説明

コードクリップ

【課題】コードを良好に支持するコードクリップを構成する。
【解決手段】第1挟持体10と第2挟持体20とを連結部Aで揺動自在に連結し、これらの挟持端部11、21を閉じ方向に付勢するトーションバネSを備える。第2挟持体20の内面で、連結部Aより挟持端部21に変位した位置に圧着片27を突設し、この圧着片27と連結部Aとの間にコード支持部Bとしての圧着空間Bsを配置する。挟持端部11、21が閉じ状態にある場合には、第1挟持体10に形成した第1連結片14がコード挿抜開口Btを覆いコードCの抜け出しを阻止する。挟持端部11、21を開放した場合には、第1挟持体10の案内面14Gが圧着空間BsにコードCを案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに揺動開閉自在に連結された第1挟持体と第2挟持体との挟持端部を付勢部材によって閉じ方向に付勢し、第1挟持体と第2挟持体との一方にコード支持部を備えているコードクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコードクリップとして、特許文献1、特許文献2に記載されるものが存在する。
【0003】
特許文献1では、一対のクリップ片が揺動自在に軸支されると共に、一対のクリップ片(本発明の第1、第2挟持体)の先端のクリップ部が閉じる方向にバネによって付勢されている。一方のクリップ片のクリップ部の他端側の内側には、コードの挿通が可能な通孔が形成され、この通孔の内部に他方のクリップ片に形成した突起を配置することで、通孔の内面と突起とでコードを押圧する構造を備えている。
【0004】
このコードクリップでは、一対のクリップ片のクリップ部の他端側を内側に押圧することでクリップ部を開放できると同時に、通孔の内部で突起が変位してコードの圧着を開放できるように構成されている。
【0005】
特許文献2では、一対の挟持片(本発明の第1、第2挟持体)を略C字型の付勢部によって連結することにより、夫々の挟持片の先端の挟持部が閉じる方向に付勢されている。一対の挟持片の対向する面のうちの一方にはコードを係止するコード係止部が一体形成されている。
【0006】
【特許文献1】実開昭60‐114494号公報 (明細書、図1〜図3)
【特許文献2】特開2003‐42109号公報 (段落番号〔0020〕〜〔0029〕、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるコードクリップは、バネの付勢力でコードを押圧して保持するため、クリップの先端が閉じ状態にある場合にはコードを良好に保持するものの、クリップの先端を開放する方向に操作した場合にはコードの押圧力が低下してコードの保持位置が変化しやすいものである。また、この特許文献1では、通孔と突起とを必要とする構成であるため、製造や組み立てに手間が掛かることが考えられる。しかも、通孔と突起とが突出する構造であるため、破損を招きやすいものとなる。
【0008】
特許文献2に記載されるコードクリップは、コード係止部でコードを挟み込んで保持する構造であるため、特許文献1のように操作と連係してコードの保持位置が変化する現象を招かないものである。しかしながら、この特許文献2では、コード係止部でコードを単純に挟み込んで保持するため、コードに張力等の外力が作用した場合には係止部からコードが外れ、コードクリップの機能を失うことも考えられた。
【0009】
このような不都合を解消するために、第1挟持体と第2挟持体との一方に対してバネ等の付勢力によってコードを押圧支持するコード支持部を形成することも考えられるが、バネ等の付勢力を用いるものでは、可動部を必要とする等、部品点数の増大を招き、組み立てにも手間が掛かるものとなり改善の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、コードを良好に支持するコードクリップを構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、互いに揺動開閉自在に連結された第1挟持体と第2挟持体との挟持端部を付勢部材によって閉じ方向に付勢し、第1挟持体と第2挟持体との一方にコード支持部を備えているコードクリップであって、
前記第1挟持体と前記第2挟持体との対向する面に挟まれる位置に、この第1挟持体と第2挟持体とを揺動自在に連結する連結部が形成され、前記コード支持部として、前記第1挟持体と前記第2挟持体との中間に挿通するコードを前記連結部との間に挟み込み圧着支持する圧着片が、前記連結部より前記挟持端部側で、かつ、前記第1挟持体と前記第2挟持体との対向する面の一方に形成されている点にある。
【0012】
この構成により、コード支持部にコードを支持する際には、付勢部材の付勢力に抗して第1挟持体と第2挟持体との挟持端部側を開放側に操作し、この第1挟持体と第2挟持体との間にコードを挿通して圧着片と連結部との間の空間にコードを押し込むことで支持が完了する。この後、付勢部材の付勢力によって第1挟持体と第2挟持体との挟持端部が閉じ状態に達した状態では、第1挟持体と第2挟持体とが接近するため、コード支持部からコードが抜け出す方向に外力が作用することがあっても、コードの抜け出しを阻止できる。つまり、本発明では圧着片と連結部との間にコードを挟み込む構造となるので、圧着片のみによってコードを圧着するものに比べて、圧着片の突出量を小さくできる。その結果、圧着片の小型化を図りながらコードを良好に支持するコードクリップが合理的に構成された。
【0013】
本発明では、前記圧着片の延出端部が、前記連結部における揺動軸芯と平行姿勢で、この揺動軸芯の方向に向かう姿勢で突出成形され、この延出端部と前記連結部との間にコード挿抜開口を形成しても良い。これによると、コード挿抜空間から挿入されたコードに張力等の外力が作用した場合でもコードが連結部との接触により抜け出しが抑制される。
【0014】
本発明では、前記連結部が、前記第1挟持体に突設した第1連結片と、前記第2挟持体に突設した第2連結片とを前記揺動軸芯周りで揺動自在に連結して構成され、この第1連結片と第2連結片のうち、前記圧着片を備えていないものにおいて前記圧着片の延出端部と対向する位置に前記コードを前記コード挿抜開口に案内する案内面が形成されても良い。これによると、コード支持部にコードを支持する際には、付勢部材の付勢力に抗して第1挟持体と第2挟持体との挟持端部側を開放側に操作し、この第1挟持体と第2挟持体との間にコードを挿通して案内面に沿って移動させることで圧着片と連結部との間の空間にコードを押し込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、第1挟持体10と第2挟持体20とを連結部Aによって揺動軸芯P周りで互いに揺動開閉自在に連結すると共に、第1挟持体10と第2挟持体20との挟持端部11、21を閉じ方向に付勢する付勢部材としてのトーションバネSを備え、第2挟持体20にコードCを支持するコード支持部Bを備えてコードクリップが構成されている。
【0016】
このコードクリップは、携帯型のオーディオ装置のヘッドホンのコードC、あるいは、マイクロホンのコードC等をコード支持部Bに支持した状態で、トーションバネSの付勢力によって第1挟持体10と第2挟持体20との挟持端部11、21で衣服の襟やポケット等を挟持することにより、コードCが自由に振れ動く現象や、垂れ下がる現象を抑制する形態で使用される。
【0017】
第1挟持体10と第2挟持体20との対向する面を内面と称し、この反対側の面を外面と称している。これら第1挟持体10と第2挟持体20とは、板状で外周が楕円形となり、中央が外方に滑らかに膨出するように成形されている。
【0018】
これら第1挟持体10と第2挟持体20との楕円の長軸X方向での一端側を挟持端部11、21とし、この挟持端部11、21の内面側には平行する2条の鋸歯状突起列12、22が突設されている。長軸X方向での他部側を操作端部13、23としており、第1挟持体10の操作端部13の外面側には凹部10Aが形成されている。
【0019】
また、第1挟持体10には、連結部Aを構成する一対の第1連結片14が長軸Xと平行となる姿勢で内面側に突出形成され、第2挟持体20には、連結部Aを構成する一対の第2連結片24が前記長軸Xと平行となる姿勢で内面側に突出形成されている。
【0020】
一対の第1連結片14を、前記楕円の短軸Y(揺動軸芯Pと平行となる)方向での外方から挟み込む位置に一対の第2連結片24が形成されている。一対の第2連結片24には揺動軸芯Pと同軸芯の孔部24Aが穿設されている。また、一対の第1連結片14には揺動軸芯Pと同軸芯の軸体14Aが揺動軸芯Pに沿う方向で外方に突設されている。そして、第1連結片14と第2連結片24とを弾性変形させて軸体14Aを孔部24Aに係入させることにより、第1挟持体10と第2挟持体20とが揺動軸芯P周りで互いに揺動自在に連結される(図5を参照)。
【0021】
尚、第1連結片14、この第1連結片14に突設した軸体14A、第2連結片24、この第2連結片24に穿設した孔部24A夫々で連結部Aが構成されている。この連結部Aとしては、第1連結片14と第2連結片24と対して揺動軸芯Pに沿って貫通する支軸を有する構造を採用しても良い。
【0022】
第1挟持体10は、鋸歯状突起列12と第1連結片14とが樹脂により一体的に形成されている。これと同様に、第2挟持体20は、鋸歯状突起列22と第2連結片24とが樹脂により一体的に形成されている。
【0023】
第1挟持体10の内面で一対の第1連結片14に挟まれる部位にバネ保持凹部15が形成されている。また、第2挟持体20の内面で一対の第2連結片24に挟まれる部位にバネ保持凹部25が形成されている。更に、第1挟持体10と第2挟持体20との内面のうち連結部Aの近傍にはバネ支持溝16、26が形成されている。
【0024】
トーションバネSは、コイル部Saと一対の脚部Sbとを有している。このような構造から、第1連結片14と第2連結片24とを弾性変形させて軸体14Aを孔部24Aに係入させる際には、一対の第1連結片14に挟まれる位置にトーションバネSのコイル部Saを配置しておくことで、連結部Aにおいて第1挟持体10と第2挟持体20とを連結した状態では、図5に示すように、第1挟持体10と第2挟持体20とのバネ保持凹部15、25においてトーションバネSのコイル部Saを支持すると同時に、トーションバネS一対の脚部Sbの一方を第1挟持体10のバネ支持溝16に嵌め込み、一対の脚部Sbの他方を第2挟持体20のバネ支持溝26に嵌め込む形態で支持される。
【0025】
本発明では、トーションバネSに代えて、付勢部材として板バネや、圧縮コイルバネや、樹脂製のバネ材を用いても良い。
【0026】
第2挟持体20の内面で連結部Aより挟持端部21の方向に変位した位置に、短軸Yと平行する姿勢の壁状となる圧着片27が突出され、この圧着片27と連結部Aとの間にコードCを支持する圧着空間Bsが形成されている。圧着片27の突出側の延出端部27Aが揺動軸芯Pと平行姿勢で連結部Aの方向に突出するように成型され、この突出側の延出端部27Aと連結部Aとの中間にコード挿抜開口Btが形成されている。
【0027】
更に、第1連結片14のうち、コード支持部Bに対向する端面を図6(a)に示すように円弧状に成形して案内面14Gを形成している。また、揺動軸芯Pに沿う方向視において、圧着空間Bsの形状が、支持対象のコードCの直径Dより僅かに短い直径となるように形成され、コードCの被覆の弾性変形と、圧着片27の弾性変形とにより、この圧着空間BsにコードCを圧着支持できるように構成している。
【0028】
このような構成から、挟持端部11、21が、図6(b)に示す挟持位置(閉じ状態)にある場合には、コード挿抜開口Btを第1連結片14が覆う位置にあるので、圧着空間Bsで圧着支持されているコードCに張力が作用する等、外力が作用した場合でも、コードCが圧着空間Bsから抜出る不都合が抑制される。
【0029】
本発明では、第1挟持体10に対してコード支持部Bを形成しても良い。この場合、第1挟持体10に一体形成した圧着片と連結部Aとの間に圧着空間Bsが形成され、圧着片の延出端部と連結部Aとの中間にコード挿抜開口Btが形成され、第2連結片24に対して案内面が形成されることになる。
【0030】
このようにコードクリップが構成されているので、図6(a)に示すように、第1挟持体10と第2挟持体20との操作端部13、23を近接させるようにオペレータが指で摘んで押圧力を作用させる(開放操作する)ことにより、第1挟持体10と第2挟持体20との挟持端部11、21が離間する。このように押圧力を作用させる際には、第1挟持体10の外面の操作端部13に形成された凹部10Aにオペレータの指を嵌め込むことにより指が滑ることがない。
【0031】
次に、挟持端部11、21の間からコードCを挿入し、第1連結片14の案内面14Gに接触させる形態で、コードCを送り込むことにより、圧着片27の延出端部27Aのコード挿抜開口Btから圧着空間Bsにコードが送り込まれる。圧着空間BsにおいてコードCは圧着片27と連結部Aの第2連結片24の端面との間に挟み込まれ、摩擦保持される。
【0032】
このようにコードCをコード支持部Bに支持した状態では、コードCの姿勢が揺動軸芯Pと平行する姿勢となる。そして、トーションバネSの付勢力によって第1挟持体10と第2挟持体20との挟持端部11、21を閉じ状態にして衣服の襟やポケット等を挟持することで、このコードクリップによってコードCの垂れ下がりが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】使用状態のコードクリップの斜視図
【図2】コードクリップの分解斜視図
【図3】コードクリップの側面図
【図4】第1挟持体と第2挟持体を展開した図
【図5】揺動軸芯部位を示す断面図
【図6】開放状態と閉じ状態とのコードクリップの断面図
【符号の説明】
【0034】
10 第1挟持体
11 挟持端部
14 第1連結片
14G 案内面
20 第2挟持体
21 挟持端部
24 第2連結片
27 圧着片
27A 延出端部
A 連結部
B コード支持部
Bt コード挿抜開口
C コード
P 揺動軸芯
S 付勢部材(トーションバネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに揺動開閉自在に連結された第1挟持体と第2挟持体との挟持端部を付勢部材によって閉じ方向に付勢し、第1挟持体と第2挟持体との一方にコード支持部を備えているコードクリップであって、
前記第1挟持体と前記第2挟持体との対向する面に挟まれる位置に、この第1挟持体と第2挟持体とを揺動自在に連結する連結部が形成され、
前記コード支持部として、前記第1挟持体と前記第2挟持体との中間に挿通するコードを前記連結部との間に挟み込み圧着支持する圧着片が、前記連結部より前記挟持端部側で、かつ、前記第1挟持体と前記第2挟持体との対向する面の一方に形成されているコードクリップ。
【請求項2】
前記圧着片の延出端部が、前記連結部における揺動軸芯と平行姿勢で、この揺動軸芯の方向に向かう姿勢で突出成形され、この延出端部と前記連結部との間にコード挿抜開口が形成されている請求項1記載のコードクリップ。
【請求項3】
前記連結部が、前記第1挟持体に突設した第1連結片と、前記第2挟持体に突設した第2連結片とを前記揺動軸芯周りで揺動自在に連結して構成され、この第1連結片と第2連結片のうち、前記圧着片を備えていないものにおいて前記圧着片の延出端部と対向する位置に前記コードを前記コード挿抜開口に案内する案内面が形成されている請求項2記載のコードクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174548(P2009−174548A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10511(P2008−10511)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】