説明

コード化タイミング情報のないビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする方法及び装置

【課題】コード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスしてトランスポート・ストリーム(TS)を生成する。
【解決手段】各々が次のアクセス・ユニット(AU)のタイミング情報を得ることができるように先読みできるn個のAUをリストに構成する。このリストからAUのスタートを指示するポイントをスタートし、リストからAUのスタートを繰り返しチェックする。リストの最高のAUからタイミング情報を計算してヘッダを構成して、TS内に上記ヘッダを書き込む。TSの残りのバイトをエレメンタリ・ストリームからのデータで埋める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、イメージ処理に関し、特に、AVC(Advanced Video Codec)エレメンタリ・ストリームのマルチプレクスに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送業界は、現在、高分解能、インターネット・プロトコル・テレビジョン(IPTV)及びモバイル・ビデオを含む多くの技術的な進歩がある。これら技術の重要な要因は、圧縮効率であり、H.264/AVC(Advanced Video Codec/MPEG-4、パート10)ビデオ・コーデックにおける低い帯域幅要求である。MPEG−2(Moving Picture Expert Group)及びH.264の両方は、動画エンコード処理用の国際標準であり、イメージ・フレーム又はイメージ・フィールドを「ピクチャ」と呼ぶ圧縮単位として定義している。各「ピクチャ」をエンコード及びデコード処理のアクセス・ユニット(AU)として用いる。
【0003】
MPEG−2トランスポート・ストリーム(TS)内の追加のエレメンタリ・ストリーム(ES)としてH.264/AVCを組み込むMPEG−2標準への拡張により、放送局及びネットワーク・オペレータに便利であり魅力的になる。
【0004】
エレメンタリ・ストリーム(ES)は、基本的には、1つのオーディオ又はビデオ信号の生の圧縮表現である。エレメンタリ・ストリームのフォーマットは、ストリーム内で送られるコーデック又はデータに応じて決まり、パケット化エレメンタリ・ストリームにパケット化する際に共通ヘッダを送る。
【0005】
MPEG−2システムにおいて、ビデオ・エレメンタリ・ストリームをパケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)に組み立てる。プレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)をパケット化エレメンタリ・ストリームのヘッダ内に入れる。双方向予測コード化がイネーブルされたときに、デコード・タイム・スタンプ(DTS)も、I又はPピクチャのPESヘッダに入れる。
【0006】
H.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームは、一般的には、ファイルとして蓄積される一方、遅延モードにてマルチプレクスされる。H.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームは、ネットワーク・アブストラクション・レーヤ(NAL:Network Abstraction Layer)ユニット・シンタックス構造により構成される。NALユニットは、ビデオ符号化レーヤ(VCL:Video Coding Layer)及び非VCL_NALユニットに分類される。VCL_NALユニットは、ビデオ・ピクチャを表すデータを含んでいる。非VCL_NALユニットは、多数のVCL_NALユニットに供給するピクチャ・パラメータ・セット(PPS:Picture Parameter Set)及びシーケンス・パラメータ・セット(SPS:Sequence Parameter Set)の如き追加情報を含んでいる。シーケンス・パラメータ・セット(SPS)のパラメータは、フレーム数 を制限する識別子、ピクチャ・オーダー・カウント(POC)及びストリームのフレーム・レートを含んでいる。SEI_NALユニットもコード化して、有用性を強化するが、VCL_NALユニットをデコードする必要がない。
【0007】
スライス・ヘッダ及びスライス・データをデコードする前に、1つ以上のシーケンス・パラメータ・セット及びピクチャ・パラメータ・セットをデコーダに送る。コード化スライス・ヘッダは、ピクチャ・パラメータ・セットを参照し、これは、特定のピクチャ・パラメータ・セットを活性化する。他のスライス・ヘッダを参照することにより異なるピクチャ・パラメータ・セットが活性化されるまで、活性化されたピクチャ・パラメータ・セットがアクティブを維持する。同様に、ピクチャ・パラメータ・セットは、シーケンス・パラメータ・セットを活性化する識別子を参照する。異なるシーケンス・パラメータ・セットが活性化されるまで、活性化されたSPSがアクティブを維持する。
【0008】
H.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームは、コード化ビデオ・シーケンスとみなすことができる。コード化ビデオ・シーケンスは、1つ以上のアクセス・ユニットから成る。各アクセス・ユニット(AU)は、正確に1つのコード化ピクチャを常に含む1組のNALである。1次(primary)コード化ピクチャに加え、AUも1つ以上の冗長コード化ピクチャ又は他のNALユニットを含んでいるが、コード化ピクチャのスライス又はスライス・データ分割は含んでいない。AUのデコード結果は、常にデコード化ピクチャとなる。従来のアクセス・ユニットの一般的な構造を図1に示す。
【0009】
パケット化エレメンタリ・ストリーム(PES):特定目的に対して、圧縮器からオーディオ又はビデオを運ぶエンドレスの連続エレメンタリ・ストリームをPESパケットに分解する必要がある。同期用にタイム・スタンプ(PTS及びDTS)を含むヘッダにより、これらパケットを識別する。PESパケットを用いて、プログラム・ストリーム又はトランスポート・ストリームを作成する。双方向のコード化なので、圧縮後、ピクチャをシーケンスで送る。これらは、利用可能なデータ量が必要であり、マルチプレクス及び伝送のために可変遅延が条件となる。オーディオ及びビデオが互いにロックされるのを維持するために、タイム・スタンプを周期的に各ピクセルに組み込む。
【0010】
タイム・スタンプは、90KHzクロックで駆動されるカウントのサンプルである33ビットの数である。このクロックは、27MHzプログラム・クロックを300で分周して得られる。時間の表現は均等間隔なので、タイム・スタンプが全てのプレゼンテーション・ユニットに含まれるのは本質的ではない。代わりに、デコードによりタイム・スタンプを補間できるが、タイム・スタンプは、プログラム・ストリーム又はトランスポート・ストリームのいずれでも700ms以上離れてはならない。
【0011】
タイム・スタンプは、特定のアクセス・ユニットが時間的にどこであるかを示す。ビデオ及びオーディオPESパケット内のヘッダにタイム・スタンプを組み込むことにより、リップ・シンクを得る。デコードが選択PESパケットを受けると、各アクセス・ユニットをデコードし、それをRAMに緩衝する。タイム・ライン・カウントがタイム・スタンプの値に達すると、RAMを読み出す。この動作には、2つの望ましい結果がある。第1に、効果的なタイムベース補正を各エレメンタリ・ストリーム内で行える。第2に、ビデオ及びオーディオのエレメンタリ・ストリームを互いに同期して、プログラムを作成できる。
【0012】
PESパケットを固定188バイトのTSパケットに分割する。トランスポート・ストリーム(TS)パケットは、常にヘッダで始まる。パケットの残りは、ペイロードと呼ばれるデータを運ぶ。各PESは、TSパケットのペイロードを形成する。TSヘッダは、比較的小さいが、特定の目的(例えば、PCRの伝送)にとって、ヘッダを拡張してもよい。この場合、ペイロードが小さくなって、TSパケットの全体のサイズが変化しない。
【0013】
図2は、オーディオ・ストリーム及びビデオ・ストリームを単一のトランスポート・ストリームにマルチプレクスする従来の方法を示す。パケット化手段(パケッタイザ)202a及び202bは、ビデオ・エンコーダ201a及びオーディオ・エンコーダ201bからビデオ・ストリーム及びオーディオ・ストリームを夫々受ける。これらストリームをTSマルチプレクサ203でマルチプレクスして、出力にて単一のトランスポート・ストリームを得る。各アクセス・ユニットは、1次コード化ピクチャを含んでいる。1次コード化ピクチャは、Iスライス(IDRの場合にイントラ・スライスであり、スライスが整数個のマクロブロックを含む)、Pスライス(予測スライス)又はBスライス(イントラ予測を用いてデコードされたスライス)にできる。運ばれるピクチャの形式は、スライス・ヘッダのスライス形式をデコードすることにより求める。エレメンタリ・スライスがBフレームのアクセス・ユニットを含むとき、連続的なコード化Bフレームの数は、可変であり、制約がない。ビット・ストリームにおけるコード化フレームの順序は、コード化順序と呼ばれ、デコードが再構成する順序である。デコード化処理の出力での再構成フレームの順序は、表示順序と呼ばれ、常に、コーディング順と同じではない。ピクチャのデコード及び表示の順序を決めるPESヘッダにて、プレゼンテーション・タイム・スタンプ及びデコード・タイム・スタンプをコード化する。
【0014】
シーケンス・パラメータ・セットは、ビデオ・ユーザビリティ情報(VUI)も含んでいる。HRD(仮想参照デコーダ:Hypothetical Reference Decoder)パラメータは、ビデオ・ユーザビリティ情報により知らされる。HRDパラメータは、ビット・レート情報と、コード化ピクチャ・バッファ及びデコード化ピクチャ・バッファの値とを含んでいる。HRDを用いて、ビット・ストリーム及びデコーダの確認をチェックする。また、オプションとしてのSEIメッセージに沿ったHRD情報が、存在するならば、ストリーム内でコード化されたピクチャのPTS及びDTSの値の計算を支援する。更なる情報については、H.264標準の付属書Cを参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−259195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
H.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームが、コード化されたビデオ・ユーザビリティ情報(VUI)内にHRDパラメータがないとき、参考パラメータ・リストであるlist0及びlist1の数を用いて予測できる。しかし、これは、面倒な処理である。
【0017】
よって、コード化されたタイミング情報のないこれらエレメンタリ・ストリームに対して、タイミング情報を得るために、基準リストlist0及びlist1を作成する必要のない方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の概念は、以下の通りである。
(1)トランスポート・ストリーム(TS)を生成するためにコード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする方法であって;各々が次のアクセス・ユニット(AU)のタイミング情報を得ることができるように先読みできるn個のAUをリストに構成し;上記リストからAUのスタートを指示するポイントを開始し;上記リストからAUのスタートを繰り返しチェックし;上記リストの最高のAUからタイミング情報を計算してヘッダを構成し;上記TS内に上記ヘッダを書き込み;上記TSの残りのバイトを上記エレメンタリ・ストリームからのデータで埋める方法。
(2)上記n個のアクセス・ユニットを構成するステップは;上記スタートから上記エレメンタリ・ストリームを読み出す一方、単一のAUを形成するまでエレメンタリ・ストリームをパケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)に変換し、そのスタート及びエンド・ポイントを注意し;上記形成した単一のAUを上記リストにプッシュし;上記リストにプッシュされた上記AUでコード化された1次ピクチャの形式をチェックし;プレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)及びデコード・タイム・スタンプ(DTS)を含むタイミング情報を計算して、上記エレメンタリ・ストリーム用に可変フレーム・レート(tc)を導出し;上記1次ピクチャ・コード化形式がBフレームならば、dts(n)=dts(n-1)+tc及びpts(n)=dts(n)を計算し;Bフレームのpts及びdtsの間の任意のオフセットを含むことなく同時点にBフレームをデコードすると共に表示し;上記1次ピクチャ・コード化形式がI又はPフレームならば、dts(n)=dts(n-1)+tc及びpts(n)=dts(n)+ps_offset*tcを計算して、次のI又はPフレームが発生する前に先立つBフレームの数(pts_offset)用の次のアクセス・ユニットをチェックし;タイミング情報を計算するためのステップを繰り返すために次のAUを構成して上記次のAUを上記リストにプッシュすることを特徴とする概念1の方法。
(3)上記高分解能エレメンタリ・ストリームは、H.264/AVCビデオ・エレメンタリ・ストリームである概念1の方法。
(4)上記TSは、MPEG−2TSである概念1の方法。
(5)上記マルチプレクスは、コード化されたNAL/VCL−HRDパラメータ(シーケンス・パラメータ・セットのVUI情報の一部として)又はサプレメンタル・エンハンスメント情報(SEI)のいずれもないH.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームの遅延時間マルチプレクスである概念1の方法。
(6)ピクチャ形式(B、P又はI)情報を用いて、パケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)のPTS及びDTS値を計算する概念2の方法。
(7)可変tcは、フレーム又はフィールド・レートであり、tc=num_units_in_tick/time_scaleとして導出される概念2の方法。
(8)PESパケットが固定188バイトTSパケットに分解される概念2の方法。
(9)トランスポート・ストリーム(TS)を生成するためにコード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする装置であって;各々が次のアクセス・ユニット(AU)のタイミング情報を得ることができるように先読みできるn個のAUをリストに構成する手段と;上記リストからAUのスタートを指示するポイントを開始えする手段と;上記リストからAUのスタートを繰り返しチェックする手段と;上記リストの最高のAUからタイミング情報を計算してヘッダを構成する手段と;上記TS内に上記ヘッダを書き込む手段と;上記TSの残りのバイトを上記エレメンタリ・ストリームからのデータで埋める手段とを具えた装置。
(10)上記n個のアクセス・ユニットを構成する手段は;上記スタートから上記エレメンタリ・ストリームを読み出す一方、単一のAUを形成するまでエレメンタリ・ストリームをパケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)に変換し、そのスタート及びエンド・ポイントを注意し;上記形成した単一のAUを上記リストにプッシュし;上記リストにプッシュされた上記AUでコード化された1次ピクチャの形式をチェックし;プレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)及びデコード・タイム・スタンプ(DTS)を含むタイミング情報を計算して、上記エレメンタリ・ストリーム用に可変フレーム・レート(tc)を導出し;上記1次ピクチャ・コード化形式がBフレームならば、dts(n)=dts(n-1)+tc及びpts(n)=dts(n)を計算し;Bフレームのpts及びdtsの間の任意のオフセットを含むことなく同時点にBフレームをデコードすると共に表示し;上記1次ピクチャ・コード化形式がI又はPフレームならば、dts(n)=dts(n-1)+tc及びpts(n)=dts(n)+ps_offset*tcを計算して、次のI又はPフレームが発生する前に先立つBフレームの数(pts_offset)用の次のアクセス・ユニットをチェックし;タイミング情報を計算するためのステップを繰り返すために次のAUを構成して上記次のAUを上記リストにプッシュすることを特徴とする概念9の装置。
(11)上記高分解能エレメンタリ・ストリームは、H.264/AVCビデオ・エレメンタリ・ストリームである概念9の装置。
(12)上記TSは、MPEG−2TSである概念9の装置。
(13)上記マルチプレクスは、コード化されたNAL/VCL−HRDパラメータ(シーケンス・パラメータ・セットのVUI情報の一部として)又はサプレメンタル・エンハンスメント情報(SEI)のいずれもないH.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームの遅延時間マルチプレクスである概念9の装置。
(14)ピクチャ形式(B、P又はI)情報を用いて、上記パケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)の上記PTS及びDTS値を計算する概念10の装置。
(15)可変tcは、フレーム又はフィールド・レートであり、tc=num_units_in_tick/time_scaleとして導出される概念10の装置。
(16)PESパケットが固定188バイトTSパケットに分解される概念10の装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の目的は、コード化されたタイミング・パラメータのない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームの遅延時間マルチプレクスに適用できるメカニズムの提供にある。
【0020】
本発明の他の目的は、ビデオ・エレメンタリ・ストリームの効果的なマルチプレクスを行ってトランスポート・ストリーム(TS)を発生する方法の提供にある。
【0021】
よって、本発明の実施例は、コード化されたタイミング情報がなくてもエレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする装置及び方法の提供にある。
【0022】
いくつかの実施例において、n個のアクセス・ユニット(AU)を構成して1つずつリストにプッシュする。各アクセス・ユニットは、先読みして、次のアクセス・ユニット用のタイミングで情報を得ることができる。リストの最上のアクセス・ユニットからタイミング情報を計算して、ヘッダを構成する。このヘッダをTSに書き込み、TSの残りのバイトをエレメンタリ・ストリームからのデータで埋める。よって、トランスポート・ストリームを構成する。
【0023】
いくつかの実施例において、アクセス・ユニットの各々でコード化された1次ピクチャ形式を繰り返しチェックして、各々のプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)及びデコード・タイム・スタンプ(DTS)を含むタイミング情報を計算する。よって、可変フレーム・レート(tc)をエレメンタリ・ストリーム用に導出する。
【0024】
コード化された1次ピクチャ形式がBフレームならば、DTSであるdts及びPTSであるptsを次のように計算する。
dts(n)=dts(n-1)+tc
pts(n)=dts(n)
Bフレームのpts及びdtsの間にいなかるオフセットを含むことなく、同時点にBフレームをデコードし表示する。
【0025】
P及びI形式のピクチャ・フレームに対して、dts及びptsを次のように計算する。
dts(n)=dts(n-1)+tc
pts(n)=dts(n)+pts_offset*tc
次に、次のI又はPフレームが生じる前に先んずるBフレームの数(pts_offset)に対してアクセス・ユニットをチェックする。
【0026】
本発明のその他の特徴は、添付図を参照した以下の説明から明らかになろう。
【0027】
本発明の実施例を添付図に示し、これについて説明する。これら図は、説明のためであり、本発明を限定するものではない。これら実施例により本発明を一般的に説明するが、本発明の要旨をこれら特定の実施例に限定するものではないことが理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のアクセス・ユニットの一般的な構造を示す。
【図2】オーディオ及びビデオを単一のトランスポート・ストリームにマルチプレクスする従来の方法を示す。
【図3】本発明の実施例を説明する流れ図である。
【図4】本発明の実施例により高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをトランスポート・ストリームにマルチプレクスする方法を示す流れ図である。
【図5】本発明の実施例によるマルチプレクス装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで説明する本発明の装置及び種々の方法は、トランスポート・ストリーム(TS)を作成するために、コード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする。いくつかの実施例において、n個のアクセス・ユニット(AU)を構成して、1つずつリストにプッシュする。各アクセス・ユニットは、先読み(look ahead)をして、次のアクセス・ユニット用のタイミングの情報を得ることができる。リストの最上アクセス・ユニットからのタイミング情報を計算することにより、ヘッダを構成する。このヘッダをTSに書き込み、TSの残りのバイトをエレメンタリ・ストリームからのデータで埋める。よって、トランスポート・ストリームを構成する。
【0030】
上述の如く、本発明の実施例は、コード化されたタイミング・パラメータ(パラメータ情報)のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームの遅延時間マルチプレクスに適用できるメカニズムを提供するものである。
【0031】
図3を参照して、本発明の方法の実施例を説明する。本発明の方法は、基準リストlist0及びlist1(標準に記述される如き)を構成することなく、デコード処理内のフレーム再順序化する方法である。ビデオ・シーケンスがBフレームを含んでいないとき、コード化順序は、常に表示順序と同じである。Bスライスの発生は、ビデオ・フレームのコード化順序が表示順序と異なることを意味する。コード化フレームのマルチプレクスされた順序が変化しないということは、これらに関連したPTS値が1ビットだけアップ・ダウンのジャンプをする。
【0032】
[計算タイム・スタンプの先読み方法]
図3は本発明の実施例による先読み方法の流れ図を示す。この先読み方法は、n個のアクセス・ユニット(AU)のリストを維持し、アクティブAUをマルチプレクスに用いる。ステップ301及び開始において、リストを空にする。エレメンタリ・ストリームをパケット化エレメンタリ・ストリームに変換する間、スタート・ポイントに注意する。ステップ302にて、単一のアクセス・ユニットを形成するまで、エレメンタリ・ストリームをスタートから読み出す。ステップ302にてエンド・ポイントにも注意する。
【0033】
アクセス・ユニットは、データの小さなロジック単位を表すエレメンタリ・ストリームのセグメントである。しばしば、エレメンタリ・ストリームの他の部分を参照することなく、アクセス・ユニットを直接用いることができる。例えば、ビデオの単一フレームは、アクセス・ユニットでもよく、又は、デコードの際、32ms期間を表すファイルの部分でもよい。
【0034】
いくつかの実施例において、アクセス・ユニットの各々でコード化された1次ピクチャ形式を繰り返しチェックして、各々に対してプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)及びデコード・タイム・スタンプ(DTS)を含むタイミング情報を計算する。また、可変フレーム・レート(tc)をエレメンタリ・ストリーム用に導出する。ステップ303において、B形式1次ピクチャ形式用に各AUをチェックするので、次のステップにてPTS及びDTS値を計算できる。
【0035】
PTS及びDTS値を計算するために、まず、可変tc(又は場合に応じて、フレーム・レート/フィールド・レート)を次のように導出し、これをクロック・チックと呼ぶ。なお、DTS及びPTSは、大文字表記も小文字表記も同様として扱う。
tc=num_units_in_tick/time_scale,
n=0,
dts(n-1)=0
pts(n-1)=0(アクセスAUリストが空のため)
「num_units_in_tick」及び「time_scale」は、アクティブ・シーケンス・パラメータ・セットのビデオ・ユーザビリティ情報の一部である。
【0036】
シーケンス・パラメータ・セットがアクティブ・ピクチャ・パラメータ・セットでコード化された識別子に応じてアクティブになるので、値tcを変化させることができ、これはストリームを通じて固定で残らない。
【0037】
単一のアクセス・ユニットを形成した後、これをアクティブAUリスト(ActiveAUlist)にプッシュする。リストにプッシュされたアクセス・ユニットでコード化されたピクチャに応じて、ストリーム内に生じる次のフレームを見つけるか否かを判断する。上記のステップ303にて説明したように、B形式1次ピクチャ形式用に各AUをチェックする。形成されたAUでコード化された1次ピクチャがBフレームならば、ステップ305にて、DTS及びPTSを次のように計算する。なお、DTS及びPTSは、大文字表記も小文字表記も同様として扱う。
dts(n)=dts(n-1)+tc
pts(n)=dts(n)
Bフレームを同時にコード化し、表示する。Bフレームのpts及びdtsの間にオフセットがない。
【0038】
ステップ304において、AUのエンド・ポイントに注意し、PTSオフセットをゼロに設定する。ステップ306にて、他のフレームI又はPに対して次のアクセス・ユニットを構成する。そして、ステップ307にて、次のI又はPフレームが生じる前に先立つBフレームの数(pts_offset)のに対して、次のAUをチェックする。この情報が利用可能ならば、ステップ308にて、DTS及びPTSを次のように計算する。なお、DTS及びPTSは、大文字表記も小文字表記も同様として扱う。
dts(n)=dts(n-1)+tc
pts(n)=dts(n)+pts_offset*tc
【0039】
ステップ309にて、ファイル・ポインタをアクセス・ユニット(n)のエンドに戻して蓄積し、これをアクティブAUリストにプッシュする。これは、アクセス・ユニットを形成する1つの繰り返しである。次の繰り返しに対して、ステップ310にて、nの値を1だけ増分し(N=n+1)、ステップ301〜309を繰り返す。
【0040】
SPSのVUIシンタックス・エレメントの一部としてのHRDパラメータのないストリームに対して、この先取り方法が続く。SPSの一部としてのHRD情報を運ぶストリームに対して、SEI情報及びHRDパラメータ(コード化されたNal hr dor vel hrd)を用いて、タイミング情報を計算する。アクセス・ユニット用のタイミングを計算するための式に対する一般的なオーディオビジアル・サービス用のITU−T_H.264アドバンスド・ビデオ・コード化の添付Cを参照されたい。
【0041】
この先読み方法を用いて形成したアクティブAUリストをマルチプレクスに用いる。図4は、本発明の実施例によりH.264エレメント・ストリームをトランスポート・ストリームにマルチプレクスする方法を示す。
【0042】
図4を参照する。ステップ401にて、リストのトップ・エレメントは、トランスポート・ストリームに書き込むべきアクセス・ユニット(AU)を含んでいる。ステップ402にて、AUのスタートをチェックする。ステップ403にて、AUがTSパケットにてスタートすると、ペイロード・ユニット・スタート(payload_unit_start)指標が真(1)にマークされ、ステップ404にて、TSヘッダがTSパケットに書き込まれる。これは、TSペイロードがPESスタートを含むことを示す。よって、ステップ405にて、AUのスタートを再チェックする。AUのスタートが真であるとわかると、ステップ406にてPESヘッダがTSパケットに書き込まれる。これは、TSペイロードの第1バイトがPESヘッダの値スタート・バイトを含まなければならないためである。そして、ステップ407にて、AUのスタートを偽に設定する。この場合、TSペイロードのサイズを1バイトだけ減少させる。よって、読み出しバイトがステップ408で次のように計算される。
[読み取りバイト]=188−[TSヘッダ・サイズ]−[PESヘッダ・サイズ]
ステップ409にて、読み取りバイトをファイルからTSパケットに書き込む。アクティブAUリストのトップ・エレメントからのPTS及びDTS値により、PESヘッダを構成する。このPESヘッダがTSペイロードに含まれる。TSペイロードの残りのバイトをH.264アクセス・ユニットで埋める。よって、ステップ410にて、最上AUのエンドをチェックする。最上AUのエンドが真であると、ステップ411にてAUのスタートを偽に設定し、TS構成の1つの繰り返しを終わらせる。その後の繰り返しに対して、ステップ411にてn(図4ではNにて示す)の値を1だけ増分して(N=N=1)、ステップ401〜410を繰り返す。
【0043】
図5は、本発明の実施例によるマルチプレクス装置のブロック図である。この装置501は、トラス・ストリーム(TS)を生成するために、コード化されたタイミング情報がない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスする回路502を具えている。回路502は、n個のアクセス・ユニット(AU)をリストに構成できる。先読みして次のAU用のタイミングの情報が得られるように、各AUが構成される。この回路502は、リストからのAUのスタートを示すポインタを開始させ、リストからのAUのスタートを繰り返しチェックし、リストの最上AUからのタイミング情報を計算してヘッダを構成し、ヘッダをTSに書き込む。TSの残りのバイトをエレメンタリ・ストリームからのデータで埋める。
【0044】
装置501の回路502は、ペイロード・ユニット・スタート指標(payload_unit-start_indiator)を真としてチェックできるように最上AUのスタートを付勢(イネーブル)し、このペイロード・ユニット・スタート指標を真としてマークする。回路502は、TSパケット内にTSヘッダを書き込めるようにも付勢する。これは、TSペイロードがPESスタートを含んでいることを示す。よって、回路502は、AUのスタートを再度チェックする。AUのスタートが真であるとわかると、PESヘッダをTSパケットに書き込む。これは、TSペイロードの第1バイトがPESヘッダの値スタート・バイトを含まなければならないためである。次に、回路502は、AUのスタートを偽に設定する。この場合、TSペイロードのサイズは、1バイトだけ減る。よって、読み取りバイト(Readbytes)を次のように計算する。
[読み取りバイト]=188−[TSヘッダ・サイズ]−[PESヘッダ・サイズ]
回路502は、更に読み取りバイトがファイルからTSパケットに書き込まれるように付勢する。アクティブAUリストのトップ要素からのPTS及びDTSにより、PESヘッダを構成する。このPESヘッダがTSペイロードに含まれる。そして、TSペイロードの残りのバイトは、H.264アクセス・ユニットにより埋める。よって、最上位AUのエンドをチェックする。この最上位AUのエンドが真であると、装置の回路502により、AUのスタートを偽に設定してTS構成の1つの繰り返しを終了する。その後の繰り返しとTS構成のために、nの値を1だけ増分する。
【0045】
[本発明のアプリケーション]
ここで説明した種々の実施例を用いて、H.264エレメンタリ・ストリームの有効なマルチプレクスを行って、MPEG−2トランスポート・ストリーム(TS)を発生できる。これらをH.264ビデオ・エレメンタリ・ストリームの遅延時間マルチプレクスにて適用できる。これは、コード化NAL/VCL−HRDパラメータ(シーケンス・パラメータ・セットのVUI情報の一部として)又はサプレメンタル・エンハンスメント情報(SEI:Supplemental Enhancement Information)のいずれもない。H.264エレメンタリ・ストリームの各アクセス・ユニット(AU)は、ファイル内の次のアクセス・ユニットのピクチャ形式に関する情報に対して先読みできる。このピクチャ形式情報を用いて、パケット化エレメンタリ・ストリーム(PES)のPTS及びDTS値を計算できる。次に、各AUをPESパケットにパケット化して、TSパケットのストリームに分解できる。
【0046】
理解を助けるために、本発明の特定の実施例について詳細に説明した。しかし、当業者は、これら特定実施例を用いなくても、本発明を実現できよう。本発明は、ハードウェアでもソフトウェアでも実現できる。ブロック図に示した構成及び装置は、本発明の実施例を説明するためであり、本発明が曖昧になるのを防ぐためである。また、種々の要素の間の接続が直接的である必要はなく、中間的なデータ伝送をエンコード、再フォーマット又は変調してもよい。
【0047】
本明細書で一実施例又は実施例と呼んでいるのは、実施例に関連して説明した特定の特徴、構造、特性又は機能が本発明の少なくとも一実施例に含まれる。本明細書にて、各実施例における装置は、全てが同じ構成である必要はない。
【0048】
よって、本発明に関する上述の説明は、本発明を明確にし理解しやすくするためのものであり、本発明をこれら実施例そのものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
201 ビデオ・エンコーダ
202 パケット化手段
203 トランスポート・ストリーム・マルチプレクサ
502 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスしてトランスポート・ストリーム(TS)を生成する方法であって、
各々が次のアクセス・ユニット(AU)のタイミング情報を得ることができるように先読みできるn個のAUをリストに構成し、
上記リストからAUのスタートを指示するポイントを開始し、
上記リストからAUのスタートを繰り返しチェックし、
上記リストの最高のAUからタイミング情報を計算してヘッダを構成し、
上記TS内に上記ヘッダを書き込み、
上記TSの残りのバイトを上記エレメンタリ・ストリームからのデータで埋めることを特徴とする方法。
【請求項2】
コード化されたタイミング情報のない高分解能ビデオ・エレメンタリ・ストリームをマルチプレクスしてトランスポート・ストリーム(TS)を生成する装置であって、
各々が次のアクセス・ユニット(AU)のタイミング情報を得ることができるように先読みできるn個のAUをリストに構成する手段と、
上記リストからAUのスタートを指示するポイントを開始する手段と、
上記リストからAUのスタートを繰り返しチェックする手段と、
上記リストの最高のAUからタイミング情報を計算してヘッダを構成する手段と、
上記TS内に上記ヘッダを書き込む手段と、
上記TSの残りのバイトを上記エレメンタリ・ストリームからのデータで埋める手段と
を具えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−109665(P2011−109665A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256962(P2010−256962)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(503050951)テクトロニクス・インターナショナル・セールス・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】