説明

コート材

【解決手段】塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を樹脂の重量で、(A)10〜98重量部、(B)1〜89重量部、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)1〜89重量部で混合することを特徴とし、(A)、(B)、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)の総合計が100重量部となるように混合することを特徴とするコート材である。
【効果】本発明によれば、コート材が分離現象を起こすことなくそのまま使用することができ、スプレー塗装が可能な塗料及びプライマーであって、ポリオレフィン、合成ゴム等の各種樹脂成形品や、鋼板やアルミニウム等の金属への密着に優れる水系のコート剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜にする事で無処理ポリオレフィン系樹脂フィルムやシート、或いは成形物等への塗料およびプライマーとして、或いは鋼板、アルミニウム等の金属への塗料およびプライマーとして使用するコート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂は一般に生産性がよく各種成形性にも優れ、しかも軽量で防錆、かつ耐衝撃性がある等といった多くの利点があるため、自動車や船舶等の内装や外装、及び家電や家具、雑貨、建築の材料等として広範囲に使用されている。このようなポリオレフィン系の樹脂成形物は一般に、ポリウレタン系樹脂やポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂等に代表される極性を有する合成樹脂とは異なり、非極性であってかつ結晶性であるため、汎用の樹脂組成物ではこのものへの塗装や接着を行うのが非常に困難である。
このため、ポリオレフィン系樹脂成形物に塗装や接着を行う際は、その表面をクロム酸、火炎、コロナ放電、プラズマ、溶剤等で活性化することにより表面への付着性を改良するといったことが行われてきた。例えば、自動車用バンパーではその表面をトリクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤でエッチング処理することにより塗膜との密着性を高めたり、又はコロナ放電処理やプラズマ処理、もしくはオゾン処理等の前処理をした後において、目的の塗装や接着を行うといったことがなされてきた。また、プライマーで成形品等の基材表面を処理する方法がとられており、例えばポリオレフィンにマレイン酸を導入した組成物(特許文献1)、又は塩素化変性ポリオレフィンを主成分とした組成物(特許文献2)といったものも提案されてきた。
【0003】
鋼板等の金属も自動車や船舶等の内装や外装、及び家電や家具、雑貨、建築の材料等の広範な分野に使用されている。鋼板表面には、外観向上、防食性の付与を主目的として塗装がなされている。とりわけ、外力による変形や物の衝突による塗膜の割れや剥離を抑制し、腐食を抑制することが重要である。現在はこれらを抑制するために、塗装膜厚を厚くしたり、マレイン酸又はその無水物をグラフト共重合してなる変性プロピレン−エチレン共重合体(特許文献3)等をコートしたものが用いられている。しかしながら、これらはトルエンやキシレンなどの有機溶剤を含んでおり、安全性や、環境汚染等の問題が懸念されている。そこで、有機溶剤を含まないものとして、塩素化変性ポリオレフィンを主成分とした組成物を水に分散させたもの(特許文献4)、オレフィン重合体と石油系炭化水素樹脂からなるもの(特許文献5)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらは水系にするために多量の界面活性剤を使用するため、塗膜の耐水性や基材への密着性が低下したり、表面にブリードアウトしベタツキを発現するという問題を生じる。これらの原因となる界面活性剤の使用量を少なくすると、水系化できない或いは水系樹脂組成物の安定性が悪い等の問題を生じる。また、これらの多くは基材に対して十分な密着性を発現しないという問題もある。
【特許文献1】特公昭62−21027号公報
【特許文献2】特公昭50−10916号公報
【特許文献3】特公平6−057809号公報
【特許文献4】特開平1−256556号公報
【特許文献5】特開2004−27055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題点を改良したもので、ポリプロピレン等のポリオレフィン、合成ゴム、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等からなる各種樹脂の成形品や、鋼板やアルミニウム等の金属に、優れた密着を発現する水系のコート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究および検討を重ねてきた結果、塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を混合してなることを特徴とするコート材が、上記目標達成のために極めて有効である事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を樹脂の重量で、(A)10〜98重量部、(B)1〜89重量部、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)1〜89重量部で混合することを特徴とし、(A)、(B)、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)の総合計が100重量部となるコート材である。また、該コート材から得られる、塗料、プライマーであり、塗膜である。これらに使用される基材は、ポリオレフィン系樹脂、金属が好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コート材が分離現象を起こすことなくそのまま使用することができ、スプレー塗装が可能な塗料及びプライマーであって、ポリオレフィン、合成ゴム等の各種樹脂成形品や、鋼板やアルミニウム等の金属への密着に優れるという、従来にない作用効果を有する水系のコート剤である。また、活性水素および/又は水酸基と反応可能な硬化剤を用いる事もできる、塗料及びプライマーの用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のコート材は、下記手法により得られた水系の樹脂組成物を混合することで得ることができる。
【0009】
[塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)]
本発明に用いられる水系樹脂組成物の樹脂である塩素化オレフィン系樹脂は、ポリオレフィンを塩素化したものである。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独又は2種類以上の共重合体の熱可塑性エラストマ−が挙げられる。
上記の中でも、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体が好ましく、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0010】
塩素化オレフィン系樹脂の製造法としては、例えばポリオレフィンを含む溶液に塩素ガスを導入し反応させる事によって得られる。
また、前記の塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)は、ポリオレフィンを塩素化したものに、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーを導入したものも含まれる。
【0011】
本発明に使用されるα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類、その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、エチレン、プロピレン、C〜C20のα−オレフィン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。また、前記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類等も使用できる。
【0012】
また、本発明に用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類等が挙げられる。
また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及びメチルメタアクリレートを示す。
前記の塩素化オレフィン系樹脂を水に分散する方法としては、界面活性剤、水性ウレタン樹脂、水溶性アクリル樹脂を用いる方法や、塩素化ポリオレフィン導入するα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーにカルボン酸又は酸無水物を用いてこれらを塩基性化合物等で中和する方法等がある。
【0013】
塩基性化合物としては、ナトリウム、カリウム、等のアルカリ金属、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム、等の無機アミン、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルイミダゾール、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等水酸化物、水素化物、炭酸ナトリウム、等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の弱酸塩を挙げることができ、これらの化合物は1種、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0014】
前記塩素化オレフィン系樹脂の塩素化率は、乳化性、各種基材とりわけオレフィン系基材との密着の点で5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。その重量平均分子量(以下、Mwと略記する。重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。)は通常、1000〜400000の範囲、好ましくは2000〜200000である。
さらに水への分散安定性を向上させるために、各種界面活性剤(F)を使用することができる。たとえば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及び金属石鹸(Zn、Al、Na、K塩)等のアニオン系界面活性剤、脂肪酸モノグリセライド、等のノニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド、両性界面活性剤、並びに水溶性多価金属塩類等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を混合して、使用することができる。この界面活性剤(F)の使用量は、系に存在する樹脂全体に対して、0.05〜40重量%程度が好ましく、0.1〜20重量%がさらに好ましく、特に0.1〜10重量%が好ましい。
【0015】
[ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)]
本発明に使用されるウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)を構成する成分である、多官能イソシアネート化合物としては、例えばエチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、等の各種脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4´−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、等の脂環族ポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジイソシアネート、等の芳香族ポリイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、等の含硫脂肪族イソシアネート、ジフェニルスルフィド−2,4´−ジイソシアネート、等の芳香族スルフィド系イソシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4´−ジイソシアネート、等の脂肪族ジスルフィド系イソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4´−ジイソシアネート、等の芳香族スルホン系イソシアネート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4´−イソシアナトフェノールエステル、等のスルホン酸エステル系イソシアネート、4,4´−ジメチルベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4´−ジイソシアネート、等の芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、チオフェン−2,5−ジイソシアネート、等の含硫複素環化合物等が挙げられる。
【0016】
またこれらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できるが、上記化合物以外の多官能イソシアネート化合物を使用してもかまわない。また、これらの多官能イソシアネート化合物は、1種又は2種以上の混合物で使用することもできる。
上記化合物のうち、得られた樹脂、及びそれをコートし皮膜形成させた後の皮膜の耐黄変性、熱安定性、光安定性の点、又は多官能イソシアネート化合物の入手のし易さの面から、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネート化合物が好ましく、それらの中でもヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビスイソシアナートメチルノルボルナン、2,6−ビスイソシアナートメチルノルボルナン及びこれらの誘導体が特に好ましい。
多官能イソシアネート化合物と反応し得る活性水素基を、1分子中に、少なくとも2個有する活性水素化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。各種のポリオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、等の芳香族ポリオール、ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、更に、シュウ酸、アジピン酸、等の有機酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物、前記ポリオールとエチレンオキシドや、プロピレンオキシド等アルキレンオキシドとの付加反応生成物、アルキレンポリアミンとアルキレンオキシドとの付加反応生成物、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、カプロラクトン変性品、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、等が挙げられる。この他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、等のポリアミノ化合物、セリン、リジン、ヒスチジン等のα−アミノ酸も使用することができる。
【0017】
本発明において活性水素化合物は、分岐骨格を有さない直鎖構造の化合物を使用する事が好ましく、更に、融点(Tm)が40℃以下であるようなポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオールおよびこれらの共重合体や混合物を、全活性水素化合物100重量部中、50重量部以上98重量部以下使用することが好ましい。50重量部未満であると、水性コート材から得られた皮膜の風合いが悪化する傾向にあり、98重量部を超えると、皮膜強度、硬度が低下する傾向にある。これらの化合物はそれぞれ単独で、また、2種類以上混合して用いても良い。
【0018】
また、本発明に用いられるウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)を水中に安定にさせるためには、公知の材料、安定化技術を用いる事が出来るが、分子中にカルボキシル基、スルホニル基およびエチレンオキシド基を一種以上有している事が好ましく、カルボキシル基および/又はスルホニル基を一種以上有していることがより好ましい。
これらの原子団を導入する構成成分としては、例えば2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの重付加物、エチレングリコールと前記活性水素化合物との重合体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。分子中にこれらの原子団を導入することで、樹脂の機械的安定性、他成分との混和安定性が向上する傾向にある。
上記のカルボキシル基および/又はスルホニル基含有化合物を用いる際の好ましい量は、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物の固形分換算における酸価が2〜35KOHmg/g、より好ましくは3〜30KOHmg/gの範囲内である。上記酸価の範囲未満であると、樹脂の機械的安定性が傾向にある。
【0019】
ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)の製造方法は、特に制限されるものではないが例えば以下のような方法が例として挙げられる。例えば、多官能イソシアネート化合物、前記活性水素化合物中における、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する化合物、および前記化合物中のイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有し、且つ分子中にカルボキシル基、スルホニル基又はエチレンオキシド基を有する少なくとも1種の化合物を、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、適当な有機溶剤の存在下又は非存在下に反応させ、分子末端にイソシアネート基を有したウレタンプレポリマーを製造し、その後、上記プレポリマー中にカルボキシル基及び又はスルホニル基を有するものは、三級アミン等の中和剤により中和、ついで、この中和プレポリマーを、鎖伸長剤含有の水溶液中に投入して反応させた後、系内に有機溶剤を含有する場合はそれを除去し得る方法や、上記の方法で得た未中和のウレタンプレポリマーを、中和剤を含有し、かつ鎖伸長剤をする水溶液中に投入して反応させて得る方法や、前記の方法で得た中和済みのウレタンプレポリマー中に、鎖伸長剤を有する水溶液を加え、反応させて得る方法や、前記の方法で得た未中和のウレタンプレポリマー中に、中和剤を含有し、かつ鎖伸長剤を有する水溶液を加え、反応させて水分散液を得る方法等がある。
【0020】
本発明に用いられる中和剤としては、特に制限されるものではないが、ナトリウム、カリウム、等のアルカリ金属、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム、等の無機アミン、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルイミダゾール、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等水酸化物、水素化物、炭酸ナトリウム、等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の弱酸塩を挙げることができ、これらの化合物は1種、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0021】
前記中和剤の使用量は、好ましくは前記カルボキシル基および又はスルホニル基を有するポリウレタン樹脂中のカルボキシル基および又はスルホニル基1当量に対し、0.5〜3当量、より好ましくは0.7〜1.5当量である。前記範囲未満であると、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)の水中における安定性が低下する傾向にある。
本発明に用いられる鎖伸長剤としては、例えば、水、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、NBDA(商品名、三井化学株式会社製)、N−メチル−3,3´−ジアミノプロピルアミン、及びジエチレントリアミンとアクリレートとのアダクト又はその加水分解生成物等のポリアミン類が適当である。
【0022】
上記ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)を得る際に使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、溶剤の沸点が100℃以下のものであれば特に限定されるものではなく、これらの溶剤は単独で、又は2種類以上の混合状態で用いることが出来る。溶剤の沸点が100℃を超える、すなわち水の沸点を超える溶剤の使用は、水分散体形成後の溶液から溶剤のみを完全に留去する事が困難になり、皮膜中へ高沸点溶剤が残存し物性へ影響するので、性能発現のため止むを得ず使用する場合には、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)100重量部に対し10重量部以下で用いることが好ましい。
【0023】
また、本発明で用いられるウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)は、他の単量体、樹脂成分等の他成分と反応させることによって変性体としても使用できる。さらに、本発明で得られたウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)中において、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イタコン酸、マレイン酸等の少なくとも1種以上のモノマーを重合させた複合体としても使用できる。
このようにして得られたウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)の中でも、破断伸び率が0.1〜800%が好ましい。さらに水への安定性を向上させるために、上記の界面活性剤(F)を使用することができる。
【0024】
[石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)]
本発明で用いられる石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)としては、例えば、タールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合系脂環族である。C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂)、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分を共重合した樹脂)が挙げられ、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエン等を含有しているクマロンインデン系樹脂、ρ−ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、ο−キシレン、ρ−キシレン、m−キシレンをホルマリンと反応させたキシレン系樹脂等も挙げられる。これらは単独又は2種類以上で組み合わせて使用することができる。これらの中でも、GPCによる測定で重量平均分子量が1,000〜50,000の石油系炭化水素樹脂が好ましく、なかでも1,500〜30,000が好ましい。また、これらの樹脂に極性基を有するものはさらに好ましい。
【0025】
[ロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)]
本発明で用いられるロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等で変性した変性ロジンが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、前記のロジン類のエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等が挙げられ、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0026】
[テルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)]
本発明で用いられるテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド等からなる樹脂が挙げられ、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン等にスチレン等の芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等が挙げられ、これらの水素添加物も挙げることができる。中でもテルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびこれらの水素添加物が好ましい。
本発明では、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)、ロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)、テルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を併用して使用することもできる。
【0027】
本発明は、上記に記載した塩素化ポリオレフィンの水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を混合することを特徴とし、混合とはそれぞれ安定に存在する水系樹脂組成物を攪拌下、混ぜ合わせることである。
本発明は、上記に記載した塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を樹脂の重量で、(A)10〜98重量部、(B)1〜89重量部、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)1〜89重量部で混合することを特徴とし、(A)、(B)、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)の総合計が100重量部となるように混合することが好ましく、(A)20〜90重量部、(B)5〜70重量部、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)5〜70重量部で混合し、(A)、(B)、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)の総合計が100重量部となるように混合することがさらに好ましい。
【0028】
本発明のコート材のうちで、活性水素及び/又は水酸基を持つ組成物は、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を用いることができる。
例えば、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する塗料、プライマーとして用いることができる。前記の硬化剤としては、イソシアナート基が、オキシム類、ラクタム類、フェノール類等のブロック剤で処理したものが水中に存在するようなタケネートWBシリーズ(三井武田ケミカル(株)製)、エラストロンBNシリーズ(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0029】
また、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル等の少なくとも1種と、ホルムアルデヒドから合成される樹脂であって、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールによってメチロール基の1部又は全部をアルキルエーテル化したようなアミノ樹脂も硬化剤として使用することができる。
更には、オキサゾリン化合物を硬化剤として用いることもできる。前記の硬化剤としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。
【0030】
本発明のコート材と活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤は任意の割合で使用する事ができる。
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がイソシアナート基を有する硬化剤である場合の配合割合は、活性水素とイソシアナート基の当量比で0.5:1.0〜1.0:0.5の範囲が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲が更に好ましい。
また、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がアミノ樹脂である場合は、本発明のコート材/アミノ樹脂のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
【0031】
更には、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がオキサゾリン化合物である場合は、本発明のコート材/アミノ樹脂のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
【0032】
上記に記載の硬化剤を混合したものは、そのままでもコートし硬化させることもできるが、必要に応じて反応性触媒を併用することもできる。
その他必要に応じて、滑性付与剤(例えば、合成ワックス、天然ワックス等)、粘接着性付与剤、架橋剤、成膜助剤、レベリング剤、粘弾性調整剤、濡れ剤、難燃剤(例えば、ポリリン酸アンモニウム等のリン含有樹脂、リン酸エステル、メラミン、ホウ酸亜鉛、水酸化マグネシウム等)、安定化剤、防錆剤、防かび剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、起泡剤、消泡剤、湿潤剤、凝固剤、ゲル化剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤、沈降防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、顔料)、充填剤、有機溶剤、油(鉱物系潤滑油、鉱物油、合成油、植物油等)などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。これらの添加剤は単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明のコート材、或いは本発明のコート材に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものの塗布方法は特に限定するものではないが、噴霧塗布により行うのが好適であり、例えば、スプレーガンで被塗装表面に吹きつけ、塗布を行うことができる。塗布は通常、常温にて容易に行なうことができ、また塗布後の乾燥方法についても特に限定はなく、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することができる。
【0034】
コート層の厚さは、積層体の用途等によって適宜選択されるため特に限定されるものではない。
また、本発明のコート材、或いは本発明のコート材に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、その特徴から上記以外にも、水性エポキシ樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性アルキド樹脂、或いはこれらの樹脂を含有する塗料等を混合して使用する事ができる。
特に本発明のコート材、或いは本発明のコート材に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものは、プラスチック、金属、紙、木材、繊維、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリート、アスファルト等の各種材料への塗料およびプライマーとして、とりわけ塗膜にする事で無処理ポリオレフィン系樹脂フィルムやシート、或いは成形物等への塗料およびプライマーとして、或いは鋼板やアルミニウム等の金属への塗料およびプライマーとして使用する事ができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の組成物の製法および各種試験例を挙げ、更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下において、部および%は特記していない限り重量基準である。
ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)
<製造例B>
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土ヶ谷化学工業株式会社製、PTG2000SN)を399.5g、2,2−ジメチロールブタン酸21.0g、1,4−ブタンジオール12.4g、ヘキサメチレンジイソシアネート96.3g、およびメチルエチルケトン374.0gを仕込み、窒素ガス雰囲気下90℃で6時間反応させた。その後、60℃に冷却し、トリエチルアミン13.3gを添加し、この温度下で30分混合した。得られたプレポリマーを0.86%ヘキサメチレンジアミン水溶液1275.7gと混合攪拌し、その後60℃で減圧下メチルエチルケトンを脱溶剤することにより、固形分:30%、固形分酸価:15KOHmg/g、pH:8、平均粒径:0.2μmのウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)を得た。
【0036】
石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)
<製造例C>
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ヘキサンを300g、石油樹脂(三井化学株式会社製、ハイレッツT−480X)を300g仕込み、還流下、加熱溶解した。この溶液500g、蒸留水250g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、ネオペレックスF−25)1.5gを混合し、回転数10000rpmで15分間攪拌した。ついでポリアクリル酸(和光純薬品工業株式会社製、ハイビスワコー304)0.7gを加え、攪拌混合し、乳化液を得た。この乳化液中のヘキサンをエバポレータで減圧留去し、石油系炭化水素樹脂(C)の水系樹脂組成物を得た。得られた水系樹脂組成物は、収率:98%、固形分濃度:50%、pH:8、平均粒径:0.6μm(マイクロトラックの測定)であった。
【0037】
実施例1
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)としてハードレンEW5303(東洋化成株式会社製、樹脂分30%)100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)の50%水溶液を2g滴下し、その後、製造例Bで得られた水系樹脂組成物を16.7g滴下混合し、さらに製造例Cで得た水系樹脂組成物を30g滴下混合してコート材を得た。
【0038】
実施例2
製造例Cで得た水系樹脂組成物を、ロジン系樹脂の水系樹脂組成物であるスーパーエステルE720(荒川化学工業株式会社製、樹脂分50%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でコート材を得た。
【0039】
実施例3
製造例Cで得た水系樹脂組成物を、テルペン系樹脂の水系樹脂組成物であるナノレットR1050(ヤスハラケミカル株式会社製、樹脂分50%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でコート材を得た。
【0040】
実施例4
製造例Bで得た水系樹脂組成物を、タケラックW615(三井武田ケミカル株式会社製、樹脂分35%)に、添加量を14.2gに変更した以外は、実施例3と同様の方法でコート材を得た。
【0041】
実施例5
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)をハードレンEW8501(東洋化成株式会社製、樹脂分30%)に変更した以外は、実施例3と同様の方法でコート材を得た。
【0042】
実施例6
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)をハードレンEZ4000(東洋化成株式会社製、樹脂分30%)に変更した以外は、実施例3と同様の方法でコート材を得た。
【0043】
実施例7
ハードレンEW5303100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を4g滴下し、その後、製造例Bで得られた水系樹脂組成物を166.7g滴下混合し、さらにナノレットR1050を40g滴下混合してコート材を得た。
【0044】
実施例8
ハードレンEW5303100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を1.5g滴下し、その後、製造例Bで得られた水系樹脂組成物を12.5g滴下混合し、さらにナノレットR1050を7.5g滴下混合してコート材を得た。
【0045】
実施例9
製造例Cで得た水系樹脂組成物30gを、ナノレットR1050を20g、スーパーエステルE720を10gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でコート材を得た。
【0046】
実施例10
製造例Cで得た水系樹脂組成物30gを、製造例Cで得た水系樹脂組成物5g、ナノレットR1050を20g、スーパーエステルE720を5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法でコート材を得た。
【0047】
実施例11
実施例3で調整した水系樹脂組成物100gに、硬化剤:タケネートWD−720(三井武田ケミカル株式会社製)を10g混合しコート材を得た。
【0048】
実施例12
実施例3で調整した水系樹脂組成物100gに、硬化剤:サイメル236(サイテック社製)を7gと触媒であるキャタリスト500を0.5g混合しコート材を得た。
【0049】
実施例13
実施例3で調整した水系樹脂組成物100gに、硬化剤:エポクロスK−2020E(株式会社日本触媒製)を10g混合しコート材を得た。
【0050】
比較例1
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)としてハードレンEW5303を100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を1.2g滴下混合してコート材を得た。
【0051】
比較例2
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)としてハードレンEW5303100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を2.4g滴下し、その後、製造例Bで得られた水系樹脂組成物を100g滴下混合してコート材を得た。
【0052】
比較例3
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)としてハードレンEW5303100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を2.4g滴下し、ナノレットR1050を60g滴下混合してコート材を得た。
【0053】
比較例4
製造例Bで得られた水系樹脂組成物を100gに、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を2.4g滴下し、ナノレットR1050を60g滴下混合してコート材を得た。
【0054】
比較例5
特許文献5の実施例1に記載された水分散体に、攪拌混合下、オルフィンE1010の50%水溶液を2g滴下混合してコート材を得た。
【0055】
[評価と結果]
<コート材の安定性>
実施例および比較例で得られたコート材を、不揮発分30%、室温と40℃、それぞれの条件で1ヶ月静置し、溶液の状態を評価した。1ヶ月の経過後、このコート材について、分離および沈殿がともに確認されなかったものを○、分離および/又は沈殿の観察されたもので攪拌にて容易に分散できるものを△、分離および/又は沈殿の観察された攪拌にて容易に分散できないものを×として、結果を表1に記した。尚、実施例11〜13については室温での保管のみの試験を行った。
<コート材のスプレー適性>
塗装ガン(岩田塗装機工業株式会社製ワイダースプレーガン(商品名;W−88−13H5G))を使用し、霧化圧4kg/cm2 、ノズル1回転開き、塗装ブース内の温度30℃にて、実施例および比較例で得られたコート材をスプレーし、糸曳きが発生するか否かを観察し、発生しなかったものを○、1本でも発生したものを×とし、結果を表−1に記した。
【0056】
<塗膜の物性>
ポリプロピレン製の基材
実施例および比較例で得られたコート材を、イソプロピルアルコールで表面を拭いたポリプロピレン製の角板に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように上記コート材をそれぞれ塗布したのち、100℃のオーブンに入れて30分間処理した。この塗膜の上に、白色の上塗り塗料(日本ビーケミカル株式会社製、商品名;R278(主剤)/R271(硬化剤)=8/2で混合)を乾燥後の膜厚が80μmになるように塗布して塗膜を成形し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れて30分間処理を行い、試験片を作成した。これらの試験片について、24時間後の碁盤目剥離試験、ピール強度の測定と、耐候性試験後の光沢保持率と碁盤目剥離試験と、耐温水性試験後の外観と碁盤目剥離試験を行った。尚、24時間後のピール強度で1000g/cm以上の強度がでなかったものについては、耐候性、耐温水性の各試験を実施しなかった。また、上塗り塗料を塗布しなかった塗膜について、碁盤目剥離試験と塗膜のベタツキの有無について評価を行った。
【0057】
オレフィン系熱可塑性エラストマー製の基材
実施例および比較例で得られたコート材を、イソプロピルアルコールで表面を拭いたオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、タフマーA4070(三井化学株式会社製)の角板、及び、ミラストマー8030(三井化学株式会社製)の角板に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように上記コート材をそれぞれ塗布したのち、80℃のオーブンに入れて30分間処理した。この塗膜の上に、白色の上塗り塗料(日本ビーケミカル株式会社製、商品名;R278(主剤)/R271(硬化剤)=8/2で混合)を乾燥後の膜厚が80μmになるように塗布して塗膜を成形し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れて30分間処理を行い、試験片を作成した。これらの試験片について、24時間後の碁盤目剥離試験を行った。
【0058】
鋼板
実施例および比較例で得られたコート材を、イソプロピルアルコールで表面を拭いた公知の電着エポキシ塗料により表面処理(厚さ約20μm)を施した鋼板の電着塗料表面に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように上記コート材をそれぞれ塗布したのち、100℃のオーブンに入れて30分間処理した。この塗膜の上に、白色の上塗り塗料(日本ビーケミカル株式会社製、商品名;R278(主剤)/R271(硬化剤)=8/2で混合)を乾燥後の膜厚が80μmになるように塗布して塗膜を成形し、室温にて10分間放置した後、80℃のオーブンに入れて30分間処理を行い、試験片を作成した。これらの試験片について、24時間後の碁盤目剥離試験を行った。
【0059】
碁盤目剥離試験
JIS−K−5400に記載されている碁盤目剥離試験の方法に準じ、碁盤目を付けた試験片を作成し、粘着テープ(ニチバン株式会社品)を碁盤目上に貼り付けた後、速やかに90°方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100個の中、剥離されなかった碁盤目数にて評価した。
【0060】
ピール強度の測定
塗膜された基材に1cm幅で切れ目を入れ、その端部を剥離した後、端部を50mm/分の速度で180°方向に引っ張りピール強度を測定し、ピール強度が1000g/cm以上のものを○、1000g/cm未満のものを×として評価した。
【0061】
耐候性試験
JIS−K−5400に記載されている促進耐候性試験の方法に準じ、サンシャインカーボンアーク灯式で1000時間評価したものについて、碁盤目剥離試験と光沢保持率の評価を行った。
【0062】
光沢保持率の測定
試験前後の60度鏡面光沢度(JIS−K−5400)から、その測定値の保持率(%)=(試験後の光沢度/初期の光沢度)×100を算出し、光沢保持率80%以上で変色が認められなかったものを○、60%以上80%未満のものを△、60%未満のものを×として評価した。
【0063】
耐温水性試験
上記で得られた試験片を、40℃に調整した温水中に240時間浸漬したものについて、塗膜の外観と碁盤目剥離試験の評価を行った。
【0064】
塗膜の外観
試験後の塗膜について、フクレの有無等を評価し変化のないものを○、フクレ等塗膜に変化があるものを×とした。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を混合してなることを特徴とするコート材。
【請求項2】
塩素化オレフィン系樹脂の水系樹脂組成物(A)と、ウレタン樹脂の水系樹脂組成物(B)と、石油系炭化水素樹脂の水系樹脂組成物(C)及び/又はロジン系樹脂の水系樹脂組成物(D)及び/又はテルペン系樹脂の水系樹脂組成物(E)を樹脂の重量で、(A)10〜98重量部、(B)1〜89重量部、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)1〜89重量部で混合することを特徴とし、(A)、(B)、(C)及び/又は(D)及び/又は(E)の総合計が100重量部となるコート材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコート材を含有する塗料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコート材を含有するプライマー。
【請求項5】
基材上に、請求項1又は2に記載のコート材、又は請求項3記載の塗料、又は請求項4記載のプライマーをコートすることによって得られる塗膜。
【請求項6】
基材がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項5記載の塗膜。
【請求項7】
基材が金属であることを特徴とする請求項5記載の塗膜。

【公開番号】特開2007−284581(P2007−284581A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114250(P2006−114250)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】