説明

コーティング用組成物

【課題】静摩擦係数が低い塗膜を形成することができるコーティング用組成物を提供する。
【解決手段】水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を添加してなるコーティング用組成物。多孔質シリカ微粒子としては、珪酸ソーダを酸と反応させ、水洗後、乾燥させた合成多孔質シリカ微粒子が好適である。水性エマルジョンとしてはウレタン系水性エマルジョンが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング用組成物に係り、特に摩擦係数の小さい塗膜を形成することができるコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性エマルジョンに対し無機微粒子を配合することにより塗膜特性を改善することが種々行われている。
【0003】
例えば、特開平7−325390には、水性エマルジョンに対しコロイダルシリカを配合することにより、対象物に対する塗膜の密着性を高めると共に、塗膜の硬度を高めることが記載されている。
【特許文献1】特開平7−325390
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、静摩擦係数が低い塗膜を形成することができるコーティング用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1のコーティング用組成物は、水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を添加してなるものである。
【0006】
請求項2のコーティング用組成物は、請求項1において、水性エマルジョンの固形分100重量部に対する多孔質シリカ微粒子の割合が5〜15重量部であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3のコーティング用組成物は、請求項1又は2において、多孔質シリカ微粒子の平均粒径が2〜10μmであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4のコーティング用組成物は、請求項1ないし3のいずれか1項において、多孔質シリカ微粒子は珪酸ソーダを酸と反応させ、水洗後、乾燥させた合成多孔質シリカ微粒子であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5のコーティング用組成物は、請求項1ないし4のいずれか1項において、水性エマルジョンがウレタン系エマルジョンであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング用組成物は、水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を配合することにより、塗膜の摩擦係数を低下させるようにしたものである。なお、多孔質シリカ微粒子を配合することにより塗膜の摩擦係数が低下するメカニズムについては、本来、平坦面である樹脂表面層に、該微粒子が存在する事により、微妙な凹凸が形成されるためであると推察される。
【0011】
なお、塗膜の摩擦係数を低下するために固体潤滑材の微粒子を水性エマルジョンに配合することが考えられるが、コーティング用組成物の長期保存安定性が低かったり、塗膜の摩擦係数が経時的に増大したりする短所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明のコーティング用組成物は、水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を添加してなるものである。
【0014】
エマルジョンとしては、合成樹脂エマルジョンが用いられ、合成樹脂エマルジョンとしては、たとえば、アクリル−スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−酸酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−飽和分岐脂肪酸ビニル共重合体エマルジョン、合成ゴム系ラテックスなどの乾燥型エマルジョンや、エポキシ樹脂エマルジョン、シリコーンアクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、アクリル複合ウレタン樹脂エマルジョンなどの反応硬化型エマルジョンをはじめとする種々のエマルジョンが用いられ、使用目的に応じてこれらの中から耐侯性、被膜強度、コストなどを加味して適当なものを選択使用する。
【0015】
本発明では、特にウレタン樹脂エマルジョンとりわけアニオン系自己乳化型ウレタン系エマルジョンが好適である。
【0016】
合成樹脂エマルジョンの固形分濃度に特に限定はないが、通常は10〜75重量%の範囲から選ぶことが多い。ただし、特に薄膜化を図るときは、さらに水で稀釈して用いることもできる。
【0017】
水性エマルジョンに配合する多孔質シリカ微粒子としては、珪酸ソーダを酸たとえば硫酸などの無機酸と反応させてシリカゾルを得、該シリカゾルを水洗した後、乾燥し、シリカ粒子が所定の粒度となるように粒度調整することによって得られるものが好適である。
【0018】
多孔質シリカ微粒子の平均粒径は、2〜10μm程度が好ましい。この平均粒径は、レーザー散乱法により計測される値である。
【0019】
このような多孔質シリカ微粒子としては、富士シリシア化学株式会社製の「サイリシア」を好適に用いることができる。
【0020】
合成樹脂エマルジョン中の樹脂分100重量部に対する多孔質シリカ微粒子の量は、5〜15重量部、好ましくは5〜10重量部である。多孔質シリカ微粒子の割合が余りに少ないときは摩擦係数低下の効果が得られず、余りに多いときは密着性、透明性などの点でかえって不利となる。
【0021】
コーティング用組成物を調製するには、水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を添加し、混合すればよい。
【0022】
上記各成分を有するコーティング用組成物には、必要に応じ、増粘剤、低温安定剤、造膜助剤、垂れ防止剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、溶剤などの添加剤を含有させることができる。
【0023】
本発明のコーティング用組成物を塗布する対象物としては、ウレタンエラストマー等のエラストマー、ABS等の一般的な樹脂、ガラス表面などが例示される。
【0024】
塗膜の厚み(乾燥後)は10〜30μm程度が好適である。
【実施例】
【0025】
次に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
【0026】
なお、以下の実施例及び比較例で用いた材料は次の通りである。
<水性エマルジョン>
三洋化成 ユーコート UWS−145
アニオン系自己乳化型ウレタン系エマルジョン(樹脂分37%)
<多孔質シリカ微粒子>
富士シリシア化学 サイリシア 310P、350、370
(無定形二酸化ケイ素 SiO・nHO)
平均粒径は次の通り。
【0027】
サイリシア 310P 2.7μm
サイリシア 350 3.9μm
サイリシア 370 6.4μm
<比較例で用いた微粒子>
PEパウダー(SK−PE−20L 20μ/(株)セイシン企業)
PTFEパウダー(TFW−3000F 3μ/(株)セイシン企業)
<調製方法>
水性エマルジョン、微粒子及びエマルジョン濃度調整のための水を、特殊機化工業(株) T.K.ロボミックスfモデルにて500〜1000rpmにて、5分から10分間、攪拌混合を行った。
<コーティング方法>
NO3.及びNO10.バーコーターを使用し常法にて塗膜を形成した。
<乾燥方法>
ADVANTEC THM042FA型恒温槽にて80℃×1時間乾燥した。
<被着体>
ウレタン系微発泡シート 密度250g/cm 硬度20/アスカーC硬度
厚み2mm
<静摩擦係数測定>
測定器 新東科学株式会社 HEIDON TYPE:10
静摩擦測定装置
対象物 ABS樹脂
荷重 200g
サンプルサイズ 20mm×20mm
【0028】
測定を5回行い、測定値の下限値と上限値を表1に示した。なお、このABS樹脂と上記ウレタン系微発泡シートとの静摩擦係数は1以上である。
【0029】
[実施例1〜12]
水性エマルジョン、多孔質シリカ微粒子及び水を表1の割合で配合し、上記の通り調製し、塗膜を形成し、その静摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例1〜6ではバーコーターNo.3を使用し、実施例7〜12ではバーコーターNo.6を使用した。
【0031】
なお、各コーティング用組成物を静置し、経時変化を観察したところ、約2週間で水性エマルジョンと多孔質シリカ微粒子とが層状に分離したが、攪拌することにより再び均一な分散液に戻ることが認められた。このことから、各実施例のコーティング用組成物は長期保存安定性に優れることが認められた。
【0032】
[比較例1]
多孔質シリカ微粒子の代わりに上記PE(ポリエチレン)パウダーを用いたこと以外は実施例2,4,6と同様にしてコーティング用組成物を調製し、塗膜を形成した。結果を表1に示す。
【0033】
なお、このコーティング用組成物を静置して外観の経時変化を観察したところ、2週間で液上部にパウダーが「だま」状に分離し、しかも攪拌しても均一にはならなかった。このことから、比較例1のコーティング用組成物は、保存安定性が悪いことが認められた。
【0034】
[比較例2]
多孔質シリカ微粒子の代わりに上記PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)パウダーを用いたこと以外は実施例2,4,6と同様にしてコーティング用組成物を調製し、塗膜を形成した。結果を表1に示す。
【0035】
なお、このコーティング用組成物を静置して外観の経時変化を観察したところ、2週間で液上部にパウダーが「だま」状に分離し、しかも攪拌しても均一にはならなかった。このことから、比較例2のコーティング用組成物は、保存安定性が悪いことが認められた。
【0036】
【表1】

【0037】
上記各実施例及び比較例より、実施例に係るコーティング用組成物は長期保存安定性に優れると共に、これを用いて形成された塗膜の静摩擦係数が低いことが明らかである。
【0038】
比較例1,2とも保存安定性に乏しく、また比較例1では静摩擦係数も高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エマルジョンに対し多孔質シリカ微粒子を添加してなるコーティング用組成物。
【請求項2】
請求項1において、水性エマルジョンの固形分100重量部に対する多孔質シリカ微粒子の割合が5〜15重量部であることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、多孔質シリカ微粒子の平均粒径が2〜10μmであることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、多孔質シリカ微粒子は珪酸ソーダを酸と反応させ、水洗後、乾燥させた合成多孔質シリカ微粒子であることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、水性エマルジョンがウレタン系エマルジョンであることを特徴とするコーティング用組成物。

【公開番号】特開2009−185206(P2009−185206A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27753(P2008−27753)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】