説明

コード巻取り装置

【課題】 従来のコード巻取り装置は、可動接点であるスリップリングによる信号伝達方式であるため、磨耗によるスリップリングの交換、経年変化による接点の導通不良、接点によるコード巻取り装置自体の許容電流の制限があった。
【解決手段】 コード巻取り装置に内蔵されている、コード巻取り力を発生させるためのゼンマイバネを周囲に対して電気的に絶縁した状態で取付け、このゼンマイバネを信号伝達手段として利用してスリップリングを不要とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの伸縮ブーム等の伸縮部材間の信号伝達手段として用いられるコード巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮するクレーンブームの先端部と基端部との間での電気的な信号伝達を可能とするために、信号伝達用コードのコード巻取り装置が使用されているが、コード巻取り装置の基台部分と回転部分との信号伝達にはスリップリングを用いている。なお、クレーンに用いられるコード巻取り装置に限らず、基台部分と回転部分との信号伝達にスリップリングを用いることは従来既知である(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
今、クレーンに用いられるコード巻取り装置の従来の構造を図5、図6に示す。
基台1に取付けられた固定軸2にドラム4が回転自在に取付けられている。このドラム4の内部には巻取りコード5を巻取るドラム4に回転力を発生させるゼンマイバネ3が取付けられている。このゼンマイバネ3はその一端が固定軸2に、他端がドラム4の巻胴4aの内側適所に固定され、ドラム4が回転することによって発生する固定軸2との回転差をゼンマイバネ3の内部応力として蓄え、これによりドラム4に回転力を発生させるよう構成されている。ドラム4の巻胴4aの外周には信号伝達用の巻取りコード5が巻かれており、この巻取りコード5は基台1の開口部10より外部に引き出し出来るよう構成されている。
【0004】
ドラム4の一方の側板4bにはドラム4と同時に回転するスリップリング7がその側板4bと電気的に絶縁した状態で取付けられており、スリップリング7にはドラム4の巻胴4aに巻かれた巻取りコード5の導線の一端が接続されている。基台1には接点8が常にスリップリング7に接触して導通を維持するよう取付けられている。接点8には信号を基台1の外部に取出すためのリード線6が取付けられている。
以上の構成により、電気信号は巻取りコード5、スリップリング7、接点8、リード線6と伝達し、ドラム4が回転した場合でも電気信号の伝達を可能にしている。
なお、この例はスリップリング7が一個、巻取りコード5の信号線が一本の場合の説明であるが、スリップリング7、巻取りコード5の信号線の数をそれぞれ増やして複数の信号を伝達するようにしたものも従来既知である。
【特許文献1】実開昭63−56164号公報
【特許文献2】特開平5−245078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スリップリングは、可動接点による信号伝達であるため磨耗による交換が必要となり、また経年変化により接点の導通不良が発生するという問題がある。さらに一般的に接点部の接触による電気抵抗は導線部の電気抵抗より大きくなるため、接点の存在によりコード巻取り装置の許容電流が制限されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、コード巻取り装置に内蔵されているコード巻取り力を発生させるためのゼンマイバネを信号伝達手段として使用するよう構成してスリップリングを不要としたもので、その要旨とするところは、固定軸と、この固定軸に回転自在に取付けたドラムと、固定軸とドラムとの間に介装してドラムに回転力を発生させるゼンマイバネと、ドラムの外周に巻かれ、信号線となる導線を非導電部材で被覆した巻取りコードとを具えたコード巻取り装置であって、前記ゼンマイバネの内端を前記固定軸に、前記ゼンマイバネの外端を前記ドラムに、それぞれ電気的に絶縁した状態で取付け、ゼンマイバネの外端とドラムとの取付部のゼンマイバネの適所に巻取りコードの導線の一端を取付け、ゼンマイバネの内端と固定軸との取付部のゼンマイバネの適所にリード線の一端を取付けて、ゼンマイバネを、巻取りコードの導線とリード線とを通電する信号伝達手段としても使用したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコード巻取り装置では、スリップリングの可動接点を有しないため、スリップリングの磨耗による交換の必要がなく、また経年変化による接点の導通不良が発生することがない。さらにコード巻取り装置の定格電流をより大きく設定することが可能となる。同時に、構造を簡素化でき、スリップリングのスペースが不要となることで、安価、装置の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態(図1,2)
基台1に取付けられた固定軸2を回転中心として、ドラム4が回転自在に取り付けられている。ドラム4の内部には、コードを巻き取るための回転力を発生させるゼンマイバネ3が取付けられている。ゼンマイバネ3は、その一端が固定軸2に、他端がドラム4の巻胴4aの内側に、それぞれ後述するような取付方法で固定され、ドラム4が回転することによって発生する固定軸2との回転差をゼンマイバネ3の内部応力として蓄えるよう構成されている。
【0009】
固定軸2は、表面が絶縁材9で覆われてゼンマイバネ3と接触しても電気的に導通することが無いよう処理され、またゼンマイバネ3の内端は固定軸2と絶縁ブッシュ11を介して固定ピン12で固定されている。従ってゼンマイバネ3は固定軸2と電気的に絶縁した状態で固定軸2に取付けられている。
【0010】
ドラム4は、内面が絶縁材9で覆われてゼンマイバネ3と接触しても電気的に導通することが無いよう処理され、またゼンマイバネ3の外端はドラム4の巻胴4aの内側と絶縁ブッシュ13を介して固定ピン14で固定されている。従ってゼンマイバネ3はドラム4と電気的に絶縁した状態でドラム4に取付けられている。
なお、固定軸2とドラム4とを樹脂等の絶縁体で構成してもよい。この場合、固定軸2の表面及びドラム4の内面を絶縁材で覆ったり、絶縁ブッシュを用いる必要はない。
【0011】
本発明の第2の実施形態(図3)
この実施形態は、巻取りコードが2本の信号線(導線)を有する場合において、本発明の第1の実施形態(図1,2)に、ゼンマイバネを2個用いて、この2個のゼンマイバネ3a,3bを介して2つの信号を伝達するようにした例である。
基本的な構造は第1の実施形態と同じであるが、相違する点は、巻取りコード5wが2本の信号線(導線)を有し、2個のゼンマイバネ3a,3bを有し、2つのリード線6a,6bを有し、さらに2個のゼンマイバネ3a,3bの間に絶縁板15を取付け、2個のゼンマイバネ3a,3b同士を絶縁している点である。
巻取りコードの信号線(導線)が2本以上の場合には、それに応じてゼンマイバネ等を増やすことで対応することが出来る。
なお、巻取りコード5wは、複数の信号線(導線)を1本に纏めた同軸線あるいは多芯線で構成されている。
【0012】
本発明の第3の実施形態(図4)
この実施形態は、巻取りコードが2本の信号線(導線)を有する場合に、1本の信号線(導線)は従来のスリップリングによる信号伝達方式で、他の1本の信号線(導線)は、実施形態1のゼンマイバネによる信号伝達方式としたものである。従来のスリップリング方式のコード巻取り装置に絶縁材9等を追加工することにより、対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るコード巻取り装置の第1の実施形態の側面断面図である。
【図2】図1のA―A断面図である。
【図3】本発明に係るコード巻取り装置の第2の実施形態の側面断面図である。
【図4】本発明に係るコード巻取り装置の第3の実施形態の側面断面図である。
【図5】従来のコード巻取り装置の側面断面図である。
【図6】図5のB―B断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 基台
2 固定軸
3 ゼンマイバネ
4 ドラム
5 巻取りコード
6 リード線
7 スリップリング
8 接点
9 絶縁材
11 絶縁ブッシュ
12 固定ピン
13 絶縁ブッシュ
14 固定ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸と、この固定軸に回転自在に取付けたドラムと、固定軸とドラムとの間に介装してドラムに回転力を発生させるゼンマイバネと、ドラムの外周に巻かれ、信号線となる導線を非導電部材で被覆した巻取りコードとを具えたコード巻取り装置であって、前記ゼンマイバネの内端を前記固定軸に、前記ゼンマイバネの外端を前記ドラムに、それぞれ電気的に絶縁した状態で取付け、ゼンマイバネの外端とドラムとの取付部のゼンマイバネの適所に巻取りコードの導線の一端を取付け、ゼンマイバネの内端と固定軸との取付部のゼンマイバネの適所にリード線の一端を取付けて、ゼンマイバネを、巻取りコードの導線とリード線とを通電する信号伝達手段としても使用したことを特徴とするコード巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−56706(P2006−56706A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243244(P2004−243244)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】