説明

コーヒー組成物の製造方法

【課題】クロロゲン酸類の減少を最小限にとどめつつ、ヒドロキシヒドロキノン量が低減し、風味にも優れるコーヒー組成物の製法を提供する。
【解決手段】コーヒー抽出液を多孔質吸着体で処理するコーヒー組成物の製造方法において、平均粒径が250μm以下であり、且つよう素吸着能が1400mg/g以下である多孔質吸着体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロゲン酸類は血圧降下作用等、各種の健康作用を有することが知られている。しかしながら、クロロゲン酸類を多量に含むコーヒー飲料では明確な血圧降下作用が認められず、その原因がコーヒー飲料に含有されるヒドロキシヒドロキノンが阻害作用を有することが見出されている。このため、コーヒー抽出液を多孔質吸着剤で処理することによりヒドロキシヒドロキノンを低減する技術が開示されている。
例えば、コーヒー抽出液から、クロロゲン酸類を残しつつヒドロキシヒドロキノンを低減するために、特定の細孔容量を有する吸着体を水性溶媒により洗浄した後にコーヒー抽出液と接触させる方法(特許文献1)や、加圧条件下にて多孔質吸着体とコーヒー抽出液を接触させるコーヒー組成物の製造方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54057号公報
【特許文献2】特開2007−54058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら多孔質吸着体を用いたヒドロキシヒドロキノンの除去においては、同時にクロロゲン酸類もかなり減少してしまう場合があった。よって、クロロゲン酸類の減少を最小限にとどめつつ、脱ヒドロキシヒドロキノンを効率良く行う手法が求められていた。
また、コーヒー飲料は嗜好品として好まれるものであり、風味豊かなコーヒーが求められる。しかしながら、多孔質吸着体を用いて吸着処理を行う場合、ヒドロキシヒドロキノンと共に風味成分も同時に除去されてしまう場合があり、より風味の良好なコーヒー飲料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の多孔質吸着体を用いることにより、クロロゲン酸類の減少を最小限にとどめつつ、ヒドロキシヒドロキノン量が低減し、風味にも優れるコーヒー組成物が得られることを見出した。
即ち本発明は、コーヒー抽出液を多孔質吸着体で処理するコーヒー組成物の製造方法において、平均粒径が250μm以下であり、且つよう素吸着能が1400mg/g以下である多孔質吸着体を用いる、コーヒー組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易な手法により、クロロゲン酸類の減少を最小限にとどめつつ、ヒドロキシヒドロキノン量が低減し、風味にも優れるコーヒー組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いる多孔質吸着体の種類としては、吸着技術便覧―プロセス・材料・設計―(平成11年1月11日、エヌ・ティー・エス発行、監修者:竹内 雍)に記載されている、炭素質吸着材、シリカ・アルミナ系吸着材、高分子吸着材、キトサン樹脂などが使用できる。コーヒー風味を残存させる観点から、炭素質吸着材が好ましい。
炭素質吸着材としては、ヒドロキシヒドロキノンを高い選択性をもって吸着する観点から、活性炭が好ましく、粉末状活性炭及び粒状活性炭がより好ましい。
【0008】
活性炭の由来原料としては、オガコ、石炭やヤシ殻などがあるが、ヤシ殻由来のヤシ殻活性炭が好ましく、特に、水蒸気などのガスにより賦活した活性炭が好ましい。このような水蒸気賦活活性炭の市販品としては、白鷺WH2c(日本エンバイロケミカルズ株式会社)、クラレコールGL、クラレコールGW(クラレケミカル株式会社)等を用いることができる。
【0009】
本発明では、このような多孔質吸着体のうち、平均粒径が250μm以下であり、且つよう素吸着能が1400mg/g以下であるものが用いられる。
【0010】
多孔質吸着体の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用い、実施例に記載の条件で測定された場合のメジアン径により求められるものである。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、例えば商品名「マイクロトラック(機種:MT3300」(日機装製)を挙げることができる。
【0011】
ヒドロキシヒドロキノンの吸着選択性の観点より、多孔質吸着体の平均粒径は5〜250μmが好ましく、より好ましくは5〜200μmであり、さらに好ましくは10〜150μmである。
上記範囲の平均粒径の多孔質吸着体は、メッシュにより分級することで、あるいは粉砕機で微粒化した後、分級することで得ることができる。粉砕機としては、ジェットミル等の気流式粉砕機や、ボールミル、ハンマーミルのような機械式粉砕機などを用いることができる。例えば、気流式粉砕機としてはカウンタジェットミルAFGを、機械式粉砕機としてはACMパルベライザ(いずれもホソカワミクロン製)を挙げることができる。
【0012】
多孔質吸着体のよう素吸着能は、JIS K−1474「活性炭試験方法」に記載の方法に従って測定された値を用いる。
よう素吸着能は1400mg/g以下であり、好ましくは1300mg/g以下であり、より好ましくは1200mg/g以下である。ヒドロキシヒドロキノンの吸着を確保するために、ヨウ素吸着能は500mg/g以上が好ましく、800mg/g以上がより好ましい。
上記範囲の平均粒径とよう素吸着能の範囲を有する多孔質吸着体を用いることにより、クロロゲン酸類の減少を最小限にとどめつつ、ヒドロキシヒドロキノン量が低減し、風味にも優れるコーヒー組成物が得られる。
【0013】
本発明方法に用いられるコーヒー抽出液は、コーヒー豆からの抽出物、インスタントコーヒーの水溶液などから調製することができる。
<原料コーヒー生豆>
原料コーヒー生豆としては、例えばブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン等が挙げられる。コーヒー豆種としては、アラビカ種、ロブスタ種などがある。コーヒー生豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。
【0014】
<焙煎方法>
コーヒー生豆を焙煎により焙煎コーヒー豆とする方法についても、特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても制限はないが、好ましい焙煎方法としては直火式、熱風式、半熱風式があり、回転ドラムを有している形式が更に好ましい。
焙煎コーヒー豆の焙煎度としては、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアン等があり、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティが好ましい。焙煎度を色差計で測定したL値としては、通常10から30、好ましくは15から25である。尚、焙煎度の違うコーヒー豆を混合しても良い。
【0015】
<抽出>
抽出方法も特に限定されないが、ドリップ式、連続多塔式、ニーダー式、向流式等によって得られた抽出液を使用することが出来る。また、抽出温度に関しても特に限定はない。
【0016】
このようなコーヒー抽出液は、一般に、クロロゲン酸類を含有し該クロロゲン酸類量の約1質量%のヒドロキシヒドロキノンを含有している。ここで、当該クロロゲン酸類としてはモノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、ジカフェオイルキナ酸の三種が知られており、クロロゲン酸類の含有量はこれらの合計量で示される。モノカフェオイルキナ酸としては3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。またフェルラキナ酸としては、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。ジカフェオイルキナ酸としては3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
当該クロロゲン酸類の含有量は、UV−VIS検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、実施例に記載の条件にて測定する。
当該ヒドロキシヒドロキノン含量は、電気化学検出器を用いたHPLCにより、実施例に記載の条件にて測定する。
【0017】
<吸着処理条件>
当該多孔質吸着体の使用量は、コーヒー抽出液の固形分に対して0.05質量倍以上が好ましく、0.1質量倍以上がより好ましい。また2質量倍以下が好ましく、1質量倍以下がより好ましく、0.8質量倍以下がさらに好ましい。なお、コーヒー抽出液の固形分とは、20℃における糖用屈折計示度(Brix)を意味する。
接触処理手段としては、バッチ法又はカラム通液法が挙げられる。
バッチ法としては、コーヒー抽出液に、多孔質吸着体を加え−10〜100℃で0.5分〜5時間撹拌した後、吸着体を除去すればよい。処理時の雰囲気としては、空気下、不活性ガス下(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素)が挙げられるが、風味の観点より不活性ガス下が好ましい。
カラム通液法としては、吸着カラム内に吸着体を充填し、コーヒー抽出液をカラム下部又は上部から通液させ、他方から排出させる。吸着体の充填高さL及びD(径)の比L/Dは0.1〜10が好ましい。吸着体のカラム内への充填量は、通液前に吸着カラムに充填できる量であれば良い。吸着カラムの上段又は下段の少なくとも1つにメッシュ(網)又はパンチングメタルなど有し実質的に吸着体が漏れ出さない分離構造体を有していることが好ましい。分離構造体の開口径は、吸着体の平均粒径より小さければ良く、好ましくは吸着体の平均粒径の1/2以下、特に好ましくは1/3以下の目開きが良い。具体的な開口径は、10〜100μmが好ましい。
【0018】
コーヒー抽出液の吸着処理温度は−10℃〜100℃が好ましい。吸着カラム内の吸着体量(K[g])に対するコーヒー抽出液を含む液流量(QC[g/分])の滞留時間(K/QC)は0.5〜300分が好ましい。
【0019】
当該処理により、原料コーヒー抽出液中のクロロゲン酸類に比べて、ヒドロキシヒドロキノンが顕著に除去される。従って、本発明方法により得られるコーヒー組成物は、クロロゲン酸類を0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%含有するが、ヒドロキシヒドロキノン量はクロロゲン酸類量に対して0.08質量%以下である。ヒドロキシヒドロキノン量はクロロゲン酸類量に対して、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下である。コーヒー組成物中のヒドロキシヒドロキノン量は0であってもよい。
【0020】
<濃縮・乾燥>
上記のコーヒー組成物は、そのまま乾燥してインスタントコーヒーを得ることができるが、濃縮を行って固形分が20〜60質量%のコーヒー組成物とし、その後に乾燥することが好ましい。乾燥は、凍結乾燥あるいは噴霧乾燥する方法が例示される。凍結乾燥の場合、コーヒー組成物を−20〜−70℃に冷却して凍結させ、凍結したまま粉砕し、1〜100Paに減圧にすることにより乾燥させてインスタントコーヒーを得ることが出来る。噴霧乾燥の場合は、例えば、コーヒー組成物をノズルからスプレーし、通常150〜310℃、好ましくは210〜310℃の熱風中を落下させることにより、多孔質、水可溶性のインスタントコーヒーを得ることができる。水分はいずれの手法においても3%以下とすることが望ましい。
【0021】
<インスタントコーヒー>
本発明方法により得られるインスタントコーヒーは、ヒドロキシヒドロキノンが低減されており、好ましくはクロロゲン酸類量を0.1〜300mg/g含有する。クロロゲン酸類の含有量は5mg/g以上が好ましく、10mg/g以上がより好ましく、20mg/g以上がさらに好ましい。
ヒドロキシヒドロキノン量は、クロロゲン酸類量に対して0.08質量%以下である。ヒドロキシヒドロキノン量はクロロゲン酸類量に対して、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下である。インスタントコーヒー中のヒドロキシヒドロキノン量は0であってもよい。
【0022】
得られたインスタントコーヒーに香料を付加し、風味をさらに向上させてもよい。また、糖成分、乳成分、乳化剤を配合してもよい。
【0023】
本発明のインスタントコーヒーは、1gあたり25〜500mLの水又はお湯に溶解してコーヒー飲料を得ることができる。また得られたコーヒー飲料には、糖成分、乳成分、乳化剤を配合してもよい。
糖成分としては、グラニュー糖、上白糖、マルトース、スクラロース等が挙げられる。乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳等が挙げられる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセンリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記乳化剤は、キサンタンガム、カラギーナンなどの多糖類、カゼイン蛋白質と組み合わせることができる。
【実施例】
【0024】
(よう素吸着能の測定方法)
JIS K−1474:2007「活性炭試験方法」(6.1.1.1 よう素吸着性能)に記載の方法に従って測定する。
【0025】
(多孔質吸着体の平均粒径の測定方法)
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置として商品名「マイクロトラック(機種:MT3300」(日機装製)を用い、下記条件でメジアン径を測定し、平均粒径とした。
・分散媒:水+界面活性剤
・分散媒の屈折率:1.333
・界面活性剤の種類と濃度:SDS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を0.5%
・粒径分布の測定基準:体積基準
【0026】
(クロロゲン酸類の分析法)
コーヒー飲料のクロロゲン酸類の分析法は次の通りである。分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。UV−VIS検出器:L−2420((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラムオーブン:L−2300((株)日立ハイテクノロジーズ)、ポンプ:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ)、オートサンプラー:L−2200((株)日立ハイテクノロジーズ)、カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
分析条件は次の通りである。サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、UV−VIS検出器設定波長:325nm、カラムオーブン設定温度:35℃、溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、溶離液B:アセトニトリル。
【0027】
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0028】
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
(A1)モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点(A2)フェルラキ
ナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点(A3)ジカフェオイルキナ酸:36.6
、37.4、44.2の計3点。ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カ
フェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。
【0029】
(ヒドロキシヒドロキノンの分析方法)
分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、米国ESA社製)を使用した。装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
アナリティカルセル:モデル5010、クーロアレイオーガナイザー、クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:モデル5600A、溶媒送液モジュール:モデル582、グラジエントミキサー、オートサンプラー:モデル542、パルスダンパー、デガッサー:Degasys Ultimate DU3003、カラムオーブン:505.カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm 粒子径5μm((株)資生堂)。
【0030】
分析条件は次の通りである。
サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、電気化学検出器の印加電圧:0mV、カラムオーブン設定温度:40℃、溶離液C:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、溶離液D:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
【0031】
溶離液C及びDの調製には、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水(関東化学(株))、高速液体クロマトグラフィー用メタノール(関東化学(株))、リン酸(特級、和光純薬工業(株))、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(60%水溶液、東京化成工業(株))を用いた。
【0032】
濃度勾配条件
時間 溶離液C 溶離液D
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
【0033】
試料5gを精秤後、0.5(W/V)%リン酸、0.5mM 1−ヒドロキシエタン
−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液にて10mLにメスアップし、この溶液について遠心分離を行い、上清を分析試料とした。この上清について、ボンドエルートSCX(固相充填量:500mg、リザーバ容量:3mL、ジーエルサイエンス(株))に通液し、初通過液約0.5mLを除いて通過液を得た。この通過液について、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過し、速やかに分析に供した。
【0034】
上記の条件における分析において、ヒドロキシヒドロキノンの保持時間は、6.38分であった。得られたピークの面積値から、ヒドロキシヒドロキノン(和光純薬工業(株))を標準物質とし、質量%を求めた。
【0035】
(固形分の測定法)
コーヒー中の可溶性固形分は20℃における糖用屈折計示度(Brix)で表され、Atago RX-5000(Atago社製)にて分析した。
【0036】
(風味の評価方法)
風味は専門パネラー5人で試飲し、アロマ、ノーズ、テイストを総合的に判断し、下記に示す4段階の基準で評価した。
◎ 良好
○ やや良好
△ やや悪い
× 非常に悪い
【0037】
実施例1
市販インスタントコーヒー(ネスカフェ エクセラ)10gを700mLの水に溶解してコーヒー水溶液を得た。コーヒー水溶液中の固形分(Brix)は1.68%であり、クロロゲン酸類含有量は410mg/kg、ヒドロキシヒドロキノン含有量は7.2mg/kgであった。ヒドロキシヒドロキノン/クロロゲン酸類質量比は1.8%であった。
コーヒー水溶液に活性炭(白鷺WH2cSS、日本エンバイロケミカルズ製、平均粒径163μm、よう素吸着能1,170mg/g)を固形分に対して0.5質量倍相当添加し、20℃で30分間攪拌した後、遠心分離(3,000×g,10分)により活性炭を分離し、コーヒー組成物を得た。このコーヒー組成物の各種分析を行い、さらには風味評価を行った。
【0038】
実施例2〜3、比較例1〜3
活性炭として、表1に記載の平均粒径及びよう素吸着能を有するものを用いた以外は実施例1と同条件で処理を行った。尚、活性炭の平均粒径は、粉砕機で微粒化した後、分級することにより調整した。
実施例1〜3、比較例1〜3のコーヒー抽出液の組成、活性炭処理コーヒー組成物の組成を表1に示す。なお、表中、「CGA」はクロロゲン酸類、「HHQ」はヒドロキシヒドロキノンを表す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例4(インスタントコーヒー)
実施例3で得られたコーヒー組成物を減圧濃縮機にてBrix25%まで濃縮した後、噴霧乾燥機にて220℃の熱風中を落下させることでインスタントコーヒーを得た。得られたインスタントコーヒー2gを140mLの水に溶解してコーヒー水溶液としたところ、その固形分(Brix)は1.71%、クロロゲン酸類含有量は440mg/kgであり、ヒドロキシヒドロキノンの含有量は0.02mg/kg、ヒドロキシヒドロキノン/クロロゲン酸類質量比は0.005%であった。
得られたインスタントコーヒーは、クロロゲン酸類に富み、ヒドロキシヒドロキノン量が低減し、かつ風味にも優れていた(◎の良好)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー抽出液を多孔質吸着体で処理するコーヒー組成物の製造方法において、平均粒径が250μm以下であり、且つよう素吸着能が1400mg/g以下である多孔質吸着体を用いる、コーヒー組成物の製造方法。
【請求項2】
多孔質吸着体が活性炭である、請求項1記載のコーヒー組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法により得られる、クロロゲン酸類を0.01〜5質量%含有し、且つヒドロキシヒドロキノンの含量が該クロロゲン酸類量の0.08質量%以下であるコーヒー組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の方法により得られるコーヒー組成物を、噴霧乾燥又は凍結乾燥してなるインスタントコーヒー。
【請求項5】
クロロゲン酸類量が0.1〜300mg/gである、請求項4記載のインスタントコーヒー。

【公開番号】特開2010−284126(P2010−284126A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141843(P2009−141843)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】