説明

コーティング組成物及びその製造方法

本発明は、フルオロアルキルシラン化合物の一つ以上と、揮発性物質と、塩と、水とを含むコーティング組成物、前記組成物の製造方法、及び、前記組成物の使用に関する。基板上へ付与される場合に、コーティング組成物は、汚れの除去が容易且つ防汚性の表面を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コーティング組成物と、前記組成物の調製方法と、前記組成物の使用とに関する。特に、本発明は、疎水性、疎油性(oleophobic)及び防汚性(dirt-repellent)を有するコーティング組成物と、前記組成物の調製方法と、前記組成物の使用とに関する。
【0002】
種々の材料表面に対して、汚れの除去が容易な(easy-to-clean)表面を提供する組成物は、当業界の文献において広く記載されている。例えば、米国特許出願公開第2006/0185555号明細書には、平滑な表面に付与された場合に、汚れの除去が容易な表面を提供する2成分型のコーティングシステムが開示されている。前記システムの第1成分は、フルオロアルキルシラン、アルキルシラン、又はそれらの混合物を含み、そして、第2成分は、水、有機酸もしくは無機酸、及び溶媒(solvent)を含む。各成分は、別々に調製され、互いに合わせられ、そして、2分間混合される。その後、混合物は使用できる状態となる(ready to be used)。前記システムは、ウインドスクリーン、ガラス張りのシャワー室、ガラスの壁面(facades)、壁用タイル、及び衛生陶器(sanitary ceramics)に付与可能である。
【0003】
国際公開第2007/068545号は、保存に安定したコーティング組成物に関するものであって、前記コーティング組成物は、耐摩耗性及び耐候性であり、そして、平滑な表面に付与される場合には、汚れの除去が容易な表面を提供する。前記組成物は、加水分解性フルオロアルキルシラン、加水分解及び縮合の触媒としての塩酸、水、イソプロパノール、及び溶媒を含む。前記組成物は、例えば、ウインドスクリーン、ガラス張りのシャワー室、ガラスの壁面、壁用タイル及び衛生陶器のような、金属、ガラス、セラミック物質、及びつや出し加工された(glazed)表面へ付与することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0005469号明細書には、長持ちして、汚れの除去が容易な表面を有する生成品の調製方法が開示されている。ゲル形成の金属酸化物(例えば、SiO)と金属酸化物ネットワーク構造中に均等に分布する疎水性の剤とを含むコーティング混合物で表面をコーティングする。疎水性の剤としては、シリコ−ン類、シラン類、シロキサン類、シリコ−ン油類、及びシリコ−ングリース類を使用することが適当である。コーティング混合物は、疎水性の剤を溶媒中に溶解することによって、そして、この混合物へ濃塩酸及び水を添加することによって調製される。金属酸化物ゲルコーティングは、生成品の表面のためにゾルゲル法によって調製される。前記ゲルは、コーティング混合物の付与の間に、前記表面上でそのまま形成される。コーティング混合物は、金属類、プラスチック類、無機物質類、岩石類、並びに、特に、ガラス及びガラス磁器(glass porcelain)へ付与することができる。
【0005】
公知であるように、酸を使用せずに中性pHを有するように調製することができるシリコ−ン系組成物も、防汚剤として使用することができる。シリコ−ンで処理された表面に関する問題は、シリコ−ンの公知の表面張力減少作用のために、これらの表面を後処理することが難しいことである。表面の広範囲にわたる防水及び防油性の理由から、例えば、塗装によってシリコ−ン系表面へ付着させることが実質的に不可能であるということが分かった。
【0006】
シランを含有する前記組成物に関する問題は、組成物が基板の表面へ付与される場合の所望のコーティング用の特性を達成するために、組成物が、シランの活性化に必要とされる強酸を含むことである。強酸の存在のために、組成物は強酸性であり、それによって、組成物の処理には特別な注意が必要とされる。他方では、その酸性の性質によって、組成物が腐食性のものであるために、全ての表面へ付与することができない。特に、金属類(例えば、アルミニウム)及びプラスチック類(この場合、強酸性組成物がプラスチック類の種々の官能基と反応する)に関して問題が生じる。
【0007】
更に、既に市販となっている組成物に関する問題は、生成品の表面上でのそれらの保存性が制限されており、そして、耐久性が不十分なことである。酸で活性化したシランは、十分に長いシラン鎖を形成してゲル様ネットワーク構造(これは、最終生成品の良好な耐摩耗性表面を補償する)を形成することができないことを想定することができる。なお、酸活性化では、シランの部分的な分解が生じてしまうことも想定することができる。このことによって、短いシラン鎖がもたらされ、そして、長いシラン鎖による耐久性ネットワーク構造が形成されない。
【0008】
従って、本発明の目的は、表面へ付与される場合に、耐摩耗性及び引っ掻き抵抗性を有するコーティング組成物を提供すると同時に、最終生成品に対して汚れの除去が容易な且つ防汚性の表面を与えるコーティング組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、エンドユーザーが容易に取り扱うことができ、そして、全てのタイプの表面へ付与可能なコーティング組成物を提供することである。本発明の目的は、本明細書の独立請求項の記載内容により特徴付けられるコーティング組成物によって達成される。本発明の好ましい実施態様は、本明細書の従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明は、コーティング組成物中のフルオロシラン化合物が、酸を使用せずに、塩溶液を使用することにより活性化されるという原理に基づいている。
【0010】
本発明によるコーティング組成物の利点は、付与されるべき組成物が、中性pH(すなわち、およそ6〜7)を有しているため、その取り扱いが容易であることである。更に、腐食性を有さない中性組成物は、例えば、ガラス、セラミック物質類、岩石類、コンクリート、金属類、ゴム、熱可塑性プラスチック類及び熱硬化性プラスチック類(例えば、ポリカーボネート類、ABSプラスチック類、ポリプロピレン、プロピレン及びエチレンのコポリマー、ポリウレタン及びエポキシ類)のような全てのタイプの表面、並びに、塗装された表面に対して付与可能である。
【0011】
《発明の詳細な説明》
コーティング組成物は、保存に安定しており、そして、生成品へ付与される場合に耐久性コーティングを提供する。
【0012】
本発明によると、コーティングの横断方向全体にわたって均質な特性を有する平滑な耐久性コーティングは、汚れの除去が容易である特性を有する剤を含有する組成物を、生成品の表面へ付与することによって提供される。従って、或る観点によると、本発明は、フルオロアルキルシラン化合物の1つ以上と、揮発性物質と、塩と、水とを含むコーティング組成物に関する。
【0013】
本発明では、1つ以上のフルオロアルキルシラン化合物を、防汚性を有する剤として使用する。これらは、例えば、商品名DYNASYLAN(商標)F8261(トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン)としてDegussa AGから販売されている市販の製品として入手可能である。使用可能なフルオロアルキルシラン類は、
一般式:
C(CF(CHSiR(3−y)
(式中、Xは、塩素原子又はROであり、そして、
Rは、炭素原子1〜4個を有する直鎖状又は分岐状アルキル基であり、
は、炭素原子1〜8個を有する直鎖状又は分岐状又は環状アルキル基であり、
nは、0又は2であり、
yは、0、1、又は2であり、そして、
mは、0〜18であるものとする)
を有する。
【0014】
組成物中のフルオロアルキルシラン化合物の量は、全組成物に基づく0.1〜10重量%、好ましくは、2〜3重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0015】
本発明によると、溶媒又は希釈剤を揮発性物質として使用する。これらとしては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、及びホワイトスピリット)、エステル類(例えば、酢酸エチル)、エーテル類、グリコール類、及びグリコールエーテル類を挙げることができる。前記物質の混合物も使用することができる。好ましくは、イソプロパノールを使用する。組成物中の揮発性物質の量は、50〜80重量%、好ましくは70〜80重量%である。
【0016】
本発明では、フルオロアルキルシラン化合物を、塩、水、アルコール、及び存在する酸素により活性化させる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、又はホワイトスピリットをアルコールとして使用することができる。空気中の酸素は、酸素源として適切に作用することができる。本発明において、フルオロアルキルシラン化合物の活性化は、シラン化合物の加水分解を言及するものであって、これは、化合物が液体中のコロイド懸濁液(すなわち、ゾル)へ分解し、そして、化合物が活性態になり、基板の表面上でゲル化される際に耐久性ネットワーク構造を形成することができることを意味する。活性化は、タンク中で適宜実施される。活性化において、タンク中に存在する酸素量が、組成物の全容量に基づくおよそ10〜40容量%、好ましくはおよそ40容量%であることが必要とされる。活性化段階は、約38〜72時間かかり、その後組成物は使用できる状態となる。
【0017】
特に、無機塩を、本発明のコーティング組成物中の塩として使用する。特に適当な塩類としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物類(特に、塩化物類)を挙げることができる。本発明の実施態様では、NaClを塩として使用する。組成物中の塩の量は、0.25〜0.75重量%である。
【0018】
組成物中の水の量は、5〜45重量%、好ましくは約20重量%である。
【0019】
更に、使用できる状態の活性化したコーティング組成物へ懸濁剤を添加することができ、それによって、基板の表面上のゲル化の速度を、蒸発速度に基づいて適当な懸濁剤を選択することにより、望ましい方法で調節することができる。コーティング組成物が付与される基板に応じて、望ましい蒸発速度を変化させることができる。金属のコーティングでは、例えば、ゲル化がゆっくりと起こることが望ましい。アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びホワイトスピリット)、ケトン類(例えば、アセトン)(例えば、酢酸エチル)、エーテル類、及び炭化水素類(例えば、キシレン)を懸濁剤として使用することができる。一例として、基板が金属又はPVCプラスチックである場合、n−ブタノールを懸濁剤として使用することが適当であると言及することができる。ポリウレタン及びポリエステルプラスチック用に適当な懸濁剤はキシレンである。アセトンもポリエステル用に適当である。酢酸エチル及びケトン類は、アクリル系プラスチック用に適当である。
【0020】
懸濁剤の5〜100重量%を、前記方法で活性化されたコーティング組成物へ添加する。従って、コーティング組成物中の懸濁剤の含有量は、全組成物の量のおよそ4〜50重量%である。
【0021】
本発明のコーティング組成物のpHは、中性の範囲中(すなわち、およそ6〜7)にある。
【0022】
本発明は、前記タイプのコーティング組成物を調製する方法にも関するものであって、前記方法は:
塩と水とを混合して、塩溶液を得ること;
シラン化合物と揮発性物質とを混合して、混合物を得ること;
前記塩溶液と前記混合物とを互いに混合して、原料組成物(raw composition)を得ること;
原料組成物を38〜72時間放置させて、活性化したコーティング組成物を得ること;
所望により、活性化したコーティング組成物に懸濁剤を加えること;
を含む。
【0023】
塩と水との塩溶液の形成では、前記塩溶液のpHが中性であることを考慮することが重要である。
【0024】
本発明のコーティング組成物を、いわゆるゾルゲル法によって、基板の表面へ付与する。本発明によると、揮発性物質中のフルオロアルキルシラン化合物の活性化では、化合物の重縮合が生じ、それによって、長いシラン鎖が形成され、そして、コロイド懸濁液(すなわち、ゾル)が提供される。得られたゾルを次に基板へ付与し、それにより、揮発性物質の蒸発に伴って、ゲルネットワーク構造(ここで、シラン化合物は、ゲル構造全体の横方向において均一に分散している)を基板の表面にその位置で提供する。上述したように、所望により、ゲル形成の速度を、存在する懸濁剤によって制御することができる。
【0025】
本発明のコーティング組成物は、室温で、付与から35〜45分以内に、基板用の耐久性ゲルコーティングを提供する。しかしながら、いくつかの要因(例えば、周囲湿度)はゲル化時間に影響を及ぼし、そして、高い湿度はゲル化を遅らせることがある。基板の表面上のゲル形成は、所望により、加熱処理によって加速させることができる。加熱処理は、例えば、45〜80℃で15分間実施することがある。
【0026】
本発明のコーティング組成物へその他の物質を添加して、所望の特性を提供することがある。例えば、ヘキサデシルトリメトキシシランを、組成物の重量に基づく1〜5重量%の量で組成物に添加することができ、この場合、汚れの除去が容易な特性だけでなく特に良好な防湿層を有する最終生成品が提供される。前記コーティング組成物は、金属類、プラスチック類、及びコンクリート、並びに、その他の多孔性表面へ付与することができる。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、公知の技術(例えば、スプレーによる付与、ロールでの付与、クロスを用いるワイピングによる付与、埋封(embedding)による付与、はけ塗り(brushing)による付与、又はドローコーティング(draw coating)による付与)で、基板へ付与することができる。最終生成品の表面上の、ネットワーク構造化されたコーティング組成物の厚さは、およそ1〜5nmである。
【0028】
本発明は、基板の表面上への、本発明の組成物の使用、又は、本発明の方法で調製される組成物の使用にも関するものであって、それによって、耐久性を有し、汚れの除去が容易な表面を提供する。ガラス、セラミック、岩石、コンクリート、金属、ゴム、又は多くの熱可塑性又は熱硬化性プラスチック(例えば、PU、PVC、PE、及びPP)を基板として使用することができる。
【0029】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0030】
《実施例1》
剤形1。12.5gのNaCl塩を、1000gの超純水(ultrapurified water)と、塩が水中へ完全に溶解するまで手動の又は機械式の攪拌器を使用して混合させ、そして、混合物は透明であった。
【0031】
剤形2。1.0gのフルオロアルキルシラン(DYNASYLAN(商標)F8261,Degussa AGによる)を100gのイソプロパノールと、透明な溶液が得られるまで手動の又は機械の攪拌器を使用して混合させた。
【0032】
20gの剤形1及び得られた剤形2(101g)を互いに約10間混合させた。シランの活性化のために、溶液の量に基づく30〜40容量%の空隙がタンク中に残るように、得られた混合物をタンク中で貯蔵した。シランを72時間活性化させるままにした。溶液から過剰の塩をろ過して、その後、溶液は使用できる状態であった。
【0033】
《実施例2》
40gのn−ブタノールを、実施例1で調製した100gの活性化した生成物に添加した。金属に対して非常に長持ちする耐摩耗性コーティングを与える、コーティング組成物を得た。
【0034】
《実施例3》
5gのキシレンを、実施例1で調製した100gの活性化生成物に添加した。得られた組成物をポリウレタン−ポリエステル系塗料に混合させた。耐湿性及び疎水性の高い表面を得た。
【0035】
《実施例4》
5gのアセトンを、実施例1で調製した100gの活性化生成物に添加した。得られた組成物は、ポリエステル樹脂に、良好な耐湿性及び疎水性を与えた。
【0036】
《実施例5:コーティングの耐洗浄性の決定》
ウィンドウガラスの表面上の本発明によるコーティング組成物の耐久性を一例により説明する。コーティング組成物をクロスで付与し、そして、ガラスの表面上に24時間ゲル化させておいた。その後、コーティングの耐洗浄性を、適用可能である場合に、標準規格SFS3755によるブラシを使用することによって決定した。試験されるべき試験片を5000回ブラッシングした。毎1000回後には、試験片から接触角を測定し、コーティングの耐久性をそれによって評価した。試験条件は以下の通りである:
デバイス: Braive Instruments
ブラシ: DIN 53778
潤滑剤: 水
温度: 23℃
【0037】
表1において、サンプルAは、実施例1に記載の方法で調製された本発明のコーティング組成物を表す。サンプルBは、参照組成物であり、ここでは、剤形2を実施例1と同じ方法で調製したが、剤形1は、10gの超純水に0.5gの33.3−%塩酸を添加することにより調製した。剤形1及び剤形2を混合させて、その後に、得られた組成物を10時間活性化させておいた。同様に、サンプルCは参照組成物、すなわち、シリコ−ン系の酸活性化された製品DYNASYLAN(商標)F8263(Degussa AGによる)である。
【0038】
試験結果を表1に示す。試験では、ガラス上に残る水滴の接触角を測定した。
【表1】

【0039】
試験では、参照組成物でコーティングされたガラスよりも、本発明のコーティング組成物でコーティングされたガラス上に、より大きな水滴として水が集まったことが分かった。一般的に、小さい水滴の接触角は大きい水滴のものよりも大きいが、大きな水滴は、小さい水滴よりもガラス表面上でより容易に移動することができる。大きな接触角は、同時に、水滴の表面エネルギーが低いことを示し、そのことは、水滴が表面上で容易に移動することを意味する。小さい接触角は、同時に、高い表面エネルギーを示し、この場合、水滴は、表面上でよりゆっくりと移動する。本発明のコーティング組成物(サンプルA)の接触角は、試験の開始前で、参照サンプルBの接触角よりも小さいものであったが、驚くべきことに、サンプルAの表面エネルギーは、開始時から、Bにおける表面エネルギーよりも低いものであった。このことは、ガラス表面上での大きな水滴の形成により示されている。従って、本発明のコーティング組成物を使用する場合には、参照組成物を使用するものよりも、ガラスの自己洗浄がより効率的である。この効果は実用的な重要性を有する。例えば、自動車のウインドスクリーンにコーティングを使用する場合に、霧状の水滴(drizzle)又は洗浄液は、ガラスの表面上に小さい水滴として残ること(これは、視界を悪化させる)がなく、表面上でより大きな水滴として集まる。視界の悪化は、人が暗闇の中を運転する場合に特に有害であり、この場合に、小さい水滴からの外部光の反射が顕著であることがある。
【0040】
試験結果からは、本発明のコーティング組成物(サンプルA)の接触角が、驚くべきことに、ガラスのブラッシング回数が増加するにつれて更に大きくなったということもわかる。サンプルBでは、試験の間にゲル構造の分解が起こり、そして、前記ゲル構造が、「それ自身で修正すること」、すなわち、基板の表面上でリフォームされることができないということを想定することができる。サンプルAにおいては、そのような分解は観察されなかったが、ゲル構造は時間とともにリフォームされることができる。この現象は、酸活性化されたコーティング組成物(サンプルB)よりも本発明のコーティング組成物がよりゆっくりとゲル化するということによって、部分的に説明されることができる。
【0041】
従って、試験結果は、本発明のコーティング組成物がガラス表面上で良好に保たれるということを示すものであった。反対に、酸活性化されたフルオロアルキルシランを含有するコーティングはガラス上で同様に保たれるものではないが、試験結果に基づく一定の磨耗性を観察することができる。
【0042】
技術進歩として、本発明の基本原理を複数の種々の方法で実施できることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明及びその実施態様は、前記実施例に限定されるものではなく、本明細書の特許請求の範囲内で変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロアルキルシラン化合物の一つ以上と、揮発性物質と、塩と、水とを含む、酸不含のコーティング組成物。
【請求項2】
組成物中のシラン化合物の量が、全組成物に基づく0.1〜10重量%、好ましくは2〜3重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
揮発性物質がアルコール、エステル、又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
アルコールがイソプロパノールである、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
揮発性物質の量が、全組成物に基づく50〜80重量%、好ましくは70〜80重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
塩がNaClである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
塩の量が、0.25〜0.75重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
水の量が、5〜45重量%、好ましくはおよそ20重量%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
懸濁剤を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
懸濁剤が、アルコール、ケトン、エステル、又は炭化水素である、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
懸濁剤の量が、全組成物に基づく4〜60重量%である、請求項9又は10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーティング組成物を製造する方法であって、前記方法を:
塩と水とを混合して、塩溶液を得ること;
シラン化合物と揮発性物質とを混合して、混合物を得ること;
前記塩溶液と前記混合物とを互いに混合して、原料組成物を得ること;
原料組成物を38〜72時間放置させて、活性化したコーティング組成物を得ること;
所望により、活性化したコーティング組成物に懸濁剤を加えること;
を含む、前記方法。
【請求項13】
耐久性があり、汚れの除去が容易な、そして、防汚性の表面を提供する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物、又は、請求項12に記載の方法により製造されるコーティング組成物の基板の表面への使用。
【請求項14】
基板が、ガラス、セラミック、岩石、コンクリート、金属、ゴム、熱可塑性又は熱硬化性プラスチックである、請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2011−525938(P2011−525938A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515497(P2011−515497)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050528
【国際公開番号】WO2009/156579
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510340919)
【氏名又は名称原語表記】YLIKORPI,Lauri
【Fターム(参考)】