説明

コーティング

ゾル・ゲルおよびゾル・ゲルバイオセンサの製造法。本発明は、以下の工程、(a)酸性ゾル懸濁液を提供する工程と、(b)該酸性ゾル懸濁液を少なくとも部分的に中和して中性ゾル懸濁液を形成させる工程と、(c)導電性表面を該中性ゾル懸濁液と接触させる工程と、および(d)該導電性表面に電位を印加して該導電性表面の表面にゾル・ゲル層を形成させる工程、を含む、基材上にゾル・ゲル層を形成する方法を開示する。中性ゾル・ゲルは、酵素などの生体材料が加えられていることが好ましい。本方法を用いて得られるバイオセンサもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にゾル・ゲルフィルムを作成する方法、および、例えばバイオセンサおよびマイクロアレイでの、そのようなフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル・ゲルは、百年以上にわたり知られているが、それらの形成機構は比較的最近まで研究されなかった。それらは、光学薄膜、誘電性半導体の利用、および保護薄膜を始めとする、広範な応用に用いられている。金属水酸化物コロイド、金属アルコキシド、またはそれらのあらかじめ加水分解した(pre-hydrolysed)単量体の直接使用によりフィルムを形成することが可能であるということが現在既知である。基材のディップコーティングは基材をコーティングするのに依然として普通に用いられる。
【0003】
ディップコーティングは、ゾルを含有する混合物中に基材を浸漬することを含む。形成されるゾル・ゲルは、基材の混合物からの引き上げ速度および混合物の粘度を始めとする広範な要因に依存して、厚さが変わるだろう。
【0004】
スピンコーティングは、ターンテーブル上で基材を回転させることを含む。ゾル混合物の滴が回転している基材上に滴下され、そして遠心力により基材の表面中に分散する。この技法の難点は、ゾル・ゲルコーティングの最終的な厚さを制御するのが難しいこと、および基材の表面中に均一な厚さを生成するのが難しいことである。
【0005】
Jones W. M. and Fischbach (D. B.), J. Non-Crystalline Solids (1988), Vol. 101,
pages 123-126は、酸性化テトラエトキシシラン(TEOS)からのシリカヒドロゲル生成を開示している。この材料は、室温でゾル・ゲルを形成するが、数日から数週間を要する。著者らは、希釈酸化アンモニウムを加えることによりゾル・ゲル形成速度を速めることが可能であることを示している。しかしながら、それでもなおこれが室温で数分を要することが記載されている。そのうえさらに、ゲルの位置が制御不能であることが開示されていた。
【0006】
米国特許第5,698,083号は、尿素を検出するセンサを開示している。これは、ゾル・ゲルマトリクス内に捕獲されたウレアーゼを含有するゾル・ゲルの層を使用する。ウレアーゼの捕獲は、「標準方法」によると記載されている、すなわちディッピング、噴霧、塗装などである。
【0007】
Lillis B et al (Sensors and Activators B68 (2000), pages 109-114)は、4種の異なるゾル・ゲルマトリクス中の乳酸酸化酵素固定化を開示している。グルコースオキシダーゼもまた、そのようなマトリクスに固定された。ゾル・ゲルは、酵素の安定性を改善した。ゾル・ゲルは、酵素含有ゾル・ゲル溶液を96ウェルプレート中に等分して膜上で乾燥させることにより調製された。そのような方法の難点は、ゾル・ゲル層の最終的な厚さおよび均一性をほとんど制御できないことである。
【0008】
ゾル・ゲルは、ウイルス粒子検出のため細菌を固定化するのに使用されてきた(Black E. et al, J. Non. Cryst. Solids (2001), vol 285, pages 1-3)。
【0009】
ゾル・ゲル層を形成する従来技法の問題は、それらが形成に比較的長い時間を要することである。それらはまた、均一で再現可能な層を形成するように制御することが難しい。浸漬およびスピンコーティングなどの従来技法はまた、小面積のゾル・ゲルの正確な沈着
を阻害する。このことは、バイオアッセイ(マイクロアレイなど)およびバイオセンサ(マイクロバイオセンサなど)の形成などの、再現性または空間制御が決定的に重要である分野で従来技法が使用されることを阻止する。
【0010】
バイオセンサは、代謝物、イオン、気体、および有機蒸気などの分析物の特異的同定を可能にするために、酵素、抗体、細胞小器官、および全細胞などの生体認識分子を持つ電極を含有する。そのような生体認識要素は、一般的に、電気化学的、圧電気的、光電子的、光ファイバー、サーミスター、ダイオード、または弾性表面波素子などのトランスデューサーに取り付けられて、分析物が生体認識要素に結合して検出されることを可能にする。電流測定バイオセンサは、例えば、Palmisano F., et al. (Fresenius J. Anal. Chem.
(2000), Vol. 366, pages 586-601)による著書に総説されている。広範なメディエーター化合物およびメディエーター重合体が、酵素などの適した生体認識要素から電極への電子移動を可能にするために用いられてきた。
【0011】
欧州特許第0537761号は、ポリエチレンテトラフタレート(tetraphthalate)の基材上に電極を備えるバイオセンサを開示している。キサンチンオキシダーゼなどの酵素が、フェリシアン化カリウムなどの電子受容体を介して電極に取り付けられている。
【0012】
Burmister J. J. and Gerhardt G. A. (Anal. Chem. (2001), Vol. 73, pages 1037-1042)は、微小電極針の長さに沿って配置された複数の別々の電気化学的センサを備える、セラミックベースの多点電極を開示している。セラミック材料は、そのような電極のベースとして用いられており、そして微小電極はレーザーを用いて切断されている。
【0013】
Screenivas G., et al. (Anal. Chem. (1996), Vol. 68, pages 1858-1864)は、微小プローブ針の長さに沿って配置された一連の電気化学的センサを備える、スパッタカーボン微小電極の製造を開示している。
【0014】
マイクロアレイは、例えばマイクロプレートまたは膜上に、試料を規則正しく配列したものである。試料は、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、抗体、ウイルスまたは全細胞までをも含む、様々な生体材料の任意のものであってよい。マイクロアレイ上の試料は、一般的に、直径が200ミクロンである。マイクロアレイは、一般的に、例えば、複数の遺伝子を一度にスクリーニングするのに用いられる。
【0015】
ゾル・ゲルは、生体材料の安定性を改善する可能性、および生体材料と接触する前に材料を選別する可能性を有する。しかしながら、ゾル・ゲル沈着の従来方法は、そのようなマイクロアレイの生成のための空間分解能を示さない。
【0016】
ゾル・ゲルフィルムは、電着および電気化学的技法により調製されてきた。ゾル・ゲルの電着は、Shacum R., et al. による論文に記載されている(Adv. Mater (1999), Vol. 11 (5), pages 384-388)。
【0017】
Shacumの論文は、メチルトリメトキシシラン(MeTMOS)の酸化インジウムスズへの電着法を記載している。論文の著者らは、フタル酸緩衝液でpH3.5に緩衝化されたエタノールと硝酸カリウムの溶液中のMeTMOS酸性懸濁液を使用している。酸化インジウムスズ電極を上限30分間溶液中に置き、そうしながら電極に電位を印加した。電位を観察して、ゾル・ゲル層を電極表面に蓄積させた。硝酸の電極表面での還元が式2(以下)に従って電極表面でのpHの局所的増加を引き起こしたと考えられた。硝酸は、電極で電流により還元されて水酸化物イオンを生成する。
1)H++e-→1/2H2
2)NO3-+6H2O+8e-→NH3+9OH-
【0018】
これは、電極表面でのゾル・ゲル形成の触媒作用を引き起こすと考えられた。反応は複雑であるが、以下のように要約することができると考えられた。
MeSi(OMe)3+H2O→MeSi(OH)3+MeOH(不平衡)
MeSi(OH)3→MenSinpq+H2O(不平衡)
(ゾル・ゲル)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、ゾル・ゲルの選択的電着が、例えばバイオセンサを構成させるための、生体認識分子層を表面上に選択的に沈着させる方法となり得ることに気が付いた。しかしながら、低いpHおよび電位の比較的長い印加は、ゾル・ゲル内の生体認識要素を変性させて非常に劣悪な結果をもたらす傾向がある。電極に電位を印加する前に酸性ゾル懸濁液を中和することにより、生体認識要素の実質的な変性なしにそれらを首尾よく塗布することが可能になることが、思いがけず見いだされた。これはまた、予期せぬことに、電極にゾル・ゲルが沈着するのに要する時間の長さを減少させ、したがって生成時間を減少させる。電着によるゾル・ゲル形成はまた、層の厚さの制御を可能にする。ゾル・ゲルの位置は、基材の特定部分に電位を印加することにより選択することができ、例えばバイオセンサまたはマイクロアレイ上での選択的沈着を可能にする。これらの利点は、バイオセンサおよびマイクロアレイの製造を含むゾル・ゲルの様々な使用に応用可能である。バイオセンサが作られる場合、既知の方法に勝る感度の増加が観測された。そのうえさらに、この技法は、例えば、マイクロアレイおよびバイオセンサが比較的安価に製造されることを可能にする。
【0020】
このアプローチのさらなる利点は、酸性ゾルの貯蔵溶液を作成して必要になるまで貯蔵しておくことが可能である点である。酵素などの残りの成分は、特定の電極を製造することが必要になり次第加えられればよい。このことは、例えば、センサまたはマイクロアレイの製造において、より大きな柔軟性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、基材上にゾル・ゲル層を形成する方法であって、以下の工程
(a)酸性ゾル懸濁液を提供する工程、
(b) 該酸性ゾル懸濁液を少なくとも部分的に中和して中性ゾル懸濁液を形成させる工程、
(c)導電性表面を該中性ゾル懸濁液と接触させる工程、および
(d)該導電性表面に負電位を印加して該導電性表面の表面にゾル・ゲル層を形成させる工程、を含む方法を提供する。
【0022】
ゾル・ゲルにより、本発明者らは、ゲル化して固体を形成するゾル粒子のコロイド懸濁液を意味し、ゾルは、ゲル化前に液体などの流体中に分散しているコロイド粒子から成る。代表的なコロイド粒子は、直径1nm〜100nmの大きさを有する。
【0023】
酸性ゾル懸濁液は、電位の印加で凝集してゾル・ゲルを作り出すゾル・ゲル単量体を含有する。
【0024】
中性ゾル懸濁液は、電位の印加前に、1種以上の生体材料要素を加えられていることが好ましい。そのような生体材料として、タンパク質(酵素および抗体、ならびにFabおよびF(ab12などの抗体フラグメントなど)、核酸(DNA、RNA、またはオリゴヌクレオチドなど)、細胞小器官、ペプチド、多糖類、オリゴ糖類、生体機能模倣重合体、ウイルス、微生物、および全ての真核細胞または全ての原核細胞が挙げられる。最も好
ましくは、生体材料は、酵素である。
【0025】
潜在的に、任意の生体材料が用いられてもよい。そのような材料の混合物が用いられてもよい。異なる生体材料を含有するマイクロアレイが当該分野で既知であり、そして本発明の技法は、そのようなマイクロアレイまたは実際により大きな生物学的アッセイ(免疫アッセイなど)の製造に応用可能である。免疫アッセイは、妊娠に伴うホルモンのアッセイを含む、広範なアッセイに用いられる。
【0026】
エタノールまたはメタノールなどのアルコールはゾルに加えられず、それにより、生体認識分子の安定性を増加させることが好ましい。アルコールが加えられる場合、シランを可溶化するのに十分な量でのみ加えられることが好ましい。
【0027】
マイクロアレイまたは他の生物学的アッセイは、例えば、ゾル・ゲル中に固定された、DNAプローブなどの核酸プローブを含んでもよい。抗体を解析(assay)するための、酵素および受容体などのタンパク質、ペプチド、アプタマー、または基質(例えば、酵素または抗原)もまた、組み込まれてもよい。ペプチドとの相互作用を解析するためのリガンドもまた提供されてもよい。あるいは、例えば、ペプチド・リガンド相互作用を解析または研究するために、ペプチドが提供されてもよい。補因子、比色分子、蛍光分子、および発光分子(捕捉された色素など)などの小分子が、ゾル・ゲル内に組み込まれてもよい。マイクロアレイの使用は、Templin M. Weld (Trends in Biotechnology (2002), Vol. 20, pages 160-165) およびAngenendt P et al (Anal.Biochem. (2002) vol 309, pages 253-260)に総説されている。
【0028】
酵素は、例えば、バイオセンサを構成させるために用いられてもよい。
【0029】
酵素は、キサンチンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸酸化酵素、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルタミン酸酸化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、D−フルクトース脱水素酵素、L−グルタミン酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素(メタノール脱水素酵素など)、ウレアーゼ、ウリカーゼ、乳酸脱水素酵素、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、クレアチナーゼ、サルコシンオキシダーゼ、グルタミナーゼ、ヌクレオシドホスホリラーゼ、アスコルビン酸酸化酵素、シトクロムCオキシダーゼ、アデノシン脱アミノ酵素、D−もしくはL−アミノ酸酸化酵素、チロシナーゼ、カタラーゼ、ホスホエノールピルビン酸キナーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール−3−ホスフェートオキシダーゼ、クレアチンリン酸キナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コリンオキシダーゼおよび/またはコリン脱水素酵素のうちの1種または複数から選択されることが好ましい。当該分野で既知の他の酵素もまた用いられてもよい。1種以上の異なる基質を測定するために、酵素は、別々で用いられても、またはカスケード形で2種またはそれより多くが一緒に用いられてもよい。一般的に、そのような電極は、好ましくはメディエーターを介して、電子を電極上に移動させる能力がある酸化還元酵素を用いる。あるいは、酵素は、任意に適切なメディエーターを介して、電極から電子を受け取る能力があってもよい。
【0030】
最も好ましく用いられる酵素は、以下のものである。
【0031】
例えば、血中のブドウ糖を測定するためのグルコースオキシダーゼ。
【0032】
クレアチニンアミド加水分解酵素(EC 3.5.2.10)、クレアチンアミド加水分解酵素(EC 3.5.3.3)、およびサルコシン:酸素酸化還元酵素(脱メチル化)(EC 1.5.3.1)を含有するカスケードが、例えば血中の、クレアチニンを測定するために用いることができる。これらの酵素は、クレアチニンをクレアチンへ、クレ
アチンをサルコシンへ、そしてサルコシンをグリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素にそれぞれ変換させる。過酸化水素が、電極表面で測定される。
【0033】
コレステロールは、ステリル・エステルアシル加水分解酵素(EC 3.1.1.13)およびコレステロール:酸素酸化還元酵素(EC 1.1.3.6)を用いてコレステロールエステルを他の生成物の中でもとりわけ、検出可能な過酸化水素に変換することで、測定できる。
【0034】
トリグリセリドもまた、リポタンパク質リパーゼ(EC 3.1.1.34)、ATP:グリセロール3−ホスホトランスフェラーゼ(EC 2.7.1.30)、およびグリセロール3−ホスフェートオキシダーゼのカスケードを用いて、それらを検出可能な過酸化水素に変換することにより測定できる。
【0035】
アデノシンを検出するために、アデノシン脱アミノ酵素、ヌクレオシドホスホリラーゼ、およびキサンチンオキシダーゼを用いることができる。
【0036】
ATPは、グリセロールキナーゼおよびグリセロール−1,3−ホスフェートオキシダーゼで検出できる。酵素的増幅は、さらにクレアチンキナーゼを含むことにより達成され得る。
【0037】
例えばヒポキサンチンを検出するために、キサンチンオキシダーゼを用いることができる。キサンチンオキシダーゼがヌクレオシドホスホリラーゼと一緒に用いられると、電極はキサンチン、イノシン、およびヒポキサンチンを検出するのに用いることができる。これらの酵素にアデノシン脱アミノ酵素を加えると、アデノシンなどのプリンをイノシンへ変換し、それゆえ、センサによるアデノシンなどのプリンの検出が可能になる。
【0038】
最も好ましくは、1種以上の酵素が加えられる。複数の酵素を同時に導入する能力は、バイオセンサの製造速度およびそのようなバイオセンサにより得られる応答性を改善する。
【0039】
酵素は、電極で検出されるH22などの拡散性分子を生成させることができる。あるいは、バイオセンサの電極へ、またはそこから電子を移動させるためにメディエーターを用いることができる。
【0040】
他の酵素として、RNA分解酵素、DNA分解酵素、ヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、およびカタラーゼが挙げられる。ヘモグロビン、ミオグロビン、コラーゲン、またはチューブリンなどの活性タンパク質が加えられてもよい。抗体、または抗体フラグメント(IgG、IgMまたはFabもしくはF(ab12フラグメントなど)もまた、組み込まれてもよい。
【0041】
好ましくは、酸性懸濁液は、pH4未満、特にpH3.5未満またはこれに等しいpHを有する。すなわち、シランと酸との混合時の、好ましくは超音波処理前の、開始pHは、好ましくはpH4未満である。
【0042】
中性ゾル懸濁液のpHは、好ましくはpH5〜pH7.5、より好ましくはpH5.5〜pH7.0、またはpH6.0〜pH6.5であり、特に好ましいのはpH6.3である。これは、好ましくは、HEPES、PIPES、またはMOPS緩衝液などの適切な緩衝液を加えることにより中和される。これは、pHが正確に制御されることを可能にする。
【0043】
ゾルは、好ましくは、アルコキシシラン、アルミナ、または金属水酸化物コロイドのゾルを含む。
【0044】
米国特許第6303290号は、酸性塩溶液と混合することができる酸化セラミックコロイドゾルを開示している。水酸化物の添加がpHを増加させてゾル・ゲルの形成を引き起こす。水酸化物の代わりに本発明の方法を用いることで、基材上のゾル・ゲル電着が可能になると期待される。
【0045】
したがって、ゾルは、酸化チタンなどの酸化セラミックゾルであることが好ましい。
【0046】
ジルコニアセラミックスもまた、ゾルとして用いることができる。Gheorghies C et al
(Analele Stiintifice Ale Universitatii, Tomul XLV-XLVI, s. Fizica Starii Condensate (1999-2000) pages 268-275)は、ジルコニアゾル・ゲルの陰極沈着を開示している。フィルムの沈着を引き起こす水酸化物イオンを生成させるために電流が用いられた。酸性ゾルはZrO(NO3)であることが好ましい。
【0047】
好ましくはゾルはシランである。好ましくは、ゾルは以下の一般式を有する。
【化1】

【0048】
シランは、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(メチル−エチルケトオキシム)シラン(MOS)、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ジメチルジ(メチルエチルケトオキシム)シラン、トリメチル(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(VOS)、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、メチルビニルジ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチル−ビニルジ(シクロヘキサノンオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(POS)、メチルトリアセトキシシラン、およびテトラアセトキシシ
ランから選択されることが好ましい。
【0049】
【化2】

【0050】
最も好ましくは、シランはテトラメトキシシラン(TMOS)である。
【0051】
そのようなシランは、当該分野で既知であり、市販されている。
【0052】
2種以上のシランを用いてもよい。
【0053】
好ましくは、シランカップリング剤が加えられる。そのようなカップリング剤は、アミン、スルフィドリル、オキシ、アクリレート、ビニル、またはクロロ基などの反応基を含有する。これは、酸性ゾル懸濁液用であっても中性ゾル懸濁液用であってもよい。これらはフィルムの安定性を改善することが見いだされている。好適なカップリング剤として、以下、
アミノプロピルトリエトキシシラン
アミノプロピルトリメトキシシラン
アミノプロピルメチルジエトキシシラン
アミノプロピルメチルジメトキシシラン
アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン
アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン
アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン
ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン
ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン
ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン
ジエチレントリアミノプロピルメチルジエトキシシラン
シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン
ヘキサンジアミノメチルジエトキシシラン
アニリノメチルトリメトキシシラン
アニリノメチルトリエトキシシラン
ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン
(ジエチルアミノメチル)メチルジエトキシシラン
メチルアミノプロピルトリメトキシシラン
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
メルカプトプロピルトリメトキシシラン
メルカプトプロピルトリエトキシシラン
メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン
3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン
メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン
クロロプロピルトリメトキシシラン
クロロプロピルトリエトキシシラン
クロロメチルトリエトキシシラン
クロロメチルトリメトキシシラン
ジクロロメチルトリエトキシシラン
ビニルトリメトキシシラン
ビニルトリエトキシシラン
ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン
トリメトキシシリルアミノプロピルアミノエチル三酢酸(MeO)3SiCH2CH2CH2N(CH2COOH)CH2CH2N(CH2COOH)2
が挙げられる。
【0054】
−900〜−1500mV、特に−900〜−1200mVの電位が、好ましく用いられる。電位は、必要とされるゾル・ゲルの厚さに依存して、10〜120秒間、特に20〜60秒間、最も好ましくは20〜40秒間印加することができる。
【0055】
カップリング剤は、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(APTEOS)であることが好ましい。
【0056】
アミノ基を持つカップリング剤は、例えば、フェロセンまたはラクトビオナミド(bionamide)またはグルコンアミドを加えることにより官能化されてもよい。これにより、ゾル・ゲルの導電層への電子移動能力が改善され、またはゲルの安定性が修正される。
【0057】
グリシジルプロピルトリメトキシシランもまた中性ゾル懸濁液に、好ましくは加えられてもよい。
【0058】
シランカップリング剤は、シラン部分を架橋させる、アミン基などの反応性基を、1つまたは複数、特に2つまたはそれより多く含むことが好ましい。
【0059】
最初の結果は、MPTMOSなどのメルカプタン含有シランの存在が、本技法により製造されたバイオセンサの感度を、例えば、解析混合物中の汚染混入物に対するバイオセンサの感度を下げることにより、改善することを示す。これらはまた、貯蔵におけるバイオセンサの安定性を改善する。
【0060】
最初の結果はまた、ビスTEOSまたはビスTMOSなどの二官能性シランの添加が、バイオセンサの安定性および機械強度を改善することを示す。
【0061】
本発明者らは、エタノールなどのアルコールおよび/または硝酸塩などの電子還元剤を酸性ゾル懸濁液から除去することが、懸濁液の安定性を改善し、より長く貯蔵することを可能にすることを見いだした。そのようなアルコールまたは電子還元剤は、通常、例えば、緩衝液などのアルカリを加える前または後に中性ゾル懸濁液に加えられて、それがより長期に貯蔵されることを可能にする。
【0062】
電子還元剤は、電位の印加で、還元されて水酸化物イオンまたは他のそのような触媒性イオンを形成するものである。好ましくは、電子還元剤は硝酸塩である。
【0063】
本発明者らは、ポリヒドロキシアルコールなどの安定剤を1種または複数加えることによりゾル・ゲルの安定化が可能であることを見いだした。例として、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリビニルアルコール、多糖類(デキストランまたはキトサンなど)、ポリアルキレンイミン、または糖類(マンニトール、グルコネート、グルコノラクトン、トレハロース、ラクチトール、またはスクロースなど)が挙げられる。
【0064】
2種以上の酵素が、カスケードで用いられてもよい。そのような酵素は、一緒に混合されて同時に塗布されてもよい。あるいは、それらは別々の層に塗布されてもよい。第1層は電位をかける(switching on)ことにより塗布されてゾル・ゲルの第1層を形成する。導電性基材は、第2の酵素を含有する第2の中性ゾル懸濁液中に置かれ、そして再び電位をかけることにより第2のゾル・ゲル層が塗布される。第2懸濁液に用いられるゾルは、第1懸濁液と同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
導電性表面は、カーボンペースト、金、プラチナ、またはプラチナ・イリジウム合金など、炭素であっても、金属であっても、合金であってもよい。これは、バイオセンサ用電極またはマイクロアレイ用基材など、生物学的アッセイデバイスの一部を形成することができる。
【0066】
基材は、微小針の配列であってもよい(Discover (1998) Vol 19)。これらは、患者にほとんどまたは全く痛みを与えずに皮膚を貫通するのに用いられ得る小さな針である。本発明の方法は、この針を電極として用いるバイオセンサを形成するのに、または他の生体化合物を針に乗せてそれらが患者の体内の分析物を解析することを可能にするのに用いることができる。これは、例えば、糖尿病用で無痛のグルコースセンサとして用いられるだろう。
【0067】
2本の異なる電極が提供されてもよく、それぞれの電極は、異なる生体認識要素をその中に有するゾル・ゲル層を有し、第1生体材料を含有する第1中性ゾル懸濁液と接触したときに第1電極に電位を印加することにより、および第2電極が第2生体材料を含有する第2中性ゾル懸濁液と接触したときに第2電極に選択的に電位を印加することにより、形成される。
【0068】
したがって、本発明は、本発明の方法により導電性基材にゾル・ゲル層を形成する工程を含む、バイオセンサまたはマイクロアレイなどの生物学的アッセイデバイスを製造する方法を提供する。
【0069】
生体材料を含有するゾル・ゲル層は、生体材料を含有しないさらなるゾル・ゲル層で被覆されてもよい。このさらなる層は、1種以上の不純物が生体材料含有ゾル・ゲルを含有するゾル・ゲル層に到達する前にそれらの不純物を濾過して除くために、または単に保護層を提供するために用いることができる。
【0070】
それゆえ、本発明は、さらに以下の工程、
(e)如何なる生体材料も含まない酸性ゾル懸濁液を提供する工程と、および
(f)導電性表面に負電位を印加してさらなるゾル・ゲル層を形成させる工程を含む、本発明による方法を提供する。
【0071】
このさらなる層は、ゾル・ゲル第1層から形成されている導電層から分離されるだろう。第2層は、生体材料が用いられていないので、中和される必要はない。しかしながら、ゲル形成速度を増加させるため、および既存の層の生体材料を保存するため、酸性ゾル懸濁液を中和してもよい。
【0072】
マイクロアレイまたはバイオセンサは、例えば、CMOSなどのマイクロプロセッサー技法を用いて、基材に導電層を印刷する、または製造することによって、導電層を形成することにより形成することができる。複数の異なる導電層の領域が形成される場合、それぞれの層は、基材が異なるゾル・ゲル懸濁液に置かれたときに別々に電荷をかけられてもよい。これにより、異なる生体材料を含有するゾル・ゲルの異なる領域の形成が可能になる。
【0073】
本発明の方法は、免疫アッセイデバイスを形成するのに用いられてもよい。そのようなデバイスにおいて、生体材料は、抗体または抗体のフラグメント(FabまたはF(ab12フラグメントなど)である。これは、例えば、我々の目的とする抗原の有無を測定するための競合アッセイを形成するのに、標識抗原(例えば、放射標識または蛍光標識で標識された)とともに用いられてもよい。
【0074】
したがって、好ましくは、本発明の方法は、免疫アッセイデバイスを製造するのに用いられる。
【0075】
好ましくは、生体材料は、予め定められた抗原と結合する能力を有する抗体または抗体のフラグメント(FabまたはF(ab12フラグメントなど)である。
【0076】
その基材上のゾル・ゲル層は、例えば、水または緩衝液で洗浄されてもよい。
【0077】
本発明の方法を用いることにより得られる、バイオセンサおよびマイクロアレイならびに免疫アッセイなどの生物学的アッセイデバイスを提供する。それらは、センサからの電気出力を検出する電位差計と組み合わせて用いられてもよい。
【0078】
好ましくは、センサは、例えば当該分野で既知の型の、微小電極である。微小電極基材は、シリコンで作られていてもよい。シリコンベースの微小電極は、同時係属出願の課題である。
【0079】
そのような微小電極は、電極の小面積に選択的に塗布された生体認識要素含有層を有することが可能である必要がある。本発明の方法は、このことを比較的容易かつ制御可能に達成させることができる。微小電極は、一般的に、長さが10mm未満、最も好ましくは0.5〜2mmの長さで、および/または直径が10〜50μmであり、このことがゾル・ゲル層製造法の制御を難しくしている。本発明の方法は、この問題を軽減する。
【0080】
分析物を検出するために、本発明により作られたバイオセンサ、マイクロアレイ、または免疫アッセイの使用もまた提供する。
【0081】
好ましくは、分析物は以下の分析物から選択され、それらは、それらの検出に用いられる酵素の好適な組み合わせと一緒に以下に与えられる。
【0082】
グルコース(グルコースオキシダーゼ)、乳酸塩(乳酸酸化酵素)、コレステロール(コレステロールオキシダーゼ)、ガラクトース(ガラクトースオキシダーゼ)、グルタミン酸(グルタミン酸酸化酵素)、ヒポキサンチン(キサンチンオキシダーゼ)、過酸化水素(西洋ワサビペルオキシダーゼ)、フルクトース(D−フルクトース脱水素酵素)、グ
ルタミン酸(L−グルタミン酸脱水素酵素)、エタノール(アルコール脱水素酵素)、メタノール(メタノール脱水素酵素)、尿素(ウレアーゼ)、尿酸(ウリカーゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ)、乳酸塩(L−乳酸脱水素酵素およびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)、クレアチン(クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼ)、グルタミンおよびグルタミン酸(グルタミナーゼまたはグルタミン酸酸化酵素)。
【0083】
最も好ましくは、以下の酵素が用いられる。
【0084】
例えば血中の、ブドウ糖を測定するためのグルコースオキシダーゼ。
【0085】
クレアチニンアミド加水分解酵素(EC 3.5.2.10)、クレアチンアミド加水分解酵素(EC 3.5.3.3)、およびサルコシン:酸素酸化還元酵素(脱メチル化)(EC 1.5.3.1)を含有するカスケードが、例えば血中の、クレアチニンを測定するために用いることができる。これらの酵素は、クレアチニンをクレアチンへ、クレアチンをサルコシンへ、そしてサルコシンをグリシン、アルデヒドおよび過酸化水素それぞれに変換させる。過酸化水素が、電極表面で測定される。
【0086】
コレステロールは、ステリルエステルアシル加水分解酵素(EC 3.1.1.13)およびコレステロール:酸素酸化還元酵素(EC 1.1.3.6)を用いてコレステロールエステルを他の生成物の中でもとりわけ、検出可能な過酸化水素に変換することで、測定できる。
【0087】
トリグリセリドもまた、リポタンパク質リパーゼ(EC 3.1.1.34)、ATP:グリセロール3−ホスホトランスフェラーゼ(EC 2.7.1.30)、およびグリセロール3−ホスフェートオキシダーゼのカスケードを用いて、それらを検出可能な過酸化水素に変換することにより測定できる。
【0088】
アデノシンを検出するために、アデノシン脱アミノ酵素、ヌクレオシドホスホリラーゼ、およびキサンチンオキシダーゼを用いることができる。
【0089】
ATPは、グリセロールキナーゼおよびグリセロール−1,3−ホスフェートオキシダーゼを用いて検出できる。
【0090】
例えばヒポキサンチンを検出するために、キサンチンオキシダーゼを用いることができる。キサンチンオキシダーゼがヌクレオシドホスホリラーゼと一緒に用いられると、キサンチン、イノシン、およびヒポキサンチンを検出するのに電極を用いることができる。これらの酵素にアデノシン脱アミノ酵素を加えると、アデノシンなどのプリンをイノシンへ変換し、それゆえ、センサによってアデノシンなどのプリンを検出することができる。
【0091】
本発明はまた、電極および電極上にゾル・ゲル層を備えるバイオセンサを提供し、ゾル・ゲル層は酵素およびオプションとして安定剤を含む。バイオセンサの構成要素は上記で定義されるとおりであってよい。任意で、如何なる生体材料も含まないさらなるゾル・ゲル層が、酵素含有ゾル・ゲル層の上にあってもよい。
【0092】
本発明はまた、以下の、
(i)導電性基材
(ii)1種以上の生体材料を含むゾル・ゲル
を含む生物学的アッセイデバイスを提供する。
【0093】
ゾル・ゲルは、好ましくは、上記で定義されるとおり、1種以上のシランから得られ、かつ1種以上の生体材料を含有し、そして上記で定義されるとおり、1種以上の添加物を含んでもよい。
【0094】
好ましくは、ゾル・ゲルは、メルカプト含有シランおよび/または二官能性シランを含む混合物から得られる。
【0095】
本発明は、ここで、以下の図面を参照して、例としてのみ記載される。
【実施例】
【0096】
1.比較法
3種の酵素、アデノシン脱アミノ酵素(AD)、ヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、およびキサンチンオキシダーゼ(XO)を、Sigmaから購入した。全ての実験において、センサを検査および使用するのに、pH7.4で、115mMのNaCl、2.4mMのNaHCO3、10mMのHEPES、3mMのKCl、1mMのMgCl2、2mMのCaCl2、1mMのNaH2PO4、1mMのNa2HPO4を含有する生理食塩水を用いた。
【0097】
両親媒性ピロール(単量体1):(12−ピロール−1−イルドデシル)トリエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの合成
簡単には、金属カリウム(1モル当量)を小片にして乾燥THF中のピロール(0.97モル当量)溶液に加え、混合物を窒素下で12時間攪拌した。濾過後、黄色固体を冷THFで洗浄し、そして減圧乾燥させた。ピロリルカリウム(I)(1モル当量)および12−ブロモドデカノール(0.5モル当量)を、乾燥THFと乾燥DMSOとの混合物(4:1)中、30分間還流させた。得られる溶液を水で希釈して、DCMで抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、そしてロータリーエバポレーターにより濃縮した(rotary evaporated)。所望の生成物を、シリカカラムのクロマトグラフィーで1:1ヘプタン−ジエチルエーテル混合物で溶出させて精製した。12−ピロール−1−イルドデカン−1−オール(II)(1モル当量)とトシルクロリド(1モル当量)との無水ピリジン溶液を5℃で12時間攪拌した。混合物を水に注ぎ、そしてジエチルエーテルで抽出した。有機相を、5%HCl水溶液で4回、そして水で1回洗浄した。Na2SO4で乾燥後、溶媒を減圧下除去した。所望の生成物を、シリカカラムのクロマトグラフィーで1:1ヘプタン−ジエチルエーテル混合物で溶出させて精製した。p−トルエンスルホン酸12−ピロール−1−イルドデシル(III)(1モル当量)を、乾燥エタノール中、トリエチルアミン(3モル当量)の存在下、24時間還流させた。溶媒および過剰のアミンを減圧エバポレートした後、生成物を、シリカカラムのクロマトグラフィーで9:1CH3CN−H2O混合物で溶出させて精製した。(12−ピロール−1−イルドデシル)トリエチルアンモニウムトシレート(IV)を1:1水−メタノール混合物(約10ml/100mg)に溶解させ、次いで溶液を、BF4中で陰イオン交換樹脂(Amberlite
IRA 900−C1)とともに1時間攪拌した。濾過後、このプロセスを4回繰り返した。凍結乾燥により溶媒をエバポレートして、所望の生成物を白色粉末として得た。シリカカラムのクロマトグラフィーで9:1CH3CN−H2O混合物で溶出させて最終精製し、純粋な所望の生成物(V)を得た。
1H NMR(CDCl3)d(ppm)1.3(m、25H、H−3、H−7)、1.60(m、2H、H−4)、1.70(t、J=7Hz、2H、H−2)、3.10(q、J=3.5Hz、2H、H−5)、3.3(m、6H、H−6)、3.85(t、J=7.6Hz、2H、H−1)、6.10(t、J=1.5Hz、2H、H−a)、6.6(t、J=1.5Hz、2H、H−b);MS(TOF)m/z、M+、335。
【0098】
ラクトビオナミドピロール(単量体2):8−ピロール−1−ラクトビオナミド−オ
クタンの合成
簡単には、p−トルエンスルホン酸8−ピロール−1−イルオクタシル(octacyl)(I)(1モル当量)を、アジ化ナトリウム(5モル当量)とともに、反応が完了するまで、乾燥DMF中還流させた。減圧下で溶媒を除去した後、残渣をEt2Oに溶解させて不溶性の塩を濾別した。溶媒を減圧エバポレートした後、アジ化中間体(II)をオレンジ色油状物として得た。次いで、この生成物を、30分間室温で、DMF中過剰のジチオスレイトール(5モル当量)およびトリエチルアミン(5モル当量)で処理した。次いで、得られる混合物を水に注ぎ、そしてEt2Oで抽出した。溶媒をNa2SO4で乾燥させてロータリーエバポレーターによる濃縮(rotatory evaporation)を行った後、所望の生成物を黄色油状物として得た。8−ピロール−1アミノオクタン(III)(1モル当量)を、ラクトビオン酸(1モル当量)のメタノール溶液に加え、混合物を24時間還流させた。溶媒を減圧下エバポレートして、生成物を薄黄色粉末物として得た(IV)。
1H NMR(CDCl3)d(ppm)1.25(m、12H、H−2)、1.45(m、2H、H−3)、1.7(m、2H、H−1)、3−5.5(m、23H、H−5)、6.1(m、2H、H−a)、6.6(m、2H、H−b)、7.8(t、1H、H−4);MS(TOF)m/z、M+Na、557。
【0099】
単量体の可溶化
5mgの単量体を1mlの水と混合してボルテックスで激しく撹拌して単量体1の溶液を作り、次いで混合物を5分間超音波処理し、10%(v/v)CH3CNを加えた後、再び混合して白色懸濁液を得た。10%(v/v)CH3CNを含む0.1MのLiClO4の脱気水溶液中で、単量体2の電解重合を行った。
【0100】
装置
異なる重合体を電気化学的に沈着させ、そしてセンサを検査するために、Sycopel製ポテンシオスタット(Model AEW−2)を用いた。センサを、アナログデジタル変換ボード(データ翻訳)によりPCに接続されたWorld Precision InstrumentsのマイクロCポテンシオスタットとともに、in vivo(生体内)で用いた。全ての場合において、参照電極としてAg/AgClを用いた。作用電極の大きさが小さいため、対極は必要なかった。沈着用の電気化学電池は、直径1.5mmおよび長さ2cmのキャピラリから成った。
【0101】
センサ製造
組み立ておよび洗浄
2cmのセンシングワイヤを、終端ピンを有する銅線にはんだ付けすることにより微小電極を組み立てた。最初に250mmの純Pt線を用い、これは続いて所望の最終直径にエッチングされた。しかしながら、純Pt線は非常に柔らかく、使用可能な最小直径を50mm程度に限ってしまう。さらにより小さい直径のセンサを製造するため、25〜100mmの範囲の直径のPt/Ir線(90/10、Goodfellow Metals製)もまた用いた。このPt/Ir線は非常に堅く、高感度な電気化学的センサを製造するのにさえ用いることができる。
【0102】
最後の2mmを除いてPt線を全て、熱で線に融合させた引きガラスキャピラリで保護した。組み立て部の中心部分を熱収縮管で絶縁した。次いで、Ptのむき出しの先端を、外観検査の下、対極としてらせんPtコイルを用いて2MのNaCl中1.2VのAC電気分解によりエッチングした(Slevin, et al., 1999)。最終直径は、エッチングの程度に依存して、25mm〜100mmの範囲であった。25mmPt/Ir線はさらなるエッチングなしで用いるのに十分細かったことに留意されたい。さらに、本発明者らは、Pt/Ir線の過剰なエッチングにより重合体沈着に適さない表面が形成されることを見いだした。
【0103】
次いで、むき出しの電極をSylgard(resin184、Dow-Corning)でコーティングし、むき出しのPtの最終長とした。この長さは、実験の要求に適するように変えられ、そして本発明者らは300mm〜2mmの範囲の長さのセンサを構築した。Pt電極の入念な表面調製は、ピロール重合体が沈着する能力、およびセンサの全体的な感度に非常に重要であった。Pt表面を入念に洗浄しないと、重合体層は、酵素を効率的に捕捉するのに十分良好な状態にはならないだろう。それゆえ、0.1MのH2SO4中、−100mVから1000mVまで(対Ag/AgCl参照、スキャン速度100mV/s)のサイクルを15回行うことにより、Pt電極を洗浄した。重合体沈着の前に、電極を1分間1000mVに維持した。
【0104】
重合体の沈着
全てのセンサは、電極に、単量体2(10mM)の0.1MのLiClO4、10%CH3CN脱気溶液中、0から800mVまで、スキャン速度100mV/sのサイクルを15回行うことにより形成されたLBA誘導体重合体の第1層を含んだ(図2)。この手順の後、むき出しのPtは黒色をしていた。撹拌したdH2O中で5分間電極を洗浄することにより、未結合の単量体を除去した。酵素を捕捉するため、次いで電極を、所望の酵素を含有する単量体1溶液(5mg/ml、10%CH3CN)中に浸漬し、そして電位を10分間760mVに維持した。単量体および酵素を保存するため、重合体沈着物を短いキャピラリガラス管からなる容積10mLのミニチャンバに入れた。
【0105】
アデノシンセンサを作るため、単量体1の溶液から3層を沈着させた。最初に10ml中1UのADを用い、続いて10ml中1UのPNP、そして同じく10ml中5UのXOを用いた。この手順は、より高感度なセンサを得るために任意で繰り返すことが可能であった。検査前に、センサをホスフェート緩衝液中で5分間撹拌し、未結合の単量体および酵素を洗浄した。LBA重合体の同じ第1層、続いて酵素なしで単量体1の溶液から5分間760mVで沈着した両親媒性重合体の第2層を沈着させることにより、ヌル(Null)センサを製造した。
【0106】
2.本発明の方法
溶液は、他に示されない限り蒸留水で作製した。
【0107】
(A)実施例1
(i)酸性TMOS懸濁液
7.39mlのTMOS
1.69mlの蒸留H2
0.11mlの0.04MのHCl
氷上で20分間超音波処理、上限数日間まで氷上で貯蔵。
【0108】
(ii)APTEOS懸濁液
5.55mlのAPTEOS
5mlのH2
濃HClでpHをpH3に調整、次いで氷上で20分間超音波処理、それから氷上で貯蔵。
【0109】
(iii)中性ゾル懸濁液
以下を混合する。
1部の酸性TMOS懸濁液
1部のAPTEOS
2部のエタノール
2部の1Mグリセロール
4部のTris50mM pH6.3
2部の0.4MのKNO3
1部のPEG(平均分子量400)
1部のDEAE−デキストラン
これを氷上で貯蔵した。
【0110】
(iv)フィルム形成
通常、酵素は使用直前に加えた。PtまたはPt/Ir合金などの電極でのフィルム形成は20〜40秒。この具体例においては、アデノシン脱アミノ酵素、ヌクレオシドホスホリラーゼ、およびキサンチンオキシダーゼ(AD、PNP、およびXO)を、電位を印加する直前に、一緒に混合した。
【0111】
(B)実施例2−二重層電極
実施例1と同様な様式でバイオセンサを構築したが、ただし以下の化合物を用いた。
比(vol/vol)
酸性TMOS 0.6
酸性APTEOS 0.1
酸性MTMOS 0.3
ラクチトール(1M) 1
Ca(NO32(0.2M) 1.5
Tris(pH7、50mM) 2
PEG400(100%) 1
MTMOSは、実施例1のTMOSと同様な様式で酸性にしたメチルトリメトキシシランである。
【0112】
2.5Uのグリセロール−3−ホスフェートオキシダーゼを、10μlの10%デキストラン(pH7)に溶解して、10μlのゾルを加えた。これを、PtまたはPt/Irなどの電極上に、約30秒間沈着させて、ゾルの第1層を形成させた。
【0113】
5Uのグリセロールキナーゼを10μlのPEG400/1Mグリセロール(体積で50:50)に溶解して、10μlのゾルを加えた。ゾルの第1層上へのこのゾルの沈着を、約2分間行った。
【0114】
結果
図1は、別の電極系(10μMのアデノシンに対して約100pA、10μMのイノシンに対して約200pA、および10μMのキサンチンに対して約5nA)での代表的な結果を示す。
【0115】
本発明の電極は、図2に示されるとおりの代表的な読み取りを形成する。応答は10μMのアデノシン(約8nA)および10μMのイノシン(約9nA)であった。従来電極と比較して約100倍の感度の増加が観測された。
【0116】
100μM、50μM、20μM、および10μMのATPに対する第2の電極の結果を、図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】代替技法で作られたセンサの応答を示す。
【図2】本発明の方法を用いて作られたセンサの応答を示す。
【図3】本発明の代替法を用いて作られたセンサの応答を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、
(a)酸性ゾル懸濁液を提供する工程、
(b) 該酸性ゾル懸濁液を少なくとも部分的に中和して中性ゾル懸濁液を形成させる工程、
(c)導電性表面を前記中性ゾル懸濁液と接触させる工程、および
(d)前記導電性表面に電位を印加して該導電性表面の表面にゾル・ゲル層を形成させる工程、を含む、基材上にゾル・ゲル層を形成する方法。
【請求項2】
前記導電性表面に前記電位を印加する前に、1種以上の生体材料を前記中性ゾル懸濁液に加える工程(工程C)をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記生体材料は、酵素、抗体、抗体のフラグメント、核酸、多糖、オリゴ糖、生体機能模倣重合体、ウイルス、微生物、または全細胞から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性ゾル懸濁液は、pH4未満のpHを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性ゾル懸濁液は、pH5〜pH7.5の間に中和される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性ゾル懸濁液は緩衝液を加えることにより中和される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゾルは、アルコキシシラン、アルミナ、金属水酸化物コロイド、酸化セラミック、またはジルコニアのゾルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゾルは以下の一般式を有する、請求項7に記載の方法。
【化1】

【請求項9】
前記ゾルは、メチルトリメトキシシラン(MeTMOS)またはテトラメチルシリケート(TMOS)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記導電性表面に印加される前記電位は−900〜−1500mVである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記電位は20〜120秒間印加される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性ゾル懸濁液は、アルコールおよび/または電子還元剤(electroreducer)を含有しない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールおよび/または電子還元剤は前記中性ゾル懸濁液に組み込まれる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
シランカップリング剤を加えることを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
官能化または非官能化されたAPTEOSを前記中性ゾル懸濁液に組み込むことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記APTEOSは、フェロセン、グルコンアミドまたはラクトビオン基で官能化される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
メルカプタン含有シランおよび/または二官能性シランを加えることをさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記中性ゾル懸濁液はさらに、1種以上の安定剤を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記安定剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール、またはポリビニルアルコールなどのポリヒドロキシアルコール、デキストランまたはキトサンなどの多糖類、ポリアルキレンイミン、またはマンニトール、グルコネート、ラクチトールまたはスクロースなど糖類から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酵素は、キサンチンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸酸化酵素、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルタミン酸酸化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、D−フルクトース脱水素酵素、L−グルタミン酸脱水素酵素、メタノール脱水素酵素などのアルコール脱水素酵素、ウレアーゼ、ウリカーゼ、乳酸脱水素酵素、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、クレアチナーゼ、サルコシンオキシダーゼ、グルタミナーゼ、ヌクレオシドホスホリラーゼ、アスコルビン酸酸化酵素、シトクロムCオキシダーゼ、アデノシン脱アミノ酵素、D−もしくはL−アミノ酸酸化酵素、チロシナーゼおよび/またはコリン脱水素酵素から選択される、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
2種以上の酵素が用いられる、請求項3〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
それぞれの酵素は別々の層として塗布される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
基材上に生体材料を含有するゾル・ゲル層を形成するための請求項1〜22のいずれかに記載される方法の使用を含む、バイオセンサまたはマイクロアレイなどの生物学的アッセイデバイスの製造方法。
【請求項24】
前記導電性表面は電極である、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記バイオセンサまたはマイクロアレイは2本の電極を備え、それぞれの電極は、異なる生体認識要素をその中に有するゾル・ゲル層を有し、第1生体認識要素を含有する第1中性ゾル懸濁液と接触したときに第1電極に電位を印加することにより、および第2電極が第2生体認識要素を含有する第2中性ゾル懸濁液と接触したときに前記第2電極に選択的に電位を印加することにより形成される、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法により得られる生物学的アッセイデバイス。
【請求項27】
以下、
(i)導電性基材および
(ii)1種以上の生体材料を含むゾル・ゲル、
を備える生物学的アッセイデバイス。
【請求項28】
前記ゾル・ゲルは、メルカプタン含有シランおよび/または二官能性シランを含む混合物から得られる、請求項26に記載の生物学的アッセイデバイス。
【請求項29】
電位差計と組み合わせた、請求項26〜28のいずれか1項に記載の生物学的アッセイデバイス。
【請求項30】
1種以上の分析物を検出するための、請求項26〜28のいずれか1項に記載の生物学的アッセイデバイスまたは請求項29に記載の組み合わせの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507498(P2006−507498A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554649(P2004−554649)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004984
【国際公開番号】WO2004/048603
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501335276)ザ ユニバーシティ オブ ワーウィック (5)
【Fターム(参考)】