化物粉末を用いる。比表面積が30m/gを下回ると、金属酸化物粒子による光の散乱が顕著となり、透明な塗膜を得ることが難しくなる。
【0017】
また本発明に用いる金属酸化物は、予めカップリング剤、オルガノシリコーン、高級脂肪酸、リン酸エステルおよび高級アルコール等で疎水化処理されていても良い。例えばカップリング剤は、シラン系、チタネート系、アルミキレート系のいずれでも良く、具体的にはメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等がある。
【0018】
本発明における金属酸化物の疎水化処理方法としては、従来公知の方法を用いることができる。すなわち、カップリング剤等の処理剤と金属酸化物粒子を湿式または乾式で各種混合分散機により、混合、粉砕、加熱等の処理をする。具体的には、湿式処理ではペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができ、また乾式処理では、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、アトライター、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))等が使用できるがこられに限定されるものではない。
【0019】
本発明に用いる分散樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール等を構成単位として含む重合体または共重合体。ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂および硝化綿等の繊維素系樹脂が挙げられる。これらの分散樹脂は、−COOM、−SOM、−PO(OM) (Mは水素原子またはアルカリ金属)、−OH、−NRn (Rは炭化水素、nは2〜3の整数)、エポキシ基、スルホベタイン基等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を有するものが好ましい。これら極性官能基を有することで、分散樹脂と金属酸化物粒子の相互作用が強まり、分散性が向上する。また、最終的に透明な塗膜を得る為には、これら分散樹脂は透明であることが好ましい。また分散樹脂として市販の樹脂型分散剤を用いることもできる。具体的には、EFKA CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)」、アビシア社製「ソルスパース20000(塩基性基を含有する高分子共重合体)、24000SC、24000GR、28000、32000、21000(酸基を有する高分子共重合物)、36000、41000」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB−711(塩基性基を含有する高分子共重合物)、821(塩基性基および酸性基を含有する高分子共重合体)、822、PA−411(酸性基を含有する高分子共重合体)、PN−411」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、111、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)、180、185」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」等が挙げられるがこれらに限定されない。またこれらの分散樹脂は、単独で使用しても良いし、二種類以上組み合わせて使用しても良い。またこれらの分散樹脂は、固形のまま使用しても良いし、適当な溶剤に溶解したワニスとして使用しても良い。
【0020】
また、本発明を紫外線や電子線の様な活性エネルギー線硬化型の塗料として用いる場合、上記分散樹脂として、アクリロイルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレート等の活性エネルギー線硬化樹脂、もしくは1000mPa・s以上の粘度を有するモノマーを加えてもよい。
【0021】
次に、金属酸化物粉末と分散樹脂の2本ロールによる混練処理について説明する。本発明における2本ロールによる混練処理は、2本ロールによるせん断力を利用して金属酸化物粒子の凝集体を解砕しつつ、粒子表面に分散樹脂を吸着させるものである。先ず、金属酸化物粉末100重量部に対し、分散樹脂5〜50重量部 (固形分換算)、好ましくは10〜40重量部を常温もしくは加熱下で混合し、均質な混合物を作る。尚、このとき溶剤を加え湿潤混合物としても良い。溶剤としてはメチルエチルケトン等のケトン類、エチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、その他エーテル類、芳香族類等の有機溶剤が使用できるが特に限定されない、また特に表面が疎水化処理されていない金属酸化物を用いる場合は水を使用しても良いが、最終的な用途に合わせて溶剤を選択することが好ましい。溶剤の添加量は、用いる粉体や樹脂によって異なるが、無機粉体100重量部に対して、溶剤を0〜50重量部添加する。金属酸化物粉末と分散樹脂および溶剤の重量比が上記の範囲を超えると、次の2本ロールによる混練処理工程の作業性が悪化する。また特に金属酸化物粉体に対して分散樹脂量が少ない場合には、塗料の分散安定化が低下する。こうして得られた混合物を、加熱温度40〜200℃、回転速度を10〜50rpmとした2本ロールにて複数回混練処理し、断片状もしくはシート状の混練物を得る。混練回数は、希望とする混練度に応じて任意に設定できる。得られた混練物がシート状の場合は、粉砕して粉状または断片状とした後に、次の溶解、分散工程に使用するのが好ましい。シート状の混練物を粉砕する方法としては、通常の粉砕機を用いればよく、特に限定されない。
【0022】
続いて、金属酸化物粉末と分散樹脂との乾式粉砕装置による混練処理について説明する。本発明における乾式粉砕装置による混練処理は、金属酸化物粉末100重量部に対し分散樹脂5〜50重量部 (固形分換算)、好ましくは10〜40重量部を添加し、常温もしくは加熱下で、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した粉砕機を使用して行われる。すなわち、粉砕メディアの衝撃力を利用して金属酸化物粒子の凝集体を粉砕しつつ、粒子表面に分散樹脂を吸着させるものである。乾式粉砕装置としては、乾式のアトライター、ボールミル、振動ミルなどの公知の方法を用いることができる。必要に応じて窒素ガスなどを流すことで、乾式粉砕処理装置内部を脱酸素雰囲気として混練処理を行っても良い。また、固形の分散樹脂を用いる場合、粉砕処理時に溶剤を添加してもよい。溶剤の添加による樹脂の軟化および、金属酸化物粉体の樹脂に対する濡れが向上することで、粉砕促進の効果が期待される。この場合の溶剤の添加量は用いる材料により異なるが、添加樹脂量に対して0.5〜20重量%である。用いる溶剤としてはメチルエチルケトン等のケトン類、エチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、その他エーテル類、芳香族類等の有機溶剤が使用できるが特に限定されない。また、混練処理時間は、用いる装置によって、また希望とする混練度に応じて任意に設定できる。これら処理を行うことにより、粉状もしくは塊状の混練物を得ることができる。
【0023】
上記の2本ロールもしくは乾式粉砕装置による混練処理によって得られた混練物を、溶剤および塗膜形成性材料に分散することで液状のコーティング組成物を得る。
【0024】
使用する溶剤は、塗膜形成性材料を溶解するものであれば特に制限はなく、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、芳香族有機溶剤類等種々のものが使用できる。
【0025】
また、本発明を紫外線や電子線の様な活性エネルギー線硬化型の塗料として用いる場合、上記溶剤の代わりに、200mPa・s以下の粘度を有するモノマーを使用してもよい。
【0026】
塗膜形成性材料としては、まず、下記の一般式(1)から(3)で表されるケイ素アルコキシド化合物および/もしくは金属アルコキシド化合物が挙げられる。
(RSi(OR4−p (1)
(OSi(OROR (2)
M(OR (3)
式中、
は、炭素数1から4のアルキル基および/または重合性有機基であり、
およびRは炭素数1から4のアルキル基であり、
pは1から3の整数であり、
qは1から10の整数であり、
Mは3価または4価の金属イオンであり、
rはMの価数に応じて3または4の整数であり、
各化合物が複数のR、R、またはRを含むとき、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物は、アルキル基および/または重合性有機基を有するアルコキシシラン化合物である。重合性有機基とは、不飽和性二重結合を有し重合付加を繰り返す有機基、または開環性環状基を有し、それらが開裂して付加を繰り返す性質を有する有機基である。このような重合性有機基の例としては、重合性不飽和二重結合を有する基として、ビニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、γ−メタクリロキシプロピル基、開環性環状基として、環状エーテル基、特に環状モノエーテル基、ラクトン基、ラクタム基、酸無水物、イソシアネート基(および水酸基)、およびその他が挙げられる。これらの中で、ビニル基、またはγ−メタクリロキシプロピル基が好ましい。
【0028】
このような化合物において、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、また、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、これらのうち複数のものを組み合わせて使用してもよい。
【0029】
一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物は、一般式(1)の化合物と相まって、マトリックス材料を基材表面と親和させる効果を有するものである。
【0030】
このような化合物としては、一般式(2)を有する化合物であれば任意のものを用いることができるが、テトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシランが特に好ましい。しかし、安全衛生上から、これらのモノマーが使用困難である場合、これらのモノマーの重合シリケート、具体的にはエチルシリケート40、またはメチルシリケート51(いずれも商品名:三菱化学社製)が使用できる。
【0031】
本発明において用いられる金属アルコキシド化合物としては、金属アルコキシド、金属アルコキシドの縮合多量体、有機官能基および/または有機樹脂により変性した金属アルコキシド、有機官能基および/または有機樹脂により変性した金属アルコキシドの縮合多量体等が好適に用いられる。
【0032】
一般式(3)中の金属イオンは、一般的には3価または4価のものが用いられ、Si、Ti、Ni、Zr、Zn、Al、Fe、Co等が挙げられるが、特にTi、Zr、またはAlが好ましい。これらの金属アルコキシドは単独、若しくは目的に応じて混合して用いることができる。また、金属アルコキシドは毒性および安定性等の問題から縮合多量体として用いることもできる。
【0033】
また、一般式(1)〜(3)におけるRまたはRは、炭素数があまり多いと、硬化後のコーティング膜の耐有機溶剤性が劣化したりするため、通常は、Rにおいては炭素数が2以下、Rにおいては炭素数が4以下である。
【0034】
これらの化合物は、任意の方法で混合されて塗膜形成性材料とされる。通常は、化合物が液体であればそのまま、化合物が固体であればその化合物を適当な溶剤に溶解または分散させて、混合することにより塗膜形成性材料を得る。また、これらの化合物を配合した後に適当な溶剤に溶解または分散させてもよい。このとき用いる溶剤は、用いる化合物の種類、または分散条件により選択されるが、一般的には、メタノール、エタノール、プロパノール、およびその他である。また触媒として有機酸、無機酸等を使用しても良い。
【0035】
また、本発明を紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化するタイプのコーティング組成物とする場合、塗膜形成性材料として、活性エネルギー線硬化型樹脂、更には、活性エネルギー線により重合可能なモノマーを使用する。
【0036】
活性エネルギー線硬化樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0037】
また、活性エネルギー線により重合可能なモノマーとして、単官能モノマーとしては、ブタンジオールモノアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、グリシジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、フェノキシメタクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、1官能性脂環式エポキシ、1官能性オキセタン等が挙げられるがこれらに限るものではない。
【0038】
また、活性エネルギー線により重合可能な2官能性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等、2官能性脂環式エポキシ等、2官能性オキセタン等が挙げられるがこれらに限るものではない。
【0039】
更に、活性エネルギー線により重合可能な3官能性モノマーとして、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、3官能性脂環式エポキシ、3官能性オキセタン等が挙げられるがこれらに限るものではない。
【0040】
加えて、活性エネルギー線により重合可能な4官能性以上のモノマーとして、具体的には、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられるがこれらに限るものではない。
【0041】
これら活性エネルギー線硬化樹脂および、モノマーは、一種または必要に応じて二種以上用いても良い。
【0042】
また本発明において、活性エネルギー線として紫外線を使用するラジカル重合タイプのコーティング組成物とする場合、ラジカル光重合開始剤を更に配合する。ラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。これらのラジカル光重合開始剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。ラジカル光重合開始剤と併用して使用する光重合促進剤としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンジル4−ジメチルアミノベンゾエート等があげられる。これらのラジカル光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。カチオン重合の場合、活性エネルギー線種によらずカチオン重合開始剤は必須成分であり、カチオン重合開始剤として具体的には、アリールスルホニウム塩誘導体(例えばユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えばローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えばチバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。カチオン光重合開始剤と併用して使用する光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100、川崎化成の9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−エトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン)が挙げられる。これらのカチオン光重合開始剤、カチオン光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる
【0043】
その他本発明における塗膜形成性材料として、熱硬化型や溶剤が蒸発することにより硬化するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等、塗料用として一般的に使用されている樹脂を用いることもできる。
【0044】
2本ロールもしくは乾式粉砕装置による混練処理によって得られた混練物を、溶剤および塗膜形成性材料に分散する方法としては、上記混練物をディゾルバー等の高速攪拌機を用いて溶剤および塗膜形成性材料に分散するが、その後各種分散機で更に分散処理をすることが、均一且つ微細な分散体を得るのに好ましい。また、混練処理によって得られた混練物を溶剤に分散した後に、塗膜形成性材料と混合してもよい。
【0045】
用いる分散機としては、通常顔料分散に用いる分散機が使用できる。以下に具体例を挙げるが、それらに限定されるものではない。例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
【0046】
混練処理における2本ロールの強力な剪断作用、もしくは粉砕メディアの強力な衝撃力により、凝集している金属酸化物粒子が解砕されると同時に、粒子表面への樹脂の強固な吸着が起こる為、微細且つ分散安定性良好な分散体を得ることができる。また、2本ロールもしくは乾式粉砕装置による混練処理と、湿式メディア型分散機による分散処理を併用する為、メディア型分散機単独で長時間分散を行う場合に比して分散時間が大幅に短縮されるとともに、ベッセルやメディアの摩耗等に起因するコンタミネーションの大幅軽減が期待される。
(実施例)
【0047】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部、%は重量%を表す。また、2本ロールまたは乾式粉砕装置による混練処理によって得られた混練物の不揮発分は、該混練物を140℃の熱風オーブンで1時間乾燥したときの乾燥前後の重量差から求めた。分散粒度は(平均粒径(D50),および(D99))を動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製、マイクロトラックUPA)を用いて測定した。また塗膜の透明性(ヘイズ)については、基材(100μmのPETフィルムまたは1.3mm厚のガラス板)に塗布した塗膜をヘイズメーター(日本電色社製、COH−300A)で評価した。このとき、基材であるPETフィルムまたはガラス板を標準として、膜のみのヘイズを求めた。
【0048】
<金属アルコキシドバインダー液の調整>
テトラエトキシシラン18.5部、エチルシリケート40(三菱化学社製)15.3部、ビニルトリメトキシシラン6.2部、精製水2.9部、硝酸2.5部、メタノール4.9部、エタノール44.6部、イソプロピルアルコール5.1部を3時間攪拌混合し、バインダー液(ゾル−ゲルバインダー)を得た。

【実施例1】
【0049】
TTO−V3(酸化アルミナ水和物処理二酸化チタン、BET比表面積150m/g、石原産業社製)100部と分散樹脂 A(燐酸基を有する高分子共重合体、分子量5000、酸価100)30部およびエタノール15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形の混練物Aを得た。混錬物Aの不揮発分は99.0%であった。続いて、メチルエチルケトン33部、トリメチロールプロパントリアクリレート 11.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 7.4部、 Ebecryl 600 (エポキシアクリレート、ダイセルユーシービー社製)18.5部、およびSH28PA(塗料添加剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1部の混合液に、混練物A 131.3部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、平均粒径D50が43nm、D99が192nmのコーティング組成物Aを得た。
【0050】
次に、コーティング組成物Aを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、電子線照射装置(装置名:Min-EB、東洋インキ製造社製)で40KGyの電子線を照射して膜厚約3μmの塗膜Aを得た。塗膜Aのヘイズは、0.4であった。

【実施例2】
【0051】
実施例1で得られた混練物A 131.3部を、高速ディスパーを用いて、メチルエチルケトン46部に分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、分散液Bを得た。この分散液Bを100μmのPETフィルムに塗布し140℃で2分乾燥して得られた膜厚2μmの塗膜のヘイズは0.2であった。
【0052】
続いて、分散液Bに、トリメチロールプロパントリアクリレート 11.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 7.4部、 Ebecryl 600 (エポキシアクリレート、ダイセルユーシービー社製)18.5部、およびSH28PA(塗料添加剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1部を添加し高速ディスパーで攪拌することにより、均粒径D50が48nm、D99が175nmのコーティング組成物Bを得た。
【0053】
コーティング組成物Bを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、電子線照射装置(装置名:Min-EB、東洋インキ製造社製)で40KGyの電子線を照射して膜厚3μmの塗膜Bを得た。塗膜Bのヘイズは、0.3であった。
【実施例3】
【0054】
ゾル−ゲルバインダー175部およびイソプロピルアルコール28部の混合液に、実施例1で得られた混練物A 131.3部を高速ディスパーを用いて分散した後、ガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、平均粒径D50が59nm、D99が211nmのコーティング組成物Cを得た。
【0055】
コーティング組成物Cをガラス板に塗布し、70℃で5分予備乾燥後、200℃で15分焼成して得られた膜厚2μmの塗膜のヘイズは0.6であった。

【実施例4】
【0056】
TTO−V3(酸化アルミナ水和物処理二酸化チタン、BET比表面積150m/g、石原産業社製)100部とソルスパース41000(酸価を有する高分子共重合体、アビシア社製)20部を仕込み、直径 3/8インチのサスビーズを充填した乾式アトライターで20分間混練処理し、混練物Dを得た。 続いて、メチルエチルケトン33部、トリメチロールプロパントリアクリレート 14.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 9.4部、 Ebecryl 600 (エポキシアクリレート、ダイセルユーシービー社製)23.5部、およびSH28PA(塗料添加剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1部の混合液に、混練物D 120部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、平均粒径D50が51nm、D99が204nmのコーティング組成物Dを得た。
【0057】
次に、コーティング組成物Dを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、電子線照射装置(装置名:Min-EB、東洋インキ製造社製)で40KGyの電子線を照射して膜厚3μmの塗膜Dを得た。塗膜Dのヘイズは、0.4であった。

【実施例5】
【0058】
NANOFINE50A(シリカ−アルミナ処理酸化亜鉛、BET比表面積 50m/g、堺化学社製)100部とBYK180(酸価およびアミン価を有する高分子共重合体、BYK Chemie社製)20部およびエタノール15部を室温下で混合し、均質な湿潤混合物を得た。この湿潤混合物を80℃に加温した2本ロールで繰り返し混練処理し、固形の混練物Eを得た。混錬物Eの不揮発分は99.2%であった。続いて、メチルエチルケトン 33部、トリメチロールプロパントリアクリレート 14.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 9.4部、 Ebecryl 600 (エポキシアクリレート、ダイセルユーシービー社製)23.5部、およびSH28PA(塗料添加剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1部の混合液に、混練物E 121部を、高速ディスパーを用いて分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散した。その後、イルガキュア907(重合開始剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)6部、およびイソプロピルチオキサントン 3部添加し、高速ディスパーで攪拌して平均粒径D50が52nm、D99が180nmのコーティング組成物Eを得た。
【0059】
次に、コーティング組成物Eを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(Fusion UV system Japan 社製、無電極タイプ)を用い、200W 、1m/minの条件で紫外線を照射して膜厚5μmの塗膜Eを得た。塗膜Eのヘイズは、0.3であった。

【実施例6】
【0060】
NANOFINE50A(シリカ−アルミナ処理酸化亜鉛、BET比表面積 50m/g、堺化学社製)100部とBYK180(酸価およびアミン価を有する高分子共重合体、BYK Chemie社製)20部を仕込み、直径 3/8インチのサスビーズを充填した乾式アトライターで20分混練処理し、混練物Fを得た。混練物F 120部を、高速ディスパーを用いて、ゾル−ゲルバインダー200部およびイソプロピルアルコール13部の混合液に分散した後にガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで更に2時間分散し、平均粒径D50が71nm、D99が220nmのコーティング組成物Fを得た。
【0061】
コーティング組成物Fをガラス板に塗布し、70℃で5分予備乾燥後、200℃で15分焼成して得られた膜厚2μmの塗膜のヘイズは0.5であった。

(比較例1)
【0062】
TTO−V3(酸化アルミナ水和物処理二酸化チタン、BET比表面積150m/g、石原産業社製)100部、分散樹脂 A(燐酸基を有する高分子共重合体、分子量5000、酸価100)30部、メチルエチルケトン33部、トリメチロールプロパントリアクリレート 11.1部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 7.4部、 Ebecryl 600 (エポキシアクリレート、ダイセルユーシービー社製)18.5部、およびSH28PA(塗料添加剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで2時間分散し、平均粒径D50が 160nm、D99が 406nm のコーティング組成物Gを得た。
【0063】
次に、コーティング組成物Gを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、電子線照射装置(装置名:Min-EB、東洋インキ製造社製)で40KGyの電子線を照射して膜厚4μmの塗膜Gを得た。塗膜Gのヘイズは、40であった。

(比較例2)
【0064】
ペイントシェーカーでの分散時間を10時間とした以外は、比較例1と同様にして、平均粒径D50が76nm、D99が331nmのコーティング組成物Hを得た。
【0065】
次に、コーティング組成物Hを100μmのPETフィルムに塗布し、70℃で3分乾燥後、電子線照射装置(装置名:Min-EB、東洋インキ製造社製)で40KGyの電子線を照射して膜厚4μmの塗膜Hを得た。塗膜Hのヘイズは、8であった。

(比較例3)
【0066】
NANOFINE50A(シリカ−アルミナ処理酸化亜鉛、BET比表面積 50m/g、堺化学社製)100部、BYK180(酸価およびアミン価を有する高分子共重合体、BYK Chemie社製)20部、ゾル−ゲルバインダー200部およびイソプロピルアルコール13部をガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーで10時間分散し、平均粒径D50が112nm、D99が338nmのコーティング組成物Iを得た。
【0067】
コーティング組成物Iをガラス板に塗布し、70℃で5分予備乾燥後、200℃で15分焼成して得られた膜厚2μmの塗膜のヘイズは12であった。

【0068】
実施例1から6および比較例1から3で得られたコーティング組成物の平均粒径D50およびD99と、塗膜のヘイズ並びに、該組成物を40℃で10日間経時させたときの平均粒径を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収能を有し、且つ窒素吸着法(BET法)による比表面積が30〜160m2/gである金属酸化物100重量部と、分散樹脂5〜50重量部と、塗膜形成性材料5〜95部と、溶剤とを含み、膜厚2〜5μmの乾燥膜とした場合のヘイズが1%以下となるコーティング用組成物。
【請求項2】
金属酸化物が、二酸化チタンもしくは酸化亜鉛から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
塗膜形成性材料として、ケイ素アルコキシド化合物もしくは金属アルコキシド化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
塗膜形成性材料として、活性エネルギー線硬化樹脂またはモノマーを含むことを特徴とする請求項1または2記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
紫外線吸収能を有し、且つ窒素吸着法(BET法)による比表面積が30〜160m2/gである金属酸化物100重量部と、分散樹脂5〜50重量部と、溶剤0〜50重量部からなる混合物を混練処理することにより得られる混練物を、塗膜形成性材料に配合する請求項1ないし4いずれか記載のコーティング用組成物の製造方法。
【請求項6】
混練処理を、2本ロールで行う請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
混練処理を、乾式粉砕装置で行う請求項5記載の製造方法。
【請求項8】
混練物をメディア型分散機により塗膜形成性材料および溶剤に分散させる請求項5ないし7いずれか記載の製造方法。



【公開番号】特開2006−143877(P2006−143877A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335683(P2004−335683)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】