説明

コーティング組成物

【課題】 医療デバイス、医療デバイスのためのコーティング、およびこれらを製造するプロセスを提供すること。
【解決手段】 上記医療デバイスのためのコーティングは、主用量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーを含むコポリマー;少なくとも1種のヒドロキサメート;ならびに、脂肪酸の塩および脂肪酸エステルの塩からなる群より選択される脂肪酸成分を含む。上記医療デバイスとしては、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2008年10月15日に出願された米国仮出願番号61/105,480の利益および優先権を主張する。この米国仮出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
カプロラクトン含有コポリマー、ヒドロキサメート、および脂肪酸成分(脂肪酸、脂肪酸の塩、または脂肪酸のエステルの塩)を含む組成物から製造される吸収性材料が提供される。ある実施形態において、本開示の組成物は、医療デバイスを形成するため、または外科手術用物品のためのコーティング(縫合糸のためのコーティングが挙げられる)として使用され得る。
【背景技術】
【0003】
合成吸収性マルチフィラメント縫合糸(例えば、Ethicon,Inc.(Somerville,N.J.)およびTyco Healthcare Group LP(Covidien(North Haven,CT)として営業中)から市販されているDEXONTM、VICRYL(登録商標)、およびPOLYSORBTM)が、産業上公知である。
【0004】
カプロラクトンを含む、合成吸収性縫合糸のための縫合糸コーティングもまた公知である。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13を参照のこと。脂肪酸のエステルおよび/または脂肪酸の塩を含む縫合糸コーティングもまた、公知である。例えば、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、および特許文献19を参照のこと。
【0005】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、ほとんどの細胞外マトリックス分子(コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびプロテオグリカン)に対する基質特異性を有する、中性亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。これは、その触媒活性のために、亜鉛に依存する。
【0006】
ほとんどの細胞は、インビボでMMPを発現しない。その代わりに、増殖因子、ホルモン、炎症性サイトカイン、細胞−マトリックス相互作用および細胞形質転換は、これらの発現を調節する。好中球および好酸球の分泌顆粒は、いくらかのMMPを貯蔵することが公知であるが、ほとんどの細胞型は、通常、非常に低い量のMMPを合成する。
【0007】
MMPは、シグナル配列、アミノ末端プロペプチドドメイン、触媒性亜鉛結合ドメイン、プロリンリッチヒンジ領域、およびカルボキシ末端のヘモペキシン様ドメインを含む、いくつかの共通の構造特性を共有する。
【0008】
細胞外マトリックスの分解は、形態形成、生殖、ならびに成長および維持のプロセス(例えば、細胞移動、血管形成、および組織再生)に関連する生理学的リモデリングにおける、通常の事象である。しかし、炎症の間およびいくつかの疾患状態において、過剰なMMPは、周囲のタンパク質性マトリックスに損傷を与え得、これにより、結合組織の破壊もしくは弱化、制御されない細胞の移動/侵入、および/または組織線維症が生じ得る。例えば、結合組織の弱化または破壊は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、慢性歯周炎(chronic periodontis)、ならびに動脈瘤および心臓瘤を生じ得る。従って、MMPインヒビターが、骨粗鬆症、変形性関節炎、ヒト慢性歯周疾患および種々の型の動脈瘤を処置するために使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4624256号明細書
【特許文献2】米国特許第4190720号明細書
【特許文献3】米国特許第4582052号明細書
【特許文献4】米国特許第4605730号明細書
【特許文献5】米国特許第4700704号明細書
【特許文献6】米国特許第4705820号明細書
【特許文献7】米国特許第4788979号明細書
【特許文献8】米国特許第4791929号明細書
【特許文献9】米国特許第4994074号明細書
【特許文献10】米国特許第5047048号明細書
【特許文献11】米国特許第5100433号明細書
【特許文献12】米国特許第5133739号明細書
【特許文献13】米国特許第5352515号明細書
【特許文献14】米国特許第5716376号明細書
【特許文献15】米国特許第5032638号明細書
【特許文献16】米国特許第4711241号明細書
【特許文献17】米国特許第4705820号明細書
【特許文献18】米国特許第4201216号明細書
【特許文献19】米国特許第4027676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に疾患または損傷に応答しての炎症を減少させ得、そしてMMPによる細胞外マトリックスの分解を防止し得る、医療デバイス(縫合糸が挙げられる)が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
主用量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーを含むコポリマー;
少なくとも1種のヒドロキサメート;ならびに
脂肪酸の塩および脂肪酸エステルの塩からなる群より選択される脂肪酸成分、
を含む、医療デバイスのためのコーティング。
【0012】
(項目2)
上記コポリマーが、約70重量%〜約98重量%のε−カプロラクトン由来の単位を含む、上記項目に記載のコーティング。
【0013】
(項目3)
上記コポリマーが、約80重量%〜約95重量%のε−カプロラクトン由来の単位を含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0014】
(項目4)
上記少なくとも1種の他の共重合性モノマーがグリコリドを含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0015】
(項目5)
上記少なくとも1種のヒドロキサメートが、式:
【0016】
【化1】

のヒドロキサメートであり、この式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0017】
(項目6)
がアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0018】
(項目7)
上記脂肪酸の塩が、C以上の高級脂肪酸の多価金属イオン塩を含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0019】
(項目8)
上記脂肪酸の塩が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸アルミニウム、およびオレイン酸亜鉛からなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0020】
(項目9)
上記脂肪酸エステルの塩が、C10以上の高級脂肪酸のラクチル酸エステル(lactylate ester)の塩を含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0021】
(項目10)
上記C10以上の高級脂肪酸のラクチル酸エステルの塩が、ステアロイルラクチル酸カルシウム、ステアロイルラクチル酸マグネシウム、ステアロイルラクチル酸アルミニウム、ステアロイルラクチル酸バリウム、ステアロイルラクチル酸亜鉛、パルミチルラクチル酸カルシウム、パルミチルラクチル酸マグネシウム、パルミチルラクチル酸アルミニウム、パルミチルラクチル酸バリウム、パルミチルラクチル酸亜鉛、オレイルラクチル酸カルシウム、オレイルラクチル酸マグネシウム、オレイルラクチル酸アルミニウム、オレイルラクチル酸バリウム、およびオレイルラクチル酸亜鉛からなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0022】
(項目11)
塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、ジオキソラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0023】
(項目12)
上記コーティングの成分が複数の層に別々に適用される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0024】
(項目13)
上記コーティングの成分が単一の層として適用される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0025】
(項目14)
上記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、移植片、組織足場、ピン、ねじ、整形外科用金属類、ペーサー、ペースメーカー、薬物送達デバイス、軟組織修復デバイス、および移植物からなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0026】
(項目15)
上記項目のいずれかに記載のコーティングを有するメッシュであって、このコーティングがこのメッシュの約0.3重量%〜約10重量%の量で存在する、メッシュ。
【0027】
(項目16)
ラクトンを含有するポリマー;および
式:
【0028】
【化2】

の少なくとも1種のヒドロキサメートであって、この式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、ヒドロキサメート、
を含む、医療デバイスコーティング。
【0029】
(項目17)
上記ラクトンが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0030】
(項目18)
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0031】
(項目19)
上記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、移植片、組織足場、ピン、ねじ、整形外科用金属類、ペーサー、ペースメーカー、および移植物からなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のコーティング。
【0032】
(項目20)
繊維;ならびに
この繊維の少なくとも一部上のコーティングであって、このコーティングは、
主用量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の重合性モノマーを含むコポリマー;および
式:
【0033】
【化3】

の少なくとも1種のヒドロキサメートであって、この式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、ヒドロキサメート、
を含む、コーティング、
を備える、縫合糸。
【0034】
摘要
本開示は、医療デバイス(縫合糸が挙げられる)および医療デバイスのためのコーティングを形成するために適切な組成物を提供し、この組成物は、コポリマー、少なくとも1種のヒドロキサメート、および脂肪酸成分を含む。このようなコーティングを有する縫合糸および他の医療デバイスもまた提供される。
【0035】
(要旨)
本開示は、医療デバイス、医療デバイス上のコーティング、およびこれらを製造するプロセスを提供する。ある実施形態において、医療デバイスのためのコーティングは、主要量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーを含有するコポリマー、少なくとも1種のヒドロキサメート、ならびに脂肪酸成分(例えば、脂肪酸の塩および脂肪酸エステルの塩)を含み得る。
【0036】
他の実施形態において、本開示の医療デバイスコーティングは、ラクトンを含むポリマー、および式:
【0037】
【化4】

の少なくとも1種のヒドロキサメートを含み得、この式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、これらの基を末端とするポリマー、および/またはこれらの組み合わせであり、そしてRは、水素を含む。
【0038】
ある実施形態において、本開示の組成物から製造され得るか、または本開示の組成物を含むコーティングを有し得る医療デバイスとしては、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス(buttress)、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、移植片、組織足場、ピン、ねじ、整形外科用金属類、ペーサー(pacer)、ペースメーカー、薬物送達デバイス、軟組織修復デバイス(メッシュ固定具が挙げられる)、および移植物が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本開示の縫合糸は、繊維、およびこの繊維の少なくとも一部分上のコーティングを含み得、このコーティングは、主要量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーを含有するコポリマー、式:
【0040】
【化5】

の少なくとも1種のヒドロキサメートを含み、この式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、これらの基を末端とするポリマー、および/またはこれらの組み合わせであり、そしてRは、水素を含む。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(詳細な説明)
ある実施形態において、上記物品およびこの物品上のコーティングを形成する際に有用な組成物は、コポリマー、ヒドロキサメート、および必要に応じて脂肪酸成分を含む。いくつかの実施形態において、この脂肪酸成分は、主要成分として存在し得る。本明細書中で使用される場合、「主要成分」は、約50重量%より多い量で存在する成分を含む。従って、「少量成分」は、約50重量%までの量で存在する成分を含む。本開示によれば、本開示の組成物が脂肪酸成分を主要成分として含む場合、少量成分は、ヒドロキサメートとコポリマーとの組み合わせであり得る。
【0042】
ある実施形態において、これらのコポリマーは、カプロラクトンを含み得る。適切なカプロラクトン含有コポリマーとしては、当業者の知識の範囲内である重合技術により合成され得るコポリマーが挙げられる。ある実施形態において、このカプロラクトン含有コポリマーは、主要量のε−カプロラクトンと、少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーまたはこのようなモノマーの組み合わせとを、多価アルコール開始剤の存在下で重合させることによって、得られ得る。他の実施形態において、利用され得るカプロラクトン含有コポリマーとしては、主要量のε−カプロラクトンと、これと重合可能な少量の別の生体吸収性モノマーとを、必要に応じて多価アルコール開始剤の存在下で重合させることによって得られる、「スター」コポリマーが挙げられる。
【0043】
ε−カプロラクトンと共重合し得る適切なモノマーとしては、アルキレンカーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート);ジオキサノン;ジオキセパノン;吸収性環状アミド;クラウンエーテルから誘導される吸収性環状エーテル−エステル;エステル化が可能なヒドロキシ酸(αヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸および乳酸)とβヒドロキシ酸(例えば、βヒドロキシ酪酸およびγヒドロキシ吉草酸)との両方が挙げられる);ポリアルキルエステル(例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールならびにこれらの組み合わせ);グリコリドならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
カプロラクトン含有コポリマーを形成する際に利用され得る適切な多価アルコール開始剤としては、グリセロール;トリメチロールプロパン;1,2,4−ブタントリオール;1,2,6−ヘキサントリオール;トリエタノールアミン;トリイソプロパノールアミン;エリトリトール;トレイトール;ペンタエリトリトール;リビトール;アラビニトール;キシリトール;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;ジペンタエリトリトール;アリトール;ズルシトール;グルシトール;アルトリトール;イジトール;ソルビトール;マンニトール;イノシトールなどが挙げられる。マンニトールが、いくつかの実施形態において有用である。
【0045】
多価アルコール開始剤は、一般に、少量(例えば、全モノマー混合物の約0.01重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態において、全モノマー混合物の約0.1重量%〜約3重量%)で使用され得る。
【0046】
上記モノマーとカプロラクトンとの重合は、種々の型のモノマー付加(例えば、同時、連続的、同時の次に連続的、連続的の次に同時など)の全てを企図する。
【0047】
カプロラクトン含有コポリマーは、約70重量%〜約98重量%のε−カプロラクトン由来の単位、ある実施形態においては、約80重量%〜約95重量%のε−カプロラクトン由来の単位を含み得、このコポリマーの残りの部分は、他の共重合性モノマーから誘導される。
【0048】
ある実施形態において、共重合性モノマーは、グリコリドであり得、必要に応じて、他のモノマーと組み合わせられる。
【0049】
他の実施形態において、ε−カプロラクトンとの共重合に適切であると上で確認されたモノマーの任意のものは、カプロラクトンなしで利用され得る。すなわち、これらのモノマーは、ホモポリマーとして、またはカプロラクトン以外のモノマーと組み合わせて使用されて、本開示により使用するためのポリマーを形成し得る。同様に、ある実施形態において、カプロラクトンは、ホモポリマーとして利用され得る。従って、ある実施形態において、本開示の組成物を形成するために利用されるポリマーは、ラクトンを含み得る。適切なラクトンとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネートが挙げられ、単独でか、または他のモノマーと組み合わせて使用され得る。
【0050】
なお他の実施形態において、本開示により利用されるコポリマーは、少なくとも部分的に、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーから作製され得る。適切なポリオキシアルキレンブロックコポリマーとしては、A−BまたはA−B−Aの構造を有するものが挙げられ、ここで「A」は、式−O(CH−の反復単位から作製されるブロックであり、ここでnは、1〜4であり、そして「B」は、Aブロックの反復単位と異なる反復単位から作製されるブロックであり、そして式−O(CH−からなる群より選択され、ここでnは1〜4である。特に有用な実施形態は、「PEO−PPO−PEO」(ここで「PEO」は、式−OCHCH−の反復単位のブロックを表し、そして「PPO」は、式−OCHCHCH−の反復単位のブロックを表す)として表されるコポリマーである。特に有用なものは、式HO(CO)(CO)(CO)Hのトリブロックコポリマーであり、ここでaおよびcは独立して、1〜150の単位であり、そしてbは、10〜200の単位であり、全体の分子量は、1,000〜50,000ダルトンの範囲である。このようなポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、ある実施形態において、当業者により「ポロキサマー」と称され得る。適切なポロキサマーとしては、aがcと等しく、そしてbが10〜200の単位の範囲であるポロキサマーが挙げられる。
【0051】
本開示の組成物を形成する際に利用され得るコポリマーを形成するために利用され得る、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの例としては、PLURONIC(登録商標)(BASF Corp.)またはSYNPERONIC(登録商標)(ICI)の商品名で販売されているポロキサマーが挙げられる。PLURONIC(登録商標)コポリマーは、特定の文字と数字との組み合わせによって識別される。アルファベットの指定は、その製品の物理的形態を説明する。「L」は液体を表し、「P」はペーストを表し、「F」は固体形態を表す。数字の指定における最初の数字(3桁の数字のうちの2つ)を300倍すると、疎水性成分(プロピレンオキシド)のおよその分子量になる。最後の数字を10倍すると、この分子の親水性(エチレンオキシド)成分のおよその含有量(重量%として)になる。従って、例えば、PLURONIC(登録商標)F68は、固体材料である。その疎水性(プロピレンオキシド)成分の分子量は、約1800(6×300)である。親水性(エチレンオキシド)成分は、この分子の約80重量%(8×10)を占める。
【0052】
ポロキサマーは、大まかに3つの主要カテゴリーに分割され得、これらの各々が、本開示の組成物のコポリマー成分を作製する際に有用であり得る。これらのカテゴリーはすなわち、エマルジョン形成ポロキサマー、ミセル形成ポロキサマー、および水溶性ポロキサマーである。ポロキサマーの特徴および挙動を決定する種々の要因としては、分子量、PPO:PEO比、温度条件、濃度、およびイオン性物質の存在が挙げられる。従って、本開示の組成物を処方する際に使用され得る現在市販されているポロキサマーには、特に、この組成物が医療薬剤または他の生物活性薬剤をさらに含む場合には、広範な特徴が存在する。
【0053】
ある実施形態において、本開示の組成物のコポリマー成分において利用され得る適切なポロキサマーとしては、BASF(Parsippany,N.J.)により商品名PLURONIC(登録商標)F68で販売されている、ポロキサマー188として公知のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーが挙げられる。本開示の組成物において利用され得る他のポロキサマーとしては、ポロキサマー403(PLURONIC(登録商標)P123として販売されている)、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)P127として販売されている)、ポロキサマー402(PLURONIC(登録商標)P122として販売されている)、ポロキサマー181(PLURONIC(登録商標)L61として販売されている)、ポロキサマー401(PLURONIC(登録商標)L121として販売されている)、ポロキサマー185(PLURONIC(登録商標)P65として販売されている)、およびポロキサマー338(PLURONIC(登録商標)F108として販売されている)が挙げられる。
【0054】
ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、いくつかの実施形態において、さらなる生体適合性の生分解性モノマーと反応して、コポリマーを形成し得る。ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと反応し得る適切なモノマーとしては、例えば、α−ヒドロキシ酸、ラクトン、カーボネート、エステルアミド、無水物、アミノ酸、オルトエステル、アルキレンアルキレート、アルキレンオキシド、生分解性ウレタン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ポロキサマーに付加され得る適切な生体適合性の生分解性モノマーの具体的な例としては、グリコリド、ラクチド、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、p−ジオキサノン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらのモノマーは、単独でかまたは組み合わせで、コポリマー成分の約90重量%まで、ある実施形態においては、コポリマー成分の約10重量%〜約75重量%、他の実施形態においては、コポリマー構成要素の約30重量%〜約65重量%を構成し得、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが、このコポリマー成分の残りの部分を構成する。もちろん、他のモノマーが最初に反応してポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ランダムブロックなど)を形成し得、その後、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと反応し得ることが理解されるべきである。このような反応を実施するために適切な条件は、当業者の知識の範囲内である。
【0055】
他の実施形態において、米国特許第6,177,094号に開示されるように、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーは、主要量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーまたはこのようなモノマーの混合物を含むモノマー混合物と、多価アルコール開始剤の存在下で反応し得る。このようなモノマー混合物はまた、ポリアルキレンブロックコポリマーなしで利用され得る。上記モノマーの重合は、全ての種々の型のモノマー付加(すなわち、同時、連続的、同時の次に連続的、連続的の次に同時など)を企図する。ε−カプロラクトンと共重合し得る適切なモノマーとしては、グリコリド、ラクチド、p−ジオキサノンおよびトリメチレンカーボネートが挙げられる。
【0056】
ある実施形態において、主要量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーまたはこのようなモノマーの混合物を含むεカプロラクトンポリマー(グリコリドなどの共重合性モノマーと組み合わせて上に記載されたカプロラクトンコポリマーが挙げられる)は、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーと反応し得る。
【0057】
ある実施形態において、本開示により使用するために適切なコポリマーとしては、約50重量%より多い量、ある実施形態においては約50重量%〜約55重量%の量で存在するカプロラクトン単位;約5重量%〜約15重量%の量で存在するグリコリド単位;および約30重量%〜約45重量%の量のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレントリブロックコポリマー(ある実施形態においては、上記ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68の商品名でBASF(Parsippany,N.J.)により販売されている))を有するコポリマーが挙げられる。
【0058】
本開示の組成物はまた、少なくとも1種のヒドロキサメートを有し得る。本開示の組成物において使用するために適切なヒドロキサメートとしては、以下の式(I):
【0059】
【化6】

のヒドロキサメート基を有する成分が挙げられ、式(I)において、Rは、ビニル基(ポリビニルアルコールなどのビニルアルコールが挙げられる)、アクリレート基(アクリル酸アルキルが挙げられる)、メタクリレート基(メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ヒドロキシエチルが挙げられる)、酸基(アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる)、他のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびヒドロキシル基を有するポリマー(上記基のうちのいずれか(例えば、ビニルアルコール、メタクリル酸ヒドロキシエチル)を末端として有するポリマーが挙げられる)などを含み得、そしてRは、水素であり得る。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」とは、単独でかまたは複合語(例えば、「ハロアルキル」もしくは「アルキルチオ」)においてのいずれかで使用され、直鎖または分枝鎖のC1〜12アルキル基を含む。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」とは、直鎖または分枝鎖のアルコキシを含み、ある実施形態においては、C1〜12アルコキシであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびブトキシ異性体である。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」とは、直鎖、分枝鎖または単環式もしくは多環式のアルケンから形成される基を含み、エチレン性モノ不飽和またはエチレン性ポリ不飽和の上で定義されたようなアルキル基またはシクロアルキル基を含み、ある実施形態においては、C2〜12アルケニルである。アルケニルの例としては、ビニル;アリル;1−メチルビニル;ブテニル;イソブテニル;3−メチル−2−ブテニル;1−ペンテニル;シクロペンテニル;1−メチル−シクロペンテニル;1−ヘキセニル;3−ヘキセニル;シクロヘキセニル;1−ヘプテニル;3−ヘプテニル;1−オクテニル;シクロオクテニル;1−ノネニル;2−ノネニル;3−ノネニル;1−デセニル;3−デセニル;1,3−ブタンジエニル;1,4−ペンタジエニル;1,3−シクロペンタジエニル;1,3−ヘキサジエニル;1,4−ヘキサジエニル;1,3−シクロヘキサジエニル、1,4−シクロヘキサジエニル;1,3−シクロヘプタジエニル;1,3,5−シクロヘプタトリエニル;または1,3,5,7−シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態においてヒドロキサメートを形成するために使用され得るさらなるモノマーおよびコモノマーとしては、例えば、(アルカ)アクリレート、(アルカ)アクリルおよび(アルカ)アクリルアミドが挙げられ、これらはそれぞれ、アクリレートまたはアルカアクリレート、アクリルまたはアルカアクリル、およびアクリルアミドまたはアルカアクリルアミドを意味し得る。他に記載されない限り、アルカアクリレート基、アルカアクリル基およびアルカアクリルアミド基は、約1個〜約4個の炭素原子をそのアルキル基に含み得、そしてメタクリレート基、メタクリル基またはメタクリルアミド基であり得る。同様に、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルおよび(メタ)アクリルアミドはそれぞれ、アクリレートまたはメタクリレート、アクリルまたはメタクリル、およびアクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味すると理解されるべきである。
【0064】
これらのヒドロキサメート官能性成分を形成するための方法は、当業者の知識の範囲内である。例えば、ある実施形態において、ヒドロキサメート官能性ポリマーは、架橋ポリメタクリル酸(PMAA)−co−メタクリル酸メチル(MAA)ビーズの表面修飾により生成され得、これにより、ヒドロキサメート官能性成分として、ヒドロキサメート官能性ポリマー(すなわち、PMAA−MMA−ヒドロキサメート)を生成する。
【0065】
ある実施形態において、重合性ヒドロキサメートモノマーは、上記コポリマー(例えば、カプロラクトン含有コポリマー)と共重合し得るか、またはそれらとブレンドされ得る。ヒドロキサメートモノマー(これは、上記式Iにより包含され得る)は、CH=C−CHを含むRおよび水素であり得るRを有し得る。他の実施形態において、ヒドロキサメートモノマーは、ヒドロキサメートホモポリマーを合成するために利用され得るか、または他の任意の適切な成分と共重合してコポリマーを生成し得、このコポリマーは次に、上記コポリマー(例えば、カプロラクトン含有コポリマー)と共重合し得るか、もしくはそれらとブレンドされ得る。
【0066】
上記ヒドロキサメートモノマーから合成されるヒドロキサメートホモポリマーはまた、任意の誘導体化可能なポリマーにグラフトされ得る。次いで、得られるヒドロキサメート官能性組成物は、モノマーであっても、ホモポリマーであっても、コポリマーであっても、コモノマーまたはブレンドとしての上記コポリマー(例えば、カプロラクトン含有コポリマー)と組み合わせられ得る。
【0067】
もちろん、2種以上のヒドロキサメートが、本開示の組成物を形成する際に利用され得ることが理解されるべきである。
【0068】
重合を実施するための条件は、当業者の知識の範囲内であり、そしてカプロラクトンコポリマーの重合について上に記載された条件が挙げられる。他の実施形態において、重合は、モノマー(例えば、カプロラクトンコポリマーを形成する際に利用されるモノマー)およびヒドロキサメートを、高エネルギー放射線(γ線および/または電子線を含む)のような照射、紫外光、パルスレーザ切除蓄積(pulse laser ablation deposition)、プラズマエネルギー処理、化学的開始および光開始などを含むエネルギーに供することによって、開始され得る。ある実施形態において、高エネルギー放射線開始の使用は、有利であり得る。なぜなら、化学開始剤または触媒などのさらなる開始剤の使用を必要としないはずであるからである。
【0069】
他の従来の技術(熱重合または光化学重合が挙げられる)が重合のために使用され得る。コーティングされるポリマーフィルム中で架橋を生じ得るコモノマーが存在する場合、重合状態は、架橋が重合中に起こらないように設定され得る。従って、例えば、化学線は、化学線への曝露により架橋を形成し得るコモノマーを含むポリマーを調製するためには、使用され得ない。
【0070】
熱重合のためには、約40℃〜約100℃、ある実施形態においては、約50℃〜約80℃の温度が使用され得る。光化学重合のためには、化学線(例えば、γ放射、紫外(UV)放射、可視放射、またはマイクロ波放射)が使用され得る。ある実施形態において、約200nm〜約400nmの波長のUV放射が使用され得る。
【0071】
重合は、一般に、反応媒体中で実施され、この反応媒体は、例えば、溶媒として例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、またはポリマーがプロトン性溶媒と反応する基を含まない場合には、水または約1個〜約4個の炭素原子を含むアルカノール(例えば、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノール)を使用する溶液または分散物である。あるいは、上記溶媒の任意のものの混合物が使用され得る。
【0072】
ある実施形態において、本開示の組成物の成分(例えば、ラクトンポリマーおよび/もしくはヒドロキサメート)は、上記溶媒中で乳化、分散、ならびに/または混合されて、本開示の適切なコーティング組成物を形成し得る。
【0073】
重合は、1種以上の重合開始剤(上記のような多価アルコールが挙げられる)の存在下で実施され得る。
【0074】
一般に、重合は、約1時間〜約72時間、ある実施形態においては、約8時間〜約48時間、いくつかの場合には、約16時間〜約24時間にわたって、例えば窒素またはアルゴンの不活性雰囲気下で実施される。このポリマーは、透析、非溶媒(例えば、ジエチルエーテルまたはアセトン)中での沈殿、あるいは限外濾過によって精製され得る。得られるポリマーは、一般に、減圧下で、例えば、約5時間〜約72時間にわたって乾燥させられ、そして約10,000〜約1千万、ある実施形態においては約20,000〜約百万の分子量を有する。
【0075】
従って、本開示の組成物は、開始剤および/または他の任意の成分(例えば、連鎖移動剤、酸、塩基、界面活性剤、乳化剤もしくは従来の型の触媒)を、それぞれこのモノマーの総重量に対して約0.1重量%〜約5重量%、ある実施形態においては、約0.2重量%〜約3重量%、そしていくつかの場合には約0.5重量%含み得る。
【0076】
上記コポリマーおよびヒドロキサメートに加えて、本開示による組成物はまた、脂肪酸成分(例えば、脂肪酸または脂肪酸塩または脂肪酸エステルの塩)を含み得る。適切な脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、そして約12個より多い炭素原子を有する高級脂肪酸を含み得る。適切な飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびラウリン酸が挙げられる。適切な不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられる。さらに、脂肪酸のエステル(例えば、トリステアリン酸ソルビタンまたは硬化ヒマシ油)が使用され得る。
【0077】
適切な脂肪酸塩としては、C以上の高級脂肪酸(特に、約12個〜約22個の炭素原子を有する脂肪酸)の多価金属イオン塩、およびこれらの混合物が挙げられる。ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、および亜鉛塩が挙げられる脂肪酸塩(すなわち、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸アルミニウム、およびオレイン酸亜鉛)が、本開示のいくつかの実施形態において有用であり得る。いくつかの有用な塩としては、市販の「食品等級」のステアリン酸カルシウムが挙げられ、これは、約3分の1のC16脂肪酸と3分の2のC18脂肪酸との混合物を含み、少量のC14脂肪酸およびC22脂肪酸を含む。
【0078】
本開示の組成物に含まれ得る適切な脂肪酸エステルの塩としては、C10以上の高級脂肪酸のラクチル酸エステルの塩が挙げられる。例示的な脂肪酸エステルの塩としては、例えば、ステアロイルラクチル酸カルシウム、ステアロイルラクチル酸マグネシウム、ステアロイルラクチル酸アルミニウム、ステアロイルラクチル酸バリウム、またはステアロイルラクチル酸亜鉛;パルミチルラクチル酸カルシウム、パルミチルラクチル酸マグネシウム、パルミチルラクチル酸アルミニウム、パルミチルラクチル酸バリウム、またはパルミチルラクチル酸亜鉛;および/あるいはオレイルラクチル酸カルシウム、オレイルラクチル酸マグネシウム、オレイルラクチル酸アルミニウム、オレイルラクチル酸バリウム、またはオレイルラクチル酸亜鉛が挙げられる。ある実施形態において、ステアロイル−2−ラクチル酸カルシウム(例えば、商品名VERVとしてAmerican Ingredients Co.,Kansas City,Mo.から市販されているステアロイル−2−ラクチル酸カルシウム)が利用され得る。利用され得る他の脂肪酸エステル塩としては、ステアロイルラクチル酸リチウム、ステアロイルラクチル酸カリウム、ステアロイルラクチル酸ルビジウム、ステアロイルラクチル酸セシウム、ステアロイルラクチル酸フランシウム、パルミチルラクチル酸ナトリウム、パルミチルラクチル酸リチウム、パルミチルラクチル酸カリウム、パルミチルラクチル酸ルビジウム、パルミチルラクチル酸セシウム、パルミチルラクチル酸フランシウム、オレイルラクチル酸ナトリウム、オレイルラクチル酸リチウム、オレイルラクチル酸カリウム、オレイルラクチル酸ルビジウム、オレイルラクチル酸セシウム、およびオレイルラクチル酸フランシウムからなる群より選択されるものが挙げられる。
【0079】
上記のように、ヒドロキサメートは、コポリマーと組み合わせられ得、そしてこれらが一緒になって、本開示の組成物の少量成分を形成し得る一方で、脂肪酸成分は、本開示の組成物の主要成分を形成し得る。従って、ある実施形態において、コポリマーは、本開示の組成物中に、この組成物の約1重量%〜約9重量%、ある実施形態においては、この組成物の約2重量%〜約7重量%の量で存在し得る。ヒドロキサメートは、この組成物の約0.5重量%〜約9重量%、ある実施形態においては、この組成物の約1重量%〜約5重量%の量で存在し得る。従って、脂肪酸成分は、この組成物の約0.5重量%〜約5重量%、他の実施形態においては、この組成物の約1重量%〜約3重量%の量で存在し得る。
【0080】
コポリマー、脂肪酸成分、およびヒドロキサメートは、非毒性である。これらの3つの組み合わせもまた非毒性である。
【0081】
ヒドロキサメートを含む本開示の組成物は、医療デバイスおよび移植物のためのコーティングとして使用され得る。慢性創傷は、治癒に数ヶ月または数年かかり得る。これは部分的には、新たに形成されるマトリックスを合成と同時に分解する高レベルのMMPに起因する。ヒドロキサメートを含む本開示のコーティングは、そのヒドロキサメート基の存在に起因して、創傷またはその隣接部位におけるMMPの活性を阻害し得、これによって、治癒を促進する。
【0082】
同様に、腫瘍の新脈管形成または脈管形成、および転移の形成は、細胞の移動および侵入を必要とし、これらはプロMMPの放出により可能にされる。従って、ヒドロキサメート(これは、これらのMMPに反対に作用する)を含む本開示のコーティングは、腫瘍の新脈管形成および/または脈管形成を最小にするために適切であり得る。
【0083】
さらに、組織リモデリングは、MMPの分泌または発現に対して二次的に起こる。従って、MMPの作用によって、創傷修復に関連する血管が再吸収されるか、または虚血性組織が破壊される。従って、ヒドロキサメート(これは、これらのMMPに反対に作用する)を含む本開示のコーティングは、創傷修復を増強するために適切であり得る。
【0084】
MMPの活性はまた、アテローム性動脈硬化症斑の形成に関与するプロセス(炎症性細胞の浸潤、新脈管形成、ならびに平滑筋細胞の移動および増殖)の多くのために必須である。上昇したレベルのMMPは、ヒトアテローム性動脈硬化症斑および動脈瘤の部位に発現される。さらに、MMPによるマトリックス分解は、斑の不安定性および破壊を引き起こし得、これは、アテローム性動脈硬化症の臨床症状をもたらす。従って、ヒドロキサメート(これは、これらのMMPに反対に作用する)を含む本開示のコーティングは、アテローム性動脈硬化症斑の形成、および動脈瘤の部位の破壊の発生を減少させるために適切であり得る。
【0085】
活性MMPの割合の増加が、冠状動脈疾患の処置のための脈管介入(例えば、バルーン血管形成術または冠状血管内ステント配置)後の再狭窄の進行に関連することの証拠もまた蓄積されている。プロ(不活性)MMP−2のみを構成的に発現する非疾患脈管壁とは異なり、損傷した動脈またはアテローム性動脈硬化症の動脈は、MMP−2活性の劇的な増加を示す。このことは、MMP−3、MMP−7、MMP−9、MMP−12、およびMMP−13の誘導された発現に関連して起こる。従って、ヒドロキサメート(これは、これらのMMPに反対に作用する)を含む本開示のコーティングは、再狭窄を減少させるために利用され得る。
【0086】
ヒドロキサメートを含む本開示のコーティングは、MMP酵素の活性中心の亜鉛に結合することによって、MMPを不活性化し得る。複数の付着点があるので、ヒドロキサメートは、亜鉛に対する分子磁石のように挙動する。
【0087】
ある実施形態において、ヒドロキサメートを有する本開示の組成物は、特定のMMP型に対するいかなる特異性もなしに、MMPの活性形態に結合し得る。他の実施形態において、ヒドロキサメートを有する本開示の組成物は、局所組織環境において、MMPの活性形態に対する優先的な結合を提供し得る。これは、MMP調節カスケードにおける1つのステージ(すなわち、マトリックス分解の直前のステージ)を特異的に標的とするので、有利であり得る。さらに、選択的結合は、過剰阻害の危険性を減少させ得る。過剰阻害は、組織の代謝回転ならびに必須のプロセス(例えば、細胞移動および新脈管形成)の健常な速度を妨げることによって、治癒を遅延させる。
【0088】
本開示の組成物は、低濃度のヒドロキサメートを放出し得、これによって、本開示の組成物が適用される移植または損傷の部位で放出される箇所で、ヒドロキサメートがMMP活性の阻害を提供する。
【0089】
本開示の組成物を形成するために、コポリマー、ヒドロキサメート、および脂肪酸成分を組み合わせるための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、混合、ブレンドなどが挙げられる。ブレンドに加えて、いくつかの実施形態において、上記のように、コポリマーがヒドロキサメートを含み得、次いでこのコポリマーが、脂肪酸成分と組み合わせられ得る。
【0090】
ある実施形態において、脂肪酸エステル(例えば、ステアロイルラクチル酸カルシウム)が、本開示の組成物を形成する際に利用され得る。このような脂肪酸エステルは可溶性であるので、このような脂肪酸エステル、ヒドロキサメート、およびコポリマー(上記カプロラクトン含有コポリマーが挙げられる)を含む本開示の組成物から製造されるコーティングは、噴霧、浸漬などが挙げられるプロセスによって、物品(外科手術用物品が挙げられる)に溶液として適用され得る。
【0091】
ある実施形態において、本開示の組成物は、当業者の知識の範囲内である任意の適切な溶媒を利用して、溶液中で適用され得る。このような溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジプロピルエーテル、ジオキソラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0092】
ある実施形態において、コーティング懸濁物が利用され得、この場合、本開示の組成物は、複数の溶媒(上に記載された任意の溶媒が挙げられる)と組み合わせられる。ある実施形態において、コーティング懸濁物を形成するために適切な溶媒としては、低級アルコール(約1個〜約6個の炭素原子を有するアルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、これらの組み合わせなど);ヘキサン(ヘキサン、シクロヘキサン、これらの組み合わせなどが挙げられる);塩素化溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン(二塩化エチレンとしてもまた公知)、ジクロロベンゼン、これらの組み合わせなど)が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、いくつかの実施形態において、複数の溶媒(上記溶媒の任意の組み合わせが挙げられる)が使用され得る。
【0093】
例えば、本開示の組成物は、任意の適切なプロセス(例えば、医療デバイスをこの組成物の溶液に通すこと、ブラシまたは他のコーティング溶液アプリケータに通すこと、あるいはコーティングとして使用するための本開示の組成物を含む溶液を分配する1つ以上のスプレーノズルに通すこと)によって、コーティングとして適用され得る。次いで、このコーティング溶液で濡れた物品が、引き続いて、溶媒を気化させて除去するために充分な時間および温度で、乾燥オーブンに通され得るか、または乾燥オーブン中に保持され得る。所望であれば、このコーティング組成物は、必要に応じて、さらなる成分(例えば、色素、抗生物質、防腐剤、増殖因子、抗炎症剤など)をさらに含み得る。
【0094】
コーティングとして適用される場合、本開示の組成物は、連続的な工程、すなわち、単一の工程で適用され得る。他の実施形態において、本開示の組成物は、不連続な工程または半連続的な工程、すなわち、多工程プロセスで適用され得る。
【0095】
本開示の組成物は、単一の層のコーティングとして適用され得るか、またはある実施形態においては、本開示の組成物は、複数の層のコーティングとして、および/または物品上に先に存在する他のコーティングへのオーバーコートとして適用され得る。いくつかの実施形態において、本開示のコーティングは、本明細書中に記載される3つの成分を含み得、これらの成分は、順番に適用される。例えば、コポリマー(例えば、カプロラクトン含有コポリマー)は、脂肪酸成分と組み合わせられ得、次いでこれらの2つの組み合わせが、医療デバイスまたはその上のコーティングを形成するために利用され得る。次いで、上記ヒドロキサメートが、脂肪酸成分と組み合わせられたカプロラクトン含有コポリマーから製造されたデバイス、または脂肪酸成分と組み合わせられたカプロラクトン含有コポリマーを含むコーティングをすでに有するデバイスに、別のコーティングとして適用され得る。
【0096】
本開示の組成物は、医療デバイスおよびその上のコーティングの形成において、多数の用途を見出し得る。ある実施形態において、外科手術用物品は、本明細書中に記載される組成物から製造され得るか、またはこれらの組成物でコーティングされ得る。適切な医療デバイスとしては、クリップおよび他のファスナー、ステープル、縫合糸、ピン、ねじ、プロテーゼデバイス、創傷包帯、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、外科手術用刃、コンタクトレンズ、眼内レンズ、外科手術用メッシュ、ステント、ステントコーティング、移植片、カテーテル、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、コンタクトレンズ、眼内レンズ、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、組織足場、ステープル止めデバイス、バットレス、ラップバンド、整形外科用金属類、ペーサー、ペースメーカー、ならびに他の移植物および移植可能デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
繊維が、本開示の組成物から作製され得るか、またはこれらの組成物でコーティングされ得る。ある実施形態において、本開示の組成物で製造またはコーティングされた繊維は、他の繊維(吸収性繊維または非吸収性繊維のいずれか)と編まれるかまたは織られて、布を形成し得る。繊維はまた、不織材料に作製されて、メッシュおよびフェルトなどの布を形成し得る。
【0098】
ある実施形態において、ヒドロキサメートおよびコポリマーと組み合わせられる脂肪酸成分は、有利には、混合されて外科手術用縫合糸をコーティングする際に有用な組成物(脂肪酸成分をその主要成分とする)を形成し得る。
【0099】
本明細書中のコーティング組成物は、任意の型の縫合糸に適用され得るが、いくつかの実施形態において、マルチフィラメント縫合糸をコーティングするために有用であり得、ある実施形態においては、編組縫合糸(米国特許第5,019,093号(その全開示は本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる)をコーティングするために有用であり得る。ある実施形態において、編組マルチフィラメント縫合糸をコーティングするために有用な組成物は、少なくとも約52%の脂肪酸成分を含み得、この残りは、コポリマーと組み合わせたヒドロキサメートである。縫合糸に適用されると、このコーティング組成物は、この縫合糸の1つ以上の特性(例えば、結び目の安全性、外科医が動かすこと、潤滑性、結び目を解くこと、および/または結び目の再配置)の有利な改善を生じる。
【0100】
編組縫合糸に適用されるコーティング組成物の量は、その縫合糸の構造(例えば、フィラメントの数、編組または撚りのきつさ、縫合糸のサイズ、およびその組成)に依存して変動する。適切なコーティングレベルは、縫合糸の約0.3重量%〜約10重量%の範囲であり、縫合糸の約0.5重量%〜約5重量%が、いくつかの実施形態において有用である。
【0101】
コーティングされた縫合糸は、当業者の知識の範囲内である方法によって、外科手術用針に取り付けられ得る。創傷が、この針付き縫合糸を組織に通すことにより縫合され、創傷閉鎖を作製し得る。次いで、この針がこの縫合糸から除去され、そしてこの縫合糸が結ばれる。コーティングは、外科医がこの縫合糸を組織に通す能力を有利に増強させ、そして外科医がこの縫合糸を結び得る容易さおよび安全性を増加させる。
【0102】
本開示のコーティングを有する縫合糸は、優れた取り扱い特性および結び目の安全性を有し、これらは、ある実施形態において、結び目板試験(tie board testing)および当業者の知識の範囲内である類似の方法を使用して、決定され得る。本開示のコーティングを有する縫合糸はまた、優れた結び目を解くことおよび再配置、ならびに湿潤時と乾燥時との両方の取り扱い特徴を有する。これらの特性を決定するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、Instron Corporation(Norwood,MA)による装置および方法の使用が挙げられる。
【0103】
種々の上記および他の特徴および機能またはその代替例は、望ましくは、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わせられ得ることが理解される。現在予想も予測もされない種々の代替例、改変、バリエーションまたは改善は、今後、当業者によりなされ得、これらもまた添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されることもまた、理解される。特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、請求項の工程または成分は、任意の特低の順序、数、位置、サイズ、形状、角度、色、または材料に関して、本明細書または他のいずれかの請求項により示唆も組み込みもされないべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主用量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の共重合性モノマーを含むコポリマー;
少なくとも1種のヒドロキサメート;ならびに
脂肪酸の塩および脂肪酸エステルの塩からなる群より選択される脂肪酸成分、
を含む、医療デバイスのためのコーティング。
【請求項2】
前記コポリマーが、約70重量%〜約98重量%のε−カプロラクトン由来の単位を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記コポリマーが、約80重量%〜約95重量%のε−カプロラクトン由来の単位を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
前記少なくとも1種の他の共重合性モノマーがグリコリドを含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項5】
前記少なくとも1種のヒドロキサメートが、式:
【化7】

のヒドロキサメートであり、該式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
がアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載のコーティング。
【請求項7】
前記脂肪酸の塩が、C以上の高級脂肪酸の多価金属イオン塩を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項8】
前記脂肪酸の塩が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸アルミニウム、およびオレイン酸亜鉛からなる群より選択される、請求項7に記載のコーティング。
【請求項9】
前記脂肪酸エステルの塩が、C10以上の高級脂肪酸のラクチル酸エステルの塩を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項10】
前記C10以上の高級脂肪酸のラクチル酸エステルの塩が、ステアロイルラクチル酸カルシウム、ステアロイルラクチル酸マグネシウム、ステアロイルラクチル酸アルミニウム、ステアロイルラクチル酸バリウム、ステアロイルラクチル酸亜鉛、パルミチルラクチル酸カルシウム、パルミチルラクチル酸マグネシウム、パルミチルラクチル酸アルミニウム、パルミチルラクチル酸バリウム、パルミチルラクチル酸亜鉛、オレイルラクチル酸カルシウム、オレイルラクチル酸マグネシウム、オレイルラクチル酸アルミニウム、オレイルラクチル酸バリウム、およびオレイルラクチル酸亜鉛からなる群より選択される、請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、ジオキソラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項12】
前記コーティングの成分が複数の層に別々に適用される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項13】
前記コーティングの成分が単一の層として適用される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項14】
前記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、移植片、組織足場、ピン、ねじ、整形外科用金属類、ペーサー、ペースメーカー、薬物送達デバイス、軟組織修復デバイス、および移植物からなる群より選択される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項15】
請求項1に記載のコーティングを有するメッシュであって、該コーティングが該メッシュの約0.3重量%〜約10重量%の量で存在する、メッシュ。
【請求項16】
ラクトンを含有するポリマー;および
式:
【化8】

の少なくとも1種のヒドロキサメートであって、該式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、ヒドロキサメート、
を含む、医療デバイスコーティング。
【請求項17】
前記ラクトンが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ジオキサノン、ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載のコーティング。
【請求項18】
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒をさらに含む、請求項16に記載のコーティング。
【請求項19】
前記医療デバイスが、縫合糸、外科手術用メッシュ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ステープル、クリップ、バットレス、ラップバンド、カテーテル、包帯、ステント、移植片、ステント/移植片、結び目のない創傷閉鎖具、封止剤、接着剤、接着防止デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、合成腱、合成靭帯、移植片、組織足場、ピン、ねじ、整形外科用金属類、ペーサー、ペースメーカー、および移植物からなる群より選択される、請求項16に記載のコーティング。
【請求項20】
繊維;ならびに
該繊維の少なくとも一部上のコーティングであって、該コーティングは、
主用量のε−カプロラクトンおよび少量の少なくとも1種の他の重合性モノマーを含むコポリマー;および
式:
【化9】

の少なくとも1種のヒドロキサメートであって、該式において、Rは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、上記基を末端とするポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、そしてRは、水素を含む、ヒドロキサメート、
を含む、コーティング、
を備える、縫合糸。

【公開番号】特開2010−94514(P2010−94514A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237762(P2009−237762)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】