コード状ヒータセット梱包用治具およびそれを用いた梱包体並びにコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法
【課題】電気式床暖房パネルを作るときに、木質基材の裏面に形成した配線溝内へ埋め込まれるコード状ヒータセットの物流を容易化するコード状ヒータセット梱包用治具を提供する。
【解決手段】梱包用治具は、電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部Rに対応する箇所にピン42を立設した梱包用基台40と、前記ピン42が通過できる貫通孔を備えた仕切板50とで構成される。梱包用治具に仕切板50を組み付けた後、ピン42をガイドとして、コード状ヒータセット10を配線溝のパターンに沿うようにして展開する。そのようにして作られたコード状ヒータセット梱包体Bが電気式床暖房パネル1の組み立て現場に持ち込まれる。
【解決手段】梱包用治具は、電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部Rに対応する箇所にピン42を立設した梱包用基台40と、前記ピン42が通過できる貫通孔を備えた仕切板50とで構成される。梱包用治具に仕切板50を組み付けた後、ピン42をガイドとして、コード状ヒータセット10を配線溝のパターンに沿うようにして展開する。そのようにして作られたコード状ヒータセット梱包体Bが電気式床暖房パネル1の組み立て現場に持ち込まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の裏面に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルを製造する過程で好適に用いられる、コード状ヒータセットのための梱包用治具およびそれを用いた梱包体、並びに前記梱包体で搬入されたコード状ヒータセットを電気式床暖房パネルへ組み付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、木質基材2の裏面に形成した配線溝3内にコード状ヒータセット10を埋め込んだ形式の電気式床暖房パネル1は知られている(特許文献1等参照)。コード状ヒータセット10は、発熱体としてのコード状ヒータ11と、コード状ヒータ11に通電するための電源線12と、電源線12の両端に取り付けたコネクタ13と、コード状ヒータ11の適所に取り付けたサーモスタット14、等で構成される。
【0003】
通常、配線溝3を形成した木質基材2とコード状ヒータセット10とは異なった場所で作られ、コード状ヒータセット10が木質基材2を製造する側に送られて、そこで両者を電気式床暖房パネル1として一体に組み付ける作業が行われる。コード状ヒータ11は長さの長いものであり、物流の利便性を考慮して、図11のように、コード状ヒータセット10全体を適当な大きさのループ状に巻き込み、その中央を輪ゴムやリボン15で結束した後、適宜の包装資材で包装したものを作り、その複数個を別の梱包資材を用いて一つの梱包体として、組み付け場所への物流に付している。
【特許文献1】特開2005−120810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気式床暖房パネルの組み立て現場では、組み付け作業を行う前に、包装したコード状ヒータセット10を梱包体から取り出し、包装を解いた後、リボン15等の結束部を外し、その後、配線溝3への埋め込み作業を容易化するために、各部材要素が絡み合わないようにコード状ヒータセット10を直線状に伸ばしていく作業を必要とする。そのために、それに対応した広い作業スペースが必要となっている。
【0005】
また、引き伸ばしたコード状ヒータセット10を木質基材2の裏面に形成した配線溝3の溝パターンに一致するように順次折り曲げながら配線溝3の中に押し込んでいくことが必要であり、その作業量も大きく長い組み立て時間を要している。
【0006】
さらに、コード状ヒータセット10の包装あるいは梱包に用いた資材は、使用後に廃棄されるのが普通であり、廃棄物低減の観点からも改善すべき余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、木質基材の裏面に形成した配線溝へコード状ヒータセットを埋め込んでいく作業を容易かつ迅速化でき、かつ作業後に出る廃棄物量も低減することのできる、コード状ヒータセット梱包用治具とそれを用いた梱包体を提供することを第1の課題とする。また、その梱包体で搬入されたコード状ヒータセットを電気式床暖房パネルへ組み付ける方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の第1の発明であるコード状ヒータセット梱包用治具は、裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルで用いる前記コード状ヒータセットのための梱包用治具であって、電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部に対応する箇所にピンを立設した梱包用基台と、少なくとも前記複数本のピンが立設された領域を覆うことができる面積を有しかつ前記ピンか通過できる貫通孔を備える1枚以上の仕切板と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本出願の第2の発明であるコード状ヒータセット梱包体は、上記のコード状ヒータセット梱包用治具を用いた梱包体であって、前記梱包用基台と、前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で配置された前記仕切板とその仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットとからなる組み合わせ体の少なくとも1組と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項4)。
【0010】
本出願の第3の発明であるコード状ヒータセット梱包体の製造方法は、上記ののコード状ヒータセット梱包用治具を用いたコード状ヒータセット梱包体の製造方法であって、前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で前記仕切板を前記梱包用基台に取り付ける工程と、取り付けた前記仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開しながらコード状ヒータセットを配置する工程と、前記展開して配置したコード状ヒータセットに通電してコード状ヒータを発熱させてコード状ヒータセットに加熱による保形処理を施す工程と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項7)。
【0011】
本出願の第4の発明であるコード状ヒータセットの組み付け方法は、上記したコード状ヒータセット梱包体を用いて電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで組み付けるコード状ヒータセットの組み付け方法であって、上記したコード状ヒータセット梱包体から前記組み合わせ体を持ち上げるようにして前記梱包用基台から取り外し、それを電気式床暖房パネルの裏面の上に、そこに形成された配線溝パターンとコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するようにして置き、前記仕切板を除去した後、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込むことを特徴とする(請求項8)。
【0012】
本発明において、前記コード状ヒータセット梱包用治具は、コード状ヒータセットを製造する側とそれを電気式床暖房パネルに組み込む側との間での通い治具として、多数回に亘り繰り返して用いられる。そのために、物流時あるいは物流後に廃棄処分される量を大きく低減することができ、環境に優しいものとなる。
【0013】
コード状ヒータセットを製造する側では、最初に、1枚の仕切板(材料は、樹脂板や厚紙、段ボール等であってよい)を梱包用基台に立設したピンにその貫通孔に貫通させた状態で、梱包用基台上に取り付ける。次に、仕切板から上方に突出しているピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように1つのコード状ヒータセットを展開配置する。それにより、本発明でいう、仕切板とコード状ヒータセットの組み合わせ体が1つできあがる。必要な場合には、その上に、2枚目の仕切板を1枚目と同じようにして置き、その上にコード状ヒータセットを同じようにして配置する。それにより、2つ目の組み合わせ体ができあがる。以下、必要な個数だけ、組み合わせ体を順次積み上げるようにして形成する。それにより、本発明でいう、梱包体が完成する。
【0014】
なお、仕切板は全体が1枚物であってもよく、複数に分割した(例えば2分割した)分割片の組み合わせによって1枚の仕切板を構成するようにしてもよい。
【0015】
上記のように仕切板の上に展開配置したコード状ヒータセットのうち、特にコード状ヒータには、ピンをガイドとしての曲げを受けたときに、元の姿勢に戻ろうとする内部応力が発生する。この内部応力を解消するのが、上記した本出願の第3の発明であるコード状ヒータセット梱包体の製造方法の目的である。この加熱処理により、特にコード状ヒータには、電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致したパターンでの保形処理が施される。
【0016】
前記の梱包体が物流機構に乗せられて、コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルに組み込む側に送られる。受け取った側では、包装を解き、梱包体から1つの前記組み合わせ体を持ち上げるようにして取り外し、それを裏面側を上面とした姿勢で置いてある電気式床暖房パネルの上に置く。電気式床暖房パネルの配線溝パターンと仕切板上でのコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するように位置決めをした後、仕切板を静かに引き抜く。
【0017】
仕切板を引き抜くことにより、コード状ヒータセットは、その全体が電気式床暖房パネルに形成された配線溝に沿って展開した状態で、電気式床暖房パネルの裏面上に置かれた状態となる。複数の分割片の組み合わせによって1枚の仕切板を構成している場合には、各分割片毎に引き抜くことにより、一層、展開パターンを崩すことなく、仕切板の引き抜きを行うことができる。
【0018】
その後、作業者は展開しているコード状ヒータセットを配線溝内に埋め込む作業を行うが、前記のように、コード状ヒータセットは配線溝に沿うようにして予め置かれているので、埋め込み作業は極めて容易であり、かつ迅速に行うことができる。コード状ヒータセットに熱による保形処理が施されている場合には、一層、埋め込み作業は容易となる。また、従来のように束状に巻き込まれた状態のコード状ヒータセットを直線状に展開する作業、およびそのためのスペースを確保することも不要となる。
【0019】
なお、本発明において、コード状ヒータセットの形態に制限はなく、従来の電気式床暖房パネルで用いられてきた任意のコード状ヒータセットであってよい。コード状ヒータと電源線とコネクタとからなるもの、さらにサーモスタットや温度ヒューズ等の保安機器を備えるもの、等任意である。
【0020】
好ましくは、前記コード状ヒータセット梱包用治において、前記梱包用基台は前記コード状ヒータセットの一部を係止できる係止部材をさらに立設しており、前記仕切板は前記係止部材のための第2の貫通孔をさらに備えるようにされる。
【0021】
この形態のコード状ヒータセット梱包用治具を用いて前記梱包体を作る場合には、コード状ヒータセットの一部、好ましくは一方の端部、を前記係止部材に係止させた状態で、コード状ヒータセットをピンに沿って展開することが可能となり、コード状ヒータセットの展開作業が容易化する。また、他方の端部あるいはその近傍をやはり係止部材を利用して係止できるようにすれば、梱包体としての姿勢がさらに安定化し、物流の途中でコード状ヒータセットがピンから外れてしまうような事態が生じるのを回避できる。なお、係止部材の形状は任意であり、複数本のピンにより係止部材を構成してもよい。
【0022】
好ましくは、前記コード状ヒータセット梱包用治において、コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むようにされる。
【0023】
この態様のコード状ヒータセット梱包用治具を用いて前記梱包体を作る場合、好ましくはコード状ヒータセットのコード状ヒータに前記パッキン材を嵌め込んだ状態で梱包体とする。また、電気式床暖房パネルの配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んでいくときに、必要箇所において前記パッキン材と共にコード状ヒータを配線溝内に埋め込むようにする。このようなパッキン材を用いることにより、コード状ヒータを配線溝内へ安定した状態で埋め込むことができる。
【0024】
好ましくは、前記したように、コード状ヒータセット梱包体において、前記仕切板の上に配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットは、展開配置後に加熱による保形処理が施されたコード状ヒータセットとされる。それにより、前記した配線溝内にコード状ヒータを埋め込む作業が、一層、容易化する。
【0025】
前記梱包体が複数個(例えば、20組程度)の前記組み合わせ体を有する場合には、上から順に組み合わせ体を取り出し、順次上記の組み込み作業を行う。最後の組み合わせ体についての組み込み作業を終えた後、作業者は、すべての仕切板と梱包用基台とを一体化し、コード状ヒータセットを製造する側に送り返す。それにより、コード状ヒータセット梱包用治具の反復した使用が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具およびそれを用いた梱包体を採用することにより、電気式床暖房パネルを構成する木質基材の裏面に形成した配線溝へコード状ヒータセットを組み込んでいく作業を容易かつ迅速化でき、かつ作業後に出る廃棄物の量も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は電気式床暖房パネルを構成する木質基材を裏面から見て示す図であり、図2は木質基材に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを構成する各要素を埋め込んで電気式床暖房パネルとした状態を示している。図3は図2に示す電気式床暖房パネルを製造する過程で用いられる本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具を構成する梱包用基台の一例を、図4は図3に示す梱包用基台と共に用いられる仕切板を示している。図5は前記コード状ヒータセット梱包用治具を用いてコード状ヒータセット梱包体を形成する状態を説明している。
【0028】
図1に示すように、この例において、電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2の裏面には、図11に基づき一例を説明したような複数の構成要素からなるコード状ヒータセット10を埋め込むための配線溝3が形成されている。より詳細には、配線溝3は、発熱体としてのコード状ヒータ11のための第1配線溝31と、コード状ヒータ11に通電する電源線12のための第2配線溝32と、電源線12の両端に取り付けたコネクタ13のための第3配線溝33と、コード状ヒータ11の適所に取り付けたサーモスタット14や後記する抵抗器付き温度ヒューズ14a等のための第4配線溝34,等からなっており、これらが連続した状態で配線溝3を構成している。コード状ヒータ11のための第1配線溝31は、多数の曲がり部R(図1にはそのいくつかをR1〜R6として示している)を持つ連続した長いものであり、木質基材2のほぼ全面に亘っている。
【0029】
図2に示すように、第1配線溝31内にはコード状ヒータ11が、第2配線溝32内には電源線12が、第3配線溝33、33には電源線12の両端に取り付けたコネクタ13、13が、第4配線溝34、34にはコード状ヒータ11の端部に取り付けたサーモスタット14および抵抗器付き温度ヒューズ14aが、それぞれ埋め込まれて、電気式床暖房パネル1となっている。なお、図2において、60は、第1配線溝31内に埋め込んだコード状ヒータ11の取り付け状態を安定させるためのパッキン材である。パッキン材60については、後述する。
【0030】
特に図示しないが、通常、コード状ヒータセット10を埋め込んだ後に、木質基材2の裏面に、例えば不織布層と樹脂発泡体層の2層構造からなる緩衝材層が接着積層され、直貼り用の電気式床暖房パネルとされる。
【0031】
以下に、本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具Aを用いて、図2に示した電気式床暖房パネル1を製造するときの手順を説明する。最初に、コード状ヒータセット梱包用治具Aを説明する。コード状ヒータセット梱包用治具Aは、図3に示す梱包用基台40と、図4に示す1枚以上の仕切板50とからなる。
【0032】
梱包用基台40は、合板や木質繊維板等である適宜の剛性を備えた平板状の基板41と、該基板41に立設した複数本のピン42とで構成される。基板41は、前記した電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2とほぼ同じ形状と大きさであることが望ましが、木質基材2よりも大きな寸法であってもよい。また、図示しないが、木質基材2の形状が鴈木形状の場合には、基板41は同じ鴈木形状であってもよく、図示の例のように矩形状であってもよい。
【0033】
ピン42は、図1に示した配線溝31における曲がり部Rに対応する位置に立設される。好ましくは、すべての曲がり部Rに対応する位置に立設されるが、一部の曲がり部Rにおいて省略することもできる。この例において、立設する各ピン42は円柱であり、その曲率半径rはそのピン42が立設される配線溝31の曲がり部Rにおける溝中央部の曲率半径と等しい。しかし、完全に同じである必要はなく、ほぼ一致していればよい。曲がり部Rが円弧でなく、楕円等の円弧以外の形状の曲がり部である場合には、ピン42の曲面もその曲がりに沿った曲面とすることが望ましい。しかし、この場合も、ほぼそれに沿った曲面であればよく、円弧であっても差し支えない。なお、分かりやすさの目的で、図1において配線溝3の曲がり部Rの代表例をR1〜R6の符号を付して示したが、図3ではその曲がり部の位置に対応するピン42に対してピン42(R1)〜ピン42(R6)の符号を付している。また、図示の煩雑さを避けるために、何本かのピンは図示を省略している。
【0034】
必須の構成ではないが、図3に示す梱包用基台40は、コード状ヒータ11の一端に取り付けたサーモスタット14および他端に取り付けた抵抗器付き温度ヒューズ14aが取り付けられるべき位置(図2参照)に対応する個所に、それらを固定するための係止部材43を備える。係止部材43の高さはピン42と同じである。また、係止部材43の水平断面形状はサーモスタット14あるいは抵抗器付き温度ヒューズ14aを一時的に位置決め固定できる形状であればよく、太さ等も任意である。ピン42と同じような形状の複数本のピンので係止部材43を形成してもよい。
【0035】
仕切板50は、厚紙等で作られており、少なくとも梱包用基台40に立設された複数本のピン42の領域を覆うことができる面積を持つ。また、仕切板50には、図4に示すように、梱包用基台40に立設したピン42および係止部材43のすべてに対応する個所に、それらが通過できる第1の貫通孔52および第2の貫通孔53が形成されている。図示のものでは、仕切板50は一枚物として作られている。しかし、図示しないが、例えば長手方向に2分割した分割片の組み合わせによって1つの仕切板50を構成することもできる。
【0036】
コード状ヒータセット梱包体Bを作るに当たっては、図5に示すように、梱包用基台40を水平姿勢に置く。その上方から、第1の貫通孔52および第2の貫通孔53に梱包用基台40に立設したピン42および係止部材43を貫通させながら、仕切板50を梱包用基台40の基板41の上面まで落とし込む。次に、コード状ヒータセット10を手に取り、その一端に取り付けてあるサーモスタット14を、仕切板50を超えて突き出ている係止部材43を利用して係止する。なお、コード状ヒータセット10の形態によっては、端部にサーモスタット14を備えないものもある。そのような場合には、コード状ヒータ11の端部に、前記係止部材43と係止して端部を仮固定できる別部材を、取り外しできるようにして取り付けておくことが望ましい。
【0037】
その後、コード状ヒータ11をやはり仕切板50を超えて突き出ているピン42を利用しながら、そこをガイドとして所定の配線パターンに一致するように展開配置する。図5の例では、コード状ヒータ11は、ピン42(R3)でほぼ90度にターンし、ピン42(R4)で180度でUターンをし、以下、順次Uターンを繰り返していく。その後、ピン42(R5)、ピン42(R6)、・・・、ピン42(R1)、ピン42(R2)とターンして行き、最後に、係止部材43を利用して抵抗器付き温度ヒューズ14aを仮固定することにより、コード状ヒータ11の展開を終える。なお、必要な場合には、展開していく過程で、後記するパッキン材60をコード状ヒータ11の所要箇所に取り付ける。その後、電源線12および2つのコネクタ13、13を所定の位置に置くことにより、コード状ヒータセット10の取り付けは終了する。図5に示される仕切板50とそこに展開されたコード状ヒータセット10とを組み合わせたものが、本発明でいう「組み合わせ体C」を構成する。
【0038】
図示しないが、前記展開されたコード状ヒータセット10の上に、2枚目の仕切板50を同様にして配置し、その上に同様にしてコード状ヒータセット10を展開することにより、2つ目の「組み合わせ体C」が形成される。以下、同様に作業を繰り返して、必要な個数の「組み合わせ体C」を形成することにより、本発明でいう「コード状ヒータセット梱包体B」が形成される。
【0039】
なお、図5に示すようにして、仕切板50の上に展開配置したコード状ヒータセット10のうち、特にコード状ヒータ11には、ピン42をガイドとしての曲げを受けたときに、元の姿勢に戻ろうとする内部応力が発生する。このような応力が残留応力として存在すると、後記するように前記組み合わせ体Cを梱包用治具Aから取り外したときに、コード状ヒータ11には元の姿勢に戻ろうとする力が作用し、当初の配置パターンが崩れてしまう恐れがある。それを解消するために、組み合わせ体Cとした後に、各コード状ヒータセット10に所要時間にわたり通電してコード状ヒータ11を加熱する。その熱により、コード状ヒータ11内の残留応力は開放され、コード状ヒータ11に保形処理(熱成形処理)が施された状態となる。なお、このような加熱処理は、コード状ヒータ11を50℃程度まで昇温させることにより、所期の目的を達成することができる。加熱に要する時間は周囲の作業環境に応じて異なってくる。その後、必要に応じ、物流上で必要とされる包装が施されて、床材メーカー等へ出荷される。
【0040】
コード状ヒータセット梱包体Bを受け取った側では、包装を解き、最上位の組み合わせ体Cを持ち上げるようにして梱包用治具Aから取り外す。複数の分割片により仕切板50を形成している場合には、各分割片が分離しないようにして、組み合わせ体Cを梱包用治具Aから取り外す。そして、それを図1に示した電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2の上に置く。木質基材2の裏面に形成された配線溝3のパターンと、組み合わせ体Cにおける仕切板50の上に形成されたコード状ヒータセット10の展開パターンとがほぼ一致するように、両者の位置決めをした後、仕切板50を除去する。それにより、図2に示したように、コード状ヒータセット10の各要素(コード状ヒータ11、電源線12、コネクタ13、サーモスタット14、抵抗器付き温度ヒューズ14a)は、配線溝3のパターンに沿うようにして置かれた状態となる。そのために、その後の、配線溝3内へ各要素を埋め込みおよび固定する作業は、きわめて容易化する。なお、必要な場合には、パッキン材60をコード状ヒータ11の配線溝3内への埋め込みに用いる。なお、複数の分割片により仕切板50を形成している場合には、各分割片が静かに引き抜くことによって、一層、展開パターンを崩すことなく、仕切板50の引き抜きを行うことができる。
【0041】
すべての組み合わせ体Cについての前記コード状ヒータの埋め込み作業を終えた後、作業者は、使用済みの仕切板50と梱包用基台40とを一体化し、コード状ヒータセット梱包体を作る側に送り返す。それにより、コード状ヒータセット梱包用治具は通い冶具として反復して利用されるようになる。
【0042】
図6は、必要に応じて使用されるパッキン材60とその使用態様を示している。図2に示す形態の電気式床暖房パネル1において、前記第1配線溝31の内周面とコード状ヒータ11との間には僅かな隙間が形成されていることは、摩擦等でコード状ヒータ11に損傷を与えないことからを好ましい。しかし、隙間を形成するようにすると、一旦埋め込んだコード状ヒータ11が第1配線溝31から離脱しやすくなる。それを回避するために、前記したパッキン材60が用いられる。
【0043】
図6(a)に示す例において、パッキン材60は塩化ビニルの押し出し成形品であり、底面61と左右の側壁62を有し、該左右の側壁62の側面には係止爪63が形成されている。パッキン材60の内側はコード状ヒータ11を収容する凹部64とされており、左右の側壁62の上縁には収容凹部64側に延出する薄手のフランジ65が形成されている。収容凹部64はコード状ヒータ11を安定的に収容できる大きさであり、収容凹部64内にコード状ヒータ11を上から押し込んで収容した後は、前記フランジ65の作用により、パッキン材60とコード状ヒータ11は自由には分離しない状態となる。前記したように、図5に示した梱包体を作る過程において、必要個数のパッキン材60がコード状ヒータ11の所要箇所に取り付けられる。場合によっては、必要個数のパッキン材60を適宜の袋に収容したものを作り、それを梱包体Bあるいは組み合わせ体Cに取り付けるようにしてもよい。
【0044】
図6(b)は、木質基材2に形成した配線溝3(第1配線溝31)内に、上記パッキン材60を用いてコード状ヒータ11を埋め込んだ状態を示している。好ましくは、図示のように、第1配線溝31の所要箇所に、溝幅が他の部分よりも広くされて部分31aを形成しておく。コード状ヒータ11の埋め込みに際しては、その位置に、コード状ヒータ11に取り付けられているパッキン材60をスライドさせながら移動し、幅が広くされた部分31a内に、パッキン材60と共にコード状ヒータ11を押し込む。それにより、安定した状態で、すなわち、自由には第1配線溝31から離脱しない状態で、コード状ヒータ11を第1配線溝31内に埋め込むことができる。
【0045】
図7は、上記で用いたコード状ヒータセット10の一例をより具体的に説明するための回路図であり、図8はそこで用いるコード状ヒータ11の一例を示している。図8に示すように、ここで用いるコード状ヒータ11は、第1のヒータ線21と、第2のヒータ線22と、銅線のような電気抵抗の小さい線からなる検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、ヒータ線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24,25,26でそれぞれ被覆されている。図8(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図8(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。
【0046】
第1のヒータ線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2のヒータ線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度は170℃、第2の被覆樹脂25の溶融温度は220℃である。すなわち、第2のヒータ線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられている。
【0047】
これらの被覆樹脂24,25,26は、通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。しかし、第1のヒータ線21または第2のヒータ線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生して、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0048】
図7の回路図に示すように、コード状ヒータ11の一方端側は、前記した抵抗器付き温度ヒューズ14aおよび電源線12を介して、電源に接続しており、他方端側は前記したサーモスタット14を介して互いに接続している。より詳しくは、抵抗器付き温度ヒューズ14aは、一方側で電源線12に接続し、他方側でコード状ヒータ11の第1のヒータ線21と第2のヒータ線22に接続する。そして、前記第2のヒータ線22に接続する側にはヒューズ51が備えられる。さらに、前記検知線23に接続する回路52を備えており、該回路52の他端は第2のヒータ線22側に接続している。そして、前記回路52には前記ヒューズ51に近接する位置に抵抗器53が取り付けてあり、検知線23に流れる電流が抵抗器53に流れて発熱するときに、その熱によってヒューズ51は溶断するように設計されている。この例で、抵抗器53の抵抗は150Ωであり、第1と第2のヒータ線21,22の抵抗値よりも低い。また、ヒューズ51は99℃で溶断するようにされている。
【0049】
上記の回路において、電気式床暖房が正常に運転している環境では、供給される電力は、高い抵抗値を持つ第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転時に前記回路52および検知線26には電流は流れず、またヒューズ51を流れる電流は、大きな抵抗値を持つヒータ線22の抵抗値に依存する小さな値であり、ヒューズ51が溶断することはない。
【0050】
何らかの事情により、第1のヒータ線21と第2のヒータ線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じた場合には、その異常加熱により、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26が溶融する。それにより、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となり、その短絡箇所から検知線23に高電流が流れる。検知線23に電流が流れることにより、抵抗器53は発熱し、その熱によってヒューズ51は溶断する。このヒューズ51の溶断により、コード状ヒータ11への電力供給は完全に遮断され、断線箇所でそれ以上の発熱やスパークが起こるのは回避される。
【0051】
なお、上記した回路構成を持つコード状ヒータセット10は一つの例示であり、図9に示すように従来知られた閉ループ構成のコード状ヒータセット10を採用する場合でも、本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具A、それを用いた梱包体B、並びにコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法は、同じように用いることができることは、説明を要しない。また、図示された木質基材2の裏面に形成した配線溝3のパターンは、あくまでも一つの例示であって、これに限らないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】電気式床暖房パネルを構成する木質基材を裏面から見て示す図。
【図2】木質基材に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを構成する各要素を埋め込んで電気式床暖房パネルとする状態を示す図。
【図3】図2に示す電気式床暖房パネルを製造する過程で用いられる本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具を構成する梱包用基台の一例を示す図。
【図4】図3に示す梱包用基台と共に用いられる仕切板を示す図。
【図5】コード状ヒータセット梱包用治具を用いてコード状ヒータセット梱包体を形成するときの状態を説明する図。
【図6】必要に応じて使用されるパッキン材(図6(a))とその使用態様(図6(b))を示す図。
【図7】コード状ヒータセットの一例をより具体的に説明するための回路図。
【図8】図7に示す回路図で用いるコード状ヒータの一例を説明する図。
【図9】閉ループ型のコード状ヒータセットを用いた場合での図2に相当する図。
【図10】木質基材の裏面に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込んだ形式の電気式床暖房パネルの一例を説明する図。
【図11】物流時の便のためにコード状ヒータセットの全体を適当な大きさのループ状に巻き込んだ状態を説明する図。
【符号の説明】
【0053】
A…コード状ヒータセット梱包用治具、B…コード状ヒータセット梱包体、C…組み合わせ体、R…配線溝の曲がり部、1…電気式床暖房パネル、2…木質基材、3…配線溝、10…コード状ヒータセット、11…コード状ヒータ、12…電源線、13…コネクタ、14…サーモスタット、14a…抵抗器付き温度ヒューズ、40…梱包用基台、41…基板、42…ピン、43…係止部材、50…仕切板、52…第1の貫通孔、53…第2の貫通孔、60…パッキン材
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の裏面に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルを製造する過程で好適に用いられる、コード状ヒータセットのための梱包用治具およびそれを用いた梱包体、並びに前記梱包体で搬入されたコード状ヒータセットを電気式床暖房パネルへ組み付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、木質基材2の裏面に形成した配線溝3内にコード状ヒータセット10を埋め込んだ形式の電気式床暖房パネル1は知られている(特許文献1等参照)。コード状ヒータセット10は、発熱体としてのコード状ヒータ11と、コード状ヒータ11に通電するための電源線12と、電源線12の両端に取り付けたコネクタ13と、コード状ヒータ11の適所に取り付けたサーモスタット14、等で構成される。
【0003】
通常、配線溝3を形成した木質基材2とコード状ヒータセット10とは異なった場所で作られ、コード状ヒータセット10が木質基材2を製造する側に送られて、そこで両者を電気式床暖房パネル1として一体に組み付ける作業が行われる。コード状ヒータ11は長さの長いものであり、物流の利便性を考慮して、図11のように、コード状ヒータセット10全体を適当な大きさのループ状に巻き込み、その中央を輪ゴムやリボン15で結束した後、適宜の包装資材で包装したものを作り、その複数個を別の梱包資材を用いて一つの梱包体として、組み付け場所への物流に付している。
【特許文献1】特開2005−120810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気式床暖房パネルの組み立て現場では、組み付け作業を行う前に、包装したコード状ヒータセット10を梱包体から取り出し、包装を解いた後、リボン15等の結束部を外し、その後、配線溝3への埋め込み作業を容易化するために、各部材要素が絡み合わないようにコード状ヒータセット10を直線状に伸ばしていく作業を必要とする。そのために、それに対応した広い作業スペースが必要となっている。
【0005】
また、引き伸ばしたコード状ヒータセット10を木質基材2の裏面に形成した配線溝3の溝パターンに一致するように順次折り曲げながら配線溝3の中に押し込んでいくことが必要であり、その作業量も大きく長い組み立て時間を要している。
【0006】
さらに、コード状ヒータセット10の包装あるいは梱包に用いた資材は、使用後に廃棄されるのが普通であり、廃棄物低減の観点からも改善すべき余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、木質基材の裏面に形成した配線溝へコード状ヒータセットを埋め込んでいく作業を容易かつ迅速化でき、かつ作業後に出る廃棄物量も低減することのできる、コード状ヒータセット梱包用治具とそれを用いた梱包体を提供することを第1の課題とする。また、その梱包体で搬入されたコード状ヒータセットを電気式床暖房パネルへ組み付ける方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の第1の発明であるコード状ヒータセット梱包用治具は、裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルで用いる前記コード状ヒータセットのための梱包用治具であって、電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部に対応する箇所にピンを立設した梱包用基台と、少なくとも前記複数本のピンが立設された領域を覆うことができる面積を有しかつ前記ピンか通過できる貫通孔を備える1枚以上の仕切板と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本出願の第2の発明であるコード状ヒータセット梱包体は、上記のコード状ヒータセット梱包用治具を用いた梱包体であって、前記梱包用基台と、前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で配置された前記仕切板とその仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットとからなる組み合わせ体の少なくとも1組と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項4)。
【0010】
本出願の第3の発明であるコード状ヒータセット梱包体の製造方法は、上記ののコード状ヒータセット梱包用治具を用いたコード状ヒータセット梱包体の製造方法であって、前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で前記仕切板を前記梱包用基台に取り付ける工程と、取り付けた前記仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開しながらコード状ヒータセットを配置する工程と、前記展開して配置したコード状ヒータセットに通電してコード状ヒータを発熱させてコード状ヒータセットに加熱による保形処理を施す工程と、を少なくとも含むことを特徴とする(請求項7)。
【0011】
本出願の第4の発明であるコード状ヒータセットの組み付け方法は、上記したコード状ヒータセット梱包体を用いて電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで組み付けるコード状ヒータセットの組み付け方法であって、上記したコード状ヒータセット梱包体から前記組み合わせ体を持ち上げるようにして前記梱包用基台から取り外し、それを電気式床暖房パネルの裏面の上に、そこに形成された配線溝パターンとコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するようにして置き、前記仕切板を除去した後、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込むことを特徴とする(請求項8)。
【0012】
本発明において、前記コード状ヒータセット梱包用治具は、コード状ヒータセットを製造する側とそれを電気式床暖房パネルに組み込む側との間での通い治具として、多数回に亘り繰り返して用いられる。そのために、物流時あるいは物流後に廃棄処分される量を大きく低減することができ、環境に優しいものとなる。
【0013】
コード状ヒータセットを製造する側では、最初に、1枚の仕切板(材料は、樹脂板や厚紙、段ボール等であってよい)を梱包用基台に立設したピンにその貫通孔に貫通させた状態で、梱包用基台上に取り付ける。次に、仕切板から上方に突出しているピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように1つのコード状ヒータセットを展開配置する。それにより、本発明でいう、仕切板とコード状ヒータセットの組み合わせ体が1つできあがる。必要な場合には、その上に、2枚目の仕切板を1枚目と同じようにして置き、その上にコード状ヒータセットを同じようにして配置する。それにより、2つ目の組み合わせ体ができあがる。以下、必要な個数だけ、組み合わせ体を順次積み上げるようにして形成する。それにより、本発明でいう、梱包体が完成する。
【0014】
なお、仕切板は全体が1枚物であってもよく、複数に分割した(例えば2分割した)分割片の組み合わせによって1枚の仕切板を構成するようにしてもよい。
【0015】
上記のように仕切板の上に展開配置したコード状ヒータセットのうち、特にコード状ヒータには、ピンをガイドとしての曲げを受けたときに、元の姿勢に戻ろうとする内部応力が発生する。この内部応力を解消するのが、上記した本出願の第3の発明であるコード状ヒータセット梱包体の製造方法の目的である。この加熱処理により、特にコード状ヒータには、電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致したパターンでの保形処理が施される。
【0016】
前記の梱包体が物流機構に乗せられて、コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルに組み込む側に送られる。受け取った側では、包装を解き、梱包体から1つの前記組み合わせ体を持ち上げるようにして取り外し、それを裏面側を上面とした姿勢で置いてある電気式床暖房パネルの上に置く。電気式床暖房パネルの配線溝パターンと仕切板上でのコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するように位置決めをした後、仕切板を静かに引き抜く。
【0017】
仕切板を引き抜くことにより、コード状ヒータセットは、その全体が電気式床暖房パネルに形成された配線溝に沿って展開した状態で、電気式床暖房パネルの裏面上に置かれた状態となる。複数の分割片の組み合わせによって1枚の仕切板を構成している場合には、各分割片毎に引き抜くことにより、一層、展開パターンを崩すことなく、仕切板の引き抜きを行うことができる。
【0018】
その後、作業者は展開しているコード状ヒータセットを配線溝内に埋め込む作業を行うが、前記のように、コード状ヒータセットは配線溝に沿うようにして予め置かれているので、埋め込み作業は極めて容易であり、かつ迅速に行うことができる。コード状ヒータセットに熱による保形処理が施されている場合には、一層、埋め込み作業は容易となる。また、従来のように束状に巻き込まれた状態のコード状ヒータセットを直線状に展開する作業、およびそのためのスペースを確保することも不要となる。
【0019】
なお、本発明において、コード状ヒータセットの形態に制限はなく、従来の電気式床暖房パネルで用いられてきた任意のコード状ヒータセットであってよい。コード状ヒータと電源線とコネクタとからなるもの、さらにサーモスタットや温度ヒューズ等の保安機器を備えるもの、等任意である。
【0020】
好ましくは、前記コード状ヒータセット梱包用治において、前記梱包用基台は前記コード状ヒータセットの一部を係止できる係止部材をさらに立設しており、前記仕切板は前記係止部材のための第2の貫通孔をさらに備えるようにされる。
【0021】
この形態のコード状ヒータセット梱包用治具を用いて前記梱包体を作る場合には、コード状ヒータセットの一部、好ましくは一方の端部、を前記係止部材に係止させた状態で、コード状ヒータセットをピンに沿って展開することが可能となり、コード状ヒータセットの展開作業が容易化する。また、他方の端部あるいはその近傍をやはり係止部材を利用して係止できるようにすれば、梱包体としての姿勢がさらに安定化し、物流の途中でコード状ヒータセットがピンから外れてしまうような事態が生じるのを回避できる。なお、係止部材の形状は任意であり、複数本のピンにより係止部材を構成してもよい。
【0022】
好ましくは、前記コード状ヒータセット梱包用治において、コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むようにされる。
【0023】
この態様のコード状ヒータセット梱包用治具を用いて前記梱包体を作る場合、好ましくはコード状ヒータセットのコード状ヒータに前記パッキン材を嵌め込んだ状態で梱包体とする。また、電気式床暖房パネルの配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んでいくときに、必要箇所において前記パッキン材と共にコード状ヒータを配線溝内に埋め込むようにする。このようなパッキン材を用いることにより、コード状ヒータを配線溝内へ安定した状態で埋め込むことができる。
【0024】
好ましくは、前記したように、コード状ヒータセット梱包体において、前記仕切板の上に配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットは、展開配置後に加熱による保形処理が施されたコード状ヒータセットとされる。それにより、前記した配線溝内にコード状ヒータを埋め込む作業が、一層、容易化する。
【0025】
前記梱包体が複数個(例えば、20組程度)の前記組み合わせ体を有する場合には、上から順に組み合わせ体を取り出し、順次上記の組み込み作業を行う。最後の組み合わせ体についての組み込み作業を終えた後、作業者は、すべての仕切板と梱包用基台とを一体化し、コード状ヒータセットを製造する側に送り返す。それにより、コード状ヒータセット梱包用治具の反復した使用が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具およびそれを用いた梱包体を採用することにより、電気式床暖房パネルを構成する木質基材の裏面に形成した配線溝へコード状ヒータセットを組み込んでいく作業を容易かつ迅速化でき、かつ作業後に出る廃棄物の量も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は電気式床暖房パネルを構成する木質基材を裏面から見て示す図であり、図2は木質基材に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを構成する各要素を埋め込んで電気式床暖房パネルとした状態を示している。図3は図2に示す電気式床暖房パネルを製造する過程で用いられる本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具を構成する梱包用基台の一例を、図4は図3に示す梱包用基台と共に用いられる仕切板を示している。図5は前記コード状ヒータセット梱包用治具を用いてコード状ヒータセット梱包体を形成する状態を説明している。
【0028】
図1に示すように、この例において、電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2の裏面には、図11に基づき一例を説明したような複数の構成要素からなるコード状ヒータセット10を埋め込むための配線溝3が形成されている。より詳細には、配線溝3は、発熱体としてのコード状ヒータ11のための第1配線溝31と、コード状ヒータ11に通電する電源線12のための第2配線溝32と、電源線12の両端に取り付けたコネクタ13のための第3配線溝33と、コード状ヒータ11の適所に取り付けたサーモスタット14や後記する抵抗器付き温度ヒューズ14a等のための第4配線溝34,等からなっており、これらが連続した状態で配線溝3を構成している。コード状ヒータ11のための第1配線溝31は、多数の曲がり部R(図1にはそのいくつかをR1〜R6として示している)を持つ連続した長いものであり、木質基材2のほぼ全面に亘っている。
【0029】
図2に示すように、第1配線溝31内にはコード状ヒータ11が、第2配線溝32内には電源線12が、第3配線溝33、33には電源線12の両端に取り付けたコネクタ13、13が、第4配線溝34、34にはコード状ヒータ11の端部に取り付けたサーモスタット14および抵抗器付き温度ヒューズ14aが、それぞれ埋め込まれて、電気式床暖房パネル1となっている。なお、図2において、60は、第1配線溝31内に埋め込んだコード状ヒータ11の取り付け状態を安定させるためのパッキン材である。パッキン材60については、後述する。
【0030】
特に図示しないが、通常、コード状ヒータセット10を埋め込んだ後に、木質基材2の裏面に、例えば不織布層と樹脂発泡体層の2層構造からなる緩衝材層が接着積層され、直貼り用の電気式床暖房パネルとされる。
【0031】
以下に、本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具Aを用いて、図2に示した電気式床暖房パネル1を製造するときの手順を説明する。最初に、コード状ヒータセット梱包用治具Aを説明する。コード状ヒータセット梱包用治具Aは、図3に示す梱包用基台40と、図4に示す1枚以上の仕切板50とからなる。
【0032】
梱包用基台40は、合板や木質繊維板等である適宜の剛性を備えた平板状の基板41と、該基板41に立設した複数本のピン42とで構成される。基板41は、前記した電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2とほぼ同じ形状と大きさであることが望ましが、木質基材2よりも大きな寸法であってもよい。また、図示しないが、木質基材2の形状が鴈木形状の場合には、基板41は同じ鴈木形状であってもよく、図示の例のように矩形状であってもよい。
【0033】
ピン42は、図1に示した配線溝31における曲がり部Rに対応する位置に立設される。好ましくは、すべての曲がり部Rに対応する位置に立設されるが、一部の曲がり部Rにおいて省略することもできる。この例において、立設する各ピン42は円柱であり、その曲率半径rはそのピン42が立設される配線溝31の曲がり部Rにおける溝中央部の曲率半径と等しい。しかし、完全に同じである必要はなく、ほぼ一致していればよい。曲がり部Rが円弧でなく、楕円等の円弧以外の形状の曲がり部である場合には、ピン42の曲面もその曲がりに沿った曲面とすることが望ましい。しかし、この場合も、ほぼそれに沿った曲面であればよく、円弧であっても差し支えない。なお、分かりやすさの目的で、図1において配線溝3の曲がり部Rの代表例をR1〜R6の符号を付して示したが、図3ではその曲がり部の位置に対応するピン42に対してピン42(R1)〜ピン42(R6)の符号を付している。また、図示の煩雑さを避けるために、何本かのピンは図示を省略している。
【0034】
必須の構成ではないが、図3に示す梱包用基台40は、コード状ヒータ11の一端に取り付けたサーモスタット14および他端に取り付けた抵抗器付き温度ヒューズ14aが取り付けられるべき位置(図2参照)に対応する個所に、それらを固定するための係止部材43を備える。係止部材43の高さはピン42と同じである。また、係止部材43の水平断面形状はサーモスタット14あるいは抵抗器付き温度ヒューズ14aを一時的に位置決め固定できる形状であればよく、太さ等も任意である。ピン42と同じような形状の複数本のピンので係止部材43を形成してもよい。
【0035】
仕切板50は、厚紙等で作られており、少なくとも梱包用基台40に立設された複数本のピン42の領域を覆うことができる面積を持つ。また、仕切板50には、図4に示すように、梱包用基台40に立設したピン42および係止部材43のすべてに対応する個所に、それらが通過できる第1の貫通孔52および第2の貫通孔53が形成されている。図示のものでは、仕切板50は一枚物として作られている。しかし、図示しないが、例えば長手方向に2分割した分割片の組み合わせによって1つの仕切板50を構成することもできる。
【0036】
コード状ヒータセット梱包体Bを作るに当たっては、図5に示すように、梱包用基台40を水平姿勢に置く。その上方から、第1の貫通孔52および第2の貫通孔53に梱包用基台40に立設したピン42および係止部材43を貫通させながら、仕切板50を梱包用基台40の基板41の上面まで落とし込む。次に、コード状ヒータセット10を手に取り、その一端に取り付けてあるサーモスタット14を、仕切板50を超えて突き出ている係止部材43を利用して係止する。なお、コード状ヒータセット10の形態によっては、端部にサーモスタット14を備えないものもある。そのような場合には、コード状ヒータ11の端部に、前記係止部材43と係止して端部を仮固定できる別部材を、取り外しできるようにして取り付けておくことが望ましい。
【0037】
その後、コード状ヒータ11をやはり仕切板50を超えて突き出ているピン42を利用しながら、そこをガイドとして所定の配線パターンに一致するように展開配置する。図5の例では、コード状ヒータ11は、ピン42(R3)でほぼ90度にターンし、ピン42(R4)で180度でUターンをし、以下、順次Uターンを繰り返していく。その後、ピン42(R5)、ピン42(R6)、・・・、ピン42(R1)、ピン42(R2)とターンして行き、最後に、係止部材43を利用して抵抗器付き温度ヒューズ14aを仮固定することにより、コード状ヒータ11の展開を終える。なお、必要な場合には、展開していく過程で、後記するパッキン材60をコード状ヒータ11の所要箇所に取り付ける。その後、電源線12および2つのコネクタ13、13を所定の位置に置くことにより、コード状ヒータセット10の取り付けは終了する。図5に示される仕切板50とそこに展開されたコード状ヒータセット10とを組み合わせたものが、本発明でいう「組み合わせ体C」を構成する。
【0038】
図示しないが、前記展開されたコード状ヒータセット10の上に、2枚目の仕切板50を同様にして配置し、その上に同様にしてコード状ヒータセット10を展開することにより、2つ目の「組み合わせ体C」が形成される。以下、同様に作業を繰り返して、必要な個数の「組み合わせ体C」を形成することにより、本発明でいう「コード状ヒータセット梱包体B」が形成される。
【0039】
なお、図5に示すようにして、仕切板50の上に展開配置したコード状ヒータセット10のうち、特にコード状ヒータ11には、ピン42をガイドとしての曲げを受けたときに、元の姿勢に戻ろうとする内部応力が発生する。このような応力が残留応力として存在すると、後記するように前記組み合わせ体Cを梱包用治具Aから取り外したときに、コード状ヒータ11には元の姿勢に戻ろうとする力が作用し、当初の配置パターンが崩れてしまう恐れがある。それを解消するために、組み合わせ体Cとした後に、各コード状ヒータセット10に所要時間にわたり通電してコード状ヒータ11を加熱する。その熱により、コード状ヒータ11内の残留応力は開放され、コード状ヒータ11に保形処理(熱成形処理)が施された状態となる。なお、このような加熱処理は、コード状ヒータ11を50℃程度まで昇温させることにより、所期の目的を達成することができる。加熱に要する時間は周囲の作業環境に応じて異なってくる。その後、必要に応じ、物流上で必要とされる包装が施されて、床材メーカー等へ出荷される。
【0040】
コード状ヒータセット梱包体Bを受け取った側では、包装を解き、最上位の組み合わせ体Cを持ち上げるようにして梱包用治具Aから取り外す。複数の分割片により仕切板50を形成している場合には、各分割片が分離しないようにして、組み合わせ体Cを梱包用治具Aから取り外す。そして、それを図1に示した電気式床暖房パネル1を構成する木質基材2の上に置く。木質基材2の裏面に形成された配線溝3のパターンと、組み合わせ体Cにおける仕切板50の上に形成されたコード状ヒータセット10の展開パターンとがほぼ一致するように、両者の位置決めをした後、仕切板50を除去する。それにより、図2に示したように、コード状ヒータセット10の各要素(コード状ヒータ11、電源線12、コネクタ13、サーモスタット14、抵抗器付き温度ヒューズ14a)は、配線溝3のパターンに沿うようにして置かれた状態となる。そのために、その後の、配線溝3内へ各要素を埋め込みおよび固定する作業は、きわめて容易化する。なお、必要な場合には、パッキン材60をコード状ヒータ11の配線溝3内への埋め込みに用いる。なお、複数の分割片により仕切板50を形成している場合には、各分割片が静かに引き抜くことによって、一層、展開パターンを崩すことなく、仕切板50の引き抜きを行うことができる。
【0041】
すべての組み合わせ体Cについての前記コード状ヒータの埋め込み作業を終えた後、作業者は、使用済みの仕切板50と梱包用基台40とを一体化し、コード状ヒータセット梱包体を作る側に送り返す。それにより、コード状ヒータセット梱包用治具は通い冶具として反復して利用されるようになる。
【0042】
図6は、必要に応じて使用されるパッキン材60とその使用態様を示している。図2に示す形態の電気式床暖房パネル1において、前記第1配線溝31の内周面とコード状ヒータ11との間には僅かな隙間が形成されていることは、摩擦等でコード状ヒータ11に損傷を与えないことからを好ましい。しかし、隙間を形成するようにすると、一旦埋め込んだコード状ヒータ11が第1配線溝31から離脱しやすくなる。それを回避するために、前記したパッキン材60が用いられる。
【0043】
図6(a)に示す例において、パッキン材60は塩化ビニルの押し出し成形品であり、底面61と左右の側壁62を有し、該左右の側壁62の側面には係止爪63が形成されている。パッキン材60の内側はコード状ヒータ11を収容する凹部64とされており、左右の側壁62の上縁には収容凹部64側に延出する薄手のフランジ65が形成されている。収容凹部64はコード状ヒータ11を安定的に収容できる大きさであり、収容凹部64内にコード状ヒータ11を上から押し込んで収容した後は、前記フランジ65の作用により、パッキン材60とコード状ヒータ11は自由には分離しない状態となる。前記したように、図5に示した梱包体を作る過程において、必要個数のパッキン材60がコード状ヒータ11の所要箇所に取り付けられる。場合によっては、必要個数のパッキン材60を適宜の袋に収容したものを作り、それを梱包体Bあるいは組み合わせ体Cに取り付けるようにしてもよい。
【0044】
図6(b)は、木質基材2に形成した配線溝3(第1配線溝31)内に、上記パッキン材60を用いてコード状ヒータ11を埋め込んだ状態を示している。好ましくは、図示のように、第1配線溝31の所要箇所に、溝幅が他の部分よりも広くされて部分31aを形成しておく。コード状ヒータ11の埋め込みに際しては、その位置に、コード状ヒータ11に取り付けられているパッキン材60をスライドさせながら移動し、幅が広くされた部分31a内に、パッキン材60と共にコード状ヒータ11を押し込む。それにより、安定した状態で、すなわち、自由には第1配線溝31から離脱しない状態で、コード状ヒータ11を第1配線溝31内に埋め込むことができる。
【0045】
図7は、上記で用いたコード状ヒータセット10の一例をより具体的に説明するための回路図であり、図8はそこで用いるコード状ヒータ11の一例を示している。図8に示すように、ここで用いるコード状ヒータ11は、第1のヒータ線21と、第2のヒータ線22と、銅線のような電気抵抗の小さい線からなる検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、ヒータ線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24,25,26でそれぞれ被覆されている。図8(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図8(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。
【0046】
第1のヒータ線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2のヒータ線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度は170℃、第2の被覆樹脂25の溶融温度は220℃である。すなわち、第2のヒータ線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられている。
【0047】
これらの被覆樹脂24,25,26は、通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。しかし、第1のヒータ線21または第2のヒータ線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生して、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0048】
図7の回路図に示すように、コード状ヒータ11の一方端側は、前記した抵抗器付き温度ヒューズ14aおよび電源線12を介して、電源に接続しており、他方端側は前記したサーモスタット14を介して互いに接続している。より詳しくは、抵抗器付き温度ヒューズ14aは、一方側で電源線12に接続し、他方側でコード状ヒータ11の第1のヒータ線21と第2のヒータ線22に接続する。そして、前記第2のヒータ線22に接続する側にはヒューズ51が備えられる。さらに、前記検知線23に接続する回路52を備えており、該回路52の他端は第2のヒータ線22側に接続している。そして、前記回路52には前記ヒューズ51に近接する位置に抵抗器53が取り付けてあり、検知線23に流れる電流が抵抗器53に流れて発熱するときに、その熱によってヒューズ51は溶断するように設計されている。この例で、抵抗器53の抵抗は150Ωであり、第1と第2のヒータ線21,22の抵抗値よりも低い。また、ヒューズ51は99℃で溶断するようにされている。
【0049】
上記の回路において、電気式床暖房が正常に運転している環境では、供給される電力は、高い抵抗値を持つ第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転時に前記回路52および検知線26には電流は流れず、またヒューズ51を流れる電流は、大きな抵抗値を持つヒータ線22の抵抗値に依存する小さな値であり、ヒューズ51が溶断することはない。
【0050】
何らかの事情により、第1のヒータ線21と第2のヒータ線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じた場合には、その異常加熱により、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26が溶融する。それにより、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となり、その短絡箇所から検知線23に高電流が流れる。検知線23に電流が流れることにより、抵抗器53は発熱し、その熱によってヒューズ51は溶断する。このヒューズ51の溶断により、コード状ヒータ11への電力供給は完全に遮断され、断線箇所でそれ以上の発熱やスパークが起こるのは回避される。
【0051】
なお、上記した回路構成を持つコード状ヒータセット10は一つの例示であり、図9に示すように従来知られた閉ループ構成のコード状ヒータセット10を採用する場合でも、本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具A、それを用いた梱包体B、並びにコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法は、同じように用いることができることは、説明を要しない。また、図示された木質基材2の裏面に形成した配線溝3のパターンは、あくまでも一つの例示であって、これに限らないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】電気式床暖房パネルを構成する木質基材を裏面から見て示す図。
【図2】木質基材に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを構成する各要素を埋め込んで電気式床暖房パネルとする状態を示す図。
【図3】図2に示す電気式床暖房パネルを製造する過程で用いられる本発明によるコード状ヒータセット梱包用治具を構成する梱包用基台の一例を示す図。
【図4】図3に示す梱包用基台と共に用いられる仕切板を示す図。
【図5】コード状ヒータセット梱包用治具を用いてコード状ヒータセット梱包体を形成するときの状態を説明する図。
【図6】必要に応じて使用されるパッキン材(図6(a))とその使用態様(図6(b))を示す図。
【図7】コード状ヒータセットの一例をより具体的に説明するための回路図。
【図8】図7に示す回路図で用いるコード状ヒータの一例を説明する図。
【図9】閉ループ型のコード状ヒータセットを用いた場合での図2に相当する図。
【図10】木質基材の裏面に形成した配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込んだ形式の電気式床暖房パネルの一例を説明する図。
【図11】物流時の便のためにコード状ヒータセットの全体を適当な大きさのループ状に巻き込んだ状態を説明する図。
【符号の説明】
【0053】
A…コード状ヒータセット梱包用治具、B…コード状ヒータセット梱包体、C…組み合わせ体、R…配線溝の曲がり部、1…電気式床暖房パネル、2…木質基材、3…配線溝、10…コード状ヒータセット、11…コード状ヒータ、12…電源線、13…コネクタ、14…サーモスタット、14a…抵抗器付き温度ヒューズ、40…梱包用基台、41…基板、42…ピン、43…係止部材、50…仕切板、52…第1の貫通孔、53…第2の貫通孔、60…パッキン材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルで用いる前記コード状ヒータセットのための梱包用治具であって、
電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部に対応する箇所にピンを立設した梱包用基台と、
少なくとも前記複数本のピンが立設された領域を覆うことができる面積を有しかつ前記ピンが通過できる貫通孔を備える1枚以上の仕切板と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項2】
前記梱包用基台は前記コード状ヒータセットの一部を係止できる係止部材をさらに立設しており、前記仕切板は前記係止部材のための第2の貫通孔をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項3】
コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包用治具を用いた梱包体であって、
前記梱包用基台と、
前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で配置された前記仕切板とその仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットとからなる組み合わせ体の少なくとも1組と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包体。
【請求項5】
コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のコード状ヒータセット梱包体。
【請求項6】
請求項4または5に記載のコード状ヒータセット梱包体であって、前記仕切板の上に配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットは、展開配置後に加熱による保形処理が施されたコード状ヒータセットであることを特徴とするコード状ヒータセット梱包体。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包用治具を用いたコード状ヒータセット梱包体の製造方法であって、
前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で前記仕切板を前記梱包用基台に取り付ける工程と、
取り付けた前記仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開しながらコード状ヒータセットを配置する工程と、
前記展開して配置したコード状ヒータセットに通電してコード状ヒータを発熱させてコード状ヒータセットに加熱による保形処理を施す工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包体の製造方法。
【請求項8】
電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで組み付けるコード状ヒータセットの組み付け方法であって、
請求項4〜6のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包体から前記組み合わせ体を持ち上げるようにして前記梱包用基台から取り外し、それを電気式床暖房パネルの裏面の上に、そこに形成された配線溝パターンとコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するようにして置き、前記仕切板を除去した後、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込むことを特徴とするコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法。
【請求項9】
請求項5に記載のコード状ヒータセット梱包体を用いる場合であって、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込む際に、配線溝とコード状ヒータセットとの間に前記パッキン材を嵌め込む作業をさらに行うことを特徴とする請求項8に記載のコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法。
【請求項1】
裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで形成される電気式床暖房パネルで用いる前記コード状ヒータセットのための梱包用治具であって、
電気式床暖房パネルの配線溝における溝の曲がり部に対応する箇所にピンを立設した梱包用基台と、
少なくとも前記複数本のピンが立設された領域を覆うことができる面積を有しかつ前記ピンが通過できる貫通孔を備える1枚以上の仕切板と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項2】
前記梱包用基台は前記コード状ヒータセットの一部を係止できる係止部材をさらに立設しており、前記仕切板は前記係止部材のための第2の貫通孔をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項3】
コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコード状ヒータセット梱包用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包用治具を用いた梱包体であって、
前記梱包用基台と、
前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で配置された前記仕切板とその仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットとからなる組み合わせ体の少なくとも1組と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包体。
【請求項5】
コード状ヒータセットを電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝に埋め込むときに用いるパッキン材をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のコード状ヒータセット梱包体。
【請求項6】
請求項4または5に記載のコード状ヒータセット梱包体であって、前記仕切板の上に配線溝パターンにほぼ一致するように展開して配置したコード状ヒータセットは、展開配置後に加熱による保形処理が施されたコード状ヒータセットであることを特徴とするコード状ヒータセット梱包体。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包用治具を用いたコード状ヒータセット梱包体の製造方法であって、
前記梱包用基台に立設した前記ピンを前記貫通孔に貫通させた状態で前記仕切板を前記梱包用基台に取り付ける工程と、
取り付けた前記仕切板の上に前記ピンをガイドとして電気式床暖房パネルの配線溝パターンにほぼ一致するように展開しながらコード状ヒータセットを配置する工程と、
前記展開して配置したコード状ヒータセットに通電してコード状ヒータを発熱させてコード状ヒータセットに加熱による保形処理を施す工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするコード状ヒータセット梱包体の製造方法。
【請求項8】
電気式床暖房パネルの裏面に形成した配線溝にコード状ヒータセットを埋め込んで組み付けるコード状ヒータセットの組み付け方法であって、
請求項4〜6のいずれかに記載のコード状ヒータセット梱包体から前記組み合わせ体を持ち上げるようにして前記梱包用基台から取り外し、それを電気式床暖房パネルの裏面の上に、そこに形成された配線溝パターンとコード状ヒータセットの展開パターンとがほぼ一致するようにして置き、前記仕切板を除去した後、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込むことを特徴とするコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法。
【請求項9】
請求項5に記載のコード状ヒータセット梱包体を用いる場合であって、前記配線溝内にコード状ヒータセットを埋め込む際に、配線溝とコード状ヒータセットとの間に前記パッキン材を嵌め込む作業をさらに行うことを特徴とする請求項8に記載のコード状ヒータセットの電気式床暖房パネルへの組み付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−23688(P2009−23688A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188581(P2007−188581)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
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